説明

建築用接合金具

【課題】作業性、接合強度、付加価値及び経済性などを向上させることができる建築用接合金具の提供を目的とする。
【解決手段】建築用接合金具1は、固定板21及び一対の対向した連結板22を有し、固定板21に固定孔211が形成され、一対の連結板22にあご掛け221、ピン用孔222及び連結ピン用孔223が形成された受け金具2と、装入孔31及び貫通孔32が形成された固定金具3と、貫通孔32に貫入されるように、一対の連結板22のピン用孔22に圧入され、受け金具2と固定金具3とを連結するピン4とを備え、柱61の側面に梁62の端面を接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定金具と受け金具とが、ピンにより連結された建築用接合金具に関し、作業性、接合強度、付加価値及び経済性などを向上させることができる建築用接合金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梁等の木部材と柱等の木部材を接合する建築用木部材の接合方法として、ほぞ加工やぬき加工を木材に施し、これら木材どうしを組み合わせて接合する方法が用いられてきた。
近年では、建築用接合金具を用いて接合すると、木材どうしを組み合わせて接合するより強固に接合でき、かつ、施工現場での作業効率を向上させることができることから、様々な構造の建築用接合金具などが提案されている
【0003】
たとえば、特許文献1には、柱の側面に当てがわれる基板、及び、基板に直交して梁側に突出する受板を備え、基板にはボルト部材の軸部を挿通させうるボルト孔が形成された金具本体と、ボルト部材と、ボルト部材に螺合しうるナット部、及び、ナット部よりも大きな軸長を有してナット部に外装された筒部を備え、筒部にはその軸心と直交する方向にピン孔が貫通形成されているほぞ部材と、ピン部材とを用いた接合金具の取付構造の技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、主幹部材に端部が突出する形で埋め込むシャフトと、横架部材の端部に形成したスリットに差し込む接合板と、接合板をシャフトに固定する固定ピンとを備え、接合板は、縁部をシャフトの端部に形成したスリットに差し込まれ、側方から固定ピンを貫通してシャフトに固定する木造建築部材の連結金具(接合金具)の技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、別々に製造された本体金具と補助金具とが組み合わされて使用され、これらとは別体の挿入軸を第1木材に挿入して、挿入軸が補助金具を貫通すると、第1木材への取付作業が完了する軸組接合具(接合金具)の技術が開示されている。この技術は、本体金具が、第1木材に当接される当接面と、当接面に直交して構成され、第2木材に形成された取付溝の中に収容される平坦面と、が一体成形されて成り、また、補助金具が、丸穴が貫通形成されると共に、当接面に形成された取付穴を通過して第1木材に挿入される柱部と、取付穴より大きい頭部と、が一体成形されて成ることを特徴とする。
【0006】
また、特許文献4には、第1取付孔が形成された第1固定部と、この第1固定部の一方側縁部から所定の対向間隔を以って一体に突設されるとともにそれぞれに第2取付孔が形成された第1固定凸片部と第2固定凸片部とからなる第2固定部とから構成され、第1構造材と第2構造材に対してその突合せ部位に跨って固定されることにより、上記第1構造材と上記第2構造材を結合することを特徴とする結合金物(接合金具)の技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献5には、一方の木部材の側面に他方の木部材の端面を接合するための建築用接合金具であり、一方の木部材の側面に固定するための固定孔を穿設した固定板、及び、この固定板から突設され、他方の木部材に連結される一対の対向した連結板を有する受け金具と、一方の端部にストッパーピンと矩形板状部材とからなる係止部を有し、他方の端部に装入孔が形成され、受け金具の固定孔に挿入される筒状又は棒状の固定金具と、固定金具の装入孔に装入される棒状又は筒状の固定ピンとを備えたことを特長とする建築用接合金具の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4080419号公報
【特許文献2】特許第4088579号公報
【特許文献3】特開2010−47996号公報
【特許文献4】特開2009−150206号公報
【特許文献5】特開2010−281192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された接合金具の取付構造の技術は、加工コストや部品コストを削減できるものの、金具本体の基板を、ボルト部材などを用いて柱に固定しているので、専用の締付け工具(ボックスレンチ等)を必要とし、作業性を向上させることができないといった問題があった。また、構造的に接合強度を十分得られないおそれがあるといった問題があった。
【0010】
また、特許文献2〜4に記載された接合金具の技術は、ボルトなどを用いていないので、専用の締付け工具(ボックスレンチ等)を必要とせず、作業性を向上させることができるものの、構造的に接合強度を十分得られないおそれがあるといった問題があった。
【0011】
また、特許文献5に記載された建築用接合金具の技術は、接合強度や作業性などを向上させるとともに、製造原価のコストダウンを図ることができるものの、上記の長所をさらに向上させることが要望されていた。また、他社の商品との差別化を図るために、商品としての付加価値を向上させることも要望されていた。
【0012】
本発明は、以上のような問題などを解決するために提案されたものであり、作業性、接合強度、付加価値及び経済性などを向上させることができる建築用接合金具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の建築用接合金具は、一方の木部材の側面に他方の木部材の端面を接合するための建築用接合金具であり、一方の木部材の側面に固定される固定板、及び、この固定板から突設され、他方の木部材に連結される一対の対向した連結板を有し、固定板に固定孔が形成され、一対の連結板にあご掛け、ピン用孔及び連結ピン用孔が形成された受け金具と、一方の端部に装入孔が形成され、他方の端部に貫通孔が形成され、一方の端部が一方の木部材に連結され、他方の端部が受け金具の固定孔に挿入される筒状又は棒状の固定金具と、一対の対向した連結板どうしの距離と同じ長さを有し、固定金具の貫通孔に貫入されるように、一対の連結板のピン用孔に圧入され、受け金具と固定金具とを連結するピンとを備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建築用接合金具によれば、作業性、接合強度、付加価値及び経済性などを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大正面図を示している。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大側面図を示している。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の使用例を説明するための概略平面図を示している。
【図5】図5は、図4のA−A断面図を示している。
【図6】図6は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の第一応用例を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
【図7】図7は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の第一応用例を説明するための概略拡大正面図を示している。
【図8】図8は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の第二応用例を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
【図9】図9は、本発明の第二実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
【図10】図10は、本発明の第二実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大正面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[建築用接合金具の第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
また、図2は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大正面図を示している。
また、図3は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大側面図を示している。
図1〜3において、本実施形態の建築用接合金具1は、受け金具2、固定金具3、及び、ピン4などを備えた構成としてある。この建築用接合金具1は、一方の木部材としての柱61の側面に、他方の木部材としての梁62の端面を接合する。
【0017】
(受け金具)
受け金具2は、柱61の側面に固定される固定板21、及び、この固定板21から突設され、梁62に連結される一対の対向した連結板22を有している。
固定板21は、細長い矩形平板状であり、固定孔211が上下方向の三箇所に形成されている。本実施形態では、上から一番目の固定孔211は、あご掛け221と対応する位置に形成されており、上から二番目及び三番目の固定孔211は、上から一番目の固定孔211に対して、ピッチPで形成されている。また、固定孔211は、固定金具3が嵌入されるほぼ円形状の孔である。
なお、固定孔211の数量は、通常、二つ以上であり、梁62の大きさや形状などに応じて適宜設定される。また、各固定孔211の形成される位置は、上記の位置に限定されるものではなく、たとえば、互いに干渉することなく、かつ、ほぼ等間隔となるように、適宜設定される。
【0018】
連結板22は、上部の梁側に、係止用ピン(ドリフトピン)52が係止されるあご掛け221が形成されている。
あご掛け221は、底部がほぼ長円状の切欠であり、上部が係止用ピン52を上方から落とし込みやすいように、上方ほど間口が広く開口された構造としてある。このようにすると、梁62の端部を上方から受け金具2に向けて降下させることにより、係止用ピン52をあご掛け221に容易に係止することができ、作業性を向上させることができる。また、作業性が向上することによって、より安全に現場での高所作業を行うことができる。
【0019】
また、連結板22は、あご掛け221の下方の二箇所に、梁62と受け金具2とを連結する連結ピン(ドリフトピン)53を装入する連結ピン用孔223が形成されている。このようにすると、連結ピン53を打ち込むといった容易な作業により、梁62と受け金具2を連結することができ、作業性を向上させることができる。また、本実施形態では、上側の(中段に位置する)連結ピン用孔223及び下側の(下方に位置する)連結ピン用孔223は、あご掛け221に対して、ピッチPで形成されている。
なお、連結ピン用孔223の数量は、通常、一つ以上であり、梁62の大きさや形状などに応じて適宜設定される。また、各連結ピン用孔223の形成される位置は、上記の位置に限定されるものではなく、たとえば、互いに干渉することなく、かつ、ほぼ等間隔となるように、適宜設定される。
【0020】
ここで、好ましくは、上述したように、連結板22の上部にあご掛け221(第一のあご掛け221とも呼ばれる。)を形成し、該第一のあご掛け221から下方に向かって所定のピッチPで、一又は二以上の(本実施形態では二つの)連結ピン用孔223(第一の連結ピン用孔223とも呼ばれる。)を形成する。さらに、連結板22の下部にあご掛け221a(第二のあご掛け221aとも呼ばれる。)を形成し、該第二のあご掛け221aから上方に向かって所定のピッチPで、一又は二以上の(本実施形態では二つの)連結ピン用孔223a(第二の連結ピン用孔223aとも呼ばれる。)を形成する。また、建築用接合金具1(ピン4により連結された受け金具2と固定金具3)を上下方向に反転させても、固定金具3どうしが干渉しない構成、すなわち、固定金具3の外径dに対して、第二のあご掛け221aと下方に位置する固定孔211との中心距離Pが、P>dとなる構成とするとよい。
このようにすると、後述するように、たとえば、柱61の二つの側面に(さらに、同じ高さ位置に)、二本の梁62を直交させて接合する場合であっても、二つの建築用接合金具1(すなわち、連結(一体化)された受け金具2及び固定金具3)のうち一方を反転させて使用することができ、商品としての付加価値を向上させることができる。
【0021】
さらに、一対の連結板22は、固定孔211と対応する位置(上下方向の位置)の柱側に、ピン4が圧入されるピン用孔222が形成されている。このように、建築用接合金具1は、固定金具3に作用する外力を、連結板22に形成された一対のピン用孔222が受ける構造となっているので、上記の特許文献1、5の技術より、接合強度を向上させることができる。
【0022】
ここで、ピン用孔222の柱側の端は、連結板22の梁側の表面から微小距離(通常、0.数mm)だけ離れた位置、あるいは、圧入されたピン4が固定板21と接触する位置にある。このようにすると、梁62の端面に加工される切欠622の深さDを浅くすることができ、梁62の機械的強度の低下を抑制することができる。なお、上記の深さDは、上述した特許文献5の技術より、浅くすることができる。
また、対向する一対の連結板22どうしの距離は、固定金具3の外径d+微小距離(通常、0.数mm)、あるいは、各連結板22が固定金具3と接触する距離である。これにより、梁62の端面に加工される切欠622の幅Wを短くすることができ、梁62の機械的強度の低下を抑制することができる。
【0023】
このように、建築用接合金具1は、梁62の機械的強度の低下を抑制することによっても、結果的に柱61と梁62との接合強度を向上させることができる。また、ピン4が固定板21と接近又は接触したり、固定金具3が連結板22と接近又は接触することにより、固定板21や連結板22の機械的強度が補強され、これによっても、柱61と梁62との接合強度を向上させることができる。
【0024】
また、一対の連結板22は、梁62の端面に加工された二本の溝621に嵌入される。また、梁62は、二本の溝621の間に、固定金具3の梁側の端部との干渉を避ける切欠622が形成されている。
このように、一対の連結板22は、二本の溝621にそれぞれ嵌入された状態で梁62と連結されるので、梁62の側面方向に位置決めを確実に行うことができる。また、一対の連結板22が溝621にそれぞれ装入されることによって、受け金具2及び梁62の側面方向の外力に対する機械的強度が向上する。
なお、建築用接合金具1は、一対の対向した連結板22を有する構造により、上記の特許文献2〜4の技術より、接合強度を向上させることができる。
【0025】
(固定金具)
固定金具3は、一方の端部(柱側の端部)に装入孔31が形成され、他方の端部(梁側の端部)に貫通孔32が形成されており、一方の端部が柱61に連結され、他方の端部が受け金具2の固定孔211に挿入される筒状体(パイプ)である。
なお、本実施形態では、筒状体としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、筒状体の代わりに、丸棒などを用いてもよい。
【0026】
装入孔31は、固定ピン51が挿入される円形状の孔としてある。
また、貫通孔32は、ピン4が挿入される円形状の孔としてある。この貫通孔32に、ピン4が貫通するので、固定金具3は、一方の端部側(柱側)へ作用する大きな外力を支持することができ、梁62の長手方向の外力や梁62の上下方向の外力(モーメント)に対する接合強度を向上させることができる。
【0027】
また、固定金具3は、構造が単純であるので、加工費や材料費を低減することができ、製造原価のコストダウンを図ることができ、経済性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、装入孔31の中心軸と貫通孔32の中心軸は、平行としてあり、さらに、固定金具3を受け金具2に連結する際、貫通孔32にピン4が挿入されるので、装入孔31と柱61に穿設された打込孔612(固定ピン51が打ち込まれる孔)との位置が自動的に合い、作業性を向上させることができる。
【0028】
ここで、好ましくは、柱61の厚さTに対して、柱61に連結された固定金具3の柱側の端部から固定板21までの長さLが、L<T/2であるとよい。
このように、L<T/2としてあるので、たとえば、柱61の一つの側面に梁62を接合する場合、接合される側面と対向する側面に、孔(挿入孔611を延長させた孔)が露出しないので、耐久性(錆びなどを抑制すること)や美観を向上させることができる。また、固定金具3と柱61とを連結させる固定ピン51は、柱61の中央より梁側に加工された打込孔612に打ち込まれる。したがって、柱61の対向する側面の同じ高さ位置に、固定金具3を連結する場合であっても、支障なく一対の固定金具3を対向して連結させることができる。これらにより、建築用接合金具1は、商品としての付加価値を向上させることができる。
【0029】
(ピン)
ピン4は、通常、鋼製の丸棒であり、固定金具3の貫通孔32に貫入されるように、一対の連結板22のピン用孔222に圧入され、受け金具2と固定金具3とを連結する。また、ピン4は、一対の対向した連結板22どうしの距離(すなわち、連結板22の外側の側面どうしの距離であり、本実施形態では、ほぼWである。)とほぼ同じ長さ(微小距離(たとえば、0.数mm)の誤差は、許容される。)を有している。
ここで、圧入されるピン4は、通常、ハンマーなどで一方のピン用孔222に打ち込まれ、次に、貫通孔32に貫入され、続いて、他方のピン用孔222に打ち込まれる。これにより、打ち込まれたピン4は、通常、ピン用孔222に圧入され、両端が連結板22に圧着される。すなわち、溶接が不要であり、作業性などを向上させることができる。
なお、本実施形態では、ピン用孔222とピン4との嵌合を締り嵌めとし、貫通孔32とピン4との嵌合を隙間嵌めとしてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、貫通孔32とピン4との嵌合をも締り嵌めとしてもよい。
【0030】
このように、ピン4によって、建築用接合金具1は、受け金具2と固定金具3とが連結(一体化)されているので、たとえば、従来のボルトやナット締めの作業が無くなり、固定ピン51を打ち込むだけで、一体化された固定金具3及び受け金具2を柱61に取り付けることができ、作業性を大幅に向上させることができる。
【0031】
(固定ピン、係止用ピン及び連結ピン)
固定ピン51、係止用ピン52及び連結ピン53は、一方の端部側に、截頭円錐部を有し、他方の端部側に、あや目ローレット加工が施されたほぼ丸棒状のピン(一般的に、ドリフトピンと呼ばれる。)である。
固定ピン51は、柱61の打込孔612に打ち込まれると、固定金具3の装入孔31を貫通し、固定金具3と柱61とを連結し、固定金具3と連結された受け金具2は、柱61の側面に固定される。
また、係止用ピン52は、あらかじめ梁62の打込孔623に打ち込まれており、係止用ピン52があご掛け221に係止された後、連結ピン53が打込孔623に打ち込まれる。
【0032】
なお、柱61は、受け金具2が固定される側面の所定の位置に、固定金具3が挿入される挿入孔611が穿設され、また、挿入された固定金具3の装入孔31の中心軸とほぼ一致するように、固定ピン51が打ち込まれる打込孔612が穿設されている。
また、梁62は、端面に連結板22を収容する一対の溝621が形成され、さらに、固定金具3の梁側の端部を収容する切欠622が形成されている。また、あご掛け221及び連結ピン用孔223と対応する位置に、打込孔623が穿設されている。
【0033】
次に、上記構成の建築用接合金具1の接合方法や接合状態などについて説明する。
まず、柱61は、上述したように、固定金具3の挿入される挿入孔611、及び、固定ピン51の打ち込まれる打込孔612が穿設される。
ここで、固定金具3は、上述したように、柱61の厚さTに対して、柱61に連結された固定金具3の柱側の端部から固定板21までの長さLを、L<T/2としてあり、挿入孔611の深さは、柱61のほぼ中央までの深さとしてある。これにより、たとえば、柱61の一つの側面に梁62を接合する場合、接合される側面と対向する側面に、孔(挿入孔611を延長させた孔)が露出しないので、耐久性(錆びなどを抑制すること)や美観などを向上させることができる。
【0034】
また、梁62は、上述したように、端面に、二本の溝621及び切欠622が加工され、係止用ピン52及び連結ピン53の打ち込まれる打込孔623が穿設される。続いて、係止用ピン52があご掛け221に対応する打込孔623に打ち込まれる。
【0035】
また、受け金具2と固定金具3は、圧入されるピン4によって連結される。すなわち、固定金具3は、梁側の端部が固定孔211に挿入され、続いて、ピン4がハンマーなどで一方のピン用孔222に打ち込まれ、次に、貫通孔32に貫入され、続いて、他方のピン用孔222に打ち込まれる。
ここで、上述したように、ピン用孔222の柱側の端は、連結板22の梁側の表面から微小距離(通常、0.数mm)だけ離れた位置、あるいは、圧入されたピン4が固定板21と接触する位置にある。また、対向する一対の連結板22の距離どうしは、固定金具3の外径d+微小距離(通常、0.数mm)、あるいは、各連結板22が固定金具3と接触する距離である。すなわち、建築用接合金具1によれば、上記特許文献5の技術と比べて、切欠622の深さDを浅くすることができ、また、切欠622の幅Wを短くすることができる。これにより、梁62の機械的強度の低下を抑制することができ、結果的に、柱61と梁62との接合強度を向上させることができる。また、ピン4が固定板21と接近又は接触したり、固定金具3が連結板22と接近又は接触することにより、固定板21や連結板22の機械的強度が補強され、これによっても、柱61と梁62との接合強度を向上させることができる。
【0036】
また、上述したように、圧入されるピン4は、通常、ハンマーなどで一方のピン用孔222に打ち込まれ、次に、貫通孔32に貫入され、続いて、他方のピン用孔222に打ち込まれる。すなわち、ピン4によって、建築用接合金具1は、受け金具2と固定金具3とが連結(一体化)されているので、たとえば、従来のボルトやナット締めの作業が無くなり、作業性を向上させることができる。また、ピン4は、打ち込まれることにより、両端が連結板22に圧着され、溶接が不要であり、作業性などを向上させることができる。なお、ハンマーなどを用いて、ピン4を圧入しているが、圧入する手段は、特に限定されるものではない。
ところで、上記の工程は、通常、工場内で行なわれ、安全かつ作業性よく実施することができる。
【0037】
次に、柱61、係止用ピン52の打ち込まれた梁62、及び、ピン4により連結された受け金具2と固定金具3などは、施工現場に搬送される。この際、受け金具2や固定金具3の全く取り付けられていない柱61や梁62を施工現場に搬送することもできるので、搬送効率を向上させることができ、また、受け金具2や固定金具3が木材と接触し、木材に傷が付くといった不具合を防止することができる。
【0038】
次に、受け金具2と連結された三つの固定金具3が、柱61の挿入孔611に挿入される。続いて、固定ピン51が、柱61の打込孔612及び固定金具3の装入孔31に打ち込まれることによって、固定金具3が柱61と連結され、受け金具2は、柱61の側面に固定される。この際、ボルトなどを用いていないので、専用の締付け工具(ボックスレンチ等)を必要とせず、作業性を大幅に向上させることができる。
なお、受け金具2の柱61への固定は、通常、施工現場で行われるが、これに限定されるものではなく、たとえば、工場内で行うこともできる。
【0039】
次に、受け金具2の固定された柱61は、施工現場において、基礎(図示せず)上に立設される。
続いて、梁62を柱61の方向に移動させ、連結板22を溝621に挿入し、さらに、梁62を降下させ、係止用ピン52があご掛け221に係止される。
次に、連結ピン53を梁62の打込孔612(連結ピン用孔223と対応する打込孔612)に打ち込むと、連結ピン53が連結孔223を貫通し、梁62が柱61に接合される。
なお、建築用接合金具1は、固定ピン51が打ち込まれることによって、受け金具2の固定板21が、柱61の側面に押圧された状態で固定され、また、連結ピン53が打ち込まれることによって、梁62の端面が柱61の側面に押圧された状態で、接合される。これにより、柱61と梁62とは、密着した状態で接合される。
【0040】
次に、本実施形態の使用例について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の使用例を説明するための概略平面図を示している。
また、図5は、図4のA−A断面図を示している。
図4、5において、本実施形態の二つの建築用接合金具1は、柱61の二つの側面に(さらに、同じ高さ位置に)、二本の梁62(右側の梁62と正面側の梁62)を直交させて接合する場合に使用されており、正面側の梁62を接合する建築用接合金具1は、右側の建築用接合金具1と比べると、上下方向に反転させた状態で使用されている。
なお、右側の梁62に対する接合方法などは、上述したとおりである。したがって、正面側の接合方法などについて説明する。
【0041】
まず、柱61は、上述したように、右側の側面に、右側の固定金具3の挿入される挿入孔611が穿設されており、正面側の側面には、右側と比べると、ピッチPだけ下方の位置に、正面側の固定金具3の挿入される挿入孔611が穿設されている。また、右側の固定金具3及び正面側の固定金具3を柱61に連結するための打込孔612も、それぞれ穿設されている。
なお、建築用接合金具1は、上述したように、P>dとしてあるので、正面側の固定金具3は、右側の固定金具3と干渉することはない。
【0042】
また、正面側の梁62は、右側の梁62と同様に、端面に、二本の溝621及び切欠622が加工され、係止用ピン52及び連結ピン53の打ち込まれる打込孔623が穿設される。続いて、係止用ピン52があご掛け221aに対応する打込孔623に打ち込まれる。
【0043】
次に、受け金具2と連結された三つの固定金具3が、柱61の正面側の挿入孔611に挿入される。続いて、固定ピン51が、柱61の打込孔612及び固定金具3の装入孔31に打ち込まれることによって、固定金具3が柱61と連結され、受け金具2は、柱61の正面側の側面に固定される。ただし、上述したように、正面側の建築用接合金具1は、右側の建築用接合金具1を上下方向に反転させた状態で、柱61に固定される。
続いて、正面側の梁62を柱61の方向に移動させ、連結板22を溝621に挿入し、さらに、梁62を降下させ、係止用ピン52があご掛け221aに係止される。
次に、連結ピン53を梁62の打込孔612(連結ピン用孔223aと対応する打込孔612)に打ち込むと、連結ピン53が連結孔223aを貫通し、正面側の梁62が柱61に接合される。
【0044】
このように、本実施形態の建築用接合金具1は、柱61の二つの側面に(さらに、同じ高さ位置に)、二本の梁62(右側の梁62と正面側の梁62)を直交させて接合する場合であっても、二つの建築用接合金具1(すなわち、連結(一体化)された受け金具2及び固定金具3)のうち一方を上下方向に反転させて使用することができ、商品としての付加価値を向上させることができる。
なお、建築用接合金具1は、上述したように、柱61の厚さTに対して、柱61に連結された固定金具3の柱側の端部から固定板21までの長さLを、L<T/2としてある。これにより、建築用接合金具1は、図示してないが、柱61の三つ又は四つの側面に(さらに、同じ高さ位置に)、三本又は四本の梁62を直交させて接合する場合にも、好適に使用される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の建築用接合金具1は、ピン4を用いて、受け金具2と固定金具3とを連結させる構成としてあり、作業性、接合強度、付加価値及び経済性などを向上させることができる。
また、本実施形態は、様々な応用例を有している。
次に、本実施形態の応用例について、図面を参照して説明する。
【0046】
<建築用接合金具の第一応用例>
図6は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の第一応用例を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
また、図7は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の第一応用例を説明するための概略拡大正面図を示している。
図6、7において、第一応用例の建築用接合金具1bは、上述した第一実施形態の建築用接合金具1と比べると、固定金具3の代わりに、固定金具3bを備え、一本の長尺の固定ピン51bが、三つの固定金具3bの装入孔31bに装入される点などが相違している。この建築用接合金具1bは、桁63と梁62とを接合する。なお、本応用例の他の構成は、建築用接合金具1とほぼ同様としてある。
したがって、図6、7において、図1、2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0047】
固定金具3bは、上記の固定金具3と比べると、装入孔31の代わりに、装入孔31の中心軸を90°回転させた装入孔31b(孔の径及び位置は、装入孔31と同じである。)が形成された点が相違する。
また、固定ピン51bは、桁63の幅寸法とほぼ同じ長さとしてあり、三つの固定金具3bの装入孔31bに上方から装入される。
【0048】
ここで、桁63は、受け金具2が固定される側面の所定の位置に、固定金具3bが挿入される挿入孔631が穿設され、固定金具3bは、装入孔31bの中心軸が上下方向を向くように挿入される。また、桁63は、挿入された固定金具3bの装入孔31bの中心軸とほぼ一致するように、固定ピン51bが打ち込まれる打込孔632が穿設されている。
なお、固定ピン51bは、図示してないが、割りピンなどの係止部を有する構成としてもよく、このようにすると、固定ピン51bが下方に移動しすぎるといった不具合を回避することができる。
【0049】
次に、上記構成の建築用接合金具1bの接合方法や接合状態などについて説明する。
まず、桁63は、上述したように、固定金具3bが挿入される挿入孔631、及び、固定ピン51bが打ち込まれる打込孔632が穿設される。
また、梁62は、上述したように、端面に、二本の溝621及び切欠622が加工され、係止用ピン52及び連結ピン53の打ち込まれる打込孔623が穿設される。続いて、係止用ピン52があご掛け221に対応する打込孔623に打ち込まれる。
また、受け金具2と固定金具3bは、上述したように、圧入されるピン4によって連結される。
ところで、上記の工程は、通常、工場内で行なわれ、安全かつ作業性よく実施することができる。
【0050】
次に、桁63、係止用ピン52の打ち込まれた梁62、及び、ピン4により連結された受け金具2と固定金具3bなどは、施工現場に搬送される。この際、受け金具2や固定金具3bの全く取り付けられていない桁63や梁62を施工現場に搬送することもできるので、搬送効率を向上させることができ、また、受け金具2や固定金具3bが木材と接触し、木材に傷が付くといった不具合を防止することができる。
【0051】
次に、受け金具2と連結された三つの固定金具3bが、桁63の挿入孔631に挿入される。続いて、固定ピン51bが、桁63の打込孔632及び固定金具3bの装入孔31bに打ち込まれることによって、固定金具3bが桁63と連結され、受け金具2は、桁63の側面に固定される。この際、ボルトなどを用いていないので、専用の締付け工具(ボックスレンチ等)を必要とせず、作業性を大幅に向上させることができる。
なお、受け金具2の桁63への固定は、通常、施工現場で行われるが、これに限定されるものではなく、たとえば、工場内で行うこともできる。
【0052】
次に、受け金具2が工場内あるいは施工現場で固定された桁63は、施工現場において、図示してないが、柱61などに接合される。
続いて、梁62を桁63の方向に移動させ、連結板22を溝621に挿入し、さらに、梁62を降下させ、係止用ピン52があご掛け221に係止される。
次に、連結ピン53を梁62の打込孔612に打ち込むと、連結ピン53が連結ピン用孔223を貫通し、梁62が桁63に接合される。
なお、建築用接合金具1bは、固定ピン51bが打ち込まれることによって、受け金具2の固定板21が、桁63の側面に押圧された状態で固定され、また、連結ピン53が打ち込まれることによって、梁62の端面が桁63の側面に押圧された状態で、接合される。これにより、桁63と梁62とは、密着した状態で接合される。
【0053】
以上説明したように、本応用例の建築用接合金具1bによれば、第一実施形態の建築用接合金具1とほぼ同様の効果を奏するとともに、一本の固定ピン51bを打ち込むことにより、受け金具2を桁63に固定することができるので、作業性をさらに向上させることができる。
【0054】
<建築用接合金具の第二応用例>
図8は、本発明の第一実施形態にかかる建築用接合金具の第二応用例を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
図8において、第二応用例の建築用接合金具1cは、上述した第一実施形態と比べると、受け金具2の代わりに、受け金具2cを備えた点などが相違する。なお、本応用例の他の構成は、第一実施形態とほぼ同様としてある。
したがって、図8において、図1と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0055】
受け金具2cは、上記の受け金具2と比べると、固定板21の代わりに、幅寸法の広い(2×Δだけ幅の広い)固定板21cを有している点が相違する。この固定板21cの幅寸法は、通常、上記の特許文献5の固定板と同じ寸法であり、これにより、普及しているコ型の受け金具用のプレカット機械にて、梁62の切欠622cを加工することができる。なお、固定孔211の径及び位置は、固定板21と同じである。
また、対向する一対の連結板22の距離は、ほぼ固定金具3の外径d+2×Δである。これにより、梁62の端面に加工される切欠622cの幅Wcは、普及しているコ型の受け金具用のプレカット機械にて、容易に加工することができる。
【0056】
次に、上記構成の建築用接合金具1cの接合方法や接合状態などについて説明する。
まず、柱61は、上述したように、固定金具3が挿入される挿入孔611、及び、固定ピン51が打ち込まれる打込孔612が穿設される。
また、梁62は、上述したように、端面に、二本の溝621c及び切欠622cが加工され、係止用ピン52及び連結ピン53の打ち込まれる打込孔623が穿設される。続いて、係止用ピン52があご掛け221に対応する打込孔623に打ち込まれる。
【0057】
また、受け金具2cと固定金具3は、圧入されるピン4cによって連結される。すなわち、固定金具3は、梁側の端部が固定孔211に挿入され、続いて、ピン4cがハンマーなどで一方のピン用孔222に打ち込まれ、貫通孔32に貫入し、続いて、他方のピン用孔222に打ち込まれる。
【0058】
ここで、建築用接合金具1cによれば、上記特許文献5の技術と比べて、切欠622の深さDを浅くすることができる。これにより、梁62の機械的強度の低下を抑制することができ、結果的に、柱61と梁62との接合強度を向上させることができる。また、ピン4cが固定板21と接近又は接触することにより、固定板21cの機械的強度が補強され、これによっても、柱61と梁62との接合強度を向上させることができる。
ところで、上記の工程は、通常、工場内で行なわれ、安全かつ作業性よく実施することができる。
【0059】
次に、柱61、係止用ピン52の打ち込まれた梁62、及び、ピン4cにより連結された受け金具2cと固定金具3などは、施工現場に搬送される。
続いて、受け金具2cと連結された三つの固定金具3が、柱61の挿入孔611に挿入される。続いて、固定ピン51が、柱61の打込孔612及び固定金具3の装入孔31に打ち込まれることによって、固定金具3が柱61と連結され、受け金具2cは、柱61の側面に固定される。この際、ボルトなどを用いていないので、専用の締付け工具(ボックスレンチ等)を必要とせず、作業性を大幅に向上させることができる。
【0060】
次に、受け金具2cの固定された柱61は、施工現場において、基礎(図示せず)上に立設される。
続いて、梁62を柱61の方向に移動させ、連結板22を溝621cに挿入し、さらに、梁62を降下させ、係止用ピン52があご掛け221に係止される。
次に、連結ピン53を梁62の打込孔623に打ち込むと、連結ピン53が連結ピン用孔223を貫通し、梁62が柱61に接合される。
なお、建築用接合金具1cは、固定ピン51が打ち込まれることによって、受け金具2cの固定板21cが、柱61の側面に押圧された状態で固定され、また、連結ピン53が打ち込まれることによって、梁62の端面が柱61の側面に押圧された状態で、接合される。これにより、柱61と梁62とは、密着した状態で接合される。
【0061】
以上説明したように、本応用例の建築用接合金具1cによれば、第一実施形態の建築用接合金具1とほぼ同様の効果を奏するとともに、普及しているコ型の受け金具用のプレカット機械にて、梁62の切欠622cを加工することができ、使い勝手などを向上させることができる。
なお、図示してないが、固定金具3と連結板22との間に、それぞれスリーブを設け、これらスリーブにピン4cを貫入するようにしてもよい。
【0062】
[建築用接合金具の第二実施形態]
図9は、本発明の第二実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大図であり、(a)は平面図を示しており、(b)は要部の分解斜視図を示している。
また、図10は、本発明の第二実施形態にかかる建築用接合金具を説明するための概略拡大正面図を示している。
図9、10において、本実施形態の建築用接合金具1dは、上述した第一実施形態の建築用接合金具1と比べると、受け金具2dが、固定板21dから柱側に突出した補強部材23を有し、補強部材23が、柱61の側面に形成された凹部613と係合する点などが相違する。なお、本実施形態の他の構成は、建築用接合金具1とほぼ同様としてある。
したがって、図9、10において、図1、2と同様の構成部分については同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0063】
(補強部材)
補強部材23は、固定孔211dと対応して、固定板21dから突設された一対の対向した係合片231と、係合片231と係合し、かつ、固定金具3dが貫通する補強板232とを有している。
固定孔211dは、固定金具3dが嵌入されるほぼ正方形状の孔としてある。
また、一対の対向した係合片231は、ほぼ矩形状(長さがほぼdであり、幅がほぼtである。)であり、固定孔211dと対応して(すなわち、固定孔211dと同じ上下方向の位置に)、固定板21dから突設されている。なお、受け金具2dは、通常、プレス成形されており、係合片231は、連結板22dが、柱側に伸びた状態である。
また、補強板232は、円板状(外径がDであり、厚さがtである。)であり、中央に、固定金具3dが嵌入する貫通孔2321が形成され、貫通孔2321の両側に、係合片231が係入する係入溝2322が形成されている。
このようにすると、補強部材23の構造を単純化でき、また、溶接が不要となり、作業性などを向上させることができる。
なお、補強部材23の構成は、上記に限定されるものではない。
【0064】
ここで、好ましくは、ピン用孔222dの柱側の端が、固定板21dの梁側の表面より、柱側に位置するとよい。このようにすると、ピン4の位置を柱側に寄せることができ、この分だけ、切欠622dの深さDdを浅くすることができ、梁62の機械的強度の低下を抑制することができる。
【0065】
また、固定金具3dは、上記の固定金具3と比べると、長さが、ピン用孔222dを柱側に移動させた分だけ短くなっており、また、貫通孔32の代わりに、ピン用孔222dと対応する位置に、貫通孔32dが形成された点が相違する。
【0066】
次に、上記構成の建築用接合金具1dの接合方法や接合状態などについて説明する。
まず、柱61は、上述したように、固定金具3dが挿入される挿入孔611、及び、固定ピン51が打ち込まれる打込孔612が穿設され、さらに、補強板232が係入される凹部613(直径がほぼDであり、深さがほぼtである。)が加工される。
また、梁62は、上述したように、端面に、二本の溝621及び切欠622dが加工され、係止用ピン52及び連結ピン53の打ち込まれる打込孔623が穿設される。続いて、係止用ピン52があご掛け221に対応する打込孔623に打ち込まれる。
【0067】
また、受け金具2dと固定金具3dは、圧入されるピン4によって連結される。すなわち、固定金具3dは、梁側の端部が固定孔211dに挿入され、続いて、ピン4がハンマーなどで一方のピン用孔222dに打ち込まれ、次に、貫通孔32dに貫入し、続いて、他方のピン用孔222dに打ち込まれる。
ところで、上記の工程は、通常、工場内で行なわれ、安全かつ作業性よく実施することができる。
【0068】
次に、柱61、係止用ピン52の打ち込まれた梁62、及び、ピン4により連結された受け金具2dと固定金具3dなどは、施工現場に搬送される。
続いて、受け金具2dと連結された三つの固定金具3dに、補強板232が取り付けられ、固定金具3dが貫通孔2321に嵌入し、かつ、係合片231が係入溝2322に係入した状態となる。そして、三つの固定金具3dは、柱61の挿入孔611に挿入され、また、補強板232が凹部613に係入する。続いて、固定ピン51が、柱61の打込孔612及び固定金具3dの装入孔31に打ち込まれることによって、固定金具3dが柱61と連結され、受け金具2dは、柱61の側面に固定される。この際、ボルトなどを用いていないので、専用の締付け工具(ボックスレンチ等)を必要とせず、作業性を大幅に向上させることができる。また、補強板232が、柱61の凹部613に係入されているので、建築用接合金具1dは、たとえば、上方からのより大きな荷重に抵抗することができ、接合強度を大幅に向上させることができる。
【0069】
次に、受け金具2dの固定された柱61は、施工現場において、基礎(図示せず)上に立設される。
続いて、梁62を柱61の方向に移動させ、連結板22dを溝621に挿入し、さらに、梁62を降下させ、係止用ピン52があご掛け221に係止される。
次に、連結ピン53を梁62の打込孔623に打ち込むと、連結ピン53が連結ピン用孔223を貫通し、梁62が柱61に接合される。
なお、建築用接合金具1dは、固定ピン51が打ち込まれることによって、受け金具2dの固定板21dが、柱61の側面に押圧された状態で固定され(さらに、補強部材23が凹部613と係合する。)、また、連結ピン53が打ち込まれることによって、梁62の端面が柱61の側面に押圧された状態で、接合される。これにより、柱61と梁62とは、密着した状態で接合される。
【0070】
以上説明したように、本実施形態の建築用接合金具1dによれば、第一実施形態の建築用接合金具1とほぼ同様の効果を奏するとともに、補強部材23によって、たとえば、上方からのより大きな荷重に抵抗することができ、接合強度を大幅に向上させることができる。
【0071】
以上、本発明の建築用接合金具について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る建築用接合金具は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、接合される木部材は、柱61と梁62、あるいは、桁63と梁62に限定されるものではなく、たとえば、様々な木部材に適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1、1b、1c、1d 建築用接合金具
2 受け金具
3 固定金具
4 ピン
21 固定板
22 連結板
23 補強部材
31 装入孔
32 貫通孔
51 固定ピン
52 係止用ピン
53 連結ピン
61 柱
62 梁
63 桁
211 固定孔
221 あご掛け
222 ピン用孔
223 連結ピン用孔
231 係合片
232 補強板
611 挿入孔
612 打込孔
613 凹部
621 溝
622 切欠
623 打込孔
631 挿入孔
632 打込孔
2321 貫通孔
2322 係入溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の木部材の側面に他方の木部材の端面を接合するための建築用接合金具において、
前記一方の木部材の側面に固定される固定板、及び、この固定板から突設され、前記他方の木部材に連結される一対の対向した連結板を有し、前記固定板に固定孔が形成され、前記一対の連結板にあご掛け、ピン用孔及び連結ピン用孔が形成された受け金具と、
一方の端部に装入孔が形成され、他方の端部に貫通孔が形成され、前記一方の端部が前記一方の木部材に連結され、前記他方の端部が前記受け金具の固定孔に挿入される筒状又は棒状の固定金具と、
前記一対の対向した連結板どうしの距離と同じ長さを有し、前記固定金具の貫通孔に貫入されるように、前記一対の連結板のピン用孔に圧入され、前記受け金具と前記固定金具とを連結するピンと
を備えたことを特徴とする建築用接合金具。
【請求項2】
前記受け金具が、前記固定板から前記一方の木部材の方向に突出した補強部材を有し、前記補強部材が、前記一方の木部材の側面に形成された凹部と係合することを特徴とする請求項1に記載の建築用接合金具。
【請求項3】
前記補強部材が、前記固定孔と対応して、前記固定板から突設された一対の対向した係合片と、前記係合片と係合し、かつ、前記固定金具が貫通する補強板とを有することを特徴とする請求項2に記載の建築用接合金具。
【請求項4】
前記ピン用孔の一方の木部材側の端が、前記固定板の他方の木部材側の表面より、一方の木部材側に位置することを特徴とする請求項3に記載の建築用接合金具。
【請求項5】
前記一方の木部材の厚さTに対して、該一方の木部材に連結された前記固定金具の前記一方の端部から前記固定板までの長さLが、L<T/2であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の建築用接合金具。
【請求項6】
前記連結板の上部に第一の前記あご掛けを形成し、該第一のあご掛けから下方に向かって所定のピッチPで、一又は二以上の第一の前記連結ピン用孔を形成し、
前記連結板の下部に第二の前記あご掛けを形成し、該第二のあご掛けから上方に向かって前記所定のピッチPで、一又は二以上の第二の前記連結ピン用孔を形成し、
前記建築用接合金具を上下方向に反転させても、前記固定金具どうしが干渉しないことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の建築用接合金具。
【請求項7】
複数の前記固定金具を備え、一つの固定ピンが、前記複数の固定金具の装入孔に装入されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の建築用接合金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−246620(P2012−246620A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117004(P2011−117004)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(595133253)クレテック有限会社 (14)
【Fターム(参考)】