建設機械の制御装置
【課題】電動モータを動力源とする建設機械において、低温での作動時における電動モータの破損を防止しうる建設機械の制御装置を提供する。
【解決手段】電動モータ26の温度を温度センサ33により検出する。電動モータの検出温度が基準温度より低い際に、操作レバー22の操作量に対する吐出流量制御装置46を操作する電磁比例弁47のソレノイド47aへの出力電流を制限する。これにより、電動モータ26の温度が低い際には、電動モータ26の負荷が軽減され、低温での電動モータ26の破損が防止される。
【解決手段】電動モータ26の温度を温度センサ33により検出する。電動モータの検出温度が基準温度より低い際に、操作レバー22の操作量に対する吐出流量制御装置46を操作する電磁比例弁47のソレノイド47aへの出力電流を制限する。これにより、電動モータ26の温度が低い際には、電動モータ26の負荷が軽減され、低温での電動モータ26の破損が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として電動モータを用いた油圧ショベル等の建設機械において、低温による電動モータの破損を防止するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械において、上部旋回体に搭載する動力源として、エンジンを用いたものと、例えば特許文献1に記載のように電動モータを用いたものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−105804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の動力源としてエンジンを用いたものは、冬季等のためにエンジンが低温であると、フロント操作等で高負荷運転した際にエンジンが破損する虞がある。このため、低温時にはスロットルレバー等の回転速度指令手段にてエンジンの回転数を低速度に設定して始動させ、暖機運転を行なっている。
【0005】
一方、動力源としてエンジンの代わりに電動モータを用いた建設機械の場合、電動モータの電源として固定周波数の電源を用いたものにおいては、電動モータを始動すると、電動モータは直ちに定格回転数で回転する。このように定格周波数で駆動される電動モータを低温時に始動すると、フロント操作等により高負荷運転になり易く、電動モータが破損する虞がある。特に低温時には電動モータの軸の靭性が低下するため、低温時に電動モータを高負荷にて定格回転数で駆動すると、軸に作用する捻り力により軸が破損する虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、電動モータを動力源とする建設機械において、低温での作動時における電動モータの破損を防止しうる建設機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建設機械の制御装置は、
油圧ポンプを駆動する電動モータと、前記油圧ポンプから吐出される作動油により作動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給する作動油の方向、流量を制御するコントロール弁と、前記コントロール弁の操作信号を電気信号として発生させる操作装置と、前記電気信号により切換制御されて前記コントロール弁の操作油圧を発生させる電磁比例弁と、前記油圧ポンプの吐出流量制御用電磁比例弁とを備えた建設機械の制御装置において、
前記電動モータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度が予め設定された基準温度より低い際に、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限して前記油圧ポンプの吐出流量を制限する操作信号制限手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の建設機械の制御装置は、請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記操作信号制限手段は、前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流の上限電流値を低く設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3の建設機械の制御装置は、請求項1または2に記載の建設機械の制御装置において、
前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態を長く設定する制限時間設定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の建設機械の制御装置は、請求項1から3までのいずれか1項に記載の建設機械の制御装置において、
前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態であることを報知する警報手段をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、電動モータの検出温度が低い場合には、操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流が低く制限されるため、電動モータの温度が低いときには油圧ポンプの吐出流量が低く抑えられる。その結果、電動モータが低温の際には、電動モータの負荷が低下する。このため、低温時における高負荷による電動モータの破損を防ぐことができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、電動モータの温度が低い程、操作装置の操作量に対する油圧ポンプの吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流に上限電流値を低く設定したので、電動モータの破損を防止する上において、温度状況に対応したより良好な制御が行なわれる。
【0013】
請求項3の発明によれば、電動モータの温度が低い程、操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流を低く制限する時間を長く設定したので、電動モータの破損を防止する上において、温度状況に対応したさらに良好な制御が行なわれる。
【0014】
請求項4の発明によれば、操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流を低く制限した状態であることを報知する警報手段をさらに備えたので、例えばブームやアーム等の操作対象装置が低速で作動した際に警報手段によってオペレータはその低速の理由を知ることができ、オペレータの操作上の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用する建設機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルにおける運転室内の操作装置の配置を示す平面図である。
【図3】図1の油圧ショベルの制御回路の一例を示す油圧電気回路図である。
【図4】本発明の操作レバー、コントローラおよび電磁比例弁等の入出力関係の一実施の形態を示すブロックである。
【図5】この実施の形態の制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
【図6】この実施の形態の制御装置における電動モータの温度と電磁比例弁のソレノイドへの上限電流値との関係の一例を示すグラフである。
【図7】この実施の形態の制御装置における電動モータの温度と電磁比例弁のソレノイドへの電流を制限する時間との関係の一例を示すグラフである。
【図8】この実施の形態の制御装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】この実施の形態の制御装置において電磁比例弁のソレノイドへの電流を制限しない状態での操作態様の一例を示すタイムチャートである。
【図10】この実施の形態の制御装置において電磁比例弁のソレノイドへの電流を制限した状態での操作態様の一例を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の制御装置の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明を適用する建設機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。1は下部走行体であり、この下部走行体1は、トラックフレームを構成する左右のサイドフレーム2の後部に油圧モータでなる走行モータ(図示せず)により駆動される駆動輪3を取付け、サイドフレーム2の前部に従動輪4を取付け、これらの駆動輪3、従動輪4に履帯5を掛け回して構成される。
【0017】
6は下部走行体1上に旋回装置7を介して設置された上部旋回体である。旋回装置7は油圧モータでなる旋回モータ(図示せず)を有する。上部旋回体6には運転室9やパワーユニット10等が搭載される。
【0018】
11は上部旋回体に取付けられた作業装置である。この作業装置11は、上部旋回体6に油圧シリンダでなるブームシリンダ12により起伏可能に取付けられたブーム13と、このブーム13の先端に油圧シリンダでなるアームシリンダ14により上下方向に回動可能に取付けられたアーム15と、このアーム15の先端に油圧シリンダでなるバケットシリンダ16により回動可能に取付けられたローダバケット17とを備える。
【0019】
図2は運転室9に設置する操作装置の配置を示す平面図である。図2において、20はオペレータの座席、21,22はそれぞれ座席20の左側、右側に設置された操作レバー、23,24は運転室9内の前方に設置され、それぞれ下部走行体1の左側走行モータ、右側走行モータを操作する操作レバーである。座席20の左側の操作レバー21は、前後方向の操作によりアーム15をアームシリンダ14によって上下に回動させ、左右方向の操作により旋回装置7の旋回モータによって上部旋回体6を左右に旋回させるものである。座席20の右側の操作レバー22は、前後方向の操作によりブーム13をブームシリンダ12によって俯仰させ、左右方向の操作によりローダバケット17をバケットシリンダ16によって掘削、放土の動作を行なわせるものである。なお、これらの操作レバー21,22の操作方向と操作対象装置は種々に変更可能である。
【0020】
図3はこの油圧ショベルの油圧アクチュエータを駆動する電気油圧回路を示す回路図である。図1に示したパワーユニット10は、電動モータ26により主油圧ポンプ27およびパイロットポンプ28を駆動するものである。電動モータ26は固定周波数の電源により駆動されるものである。12は油圧アクチュエータの代表例として示すブームシリンダであり、29はこのブームシリンダ12のコントロール弁である。なお、この油圧ショベルが鉱石や石炭等の掘削に用いられる場合、電動モータ26を駆動する電源は、掘削現場の複数箇所に準備されており、電動モータ26は、この電源に対し、図1に示す電源ケーブル18を介して接続される。
【0021】
30はコントロール弁29等各種アクチュエータ(下部走行体1の走行モータ、旋回装置7の旋回モータ、ブームシリンダ12、アームシリンダ14、バケットシリンダ16等)用のコントロール弁等を制御するコントローラである。22は図2に示したブームシリンダ12用の操作レバーであり、この操作レバー22は、操作量に対応した電気信号(電圧)を発生させるポテンショメータを用いた電気レバーにより構成される。図2に示した他の操作レバー21,23,24も同様に操作量に対応した電気信号を発生させる電気レバーからなる。
【0022】
31,32はコントロール弁29を切換制御する電磁比例弁である。これらの電磁比例弁31,32は、操作レバー22の操作量に応じてコントローラ30においてPWM制御により発生させた電流がソレノイド31a,32aに加わることにより、その電流に応じた開度に内部流路が開くものである。そしてこの開度に応じたパイロット油圧がコントロール弁29の操作室29a,29bに加わり、コントロール弁29を切換えられると共に、その開度に応じた流量がブームシリンダ12に供給される。したがって、電磁比例弁31,32のソレノイド31a,32aに通電される電流の大小に応じて主油圧ポンプ27の負荷が変化し、電動モータ26の負荷が変化する。33は電動モータ26の温度を検出する温度センサ、34は電動モータ26の回転を検出する回転センサである。
【0023】
46は主油圧ポンプ27の吐出流量制御装置であり、この吐出量制御装置46は傾転角制御装置により構成される。47はこの吐出流量制御装置46を操作して主油圧ポンプ27の吐出流量を制御する電磁比例弁である。この電磁比例弁47は、コントローラ30からソレノイド47aに供給される電流の大小により、パイロットポンプ28から吐出流量制御装置46に加わるパイロット圧を制御することにより、主油圧ポンプ27の吐出流量を制御するものである。48は警報ランプであり、後述のように、電動モータ26が基準温度以下の低温であることを条件として油圧ポンプ27の吐出流量を制限する際に、吐出流量が制限されていることをオペレータに報知するものである。図2に示すように、この警報ランプ48は運転室9内に設置される。
【0024】
図4は本発明の操作レバー、コントローラおよび電磁比例弁等の入出力関係の一実施の形態を示すブロックである。図4に示すように、コントローラ30の入力側には、前記操作レバー21〜24の出力電気信号と、温度センサ33の検出信号と、回転センサ34の検出信号が入力される。コントローラ30の出力側には、ブーム12用の電磁比例弁31,32の外に、旋回用電磁比例弁36,37、アーム用電磁比例弁38,39、バケット用電磁比例弁40,41、左側走行モータの前後進用電磁比例弁42,43、右側走行モータの前後進用電磁比例弁44,45が配置される。これらの電磁比例弁にはそれぞれ対応するコントロール弁(図示せず)が配置される。コントローラ3の出力側には、さらに、吐出流量制御用電磁比例弁47が配置される。
【0025】
図5は本発明の制御装置の一実施の形態を示す機能ブロック図であり、コントローラ30により実現されるものである。図5において、50は電動モータ26の温度に応じて電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流の最大値である上限電流値ILを設定する操作信号制限手段である。
【0026】
図6はこの操作信号制限手段50により制御されるソレノイド駆動回路52を介してソレノイド47a等へ加わる電流Iの上限電流値ILを示す。図6において、最低温度T(MIN)は例えば−20℃、最高温度T(MAX)は例えば0℃に設定される。最高温度T(MAX)が電動モータ26の負荷制限を行なうか否かの基準温度となる。また、最低温度T(MIN)は、その温度以下では上限電流値ILを一定の低い電流値IL(MIN)にする温度である。なお、これらの温度T(MAX)、T(MIN)は建設機械の使用態様等によって変更可能とすることが好ましい。
【0027】
図5に示す制限時間設定手段51は、温度センサ33により検出される電動モータ26の温度TがT<T(MAX)である場合にソレノイド47a等への電流Iを制限する時間taを設定するものである。図7は検出された電動モータ26の温度Tに対してこの制限時間設定手段51により設定される制限時間taの関係の一例を示す。図7に示すように、制限時間taは、電動モータ26の温度Tが低いほど長い時間に設定する。電動モータ26の検出温度Tが最低温度T(MIN)以下の場合、制限時間taの最長時間t(MAX)とする。この最長時間t(MAX)は例えば30分とする。
【0028】
図8はこの実施の形態の制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まずステップ1において、油圧ショベルの運転室に備えられたキースイッチがオンとなることにより、電動モータ26が起動されると、温度センサ33は電動モータ26の温度Tを検出する。また、ステップ2において、コントローラ30は、回転センサ34が電動モータ26の回転を検出したか否かを参照し、回転中であれば、操作信号制限手段50は、電動モータの温度Tからソレノイド47aへの上限電流値ILを算出する(ステップ3)。ここで、電動モータ26の温度Tが設定温度の最高温度T(MAX)以上であれば、上限電流値ILは制限無し(図6においてIL(MAX))である。一方、電動モータ26の温度Tが設定温度の最高温度T(MAX)より低い場合には、温度が低い程、上限電流値ILを低く設定する。
【0029】
そして、操作信号制限手段50は、温度センサ33により検出される電動モータ26の温度Tから上限電流値ILの制限無しとするか否かを判定する(ステップ4)。電動モータ26の温度Tが設定温度の最高温度T(MAX)以上(T≧T(MAX))であれば、上限電流値ILは制限無し(図6においてIL(MAX))とする。すなわち、操作レバー21〜24の操作量に対するソレノイドへの電流Iを制限しない態様で操作を行なう(ステップ5)。
【0030】
このT≧T(MAX)である場合の操作態様を図9のタイムチャートに示す。図9は操作レバー22のブーム上げ、下げの最大操作量に対し、電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流Iが最大値まで達していることを示す。なお、図9において、3段目に表示するブーム操作レバー入力信号とは、操作レバー22の操作によりコントローラ30に加えられる直流電圧の変化を示しており、例えば中央値が3V、最大が4.5V、最小が0.5Vである。コントローラ30は、ブーム操作レバー22のコントローラ30への電圧が4.5Vまたは0.5Vであれば電磁弁出力信号(ソレノイド47aへの電流)はIL(MAX)となり、3Vであれば、電磁弁出力信号(ソレノイド47aへの電流)はゼロとなる。
【0031】
一方、T<T(MAX)であって、上限電流値ILが制限有りの場合には、ソレノイド47aへの電流が上限電流値IL(IL<IL(MAX))を超えないように制御を行なうと共に、警報手段である警報ランプ48を点灯させ、オペレータに出力制限中であることを知らせる(ステップ6)。この出力制限有りの状態での操作態様を図10のタイムチャートに示す。図10から分かるように、操作レバー22を最大操作量に操作しても、出力制限有りの状態でのソレノイド47aへの出力電流は、上限電流値IL(MAX)より小さい値に制限される。このため、操作レバー22を最大に操作しても、電磁比例弁47の流路は開口面積が最高開口度より小さく制限される。このため、操作レバー22を最大操作量に操作しても、主油圧ポンプ27の吐出流量が制限され、電動モータ26の負荷が低減される。
【0032】
前記出力制限有り(IL<IL(MAX))の状態での制御開始と同時に、図5に示す制限時間設定手段51は、図7に示した相関関係を持って、電動モータ26の温度Tに対応する制限時間taを算出する(ステップ7)。そして、この出力制限の状態で運転を継続する(ステップ8、9)。このような運転状態が制限時間taを経過すると、警報ランプ48を消灯する(ステップ10)。そして出力制限無しの制御態様に移行する(ステップ5)。
【0033】
この実施の形態によれば、電動モータ26の温度Tを検出し、検出温度が予め設定された温度T(MAX)より低い場合には、操作レバー21〜24の操作量に対する出力電気信号、すなわち吐出流量制御装置46を制御する電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流が低い値に制限されるようにしたので、電動モータ26の温度Tが低い場合には、主油圧ポンプ27の吐出流量が抑制される。その結果、電動モータ26の温度Tが低い場合には、電動モータ26の負荷が低下する。このため、低温時における高負荷による電動モータ26の破損を防ぐことができる。
【0034】
また、この実施の形態においては、電動モータ26の温度Tが低い程、操作レバー21〜24の操作量に対する電磁比例弁47のソレノイド47aへの上限電流値ILを低く設定したので、電動モータの破損を防止する上において、温度状況に対応したより良好な制御が行なわれる。
【0035】
また、この実施の形態においては、電動モータ26の温度Tが低い程、操作レバー21〜24の操作量に対する電磁比例弁47のソレノイド47aへの上限電流値ILを低くする制限時間taを長く設定したので、電動モータ26の破損を防止する上において、温度状況に対応したさらに良好な制御が行なわれる。
【0036】
また、操作レバー21〜24の操作量に対する出力電気信号を低く抑制した状態であることを報知する警報ランプ48等の警報手段を備えたので、オペレータが操作レバー21〜24を操作した際に操作対象装置(ブーム12、アーム15、バケット17等)が低速で作動した際に、その理由をオペレータが知ることができ、オペレータの操作上の信頼性を高めることができる。
【0037】
図11は本発明の制御装置の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。この実施の形態においては、図7に示した電動モータ26の温度センサ33による検出温度Tと予め設定された基準温度T(MAX)とを比較し、T<T(MAX)である間は電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流の最大値を抑制した前記負荷軽減状態での運転を継続し、警報ランプ48による警報を発し、T≧T(MAX)になると通常の負荷制限の無い状態での運転を行なうと共に、警報発生を停止するようにしたものである。このような制御を行なえば、電動モータ26の温度に対応したより好適な時間制御が行なえる。
【0038】
なお、図5、図11に示した実施の形態においては、制限時間ta内の間は、最初に検出した電動モータ26の温度によって上限電流値ILを固定した値に設定したが、この上限電流値ILは電動モータ26の検出温度Tの上昇に伴って増大させるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施の形態においては、建設機械がローダバケットを用いた油圧ショベルである場合について示したが、本発明はバックホウバケットを用いた油圧ショベルや油圧ショベル以外の他の建設機械にも適用できる。また、出力制限状態での運転状態を報知する警報手段としてはランプ以外に音響装置や画面を用いた表示装置等を用いることも可能である。
【0040】
また、電磁比例弁47と吐出流量制御装置46との間に油圧操作のパイロット弁を介在させた2段構成のパイロット弁構成にしてもよい。また、油圧アクチュエータの操作装置として操作レバーのみを示したが、ペダルを操作装置として用いる場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:下部走行体、2:サイドフレーム、3:駆動輪、4:従動輪、5:履帯、6:上部旋回体、7:旋回装置、9:運転室、10:パワーユニット、11:作業装置、12:ブームシリンダ、13:ブーム、14:アームシリンダ、15:アーム、16:バケットシリンダ、17:ローダバケット、18:電源ケーブル、21〜24:操作レバー、26:電動モータ、27:主油圧ポンプ、28:パイロットポンプ、29:コントロール弁、30:コントローラ、31,32,36〜45:電磁比例弁、31a,32a:ソレノイド、33:温度センサ、34:回転センサ、46:吐出流量制御装置、47:吐出流量制御用電磁比例弁、47a:ソレノイド、48:警報ランプ
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源として電動モータを用いた油圧ショベル等の建設機械において、低温による電動モータの破損を防止するための制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械において、上部旋回体に搭載する動力源として、エンジンを用いたものと、例えば特許文献1に記載のように電動モータを用いたものとがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−105804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建設機械の動力源としてエンジンを用いたものは、冬季等のためにエンジンが低温であると、フロント操作等で高負荷運転した際にエンジンが破損する虞がある。このため、低温時にはスロットルレバー等の回転速度指令手段にてエンジンの回転数を低速度に設定して始動させ、暖機運転を行なっている。
【0005】
一方、動力源としてエンジンの代わりに電動モータを用いた建設機械の場合、電動モータの電源として固定周波数の電源を用いたものにおいては、電動モータを始動すると、電動モータは直ちに定格回転数で回転する。このように定格周波数で駆動される電動モータを低温時に始動すると、フロント操作等により高負荷運転になり易く、電動モータが破損する虞がある。特に低温時には電動モータの軸の靭性が低下するため、低温時に電動モータを高負荷にて定格回転数で駆動すると、軸に作用する捻り力により軸が破損する虞がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑み、電動モータを動力源とする建設機械において、低温での作動時における電動モータの破損を防止しうる建設機械の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の建設機械の制御装置は、
油圧ポンプを駆動する電動モータと、前記油圧ポンプから吐出される作動油により作動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給する作動油の方向、流量を制御するコントロール弁と、前記コントロール弁の操作信号を電気信号として発生させる操作装置と、前記電気信号により切換制御されて前記コントロール弁の操作油圧を発生させる電磁比例弁と、前記油圧ポンプの吐出流量制御用電磁比例弁とを備えた建設機械の制御装置において、
前記電動モータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度が予め設定された基準温度より低い際に、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限して前記油圧ポンプの吐出流量を制限する操作信号制限手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の建設機械の制御装置は、請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記操作信号制限手段は、前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流の上限電流値を低く設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3の建設機械の制御装置は、請求項1または2に記載の建設機械の制御装置において、
前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態を長く設定する制限時間設定手段をさらに備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項4の建設機械の制御装置は、請求項1から3までのいずれか1項に記載の建設機械の制御装置において、
前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態であることを報知する警報手段をさらに備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、電動モータの検出温度が低い場合には、操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流が低く制限されるため、電動モータの温度が低いときには油圧ポンプの吐出流量が低く抑えられる。その結果、電動モータが低温の際には、電動モータの負荷が低下する。このため、低温時における高負荷による電動モータの破損を防ぐことができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、電動モータの温度が低い程、操作装置の操作量に対する油圧ポンプの吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流に上限電流値を低く設定したので、電動モータの破損を防止する上において、温度状況に対応したより良好な制御が行なわれる。
【0013】
請求項3の発明によれば、電動モータの温度が低い程、操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流を低く制限する時間を長く設定したので、電動モータの破損を防止する上において、温度状況に対応したさらに良好な制御が行なわれる。
【0014】
請求項4の発明によれば、操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの電流を低く制限した状態であることを報知する警報手段をさらに備えたので、例えばブームやアーム等の操作対象装置が低速で作動した際に警報手段によってオペレータはその低速の理由を知ることができ、オペレータの操作上の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用する建設機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1の油圧ショベルにおける運転室内の操作装置の配置を示す平面図である。
【図3】図1の油圧ショベルの制御回路の一例を示す油圧電気回路図である。
【図4】本発明の操作レバー、コントローラおよび電磁比例弁等の入出力関係の一実施の形態を示すブロックである。
【図5】この実施の形態の制御装置の一例を示す機能ブロック図である。
【図6】この実施の形態の制御装置における電動モータの温度と電磁比例弁のソレノイドへの上限電流値との関係の一例を示すグラフである。
【図7】この実施の形態の制御装置における電動モータの温度と電磁比例弁のソレノイドへの電流を制限する時間との関係の一例を示すグラフである。
【図8】この実施の形態の制御装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図9】この実施の形態の制御装置において電磁比例弁のソレノイドへの電流を制限しない状態での操作態様の一例を示すタイムチャートである。
【図10】この実施の形態の制御装置において電磁比例弁のソレノイドへの電流を制限した状態での操作態様の一例を示すタイムチャートである。
【図11】本発明の制御装置の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明を適用する建設機械の一例である油圧ショベルを示す側面図である。1は下部走行体であり、この下部走行体1は、トラックフレームを構成する左右のサイドフレーム2の後部に油圧モータでなる走行モータ(図示せず)により駆動される駆動輪3を取付け、サイドフレーム2の前部に従動輪4を取付け、これらの駆動輪3、従動輪4に履帯5を掛け回して構成される。
【0017】
6は下部走行体1上に旋回装置7を介して設置された上部旋回体である。旋回装置7は油圧モータでなる旋回モータ(図示せず)を有する。上部旋回体6には運転室9やパワーユニット10等が搭載される。
【0018】
11は上部旋回体に取付けられた作業装置である。この作業装置11は、上部旋回体6に油圧シリンダでなるブームシリンダ12により起伏可能に取付けられたブーム13と、このブーム13の先端に油圧シリンダでなるアームシリンダ14により上下方向に回動可能に取付けられたアーム15と、このアーム15の先端に油圧シリンダでなるバケットシリンダ16により回動可能に取付けられたローダバケット17とを備える。
【0019】
図2は運転室9に設置する操作装置の配置を示す平面図である。図2において、20はオペレータの座席、21,22はそれぞれ座席20の左側、右側に設置された操作レバー、23,24は運転室9内の前方に設置され、それぞれ下部走行体1の左側走行モータ、右側走行モータを操作する操作レバーである。座席20の左側の操作レバー21は、前後方向の操作によりアーム15をアームシリンダ14によって上下に回動させ、左右方向の操作により旋回装置7の旋回モータによって上部旋回体6を左右に旋回させるものである。座席20の右側の操作レバー22は、前後方向の操作によりブーム13をブームシリンダ12によって俯仰させ、左右方向の操作によりローダバケット17をバケットシリンダ16によって掘削、放土の動作を行なわせるものである。なお、これらの操作レバー21,22の操作方向と操作対象装置は種々に変更可能である。
【0020】
図3はこの油圧ショベルの油圧アクチュエータを駆動する電気油圧回路を示す回路図である。図1に示したパワーユニット10は、電動モータ26により主油圧ポンプ27およびパイロットポンプ28を駆動するものである。電動モータ26は固定周波数の電源により駆動されるものである。12は油圧アクチュエータの代表例として示すブームシリンダであり、29はこのブームシリンダ12のコントロール弁である。なお、この油圧ショベルが鉱石や石炭等の掘削に用いられる場合、電動モータ26を駆動する電源は、掘削現場の複数箇所に準備されており、電動モータ26は、この電源に対し、図1に示す電源ケーブル18を介して接続される。
【0021】
30はコントロール弁29等各種アクチュエータ(下部走行体1の走行モータ、旋回装置7の旋回モータ、ブームシリンダ12、アームシリンダ14、バケットシリンダ16等)用のコントロール弁等を制御するコントローラである。22は図2に示したブームシリンダ12用の操作レバーであり、この操作レバー22は、操作量に対応した電気信号(電圧)を発生させるポテンショメータを用いた電気レバーにより構成される。図2に示した他の操作レバー21,23,24も同様に操作量に対応した電気信号を発生させる電気レバーからなる。
【0022】
31,32はコントロール弁29を切換制御する電磁比例弁である。これらの電磁比例弁31,32は、操作レバー22の操作量に応じてコントローラ30においてPWM制御により発生させた電流がソレノイド31a,32aに加わることにより、その電流に応じた開度に内部流路が開くものである。そしてこの開度に応じたパイロット油圧がコントロール弁29の操作室29a,29bに加わり、コントロール弁29を切換えられると共に、その開度に応じた流量がブームシリンダ12に供給される。したがって、電磁比例弁31,32のソレノイド31a,32aに通電される電流の大小に応じて主油圧ポンプ27の負荷が変化し、電動モータ26の負荷が変化する。33は電動モータ26の温度を検出する温度センサ、34は電動モータ26の回転を検出する回転センサである。
【0023】
46は主油圧ポンプ27の吐出流量制御装置であり、この吐出量制御装置46は傾転角制御装置により構成される。47はこの吐出流量制御装置46を操作して主油圧ポンプ27の吐出流量を制御する電磁比例弁である。この電磁比例弁47は、コントローラ30からソレノイド47aに供給される電流の大小により、パイロットポンプ28から吐出流量制御装置46に加わるパイロット圧を制御することにより、主油圧ポンプ27の吐出流量を制御するものである。48は警報ランプであり、後述のように、電動モータ26が基準温度以下の低温であることを条件として油圧ポンプ27の吐出流量を制限する際に、吐出流量が制限されていることをオペレータに報知するものである。図2に示すように、この警報ランプ48は運転室9内に設置される。
【0024】
図4は本発明の操作レバー、コントローラおよび電磁比例弁等の入出力関係の一実施の形態を示すブロックである。図4に示すように、コントローラ30の入力側には、前記操作レバー21〜24の出力電気信号と、温度センサ33の検出信号と、回転センサ34の検出信号が入力される。コントローラ30の出力側には、ブーム12用の電磁比例弁31,32の外に、旋回用電磁比例弁36,37、アーム用電磁比例弁38,39、バケット用電磁比例弁40,41、左側走行モータの前後進用電磁比例弁42,43、右側走行モータの前後進用電磁比例弁44,45が配置される。これらの電磁比例弁にはそれぞれ対応するコントロール弁(図示せず)が配置される。コントローラ3の出力側には、さらに、吐出流量制御用電磁比例弁47が配置される。
【0025】
図5は本発明の制御装置の一実施の形態を示す機能ブロック図であり、コントローラ30により実現されるものである。図5において、50は電動モータ26の温度に応じて電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流の最大値である上限電流値ILを設定する操作信号制限手段である。
【0026】
図6はこの操作信号制限手段50により制御されるソレノイド駆動回路52を介してソレノイド47a等へ加わる電流Iの上限電流値ILを示す。図6において、最低温度T(MIN)は例えば−20℃、最高温度T(MAX)は例えば0℃に設定される。最高温度T(MAX)が電動モータ26の負荷制限を行なうか否かの基準温度となる。また、最低温度T(MIN)は、その温度以下では上限電流値ILを一定の低い電流値IL(MIN)にする温度である。なお、これらの温度T(MAX)、T(MIN)は建設機械の使用態様等によって変更可能とすることが好ましい。
【0027】
図5に示す制限時間設定手段51は、温度センサ33により検出される電動モータ26の温度TがT<T(MAX)である場合にソレノイド47a等への電流Iを制限する時間taを設定するものである。図7は検出された電動モータ26の温度Tに対してこの制限時間設定手段51により設定される制限時間taの関係の一例を示す。図7に示すように、制限時間taは、電動モータ26の温度Tが低いほど長い時間に設定する。電動モータ26の検出温度Tが最低温度T(MIN)以下の場合、制限時間taの最長時間t(MAX)とする。この最長時間t(MAX)は例えば30分とする。
【0028】
図8はこの実施の形態の制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。まずステップ1において、油圧ショベルの運転室に備えられたキースイッチがオンとなることにより、電動モータ26が起動されると、温度センサ33は電動モータ26の温度Tを検出する。また、ステップ2において、コントローラ30は、回転センサ34が電動モータ26の回転を検出したか否かを参照し、回転中であれば、操作信号制限手段50は、電動モータの温度Tからソレノイド47aへの上限電流値ILを算出する(ステップ3)。ここで、電動モータ26の温度Tが設定温度の最高温度T(MAX)以上であれば、上限電流値ILは制限無し(図6においてIL(MAX))である。一方、電動モータ26の温度Tが設定温度の最高温度T(MAX)より低い場合には、温度が低い程、上限電流値ILを低く設定する。
【0029】
そして、操作信号制限手段50は、温度センサ33により検出される電動モータ26の温度Tから上限電流値ILの制限無しとするか否かを判定する(ステップ4)。電動モータ26の温度Tが設定温度の最高温度T(MAX)以上(T≧T(MAX))であれば、上限電流値ILは制限無し(図6においてIL(MAX))とする。すなわち、操作レバー21〜24の操作量に対するソレノイドへの電流Iを制限しない態様で操作を行なう(ステップ5)。
【0030】
このT≧T(MAX)である場合の操作態様を図9のタイムチャートに示す。図9は操作レバー22のブーム上げ、下げの最大操作量に対し、電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流Iが最大値まで達していることを示す。なお、図9において、3段目に表示するブーム操作レバー入力信号とは、操作レバー22の操作によりコントローラ30に加えられる直流電圧の変化を示しており、例えば中央値が3V、最大が4.5V、最小が0.5Vである。コントローラ30は、ブーム操作レバー22のコントローラ30への電圧が4.5Vまたは0.5Vであれば電磁弁出力信号(ソレノイド47aへの電流)はIL(MAX)となり、3Vであれば、電磁弁出力信号(ソレノイド47aへの電流)はゼロとなる。
【0031】
一方、T<T(MAX)であって、上限電流値ILが制限有りの場合には、ソレノイド47aへの電流が上限電流値IL(IL<IL(MAX))を超えないように制御を行なうと共に、警報手段である警報ランプ48を点灯させ、オペレータに出力制限中であることを知らせる(ステップ6)。この出力制限有りの状態での操作態様を図10のタイムチャートに示す。図10から分かるように、操作レバー22を最大操作量に操作しても、出力制限有りの状態でのソレノイド47aへの出力電流は、上限電流値IL(MAX)より小さい値に制限される。このため、操作レバー22を最大に操作しても、電磁比例弁47の流路は開口面積が最高開口度より小さく制限される。このため、操作レバー22を最大操作量に操作しても、主油圧ポンプ27の吐出流量が制限され、電動モータ26の負荷が低減される。
【0032】
前記出力制限有り(IL<IL(MAX))の状態での制御開始と同時に、図5に示す制限時間設定手段51は、図7に示した相関関係を持って、電動モータ26の温度Tに対応する制限時間taを算出する(ステップ7)。そして、この出力制限の状態で運転を継続する(ステップ8、9)。このような運転状態が制限時間taを経過すると、警報ランプ48を消灯する(ステップ10)。そして出力制限無しの制御態様に移行する(ステップ5)。
【0033】
この実施の形態によれば、電動モータ26の温度Tを検出し、検出温度が予め設定された温度T(MAX)より低い場合には、操作レバー21〜24の操作量に対する出力電気信号、すなわち吐出流量制御装置46を制御する電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流が低い値に制限されるようにしたので、電動モータ26の温度Tが低い場合には、主油圧ポンプ27の吐出流量が抑制される。その結果、電動モータ26の温度Tが低い場合には、電動モータ26の負荷が低下する。このため、低温時における高負荷による電動モータ26の破損を防ぐことができる。
【0034】
また、この実施の形態においては、電動モータ26の温度Tが低い程、操作レバー21〜24の操作量に対する電磁比例弁47のソレノイド47aへの上限電流値ILを低く設定したので、電動モータの破損を防止する上において、温度状況に対応したより良好な制御が行なわれる。
【0035】
また、この実施の形態においては、電動モータ26の温度Tが低い程、操作レバー21〜24の操作量に対する電磁比例弁47のソレノイド47aへの上限電流値ILを低くする制限時間taを長く設定したので、電動モータ26の破損を防止する上において、温度状況に対応したさらに良好な制御が行なわれる。
【0036】
また、操作レバー21〜24の操作量に対する出力電気信号を低く抑制した状態であることを報知する警報ランプ48等の警報手段を備えたので、オペレータが操作レバー21〜24を操作した際に操作対象装置(ブーム12、アーム15、バケット17等)が低速で作動した際に、その理由をオペレータが知ることができ、オペレータの操作上の信頼性を高めることができる。
【0037】
図11は本発明の制御装置の他の実施の形態を示す機能ブロック図である。この実施の形態においては、図7に示した電動モータ26の温度センサ33による検出温度Tと予め設定された基準温度T(MAX)とを比較し、T<T(MAX)である間は電磁比例弁47のソレノイド47aへの電流の最大値を抑制した前記負荷軽減状態での運転を継続し、警報ランプ48による警報を発し、T≧T(MAX)になると通常の負荷制限の無い状態での運転を行なうと共に、警報発生を停止するようにしたものである。このような制御を行なえば、電動モータ26の温度に対応したより好適な時間制御が行なえる。
【0038】
なお、図5、図11に示した実施の形態においては、制限時間ta内の間は、最初に検出した電動モータ26の温度によって上限電流値ILを固定した値に設定したが、この上限電流値ILは電動モータ26の検出温度Tの上昇に伴って増大させるようにしてもよい。
【0039】
また、上記実施の形態においては、建設機械がローダバケットを用いた油圧ショベルである場合について示したが、本発明はバックホウバケットを用いた油圧ショベルや油圧ショベル以外の他の建設機械にも適用できる。また、出力制限状態での運転状態を報知する警報手段としてはランプ以外に音響装置や画面を用いた表示装置等を用いることも可能である。
【0040】
また、電磁比例弁47と吐出流量制御装置46との間に油圧操作のパイロット弁を介在させた2段構成のパイロット弁構成にしてもよい。また、油圧アクチュエータの操作装置として操作レバーのみを示したが、ペダルを操作装置として用いる場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1:下部走行体、2:サイドフレーム、3:駆動輪、4:従動輪、5:履帯、6:上部旋回体、7:旋回装置、9:運転室、10:パワーユニット、11:作業装置、12:ブームシリンダ、13:ブーム、14:アームシリンダ、15:アーム、16:バケットシリンダ、17:ローダバケット、18:電源ケーブル、21〜24:操作レバー、26:電動モータ、27:主油圧ポンプ、28:パイロットポンプ、29:コントロール弁、30:コントローラ、31,32,36〜45:電磁比例弁、31a,32a:ソレノイド、33:温度センサ、34:回転センサ、46:吐出流量制御装置、47:吐出流量制御用電磁比例弁、47a:ソレノイド、48:警報ランプ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプを駆動する電動モータと、前記油圧ポンプから吐出される作動油により作動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給する作動油の方向、流量を制御するコントロール弁と、前記コントロール弁の操作信号を電気信号として発生させる操作装置と、前記電気信号により切換制御されて前記コントロール弁の操作油圧を発生させる電磁比例弁と、前記油圧ポンプの吐出流量制御用電磁比例弁とを備えた建設機械の制御装置において、
前記電動モータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度が予め設定された基準温度より低い際に、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限して前記油圧ポンプの吐出流量を制限する操作信号制限手段とを備えたことを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記操作信号制限手段は、前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流の上限電流値を低く設定することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の制御装置において、
前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態を長く設定する制限時間設定手段をさらに備えたことを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の建設機械の制御装置において、
前記吐出流量制御装置操作用の電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態であることを報知する警報手段をさらに備えたことを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項1】
油圧ポンプを駆動する電動モータと、前記油圧ポンプから吐出される作動油により作動する油圧アクチュエータと、前記油圧アクチュエータに供給する作動油の方向、流量を制御するコントロール弁と、前記コントロール弁の操作信号を電気信号として発生させる操作装置と、前記電気信号により切換制御されて前記コントロール弁の操作油圧を発生させる電磁比例弁と、前記油圧ポンプの吐出流量制御用電磁比例弁とを備えた建設機械の制御装置において、
前記電動モータの温度を検出する温度センサと、
前記温度センサの検出温度が予め設定された基準温度より低い際に、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限して前記油圧ポンプの吐出流量を制限する操作信号制限手段とを備えたことを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の制御装置において、
前記操作信号制限手段は、前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流の上限電流値を低く設定することを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械の制御装置において、
前記電動モータの検出温度が低い程、前記操作装置の操作量に対する前記吐出流量制御用電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態を長く設定する制限時間設定手段をさらに備えたことを特徴とする建設機械の制御装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の建設機械の制御装置において、
前記吐出流量制御装置操作用の電磁比例弁のソレノイドへの出力電流を制限した状態であることを報知する警報手段をさらに備えたことを特徴とする建設機械の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−162940(P2012−162940A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25045(P2011−25045)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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