説明

強制風冷式半導体冷却装置

【課題】冷却ファンによる冷却風を効率良く利用し、冷却性能を向上した小型半導体冷却
装置を提供することである。
【解決手段】冷却風通流長に対し広い冷却風幅を有する第1の冷却器4と第1の冷却器4より狭い冷却風幅を有する第2の冷却器5は冷却風向が同一でかつ相互に熱交換のないよう配置され、インバータ回路の半導体素子7、8、9は第1の冷却器4に取り付けられ、ブレーキチョッパ回路の半導体素子10を第2の冷却器5に取り付けられる。冷却器の冷却風向に対し直角の冷却風向を有する冷却ファン6による冷却風は、整風ガイド3を有する風洞2を介して第1の冷却器4と第2の冷却器5へ分配され、各半導体との熱交換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両の屋根上や床下に設置される電力変換装置内の強制風冷式半導体冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の電力変換装置は、半導体素子から発生する熱を大気へ放散し、半導体素子の温度上昇を抑えるための冷却装置が必要になる。路面電車や新交通車両の場合は、走行風を利用せず冷却ファンを用いて強制的に送風冷却を行う強制風冷方式が採用されているのが一般的である。
【0003】
従来の強制風冷式電力変換装置の半導体冷却装置の構造は、一般的に図3、図4と図5に示されるような方式がある。図3は、冷却ファンによる冷却風は冷却風向に対し幅の狭い冷却器に流れて熱交換を行う冷却方式であり、図4と図5は、冷却ファンによる冷却風は冷却風向に対し幅の広い冷却器に流れて熱交換を行う冷却方式である。
【0004】
図3(a)と図3(b)に示すのは、冷却風向に対し幅の狭い冷却器を用いた半導体冷却装置である。この冷却方式により、冷却ファンによる冷却風は直接に冷却器に流れるため、冷却器と冷却ファン間には整流風洞を設ける必要はなく、簡潔な冷却構造が実現できる冷却方式である。電力変換装置の冷却構造設計が比較的簡単となる構造のため、採用されることの多い方法である。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
図4(a)と図4(b)に示すのは、冷却風向に対し幅の広い冷却器を用いた半導体冷却装置(一)である。図3に示す冷却方式は、複数の冷却ファンを使用し、冷却器に冷却風を直接に吹き出すことにより、冷却器と冷却ファン間に整流風洞を設ける必要はない方式である。
【0006】
図5(a)と図5(b)に示すのは、冷却風向に対し幅の広い冷却器を用いた半導体冷却装置(二)である。図4に示す冷却方式は、少数の冷却ファンを使用し、整流風洞を介して冷却器に冷却風を吹き出す冷却方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−023768号公報(第6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
鉄道車両の電力変換器は力行での電力変換を行うのみではなく、省エネや保守低減への配慮から、ブレーキ時に運動エネルギーを電力に変換して架線へ回生する電気制動(回生制動)を極力使用し、回生失効の時にもブレーキ抵抗に電力を消費させて電気制動(発電制動)を行う等が行われるため、電力変換装置の発熱は増加している。更に、モータの大容量化に伴い、電力変換装置の容量は増加し、発熱は更に増加している。その一方、電力変換装置の小型化・軽量化も要求されている。
【0009】
図3に示すような従来の冷却方式の場合は、各半導体の放熱により、冷却器は冷却風の吸気側から排気側に向かって温度が徐々に上昇する温度勾配が発生し、排気側に近い半導体の温度は吸気側に近い半導体より高くなる。冷却器の冷却風向長が延びるほど温度勾配が大きくなり、冷却器の熱容量を十分に生かせず冷却効率の悪いものとなる。無論冷却器性能は最も冷却条件の悪い排気側に配置される半導体の温度で決まるため、冷却器の形状は大きくなり、冷却装置の小型化、軽量化、コストに不利になる。しかも、冷却風向に対し幅の広い冷却器と比較して、同外形では温度勾配の問題によって、処理発熱量に対する温度上昇比(熱抵抗)が大きくなるため、半導体の温度上昇の抑制能力は低いものとなる。
【0010】
図4と図5に示すような従来の冷却方式の場合は、冷却器の温度勾配は小さく、同外形では各半導体の温度上昇はほぼ同じになるため、冷却器の外形形状は小さく抑えられ、冷却器の小型化、軽量化に非常に有利になる。しかも、冷却風向に対し幅の狭い冷却器と比較して、同外形と同一の冷却風条件では、熱抵抗が小さくなるため、半導体の温度上昇の抑制能力は高いものとなる。
【0011】
一方、図4に示すような冷却方式においては、複数の冷却ファンを使用する場合は、整流風洞を使用せず直接に冷却器に冷却風を吹き出す構造になるが、冷却ファンの数が多いため、コスト・騒音の低減は難しく、冷却風を効率良く利用することもできない。また、一個の冷却ファンが止まった場合、冷却ファンが停止した部位にある半導体の温度上昇が冷却ファンの健全な部位のそれに対して高くなるため、温度上昇が異常に高くなることにより電力変換装置を停止しなくてはならない可能性を生じる。
【0012】
図5に示すような冷却方式においては、少数の冷却ファンを使用して整流風洞を介して冷却風を吹き出す場合は、冷却風を効率良く利用することができるが、整流風洞等の冷却装置の形状が大幅に増大するため、電力変換装置の小型化には非常に不利になる。
【0013】
本発明は、上記状況に対処するためになされたもので、その課題は、冷却性能を高め、冷却装置を小型化にすることにより電力変換装置の小型化、軽量化を可能とする半導体冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1の発明によれば、鉄道車両の床下装置に取り付けられる電力変換装置において、冷却通風面に対し広い冷却風幅を有する第1の冷却器と、該第1の冷却器より狭い冷却風幅を有する第2の冷却器とを当該冷却器の各々の冷却風向が同一かつ相互に熱交換がないように併設収納する第1の風洞と、該冷却風向に対し直角の冷却風向を有する冷却ファンと、該冷却ファンの冷却風を前記第1の冷却器と前記第2の冷却器とに通風分配する整風ガイドを具備する第2の風洞を配設して成ることを特徴とする。
【0015】
すなわち、冷却風通流長に対し広い冷却風幅を有する第1の冷却器と、当該冷却器より狭い冷却風幅を有する第2の冷却器と、これら冷却器は冷却風向が同一でかつ相互に熱交換のないよう配置され、冷却器の冷却風向に対し直角の冷却風向を有する冷却ファンと、当該冷却ファンの冷却風を冷却器に集約する風洞と、当該風洞内に第1の冷却器と第2の冷却器への冷却風を分配する整風ガイドを有することを特徴とする。
【0016】
また、整風ガイドを有する風洞を介して、冷却ファンによる冷却風を分配することにより第1の冷却器と第2の冷却器に半導体の温度上昇を抑制する必要な風量を提供し半導体素子の冷却を行う。
【0017】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明において、前記冷却ファンの代わりに、前記当該冷却器の各々の冷却風向に対し逆方向の冷却風向を有する冷却ファンとごみ止めとを具備する第3の風洞を配設し、該第3の風洞の入風面と前記第1の風洞の排風面とが互いの通風状態に影響がないずれた位置にあることを特徴とする。
【0018】
すなわち、鉄道車両の床下に取り付けられる強制風冷式半導体冷却装置において、請求項1に記載の第1の冷却器と、請求項1に記載の第2の冷却器と、これら冷却器は冷却風向が車両の床面に対し垂直するようかつ相互に熱交換のないよう配置され、車両の床面に対し直角の冷却風向を有する冷却ファンと、当該冷却ファンの冷却風を冷却器に集約する風洞と、前記冷却ファンを内蔵する風洞と、当該風洞は冷却風向が床面に垂直となるよう配置され、当該風洞の吸気部は前記第1の冷却器および第2の冷却器の排風部よりも下に位置し、当該風洞内にごみ止めを設けることを特徴とする。
【0019】
また、整風ガイドを有する風洞を介して、冷却ファンによる冷却風を分配することにより、第1の冷却器と第2の冷却器に半導体の温度上昇を抑制する必要な風量を提供し半導体素子との熱交換を行う。前記冷却ファンはごみ止めを有する風洞に内蔵され、前記風洞は冷却風向が床面に垂直するよう配置されることにより、冷却ファンのメンテナンス性の向上が図る。
【発明の効果】
【0020】
本発明の強制風冷式半導体冷却装置によれば、冷却ファンによる冷却風を効率よく利用することが図れ、半導体の温度上昇の抑制、半導体冷却装置の小型化、軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)本願の第1実施の形態に係わる半導体冷却装置を示す斜視図である。 (b)本願の第1実施の形態に係わる半導体冷却装置を示す上視図である。
【図2】(a)本願の第2実施の形態に係わる半導体冷却装置を示す斜視図である。 (b)本願の第2実施の形態に係わる半導体冷却装置を示す正視図である。
【図3】(a)従来の冷却風向に対し幅の狭い冷却器を用いた半導体冷却装置を示す 斜視図である。 (b)従来の冷却風向に対し幅の狭い冷却器を用いた半導体冷却装置を示す 上視図である。
【図4】(a)従来の冷却風向に対し幅の広い冷却器を用いた半導体冷却装置(一) を示す斜視図である。 (b)従来の冷却風向に対し幅の広い冷却器を用いた半導体冷却装置(一) を示す上視図である。
【図5】(a)従来の冷却風向に対し幅の広い冷却器を用いた半導体冷却装置(二) を示す斜視図である。 (b)従来の冷却風向に対し幅の広い冷却器を用いた半導体冷却装置(二) を示す上視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1(a)に本発明の第1実施の形態に係わる半導体冷却装置の斜視図を示し、図1(b)に半導体冷却装置上視図を示す。
【実施例1】
【0023】
図1の示すように、本実施形態の半導体冷却装置では、第1の冷却器4と第2の冷却器5は冷却風向が同一でかつ相互に熱交換のないよう配置され、第1の風洞1に収納されている。そして、冷却器の冷却風向に対し直角の冷却風向を有する冷却ファン6と整風ガイド3を有する整流風洞の第2の風洞2が構成されている。ここで第2の風洞2を形成する一部の面は内部を斜視するために図示していない。
【0024】
次に、本実施の形態の作用を説明する。冷却風通流長に対し広い冷却風幅を有する第1の冷却器4にインバータ回路の半導体素子7、8、9を取り付け、第2の冷却器5にブレーキチョッパ回路の半導体素子10を取り付ける。整風ガイド3を有する第2の風洞2を介して、冷却器の冷却風向に対し直角の冷却風向を有する冷却ファン6による冷却風を第1の冷却器4と第2の冷却器5へ分配し、各半導体素子の冷却を行う。
【0025】
冷却器の熱抵抗、熱時定数(冷却器の温度上昇が処理発熱量に対する温度上昇の約63.2%まで達成する所要時間)は冷却風量と反比例関係にする特性がある。力行及びブレーキ時に動作させられるインバータ回路の半導体素子7、8、9の発熱量は多いため、整風ガイド3を有する整流風洞の第2の風洞2を介して、冷却器の熱抵抗を低下させるようインバータ回路の半導体素子7、8、9を冷却する第1の冷却器4への冷却風量を分配することにより、冷却器の性能を向上させ、半導体素子温度上昇の抑制が図れ、冷却器形状の抑制も図れる。
【0026】
回生失効の時に動作させられるブレーキチョッパ回路の半導体素子10の発熱量は少ないため、整風ガイド3を有する整流風洞の第2の風洞2を介して、第2の冷却器5の熱時定数を高め、熱時定数とほぼ反比例にする温度変化を抑制するようブレーキチョッパ回路の半導体素子10を冷却する第2の冷却器5への冷却風量を分配することにより、温度変化による熱サイクルに依存する半導体の寿命を伸ばすことが図れる。
【0027】
以上の実施の形態より、整風ガイド3を有する整流風洞の第2の風洞2により冷却ファン6による冷却風を効率良く利用でき、冷却性能を向上すると共に、半導体冷却装置の小型化と軽量化にも効果がある。
【実施例2】
【0028】
図2(a)に本発明の第2実施の形態に係わる半導体冷却装置の斜視図を示し、図2(b)に本発明の第2実施の形態に係わる半導体冷却装置の正視図を示す。ここで第2の風洞2を形成する一部の面は内部を斜視するために図示していない。
【0029】
本発明の第1実施の形態に係わる半導体冷却装置は鉄道車両の床下に取り付けられる場合が想定される。図2の示すように、本実施形態の半導体冷却装置では、第1の冷却器4と第2の冷却器5は冷却風向が同一でかつ車両の床面に対し垂直し相互に熱交換のないよう配置され、第1の風洞1に収納されている。そして、車両床面に対し直角の冷却風向を有する冷却ファン6と、冷却ファン6による冷却風を冷却器に集約する第2の風洞2と、冷却ファン6とごみ止め12を有する第3の風洞11が設けられ、第3の風洞11は冷却風向が車両床面13に垂直となるよう配置される。
【0030】
次に、本実施の形態の作用を説明する。鉄道車両の床下に取り付けられる半導体冷却装置において、本実施の形態の作用と効果は第1実施の形態と同様であるほかに、ごみ侵入対策として冷却ファン6を設ける第3の風洞11は冷却風向が車両床面13に垂直するよう配置される。冷却ファン6は地面から離れるよう設けられ、ごみは自身重量で落ちる重力フィルタ効果により吸い上げられるごみを低減でき、さらに、ごみ止め12により冷却ファン6につまるごみを低減でき、冷却ファン6のメンテナンス性を向上する効果がある。
【0031】
上記風洞等が床下に垂直以外に例えば水平に配置されても同様な効果であることは言わずもがなである。
【符号の説明】
【0032】
1 :第1の風洞
2 :第2の風洞
3 :整風ガイド
4 :第1の冷却器
5 :第2の冷却器
6 :冷却ファン
7 :インバータ回路の半導体素子
8 :インバータ回路の半導体素子
9 :インバータ回路の半導体素子
10:ブレーキチョッパ回路の半導体素子
11:第3の風洞
12:ゴミ止め
13:車両床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の床下装置に取り付けられる電力変換装置において、冷却通風面に対し広い冷却風幅を有する第1の冷却器と、該第1の冷却器より狭い冷却風幅を有する第2の冷却器とを当該冷却器の各々の冷却風向が同一かつ相互に熱交換がないように併設収納する第1の風洞と、該冷却風向に対し直角の冷却風向を有する冷却ファンと、該冷却ファンの冷却風を前記第1の冷却器と前記第2の冷却器とに通風分配する整風ガイドを具備する第2の風洞を配設して成ることを特徴とする強制風冷式半導体冷却装置。
【請求項2】
前記冷却ファンの代わりに、前記当該冷却器の各々の冷却風向に対し逆方向の冷却風向を有する冷却ファンとごみ止めとを具備する第3の風洞を配設し、該第3の風洞の入風面と前記第1の風洞の排風面とが互いの通風状態に影響がないずれた位置にあることを特徴とする請求項1記載の強制風冷式半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201138(P2012−201138A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65158(P2011−65158)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003115)東洋電機製造株式会社 (380)
【Fターム(参考)】