説明

微細樹脂構造体並びにその製造方法

【課題】
樹脂製モールドからナノインプリント法により微細構造を転写する際に、転写パターンへの損傷を抑制し、生産性に優れた微細構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】
モールド樹脂の表面に高分子化合物等の被覆膜を設けて未反応基を高分子膜中に埋没させ、モールド樹脂表面に残存する未反応重合性基と被転写体樹脂との反応を防止する。また、被覆膜の表面ないしは内部に、高分子化合物との間で共有結合などの強い化学結合を持たない離型性分子を含ませることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細なパターンの形成を目的とした光ナノインプリントに用いるモールド、および、これを用いて作製した微細な樹脂構造パターン、並びにその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
数十nmから数百nmの微細な構造を作製する方法としては、従来より光や電子線を利用したリソグラフィー法が知られており、このような方法を利用することによって種々の半導体デバイスが製造されている。
【0003】
前者の光リソグラフィー法では、所望の配線構造に対応したUV光のパターンをレジスト膜表面に縮小して露光し、引き続いて露光した像を現像するというプロセスを含んでいる。このような方法は、煩瑣な工程を含んでいる上、光の回折現象によって原理的に加工可能な寸法の下限が決められるという本質的な問題を有している。また、加工寸法が100nm以下となる領域では用いる光学系が極めて高価となり、これが微細加工工程におけるコストに反映して、光リソグラフィー法の適用範囲を実質的に制限している。一方、後者の電子線リソグラフィー法では、UV光に拠るよりもさらに小さい寸法での加工が可能となるものの、直接電子ビームにより描画するため、多数の基板に書き込むには多大の時間を要する。これらの理由から、上記したような従来のリソグラフィー法を用いた場合には、一般に高いスループットを得るのが困難である。
【0004】
これに対して、近年、ナノインプリントと呼ばれる微細構造を作製する方法がスループットの高い方法として知られている。この方法は、所望の凹凸パターンを予めSi基板や金属板上に描いた原盤(モールド)を用意し、これを通常ガラス転移点付近以上に加熱された樹脂膜の表面に押し当てて原盤の凹凸像を樹脂膜上に写すものである。この際、原盤の凹凸像に対して逆転した凹凸像が樹脂膜上に形成される。このような方法は、普通、熱ナノインプリント法と呼ばれている。
【0005】
このような目的に用いられる樹脂膜の材料としては、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレート)やポリカーボネート、或いはポリスチレンといった熱可塑性樹脂をはじめ、これらの架橋体ポリマーや場合によってはポリイミドなどの熱硬化樹脂も用いられる。このようなナノインプリント法によって、数十nm〜数百nmの径を有する樹脂の柱(ピラー)が基板上に並んだ構造や、窪みや溝のパターンも作られる。
【0006】
このような工程では、先に述べた光リソグラフィー法で用いられるような高価な部品を用いることもなく、また、転写操作によって同じ原盤から微細な構造を有する多数の樹脂膜を得ることができることから、比較的安価な微細加工手段として期待されている。しかしながら、加工すべき寸法が小さくなり、例えば直径数十nmのピラーを立てるような加工を高分子レジスト膜に施すような場合には、モールドをより高い圧力で押し付ける必要が生じ、その結果モールド表面や、折角形成した微細なレジストパターン構造が壊されやすくなるといった問題が生じる。また、上記したようなナノインプリントによる場合には、元々変形しやすいレジストを用いる必要があるため、逆に形成された後のピラーが剛直さを欠くことになり、微細な形状を維持できない場合が少なくない。また、レジスト膜を予めガラス転移点以上まで加熱しておく必要があるため、1サイクルの工程を短縮する上でも限界がある。
【0007】
このような高分子膜に対して行うナノインプリント法に対して、光重合性のレジスト単量前駆体の組成物を用いる方法が知られている。ここで、前駆体と呼ぶのは、光硬化によって始めてレジストとしての作用を呈することによっており、この前駆体は、1種もしくは複数種の光重合可能な単量体、もしくは例外的にはオリゴマーから成る組成物である。
【0008】
この方法は、光ナノインプリント法と呼ばれるもので、例えば、液状のレジスト前駆体を基板に滴下し、ついで、モールドを押し当てて液状レジスト前駆体をモールドの表面凹凸形状に従わせ、その後該レジスト前駆体にUV光を照射して光硬化させるものである。ここで、液状レジスト前駆体は、先に述べた液状モノマー組成物を指す。このような光によるナノインプリントの方法では、レジストが液状の前駆体の形をとっているため、比較的小さい圧力でモールドを押し当ててもモールド表面の形状が容易に転写されるという大きい利点がある。光ナノインプリント法のさらなる重要な利点は、UV光の照射に際して、精密な光学系を一切使用する必要が無いことで、このため、パターン形成のプロセス全体を低コストで実施することが可能となる。
【0009】
また、上記したレジストの加工の形状や寸法が、予めモールドの表面に形成された微細な凹凸によって決定されるため、照射するUV光の波長によって加工可能な寸法が左右されるという問題がない。このような著しい特徴から、光ナノインプリント法は、先に述べた熱ナノインプリント法による場合よりも、より微細な構造の形成を対象とした場合に用いられることが多い。モールドとして、例えば広範な波長範囲のUV光を透過する石英板を使用すれば、この石英製モールドを透して露光させることが可能である。また、同様にUV光を透過する基板を用いれば、基板を透して露光することも可能となる。
【0010】
このような目的に用いられるレジスト前駆体は、先にも述べたように、まず、液状である必要がある。光ナノインプリントに用いられる光硬化性のレジスト前駆体は、モールドの押し当てによって容易に押し拡げられる必要がある。このようなことを容易にするため、通常、該レジスト前駆体の液体をスピン塗布などの方法で液膜としておくのが1つの方法である。このような目的で用いられる液膜の厚さは、加工寸法の関係から決められ、通常50nm乃至100nmの厚さであることが多い。あるいは、液体ディスペンサーなどの装置や、インクジェットプリンターなどを用いて、予め設定した量だけ基板上に塗布することも可能である。
【0011】
上記したような液状のレジスト前駆体が具備すべき重要な性質としては、UV光の照射によって速やかに硬化する性質が挙げられる。アクリレートモノマーやメタクリレートモノマーは、UV光の照射で速やかにラジカル重合して硬化することが知られており、優れたレジスト前駆体となりうる性質を有している。
【0012】
光ナノインプリント法を用いることによって、極めて微細な構造を比較的容易に製造することが可能であるものの、これに用いるモールド自体は電子線による描画を用いたリソグラフィーによらざるを得ない場合が多いため、極めて高価となる。しかも、このモールドを用いた光ナノインプリント工程においては、多数回の転写の繰り返しによって微細な構造が損傷を受けて使用不能となるという問題がしばしば生じるため、光ナノインプリント工程全体のコストの低下には限界があった。
【0013】
従って、光ナノインプリント工程全体のコストを一層低減するには、これに用いるモールドを安価に得られるようにすることで不可欠である。このような問題を避ける方法の1つとして、モールド原版をもとにレプリカとなるモールドを安価に作成し、これを光ナノインプリント工程に用いることである。このような方法の具他的な例としては、光ナノインプリント法を用いて原版と同じ微細構造を有するモールドを作成する方法が挙げられる。すなわち、例えば石英を用いて製作されたモールド上で樹脂前駆体モノマーを光重合することによりその転写体としてネガ構造の樹脂レプリカモールドが得られる。これをモールドとしてさらにこの上で樹脂前駆体モノマーの光重合を行わせることにより、元の石英製モールドと実質的に同じ微細構造を有する樹脂の微細構造体が得られることになる。ネガ構造の樹脂レプリカモールドは、多数製作しておくことが可能であるため、実質的にモールドのコストが低下したことと同じ効果が得られることとなる。
【0014】
一方、樹脂製の基体に防汚性付与のため、撥水性などに優れたフッ素系短分子膜を付与する方法として、基体上に水酸基を有する高分子膜を設けた後、フッ素原子を含有する有機基を結合させたクロロシラン化合物を反応させる方法が知られている。
【0015】
【特許文献1】特許第2981043号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
モールド原版をもとにしてそのレプリカとなるモールドを作製する。このようにして作製された樹脂製レプリカモールドを用い、光ナノインプリント法によってモールドと同じ微細構造を有する転写体を得ようとすると、光硬化した樹脂表面で樹脂前駆体モノマーの光硬化を行うことが必要となる。その際、用いる樹脂製レプリカモールドの表面には未反応の重合性基が多数残存しているため、この上で引き続き樹脂前駆体モノマーを重合させると、該残存した重合性基が反応に関与してくることになる。不飽和結合を有するモノマーを光重合した際、硬化体の表面にこのような未反応の不飽和基が多数残存することは極めて一般的である。その結果、モールドと、その上で新たに重合された構造体との間で一種のグラフト反応によって化学結合が生じ、その結果両者の分離が困難となる。このような不飽和基の例としては、例えば、炭素−炭素2重結合が挙げられ、これらはアクリレートエステルやアクリルアミド、あるいはビニルエーテルなどのビニル化合物として存在する。上記したような現象は極めて一般的に見られるものであるため、樹脂製のレプリカモールドを使用する場合にはこのような反応を避ける手段を講ずることが必須である。重合反応が、炭素―炭素2重結合に拠らない場合であっても、硬化した樹脂の表面に重合反応にかかわる官能基が多数残存することには変わりなく、従って、炭素−炭素2重結合の場合と同様に対策を講じることが必要である。
【0017】
樹脂の表面に撥水性を付与するような化学処理を光ナノインプリントにおけるモールドの表面に施すと、モールドから硬化した樹脂膜を剥離する際の離型が容易になるという好ましい効果の得られることが知られている。しかしながら、このような方法を用いると離型性を付与するには極めて有効であるものの、転写工程の繰り返しによって次第に離型性が減衰することは避け難い。このような離型性の減衰の主たる原因は、シロキシ基を介して高分子鎖に結合し離型性を付与しているフッ素化アルキル基が、光ナノインプリント工程の繰り返しで次第に硬化した樹脂膜によって持ち去られ、その結果、該ケイ素基の表面密度が低下することに因っている。このような離型性能が減衰した樹脂モールド表面を再び離型性に優れた表面に回復するには、前記高分子膜を再び設け直したのち、再び前記クロロシラン化合物と反応させる必要がある。このような操作は、当然のことながら光重合による光ナノインプリント工程の中では行い得ないため、該工程を一旦中断して行う必要があり、生産性にとって好ましくない因子となる。
【0018】
上述のような問題点を踏まえ、本発明は、樹脂製の微細構造体からナノインプリント法により微細構造を転写する際に、転写パターンへの損傷を抑制し、生産性に優れた微細構造体の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、樹脂前駆体モノマーを硬化させた後、形成されたパターンに損傷を与えずに剥離しうる表面を有する樹脂製の微細構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は上記したような困難を解決すべく種々検討を行った結果、以下のような解決策を見出すに到った。すなわち、硬化した樹脂上で次の段階の重合を行う際、硬化した樹脂表面に残存する未反応の反応基を遮蔽しておくことである。具体的には、次の段階の重合のためのモノマーを載せる前に、硬化した樹脂表面に例えば高分子の被膜を設けて未反応基を該高分子膜中に埋没させておくことである。このようにすることによって、硬化した樹脂表面に展開したモノマーを重合する際、下地の樹脂表面に残存する未反応重合性基との反応を防止することが可能となるわけである。
【0020】
本発明は、1000nm以下の最小加工寸法を有する樹脂製の微細構造体の製造方法において、1000nm以下の微細凹凸パターンを有する重合によって形成された樹脂よりなる微細構造体の表面に被覆膜を形成する工程と、該微細構造体を、樹脂前駆体モノマー又は樹脂前駆体モノマーの組成物に押し付け、該組成物を重合する工程と、樹脂前駆体モノマー又は樹脂前駆体モノマー組成物の重合体から該微細構造体を剥離し、該微細構造体表面の微細凹凸パターンを該重合体に転写する工程とを有する微細構造体の製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
石英等のモールド原版をもとに、原版モールドと同等の微細パターンを有するモールドを光硬化樹脂で作製する際、本発明の方法を適用することによってパターンの損傷を防ぐことが可能となり、光硬化性樹脂を用いて高価なモールドから多数の安価樹脂製モールドを複製することができる。これによって、光ナノインプリント工程のコストを大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施の形態を以下に図を用いて説明する。以下の記述では、出発となるモールドを原版モールドと呼ぶことにする。
【0023】
図1により、光硬化性樹脂を用いた転写の様子を示す。(a)はガラス基板1上に光硬化性樹脂の液状の樹脂前駆体モノマー組成物2を載せた状態を示す。(b)は該基板の上部から、表面に微細なパターンを有する石英製モールド原版3を押し当てた状態を示す。(c)は石英原版モールド3の上部から樹脂前駆体モノマー組成物2を硬化させる目的でUV光4を照射する様子を示す。(d)は石英製モールド原版3を、硬化後の表面にパターンの形成された樹脂膜5が付着したガラス基板1から剥離した様子を示している。石英原版モールド3をガラス基板から簡単に剥離するためには、事前に原版モールドの樹脂と接する表面に離型を容易にする処理を施しておくことが有効である。この離型を容易にする最も一般的な処理法の1つは、前記ガラス基板の表面をパーフルオロアルキルトリアルコキシシランの溶液で処理しておくことである。このような操作によって、該ガラス基板の表面にパーフルオロアルキルシロキシ基が結合され、硬化した樹脂から容易に剥離されることになる。使用条件や用いるモールド原版の種類によってフッ素原子を含有する珪素化合物は多種の中から選択されうる。(d)に示したプロセスで得られる樹脂膜5上に形成されたパターンは、容易に理解されるように原版モールド上のパターンに対してネガの状態になっている。従って、樹脂5をレプリカモールドとして用いて光ナノインプリント転写を行うと、原版モールドと同等のパターンを有する樹脂構造体8が得られる。このような(d)で作製されたネガ構造モールドを用いて(a)−(d)の工程と同様のプロセスを実施することによって原版モールドと同じ微細パターン得る様子を図2(e)−(h)に示す。こうして得られる図2(h)の基板6上に設けられた硬化樹脂製の微細構造体8は、先に(a)で用いた石英製モールド原版3と実質的に同じ微細構造を有していることになる。
【0024】
図2(e)で示した基板1上に設けられたモールド5は上に述べたように原版モールド3に対してネガのパターンとなっており、本明細書中ではネガ構造モールドとも呼んでいる。さらに、重要な点は、モールド5は樹脂製であり、その表面には図1(c)における光硬化反応で反応し残った不飽和結合が高密度で残存していることである。このような不飽和結合の重合によって硬化させるメカニズムを採る場合には極めて一般的に見られる現象であり、表面に残存した不飽和基の密度はFT−IR ATR法などによってある程度定量的に知ることができる。樹脂モールド5の表面に不飽和基が残存する様子を図3(a)に模式的に示した。このような残存した不飽和基が引き起こす重大な問題は、図2(f)において新たに樹脂前駆体モノマー組成物7が与えられ(g)で光照射によって硬化される際、モノマー7と樹脂レプリカモールド5との間に反応が起こり、その結果両者の間に結合が生じることである。このような反応は高分子のグラフト反応の範疇に入れられるべきものであり、このような反応の結果、図2(g)における離型によって新たなモールド8を得ようとする際、離型が困難となるという重大な障害が生じてしまう。このような障害の結果、図2(h)において樹脂モールド5と基板6を剥離する際、基板6の表面に形成された転写体8のパターンが重大な損壊を受けるということである。転写体8と同様に樹脂で作製されたモールド5も、同様に損傷を受ける可能性がある。本発明では、図2(e)で用いる樹脂モールド5の表面に、樹脂表面に残存する未反応の反応基を遮蔽あるいは埋没させる被覆膜として高分子膜を形成している。この高分子膜により表面に存在する不飽和基を隠蔽しておくことにより、新たに加えられたモノマー7との反応を避けることを可能としている。樹脂モールド5の表面に高分子膜を設けることによって表面に残存する不飽和基を埋没させた様子を図3(b)に模式的に示した。この高分子膜11の厚さは、当然のことながら樹脂モールド5のパターンの深さやアスペクト比を考慮して決定されるべきであり、もし、該高分子膜が樹脂モールドのパターンの深さと同等以上になるとパターン自体が埋没され、微細パターンが失われることになる。不飽和基の長さ自体は一般に数オングストローム程度であるが、樹脂モールド5の表面の凹凸形状が重畳される効果を考慮すると、不飽和基が該高分子膜表面から露出する懸念が生じるため、さらに大きい高分子膜厚が必要となる。本発明の目的に照らして、不飽和基をモノマーから隔離する目的で設けられる高分子膜の厚さは、0.5nmないし500nmであるが、パターン形状やモールド表面の粗さの度合いによってはさらにその範囲外の膜厚も採りうる。
【0025】
上記した、本発明における高分子膜の設置は、図2(g)における離型の段階でさらに重要な機能を示す。この高分子膜は、樹脂前駆体モノマー7が硬化する際、互いに絡み合って引張り応力を示すことがある。モノマー7が部分的に該高分子膜を形成する分子の一部を取り込んだ形で重合が起こることが原因である。このような事態が起こっても、高分子膜自体は下部の樹脂モールドとは直接結合していないため、剥離に際してモールド側に高分子膜の極く一部が失われるだけで実質的な障害を生じないという利点を有している。本発明における高分子膜の設置手段は、用いる高分子物質の溶液を用いたスピン塗布による方法,溶液のキャストによる方法,基板を高分子の溶液に浸漬する方法,CVD(Chemical Vapor Deposition)の原理による方法,高分子物質のクラスターイオンビームを用いた蒸着方法,高分子物質の加熱による蒸発を利用した蒸着,高分子物質のスパッタリングによる蒸着、などが挙げられるが、本発明の目的に合致する限り、高分子膜を設ける方法は上記した方法に限定されるべきではない。
【0026】
本発明の被覆膜としては、一般的に膜形成の容易さから高分子膜であることが有利である。しかしながら、本発明の目的に照らして考えるならば、上記した未反応基を埋没させる目的で設ける膜は必ずしも高分子膜である必要はなく、例えば下地樹脂表面に吸着した長鎖アルキルからなる界面活性膜でも可能である。これらの膜を用いる場合は、通常、下地樹脂膜表面から突出した残存反応基を上部に展開されるモノマーから隔離しうる程度の鎖長を有していることが必要である。このような界面活性膜の必要な鎖長は、当然のことながら下地樹脂表面の分子レベルでの凹凸の程度に関係して決められるべきである。前記した高分子膜を用いる場合であれ、あるいは界面活性剤膜を用いる場合であれ、別の重要な点は、これらの膜を設ける際、あるいは設けたあとも、下地樹脂膜と共有結合などによる強固な結合を形成しないことである。なぜなら、該膜の上部で引き起こされるモノマーの重合が、該高分子膜や界面活性剤膜の鎖を取り込んだ形で起こる可能性があるためで、これらの高分子膜や界面活性剤の膜が容易に下地樹脂膜から遊離することができれば、下地樹脂で形成された微細構造を損傷させずに済むことになる。
【0027】
本発明を効果的に実施する1つの形態として、原版モールドに対してネガ構造を有する樹脂レプリカモールドを形成する下地樹脂膜と、これによってパターンが転写される樹脂膜の間に介在させる高分子膜や界面活性剤の膜の表面ないしは内部に、離型性を示す分子を含ませておく方法がある。こうすることによって、転写された後に容易に上記樹脂レプリカモールドから分離することができる。用いる離型性物質は該高分子膜を形成する高分子化合物との間で共有結合などの強い化学結合を持たないことが有利である。このことは、離型性分子を高分子膜の表面もしくは内部に与えるに際して、化学反応を考慮する必要がないため、繰り返し転写の工程を実施して離型性分子が減損しても単に外部から高分子表面に補充するだけで良いことを意味する。その際、該離型性分子と高分子膜との間に期待される束縛力は、van der Waals力(ファンデスワールス力),水素結合,イオン性物質などによる極性相互作用などである。
【0028】
このような離型性分子を高分子膜表面もしくは内部に設ける方法としては、離型性分子を溶解した溶液を用いる方法の他、気相による蒸着などが現実的である。具体的には、離型性分子を含む溶液に高分子膜を設けたモールドを浸したり、あるいは、離型性分子を含む蒸気中に高分子膜を設けたモールドの表面を曝すことが例として挙げられる。このような高分子膜表面もしくは膜中に取り込まれた離型性分子は、該高分子膜を形成している分子と極めて微弱なVan der Waals力による相互作用で束縛されうる。また、離型性分子が水酸基やアミノ基を有し、且つ、該高分子が酸素原子などの電気陰性な原子を有する場合には、両者の間に水素結合を生じさせることができる。もちろん、高分子化合物が水酸基やアミノ基を有し、離型性分子がフッ素原子と並んでエーテル結合などの酸素原子を有する場合にも、両者を多少なりとも束縛する水素結合が期待できる。
【0029】
また、水素原子の全てまたは一部をフッ素原子で置換した化合物のイオン性の塩も本発明を実施する上で有効な離型性物質として作用する。これらの物質に対して極性の相互作用を通じて基体と結合的な相互作用を生み出すことができ、前記した微弱なVan der Waals力による相互作用や水素結合と並んで、離型性物質として本発明の効果を一層強化するのに有効である。
【0030】
このような緩やかな結合によって離型性分子が束縛される利点は、該離型性分子が光ナノインプリント工程の繰り返しによって次第に失われても、定常的に一定の補給を行うことによって、離型性を実質的に維持することが可能になるわけである。このような定常的な離型性分子の補給は、連続的に行われる光ナノインプリントの工程を止めることなく実施することが可能であり、生産性を維持する上で極めて効果が大きい。このような意味においては、離型性を与える物質は該高分子膜を形成する分子と共有結合といった強固な化学結合を形成する必要はない。従来のように高分子膜の化学的改変を通じて離型性分子の付与を行うと、離型性分子の減損に応じて該高分子膜も減損することになり、その結果、離型性分子の補充に際して高分子膜設置の更新も同時に行うことが必要となり、製造工程を止めて行う必要が生じて、製造コストを上昇させることになるためである。
【0031】
離型性分子を高分子膜表面もしくは内部に設ける別の方法としては、該高分子膜となる物質の溶液中に予め離型性分子を共に溶解した溶液を用いることである。このような溶液を用いて樹脂レプリカモールド上にスピン塗布・ディップコート・インクジェットによる塗布などを行えば、更新可能な離型性高分子皮膜を一度の操作で設けることができることになる。
【0032】
本発明では、離型性分子の補充工程を連続した製造工程の中に組み込むことが可能であり、離型性分子を補充するに当たって製造工程を1次的に止めるという不都合が介在しない。このような利点は、化学反応で直接高分子物質に結合するものではないという特質に根拠を置くものであり、重要な利点である。従って、本発明における離型剤の付与は、高分子物質の化学的改変を意味するものではなく、単に離型性分子をいくばくかの束縛力のもとで付着せしめるものである。
【0033】
本発明の特徴の一つは、樹脂製のレプリカモールドの表面に形成された離型性高分子皮膜が、溶剤によって容易に除去されうることである。この特徴は、本発明において、高分子皮膜を形成する高分子物質と離型性分子が何ら共有結合を形成していないという特徴に基づいているのである。損傷を受けた高分子皮膜を除去する操作を、新規に離型性物質を含ませた高分子溶液を用いて行えば、損傷を受けた高分子膜の除去と更新を一度の操作で済ませることが可能である。このような操作は、上述したスピン塗布による方法やディップによる方法、あるいはインクジェットによる方法を用いるのに適しているが、これ以外の膜塗布法も除外されるべきでない。
【0034】
上記したような下地樹脂膜表面に存在する好ましくない反応基を遮蔽ないしは埋没させる目的で使用しうる高分子材料は広範囲より選択しうる。それらの例としては、炭素−炭素2重結合の重合体化合物であり、具体的には、ポリ(4−ビニルフェノール),ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブタジエン,ポリ(4−ビニルピロリドン),ポリビニルアセテート,ポリ(アクリル酸エステル)類,ポリ(メタクリル酸エステル)類,ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ(ビニルエーテル)類,ポリアクリルアミド類、およびこれらの共重合体などが挙げられる。さらに、これらとは異なる重合形態をとるポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系重合体、ポリアミド酸、およびその硬化物、エポキシ樹脂,シルセスキオキサン誘導体,ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子、ポリフォスファゼン類,ポリシロキサン,ポリシラン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリカーボネート系高分子なども使用することができる。
【0035】
ここに掲げた高分子物質のうち、酸素原子やハロゲン原子など比較的電気陰性な原子を分子中に含んだ高分子では、前記した水酸基を含んだ離型性分子と水素結合を形成しうる。また、水素結合を含まないが、酸素原子などの電気陰性原子を有する離型性分子を用いる場合には、逆に水酸基を有する高分子物質を膜状にして用いるのが有効である。このような高分子物質の例としては、分子中に水酸基を有するポリエチレングリコール,ポリプロピレングリコールなどグリコール類、ポリビニルアルコール,ポリ(アクリルエステル)類の部分もしくは全体の加水分解物などが挙げられる。これらの他には、前記した高分子化合物群の有機基上の水素原子を水酸基で置換えした化合物なども挙げられ、これにはポリスチレンの環を水酸基で置換えしたポリ(4−ビニルフェノール)などが挙げられる。
【0036】
前記した本発明をより効果的に実施する目的で高分子物質に添加する離型性化合物の例としては下記が挙げられるが、本発明の趣旨に照らして以下の例示した化合物に限定されることは無い。
1,3−Bis(difluoromethoxy)benzene
(2−(trifluoromethyl)−1,3−dioxolan−2−yl)methanol
2−(Trifluorovinyl)hexafluoroisopropanol
1H,1H−Perfluoro(2,5,8,11−tetramethyl−3,6,9,12−tetraoxapentadecan−1−ol)
1H,1H−Perfluoro(2,5,8,11,14,17−hexamethyl−3,6,9,12,15,18hexaoxaheneicosan−1−ol)
1H,1H−Perfluoro−2,5,8−trimethyl−3,6,9−trioxadodecan−1−ol
1H,1H,11H,11H−Perfluoro−3,6,9−trioxaundecane−1,11−diol
2,2−Difluoropropylamine hydrochloride
2,2,2−Trifluoroethyl triethylammonium triflate
Amonium perfluoro(2−methyl−3−oxaooctanoate)
1,4−Bis(1,1,1,3,3,3−hexafluoro−2−hydroxypropyl)benzene
1,3,5,7−Tetrakis(3,3,3−trifluoropropyl)1,3,5,7−tetramethylcyclosiloxanes
本発明を実施する上で重要な点の1つは、上記したフッ素原子含有化合物を高分子膜の表面などに付着せしめる際、いわゆるフローラス溶媒を用いることにより、好適に実施することが可能な場合が存在することである。すなわち、溶媒としてフローラス液体を用いると、下地として用いている通常の高分子化合物は実施的に溶解度を示さないため、離型性分子を高分子膜上へ展開するに際して下地の高分子膜を乱すことがないことである。このような目的に利用しうるフローラス溶媒としては、水素原子をフッ素原子で部分的または全部置換えした液状の物質であり、溶解する目的化合物の構造や極性を考慮してその適切な分子構造を有するものが選定される。フローラス溶媒として用いる際には、使用温度域で液状であればよく、従って必ずしも室温で液体状態を示す必要があるわけではない。しかし、室温での操作が最も容易であるため、主として室温で液状のフッ素化合物が選ばれることが多い。本発明の実施に供しうるフローラス溶媒の例としては、2,2,2−Trifluoroethanol、1H,1H−Pentafluoropropanol−1、1,1,1,3,3,3−Hexafluoro−2−propanol、2H,3H−Decafluoropentane,Benzotrifluoride,Eicosafluorononane,Perfluoromethylcyclohexane,Heptadecafluoro−n−octyl Bromide,Hexafluorobenzene,Octadecafluoro−decahydronaphthalene,Perfluoro(2−butyltetrahydrofuran),Octadecafluorooctane,Perfluoro(1,3−dimethylcyclohexane),Perfluoroheptane,Perfluorohexane,Perfluorotolueneなどが挙げられる。しかし、本発明の趣旨に照らして、本発明の実施がこれらの溶媒に限定されることはない。
【0037】
しかしながら、本発明に適用しうる離型性物質の多くは、フローラス溶媒以外の通常溶媒に可溶であることから、本発明の実施をフローラス溶媒の使用に限定する必要はない。このような場合には、被膜となる高分子物質と共通の溶媒とすることが可能になり、高分子被膜の内部に離型性物質を含ませた形で薄膜として樹脂レプリカモールド上に析出させることもできる。
【0038】
上記したフッ素原子含有化合物は、フッ素原子を含まない液状のモノマー組成物とは一般に相溶性を示さないという性質も同時に併せ持つ。この特徴は、フッ素原子含有化合物を付着させた高分子膜上で第2の重合を行うべくモノマー組成物を触れさせたとしても、該フッ素原子含有化合物が溶解を受けたりして第2の重合体の内部に移行させられるということが無いことを意味している。
【0039】
樹脂モールド表面で樹脂前駆体モノマー組成物を重合する反応は、必ずしも光重合反応である必要はない。光重合反応以外にも、触媒を用いた開環重合や縮合反応なども用いうる。言い換えれば、本発明の有効性は特定の重合反応に依拠しないということである。いずれの重合反応様式を選択しても、重合反応に活性で、新たなモノマーと結合しうる表面は多くの場合存在しうるため、これらを遮蔽する被覆膜の存在の意義は重大である。その際、形成された新たな高分子膜の離型性をさらに高める効果を付与することは一層重要である。
【0040】
以下、実施例を用いて本発明をさらに説明する。
【0041】
〔実施例1〕
大きさ15mm×15mm,厚さ0.5mmのガラス基板上に、表1に掲げた組成を有する光硬化性の樹脂前駆体モノマー組成物を1.0μL付着させ、この上から予めパーフルオロヘキシルトリメトキシシランの溶液で処理した、表面に孔径200nm,深さ400nmのピットが多数配列して設けられた大きさ10mm×7mmの石英製モールドを置き、全体をUV光照射可能な窓を有する真空容器に入れた。石英製モールドの上部から0.1kNの圧を印加しながら容器内を1.5kPaまで減圧した。ついで、石英製モールドの上部から、500W高圧水銀灯を10秒間照射した。ついで、基板と一体化された石英製モールドを真空容器から取り出し、基板を石英製モールドから剥離した。基板表面の原子間力顕微鏡による観察から、基板の表面には直径200nm,高さ約400nmの微細なピラーが配列している様子がみられた。ついでこの基板の表面に、平均分子量35万のポリ(メチルメタクリレート)0.7g/Lのトルエン溶液を滴下して、毎分3000回転でスピン塗布した。この基板をモールドとし、上に述べた方法と同様の操作で表1の樹脂前駆体モノマーを用いて光ナノインプリント転写を行い、剥離した。こうして得られた新たなモールド基板の表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、元の石英製モールドと同等の、表面に孔径200nm,深さ400nmのピットが配列していることが分かった。このようにして、石英原版と同じ微細パターンを有する樹脂製転写体を得ることができた。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1と同様の方法で、表面にピラーが配列した樹脂レプリカモールドを作製した。ついで、この樹脂レプリカモールドの表面に、ポリ(4−ビニルフェノール)の濃度0.5g/Lの2−プロパノール溶液を滴下したのち毎分3000回転でスピン塗布した。このスピン塗布したモールド基板を、蒸着が可能な真空容器中にパターン面が下向きになるように設置した。このモールドの下方200mmの位置に加熱の可能なセラミック製の容器を配置し、この中にSynQuest社製の1H,1H,11H,11HPerfluoro−3,6,9−trioxaundecane−1,11−diol 2.7gを入れ、この真空容器を0.7kPaまで減圧した。この減圧度に達した後、上記セラミック製の容器を120℃まで30秒間加熱し、モールドの表面を前記物質の蒸気に曝した。真空容器内を冷却した後、モールドを取り出した。ガラス基板上に1.0μL付着させた表1のモノマー組成物の上に真空容器から取り出したモールドを置き、実施例1と同様の方法でUV光を照射した。ついで、基板と一体化された石英製モールドを真空容器から取り出し、基板をモールドから剥離した。基板表面の原子間力顕微鏡による観察から、元の石英製モールドと同等の、表面に孔径200nm,深さ400nmのピットが配列していることが分かった。このようにして、石英原版と同じ微細パターンを有する樹脂製転写体を得ることができた。
【0043】
〔実施例3〕
実施例1と同様の方法で石英製モールドから樹脂レプリカモールドを作製した。ついで、この樹脂モールド上で実施例2と同じ方法でポリ(4−ビニルフェノール)の濃度0.5g/Lの2−プロパノール溶液を用いて毎分3000回転でスピン塗布した。ついでこの樹脂モールドの付着したガラス基板をAmmonium perfluoro(2−methyl−3−oxaoctanoate)の0.25wt%の1H,1H−pentafluoropropanol−1溶液30mL中に3分間浸漬し、取り出してN2気流で乾燥した後、これをモールドとして、実施例1に示したポリ(メチルメタクリレート)溶液のスピン塗布を終えたあとの操作と同様の操作で表1の樹脂前駆体モノマーを用いて光ナノインプリント転写を行い、剥離した。こうして得られた新たなモールド基板の表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、元の石英製モールドと同等の、表面に孔径200nm,深さ400nmのピットが配列していることが分かった。このようにして、石英原版と同じ微細パターンを有する樹脂製転写体を得ることができた。
【0044】
実施例1と同様の方法で石英製モールドから樹脂レプリカモールドを作製した。ついで、ポリ(4−ビニルフェノール)0.5g/Lと1,3,5,7−Tetrakis(3,3,3−trifluoropropyl)1,3,5,7−tetramethylcyclosiloxanes1.0g/Lからなる2−プロパノールの混合溶液を調製し、上記樹脂レプリカモールド上に滴下して毎分3000回転でスピン塗布した。この基板をモールドとし、表1に掲げたモノマー組成物を用いて実施例1と同様の方法で光ナノインプリント転写を行い、剥離した。この樹脂製転写体の表面を原子間力顕微鏡で観察したところ、元の石英製モールドと同等の、表面に孔径200nm,深さ400nmのピットが配列していることが分かった。
【0045】
〔比較例1〕
ポリ(メチルメタクリレート)の溶液をスピン塗布しなかった以外は〔実施例1〕と同様の操作を行い、石英製モールドの転写によって得られた基板をモールドとして光照射を行った。そののち、モールドと基板を剥離し、基板表面に形成されたパターンを原子間力顕微鏡により観察したところ、基板表面の樹脂膜は多くが失われ、その結果、石英製モールドが有していたパターンの極一部しか再現されなかった。
【0046】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】光ナノインプリント工程の概略図。
【図2】図1の光ナノインプリント工程によって形成された樹脂モールドを用いて光ナノインプリントを実施した工程の概略図。
【図3】光重合によって作製された樹脂モールド表面に残存する重合性基と、高分子膜による埋没の様子を説明する概念図。
【符号の説明】
【0048】
1,6 基板
2,7 樹脂前駆体モノマー組成物
3 石英製モールド
4 照射されたUV光
5 樹脂膜のパターン
8 基板上に形成されたパターンを有する樹脂モールド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1000nm以下の最小加工寸法を有する樹脂製の微細構造体の製造方法において、
1000nm以下の微細凹凸パターンを有する重合によって形成された樹脂よりなる微細構造体の表面に被覆膜を形成する工程と、
該微細構造体を、樹脂前駆体モノマー又は樹脂前駆体モノマーの組成物に押し付け、該モノマーまたはモノマーの組成物を重合する工程と、
樹脂前駆体モノマー又は樹脂前駆体モノマー組成物の重合体から該微細構造体を剥離し、該微細構造体表面の微細凹凸パターンを該重合体に転写する工程と、
を有することを特徴とする微細構造体の製造方法。
【請求項2】
前記被覆膜が、ポリ(4−ビニルフェノール),ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブタジエン,ポリ(4−ビニルピロリドン),ポリビニルアセテート,ポリ(アクリル酸エステル)類,ポリ(メタクリル酸エステル)類,ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ(ビニルエーテル)類,ポリアクリルアミド類,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイドから選ばれるポリエーテル系重合体、ポリアミド酸,エポキシ樹脂,シルセスキオキサン誘導体,ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子,ポリフォスファゼン類,ポリシロキサン,ポリシラン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリカーボネート、の群から選ばれる少なくとも1種またはその誘導体を含むことを特徴とする請求項1に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂前駆体モノマー又は樹脂前駆体モノマー組成物の重合が光重合であることを特徴とする請求項1に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項4】
前記被覆膜と前記重合体の間に離型剤を介在させたことを特徴とする請求項1に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項5】
前記被覆膜の表面もしくは内部に共有結合を形成させずにフッ素原子を含有する化合物を付着もしくは含有させたことを特徴とする請求項1に記載の微細樹脂構造体。
【請求項6】
前記被覆膜がフッ素原子を含有する化合物であり、フッ素原子を含有する化合物の蒸発による蒸着,フッ素原子を含有する化合物を含ませた溶液への浸漬,フッ素原子を含有する化合物を含ませた溶液を用いたスピン塗布、フッ素原子を含有する化合物もしくはフッ素原子を含有する化合物を含ませた溶液のインクジェットによる塗布、のいずれかの方法により、フッ素原子を含有する化合物を付着させることを特徴とする請求項1に記載の微細樹脂構造体の製造方法。
【請求項7】
表面に1000nm以下の最小加工寸法の微細凹凸パターンを有する樹脂製の基体と、
前記微細凹凸パターンを有する面に形成された被覆膜とを有し、
被覆膜が離型性分子を含む高分子化合物であり、前記離型性分子と高分子化合物とがファンデスワールス力,水素結合、又は、イオン性物質の極性相互作用により結合していることを特徴とする微細構造体。
【請求項8】
前記被覆膜が0.5nm以上で500nm以下の膜厚を有することを特徴とする請求項7に記載の微細構造体。
【請求項9】
前記被覆膜の表面もしくは内部に離型性を有する分子を付着もしくは含有させたことを特徴とする請求項7に記載の微細樹脂構造体。
【請求項10】
前記離型性分子がフッ素原子を含有する化合物であることを特徴とする請求項7に記載の微細樹脂構造体。
【請求項11】
前記被覆膜が、ポリ(4−ビニルフェノール),ポリスチレン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブタジエン,ポリ(4−ビニルピロリドン),ポリビニルアセテート,ポリ(アクリル酸エステル)類,ポリ(メタクリル酸エステル)類,ポリアクリロニトリル,ポリフッ化ビニリデン,ポリ(ビニルエーテル)類,ポリアクリルアミド類,ポリエチレンオキサイド,ポリプロピレンオキサイドから選ばれるポリエーテル系重合体、ポリアミド酸,エポキシ樹脂,シルセスキオキサン誘導体,ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系高分子、ポリフォスファゼン類,ポリシロキサン,ポリシラン,ポリテトラフルオロエチレン,ポリカーボネート、の群から選ばれる少なくとも1種またはその誘導体を含むことを特徴とする請求項7に記載の微細樹脂構造体。
【請求項12】
表面に1000nm以下の最小加工寸法の微細凹凸パターンを有する樹脂製の基体と、
前記微細凹凸パターンを有する面に形成された被覆膜とを有し、
前記被覆膜がフッ素原始を含有する化合物であり、フッ素原子を含有する化合物の蒸発による気相での蒸着,フッ素原子を含有する化合物を含ませた溶液への浸漬,フッ素原子を含有する化合物を含ませた溶液を用いたスピン塗布のいずれかの方法により形成されていることを特徴とする微細樹脂構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−184275(P2009−184275A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28292(P2008−28292)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】