説明

投影面情報提示装置と方法

【課題】ロボットハンドと対象物との相対位置誤差を拡大表示することができ、これにより目視かつ手動操作によりロボットハンドを対象物に対して正確に位置決めすることができる投影面情報提示装置と方法を提供する。
【解決手段】 ロボットハンド12に設けられたプロジェクタ22により、原パターンAを対象物2に固定された投射面3上に投射し(S1)、ロボットハンド12に設けられたカメラ24により、投射された原パターンである投射パターンBを撮影し(S2)、撮影した投射パターンである撮影パターンCを、ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、原パターンAと一致するように変形し(S3)、変形した変形パターンDを原パターンAに重畳する(S5)。(S1)〜(S5)を順に繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目視かつ手動操作によりロボットハンドを対象物に対して位置決めするための投影面情報提示装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの自動車メーカが「モジュール化組付」を推進している。モジュール化組付とは、車体に組付ける複数の部品を1つのモジュールに予め組付けておき、このモジュールを車体に組付ける部品組付手段である。
このようなモジュール化組付により、部品組付のための車両内乗込み作業を低減することができるが、その反面、モジュールが大型化し、作業者の負担が増大していた。
【0003】
そこで、組立ライン上で移動する作業対象物(例えば、自動車の車体)にワーク(例えば、インストゥルメントパネルなどのモジュール)を組付ける際の、作業者の負担を軽減する手段が種々、提案されている(例えば、非特許文献1〜4)。
また、本発明と関連する技術として、特許文献1〜5が開示されている。
【0004】
非特許文献1、2は、いわゆるパワーアシスト装置であり、作業全体を作業者が実施するが、これらの装置によりワークの重量を支持することで、作業員による重量物の扱いを容易にするものである。
非特許文3、4は、いわゆるロボットを用いたハンドガイド装置であり、人の操作入力によりロボットを操作し、人とロボットが協働作業するものである。
【0005】
これらの装置(以下、「ハンドガイドシステム」と呼ぶ)は、ワークを装置で把持し、その重量を支えることで人による重量物の扱いを可能にしている。ハンドガイドシステムでは、人(以下「作業者」)が目視によってワークや組み付け対象の位置を確認し、装置を操作するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3926311号公報、「傾斜角度測定装置を有するプロジェクタ」
【特許文献2】特開2002−71315号公報、「投影平面計測システム」
【特許文献3】特開2001−330417号、「カラーパターン光投影を用いた三次元形状計測法および三次元形状計測装置」
【特許文献4】特開2000−65542号、「3次元画像撮影装置」
【特許文献5】特開2000−9442号、「3次元画像撮影装置」
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】鴻巣仁司,荒木勇,山田陽滋、「自動車組立作業支援装置スキルアシストの実用化」日本ロボット学会誌Vol.22 No.4,pp.508〜514, 2004
【非特許文献2】アイコクアルファ ラクラクハンド(リフトアシスト)、インターネット<URL:http://www.aikoku.co.jp/rh/index.html>
【非特許文献3】JIS B8433:2007 :産業用ロボットの安全規格
【非特許文献4】藤井 正和, 塩形 大輔, 村上 弘記, 曽根原 光治, 「人間・産業用ロボットの協働のための安全システムの提案」,日本機械学会ロボティクス・メカトロニクス講演会2008 予稿集, 2A1−A21
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したハンドガイドシステムを用いる時、対象物とワークの位置関係が、作業者の死角になって目視で確認できないことがある。このような場合のために、特許文献1〜5の手段の適用が考えられる。
特許文献1、2は、カメラとプロジェクタを用い、画像処理により投影平面の傾斜角度又は配置を計測するものである。
特許文献3は、投射装置と撮影装置を用い、対象物の3次元形状を計測するものである。
特許文献4、5は、2台以上のカメラを用い、対象物の3次元画像を撮影するものである。
【0009】
しかし、特許文献1〜5の手段を適用しても、カメラを用いて対象物の位置と姿勢を求める場合、カメラ画像からは奥行き方向の情報を得にくい問題点があった。
すなわち、ロボットを手動操作する場合、撮影されたパターンの変化を目視で確認しながら操作する。しかし、カメラとプロジェクタの距離が近いと、対象面がわずかに傾いた程度では、撮影されるパターンがほとんど変化しない。したがって、目視では対象面の微小な傾斜を認識できない問題点があった。
【0010】
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、ロボットハンドと対象物との相対位置誤差を拡大表示することができ、これにより目視かつ手動操作によりロボットハンドを対象物に対して正確に位置決めすることができる投影面情報提示装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、手動操作によりロボットハンドを対象物に対して位置決めするための投影面情報提示装置であって、
前記ロボットハンドに設けられ、特定の原パターンを前記対象物に固定された投射面上に投射するプロジェクタと、
前記ロボットハンドに設けられ、前記投射された原パターンである投射パターンを撮影するカメラと、
前記撮影した投射パターンである撮影パターンを、ロボットハンドが対象物に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、原パターンと一致するように変形した変形パターンを前記原パターンに重畳するパターン重畳装置と、を備えることを特徴とする投影面情報提示装置が提供される。
【0012】
本発明の実施形態によれば、前記パターン重畳装置による前記変形は、射影変換、台形補正、又は歪み補正による。
【0013】
また、前記撮影パターンを表示する画像表示装置を備える、ことが好ましい。
【0014】
また本発明によれば、手動操作によりロボットハンドを対象物に対して位置決めするための投影面情報提示方法であって、
(A)前記ロボットハンドに設けられたプロジェクタにより、特定の原パターンを前記対象物に固定された投射面上に投射し、
(B)前記ロボットハンドに設けられたカメラにより、前記投射された原パターンである投射パターンを撮影し、
(C)前記撮影した投射パターンである撮影パターンを、ロボットハンドが対象物に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、原パターンと一致するように変形し、
(D)前記変形した撮影パターンである変形パターンを前記原パターンに重畳し、
(E)前記(A)〜(D)を順に繰り返す、ことを特徴とする投影面情報提示方法が提供される。
【0015】
本発明の実施形態によれば、前記(C)において、前記重畳前に、前記変形パターンを原パターンと異なる明度又は色調に変更する。
また、前記(E)において、予め設定した周期毎に、前記変形パターンを消去する。
また、手動操作によるロボットハンドの移動毎に、前記変形パターンを消去する、のが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記本発明の装置と方法によれば、パターン重畳装置により撮影パターンを変形した変形パターンを原パターンに重畳(重ね合わせ)するので、投射パターンにも原パターンに変形パターンが重畳して表示される。
しかし、パターン重畳装置による変形は、変形パターンが予め設定した「基準位置」において原パターンと一致する変形であるため、ロボットハンドが基準位置に位置する場合、変形パターンは原パターンに一致する。
なお、「基準位置」とは、ロボットハンドが対象物に対し予め設定した位置と姿勢をとる位置である。
従って、この場合は、プロジェクタによる投射、カメラによる撮影、パターン重畳装置による重畳を繰り返しても、投射面上の投射パターンは投射された原パターンのみであり、これから目視により相対位置誤差が0であることを確認できる。
【0017】
一方、ロボットハンドが基準位置にない場合には、対象物との相対位置に誤差があり、撮影パターンを変形した変形パターンは原パターンに一致せず、投射面上においてズレを生じる。
このズレは、プロジェクタによる投射、カメラによる撮影、パターン重畳装置による重畳を繰り返すことで、投射面上において順次大きく表示される。
【0018】
従って、本発明によれば、ロボットハンドと対象物との相対位置誤差を拡大表示することができ、これにより目視かつ手動操作によりロボットハンドを対象物に対して正確に位置決めすることができる。

【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による投影面情報提示装置を備えたハンドガイドシステムの模式図である。
【図2】本発明の投影面情報提示装置を示す模式図である。
【図3】原パターンA、投射パターンB、撮影パターンC、及び撮影パターンCを変形した変形パターンDの関係を示す図である。
【図4】本発明の投影面情報提示方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示す図である。
【図6】第1実施形態において、実際の投射面が基準投射面よりカメラ及びプロジェクタから遠くにある場合を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示す図である。
【図8】第2実施形態において、実際の投射面が基準投射面よりずれている場合を示す図である。
【図9】本発明の第3実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好ましい実施例を図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明による投影面情報提示装置を備えたハンドガイドシステムの模式図である。
このハンドガイドシステムは、ハンドガイド装置10を備え、作業者6が操作することで、ワーク1を自由に動かし、対象物2の開口部2aにワーク1を組付けるようになっている。
【0022】
図1において、ハンドガイド装置10は、ロボットハンド12、ロボット14、手動操作盤16、及びロボット制御装置18を備える。
【0023】
ロボットハンド12は、ワーク1を把持する。ロボットハンド12は、ワーク1を把持できる限りで、その他の構成であってもよい。
【0024】
ロボット14は、この例では多関節ロボットであり、ロボットハンド12の末端部(図1で上端)を支持し、ロボットハンド12を所定のロボットエリア内で移動可能に構成されている。なお、ロボット14は、多関節ロボットに限定されず、その他の周知のロボットであってもよい。
【0025】
手動操作盤16は、ロボットハンド12に設けられ、作業エリア内で人6(例えば作業員)が手動操作盤16を操作してロボット14の作動を操作するようになっている。
なお、手動操作盤16の取付け位置は、ロボットハンド12に限定されず、その他の位置、例えばロボット14から離れた固定位置であってもよい。
【0026】
ロボット制御装置18は、ロボット14を制御する。
ロボット制御装置18は、例えば、「自動モード」と「協働モード」とを有する。
自動モードでは、人6(作業員)の操作なしに、所定のシーケンス又はプログラムに従い、ロボット14を自動制御する。協働モードでは、人6(作業員)が手動操作盤16を操作してロボット14の作動を操作するようになっている。
また、ハンドガイド装置10は、人の判断や経験を必要とする作業時のみ協働モードに切替え、その他の作業を自動モードで実行するようになっている。
なお、本願において、「自動モード」及び「協働モード」は必須ではなく、人6(作業員)が手動操作盤16を操作してロボット14の作動を操作することができればよい。
【0027】
本発明における手動操作盤16は、例えばイネーブルスイッチ、片手操作入力デバイス、表示灯及び押釦スイッチを備える。
イネーブルスイッチは、安全を担保するために片手を占有し、これを把持することでスイッチがONするようになっている。
片手操作入力デバイスは、直交3軸の並進入力と該3軸まわりの回転入力を片手操作で入力可能に構成されている。
また、本発明の協働モードにおいて、両手でイネーブルスイッチと片手操作入力デバイスを操作することによりロボット14を手動制御できるようになっている。
なお、入力デバイスは片手操作入力デバイスに限定されず、2つの入力デバイスを両手で操作してロボット14を手動制御する構成であってもよい。
表示灯は、ハンドガイド装置10の種々の状態を表示し、押釦スイッチは種々の信号(例えば、非常停止信号)を出力するようになっている。
【0028】
なお、上述したハンドガイド装置10は一例であり、本発明はこれに限定されず、手動操作によりロボットハンドを対象物に対して位置決めする装置である限りで、その他の装置であってもよい。
【0029】
図2は、本発明の投影面情報提示装置を示す模式図である。この図において、本発明の投影面情報提示装置20は、手動操作盤16を用いた手動操作によりロボットハンド12を対象物2に対して位置決めするための装置であり、プロジェクタ22、カメラ24、及びパターン重畳装置26を備える。
【0030】
プロジェクタ22は、ロボットハンド12のワーク把持部に固定して設けられ、特定の原パターンAを対象物2に固定された投射面3上に投射する。
プロジェクタ22は、例えば、投影レンズ、液晶表示部、液晶表示部の画像を制御する画像制御部を有する液晶プロジェクタである。対象物2に固定された投射面3は、組み付け先の一部を使っても良いし、専用のパネルを取り付けても良い。
【0031】
カメラ24は、ロボットハンド12のワーク把持部に固定して設けられ、プロジェクタ22で投射された原パターンAである投射パターンBを撮影する。
カメラ24は、例えば、デジタルカメラ又はデジタルビデオカメラである。
【0032】
従って、プロジェクタ22とカメラ24は、ロボットハンド12で把持されたワーク1と連動して移動するようになっている。
カメラ24とプロジェクタ22の光軸をそろえる必要はないが、カメラ24の視野とプロジェクタ22の投射範囲が、できるだけ重なるような向きが良い。
また、カメラ24とプロジェクタ22間の距離は任意であるが、距離が離れるほど検出精度は高くなる。ただし、距離が離れると、カメラ視野とプロジェクタの投射範囲が重なりにくくなる。
【0033】
パターン重畳装置26は、カメラ24で撮影した投射パターンBである撮影パターンCを、予め設定した「基準位置」において、原パターンAと一致するように変形した変形パターンDを原パターンAに重畳(重ね合わせ)するようになっている。
パターン重畳装置26は、例えばコンピュータである。パターン重畳装置26は、ロボット制御装置18と一体でも、別置きでもよい。
【0034】
予め設定した「基準位置」とは、ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとる位置であり、例えば上述した図1、図2において、対象物2の開口部2aにワーク1を組付ける際に、精密な位置決めを必要とするロボットハンド12の位置と姿勢である。また、基準位置は、例えば、ワーク1が対象物2の開口部2aに組み付けられたときの位置関係であってもよい。
【0035】
図2において、本発明の投影面情報提示装置20は、さらに画像表示装置28を備える。
画像表示装置28は、例えば液晶ディスプレイであり、人6(作業員)が手動操作盤16を操作しながら直視できる位置に設けられ、カメラ24で撮影した撮影パターンCを表示する。
なお、本発明において、画像表示装置28は必須ではなく、人6(作業員)が手動操作盤16を操作しながら投射面3上の投射パターンBを直視できる限りで、省略することができる。
【0036】
図3は、上述した原パターンA、投射パターンB、撮影パターンC、及び撮影パターンCを変形した変形パターンDの関係を示す図である。この図において、(A)はプロジェクタ22、カメラ24、及び投射面3の位置関係を示す図、(B)は原パターンA、投射パターンB、撮影パターンC、及び変形パターンDの模式図である。
【0037】
図3(A)の例において、プロジェクタ22の光軸22aとカメラ24の光軸24aとのなす角度がθであり、互いに点Oで交差する。また、上述した基準位置(ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとる位置)において、投射面3は点Oを通り、カメラ24の光軸24aが投射面3に対して直交するものとする。
なおこの図において、投射面3は紙面に直交し、光軸22aと光軸24aは紙面に平行な平面内に位置するものとする。
【0038】
図3(B)に示すように、この例においてプロジェクタ22の液晶表示部23aにおける原パターンAが矩形abcdである場合、投射面3上の投射パターンBは、線分aが線分cより短くなるので、台形aとなる。
また、この場合、カメラ24の光軸24aが投射面3に対して直交しているので、カメラ24で撮影した撮影パターンCは、台形aの相似形である台形aとなる。
【0039】
一方、パターン重畳装置26による変形は、変形パターンDが予め設定した「基準位置」において原パターンAと一致する変形であるため、ロボットハンド12が基準位置に位置する場合、変形パターンDは液晶表示部23aにおける原パターンAと一致する矩形efghとなる。
【0040】
言い換えれば、パターン重畳装置26による変形は、投射面3が基準投射面4(後述する)と一致する場合に、変形パターンDが原パターンAと一致するように設定される。
このパターン重畳装置26による変形は、ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとらないとき、すなわち、投射面3が基準投射面4(後述する)と一致しない場合にも、同一の変形が実施される。
従って、ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとらないとき、変形パターンDは原パターンAと一致せず、その間にずれが発生する。
【0041】
上述したパターン重畳装置26による変形は、例えば、射影変換、台形補正、又は歪み補正によるのがよい。
上述した例のように、投射面3が平面であり、撮影画像の歪みを無視できる場合には、台形補正により上記台形aを矩形efghに変形することができる。
また、撮影画像の歪みを考慮する場合には、台形補正と歪み補正により上記変形を実施することができる。
さらに、一般的には、光軸22a、光軸24a及び投射面3の位置関係により、射影変換により上記変形を実施することができる。
【0042】
図4は、本発明の投影面情報提示方法を示すフロー図である。
本発明の方法は、手動操作によりロボットハンド12を対象物2に対して位置決めするための方法であり、この図に示すように、S1〜S7の各ステップ(工程)からなる。
【0043】
S1(投射ステップ)では、ロボットハンド12に設けられたプロジェクタ22により、特定の原パターンAを対象物2に固定された投射面3上に投射する。
【0044】
S2(撮影ステップ)では、ロボットハンド12に設けられたカメラ24により、投射された原パターンAである投射パターンBを撮影する。
【0045】
S3(変形ステップ)では、撮影した投射パターンBである撮影パターンCを、ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、原パターンAと一致するように変形する。
【0046】
S4(明度又は色調の変更ステップ)では、撮影パターンCを変形した変形パターンDを原パターンAと異なる明度又は色調に変更する。
「異なる明度」に変更とは、例えば黒の原パターンAに対し、変形パターンDをグレイ(灰色)にする。また、「異なる色調」に変更とは、例えば黒の原パターンAに対し、基準位置より前を青色、基準位置より後を赤色で表示する。
この変更により、投射面3上に投射された投射パターンBから原パターンAと変形パターンDとの目視による区別が容易となる。
なお、S4は必須ではなく、これを省略することもできる。
【0047】
S5(重畳ステップ)では、変形した撮影パターンCである変形パターンDを原パターンAに重畳する。ここで、「重畳」とは重ね合わせの意味であり、液晶表示部23a上の原パターンAはそのまま維持し、変形パターンDを原パターンAの対応する位置に重ねて、液晶表示部23a上のパターンとすることを意味する。
【0048】
S6(消去判断ステップ)では、変形パターンDを消去するかどうかを判断する。
変形パターンDの消去は、例えば、予め設定した周期毎に実施する。この周期は、予め設定した時間(例えば1〜10秒)、或いは予め設定した繰返し数(例えば2回〜10回)であるのがよい。
また、変形パターンDの消去は、手動操作によるロボットハンド12の移動毎に実施してもよい。
【0049】
S6で、変形パターンDを消去する(YES)の場合、S7(消去ステップ)で変形パターンDを消去し、S1に戻る。
S6で、変形パターンDを消去しない(NO)の場合、S1に直接戻る。
【0050】
ロボットハンド12の手動操作中において、S1〜S7の各ステップを順に繰り返すのがよい。
また、手動操作中の特定の時間帯(例えば組立時)又は領域(例えば対象物2の近傍)においてのみ、S1〜S7の各ステップを順に繰り返すようにしてもよい。
【0051】
上述したように、ロボットハンド12が対象物2に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、変形パターンDは液晶表示部23aにおける原パターンAと一致するので、変形パターンDを原パターンAに重畳しても、原パターンAは変化しない。
従って、S1〜S5の各ステップを順に繰り返し、プロジェクタ22による投射、カメラ24による撮影、パターン重畳装置26による重畳を繰り返しても、原パターンAは変化せず、投射面上の投射パターンBは投射された原パターンAのみであり、これから目視により相対位置誤差が0であることを確認できる。
【0052】
一方、ロボットハンド12が基準位置にない場合には、対象物2との相対位置に誤差があり、撮影パターンCを変形した変形パターンDは原パターンAと一致せず、投射面3上においてズレを生じる。
このズレは、プロジェクタ22による投射、カメラ24による撮影、パターン重畳装置26による重畳を繰り返すことで、投射面3上において順次大きく表示される。
【0053】
従って、本発明によれば、ロボットハンド12と対象物2との相対位置誤差を拡大表示することができ、これにより目視かつ手動操作によりロボットハンドを対象物に対して正確に位置決めすることができる。
【0054】
図5は、本発明の第1実施形態を示す図である。この例において、原パターンAは1本の縦線である。この図を用いて簡単な例で本発明の原理を説明する。
(A)は、対象物2とカメラ24及びプロジェクタ22が予め設定した「基準位置」にある時の上面図である。この時の投射面3の位置を「基準投射面4」とする。この例では、(B)に示すプロジェクタ22が投射するパターン(液晶表示部23aにおける原パターンA)と、(C)に示すカメラ24が撮影するパターン(撮影パターンC)は一致している。
【0055】
この例のように、投射面3が基準投射面4にある時、原パターンAと撮影パターンCが一致するのは、原パターンAが1本の線あるいは点である場合に限られる。
【0056】
図6は、第1実施形態において、実際の投射面3が基準投射面4よりカメラ24及びプロジェクタ22から遠くにある場合を示す図である。
投射面3が基準投射面4より遠くにある時、撮影される撮影パターンCの位置が矢印で示すように右方向にずれる(A)。次に、撮影された撮影パターンCを変形した変形パターンDを原パターンAに重畳する(B)。次いで、重畳後の原パターンAと変形パターンDを投射すると、一回目よりずれたパターンが重なって撮影される(C)。このように、撮影パターンCを変形した変形パターンDを原パターンAに重畳し、投射することを繰り返すことで、微小なパターンのずれが拡大していく(D)。
【0057】
図6の例では、投射面3が基準投射面4より遠くにある時、パターンが右側にずれて重なっていく。逆に、投射面3が基準投射面4より近くにあるときは,パターンが左側にずれて重なる。
【0058】
図7は、本発明の第2実施形態を示す図である。この例において、原パターンAは2本の縦線である。
(A)は、対象物2とカメラ24及びプロジェクタ22が予め設定した「基準位置」にある時の上面図である。
【0059】
この例では、投射する原パターンAを左右に離れた2本の縦線としているため、原パターンA(B)と撮影パターンC(C)が一致しない。この場合、撮影パターンCを変形した変形パターンD(D)が原パターンAと一致するように撮影パターンCを変形する。この変換は、例えば、射影変換、台形補正、又は歪み補正による。
【0060】
図8は、第2実施形態において、実際の投射面3が基準投射面4よりずれている場合を示す図である。
この例では、投射面3は基準投射面4に対し、奥行き方向の平行移動だけでなく、傾きもずれている。この場合も、図6と同様に、左右のパターンが少しずつ、ずれていく。
この例で、原パターンAの左の縦線が投射される位置は、投射面3が基準投射面4より遠くにあるため、右方向にずれた変形パターンDが重なっていく。原パターンAの右の縦線が投射される位置は、投射面3が基準投射面4より近くにあるため、左方向にずれた変形パターンDが重なっていく。
【0061】
図9は、本発明の第3実施形態を示す図である。この例において、原パターンAは2本の縦線である。
(A)は、カメラ24、プロジェクタ22、及び投射面3を側面から見た図を示す。
【0062】
(A)に示すように、投射面3が基準投射面4から水平軸回りに傾いている場合も、図6と同様に動作する。この場合、投射される原パターンAの縦線のうち上側では、投射面3が基準投射面4より遠く、下側では投射面3が基準投射面4より近い。従って、原パターンAの縦線の上側は右方向にずれた変形パターンDが重なっていき、下側は左方向にずれた変形パターンDが重なっていく。
【0063】
以上の実施形態から、投射面3と基準投射面4のずれを以下のように求めることができる。
(水平軸周りの傾き)
画像上部と下部で、原パターンAと変形パターンDのずれ具合を比較する。
(垂直軸回りの傾き)
画像の左右で、原パターンAと変形パターンDのずれ具合を比較する。
(奥行き)
画像全体にわたって、原パターンAに対し変形パターンDが左右どちら側にずれているかを見る。
【0064】
画像上の3点で奥行き情報を得ればよいため、投射する原パターンAは2本の線でなくても良い。
例えば、原パターンAは、画像上の原点と、原点より水平方向、垂直方向に離れた2点の合計3点の点であってもよい。また、原パターンAは、格子状のパターンであってもよい。
また、投射面3及び基準投射面4は、平面に限定されず、緩やかな曲面であってもよい。
【0065】
さらに、プロジェクタ22を用いず、投射面3に相等する組み付け先にディスプレイを設置し、カメラ24をディスプレイに向け、原パターンAをディスプレイに表示させることで、本発明と同様の効果が得られる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
1 ワーク、2 対象物、2a 開口部、
3 投射面、4 基準投射面、6 作業者、
10 ハンドガイド装置、12 ロボットハンド、
14 ロボット、16 手動操作盤、18 ロボット制御装置、
20 投影面情報提示装置、22 プロジェクタ、22a 光軸、
23a 液晶表示部、24 カメラ、24a 光軸、
26 パターン重畳装置(コンピュータ)、
28 画像表示装置(液晶ディスプレイ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作によりロボットハンドを対象物に対して位置決めするための投影面情報提示装置であって、
前記ロボットハンドに設けられ、特定の原パターンを前記対象物に固定された投射面上に投射するプロジェクタと、
前記ロボットハンドに設けられ、前記投射された原パターンである投射パターンを撮影するカメラと、
前記撮影した投射パターンである撮影パターンを、ロボットハンドが対象物に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、原パターンと一致するように変形した変形パターンを前記原パターンに重畳するパターン重畳装置と、を備えることを特徴とする投影面情報提示装置。
【請求項2】
前記パターン重畳装置による前記変形は、射影変換、台形補正、又は歪み補正による、ことを特徴とする請求項1に記載の投影面情報提示装置。
【請求項3】
前記撮影パターンを表示する画像表示装置を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の投影面情報提示装置。
【請求項4】
手動操作によりロボットハンドを対象物に対して位置決めするための投影面情報提示方法であって、
(A)前記ロボットハンドに設けられたプロジェクタにより、特定の原パターンを前記対象物に固定された投射面上に投射し、
(B)前記ロボットハンドに設けられたカメラにより、前記投射された原パターンである投射パターンを撮影し、
(C)前記撮影した投射パターンである撮影パターンを、ロボットハンドが対象物に対し予め設定した位置と姿勢をとる基準位置において、原パターンと一致するように変形し、
(D)前記変形した撮影パターンである変形パターンを前記原パターンに重畳し、
(E)前記(A)〜(D)を順に繰り返す、ことを特徴とする投影面情報提示方法。
【請求項5】
前記(C)において、前記重畳前に、前記変形パターンを原パターンと異なる明度又は色調に変更する、ことを特徴とする請求項4に記載の投影面情報提示方法。
【請求項6】
前記(E)において、予め設定した周期毎に、前記変形パターンを消去する、ことを特徴とする請求項4に記載の投影面情報提示方法。
【請求項7】
手動操作によるロボットハンドの移動毎に、前記変形パターンを消去する、ことを特徴とする請求項4に記載の投影面情報提示方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−66345(P2012−66345A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213439(P2010−213439)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】