説明

担体取付けシステム

排出ガス処理装置(110)の脆弱な担体(118)のための支持システム(120)が、脆弱な担体の少なくとも一部分に直接又は間接的に係合する微孔質の無機断熱層(212,322)と、脆弱な担体の少なくとも一部分に直接又は間接的に係合する柔軟性の取付け繊維マット(213,323)とを有する。支持システムは、触媒コンバータの脆弱な担体、ディーゼルパティキュレートトラップフィルタ、選択的触媒還元ユニット又はNOxトラップを支持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
脆弱な担体を取付けるシステムが提供される。このシステムは、担体をハウジング内に支持し又は取付ける一方で、担体を潜在的に破壊性の機械的負荷及び衝撃から実質的に隔離することができる。さらに、このシステムは、ハウジングを担体から流れる熱から著しく遮断することができる。
【背景技術】
【0002】
モノリス型担体は、種々の排出ガス処理装置中の活性表面として働く。担体は、これにオプションとして触媒を含浸させると、触媒コンバータ、ディーゼルパティキュレートフィルタ、選択的触媒還元ユニット、NOxトラップ及び他の排出ガス処理装置中の活性表面を構成する。
【0003】
一般に、担体の動作温度は、周囲温度よりも実質的に高く、即ち、大抵の従来材料が、このような従来材料を担体の構成材料の候補としては受け入れることができないようにするほどの温度に起因して悪影響を受けるほど高い。モノリス型担体を構成する材料は、高い熱抵抗、低い熱膨張率及び低い耐衝撃性を示す一般に脆弱な又は壊れやすい材料である。モノリス型担体を構成する許容限度内の候補である通常の材料の種類は、セラミックであるが、これには限定されない。ただし、金属製担体が用いられることがある。
【0004】
担体を構成する幾何学的形状は、典型的には、高い表面積と体積の比の実現を促す。或る特定の具体例では、担体の幾何学的形状は、薄く且つ脆弱である複数の要素から成る。限定するわけではないが、担体の通常の幾何学的形状は、例えばハニカム形形態の薄くて脆弱な壁によって互いに分離された小さなフローチャネルを構成する中空長方形のプリズムセルのアレイから成るモノリスである。
【0005】
担体についての幾何学的形状に関する検討と材質の検討の両方により、通常その結果得られる担体は、衝撃、破砕又は僅かな衝撃荷重若しくは応力に起因する他の機械的破損に弱く、又、この担体は、非常に高い温度で動作する。担体の脆弱性に関する問題を解決するため、担体をハウジング、典型的には金属製ハウジング内に収納して保護することが通例であり、この場合、担体の外面とハウジングの内面との間には空間又は隙間が生じる。担体を熱的衝撃及び機械的衝撃並びに他の応力から保護すると共に断熱作用を提供するために、少なくとも1枚の取付け材料シートを担体とハウジングとの間の隙間内に位置決めすることが知られている。
【0006】
排出ガス処理装置は、周囲温度よりも実質的に高い温度で動作するよう設計されると共に非動作時には周囲温度まで冷えるよう設計されているので、排出ガス処理装置は、相当大きな温度変動を生じるよう設計されている。担体の取付けは、担体を排出ガス処理装置がさらされる温度、即ち、周囲温度から動作温度までの全温度範囲にわたって保護するよう設計されている。温度変動は、担体取付けシステムの設計にあたり相当厄介な課題である。
【0007】
ハウジングへの担体の直接的取付けは、可能ではあるが、稀である。直接的取付けは、1つには、動作サイクル相互間の温度変化が担体及び金属製ハウジングに関する熱膨張差に起因すると共に取付け力又は保持力の望ましくない変化を生じさせるに足るほどのコンポーネントサイズの様々な熱的変化を生じさせるという理由で稀である。これら熱膨張差を補償する手段がなければ、取付け力は、望ましくない振動、ショック、衝撃又は他の運動を阻止するには不十分なレベルまで変化する場合がある。直接的取付けが稀であるもう1つの理由は、担体からの熱がこのような取付け条件下においてハウジングまで容易に伝搬することにある。ハウジングの結果としての加熱の結果として、ハウジングが望ましくないほど高い温度に達する場合がある。
【0008】
担体を取付けるより一般的な手段は、断熱取付けマットを担体と金属製ハウジングとの間に設けることである。取付けマットは、担体に巻き付けら、その周りのハウジングを包囲することにより取付けマットを圧縮することができる。圧縮レベルは、ハウジングとマットとの間及びマットと担体との間に係合力をもたらすよう選択され、それにより、担体をハウジングに対して固定するのに十分に高くしかも担体の損傷を回避するのに十分低い取付け又は保持力が生じる。また、取付けマットは、本来的に、熱の流れに対して幾分かの抵抗を示し、或る特定の実施形態では、良好な断熱材であり、マットは、担体からハウジングへの熱の伝搬に抵抗し、それにより、担体の定常動作温度が所与の場合、ハウジングの定常動作温度を低くする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
取付け材料の種類及び排出ガス処理装置の取るあらゆる温度状態において許容限度内の取付け又は保持力を生じさせるよう取付け材料の受ける周囲温度圧縮荷重の選択は、問題の根源であり続けている。この問題を複雑にするのは、低い熱伝導率を示すが排出ガス処理装置に望ましくない重量又は嵩を追加しない断熱材料を担体とハウジングとの間に設ける必要があるということにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
排出ガス処理装置の脆弱な担体のための支持システムが提供され、この支持システムは、脆弱な担体の少なくとも一部分に直接又は間接的に係合するようになった微孔質の無機断熱層と、脆弱な担体の少なくとも一部分に直接又は間接的に係合するようになった柔軟性の取付け繊維マットとを有する。
【0011】
或る特定の実施形態では、支持システムは、触媒コンバータの脆弱な担体、ディーゼルパティキュレートトラップフィルタ、選択的触媒還元ユニット、NOxトラップ又は化学工業排出煙突を支持する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の取付けシステムの一実施形態により支持された担体を有する排出ガス処理装置の一例としての触媒コンバータの立面断面図である。
【図2】脆弱な担体を支持する取付けシステムの一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】脆弱な担体を支持する取付けシステムの別の実施形態を示す概略断面図である。
【図4】種々の材料に関する熱伝導率と温度の関係のASTM‐C177試験の結果を示すグラフ図である。
【図5】種々の材料に関して応力と歪の関係を示すグラフ図である。
【図6】種々の材料に関する弾性率と歪の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
脆弱な担体をハウジング内に取付けるようになっていて、担体とハウジングとの間に薄い軽量断熱層及び取付け繊維マットを有する担体取付けシステムが提供される。断熱層は、担体とハウジングとの間の材料の断熱性を促進し、それにより、担体の定常動作温度が所与の場合、ハウジング及び断熱層の外部に位置する他の材料の定常動作温度を減少させる。このような実施形態では、断熱により、断熱層の外部に位置する材料の受ける熱歪が減少し、担体の受ける取付け又は保持力の変化が軽減される。幾つかの実施形態では、断熱層は、マットを担体から断熱し、それにより担体の動作温度が所与の場合、マットの動作温度を減少させる。このような実施形態では、マットの受ける熱歪が減少し、担体の受ける取付け又は保持力の変化が減少する。
【0014】
脆弱な担体を排出ガス処理装置内に取付ける取付けシステムが提供される。排出ガス処理システムは、主要構成要素として、脆弱な担体、取付けマット、断熱層及びハウジングを有する。オプションとして、排出ガス処理装置は、追加のコンポーネントを更に有する場合がある。
【0015】
担体は、排出物質を改質する排出ガス処理装置中の一コンポーネントである。担体を有する場合のある排出ガス処理装置には多くの種類が存在する。一形式の排出ガス処理装置は、触媒コンバータであり、触媒コンバータの活性部分は、一酸化炭素及び炭化水素の酸化及び窒素酸化物の還元を促進する触媒で被覆され又はこれを含浸させた担体を有し、それにより、排出流れ中の望ましくない燃焼生成物がなくなる。
【0016】
図1に示されているように、触媒コンバータ110は、代表的には2つの金属片、例えば耐熱性鋼で作られた全体として管状のハウジング112を有している。ハウジング112は、一端部に入口114を有すると共にその反対側の端部に出口(図示せず)を有している。入口114及び出口は、これらの外端部が適切に形成され、それにより、入口及び出口は、内燃エンジンの排気系統中の導管に固定できる。
【0017】
装置110は、脆弱なセラミック製のモノリス型担体118を有し、この担体は、詳細に説明する担体取付けシステム120によってハウジング112内に支持されると共に拘束されている。担体118は、複数のガス透過性通路を有するのが良く、これらガス透過性通路は、一端部のその入口側端面からその反対側の端部のその出口側端面まで軸方向に延びている。担体118は、公知の仕方且つ形態で適当な耐火材料又はセラミック材料で構成されている。
【0018】
担体モノリスは、代表的には、断面形状が長円形又は丸形であるが、他の形状の採用が可能である。担体は、実施形態によっては、少なくとも約0.05インチ(1.27mm)であるのが良く、実施形態によっては最大1インチ(25.4mm)以上であるのが良い隙間幅距離だけそのハウジングから間隔を置いて位置している。この隙間幅は、代表的には、約3mm〜約25mmであるのが良く、約3mmから約8mmの範囲が商業的に通常の幅である。担体取付けシステム120は、セラミックモノリス担体118を支持するようこの空間内に配置される。
【0019】
ディーゼルパティキュレートフィルタは、排出ガス処理装置の別の形式である。ディーゼルパティキュレートフィルタの活性部分は、フィルタとして作用する担体から成る。ディーゼルパティキュレートトラップは、ハウジング内に耐熱性材料により取付けられた1つ又は2つ以上の多孔質管状又はハニカム状構造体(しかしながら、一端部が閉じられたチャネルを有する)を有するのが良い。排出ガスからのパティキュレート(粒子状物質)は、典型的には高温燃え切りプロセスにより再生されるまで多孔質構造体中に集められる。
【0020】
別の形式の排出ガス処理装置は、選択的触媒還元ユニットであり、選択的触媒還元ユニットの活性部分は、排気流中の望ましくない生成物の化学的還元及び除去を促進するよう触媒で被覆された担体を有する。
【0021】
別の形式の排出ガス処理装置は、NOxトラップであり、NOxトラップの活性部分は、アルカリ又はアルカリ性土質材料から成る触媒担体から成る。トラップは、サイクル方式で動作し、即ち、「収着」プロセスと「再生」プロセスとの間でサイクル動作する。収着の際、担体は、NOx種を取り込み、これらをニトレート種として触媒担体の表面上に捕捉する。再生の際、還元物質がNOxトラップ中に導入され、ニトレート種は、担体から取り除かれると共に還元されて窒素になる。
【0022】
本発明の取付けシステムの非自動車用途としては、化学工業排出煙突(排気筒)用の触媒コンバータが挙げられるが、これには限定されない。
【0023】
排出ガス処理装置では、担体は、周囲温度よりも実質的に高い温度で動作する場合がある。限定されるわけではないが、排出ガス処理装置の或る特定の実施形態に関する動作温度は、約1000℃である。担体は、その動作温度が実質的に高いので、代表的には、優れた耐熱性、即ち、非常に高い融点、非常に高い熱抵抗及び非常に低い熱膨張率を有する材料から成る。これら特性を備えた物質又は材料は多く存在し、このような物質又は材料としては、多種多様なセラミック、タングステン、レニウム及び他の珍しい材料が挙げられる。優れた耐熱性を示す非常にありふれた材料の一グループは、セラミックである。排出ガス処理装置の担体は、代表的には、脆弱な材料から成り、例えば、脆い耐火性セラミック材料で形成されたモノリス型構造体であり、このような材料としては、酸化アルミニウム、二酸化珪素、酸化マグネシウム、ジルコニア、コーディエライト、炭化珪素等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0024】
多くの一般的なセラミックの特性は、靱性が低いことにある。すなわち、多くのセラミックは硬く、強固であり、或いは硬く且つ強固であるが、セラミックは、低い靱性を示す傾向があると共に低い歪レベルで割れる傾向がある。これにより、セラミックコンポーネントは、排出ガス処理装置が通常経験する機械的加重条件下において破断又は亀裂を生じやすくなる。したがって、担体を保護する手段を組み込むことが通例である。
【0025】
ハウジングは、担体を少なくとも部分的に包囲する中空物体である。ハウジングは、担体を衝撃、捩り、張力、圧縮又は担体を損傷させる場合のある他の機械的加重から保護する。或る特定の実施形態では、ハウジングは、薄手のシェルから成る。ハウジングは、良好な耐熱性、即ち、高い融点及び高い熱抵抗を備えた材料から成る。排出ガス処理装置のハウジングを構成する材料は、モノリスよりも低い熱抵抗、モノリスよりも高い熱膨張率及びモノリスよりも高い耐衝撃性を有する一般的には延性に富んだ材料である。限定するわけではないが、或る特定の実施形態では、排出ガス処理装置のハウジングは、金属又は金属合金、例えば耐熱性鋼から成る。
【0026】
本発明の取付けシステムは、少なくとも1つの比較的剛性の高い断熱層と、少なくとも1つの可撓性の取付け繊維マットとを有するのが良い。
【0027】
断熱層は、熱伝導率が低いことを特徴とする材料の層である。任意他の設計プロセスの場合と同様、排出ガス処理装置の設計の際、軽量化と小型化の検討をコストの検討に対して釣り合わせる必要がある。低い密度又は低い嵩を示すと共にあまり場所を取らない材料が望ましい。或る特定の実施形態では、断熱層は、低い密度と低い嵩の両方を示す。或る特定の実施形態では、断熱層の剛性は、歪が0.1未満の場合、3MPa〜5MPaである。図6は、断熱層の一実施形態に関して弾性率と歪の関係を表わした一例を示している。図6は、0.1未満の歪では、断熱層(独国ケンプテン所在のポレキシセルム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(Porextherm GmbH)から入手できるWDS(登録商標)フレキシブル・コンター(Flexible Contour))は、単独において弾性率がゼロ(0)にほぼ等しい取付けマット及びこれ又弾性率がゼロ(0)にほぼ等しい組み合わせ型取付けシステムと比較して、約4MPaの弾性率を有する。
【0028】
支持システムは、支持システムを構成する材料の圧縮によって生じる係合力を提供する。多くの材料は圧縮可能であるが、圧縮可能であり且つ実質的に弾性である材料だけが、これらに加えられたエネルギーを係合力としてシステムに戻すことができる。非剛性材料は、低い応力で大きな歪を生じ、歪を生じさせるエネルギー、即ち、歪エネルギーを取り込む。非剛性であり実質的に弾性の材料は、低い応力で大きな歪を生じ、歪エネルギーを取り込み、歪エネルギーの相当な部分を復元力として戻す。この復元力は、取付け又は保持力の一因となる。剛性材料は、低い応力で僅かな歪を生じ、歪エネルギーを取り込む。剛性であり且つ実質的に弾性の材料は、低い応力で僅かな歪を生じ、歪エネルギーを取り込み、歪エネルギーの相当な部分を復元力として戻す。
【0029】
本発明の取付けシステムは、1つ又は2つ以上の材料層を有し、これら材料層は全て、1度に機械的に荷重が加えられて全ての層が実質的に同一の応力を生じるようになっている。この種の加重は、「直列加重」である。直列加重の際、非剛性層は、大きな歪を生じ、従って、より剛性の高い層が取り込む歪エネルギーよりも大きな歪エネルギーを取り込む。所与の加重サイクル中に材料に取り込まれる歪エネルギーの量と材料のヒステリシス腐食との間には正の相関関係があるので、剛性の高い材料を非剛性材料と直列に設けることにより剛性の高い材料を或る特定の種類の腐食から保護することができる。或る特定の実施形態では、剛性断熱層(取付けマットに対して)は、非剛性取付けマットと直列に取付けシステム中に組み込まれる。
【0030】
断熱層は、低い熱伝導率を示すと共に実質的に非膨大性の薄い幾分可撓性のシートとして利用できる種類の材料から選択された少なくとも1つの材料を含むのが良い。或る特定の実施形態では、極めて低い熱伝導率を示す薄い可撓性のシートから成る微孔質無機断熱層である。
【0031】
このような微孔質無機断熱材は、20℃で且つ約350kg/m3の密度で約0.021W/mK以下の熱伝導率を有する薄い可撓性シートとして利用できる。或る特定の実施形態では、断熱層は、20℃で且つ約350kg/m3の密度において、約0.021W/mK以下の熱伝導率を示すと共に約1000℃以下の温度について0.055W/mK未満の熱伝導率を有する薄い可撓性シートから成る微孔質断熱材である。
【0032】
或る特定の実施形態では、断熱層は、20℃で且つ約350kg/m3の密度において約0.021W/mK以下の熱伝導率及び1000℃未満の温度については0.055W/mK未満の熱伝導率を示し、約260kg/m3〜約520kg/m3の嵩密度を有する薄い可撓性シートから成る微孔質無機断熱材である。密度の大きな微孔質無機断熱材は、担体の外面に巻き付くと共にこれにぴったり密着するのに十分可撓性がある場合、許容しうる。或る特定の実施形態では、これら特性を備えた断熱層は、約3mm〜約20mmの厚さを有する薄い可撓性シートとして利用できる。
【0033】
或る特定の実施形態では、断熱層は、実質的に非圧縮性である。一形式の微孔質無機断熱材は、約350kg/m3の密度で次の表Iに示された圧縮性能を示す。表Iでは、列記された圧力は、列記された温度で列記された割合だけ材料を圧縮するのに必要な圧力である。
【0034】
〔表1〕
表I
圧縮率 20℃ 400℃ 800℃
1% 0.034MPa 0.028MPa 0.028MPa
3% 0.089MPa 0.083MPa 0.110MPa
5% 0.151MPa 0.144MPa 0.165MPa
10% 0.275MPa 0.295MPa 0.350MPa
【0035】
微孔質無機断熱層は、微粉状金属酸化物及び不透明剤、即ち、赤外線を最小限に抑える材料又は物質を有し、オプションとして、補強無機繊維、例えばガラスフィラメントを更に有する。無機断熱層は、そのあらかじめ設けられた形態では、ポリマーフィルム、例えばポリエチレンで包封されるのが良い。ただし、フィルムは、組成ではなく、経済性及び機能性に関して選択されるのが良い。また、少量の有機繊維又は粒子を処理上、微孔質断熱層中に混ぜ込むことが可能である。
【0036】
微粉状金属酸化物は、熱分解法シリカ、アーク法シリカ、低アルカリ沈降シリカ、二酸化珪素エーロゲル、同様に調製された酸化アルミニウム及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから成るのが良い。一実施形態では、微粉状金属酸化物は、ヒュームドシリカから成る。微粉状金属酸化物は、約50〜約700m2/g、特に約70〜約400m2/gの比BET表面積を有するのが良い。
【0037】
微孔質断熱層の材料の粒径は、熱伝達の機構が制御されるに足るほど小さい。パティキュレート及び繊維状材料は、直径が約0.1ミクロン以下、即ち、空気の平均自由経路よりも小さい細孔を生じさせるよう寸法決めされている。細孔中の空気の量及び運動を制限することにより、空気に起因した熱伝導と対流による熱伝達の両方が制限され、かくして、熱伝導率が減少する。
【0038】
不透明剤は、イルメナイト、二酸化チタン、鉄(II)/鉄(III)混合酸化物、二酸化クロム、酸化ジルコニウム、二酸化マンガン、酸化鉄、ルチル、珪酸ジルコニウム、炭化珪素及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから成るのが良い。不透明剤は、約15ミクロン以下、或る特定の実施形態では約0.1〜約10ミクロンの粒径を有するのが良い。
【0039】
断熱層の補強繊維は、広範な材料群から成ることができる。材料群としては、微孔質粒子を凝集単位の状態に保持するのに必要な構造を提供することができる任意の無機繊維が挙げられる。幾つかの実施形態では、補強繊維は、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ロックウール又はこれらの組み合わせから成る群から選択される。或る特定の実施形態では、断熱層の補強繊維は、織物用ガラス繊維又は石英繊維、例えば60重量%を超え、幾つかの実施形態では90重量%を超えるSiO2含有量を有する耐熱性繊維、シリカ繊維、Rガラスで作られた織物用繊維、S2ガラスで作られた織物用繊維、ECRガラスで作られた織物用繊維及び珪酸アルミニウムで作られた繊維のうちの少なくとも1つから成るのが良い。繊維直径は、約1.5ミクロン以上であるのが良い。
【0040】
ポレキシセルム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(独国ケンプテン所在)から市販されている断熱シートは、55重量%のHDK N25高分散度シリカ(BET280m2/g)と、40重量%の珪酸ジルコニウムと、密度が320kg/m3及び厚さが10mmの5重量%織物用ガラス繊維(珪素含有量>92%)とから成る。このシートは、実質的に非圧縮性である。
【0041】
別のこのような微孔質無機断熱材料は、ポレキシセルム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(独国ケンプテン所在)から入手できるWDS(登録商標)フレキシブル・コンター断熱材である。WDS(登録商標)フレキシブル・コンター微孔質断熱材(WDS)は、約50%シリカと、約45%珪酸ジルコニウムと、補強ガラス繊維を含む約5%の他の材料とを含む例示の材料であり、これは、低密度で薄い材料の状態で上述した低い熱伝導率を示す断熱層として使用できる。限定するわけではないが、WDS(登録商標)フレキシブル・コンターは、3mm、5mm、7mm、10mm及び20mmの厚さの状態で商業的に製作されている。同様な微孔質断熱材料は、マイクロサーム(Microtherm)(テネシー州アルコア所在)から入手できる。
【0042】
微孔質無機断熱層は、担体に直接的に又は中間コンポーネントを介して間接的に係合し、このような中間コンポーネントとしては、例えば、取付けマットが挙げられるが、これには限定されない。断熱層は、ハウジングと担体との間で排出ガス処理装置中に組み込まれる。排出ガス処理装置の他のコンポーネントのうちで断熱層の配置は、どのコンポーネントが断熱層の担体側(高温側)に存在するか及びどのコンポーネントが断熱層のハウジング側(低温側)に位置するかを決定する。試験結果及び各実施形態の利点のうちの幾つかについての説明は、以下に記載されている。
【0043】
支持又は取付けマットは、実質的に弾性の圧縮性材料層である。取付けマットは、担体により、少なくとも排出ガスにより間接的に加熱作用を受け、従って、これ又、周囲温度よりも高い温度で動作する場合がある。支持又は取付けマットは、代表的には、高い温度環境に耐えることができる一方で、実質的に弾性且つ圧縮性状態を続ける材料から成る。取付けマットは、比較的安価な材料、例えばアモルファスガラス繊維、例えばS‐ガラスから高価な材料、例えば高アルミナ質セラミック酸化物繊維までの範囲にわたる材料から成っていて良い。膨大性材料並びに非膨大性材料は、取付けマットが用いられるべき用途及び条件に応じて、取付けマットに用いられ、そして引き続き用いられている。
【0044】
マットは、実質的に弾性且つ圧縮性であるので、圧縮時に、このマットは、圧縮量に実質的に比例するが、常に線形であるとは限らない復元力をもたらす。限定するわけではないが、取付けマットに関する非線形応力‐歪応答曲線の一例が、図5に示されている。図5は、非膨大性マットに関する応力と歪の関係を表わすプロットを示しており、プロットは、菱形の点の組である。取付けマットは、プロットされた3種類の材料の組のうちの最も剛性の低いものである(取付けマット‐菱形の点、断熱層‐正方形の点、断熱層を備えた取付けマット‐三角形の点)。圧縮を除くと、マットは、実質的にその元のサイズに戻るであろう。マットがその元のサイズの100%まで戻ることは必要ではなく、或る程度の塑性性能は許容でき、これは珍しいことでは全くない。
【0045】
取付けマットは、中間コンポーネントを介して間接的に又は直接的に担体に係合し、実質的にこれをハウジングに対して不動化する。少なくとも1つの取付けマットが、ハウジングと担体との間で排出ガス処理装置中に設けられる。設けられた取付けマットは、これが荷重をハウジング及び担体に中間コンポーネントを介して間接的に又は直接的に及ぼすよう圧縮される。上述したように、圧縮荷重の大きさは、圧縮の量に実質的に比例する。垂直力に起因して生じる摩擦力も又、圧縮の量に実質的に比例する。これら力、即ち圧縮力と摩擦力は、一緒になって又は別々に、担体をハウジングに対して実質的に不動化する。「実質的に不動化する」という表現は、担体がハウジングに対して動くことができる量が非常に僅かであり、保持力をもたらす材料の最大弾性歪限度のオーダーであることを意味する。或る特定の実施形態では、保持力をもたらす材料の最大弾性歪限度は、材料の厚さの約1%である。或る特定の実施形態では、少なくとも1つの取付けマットが担体に巻き付けられ、オプションとして、他の層が担体に巻き付けられると共に担体に加わる保持力をもたらすようハウジングによって圧縮される。
【0046】
取付け繊維マットという用語は、主として、耐熱性繊維、例えばセラミック繊維(しかしながら、これには限定されない)を有する少なくとも1枚のシート又は層を意味し、このような少なくとも1枚のシート又は層は、オプションとして、この少なくとも1枚のシート若しくは層の中に又は追加のシート又は層の状態で膨大性材料、補強材料等を有する。耐熱性繊維若しくはセラミック繊維、シート又は層は、種々の形態、例えば紙、ブランケット、マット又はフェルトの形態であって良い。ただし、このような形態が、必要な断熱作用及び機械的支持作用を与えることを条件とする。
【0047】
或る特定の実施形態では、取付け繊維マットは、ニューヨーク州ニアガラフォールズ所在のユニフラックス・ファースト・エルエルシー(Unifrax I LLC)から入手できるFiberfrax(登録商標)紙から成るのが良い。この製品は、バルクアルミノ‐シリケート繊維及び少量の有機ラテックス結合剤で作られている。高い担体モノリス温度の場合、ユニフラックス社から入手できるFibermax(登録商標)多結晶質ムライトセラミック繊維又はアルミナ繊維から作られた紙を用いるのが良い。使用できる他のセラミック繊維としては、玄武岩、工業用溶融スラグ、アルミナ、ジルコニア、ジルコニア‐シリケート、アルミノ‐シリケート及びクロム、ジルコン及びカルシウム改質アルミノ‐シリケート等で作られたセラミック繊維が挙げられる。
【0048】
膨大性材料は、非発泡バーミキュライト、ヒドロバイオタイト、防水性テトラ硅質フッ素マイカ(water-swelling tetrasilicic fluorine mica)、アルカリ性金属シリケート又は発泡性グラファイトのうちの少なくとも1つを含むのが良く、このような膨大性材料を所望程度の湿潤強さを提供するよう有機及び/又は無機結合剤を用いてシートの状態に形成するのが良い。膨大性材料のシートを例えば米国特許第3,458,329号明細書に記載されているように標準型製紙技術によって製造することができる。
【0049】
柔軟性で弾性の膨大性取付け繊維マットを幾つかの互いに異なる手法で製造することができ、このような手法としては、例えば手すきモールド、長網式抄紙機又はロトフォーマ抄紙機を用いることによる手積み(ハンドレイ)又は機械積みの従来型製紙プロセスが挙げられる。取付けマットコンポーネントを含む凝集水性スラリーを加圧して水の大部分を除去し、次にマットを乾燥させる。このプロセスは、当業者には周知である。
【0050】
他の実施形態では、柔軟性取付け繊維マットは、耐熱性繊維及び結合剤で作られていて、実質的に膨大性材料が含まれていない実質的に非膨張性複合シートから成るのが良い。「実質的に非膨張性」という用語は、シートが膨大性紙の場合に予想されるように熱を加えたときに容易に膨張するというようなことがないことを意味している。ただし、シートの幾分かの非実質的な膨張がその熱膨張率に基づいて生じる。
【0051】
非膨張性取付けマットに有用なセラミック繊維を含む耐熱性繊維としては、多結晶質酸化物セラミック繊維、例えばムライト、アルミナ、高アルミナ質アルミノシリケート、アルミノシリケート、ジルコニア、チタニア、酸化クロム等が挙げられる。適当な多結晶質酸化物耐火性セラミック繊維及びその製造方法は、米国特許第4,159,205号明細書及び同第4,277,269号明細書に記載されている。FIBERMAX(登録商標)多結晶質ムライトセラミック繊維は、ブランケット、マット又は紙の形態でニューヨーク州ニアガラフォールズ所在のユニフラックス・ファースト・エルエルシーから入手できる。非膨張性取付けマットに用いられる繊維は、実質的にショットなしであり、一般に、見かけ上約5%以下のオーダーの非常に低いショット含有量を有するのが良い。このような繊維の直径は、一般に、約1ミクロン〜約10ミクロンであるのが良い。
【0052】
非膨張性取付けマットに用いられる結合剤は、代表的には、性質上犠牲となることができる有機結合剤である。「犠牲」という用語は、結合剤が最終的に燃え切れて取付けマットから除かれ、後に、最終の取付けマットとして繊維のみが残るということを意味している。適当な結合剤としては、水性及び非水性結合剤が挙げられるが、利用される結合剤は、反応性の熱硬化性ラテックスである場合が多い。例としては、アクリル樹脂、スチレン‐ブタジエン、ビニルピリジン、アクリロニトリル、塩化ビニル、ポリウレタン等の水性ラテックスが挙げられるが、これらには限定されない。他の樹脂としては、低温軟質熱硬化性樹脂、例えば不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂及びポリビニルエステルが挙げられる。結合剤の溶剤としては、水又は利用される結合剤に適した有機溶剤、例えばアセトンが挙げられる。同様に、非膨張性取付けマットは、上述したような従来型製紙技術により調製できる。
【0053】
別の実施形態では、高インデックスメルト形成アルミノシリケート繊維が、特定の大きさの結晶度及びクリスタライトサイズが得られるよう制御された仕方で980℃のムライト結晶化温度よりも高い温度、例えば990℃〜約1400℃の温度で熱処理され、それにより、触媒コンバータ用取付けマットの形態での繊維性能が向上する。或る特定の実施形態では、このような繊維は、X線回折法により検出された時に少なくとも約5〜約50パーセント結晶化度を有すると共に約50Å〜約500Åのクリスタライトサイズを有する。
【0054】
さらに別の実施形態では、低温排出ガス処理装置の担体用の柔軟性非膨大性取付け繊維マットは、耐熱性のアモルファス無機繊維を有し、オプションとして、結合剤を含む。繊維は、使用温度が最高約1260℃、ヤング率が約20×106psi、幾何平均直径が約5μm以下であるのが良い。
【0055】
繊維は、アモルファスアルミナ/シリカ繊維、アルミナ/シリカ/マグネシア繊維(例えば、オハイオ州トレド所在のオーエンス・コーニング(Owens Corning)社製のS‐2ガラス)、ミネラルウール、E‐ガラス繊維、マグネシア‐シリカ繊維、例えばニューヨーク州ニアガラフォールズ所在のユニフラックス・ファースト・エルエルシー製のISOFRAX(登録商標)繊維又はカルシア‐マグネシア‐シリカ繊維、例えばニューヨーク州ニアガラフォールズ所在のユニフラックス・ファースト・エルエルシー製のINSULFRAX(登録商標)繊維若しくはサーマル・セラミックス・カンパニー(Thermal Ceramics Company)製のSUPERWOOL(商標)繊維のうちの少なくとも1つから成るのが良い。
アルミナ/シリカ繊維は、代表的には、約45%〜約60%のAl23及び約40%〜約55%のSiO2を含み、この繊維は、約50%Al23及び約50%SiO2を含むのが良い。アルミナ/シリカ/マグネシアガラス繊維は、代表的には、約64%〜約66%のSiO2、約24%〜約25%のAl23及び約9%〜約10%のMgOを含む。E‐ガラス繊維は、代表的には、約52%〜約56%のSiO2、約16%〜約25%のCaO、約12%〜約16%のAl23、約5%〜約10%のB23、最高約5%までのMgO、最高約2%までの酸化ナトリウム及び酸化カリウム並びに微量の酸化鉄及び弗化物を含み、代表的な組成は、55%SiO2、15%Al23、7%B23、3%MgO、19%CaO及び微量の上述の物質である。
【0056】
生溶解性(Biosoluble)マグネシア‐シリカ繊維は、代表的には、約69%〜約86%のSiO2、約14%〜約35%のMgO及び0%〜約7%のZrOを含む。マグネシア‐シリカ繊維に関するそれ以上の情報は、米国特許第5,874,375号明細書に見られる。生溶解性カルシア‐マグネシア‐シリカ繊維は、代表的には、約15%〜約35%のCaO、約2.5%〜約20%のMgO及び約60%〜約70%のSiO2を含む。
【0057】
生溶解性繊維は、代表的には、アモルファス無機又はガラス繊維であり、このような繊維は、メルト形成されるのが良く、高い化学的純度(約90%以上)の繊維であり、平均直径が約1〜約10μm、或る特定の実施形態では約2〜4μmであるのが良い。
【0058】
オプションとして、この非膨大性取付けマットは、約5〜約10パーセントの結合剤を含む。適当な結合剤としては、水性及び非水性結合剤又は反応性熱硬化性ラテックスが挙げられ、このような反応性熱硬化性ラテックスは、硬化後、最高少なくとも約350℃まで安定性である軟質材料である。
【0059】
或る特定の実施形態では、柔軟性取付け繊維マットは、高いシリカ含有率を有するメルト形成されたアモルファスの耐熱性浸出ガラス繊維の1枚又は2枚以上の非膨大性プライを有し、オプションとして、結合剤又は結合剤として作用するのに適した他の繊維を含む。一般に、溶出ガラス繊維は、少なくとも67重量パーセントのシリカ含有率を有する。或る特定の実施形態では、浸出ガラス繊維は、約90重量パーセント〜99重量パーセント未満までのシリカを含む。繊維は又、実質的にショットなしである。これら溶出ガラス繊維の平均繊維直径は、少なくとも約3.5ミクロン以上であるのが良く、大抵の場合、少なくとも約5ミクロン以上である。平均すると、ガラス繊維は、代表的には、約9ミクロンから最高約14ミクロンまでの直径を有する。
【0060】
シリカ含有率が高く且つ触媒コンバータ又は他の公知のガラス処理装置用の取付けマットの製造に用いられるのに適した溶出ガラス繊維の例としては、独国ベルケム・フィベール・マテリアルズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング(BelChem Fiber Materials GmbH)からBELCOTEXという商標名で入手でき或いは、カリフォルニア州ガーデナ所在のハイトコ・カーボン・コンポジッツ・インコーポレイテッド(Hitco Carbon Composites, Inc.)からREFRASILという登録商標で入手できる溶出ガラス繊維が挙げられる。
【0061】
或る特定の実施形態では、繊維、例えばS2‐ガラス等又は耐火セラミック繊維、例えばアルミナ/シリカ繊維等をマット全体の100重量パーセントに基づいて、0重量パーセント〜約50重量パーセントの量で取付けマットに添加するのが良い。取付けマットは、結合剤を含んでも良く或いは含まなくても良い。
【0062】
或る特定の実施形態では、シリカ含有率が高いメルト形成浸出ガラス繊維は、無機粒子状物質を繊維表面に少なくとも部分的に被着させることにより表面処理が施され、その結果、繊維を含む取付けマットの保持圧力性能が向上する。有用な無機粒子状物質としては、アルミナ、シリカ、ジルコニア及びこれらの混合物のコロイド分散系が挙げられるが、これらには限定されない。
【0063】
排出ガス処理装置の脆弱な担体用の柔軟性粒子状取付けマットは、米国特許第4,863,700号明細書、同第5,032,441号明細書、同第5,384,188号明細書、同第5,482,686号明細書、同第5,580,532号明細書、同第5,666,726号明細書、同第5,811,063号明細書、同第6,231,818号明細書、同第6,855,298号明細書、同第7,033,412号明細書及び米国特許出願公開第2006/0008395号明細書に開示されている。
【0064】
取付けマットは、1枚又は2枚以上の膨大性繊維マットだけから成っていても良く、又は、1枚又は2枚以上の非膨大性繊維マットだけから成っていても良く、或いは、ハイブリッド型マット内の少なくとも1枚の膨大性マット又は層と少なくとも1枚の非膨大性マット又は層の組み合わせから成っていても良い。
【0065】
さらに、別々の取付けマット、例えば、担体の近くに位置する少なくとも1枚の膨大性マット及びハウジングの近くに位置する少なくとも1枚の非膨大性マット(これらには限定されない)が微孔質断熱層のどちらかの表面に接触しても良い。
【0066】
排出ガス処理装置は、周囲温度から動作温度までサイクル動作するので、このような装置を構成するコンポーネントは、これらの個々の動作温度に達する。排出ガス処理装置の任意所与のコンポーネントに関する動作温度は、排出ガス処理装置それ自体の動作温度よりも小さい場合がある。というのは、幾つかのコンポーネントは、高い温度のコンポーネントから断熱されるからである。コンポーネントが昇温すると、これらコンポーネントは、これらの熱膨張率に比例して膨張することになる。
【0067】
この膨張により、コンポーネントの歪状態に変化が生じる。全てのコンポーネントが理想的な熱歪を生じるわけではないので、熱歪により、コンポーネント干渉力が変化する。すなわち、コンポーネントの歪状態の変化により、これに対応してコンポーネントの応力状態が変化し、その結果、このコンポーネントとこのコンポーネントが係合している他のコンポーネントの間に働く力が変化する。
【0068】
或る特定の実施形態では、断熱層は、担体に直接係合するよう設けられ、取付け繊維マットは、断熱層を覆った状態で配置されてこれに直接係合し、ハウジングは、取付けマットを覆って配置されてこれに直接係合する。他の実施形態では、取付け繊維マットは、担体に直接係合するよう設けられ、断熱層は、取付けマットを覆って配置されてこれに直接係合し、ハウジングは、断熱層を覆って配置されてこれに直接係合する。
【0069】
断熱層が担体と取付けマットとの間に位置決めされた実施形態では、断熱層は、取付けマット及び断熱層の低温側に設けられた他の全てのコンポーネント(低温側コンポーネント)を担体及び担体から流れる熱から断熱し、それにより、取付けマット及び他の低温側コンポーネントについて、担体の動作温度よりも低い動作温度の実現を促進する。
【0070】
周囲温度は、取付け繊維マットの動作温度よりも低いので、低い取付けマット動作温度及び低い他の低温側コンポーネント動作温度の実現の促進により、任意所与の動作サイクル中、取付けマット及び他の低温側コンポーネントの受ける温度変化の大きさと最大温度の両方が減少する。温度変化の大きさの減少の結果として、これに対応して、取付けマット及び他の低温側コンポーネントの熱歪の変化の大きさが減少する。コンポーネントの歪状態の変化により、これに対応して、コンポーネントの応力状態の変化が生じると共にその結果としてこのコンポーネントとこのコンポーネントが係合している他のコンポーネントの間に働く力の変化が生じるので、コンポーネントの熱歪の変化の大きさの減少の結果として、このコンポーネントとこのコンポーネントが係合している他のコンポーネントの間に働く力の変化が減少する。
【0071】
担体は、他のコンポーネントによる圧縮に起因して生じる取付け力によって定位置に保持される。このような取付け力には、設計上の上限と下限が存在する。上限は、担体の損傷を引き起こすのに必要な力であり、取付け力は、担体を損なうほどではない。下限は、担体が供用中に受ける最大変位力であり、取付け力は、少なくとも、供用中に受けるあらゆる変位力に抗して担体を定位置に保持するのに十分である。上述したように、熱歪により、動作の変動中に取付け力が実際に生じる場合がある。取付け力を生じさせるコンポーネントを断熱することにより、コンポーネントの熱歪の変化の大きさは、これらコンポーネントと担体との間の取付け力の変化の大きさと同様に減少する。他のコンポーネントと担体との間の取付け力の変化の大きさを減少させることにより、取付け力をこれらの設計限度内に維持することが単純化される。
【0072】
取付け繊維マットが担体と断熱層との間に位置決めされている実施形態では、断熱層は、取付けマットを周囲環境から隔離し、代替手段よりも高い取付けマット動作温度の実現を可能にする。或る特定の実施形態では、取付け繊維マットは、膨大性材料を更に有する。取付けマットが膨大性材料を有する実施形態では、取付けマットを担体と断熱層との間に位置決めすることにより、膨大性材料中に膨大応答を生じさせるのに足るほど高い取付けマット動作温度の実現が可能になる。
【0073】
本システムについて、図2及び図3に示されている例示の実施形態を参照して説明する。注目されるべきこととして、図2及び図3に示されている実施形態は、例示であるに過ぎず、担体取付けシステム又は排出ガス処理装置をいかなる意味においても限定するものと解されてはならない。
【0074】
図2を参照すると、排出ガス処理装置210が、断面で示されている。排出ガス処理装置210は、排出ガスが軸方向に流通する細長い担体211を有している。未処理の排出ガス218は、細長い担体211の第1の端部に流入する。排出ガスは、細長い担体211の本体内で処理される。処理済みの排出ガス219は、細長い担体211の第2の端部から流出する。細長い担体211は、外面211aを有し、その少なくとも一部分は、細長い担体211に実質的に巻き付けられた断熱層212と直接係合するのが良い。断熱層212は、外面212aを有し、その少なくとも一部分は、断熱層212に実質的に巻き付けられた取付け繊維マット213と直接係合するのが良い。取付けマット213は、外面213aを有し、この外面は、取付けマット213を包囲しているシェル214と直接係合するのが良い。シェル214は、周囲環境215にさらされている外面214aを有する。
【0075】
図3を参照すると、排出ガス処理装置320が断面で示されている。排出ガス処理装置320は、排出ガスが軸方向に流通する細長い担体321を有している。未処理の排出ガス328が、細長い担体321の第1の端部に流入する。排出ガスは、細長い担体321の本体内で処理される。処理済みの排出ガス329は、細長い担体321の第2の端部から流出する。細長い担体321は、外面321aを有し、その少なくとも一部分は、細長い担体321に実質的に巻き付けられている取付け繊維マット323に直接係合している。細長い担体は、オプションとして、1つ又は2つ以上の密封リング330に係合する。取付けマット323は、外面323aを有し、この外面は、取付けマット323に少なくとも実質的に巻き付けられている断熱層322に直接係合している。断熱層322は、外面322aを有し、この外面は、断熱層322を包囲しているシェル326に直接係合している。シェル326は、周囲環境327にさらされている外面326aを有している。
【0076】
独国ケンプテン所在のポレキシセルム・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング製のWDS(登録商標)フレキシブル・コンターのサンプル、微孔質無機断熱層材料を用いると共に典型的な膨大性取付け繊維マット材料及び典型的な非膨大性取付け繊維マット材料のサンプルを用いて試験を行った。ASTM‐C177に準拠した試験を取付け繊維マット材料及び本発明の断熱層材料の各々に対して実施した。温度に対して熱伝導率を関係づけるデータが3種類の材料の各々について得られた。結果としてのデータは、図4にグラフ図としてプロットされている。要約すると、300℃〜1000℃の温度では、線43で表示された微孔質無機断熱層材料は、0.055W/mK未満の熱伝導率を示し、取付け繊維マット材料の両方、即ち、線41で表示された典型的な膨大性材料と線42で表示された典型的な非膨大性材料の両方は、終始変わらず、0.080W/mKを超える熱伝導率を示した。本発明の断熱層材料は、あらゆる温度において取付けマット材料のいずれよりも優れた断熱材であった。
【0077】
取付けマットは、1枚又は2枚以上の膨大性繊維マットだけから成っていても良く、又は、1枚又は2枚以上の非膨大性繊維マットだけから成っていても良く、或いは、ハイブリッド型マット内の少なくとも1枚の膨大性マット又は層と少なくとも1枚の非膨大性マット又は層の組み合わせから成っていても良い。さらに、少なくとも1つの取付けマット、例を挙げると、担体の近くに位置する少なくとも1枚の膨大性マット及びハウジングの近くに位置する少なくとも1枚の非膨大性マット(これらには限定されない)が微孔質断熱層の両方の表面に接触しても良い。
【0078】
高温面/低温面試験
高温面/低温面測定試験を取付け繊維マット及び微孔質断熱層を有するサンプル並びに取付け繊維マットを有するが、微孔質断熱層を備えていないサンプルに対して実施した。試験に関する説明は次の通りである。試験結果により、微孔質無機断熱層が設けられていることによる取付けシステムの結果としての低温面に対する影響が分かった。
【0079】
非膨大性マットか非膨大性マットと微孔質断熱材の組み合わせかのいずれかを有する取付けシステム内に担体を収容した。このようなシステムは、同一のおよそのハウジング‐担体隙間及びほぼ同じ隙間嵩密度を有していた。マットと担体との間のインターフェースを、抵抗発熱体を用いて950℃まで加熱した。このシステムは、1時間950℃で浸軟するようにし、ハウジング表面に溶接された熱電対を用いて低温面温度をモニタした。結果は、2つのシステムの平均である。結果は、表IIに示されている。
【0080】
〔表2〕
表II
取付け材料 隙間(mm) 低温面温度(℃)
非膨大性マット 6.99±0.000 353
微孔質断熱材+非膨大性マット 6.83±0.060 308
【0081】
試験結果の示すところによれば、微孔質無機断熱層について著しい断熱上の利点が得られ、微孔質無機断熱層は、低い低温面温度の実現を促進している。
【0082】
サイクル動作試験
上述したように、取付けシステムがその寿命中に耐える温度サイクルは、或る特定の取付けシステムにより生じる取付け力に対してマイナスの影響を及ぼす。ひとまとまりとなってこの現象を生じさせる幾つかの機構を考察することなく、このような現象は、或る特定の取付けマットが受ける温度サイクルの多い回数及び高い振幅と相関関係がある。その結果、上述したように、微孔質無機断熱層の低温側に或る特定の非膨大性取付けマットを配置することにより、もしそうでなければ性能に悪影響を及ぼす場合のある温度変化の大きさが減少するので、高いサイクル機能性の実現を促進させることができる。
【0083】
微孔質断熱材を設けたことによる取付けシステム性能に対する影響を判定するために1000回のサイクル試験を実施した。各試験において、試験対象の材料層を試験機器上で上側定盤と下側定盤との間で500kPaの一定最大圧力(Pmax)まで圧縮した。500kPaの応力荷重を加えたことの結果として得られる隙間幅は、「試験隙間」であった。有限要素熱的分析モデルを用いて「隙間熱膨張」を計算して周囲温度から動作温度までの熱的変化に起因した予想隙間幅変化を予想した。隙間熱膨張幅の計算値を試験隙間幅に加えることにより「膨張後隙間」幅を計算した。上側定盤及び下側定盤を別個独立に高温面温度及び低温面温度までそれぞれ加熱した。所望の温度にいったん達すると、隙間を試験隙間と膨張後隙間との間で1000回にわたりサイクル動作させた。1000回目のサイクルにおいて膨張後隙間のところで測定した圧力は、以下の表IIIにおいてPmin,1000値として報告されている。
【0084】
微孔質断熱材は、シェル温度及び隙間膨張の大きさを実質的に減少させた。試験条件及び試験結果は、以下の表IIIに一覧表示されている。
【0085】
【表1】

【0086】
取付け性能は、取付けシステムにより生じる取付け圧力で測定された。1000回のサイクル後において、非膨大性取付け繊維マットだけから成る取付けシステムは、15.1kPaの取付け力を生じさせ、WDS断熱材だけから成る取付けシステムは、14.8kPaの取付け力を生じさせ、これに対し、非膨大性マットとWDS断熱材の層とから成る取付けシステムは、99.8kPaの取付け力を生じさせた。このデータの実証するところによれば、取付けシステムに上述したような微孔質無機断熱材料を設けると、温度サイクル動作の悪影響が軽減される。
【0087】
本システムを種々の図に示されているような種々の実施形態と関連して説明したが、他の同様な実施形態を用いることができ、或いは、同一の機能を実行するために上述の実施形態の改造例及び追加例を想到できることは理解されるべきである。さらに、種々の例示の実施形態を組み合わせると、所望の結果を得ることができる。したがって、担体取付けシステム及び排出ガス処理装置は、単一の実施形態のどれにも限定されず、特許請求の範囲の記載に基づく本発明の広さ及び範囲において解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排出ガス処理装置の脆弱な担体のための支持システムであって、
前記脆弱な担体の少なくとも一部分に直接又は間接的に係合するようになった微孔質の無機断熱層と、
前記脆弱な担体の少なくとも一部分に直接又は間接的に係合するようになった柔軟性の取付け繊維マットとを有する、支持システム。
【請求項2】
前記無機断熱層は、微粉状金属酸化物及び不透明剤を含み、オプションとして、補強無機繊維を更に含む、請求項1記載の支持システム。
【請求項3】
前記微粉状金属酸化物は、熱分解法シリカ、アーク法シリカ、低アルカリ沈降シリカ、二酸化珪素エーロゲル、熱分解法酸化アルミニウム、アーク法酸化アルミニウム、低アルカリ沈降酸化アルミニウム、酸化アルミニウムエーロゲル、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから成る、請求項2記載の支持システム。
【請求項4】
前記不透明剤は、イルメナイト、二酸化チタン、鉄(II)/鉄(III)混合酸化物、二酸化クロム、酸化ジルコニウム、二酸化マンガン、酸化鉄、ルチル、珪酸ジルコニウム、炭化珪素、及びこれらの混合物のうちの少なくとも1つから成る、請求項2記載の支持システム。
【請求項5】
前記補強繊維は、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、ロックウール、織物用ガラス繊維又は石英ファイバ、又はこれらの混合物のうちの少なくとも1つの繊維から成る、請求項2記載の支持システム。
【請求項6】
前記無機断熱層は、二酸化珪素及び珪酸ジルコニウムを含み、オプションとして、補強ガラスフィラメントを含む、請求項2記載の支持システム。
【請求項7】
前記無機断熱層は、約20℃〜約800℃の温度の場合、約0.8KJ/kgKの比熱容量を有する、請求項6記載の支持システム。
【請求項8】
前記無機断熱層は、0.02未満の歪の場合、約3MPa以上の弾性率を有すると共に約260kg/m3以上の嵩密度を有する、請求項1記載の支持システム。
【請求項9】
前記無機断熱層は、1000℃未満の平均温度の場合、0.055W/mK未満の熱伝導率を有する、請求項1記載の支持システム。
【請求項10】
前記無機断熱層は、約260kg/m3〜約520kg/m3の嵩密度を有する、請求項1記載の支持システム。
【請求項11】
脆弱な担体と、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の前記支持システムとを有する、排出ガス処理装置。
【請求項12】
前記脆弱な担体を包囲した金属製ハウジングと、前記微孔質無機断熱層と、前記取付け繊維マットとを更に有する、請求項11記載の排出ガス処理装置。
【請求項13】
前記無機断熱層は、前記脆弱な担体に直接係合している、請求項12記載の排出ガス処理装置。
【請求項14】
前記取付け繊維マットは、前記無機断熱層と前記ハウジングとの間に設けられている、請求項13記載の排出ガス処理装置。
【請求項15】
前記取付け繊維マットは、実質的に非膨大性である、請求項14記載の排出ガス処理装置。
【請求項16】
前記取付け繊維マットは、前記脆弱な担体に直接係合している、請求項12記載の排出ガス処理装置。
【請求項17】
前記取付け繊維マットは、膨大性である、請求項16記載の排出ガス処理装置。
【請求項18】
複数の取付け繊維マットを有する、請求項12記載の排出ガス処理装置。
【請求項19】
前記脆弱な担体は、内燃エンジンからの排出ガスを受け入れるようになった触媒コンバータモノリス又はディーゼルパティキュレートフィルタである、請求項12記載の排出ガス処理装置。
【請求項20】
前記脆弱な担体は、選択的触媒還元ユニット、NOxトラップ、又は化学工業排出煙突内に収納される、請求項12記載の排出ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−538202(P2010−538202A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522948(P2010−522948)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/010178
【国際公開番号】WO2009/032147
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(500421462)ユニフラックス ワン リミテッド ライアビリティ カンパニー (19)
【Fターム(参考)】