説明

排気ガス浄化装置

【課題】ハウジング内に流れが反転される排気ガスの経路を有する構成であっても、ハウジング内の第2浄化体の放熱を抑制するほか、従来よりも第2浄化体を安定してハウジング内に保持することができる排気ガス浄化装置の提供にある。
【解決手段】複数の第1浄化体は、第2浄化体の外周面に接するとともに第1浄化体間の間隔を空けて配設され、第2浄化体は、複数の第1浄化体を介してハウジング11の内壁と間隔を空けて保持され、連通路24が形成される。第1浄化体は、ハウジング11の入口と接続される第1排気入口と、第1排気入口と反対側に位置し、連通路24と連通する第1排気出口と備え、第2浄化体は、連通路24と連通する第2排気入口と、ハウジング11の出口と接続される第2排気出口とを備え、連通路24の第1排気出口側から出た排気ガスに対して添加剤を噴射する添加剤噴射弁が設置された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス浄化装置に関し、特に、酸化触媒やSCR触媒を備えた排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気ガス浄化装置としては、例えば、特許文献1に開示された粒子フィルタ機構が存在する。
特許文献1に開示された粒子フィルタ機構は、例えば、自動車のエンジンと排気口との間に接続される。
この粒子フィルタ機構では、ハウジング内に外側壁、内側壁、共通環状壁が設けられており、これらの壁によりハウジング内に第1経路区間、第2経路区間、第3経路区間が形成されている。
第1経路区間には触媒コンバータおよび粒子フィルタが設置されている。
触媒コンバータはハウジングの入口から入った排気ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を除去し、粒子フィルタは排気ガスに含まれるすす粒子(CO)を除去する。
第2経路区間は、第1経路区間の外周側に位置するように形成されており、第2経路区間には触媒コンバータや粒子フィルタは設置されていない。
第3経路区間はハウジングの中心、すなわち第1経路区間の内周側に位置するように形成されており、第3経路区間には粒子フィルタが設置されている。
【0003】
エンジンからの排気ガスは粒子フィルタ機構を通り排気口へ導出されるが、例えば、特許文献1の図2aに示される実施形態では、粒子フィルタ機構における排気ガスは第1経路区間、第2経路区間、第3経路区間の順に通過する。
第1経路区間ではハウジングの入口側から出口側へ向かう排気ガスの流れとなり、第2経路区間では排気ガスの流れが逆向きとなって出口側から入口側へ向かう流れとなり、第3経路区間では、再び逆向きとなって入口側から出口側へ向かう流れとなる。
特許文献1に開示された粒子フィルタ機構によれば、第1経路区間、第2経路区間、第3経路区間により排気ガスの流れを逆向きとすることで、粒子フィルタ機構の長さを短くすることができる。
【0004】
また、別の従来技術としては、例えば、特許文献2に開示されたディーゼルエンジン用の排気ガス後処理システムが知られている。
特許文献2に開示された排気ガス後処理システムは、排気ガス微粒子フィルタ、排気ガス微粒子フィルタの下流側に接続される窒素酸化物還元触媒及び還元剤供給装置を有している。
この排気ガス後処理システムによれば、排気ガス微粒子フィルタは、フィルタボデーの中へ実質的に半径方向に排気ガスが流入し、ろ過された排気ガスのためのフィルタ内側区域を有し、フィルタ内側区域から軸方向に排気ガスを流出する多孔性の円筒状フィルタボデーの形態で具体化される。
還元剤は、還元剤供給装置によってフィルタ内側区域の中に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2009−520906号公報
【特許文献2】特表2006−504026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された粒子フィルタ機構は、第1経路区間、第2経路区間、第3経路区間の形成により長い排気経路を実現する一方で、粒子フィルタ機構の長さを短くする点の利点が開示されているに過ぎない。
また、特許文献2に開示された排気ガス後処理システムは、還元剤としての尿素水溶液がハウジング内において注入されるものの、SCR触媒コンバータ・モノリスは仕切り板により、触媒コンバータ・ディスクとは離れてハウジング内に保持されており、両者の間での熱交換は行われない。
また、特許文献2に開示された排気ガス後処理システムでは、ハウジング中央の収集マニホールドの周囲にSCR触媒コンバータ・モノリスが設置されているので、SCR触媒コンバータ・モノリスが外部の温度変化の影響を受け易く、通過する排気ガスの温度が放熱により下がり易いという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、ハウジング内に流れが反転される排気ガスの経路を有する構成であっても、ハウジング内の第2浄化体の放熱を抑制するほか、従来よりも第2浄化体を安定してハウジング内に保持することができる排気ガス浄化装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、内燃機関から排出される排気ガスを浄化する複数の第1浄化体と、複数の前記第1浄化体を通過した後の排気ガスを浄化する第2浄化体と、複数の前記第1浄化体および前記第2浄化体が収容されたハウジングと、を備えた排気ガス浄化装置において、複数の前記第1浄化体は、前記第2浄化体の外周面に接するとともに前記第1浄化体間の間隔を空けて配設され、前記第2浄化体は、複数の前記第1浄化体を介して前記ハウジングの内壁と間隔を空けて保持され、前記ハウジングの内壁と前記第1浄化体の外周面および前記第2浄化体の外周面により区画されることで連通路が形成され、前記第1浄化体は、前記ハウジングの入口と接続される第1排気入口と、前記第1排気入口と反対側に位置し、前記連通路と連通する第1排気出口と備え、前記第2浄化体は、前記連通路と連通する第2排気入口と、前記ハウジングの出口と接続される第2排気出口とを備え、前記第1排気出口から出た排気ガスに対して添加剤を噴射する添加剤噴射弁が設置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1浄化体と連通路を通る排気ガスが第2浄化体の周りを囲むことから、第2浄化体は外気の影響を受け難くなり、第2浄化体の放熱を抑制することができる。
また、第2浄化体はハウジング内において複数の第1浄化体を介して保持されることから、第2浄化体を安定してハウジング内の中央側に保持させることができる。
【0010】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第1排気出口と前記連通路との間に第1空間部を有し、前記第2排気入口と前記連通路との間に第2空間部を有し、前記第1空間部および前記第2空間部にて排気ガスの流れが反対方向へ反転されてもよい。
【0011】
この場合、第1空間部および第2空間部において、排気ガスの流れが反対方向へ反転されることから、ハウジングの長さよりも充分に長い排気ガスの経路を設定することができる。
【0012】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第2浄化体は、複数の前記第1浄化体による前記第2浄化体に対する押圧により保持されてもよい。
【0013】
この場合、第2浄化体が第1浄化体の押圧により保持されることから、第1浄化体と第2浄化体との間での熱伝達が容易であり、第1浄化体の熱が第2浄化体へ移動されることにより、第2浄化体の放熱をさらに抑制することができる。
【0014】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第1浄化体には、その周囲を覆うカバー部材を含み、前記第2浄化体は、前記カバー部材との接触により押圧されてもよい。
【0015】
この場合、第1浄化体と第2浄化体との間には第1浄化体を覆うカバー部材のみが介在されるので、第1浄化体と第2浄化体との間での熱伝達が容易となる。
また、カバー部材と第2浄化体との接触により第2浄化体をハウジング内に安定的に設置することができる。
さらに、第2浄化体にカバー部材を設ける必要がなく、第2浄化体にカバー部材を設ける場合と比べると製造コストを低減することができる。
【0016】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第2浄化体は、複数の前記第1浄化体との接着により保持されてもよい。
【0017】
この場合、第1浄化体と第2浄化体とが接着されるので、第1浄化体の第2浄化体に対する押圧の場合と比べて、第2浄化体をハウジング内により安定的に保持させることができる。
【0018】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第1浄化体には、その周囲を覆う第1カバー部材を含み、前記第2浄化体には、その周囲を覆う第2カバー部材とを含み、前記第2浄化体は、前記第1カバー部材と第2カバー部材との接着により保持されてもよい。
【0019】
この場合、第1カバー部材および第2カバー部材の材料を接着に適した材料を選択することができ、接着に適した材料を選択することで第2浄化体をより一層安定的にハウジング内に保持させることができる。
【0020】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第1浄化体は酸化触媒であり、前記第2浄化体はSCR触媒、もしくはSCR触媒およびDPFであり、前記添加剤はSCR触媒用の還元剤であってもよい。
【0021】
この場合、酸化触媒により浄化された排気ガス中にSCR触媒に必要な還元剤を添加することができる。還元剤の例としては、尿素水や気体アンモニアなどが挙げられる。
添加された還元剤は連通路の通過中に排気ガス中で分散され、SCR触媒における還元作用に適した状態にすることができる。
【0022】
また、本発明では、上記の排気ガス浄化装置において、前記第1浄化体は酸化触媒であり、前記第2浄化体はDPF、もしくはDPFおよびSCR触媒であり、前記添加剤は、前記DPFの再生用燃料であってもよい。
【0023】
この場合、酸化触媒により浄化された排気ガス中にDPF再生に必要な燃料を添加することができる。
添加された燃料は連通路を通過中に排気ガス中で加熱・分散され、DPFにおいて燃焼され、DPFの再生を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ハウジング内に流れが反転される排気ガスの経路を有する構成であっても、ハウジング内の第2浄化体の放熱を抑制するほか、従来よりも第2浄化体を安定してハウジング内に保持することができる排気ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排気ガス浄化装置の全体構成図である。
【図2】図1のA−A線矢視図である。
【図3】排気ガス浄化装置における排気ガスの流れを示す説明図である。
【図4】第2の実施形態に係る排気ガス浄化装置の全体構成図である。
【図5】図2のB−B線矢視図である。
【図6】第3の実施形態に係る排気ガス浄化装置の要部断面図である。
【図7】第4の実施形態に係る排気ガス浄化装置の要部断面図である。
【図8】第5の実施形態に係る排気ガス浄化装置の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る排気ガス浄化装置を図面に基づいて説明する。
第1の実施形態では、内燃機関としてのディーゼルエンジンを搭載する車両に適用した例について説明する。
図1に示す排気ガス浄化装置10は、ディーゼルエンジン(以下「エンジン」と標記する)から排出された排気ガスを流通する排気通路に設置されている。
【0027】
図1に示す排気ガス浄化装置10のハウジング11は、円盤状の一方の端壁部11Aと、円盤状の他方の端壁部11Bと、端壁部11A、11Bの外周縁間を接続する円筒状の周壁部11Cを備えている。
端壁部11Aには排気ガスの入口となる4個の入口孔12が、入口孔12の中心が端壁部11Aの円盤形状の円盤と同心円の円上に配置されるように形成され、端壁部11Bの中央には、排気ガスの出口となる出口孔13が形成されている。
図1に示すように、排気通路におけるエンジンと排気ガス浄化装置10との間は、上流側排気管14と、上流側排気管14の出口端に接続され、4本に分岐された枝管15Aを有する分岐管15が備えられている。
排気通路における排気ガス浄化装置10と車外との間には、下流側排気管16が備えられている。
【0028】
図2に示すハウジング11内には、周壁部11C側に配設される4個の酸化触媒17と、ハウジング11の中央側に保持される排気ガス中の微粒子成分を除去するDPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)21とSCR(Selective Catalytic reduction)触媒22が収容されている。
【0029】
酸化触媒17は断面形状が円形であり、押出成形により形成されるハニカム状のコーディエライト等の触媒担体と、触媒担体の表面に担持させた酸化触媒成分と有する。
酸化触媒17は排気ガス中に含まれる一酸化炭素を酸化させて二酸化炭素とする浄化機能を有する。
酸化触媒17は第1カバー部材としての第1キャニングケース18内に固定される。
この実施形態では、酸化触媒17および第1キャニングケース18は第1浄化体を構成する。
この実施形態では、第1キャニングケース18の一方の端部は第1排気入口としての入口端18Aであり、入口端18Aはハウジング11の入口孔12から外部へ突出し、分岐管15の端部と接続されている。
第1キャニングケース18の他方の端部は第1排気出口としての出口端18Bであり、入口端18Aと反対側に位置する出口端18Bはハウジング11の他方の端壁部11Bに対向している。
【0030】
図2に示すように、各酸化触媒17は、周壁部11Cの周方向において互いに隣り合う酸化触媒17と周方向の間隔を空けて設置されている。
酸化触媒17の第1キャニングケース18は溶接によりハウジング11の周壁部11Cの内面に固定されている。
第1キャニングケース18は、入口端18Aから酸化触媒17を通り出口端18Bへ向かう排気ガスの流れとなる第1排気ガス経路を構成する。
【0031】
SCR触媒22は、選択的触媒還元方式の触媒であり、ゼオライト系材料により形成された触媒成分と、この触媒成分を担持する触媒担体を備えている。
SCR触媒22は、排気ガスに含まれるNOxを浄化する浄化機能を有する。
DPF21は押出成形により形成されたハニカム状のフィルタを備えており、DPF21は排気ガス中のPM(Particulate Matter)を捕集する。
この実施形態では、SCR触媒22がDPF21の下流側に位置するように、DPF21とSCR触媒22は第2カバー部材としての第2キャニングケース23により一体化されている。
ここでは、第2キャニングケース23により一体化されたDPF21およびSCR触媒22を、SCR/DPF複合体20とする。
この実施形態では、SCR/DPF複合体20および第2キャニングケース23は第2浄化体を構成する。
【0032】
SCR/DPF複合体20はハウジング11の中央側に位置し、第2キャニングケース23の一方の端部は第2排気入口としての入口端23Aであり、入口端23Aはハウジング11の一方の端壁部11Aと対向している。
第2キャニングケース23の他方の端部は第2排気出口としての出口端23Bであり、出口端23Bはハウジング11の出口孔13から外部へ突出しており、下流側排気管16と接続されている。
第2キャニングケース23は周囲の各酸化触媒17の第1キャニングケース18と接しており、SCR/DPF複合体20は周囲に配置された各酸化触媒17によりハウジング11の内壁と間隔を空けてハウジング11内の中央側に保持されている。
つまり第2キャニングケース23内のSCR/DPF複合体20は第1キャニングケース18の押圧により保持されている。
第2キャニングケース23は、入口端23AからSCR/DPF複合体20を通り出口端23Bへ向かう排気ガスの流れとなる第2排気ガス経路を構成する。
【0033】
図2に示すように、SCR/DPF複合体20の周方向において互いに隣り合う酸化触媒17を備えた第1キャニングケース18が周方向の間隔を空けて設置されている。
このため、各第1キャニングケース18の間には、周壁部11C、第1キャニングケース18およびSCR/DPF複合体20を備えた第2キャニングケース23により区画される空間が形成される。
この空間は酸化触媒17を通過した排気ガスをSCR/DPF複合体20の入口端23Aへ通す連通路24を構成する。
【0034】
また、第1キャニングケース18の出口端18Bとハウジング11の他方の端壁部11Bとの間に間隔が設けられることにより、ハウジング11内における酸化触媒17の出口と端壁部11Bとの間には第1空間部25が形成される。
第1空間部25は、周壁部11C、第1キャニングケース18の出口端18Bおよび第2キャニングケース23により区画される環状の空間部である。
このため、酸化触媒17は出口端18Bを通じてハウジング11内と連通する。
【0035】
連通路24の第1排気出口側となるハウジング11の周壁部11Cの端壁部11B寄りには、添加剤噴射弁としての尿素水ノズル27が第1空間部25へそのノズル端を向けて設置されている。
この実施形態では、尿素水ノズル27は酸化触媒17の数に対応し、第1キャニングケース18の出口端18Bの近傍に設置されている。
尿素水ノズル27は、尿素水タンク29からの添加剤としてのSCR触媒用の尿素水を尿素水ノズル27へ圧送するポンプ28と配管を介して接続されている。
第1空間部25は、酸化触媒17を通過した排気ガスの流れを反転するとともに、尿素水ノズル27により酸化触媒17を通過した排気ガスへ噴射された尿素水を混合するための空間部として機能する。
【0036】
他方、第2キャニングケース23の入口端23Aとハウジング11の一方の端壁部11Aとの間に間隔が設けられることにより、端壁部11AとSCR/DPF複合体20の入口との間に第2空間部26が形成される。
第2空間部26は、周壁部11C、第1キャニングケース18および第2キャニングケース23の入口端23Aにより区画される空間部である。
このため、SCR/DPF複合体20は入口端23Aを通じてハウジング11内と連通する。
【0037】
第1空間部25は連通路24と連通しており、酸化触媒17を通過した排気ガスの流れの向きを反転させて連通路24へ排気ガスを案内する機能を果す。
第2空間部26は連通路24と連通しており、連通路24を通過した排気ガスの流れの向きを反転させてSCR/DPF複合体20へ排気ガスを案内する機能を果す。
連通路24は、出口端18Bと連通する第1空間部25から入口端23Aと連通する第2空間部26へ向かう排気ガスの流れとなる反転排気ガス経路を構成する。
【0038】
第1の実施形態に係る排気ガス浄化装置10では、ハウジング11内において第1キャニングケース18の第1排気ガス経路と、第1空間部25と、連通路24による反転排気ガス経路と、第2空間部26と、第2キャニングケース23の第2排気ガス経路とによる排気ガスの流路が構成される。
第1排気ガス経路と第2排気ガス経路における排気ガスの流れ方向は互いに一致し、反転排気ガス経路の流れ方向は、第1排気ガス経路と第2排気ガス経路における排気ガスの流れ方向と反対方向となる。
つまり、ハウジング11内の排気ガスの流路は、ハウジング11内において折り返されており、ハウジング11の長さよりも充分に長い距離が設定される。
【0039】
次に、第1の実施形態に係る排気ガス浄化装置10による排気ガスの浄化について図3に基づき説明する。
図3では排気ガス浄化装置10における排気ガスの流れを矢印により示している。
エンジンから排出された排気ガスは、排気通路における上流側排気管14を通り、分岐管15により分岐されて酸化触媒17を通過する。
酸化触媒17では排気ガス中に含まれる一酸化炭素が酸化触媒17により酸化されて二酸化炭素となる。
酸化触媒17を通過した排気ガスは第1キャニングケース18の出口端18Bから出て第1空間部25に達する。
【0040】
第1空間部25では、尿素水ノズル27から尿素水が噴射されて、排気ガスに尿素水が添加され、排気ガスと混合される。
尿素水は排気ガスに含まれるNOx量に応じて添加される。
第1空間部25では、排気ガスへの尿素水の添加とともに、排気ガスの流れ方向が反転されて、排気ガスは第1空間部25から第2空間部26へ向けて連通路24を通過する。
排気ガスが第1空間部25から連通路24を通り、第2空間部26へ至る過程で排気ガスに添加された尿素水が排気ガスの熱により加水分解されてアンモニアと二酸化炭素になる。
第1キャニングケース18内を通過する排気ガスと連通路24を通過する排気ガスにより、第2キャニングケース23およびSCR/DPF複合体20は周囲から加熱され昇温する。
【0041】
連通路24を通り第2空間部26に達した排気ガスは、第2空間部26において流れ方向を反転され、流れ方向が反転された排気ガスは第2キャニングケース23の入口端23Aに入る。
第2キャニングケース23内を通る排気ガスはDPF21を通過する。DPF21では、通過する排気ガスに含まれるPMが捕集され、PMが除去された排気ガスはSCR触媒22を通過する。なお、DPF21により捕集されたPMが堆積されると燃料添加等によりPMを燃焼してDPF21の再生を行う。
【0042】
SCR触媒22を通過する排気ガスは、排気ガスの温度が低い場合には、排気ガスがSCR触媒22を通過するときに排気ガス中のアンモニアはSCR触媒22に吸着される。
排気ガス温度が高く、SCR触媒22が触媒活性温度以上の場合には、SCR触媒22に吸着されているアンモニアとNOxが反応し、窒素および水となり、排気ガス中のNOxが浄化される。
SCR触媒22を通過した排気ガスは第2キャニングケース23の出口端23Bから下流側排気管16へ排出される。
【0043】
上記の排気ガス浄化装置10は、以下の作用効果を奏する。
(1)排気ガス浄化装置10では、酸化触媒17を備えた第1キャニングケース18と連通路24がSCR/DPF複合体20の周りを囲むことから、SCR/DPF複合体20は、第1キャニングケース18や連通路24を通過する排気ガスに覆われている状態にある。第1キャニングケース18や連通路24を通過する排気ガスが外気に対する断熱層として機能するため、SCR/DPF複合体20は外気の影響を受け難くなり、SCR/DPF複合体20の放熱を抑制することができる。
(2)SCR/DPF複合体20を備えた第2キャニングケース23は、第1キャニングケース18を介してハウジング11内の中央側に保持されることから、第2キャニングケース23を保持するための部材を必要とすることがない。DPF21やSCR触媒22を安定してハウジング11内に設置することができる。
【0044】
(3)SCR/DPF複合体20は第1キャニングケース18の押圧により保持されることから、酸化触媒17とSCR/DPF複合体20との間での熱伝達が容易である。つまり排気ガスの経路においてSCR/DPF複合体20よりも上流側となる酸化触媒17の熱のSCR/DPF複合体20への移動が可能となり、SCR/DPF複合体20の放熱をさらに抑制することができる。
(4)SCR/DPF複合体20が排気ガスの熱により径を拡張する方向に熱膨張しても、第1キャニングケース18がSCR/DPF複合体20の第2キャニングケース23を押圧するから、SCR/DPF複合体20の熱膨張を抑制することができる。
(5)ハウジング11内の排気ガスの経路における上流側に複数の酸化触媒17を通る第1排気ガス経路が設定され、下流側に単一のSCR/DPF複合体20を通る第2排気ガス経路が設定されているから、ハウジング11において上流側から下流側へ至る間に排気ガスを集約することができる。従って、例えば、上流側に単一の浄化体を通る第1排ガス経路を設定し、下流側に複数の浄化体を通る第2排ガス経路を設定した場合では、ハウジング内で排気ガスを下流側へ向けて分配することになるが、本実施形態では、ハウジング11内において分配管を設ける必要がなく、部品点数の抑制や小型化を図ることが可能となる。また、第1空間部25および第2空間部26において、排気ガスの流れが反対方向へ反転されることから、ハウジング11の長さよりも充分に長い排気ガスの経路をハウジング11内に設定することができる。
【0045】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態に係る排気ガス浄化装置について説明する。
第2の実施形態の排気ガス浄化装置では、酸化触媒17が2本1組としてSCR触媒の周りに配設される例である。
図4は第2の実施形態に係る排気ガス浄化装置30を示し、その構成のうち、第1の実施形態の排気ガス浄化装置10と同一の要素については第1の実施形態の説明を援用して共通の符号を用いる。
【0046】
図4に示す排気ガス浄化装置30では、ハウジング11の一方の端壁部11Aに8個の入口孔31が形成され、他方の端壁部11Bの中央には出口孔32が形成されている。
上流側排気管14と排気ガス浄化装置10との間は、8本の枝管33Aを有する分岐管33が備えられている。
ハウジング11内の周壁部11C側には8個の酸化触媒17が設置され、ハウジング11の中央にはSCR/DPF複合体20が設置されている。
酸化触媒17は第1カバー部材としての第1キャニングケース34により保持される。
この実施形態では、酸化触媒17および第1キャニングケース34は第1浄化体を構成する。
第1キャニングケース34の第1排気入口としての入口端34Aはハウジング11の入口孔31から外部へ突出し、分岐管33の端部と接続されている。
第1キャニングケース34の第1排気出口としての出口端34Bはハウジング11の他方の端壁部11Bに対向している。
【0047】
図5に示すように、第1キャニングケース34に保持される酸化触媒17は2本1組とし、1組毎の酸化触媒17が周壁部11Cの周方向において互いに隣り合う別の組の酸化触媒17と間隔を空けて設置されている。
2本1組の第1キャニングケース34は、酸化触媒17が互いに平行になるように相互に当接されている。
第1キャニングケース34は溶接により周壁部11Cの内面に固定されている。
第1キャニングケース34は、入口端34Aから酸化触媒17を通り出口端34Bへ向かう排気ガスの流れとなる第1排気ガス経路を構成する。
【0048】
DPF21とSCR触媒22は第2カバー部材としての第2キャニングケース35により一体化され、SCR/DPF複合体20を形成している。
この実施形態では、SCR/DPF複合体20および第2キャニングケース35は第2浄化体を構成する。
第2キャニングケース35の第2排気入口としての入口端35Aはハウジング11の一方の端壁部11Aと対向しており、第2キャニングケース35の第2排気出口としての出口端はハウジング11の出口孔32から外部へ突出し、下流側排気管16と接続されている。
第2キャニングケース35は周囲の各酸化触媒17の第1キャニングケース34と接触しており、SCR/DPF複合体20は周囲に配置された各酸化触媒17によりハウジング11内の中央側に保持されている。
第2キャニングケース35は、入口端35AからSCR/DPF複合体20を通り出口端へ向かう排気ガスの流れとなる第2排気ガス経路を構成する。
【0049】
図5に示すように、SCR/DPF複合体20の周方向において互いに隣り合う2本1組の第1キャニングケース34が間隔を空けて設置されている。
このため、組毎の第1キャニングケース34の間には、周壁部11C、第1キャニングケース34および第2キャニングケース35により区画される空間が形成される。
この空間は酸化触媒17を通過した排気ガスをSCR/DPF複合体20へ通す連通路36を構成する。
【0050】
また、ハウジング11内における酸化触媒17の出口と端壁部11Bとの間には第1空間部37が形成される。
第1空間部37は、周壁部11C、第1キャニングケース34の出口端34Bおよび第2キャニングケース35により区画される空間部であり、酸化触媒17の出口はハウジング11内と連通する。
ハウジング11の周壁部11Cの端壁部11B寄りに設置された尿素水ノズル27は酸化触媒17の組数に対応して設置されており、この実施形態では4本である。
【0051】
他方、第2キャニングケース35の入口端35Aとハウジング11の一方の端壁部11Aとの間隔が設けられることにより、端壁部11AとSCR/DPF複合体20の入口との間に第2空間部38が形成される。
第2空間部38は、周壁部11C、第1キャニングケース34および第2キャニングケース35の入口端35Aにより区画される空間部であり、SCR/DPF複合体20の入口はハウジング11内と連通する。
【0052】
第1空間部37は連通路36と連通しており、酸化触媒17を通過した排気ガスの流れの向きを反転させて連通路36へ排気ガスを案内する。
第2空間部38は連通路36と連通しており、連通路36を通過した排気ガスの流れの向きを再び反転させてSCR/DPF複合体20へ排気ガスを案内する。
連通路36は、出口端34Bと連通する第1空間部37から入口端35Aと連通する第2空間部38へ向かう排気ガスの流れとなる反転排気ガス経路を構成する。
【0053】
この実施形態の排気ガス浄化装置30では、第1キャニングケース34の第1排気ガス経路と、第1空間部37と、連通路36による反転排気ガス経路と、第2空間部38と、第2キャニングケース35の第2排気ガス経路とによる排気ガスの流路がハウジング11内において構成される。
この実施形態によれば、第1の実施形態と比べて第2キャニングケース35と当接する第1キャニングケース34が多いことから、ハウジング11内の中央側における酸化触媒17によるSCR/DPF複合体20の保持がより安定的となる。
また、第2キャニングケース35と当接する第1キャニングケース34が多いため、酸化触媒17からSCR/DPF複合体20へ伝達される熱量を多くすることができる。
【0054】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る排気ガス浄化装置について説明する。
第3の実施形態に係る排気ガス浄化装置は、ハウジング、酸化触媒、キャニングケース、SCR/DPF複合体の構造が第1、第2の実施形態と異なる。
図6は第3の実施形態に係る排気ガス浄化装置40の横断面を示す断面図である。
【0055】
図6に示す排気ガス浄化装置40のハウジング41は中空長方体である。
ハウジング41の一方の端壁部には入口孔(図示せず)が形成され、他方の端壁部には出口孔(図示せず)が形成されている。
ハウジング41内の中央には円柱状のSCR触媒44が位置しており、SCR触媒44の両側にSCR触媒44を保持する酸化触媒42がそれぞれ配設されている。
SCR触媒44は、排気ガスの浄化機能を有する触媒を担持する触媒担体から構成され、第1、第2の実施形態のようにキャニングケースを備えない。
【0056】
この実施形態の酸化触媒42は排気ガスの浄化機能を有する。
酸化触媒42の外周面は4つの面により形成されており、そのうちの3つの面は平面であり、残る一つの面はSCR触媒44の外周面に倣う円弧面となっている。
酸化触媒42の外周はカバー部材としてのキャニングケース43により覆われている。
図6に示すキャニングケース43は、ハウジング41の周壁部41Aに対して溶接により固定され、キャニングケース43における酸化触媒42の円弧面に倣う円弧部43Aは、SCR触媒44の外周面に接触する。
従って、SCR触媒44は、両側の酸化触媒42により挟持されてハウジング41内の中央側に保持される。
キャニングケース43の円弧部43AはSCR触媒44の外周の1/4以上と接触するから、2個のキャニングケース43によりSCR触媒44の外周の半分以上が覆われており、SCR触媒44がキャニングケース43から脱落することはない。
【0057】
酸化触媒42の第1排気入口としての入口端(図示せず)はハウジング41の入口孔から突出されており、この入口端はエンジンからの排気ガスを分岐する分岐管(図示せず)の枝管と接続されている。
また、酸化触媒42の第1排気出口としての出口端(図示せず)はハウジング41の他方の端壁部と対向し、ハウジング41内と連通する。
SCR触媒44の第2排気入口としての入口端(図示せず)は、ハウジング41の一方の端壁部と対向してハウジング41内と連通しており、SCR触媒44の第2排気出口としての出口端(図示せず)は、出口孔から突出されている。
この実施形態に係る排気ガス浄化装置40では、図示はされないが、第1の実施形態の第1空間部25に相当する第1空間部(図示せず)がハウジング41内におけるキャニングケース43の出口端とハウジング41の他方の端壁部との間に形成されている。
また、第1の実施形態の第2空間部26に相当する第2空間部(図示せず)が、ハウジング41の一方の端壁部とSCR触媒の入口端との間に形成される。
【0058】
この実施形態では、図6に示すように、SCR触媒44を挟持する2個の酸化触媒42およびSCR触媒44がハウジング41内の空間を分割する。つまり、ハウジング41内の空間はハウジング41の内壁と酸化触媒42の外周面およびSCR触媒44の外周面により区画されている。
分割された2つの空間は連通路45を構成し、連通路45はキャニングケース43の出口端とハウジング41の他方の端壁部との間に形成されている第2空間部とハウジング41の一方の端壁部とSCR触媒44の入口端との間に形成される第1空間部と連通されている。
連通路45の第1排気出口側となるハウジング41の周壁部41Aにおける一方の端壁部寄りには、添加剤噴射弁としての尿素水ノズル(図示せず)が第1空間部へノズル端を向けて設置されている。
この実施形態では、尿素水ノズルは酸化触媒42の数に対応して設置され、尿素水ノズルは、添加剤としてのSCR触媒用の尿素水を噴射する。
従って、キャニングケース43の出口端とハウジング41の他方の端壁部との間に形成されている第1空間部は、酸化触媒42を通過した排気ガスの流れを反転するとともに、尿素水ノズルにより酸化触媒42を通過した排気ガスへ噴射された尿素水を混合するための空間部として機能する。
【0059】
この実施形態の排気ガス浄化装置40では、キャニングケース43内の酸化触媒42を通って第1空間部へ出た排気ガスは、第1空間部において流れの向きを反転させ、連通路45を通る。
連通路45を通った排気ガスはSCR触媒44の入口端側の第2空間部において流れの向きを反転させ、SCR触媒44を通る。
【0060】
この実施形態によれば、SCR触媒44の外周面に倣う円弧部43Aを備えた2個のキャニングケース43によりSCR触媒44が挟まれてハウジング41内の中央側に保持されるから、SCR触媒44の熱膨張による過度の変形をキャニングケース43のSCR触媒44の押圧により抑制することができる。
キャニングケース43の円弧部43Aは、SCR触媒44の外周面の1/4以上を覆うように設けられており、キャニングケース43が2個のみであっても、キャニングケース43によりSCR触媒44をより確実に安定してハウジング41内の中央側に保持することができる。
また、キャニングケース43の円弧部43Aは、SCR触媒44の外周面の1/4以上を覆うように設けられていることから、酸化触媒42からSCR触媒44への熱伝達が容易であるほか、SCR触媒44の放熱を抑制することができる。
【0061】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る排気ガス浄化装置について説明する。
第4の実施形態に係る排気ガス浄化装置は、ハウジング、酸化触媒、キャニングケース、SCR/DPF複合体の構造が第1、第2の実施形態と異なる。
図7は第4の実施形態に係る排気ガス浄化装置40の横断面を示す断面図である。
【0062】
図7に示す排気ガス浄化装置50のハウジング51は中空長方体である。
図示はしないが、ハウジング51の一方の端壁部には複数の入口孔が形成され、他方の端壁部には一つの出口孔が形成されている。
ハウジング51内の中央には円柱状のSCR触媒56が位置しており、SCR触媒56の周りにはSCR触媒56を保持する大径酸化触媒52および小径酸化触媒54が配設されている。
【0063】
この実施形態の大径酸化触媒52および小径酸化触媒54は径寸法が異なるだけであり、大径酸化触媒52の径寸法は小径酸化触媒54の径寸法よりも大きく設定されている。
大径酸化触媒52は第1カバー部材としての大径キャニングケース53内に固定され、小径酸化触媒54は別の第1カバー部材としての小径キャニングケース55内に固定されている。
図7に示す大径キャニングケース53および小径キャニングケース55はハウジング51に溶接により固定されている。
大径酸化触媒52および小径酸化触媒54はSCR触媒56の周囲において交互に配設され、大径酸化触媒52はハウジング51内のコーナー側に位置し、小径酸化触媒54はハウジング51内においてコーナーとコーナーの間に位置する。
【0064】
SCR触媒56は第2カバー部材としてのSCRキャニングケース57内に固定され、SCRキャニングケース57は大径キャニングケース53および小径キャニングケース55と接触する。
このため、SCR触媒56は大径酸化触媒52および小径酸化触媒54との接触によりハウジング51内の中央側に保持される。
【0065】
大径酸化触媒52および小径酸化触媒54における第1排気入口としての入口端(図示せず)はハウジング51の複数の入口孔から夫々突出されており、これらの入口端はエンジンからの排気ガスを分岐する分岐管(図示せず)の枝管と接続されている。
また、大径酸化触媒52および小径酸化触媒54の第1排気出口としての出口端はハウジング51の他方の端壁部と対向し、ハウジング51内と連通する。
SCR触媒56の入口端は、ハウジング51の一方の端壁部と対向してハウジング51内と連通しており、SCR触媒56の出口端は、出口孔から突出されている。
【0066】
この実施形態に係る排気ガス浄化装置50では、図示はされないが、第1の実施形態の第1空間部25に相当する第1空間部がハウジング51内における大径キャニングケース53および小径キャニングケース55の出口端とハウジング51の他方の端壁部との間に形成されている。
また、第1の実施形態の第2空間部26に相当する第2空間部が、ハウジング51の一方の端壁部とSCR触媒56の入口端との間に形成される。
【0067】
この実施形態では、図7に示すように、大径酸化触媒52と、小径酸化触媒54と、SCR触媒56がハウジング51内の空間を分割する。
分割により形成された各空間は連通路58を構成し、連通路58は大径キャニングケース53および小径キャニングケース55の出口端とハウジング51の他方の端壁部との間に形成されている第1空間部とハウジング51の一方の端壁部とSCR触媒56の入口端との間に形成される第2空間部と連通されている。
【0068】
この実施形態の排気ガス浄化装置50では、大径キャニングケース53内の大径酸化触媒52又は小径キャニングケース55内の小径酸化触媒54を通って第1空間部へ出た排気ガスは、第1空間部において流れの向きを反転させ、連通路58を通る。
連通路58を通った排気ガスはSCR触媒56の入口端側の第2空間部において流れの向きを反転させ、SCR触媒56を通る。
【0069】
この実施形態によれば、径寸法の異なる大径酸化触媒52および小径酸化触媒54によりSCR触媒56を保持するから、連通路58の流路断面積を小さくすることが可能となり、連通路58を通じたSCR触媒56の放熱を抑制することができる。
また、SCR触媒56の周囲において大径酸化触媒52および小径酸化触媒54が交互に配設されていることから、放熱によるSCR触媒56の温度分布の偏りを抑制することができる。
【0070】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態に係る排気ガス浄化装置について説明する。
第5の実施形態の排気ガス浄化装置では、第1浄化体が酸化触媒であり、第2浄化体がDPFあり、添加剤噴射弁が再生燃料を噴射する燃料噴射弁である点、第1の実施形態の構成と異なる。
第1の実施形態と共通する要素については、第1の実施形態の説明を援用するほか、符号を共通して用いる。
【0071】
図8は第5の実施形態に係る排気ガス浄化装置60の横断面を示す断面図である。
排気ガス浄化装置60のハウジング11内には、周壁部11C側に設置される4個の酸化触媒17と、ハウジング11の中央に設置されるDPF61が収容されている。
この実施形態では、ハウジング11内にSCR触媒は備えられていない。
DPF61は押出成形により形成されたハニカム状のフィルタを備えており、DPF61は排気ガス中のPMを捕集し、排気ガスを浄化する浄化機能を有する第2浄化体に相当する。
【0072】
この実施形態のDPF61は第2カバー部材としての第2キャニングケース62によりその周囲が覆われている。
第2キャニングケース62は周囲の各酸化触媒17の第1キャニングケース18と接触しており、DPF61は周囲に配置された各酸化触媒17によりハウジング11内の中央側に保持されている。
DPF61はハウジング11の中央に配置され、第2キャニングケース62の一方の端部は第2排気入口としての入口端62Aであり、入口端62Aはハウジング11の一方の端壁部11Aと対向している。
第2キャニングケース62の他方の端部は第2排気出口としての出口端62Bであり、出口端62Bはハウジング11の出口孔13から外部へ突出しており、下流側排気管16と接続されている。
第2キャニングケース62は、入口端62AからDPF61を通り出口端23Bへ向かう排気ガスの流れとなる第2排気ガス経路を構成する。
【0073】
連通路24の第1排気出口側となるハウジング11の周壁部11Cの端壁部11B寄りには、添加剤噴射弁としての燃料噴射ノズル63が第1空間部25へノズル端を向けて設置されている。
この実施形態では、燃料噴射ノズル63は酸化触媒17の数に対応して設置されている。
燃料噴射ノズル63は、燃料タンク65からの添加剤としてのDPF再生用燃料を燃料噴射ノズル63へ圧送する燃料ポンプ64と配管を介して接続されている。
従って、第1空間部25は、酸化触媒17を通過した排気ガスの流れを反転するとともに、燃料噴射ノズル63により酸化触媒17を通過した排気ガスへ噴射された燃料を混合するための空間部として機能する。
【0074】
この実施形態の排気ガス浄化装置によれば、DPF61にPMが堆積した場合に、燃料噴射ノズル63からDPF再生用の燃料を第1空間部25へ向けて噴射する。
そして、噴射された燃料は連通路24を通過中に排気ガス中において加熱・分散され、DPF61を通過するときにPMを燃焼して除去し、これによりDPF61を再生することができる。
【0075】
なお、上記の各実施形態に係る排気ガス浄化装置は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の各実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の第1、2、4、5の実施形態では、第1キャニングケースと第2キャニングケースが接触することで第2浄化体が第1浄化体により保持される構成としたが、例えば、第1キャニングケースと第2キャニングケースを溶接等により接着し、接着により第2浄化体を第1浄化体により保持するようにしてもよい。この場合、接触だけの場合と比較してより確実にハウジング内に第2浄化体を保持することができる。
○ 上記の第1、2の実施形態では、第2浄化体としてSCR触媒とDPFが一体化されたSCR/DPF複合体としたが、第2浄化体は第3、第4実施形態のようにSCR触媒単独としてもよいし、第5実施形態のようにDPF単独としてもよい。第2浄化体をSCR触媒単独とする場合、添加剤噴射弁は還元剤を噴射する還元剤噴射弁とすることが好ましい。また、SCR/DPF複合体であって第2浄化体をDPFとする場合には添加剤噴射弁は燃料噴射弁とすることが好ましい。また、SCR/DPF複合体の場合には、添加剤噴射弁としての還元剤噴射弁と燃料噴射弁を近接して設けるようにしてもよい。
○ 上記の第1、2、5の実施形態では、添加剤噴射弁をハウジングの周壁部に設けたが、周壁部に限らず、ハウジングの端壁部に設けてもよい。添加剤噴射弁は添加剤の添加条件に応じて数や取り付け位置を設定すればよい。
○ 上記の第1、2、4、5の実施形態では、断面形状が円形の第1浄化体および第2浄化体としたが、第1浄化体および第2浄化体の断面形状は特に円形に限定されない。第1浄化体および第2浄化体の断面形状は、例えば、多角形、楕円、長円としてもよく、自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0076】
10、30、40、50、60 排気ガス浄化装置
11、41、51 ハウジング
17、42 酸化触媒(第1浄化体)
18、34 第1キャニングケース(第1カバー部材)
18A、34A 入口端(第1排気入口)
18B、34B 出口端(第1排気出口)
20 SCR/DPF複合体
21 DPF
22、44、56 SCR触媒(第2浄化体の一部又は全部)
23、35 第2キャニングケース(第2カバー部材)
23A、35A 入口端(第2排気入口)
23B 出口端(第2排気出口)
24、36、45、58 連通路
25、37 第1空間部
26、38 第2空間部
27 尿素水ノズル(添加剤噴射弁)
43 キャニングケース(カバー部材)
52 大径酸化触媒(第1浄化体)
53 大径キャニングケース(第1カバー部材)
54 小径酸化触媒(第1浄化体)
55 小径キャニングケース(第1カバー部材)
57 SCRキャニングケース(第2カバー部材)
61 DPF(第2浄化体)
62 第2キャニングケース(第2カバー部材)
63 燃料噴射ノズル(添加剤噴射弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスを浄化する複数の第1浄化体と、
複数の前記第1浄化体を通過した後の排気ガスを浄化する第2浄化体と、
複数の前記第1浄化体および前記第2浄化体が収容されたハウジングと、を備えた排気ガス浄化装置において、
複数の前記第1浄化体は、前記第2浄化体の外周面に接するとともに前記第1浄化体間の間隔を空けて配設され、
前記第2浄化体は、複数の前記第1浄化体を介して前記ハウジングの内壁と間隔を空けて保持され、
前記ハウジングの内壁と前記第1浄化体の外周面および前記第2浄化体の外周面により区画されることで連通路が形成され、
前記第1浄化体は、前記ハウジングの入口と接続される第1排気入口と、前記第1排気入口と反対側に位置し、前記連通路と連通する第1排気出口と備え、
前記第2浄化体は、前記連通路と連通する第2排気入口と、前記ハウジングの出口と接続される第2排気出口とを備え、
前記第1排気出口から出た排気ガスに対して添加剤を噴射する添加剤噴射弁が設置されていることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記第1排気出口と前記連通路との間に第1空間部を有し、前記第2排気入口と前記連通路との間に第2空間部を有し、前記第1空間部および前記第2空間部にて排気ガスの流れが反対方向へ反転されることを特徴とする請求項1記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記第2浄化体は、複数の前記第1浄化体による前記第2浄化体に対する押圧により保持されることを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記第1浄化体には、その周囲を覆うカバー部材を含み、
前記第2浄化体は、前記カバー部材との接触により押圧されることを特徴とする請求項3記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記第2浄化体は、複数の前記第1浄化体との接着により保持されることを特徴とする請求項1又は2記載の排気ガス浄化装置。
【請求項6】
前記第1浄化体には、その周囲を覆う第1カバー部材を含み、
前記第2浄化体には、その周囲を覆う第2カバー部材とを含み、
前記第2浄化体は、前記第1カバー部材と第2カバー部材との接着により保持されることを特徴とする請求項5記載の排気ガス浄化装置。
【請求項7】
前記第1浄化体は酸化触媒であり、
前記第2浄化体はSCR触媒、もしくはSCR触媒およびDPFであり、
前記添加剤はSCR触媒用の還元剤であることを特徴とする請求項6記載の排気ガス浄化装置。
【請求項8】
前記第1浄化体は酸化触媒であり、
前記第2浄化体はDPF、もしくはDPFおよびSCR触媒であり、
前記添加剤は、前記DPFの再生用燃料であることを特徴とする請求項6記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−231672(P2011−231672A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102086(P2010−102086)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】