説明

排気浄化装置

【課題】排ガスが流通する排気管内に複数の触媒を収納する際に、触媒同士を効率よく近接配置することができる排気浄化装置を提供することにある。
【解決手段】内燃機関からの排ガスが流通する排気管20に設けられ、排ガス中の被酸化成分を酸化する酸化触媒31と、酸化触媒31の排ガス流通方向下流側に配置され、当該酸化触媒31と比べて大径であり、排ガス中の微粒子状物質を捕集するパティキュレートフィルタ32とを備えた排気浄化装置であって、酸化触媒31とパティキュレートフィルタ32の間にスペーサ10が設けられ、スペーサ10は、酸化触媒31の外縁部31cに嵌まり込む嵌込部10aと、パティキュレートフィルタ32の端面部32aと面接触する平面部10bとを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置に関し、特にディーゼルエンジンなどから排気される排ガスの処理に用いて好適な排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどからの排ガスを排気する排気管には、酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst)およびパティキュレートフィルタ(Diesel particulate filter)が設けられている。酸化触媒は、パティキュレートフィルタの排ガス流通方向上流側に配置されている。パティキュレートフィルタにより排ガス中のパティキュレートマター(微粒子状物質、以下、PMと称す)を捕集している。一方、酸化触媒に未燃燃料(HC)を間欠的に供給し、酸化触媒で発生した酸化熱によってパティキュレートフィルタを昇温することで、パティキュレートフィルタに捕集したPMを強制的に燃焼除去している。すなわち、パティキュレートフィルタの再生処理は間欠的に行われている。
【0003】
上述した通り、酸化触媒で発生させた酸化熱によってパティキュレートフィルタを昇温しているため、酸化触媒とパティキュレートフィルタとを近接配置することが望ましい。ところで、酸化触媒およびパティキュレートフィルタを排気管内へ圧入により挿入しており、酸化触媒およびパティキュレートフィルタを近接配置させるべく挿入しすぎるとこれらが接触して破損しまう可能性がある。
【0004】
このようなことから、排気管内にて酸化触媒とパティキュレートフィルタを所定の位置に容易に配置するための技術が種々開発されている。例えば、特許文献1には、第1の触媒担体と第2の触媒担体との間に段ボールからなり、触媒担体よりも小径の円筒状である可燃性スペーサを配置したタンデム型触媒コンバータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3674694号(例えば、明細書の段落[0022]−[0024]、[図3]など参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したタンデム型触媒コンバータでは、第1,第2の触媒担体と可燃性スペーサとマット状担体保持部材を一体化し、これを圧入により触媒ケース内に挿入しているため、可燃性スペーサを第1,第2の触媒担体の軸心に対して平行に配置しないと、圧入により可燃性スペーサがずれたり外れたりし、触媒担体同士が接触して破損してしまう可能性があった。圧入による荷重を触媒担体よりも小径な可燃性スペーサにより第1,第2の触媒担体間で伝達しており、可燃性スペーサの強度の観点から、可燃性スペーサを短くして触媒担体同士を近接配置するには限界があった。
【0007】
以上のことから、本発明は上述したような問題を解決するために為されたものであって、排ガスが流通する排気管内に複数の触媒を収納する際に、触媒同士を効率よく近接配置することができる排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決する本発明に係る排気浄化装置は、
内燃機関からの排ガスが流通する排気管に設けられ、
前記排ガス中の被酸化成分を酸化する酸化触媒と、
前記酸化触媒の排ガス流通方向下流側に配置され、当該酸化触媒と比べて大径であり、前記排ガス中の微粒子状物質を捕集するフィルタとを備えた排気浄化装置であって、
前記酸化触媒と前記フィルタの間にスペーサが設けられ、
前記スペーサは、前記酸化触媒の外縁部に嵌まり込む嵌込部と、前記フィルタと面接触する平面部とを有する
ことを特徴とする。
【0009】
上述した課題を解決する本発明に係る排気浄化装置は、上述した排気浄化装置であって、
前記スペーサは、排ガスが流通する方向から見て少なくとも前記酸化触媒の径断面と重なる領域が可燃性材料で構成される
ことを特徴とする。
【0010】
上述した課題を解決する本発明に係る排気浄化装置は、上述した排気浄化装置であって、
前記スペーサは、排ガスが流通する方向から見て前記酸化触媒の径断面と重なる領域より外側が前記排ガスの熱への耐性を有する材料で構成される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る排気浄化装置によれば、スペーサの嵌込部が酸化触媒の縁部に嵌まり込むため、スペーサを酸化触媒に取り付けるだけでスペーサを位置決めできる。スペーサの平面部がフィルタと面接触するため、スペーサとフィルタの接触不良や位置ずれを抑制することができる。よって、排気管内に酸化触媒およびフィルタを収納する際に、これらを効率よく近接配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る排気浄化装置の一部切欠き断面図である。
【図2】図1におけるII−II矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態に係る排気浄化装置について、図1および図2に基づいて具体的に説明する。
【0014】
本実施形態に係る排気浄化装置は、図1に示すように、ディーゼルエンジンなど内燃機関からの排ガスが流通する排気管20内に設けられる、酸化触媒(以下、酸化触媒と称す)31とパティキュレートフィルタ(フィルタ)32とを具備する。パティキュレートフィルタ32は、酸化触媒31の排ガス流通方向下流側に配置される。排気管(外筒)20は、小径をなす小径部21と、小径部21と比べて大径をなす大径部22と、小径部21と大径部22とを接続し、拡径する拡径部23とを有する。排気管20の小径部21には酸化触媒31が配置される。排気管20の大径部22にはパティキュレートフィルタ32が配置される。
【0015】
酸化触媒31は、筒内ポスト噴射や排気管噴射によって未燃燃料(HC)が供給されると、排ガス中の被酸化成分、例えば、未燃炭化水素類、一酸化炭素、窒素酸化物や黒鉛炭素成分を酸化し、酸化反応により発熱する触媒である。この熱がパティキュレートフィルタ32に伝わりパティキュレートフィルタ32が昇温することにより、パティキュレートフィルタ32に捕集したパティキュレートマター(微粒子状物質、以下、PMと称す)を燃焼除去している。
【0016】
パティキュレートフィルタ32は、ハニカム形状に形成されたフィルタであって、排ガスに含まれるPMを捕集するフィルタである。パティキュレートフィルタ32は酸化触媒31と比べて大径をなす形状に形成されている。パティキュレートフィルタ32の担体材料としては、従来のパティキュレートフィルタの担体材料と同じもの、例えば、炭化ケイ素、コージェライト、アルミニウムチタネートなどが挙げられる。
【0017】
酸化触媒31の外周部31bには、マット状担体保持部材41が巻き掛けられている。パティキュレートフィルタ32の外周部32bには、マット状担体保持部材42が巻き掛けられている。マット状担体保持部材41,42としては、ガラスウールなどが挙げられる。
【0018】
酸化触媒31の直径は、パティキュレートフィルタ32の直径より10mm以下、好ましくは6mm以下である。これは、酸化触媒31の直径がパティキュレートフィルタ32の直径に対し10mmよりも小さいと、酸化触媒31での酸化反応による熱をパティキュレートフィルタ32の径方向全体に亘って均一に伝えることができなくなるためである。酸化触媒31及びパティキュレートフィルタ32は、互いの軸心が一致するよう配置することが好ましい。これにより、酸化触媒31を通過した排ガスをパティキュレートフィルタ32に効率よく流通させることができる。
【0019】
酸化触媒31とパティキュレートフィルタ32の間にはスペーサ10が設けられる。スペーサ10は、内環状部材11と外環状部材12とで構成される。内環状部材11は、酸化触媒31の径断面内を構成するものであって、酸化触媒31の外径と同じ外径であり、中央に穴部11dを有し円環状に形成されている。外環状部材12は、酸化触媒31の径断面外を構成するものであって、酸化触媒31および内環状部材11の外径と同じ内径であり、中央に穴を有する円環状に形成されている。外環状部材12の内周面部12dは、内環状部材11の外周面部11cに密着している。外環状部材12の端面部12bと内環状部材11の端面部11bとで平面部10bを構成している。外環状部材12の外径は、パティキュレートフィルタ32の外径と略同等に形成されている。スペーサ10の内環状部材11の端面部11aと外環状部材12の内周面部12dとで、酸化触媒31の縁部31cが嵌まり込む嵌込部10aを構成している。
【0020】
スペーサ10の内環状部材11の材料としては、酸化触媒31およびパティキュレートフィルタ32を排気管20内に圧入により挿入して接触したときに酸化触媒31の端面部31aおよびパティキュレートフィルタ32の端面部32aが傷まず、排ガスの熱で完全に熱分解する可燃性材料であって、例えば、高密度ポリエチレンなどの樹脂が挙げられる。これにより、スペーサ10の内環状部材11が排ガスの熱により燃焼してなくなるため酸化触媒31を通過した排ガスの圧損の上昇を回避できる。さらに、運転当初におけるスペーサ10の残存期間中に熱分解によって発生した炭化水素類がPMと結びつき、そのまま燃焼するので、パティキュレートフィルタ32の再生処理時間を減らすことにつながり、延いては燃費が向上する。樹脂の厚さ(排ガス流通方向の大きさ)は、2mm以下、好ましくは1mm以下である。これは、樹脂が2mmより厚くなると、酸化触媒31とパティキュレートフィルタ32との近接配置に対する寄与が低下するためである。
【0021】
スペーサ10の外環状部材12としては、排ガスの熱への耐性を有する材料であって、例えば鉄や鋼などの金属板により構成される。これにより、酸化触媒31を通過した排ガスおよびこれに同伴するPMが、パティキュレートフィルタ32の外周部分へ拡散することなく、パティキュレートフィルタ32の中央部分へ案内されることになり、パティキュレートフィルタ32で捕集したPMを効率よく燃焼除去することができる。このようにスペーサ10の外環状部材12が排ガスの案内部材として機能する。また、パティキュレートフィルタ32の外周部分に排ガスの流れない空気層(断熱領域)が形成され、保温性が向上する。
【0022】
ここで、上述した構成の排気浄化装置の組み立て手順について説明する。
まず、酸化触媒31の外周部31bにマット状担体保持部材41を巻き掛ける。パティキュレートフィルタ32の外周部32bにマット状担体保持部材42を巻き掛ける。
【0023】
続いて、外環状部材12の内周面部12dに内環状部材11を配置し、外環状部材12の端面部12bと内環状部材11の端面部11bを揃えこの状態にて外環状部材12と内環状部材11とを固定し、スペーサ10を作製する。
【0024】
続いて、酸化触媒31の一方の端面部31aにスペーサ10を嵌め込んで酸化触媒31にスペーサ10を取り付ける。スペーサ10または酸化触媒31に両面テープを貼り付けておくことも可能である。これにより、スペーサ10と酸化触媒31と容易に取り付けることができる。
【0025】
続いて、排気管20の一方の端部からスペーサ10を取り付けた酸化触媒31を圧入し、排気管20の所定の位置にスペーサ10を取り付けた酸化触媒31を配置する。
【0026】
続いて、排気管20の一方の端部からパティキュレートフィルタ32を圧入し、パティキュレートフィルタ32の一方の端面部32aをスペーサ10の平面部10bと接触する位置に配置する。これにより、酸化触媒31およびパティキュレートフィルタ32は、それぞれ排気管20の所定の位置に配置される。さらに、酸化触媒31とパティキュレートフィルタ32を近接配置することができる。また、スペーサ10とパティキュレートフィルタ32とが面接触することになり、パティキュレートフィルタ32を圧入したときの荷重の集中が抑制され、パティキュレートフィルタ32の端面部32aの損傷を回避できる。
【0027】
したがって、本実施形態に係る排気浄化装置によれば、スペーサ10の嵌込部10aが酸化触媒31の縁部31cに嵌まり込むため、スペーサ10が酸化触媒31から外れることを防止できる。スペーサ10を酸化触媒31に取り付けるだけでスペーサ10を位置決めできる。スペーサ10の平面部10bがパティキュレートフィルタ32と面接触するため、スペーサ10の強度を確保しつつ、スペーサ10を小型化できる。よって、排気管20内に酸化触媒31およびパティキュレートフィルタ23を収納する際に、これらを効率よく近接配置することができる。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、スペーサの形状や排気管の形状を変更することは可能である。小径をなす第1の外筒と大径をなす第2の外筒とを溶接した排気管や、第1の外筒と第2の外筒の一方または両方にフランジを設けこの箇所を溶接した排気管を用いることも可能である。
また、上記実施形態では、外環状部材12の外径をパティキュレートフィルタ32の外径と略同等に形成したがこれに限定されない。即ち、外環状部材12の外径を酸化触媒31の直径より大きくパティキュレートフィルタ32の外径より小さい範囲で適宜形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る排気浄化装置によれば、排ガスが流通する排気管内に複数の触媒を収納する際に、触媒同士を効率よく近接配置することができるので、自動車産業などにおいて、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 スペーサ
10a 嵌込部
10b 平面部
11 内環状部材(内スペーサ)
12 外環状部材(外スペーサ)
20 排気管
31 酸化触媒
31c 縁部
32 パティキュレートフィルタ
41,42 マット状担体保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関からの排ガスが流通する排気管に設けられ、
前記排ガス中の被酸化成分を酸化する酸化触媒と、
前記酸化触媒の排ガス流通方向下流側に配置され、当該酸化触媒と比べて大径であり、前記排ガス中の微粒子状物質を捕集するフィルタとを備えた排気浄化装置であって、
前記酸化触媒と前記フィルタの間にスペーサが設けられ、
前記スペーサは、前記酸化触媒の外縁部に嵌まり込む嵌込部と、前記フィルタと面接触する平面部とを有する
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載された排気浄化装置であって、
前記スペーサは、排ガスが流通する方向から見て少なくとも前記酸化触媒の径断面と重なる領域が可燃性材料で構成される
ことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された排気浄化装置であって、
前記スペーサは、排ガスが流通する方向から見て前記酸化触媒の径断面と重なる領域より外側が前記排ガスの熱への耐性を有する材料で構成される
ことを特徴とする排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−87681(P2012−87681A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235212(P2010−235212)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】