説明

播き機

【課題】 粒状体を繰り出す繰出部の調節やメンテナンスが容易になるようにする。
【解決手段】 本発明の播種機1は、圃場Hを走行自在に支持された機体4と、該機体4の左右両側にそれぞれ配設され、粒状体としての種子を繰り出す一対の繰出部36とを備え、各繰出部36は、それぞれの反機体側へ取り外し可能に、それぞれの機体側から機体4に片持ち支持されている。各繰出部36は、ぞれぞれ機体4の左右方向における取付位置を調節可能に支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種子、肥料等の粒状体を一定量ずつ、又は点播で播くための播き機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の播き機として、特許文献1に記載された播種機81を例示する。この播種機81は、図7に示すように、左右一対の側フレーム84a,84aと、該両側フレーム84a,84aを連結する横フレーム84bとを備えた機体84を備えている。両側フレーム84a,84aは前後方向に延設されており、該両側フレーム84a,84aの間には、接地輪82、播種装置85、作溝器(図示略)、覆土板100、鎮圧輪83等の機能要素部がそれぞれ支持されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−107731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記各機能要素部が両側フレーム84a,84aの間に配置されているため、該各機能要素部を交換したり、該各機能要素部における消耗品を交換したりするときに、各機能要素部の着脱が行い難いという課題がある。特に、接地輪82、播種装置85の繰出ロール(図示略)、鎮圧輪83等のように左右に延びる軸を中心に回転する機能要素部は軸の両端側が両側フレーム84a,84aにそれぞれ支持されており、さらに、該軸にはそれを回転駆動するための駆動要素(エンジン、モータ、スプロケット、ギヤー等)が設けられていることもあるため、着脱が行い難くなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の播き機は、圃場を走行自在に支持された機体と、該機体の左右両側にそれぞれ配設され、粒状体を繰り出す一対の繰出部とを備え、
前記各繰出部は、それぞれの反機体側へ取り外し可能に、それぞれの機体側から前記機体に片持ち支持されている。
【0006】
この構成によれば、前記各繰出部は、その機体側から前記機体に片持ち支持されているので、該反機体側を広く解放しておくことができ、前記繰出部を該反機体側へ簡単に取り外すことができ、該繰出部の調節やメンテナンスが容易になる。また、前記繰出部を前記機体の両側にそれぞれ備えているので、同時に2条の粒状体を播くことができる。また、この構成は、構造がシンプルなので、軽量化が可能になり、低コストに実現することができる。また、この軽量化により、前記機体を進行させる力が少なくて済むし、車輪等の走行手段の接地圧が少なくなり、該走行手段の通過跡の窪みが浅く、水が溜まりにくくなり発芽不良を抑制することができる。
【0007】
前記各繰出部は、ぞれぞれ前記機体の左右方向における取付位置を調節可能に支持された態様を例示する。
【0008】
この構成によれば、粒状体を播く条間に応じて両繰出部の間隔を適宜調節することができる。
【0009】
前記各繰出部は、それぞれの下側に圃場に溝を形成するための溝掘器が取り付けられているとともに、前記機体の左右方向に延び、該機体に設けられた軸受けに回転自在に支持された駆動軸を介して前記粒状体を繰り出すための駆動力を入力するように構成されており、
前記駆動軸は、その軸心が前記軸受けの軸心に対して傾くことが可能に、前記軸受けに遊びをもって支持されている態様を例示する。
【0010】
この構成によれば、前記機体の進行に伴って前記溝掘器が圃場から受ける抵抗により、前記繰出部が前記機体に対して相対的に後方へ力を受け、この力は、前記機体に繰出部を片持ち支持する部位を介して該機体に掛かる。しかし、前記駆動軸は遊びをもって支持されているので、その力を前記駆動軸が受けないように(又は受け難く)することができる。これにより、前記軸受けや前記駆動軸の摩耗や損傷を防止することができる。
【0011】
前記駆動軸に駆動力を伝達するための伝動機構は、機体の左右方向における中央に配設された態様を例示する。
【0012】
この構成によれば、前記両繰出部に効率的に駆動力を伝達するように構成でき、軽量化が可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る播き機によれば、粒状体を繰り出す繰出部の調節やメンテナンスが容易になるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1〜図6は本発明を具体化した一実施形態の播き機としての播種機1を示している。この播種機1は、図1及び図2に示すように、前後の車輪としての駆動輪2,2及び鎮圧輪3,3により圃場Hを走行自在に支持された機体4と、該機体4の左右両側にそれぞれ配設された播種ユニット5と、駆動輪2の回転を各播種ユニット5に伝動する伝動機構6と、機体4を操縦するためのハンドル8とを備え、機体4の進行に伴って圃場Hに種子を播くように構成されている。なお、各図において矢印Fは機体前側を指し示している。
【0015】
機体4は、平面視で前後方向に略直線状に延びるように形成されており、その中央部後側が後斜め上方に向けて折曲形成されている。
【0016】
機体4の前側部には、図1及び図2に示すように、左右に延びる前軸11が回転自在に支持されており、該前軸11の両端側には両駆動輪2がそれぞれ取り付けられている。各駆動輪2は、それぞれの機体側周縁部を該機体4に近接させた状態で、前軸11に対して相対回転不可能かつ反機体側へ着脱可能に取り付けられている。各駆動輪2の機体側周縁部には、所定間隔をおいて複数のラグ2aが配設されており、機体4の進行時に駆動輪2のスリップを防止するようになっている。このように、各駆動輪2は、複数のラグ2aが機体側周縁部に設けられるとともに、機体側周縁部を機体4に近接させた状態で取り付けられているので、両駆動輪2の間に挟みこまれた圃場Hの土等を、両駆動輪2の回転に伴って、機体4により落とすことができる。特に、ラグ2aには土等が付着し易く、この土等を機体4により落とすことができる。また、両駆動輪2の後方には、機体4に支持されたスクレーパ10が設けられており、該両駆動輪2の周面に付着した土を落とすようになっている。
【0017】
機体4の前後方向における前側部から中央部にかけて、図5及び図6に示すように、機体4の左右方向における中央には、播種ユニット5に対し、駆動輪2の駆動力を伝達するための変速機能付きの伝動機構6が設けられている。この伝動機構6は、前軸11に相対回転不可能に取り付けられ、同心円状に複数段にわたり掛止穴12aが等間隔に多数穿設された変速回転板12と、該変速回転板12の径方向かつ機体前後方向に延びるように、回転自在に支持された伝動軸13と、該伝動軸13の長さ方向へ摺動自在、かつ該伝動軸13の周方向へ相対回転不可能となるように該伝動軸13の前側部13a(伝動軸13における変速回転板12の板面に面している部分)に支持され、掛止穴12aに噛合して該伝動軸13とともに回転するピニオン歯車14とを備えている。前側部13aは、側面視で逆U字状に形成された回動部材15により変速回転板12から離れる方向へ回動自在に支持されるとともに、付勢手段としてのバネ16により変速回転板12の板面に近づく方向へ付勢されている。また、伝動軸13の後側部13bには、互いに直交する方向へ折曲可能な一対の関節部17,17が設けられている。各関節部17は、伝動軸13の長さ方向へ若干伸縮可能となるように遊びを有している。伝動機構6の変速機能を操作するには、作業者は、一方の手で、伝動軸13の前側部13aを変速回転板12から離れる方向に移動させることによりピニオン歯車14の歯を掛止穴12aから外し(図6(b)参照)、他方の手で、他の段の掛止穴12aに掛合するように伝動軸13の長さ方向におけるピニオン歯車14の位置を変更し、ピニオン歯車14の歯をその掛止穴12aに掛合させる(図6(a)参照)。
【0018】
機体4の前後方向における中央部には、図3及び図4に示すように、軸心が機体4の左右方向へ向くように軸受け21が配設されており、軸受け21には回転自在にボス部22が支持されている。伝動軸13の後端部と、このボス部22とには、互いに噛合する一対のカサ歯車23,24が設けられており、これにより、伝動軸13の回転がボス部22に伝動されるようになっている。このボス部22には、その内径よりも小径の外径を有する駆動軸25が遊挿されている。そして、ボス部22及び駆動軸25における互いの軸長さ方向中央部がピン26により遊びをもって連結されることにより、駆動軸25は、その軸心が軸受け21の軸心に対して傾くことが可能に、軸受け21に遊びをもって支持されている。
【0019】
機体4における駆動軸25の前後側には、機体左右方向にそれぞれ延びる取付フレーム27がそれぞれ固定されており、該取付フレーム27には播種ユニット5が取り付けられるようになっている。
【0020】
機体4の後側部には、図1及び図2に示すように、鎮圧輪3を支持するための後ろ斜め下方に延びる脚部31が設けられている。脚部31の先端側には、回転自在に支持された左右に延びる後軸32が設けられており、該後軸32の両側には、両鎮圧輪3がそれぞれ取り付けられている。また、両鎮圧輪3の後方には、脚部31の先端側に支持されたスクレーパ33が設けられ、両鎮圧輪3の周面に付着した土等を落とすようになっている。
【0021】
播種ユニット5は、図1〜図4に示すように、平面視で略枠状に形成された基枠部35と、該基枠部内に下部が装着され、粒状体としての種子を繰り出す一対の繰出部36と、該基枠部35の下側に取り付けられ、繰出部36から繰り出された種子を圃場Hに埋めるための溝を形成するとともに播種後の溝に土を寄せて覆土する一対の溝掘覆土部37とを備えている。
【0022】
基枠部35は、前枠片35a、後枠片35b、内側枠片35c、及び外側枠片35dにより略枠状に形成されており、前枠片35a、後枠片35b、及び内側枠片35cは一体化されている。外側枠片35dは、図3に示すように、その後端部が後枠片35bに開閉自在に支持されるとともに、その前端部が前枠片35aに係脱可能に係止されている。内側枠片35c及び外側枠片35dには、駆動軸25が挿通される穴39が形成されており、外側枠片35dの穴39は、駆動軸25が貫通した状態でも外側枠片35dが開閉可能となるように、前方に延びる長穴となっている。そして、外側枠片35dを開き、基枠部内に繰出部36の下部を装着するようになっている。
【0023】
前枠片35aには、前側の取付フレーム27がスライド自在に嵌入する穴41aを有する筒体41が取り付けられており、固定ボルト42により、取付フレーム27に対して筒体41を固定するようになっている。後枠片35bには、後側の取付フレーム27がスライド自在に嵌入する穴43aが形成された、後方へ延びる突片43が取り付けらている。このように、播種ユニット5は、反機体側へ取り外し可能に、機体側から機体4に片持ち支持されるとともに、図3及び図4に示すように、機体4の左右方向における取付位置が調節可能になっている。
【0024】
また、前枠片35aには、溝掘覆土部37に突設された上方に延びる取付ポール45がスライド自在に嵌入する穴44aを有する筒体44が取り付けられており、該穴44aに挿入された取付ポール45は、固定ネジ46により上下位置調節可能に固定されるようになっている。
【0025】
繰出部36は、種子ホッパ51内の種子を繰り出す繰出手段としての繰出ロール52を内蔵している。繰出ロール52のロール軸53及び駆動軸25のそれぞれにおける反機体側先端には、互いに噛合する歯車54,55が取り付けられている。ロール軸側の歯車54は、ロール軸53にネジ56で着脱可能に取り付けられている。駆動軸25側の歯車55は、駆動軸25の軸長さ方向にスライド可能、かつ、駆動軸25の周方向に相対回転不可能、かつ、着脱可能に駆動軸25に装着されており、内側枠片35c及び外側枠片35dにそれぞれ設けられた位置決め部材57,58により、軸長さ方向の両側が位置決めされるようになっている。また、図1、図3及び図4に示すように、繰出部36における種子出口には、種子の偏りを防止するための筒体61が取り付けられている。この筒体61は、下側になるほど筒穴が狭くなるように、後側の筒壁61aの内面が前方かつ斜め上方を向くように斜状に設けられており、該後側の筒壁61aには、種子が通過可能な複数の穴61cが偏りなく配設されている。そして、種子出口から落下する種子は、筒壁61aの穴61cを通過したり、筒体61の下側の筒穴61bを通過したりすることにより、偏りなく圃場Hに播かれるようになっている。
【0026】
溝掘覆土部37は、舟型に形成された溝掘器63と、該溝掘器63の後側に取り付けられた土寄せ板64と、溝掘器63の前側上端部に立設され、基枠部35の筒体44に挿入される取付ポール45とを備えている。
【0027】
以上のように構成された本例の播種機1によれば、繰出部36を備えた各播種ユニット5は、その機体側から機体4に片持ち支持されているので、該反機体側を広く解放しておくことができ、播種ユニット5を該反機体側へ簡単に取り外すことができ、播種ユニット5の各部の調節やメンテナンスが容易になる。また、播種ユニット5を機体4の両側にそれぞれ備えているので、同時に2条の粒状体を播くことができる。また、この構成は、構造がシンプルなので、軽量化が可能になり、低コストに実現することができる。また、この軽量化により、機体4を進行させる力が少なくて済むし、走行手段としての駆動輪2,2及び鎮圧輪3,3の接地圧が少なくなり、該走行手段の通過跡の窪みが浅く、水が溜まりにくくなり発芽不良を抑制することができる。
【0028】
また、繰出部36を備えた各播種ユニット5は、ぞれぞれ機体4の左右方向における取付位置を調節可能に支持されているので、粒状体を播く条間に応じて両播種ユニット5の間隔を適宜調節することができる。
【0029】
また、機体4の進行に伴って溝掘器63が圃場Hから受ける抵抗により、繰出部36も機体4に対して相対的に後方に向かう力を受け、この力は、主に取付フレーム27を介して機体4に掛かる。しかし、駆動軸25は遊びをもって支持されているので、その力を駆動軸25が受けないように(又は受け難く)することができる。これにより、軸受け21や駆動軸25等の摩耗や損傷を防止することができる。
【0030】
また、駆動軸25に駆動力を伝達するための伝動機構6は、機体4の左右方向における中央に配設されているので、両播種ユニット5の繰出部36に効率的に駆動力を伝達するように構成でき、軽量化が可能になる。
【0031】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)伝動機構6の機械的構成を適宜変更すること。
(2)走行手段(駆動輪2,2又は/及び鎮圧輪3,3を原動機により駆動するように構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る播き機としての播種機の側面図である。
【図2】同播種機の平面図である。
【図3】図1のIII−III線断面図であり、一対の播種ユニットの間隔を最も狭めた状態を示す図である。
【図4】図3と同様の断面図であり、一対の播種ユニットの間隔を最も広げた状態を示す図である。
【図5】図2のV−V線断面図である。
【図6】図5のVI−VI線断面図である。
【図7】従来の播種機を示す平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 播種機
2 駆動輪
3 鎮圧輪
4 機体
5 播種ユニット
6 伝動機構
8 ハンドル
21 軸受け
22 ボス部
25 駆動軸
26 ピン
27 取付フレーム
36 繰出部
37 溝掘覆土部
63 溝掘器
64 土寄せ板
H 圃場

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行自在に支持された機体と、該機体の左右両側にそれぞれ配設され、粒状体を繰り出す一対の繰出部とを備え、
前記各繰出部は、それぞれの反機体側へ取り外し可能に、それぞれの機体側から前記機体に片持ち支持されている播き機。
【請求項2】
前記各繰出部は、ぞれぞれ前記機体の左右方向における取付位置を調節可能に支持された請求項1記載の播き機。
【請求項3】
前記各繰出部は、それぞれの下側に圃場に溝を形成するための溝掘器が取り付けられているとともに、前記機体の左右方向に延び、該機体に設けられた軸受けに回転自在に支持された駆動軸を介して前記粒状体を繰り出すための駆動力を入力するように構成されており、
前記駆動軸は、その軸心が前記軸受けの軸心に対して傾くことが可能に、前記軸受けに遊びをもって支持されている請求項1又は2記載の播き機。
【請求項4】
前記駆動軸に駆動力を伝達するための伝動機構は、前記機体の左右方向における中央に配設された請求項1〜3のいずれか一項に記載の播き機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−345733(P2006−345733A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173747(P2005−173747)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】