説明

撮像装置およびその制御方法

【課題】異物侵入等によりミラー部材の駆動が一時的に阻害された場合でも、故障の虞が無く、安全にミラー部材の駆動を行うこと。
【解決手段】撮像装置は、ミラー部材を光軸上にある第1位置と光軸から退避させた第2位置との間で移動させる駆動部と制御部を備える。ミラー部材の駆動制御では、バネ力を急激に解放してミラー部材を高速で移動させる高速モードと、モータの駆動力を利用して、バネ力を徐々に解放することでミラー部材を低速で移動させる静音モードとを切り替えることができる。静音モードに切り替えてミラー部材を第2位置へ移動させる制御を行った場合、予め設定された待ち時間が経過してもミラー部材の第2位置への移動が終了しないことが判定されると(S903)、駆動方式を切り替えてミラー部材を第2位置へ移動させる制御が実行される(S905)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置のミラー駆動制御に関し、特に駆動方式の切り替え制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撮像装置のミラー駆動方式として、バネを用いる方式(以下、バネ・アップ方式という)、およびモータを用いる方式(以下、モータ・アップ方式という)がある。主に高速でミラーを跳ね上げる用途にはバネ・アップ方式が採用されている。但し、バネ・アップ方式の場合、ミラーが高速で駆動されるため、跳ね上げ時にアップ端に設けられた位置決め部材に衝突する際の衝突音が大きい。そこで、バネ・アップ方式およびモータ・アップ方式による機構を備え、駆動速度の選択が可能なミラー駆動装置が提案されている。
特許文献1では、ミラー跳ね上げ機構として、バネによるミラーアップ機構とモータによるミラーアップ機構を備える駆動方式切り替え機構が開示されている。特許文献2では、ミラー駆動速度を選択可能な速度切り替え手段を有するミラー駆動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−043802号公報
【特許文献2】特開平10−096988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータ・アップ方式では、モータとミラーが連結されていることになる。したがって、モータ・アップ方式にて、ミラーボックス内に侵入した異物等によってミラーが押さえつけられた場合に、ミラー駆動モータに過大な電流が流れ続け発熱してしまう可能性や、電池にダメージを与える可能性がある。また、駆動機構内のギヤが破損する等、致命的な故障につながる可能性もある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、異物侵入等によりミラー部材の駆動が一時的に阻害された場合でも、故障の虞が無く、安全にミラー部材の駆動を行える撮像装置とその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る装置は、撮像光学系の光軸上に配置される可動のミラー部材と、前記ミラー部材を前記光軸上にある第1位置と前記光軸から退避させた第2位置との間で駆動する駆動手段と、前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを検出する検出手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記駆動手段は、アクチュエータを有し、前記アクチュエータに連結されることなく前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する第1の駆動方式または前記アクチュエータに連結されて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する第2の駆動方式にて、前記ミラー部材を駆動し、前記制御手段は、前記ミラー部材を前記第1の駆動方式で駆動するか、前記第2の駆動方式で駆動するかを切り替えるものであって、前記第2の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際、前記アクチュエータの駆動を開始してから予め設定された待ち時間が経過した後に、前記制御手段は、前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを判定し、前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置すると判定できない場合に、前記制御手段は、前記第2の駆動方式による前記ミラー部材の駆動から前記第1の駆動方式による前記ミラー部材の駆動へ切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、異物侵入等によりミラー部材の駆動を阻害する可能性がある状況でも、故障の虞が無く安全にミラー部材を駆動できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図2乃至8と併せて本発明の実施形態を説明するために、撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】クイックリターンミラーユニットを示す分解斜視図である。
【図3】駆動レバーユニットおよびカムギヤの詳細図である。
【図4】高速モード時の動作を(A)乃至(C)に示す説明図である。
【図5】静音モード時の動作を(A)乃至(D)に示す説明図である。
【図6】撮影時の動作例を示すフローチャートである。
【図7】バネ・アップ方式での駆動時における状態検出例を示すフローチャートである。
【図8】モータ・アップ方式での駆動時における状態検出例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は撮像装置の構成例を示すブロック図である。撮像装置は、レンズユニット300とカメラ本体100を備える。
レンズユニット300は交換レンズタイプであり、これをカメラ本体100と機械的に結合するレンズマウント306は、両者を電気的に接続する機能も有する。撮像光学系を構成するレンズ310は、その光軸(破線の光路OP1参照)に沿って移動可能なフォーカスレンズ及びズームレンズ(不図示)を含む。絞り312は光軸上に位置して光量を調節する。インターフェース(以下、「I/F」と略記する)部320は、カメラ本体100内のI/F部120と接続される。レンズユニット300とカメラ本体100を電気的に接続するコネクタ322,122は、両者間で制御信号、状態信号、データ信号等を送受し合うと共に、各種電圧の供給機能を有する。絞り制御部340は、後述の測光部46による測光結果に基づいてシャッタ制御部40と連携しながら、絞り312を制御する。フォーカス制御部342はフォーカスレンズを駆動して焦点調節動作を制御し、ズーム制御部344はズームレンズを駆動して変倍動作を制御する。レンズユニット300全体を制御するレンズ制御部350は、I/F部320および各制御部と接続されている。
【0010】
次にカメラ本体100の構成を説明する。
シャッタ12は撮像素子13の露光を制御する。シャッタ12の開状態にてレンズ310に入射した光は、絞り312、レンズマウント306及び106、シャッタ12を介して撮像素子13に到達し、その撮像面(画素配列)に被写体像が結像する。このとき、ミラー130は、2点鎖線で示すように、光路OP1から退避したミラーアップ状態にある。ミラー130は可動のミラー部材であり、撮像素子13よりも被写体側に位置する。以下では、撮像光学系の光軸上に位置するミラーダウン状態での第1位置を「ダウン位置」と呼び、光軸から退避したミラーアップ状態での第2位置を「アップ位置」と呼ぶ。なお、ミラー130の駆動機構については後で詳述する。
【0011】
撮像素子13は、被写体像を光電変換して画像信号を生成し、A/D変換器16は、撮像素子13の出力信号をデジタル信号に変換して画像データとする。タイミング発生回路18は、メモリ制御部22及びシステム制御部50により制御され、撮像素子13、A/D変換器16、D/A変換器26にクロック信号や制御信号を供給する。画像処理部20は、A/D変換器16から出力された画像データ、或いはメモリ制御部22から出力された画像データに対して所定の画素補間処理や色変換処理を行う。メモリ制御部22は、A/D変換器16、タイミング発生回路18、画像処理部20、画像表示メモリ24、D/A変換器26、メモリ30、及び圧縮・伸長回路32を制御する。A/D変換器16の出力する画像データは画像処理部20を介して、または画像処理部20およびメモリ制御部22を介して画像表示メモリ24またはメモリ30に書き込まれる。画像表示メモリ24は、画像表示部28に表示する画像データを一時的に記憶する。D/A変換器26は、メモリ制御部22経由で画像表示メモリ24にアクセスして画像データを取得する。D/A変換器26は画像データを表示用の画像信号(アナログ信号)へ変換して画像表示部28へ出力する。画像表示部28には液晶表示装置(例えば、TFT−LCD)等が使用される。メモリ30は、撮影した静止画像データを一時的に記憶し、また、システム制御部50の作業領域としても使用される。圧縮・伸長回路32はメモリ30に記憶された画像データを読み込んで圧縮または伸長処理を行い、処理後の画像データをメモリ30に記憶させる。
【0012】
シャッタ制御部40は、測光部46の測光結果に基づいて、絞り312を制御する絞り制御部340と連携しながら、シャッタ12を制御する。シャッタ制御部40は、シャッタ駆動部40aおよびシャッタ駆動モータ40bを含む。シャッタ駆動部40aは撮像素子13を露光するようにシャッタ12を駆動する。シャッタ駆動モータ40bは、シャッタ12のチャージ機能をもち、シャッタ駆動部40aを固定した固定状態とシャッタ駆動部40aの固定を解除した解除状態とを切り替えるように動作する。ミラー制御部41は、ミラー駆動機構の駆動部41aを介して、ミラー130をアップ位置(2点鎖線参照)またはダウン位置(実線参照)に移動させる。ミラー制御部41が制御するアクチュエータは、ミラー駆動モータ(以下、単に駆動モータという)41bである。なお、ミラー130の駆動制御の詳細については後述する。
【0013】
焦点状態検出部42は、撮像光学系に係る焦点状態を検出する。レンズ310に入射した光は、絞り312、レンズマウント306、106、ミラー130、後述のサブミラーを介して焦点状態検出部42の受光部で検出される。焦点状態検出部42は、焦点状態の検出結果をシステム制御部50へ出力する。測光部46は、レンズ310に入射してから、絞り312、レンズマウント306、106、ミラー130、132を経た後、不図示の測光用レンズから入射した光を検出する。測光部46は露出状態の検出結果をシステム制御部50へ出力する。また測光部46は、フラッシュ48と連携することにより、EF処理(プリ発光処理)も行う。フラッシュ48は、AF(オートフォーカス)用補助光の投光機能、およびフラッシュ調光機能を有し、システム制御部50からの指示に従って所定のタイミングで発光する。ミラー132は、ミラー130で反射した光線をさらに反射させて光学ファインダ104に導く。光路OP2は、撮像素子13へ至る光路OP1に対して、ダウン位置にあるミラー130で分岐した一方の光路である。
【0014】
カメラ本体100の各部を全体的に制御するシステム制御部50は、判定部50a及び制御部50bを含む。判定部50aは設定された撮影モードを判定し、制御部50bは、判定部50aの判定結果に従って制御指令をミラー制御部41に出力する。なお、判定部50a及び制御部50bは、システム制御部50を構成するCPU(中央演算処理装置)が解釈して実行するプログラムに従って処理を行うが、詳細については後述する。
【0015】
メモリ52は、システム制御部50の動作用の定数、変数、プログラム等を記憶する。報知部54は、システム制御部50でのプログラムの実行に応じて、表示デバイス上での文字や画像によるメッセージ、またはスピーカ等による音声メッセージをユーザに提示する。報知部54は、カメラ本体100にて視認し易い位置に配置され、その一部は光学ファインダ104内にも設置されている。不揮発性メモリ56は、電気的に消去および記録可能なメモリ(EEPROM等)である。
【0016】
次に、システム制御部50に対する各種の動作指示を説明する。図1には、モードダイヤル60、スイッチ部62及び操作部70を例示する。モードダイヤル60は、低速連続撮影や高速連続撮影等のモードを含む撮影モードについて、ユーザの操作指示をシステム制御部50へ出力する。スイッチ部62はユーザ操作に応じた2種類の指示を受け付ける。ユーザが不図示のシャッタレリーズボタンを押下した際、第1段階(例えば、半押し)で第1スイッチ(SW1と記す)がオン状態となる。この指示に応じてAF処理、AE処理、EF処理等の動作開始がシステム制御部50に指示される。また、第2段階(例えば、全押し)で第2スイッチ(SW2と記す)がオン状態となる。この指示に応じて露光処理、現像処理、記録処理を含む撮影処理の動作開始がシステム制御部50へ指示される。なお、露光処理は、撮像素子13の撮像信号を、A/D変換器16、メモリ制御部22を介してメモリ30に画像データとして書き込む処理である。現像処理は、画像処理部20やメモリ制御部22での演算処理である。記録処理は、メモリ30から画像データを読み出して圧縮・伸長回路32で圧縮して記録媒体200に画像データを書き込む処理である。記録媒体200にはメモリカードやハードディスク等が使用され、記録部202、I/F部204、コネクタ206を備える。コネクタ206は、カメラ本体100のコネクタ92を介してI/F部90に接続される。
操作部70は、メニューボタン、設定ボタン、切り替えボタン等の各種操作部材を含み、操作指示信号をシステム制御部50に出力する。
【0017】
次に図2および図3を参照して、ミラー制御部41の構成を詳細に説明する。
ミラー制御部41は、図2に示すミラー駆動機構を含む。図3にはミラー駆動レバーおよびカムの詳細を示す。なお、図2はクイックリターンミラーユニットの分解斜視図である。また、図3(A)は駆動レバーユニットの側面図である。図3(B)および(C)はカムギヤ401の詳細図である。図3(B)はカムギヤ401の回転軸401eに直交する方向から見た場合の図であり、図3(C)はカムギヤ401の回転軸401eに沿う方向から見た場合の図である。
【0018】
ミラー130は、メインミラー511とサブミラー513を備える。サブミラー513は焦点状態検出部42にレンズ310からの光を導くための可動部材であり、サブミラー保持部材514に固定されている。サブミラー保持部材514は、メインミラー保持部材512に設けた不図示の軸と穴部514aを中心に回転可能に軸支されており、メインミラー保持部材512がダウン位置で停止している時に、焦点状態検出部42に被写体から光の一部が到達する。また、サブミラー保持部材514は、メインミラー保持部材512がアップ位置に駆動されたとき、メインミラー保持部材512と共に撮影退避位置まで駆動される。以下の説明にて、ミラー130の駆動とは、メインミラー保持部材512の軸部512aを中心として回転させる動作をいい、これに連動してサブミラー保持部材514が駆動される。
駆動モータ41bの駆動力はカムギヤ401に伝達される。カムギヤ401の回転により、ミラーチャージレバー406およびミラードライブレバー407は、不図示のミラーボックスの外側面に設けられた軸部を中心として、図3(A)の反時計回り方向または時計回り方向に回動する。これにより、後述するようにミラー130はダウン位置からアップ位置へ移動するアップ動作と、アップ位置からダウン位置へ移動するダウン動作とを行う。なお、図3(A)にてミラー130のアップ動作方向は時計回り方向である。
【0019】
ミラーチャージレバー406は、付勢部材としてのミラーアップバネ405の付勢力により、反時計回り方向に付勢される。また、ミラー受け板であるメインミラー保持部材512は、ミラーダウンバネ408の付勢力によって、その軸512cにてミラーダウン動作方向(図中の反時計回り方向)に付勢される。ミラードライブレバー407は、ミラードライブレバーバネ406dの付勢力によって時計回り方向に付勢される。
【0020】
カムギヤ401の外周面部には、ギヤ部401d(図3(B)参照)を形成しているが、歯部の図示を省略している。また、カムギヤ401の円形側面401f(図2参照)には、その回転位置を検出するために導電パターンが形成されている。カムギヤ401の回転位置に応じて導電パターンに導電接片が接触し、この導電接片からシステム制御部50にミラーアップ動作の完了信号が入力される。これにより、制御部50bはカムギヤ401の回転位置を判定することができ、ミラー130がアップ位置に位置するかどうかを判定できる。したがって、カムギヤ401の円形側面401fに形成される導電パターンは、ミラー130がアップ位置に位置するかどうかを検出する検出手段として機能する。カムギヤ401を含むミラー駆動機構の動作が何らかの原因で支障を来たした場合、駆動モータ41bを所定時間に亘って通電してもミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力されない状態となる。この場合、制御部50bは異常状態と判断し、駆動モータ41bの駆動を停止させる。
【0021】
制御部50bはミラーアップ動作に関して2種類の駆動方式を有する。第1の駆動方式はバネ・アップ方式であり、バネ・アップ方式によるミラー動作を以下、高速モードと呼ぶ。第2の駆動方式は、モータ・アップ方式であり、モータ・アップ方式によるミラー動作を以下、静音モードと呼ぶ。
バネ・アップ方式では、チャージしたミラーアップバネ405のバネ力を急激にリリースすることで、ミラー130を高速で駆動する。これにより、連写コマ速やレリーズタイムラグについて性能を高めた動作が行われる。なお、図4では簡略化のため、カムギヤ401のギヤ部401d及び第1カム部401aを必要に応じて割愛して示す。
【0022】
図4(A)は、ミラーダウン動作が終了したスタンバイ状態を示す。図4(B)は、ミラーアップ動作の初期においてカムギヤ401が反時計回り方向に回転してから停止した状態を示す。図4(C)は、ミラーアップ動作が完了した状態を示す。
カムギヤ401には、第1カム部401a、緊定解除カム401b、及び第2カム部401cが形成されている。これらのカム部は、図3(C)に示すようにカムギヤ401の回転軸401eを中心として周方向に亘って異なる範囲にそれぞれ形成されている。回転軸401eを中心とする位相角の範囲については、第1カム部401aや緊定解除カム401bに比べて、第2カム部401cは狭く設定されている。ミラーチャージレバー406の第1フォロア部406bとカムギヤ401の第1カム部401aは、カムギヤ401の回転軸401eに対する直交方向にて、互いに当接可能な位置関係をもつ。また、ミラーチャージレバー406の第2フォロア部406cとカムギヤ401の第2カム部401cは、カムギヤ401の回転軸401eに対する直交方向にて、互いに当接可能な位置関係をもつ。
【0023】
図4(A)に示すスタンバイ状態では、ミラーチャージレバー406がミラーアップバネ405の付勢力により反時計回り方向に付勢されている。但し、ミラーチャージレバー406に設けた第1フォロア部406bがカムギヤ401の第1カム部401aのカムトップ(リフトが最大の部分)と当接している。このため、ミラーチャージレバー406の反時計回り方向への駆動が阻止されており、ミラーダウン状態が維持される。
【0024】
メインミラー保持部材512は、不図示のミラーボックスの内側面に形成されたストッパー519(図2参照)に当接してダウン位置での位置決めがなされている。メインミラー保持部材512には軸512cが一体に形成されており、この軸512cにはミラードライブレバー407の当接部407aが図の下側から当接している。さらに、メインミラー保持部材512には軸部512aを中心として、ミラーダウンバネ408により、ミラーダウン動作方向への付勢力が図の上側から作用している。また、ミラーチャージレバー406の下端部にて回転可能に連結されたミラーフック403は、そのフック部403cがミラーフックスプリング402に付勢力によって図中の反時計回り方向に付勢され、ミラードライブレバー407の係止部407cと係合している。
【0025】
バネ・アップ方式による高速モードが設定されていると判定部50aで判定された場合のミラーアップ動作について、図4を用いて説明する。バネ・アップ方式では、駆動モータ41bの駆動力によって、第1のカム部401aを回転させることで、チャージされていたミラーアップバネ405のバネ力(付勢力)が急激に解放される。ミラーアップバネ405の付勢力で、ミラー130をアップ位置まで高速で駆動することができる。
判定部50aが高速モードであると判定した場合、シャッタレリーズボタンが全押し操作されてスイッチ部62の第2スイッチSW2がオン状態になると、制御部50bは高速ミラーアップ動作用の駆動信号を駆動モータ41bに出力する。このとき、制御部50bは、駆動モータ41bにデューティ比100%となるフル通電により駆動制御を行う。これにより、駆動モータ41bは、第1の方向に高速で駆動され、カムギヤ401は、図の反時計回り方向に高速で回転する。その後、カムギヤ401が図4(B)に示す状態を経て、図4(C)に示すアップ位置に相当する位相(回転角)まで到達する。この時点で制御部50bには、カムギヤ401の円形側面401fに設けた導電パターンの検出により、ミラーアップ動作の完了信号が入力される。これにより、駆動モータ41bが停止する。
【0026】
高速モードによるミラーアップ動作を実行する場合には、制御部50bは、駆動モータ41bが第1の方向への駆動を開始してからの経過時間を計測している。そして駆動モータ41bの、第1の方向への駆動が開始した後、所定時間が経過してもミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力されない場合、制御部50bはミラー駆動機構に異常が発生したと判断し、駆動モータ41bを停止させる。以下では、このタイムアウト判定に用いる所定時間を、第1待ち時間と呼ぶことにする。第1待ち時間の長さは、例えば1秒程度であり、通常のミラーアップ動作に必要な時間に対して十分長い時間に設定される。
【0027】
図4(A)のスタンバイ状態にて、ミラーチャージレバー406は、ミラーアップバネ405によって、反時計回り方向に付勢されている。このとき、ミラーチャージレバー406に設けられた第1フォロア部406bに、カムギヤ401の第1カム部401aのカムトップが当接している。これによって、ミラーチャージレバー406は、ミラーアップバネ405の付勢力に抗して、図4(A)のスタンバイ状態に位置している。駆動モータ41bが第1の方向に駆動されることで、カムギヤ401が図4(A)のスタンバイ状態から反時計回り方向に高速で回転する。カムギヤ401が反時計回り方向に回転すると、ミラーチャージレバー406に設けられた第1フォロア部406bが、カムギヤ401の第1のカム部401aのカムボトムに落ちる。これにより、チャージされたミラーアップバネ405のバネ力が一気に解放され、ミラーアップバネ405の付勢力によって、ミラーチャージレバー406は、図4(C)に示すように、反時計回り方向に駆動される。このとき、ミラーフック403を介してミラーチャージレバー406と連結されたミラードライブレバー407も、反時計回り方向に高速で駆動される。そして、ミラードライブレバー407の当接部407aがメインミラー保持部材512の軸512cを高速で押し上げ、ミラー130がアップ位置に向けて高速駆動される。メインミラー保持部材512のミラーアップ動作に伴い、穴部514aにて連結されているサブミラー保持部材514も連動してアップ位置へと高速で駆動される。
【0028】
図4(A)のスタンバイ状態から、駆動モータ41bの駆動力によって、ミラーチャージレバー406に設けられた第1フォロア部406bと、カムギヤ401の第1カム部401aのカムトップとの当接が解除される。高速モードにおけるミラー130のミラーアップ動作は、ミラーチャージレバー406に設けられた第1フォロア部406bと、カムギヤ401の第1カム部401aのカムトップとの当接が解除されてから開始される。駆動モータ41bの駆動力は、ミラー130をアップ位置に駆動する直接的な駆動力とはならない。ミラー130をアップ位置に駆動する直接的な駆動力は、ミラーアップバネ405の付勢力のみである。したがって、高速モードにおけるミラー130のミラーアップ動作では、ミラー130は駆動モータ41bとの連結が解除され、カムギヤ401および駆動モータ41bに連結されることなくアップ位置へ駆動される。
【0029】
高速モードにおけるミラーアップ動作の詳細な動作順序としては、カムギヤ401が図4(C)に示す位相にて停止した後、メインミラー保持部材512、つまりミラー130がアップ位置に到達する。高速モードではミラーアップバネ405の付勢力によりミラー130が跳ね上がることになる。アップ位置に到達したメインミラー保持部材512は、不図示のミラーボックスの内側面に形成したストッパー515に下側から突き当たるので、アップ位置で位置決めがなされる。このとき、メインミラー保持部材512がストッパー515に当接する速度は高速であるため、突き当たった瞬間に衝撃音が発生する。
以上、判定部50aにより高速モードが判定された場合のミラー動作について説明したが、ミラーアップ動作に至るまでの間、ミラーチャージレバー406の第2フォロア部406cとカムギヤ401の第2カム部401cとが当接することはない。
ミラーダウン動作では、更にカムギヤ410が図4にて反時計回り方向に回転し、ミラーフック403の当接面403aと緊定解除カム401bが当接しながらミラーフック403を回転させる。ミラードライブレバー407をミラードライブレバーバネ406dの付勢力によりミラーダウン方向に回転させることで、ミラー130のミラーダウン動作が行われる。
【0030】
次に、モータ・アップ方式による静音モードが設定されていると判定部50aにより判定された場合のミラーアップ動作について、図5を用いて説明する。モータ・アップ方式では、駆動モータ41bの駆動力を利用して、ミラーアップバネ405のバネ力を徐々に解放する。これによって、ミラー130をアップ位置まで低速で駆動することにより、ミラーアップ動作時の衝撃音の発生を防止することができる。静音モードにおけるミラー130のミラーアップ動作では、ミラー130は駆動モータ41bに連結されてアップ位置へ駆動される。
【0031】
図5(A)は、ミラーアップ動作にてミラー130の駆動が停止した状態を示す。図5(B)は、図5(A)にてミラーアップ動作が停止した状態で更にカムギヤ401が時計回り方向に回転した状態を示す。図5(C)は、カムギヤ401の第2カム部401cと、ミラーチャージレバー406の第2フォロア部406cとが離れる瞬間の状態を示す。図5(D)は、ミラーアップ動作が完了した状態を示す。
不図示のシャッタレリーズボタンが全押し操作されてスイッチ部62の第2スイッチSW2がオン状態になると、制御部50bは低速ミラーアップ動作用の駆動信号を駆動モータ41bに出力する。駆動モータ41bは、上述した第1の方向とは反対方向となる第2の方向に低速で駆動される。このとき、制御部50bは、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)信号(例えば、デューティ比50%)により駆動制御を行う。これによって、駆動モータ41bは高速モード時よりも低速で第2の方向に駆動される。すなわち、高速モード時とは異なる通電方式で駆動モータ41bを第2の方向に駆動している。また、ミラーアップ動作では、駆動モータ41bの駆動方向が高速モードの場合とは反対方向であり、カムギヤ401は図5の時計回り方向に低速で回転する。
【0032】
スタンバイ状態での駆動機構の状態については、高速モードで説明した状態と同じであるため(図4(A)参照)、その詳細な説明は省略する。
カムギヤ401が図4(A)の状態から時計回り方向に低速回転を開始すると、ミラーアップバネ405によって付勢されたミラーチャージレバー406は、ミラーアップ動作方向に駆動を開始する。これに連動してミラードライブレバー407やミラーフック403が駆動を開始し、ミラー130の駆動が開始する。なお、駆動機構に関しては高速モードにて説明済みであるため、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図5(A)は、ミラーアップバネ405の付勢力により、メインミラー保持部材512がミラーアップ動作を行っている途中状態を示している。図4(A)に示すスタンバイ状態から図5(A)に示す状態に至るまでの間、ミラーチャージレバー406の第1カムフォロア部406bがカムギヤ401の第1カム部401aをトレースしている。カムギヤ401の第1カム部401aとミラーチャージレバー406の第1カムフォロア部406bが当接した状態で、ミラーチャージレバー406は反時計回り方向に回転し、メインミラー保持部材512はミラーアップ動作を行う。静音モードにおいては、ミラーアップ時の衝撃音を軽減するために以下の動作が行われる。ミラーチャージレバー406の第1カムフォロア部406bにカムギヤ401の第1カム部401aをトレースさせることで、ミラーアップバネ405の付勢力によるミラーチャージレバー406の回転速度を遅くしている。すなわち、ミラーチャージレバー406の第1カムフォロア部406bがカムギヤ401の第1カム部401aをトレースすることで、チャージされたミラーアップバネ405のバネ力が徐々に解放され、ミラーチャージレバー406はゆっくり回転する。また、このとき、ミラーダウンバネ408はメインミラー保持部材512の軸512cを押し下げている。メインミラー保持部材512の軸512cとミラードライブレバー407の当接部407aとが当接しているので、メインミラー保持部材512の軸512cを押し下げるミラーダウンバネ408の付勢力は、ミラーチャージレバー406を時計回り方向に回転させる。このため、ミラーチャージレバー406を反時計回り方向に回転させる力と、ミラーチャージレバー406を時計回り方向に回転させる力とが均衡した状態となり、メインミラー保持部材512の動作は図5(A)に示す状態で停止することになる。
【0034】
図5(B)は、図5(A)にてミラーアップ動作が停止した状態から更にカムギヤ401が時計回り方向に回転した状態を示す。この状態では、カムギヤ401の第2カム部401cがミラーチャージレバー406の第2フォロア部406cに当接することで、ミラーチャージレバー406を図の反時計回り方向に回転させる。これによって、図5(A)に示したミラーチャージレバー406を反時計回り方向に回転させる上げる力と、ミラーチャージレバー406を時計回り方向に回転させる下げる力とが均衡した状態を抜け出す。ミラーチャージレバー406はミラーアップバネ405の付勢力とカムギヤ401および駆動モータ41bの力によって、ミラーチャージレバー406は反時計回り方向に回転し、メインミラー保持部材512はミラーアップ動作を継続する。この間、図5(B)に示すように、ミラーチャージレバー406の第1カムフォロア部406bとカムギヤ401の第1カム部401aとの当接は解除される。
【0035】
図5(C)は、ミラーチャージレバー406の第2フォロア部406cとカムギヤ401の第2カム部401cとの当接が解除される瞬間の状態を示す。その後、図5(D)に示す状態で、ミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力される。ミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力されると、制御部50bは駆動モータ41bを停止させる。静音モードでのミラーアップ動作が完了する。アップ位置に到達したメインミラー保持部材512は、ストッパー515に下側から突き当たることで規制され、位置決めされる。メインミラー保持部材512がストッパー515に突き当たるときの速度は低速であるため、その瞬間の衝撃音は高速モード時と比較すると小さい。
図5(C)に示す状態から図5(D)に示す状態では、ミラーチャージレバー406がカムギヤ401と当接することなく、ミラーアップバネ405の付勢力によって、ミラーチャージレバー406は反時計回り方向に回転する。すなわち、図5(C)に示す状態から図5(D)に示す状態では、第1カムフォロア部406bと第1カム部401aとの当接は解除され、第2カムフォロア部406cとカムギヤ401の第2カム部401cとの当接も解除されている。
【0036】
静音モードによるミラーアップ動作を実行する場合には、制御部50bが駆動モータ41bの第2の方向への駆動を開始させる。その後、所定時間が経過しても制御部50bにミラーアップ動作の完了信号が入力されない場合、制御部50bはミラー駆動機構に異常が発生したと判断し、駆動モータ41bを停止させる。この所定時間(閾値)を第2待ち時間と呼ぶことにする。第2待ち時間の長さは、例えば300ミリ秒程度であり、通常のミラーアップ動作に必要な時間に対して余裕を見込んだ設定値となっている。モータ・アップ方式によるミラーアップ動作の場合、ミラー駆動機構自体は正常でも、ミラーボックス内に侵入した異物等によりミラーが押さえつけられる場合が起こり得る。その際、駆動モータ41bやカムギヤ401の回転が阻害されてしまう可能性がある。そこで、ミラー駆動機構の故障を未然に防ぐために、第2待ち時間は、前記した第1待ち時間よりも短い時間に設定されており、これにより、速やかにモータ駆動を停止させることができる。
【0037】
本実施形態では、モータ・アップ方式による静音モードでのミラーアップ動作にて、図5(B)の状態から図5(C)の状態までの間、ミラーチャージレバー406に設けた第2フォロア部406cと、カムギヤ401の第2カム部401cとを当接させている。これにより、ミラーアップ駆動の後半部にてバネ等の付勢力に依存しないモータ駆動が行われるが、両者を当接させる領域はこれに限定されない。例えば、ミラーダウン状態からミラーアップ動作の完了までの間、両者を当接させ、ミラーチャージレバー406を押し上げるように構成してもよい。この場合、静音モードではミラーアップバネ405による力に関わらず、カムギヤ401の第2カム部401cによる押上げ力、すなわちモータの駆動力のみによりミラーアップ動作が完了する。第2の駆動方式には、モータの駆動力のみでミラーアップ動作を行う形態と、モータの駆動力およびバネ等による付勢力を利用してミラーアップ動作を行う形態が含まれる。
なお、静音モード時のミラーダウン動作では、ミラーアップ動作時とは反対の回転方向、つまり図5の反時計回り方向にカムギヤ401を回転させるように駆動モータ41bの駆動制御が行われる。
【0038】
次に、判定部50aの動作例について図6のフローチャートを用いて説明する。
図6は、撮像装置が撮影指示を受け付けた際の撮影終了までの動作を示すフローチャートである。
【0039】
S601でシステム制御部50は、第1スイッチSW1がオン状態であるか否かを判定する。SW1がオン状態でない場合(S601でno)、そのスイッチ検出を繰り返し行う。また、SW1がオン状態になったことが検出されると(S601でyes)、S602へ処理を進める。S602でシステム制御部50の指示により、焦点状態検出部42は焦点状態検出処理を行い、測光部46は測光処理を行う。それぞれの処理結果を取得したシステム制御部50は、S603へ処理を進める。S603でシステム制御部50は、第2スイッチSW2がオン状態であるか否かを判定する。SW2がオン状態でない場合(S603でno)、そのスイッチ検出を繰り返し行う。システム制御部50は、第2スイッチSW2がオン状態になったことを検出すると(S603でyes)、S604へ処理を進める。
【0040】
S604にて判定部50aは、操作部70により設定された撮影モードの情報から制御部50bでのミラー駆動方式を判定する。撮影モードとミラー駆動方式の関係を下表1に例示する。
【表1】

【0041】
本実施形態では、単写モードと2種類の連写撮影モード、ライブビューモードを示す。単写モードや低速連写モードが設定されている場合、S605へ処理を進め、動作音の小さいモータ・アップ方式による静音モードが選択される。また、高速連写モードが設定されている場合には、S606へ処理を進め、動作音は大きいが高速で動作可能なバネ・アップ方式による高速モードが選択される。撮影時のミラーアップ動作に限らず、撮影時以外でもミラーアップ動作が必要なタイミングは存在する。例えばミラー130をアップ位置に駆動し、シャッタ12を開放状態とすることで、画像処理部20において撮像されたリアルタイム画像を画像表示部28に表示させる、いわゆるライブビューモードへの移行処理が挙げられる。この場合の駆動方式として、上表1に示すように、動作音の小さいモータ・アップ方式による静音モードが選択される。また、本実施形態ではミラー駆動方式の一例として、撮影モードに関して、単写、低速連写、高速連写等のいわゆるドライブモードに対応したミラー駆動方式の選択例を示した。これに限らず、例えば操作部70により撮影モードとして静音撮影モードと通常撮影モードを選択可能な構成とし、これらをミラー駆動方式と関連付けてもよい。
【0042】
S605にて制御部50bは、モータ・アップ方式に従って駆動信号を駆動モータ41bに出力し、駆動モータ41bをバネ・アップ方式の場合とは反対方向となる第2の方向に低速駆動させる。これにより、大きな衝突音が発生しないようミラーアップ動作が行われ、動作完了後にS607へ処理を進める。一方、S606にて制御部50bは、バネ・アップ方式に従って駆動信号をミラー駆動モータ41bに出力し、駆動モータ41bをモータ・アップ方式の場合とは反対方向となる第1の方向に高速駆動させる。これにより、第1フォロア部406bと、カムギヤ401の第1カム部401aのカムトップとの当接が解除され、ミラーアップバネ405の付勢力により高速でミラーアップ動作を行わせる。この場合、ミラー130の駆動範囲に異物が侵入する事態が起きても、駆動モータ41bやカムギヤ401の回転に対しては支障が無く、駆動機構等が損傷を受けることは無い。カムギヤ401はミラーボックス内の異物の有無に関わらず、図4(C)に示す位置まで回転可能であるため、ミラーアップバネ405の付勢力が作用し続けることとなる。よって、異物が取り除かれた時点でその付勢力によりミラー130はアップ位置に移動する。
ミラーアップ動作の完了後、処理をS607に進める。S607にてシャッタ制御部40はシャッタ12の走行を開始させる。S602での測光結果に応じた露出制御値に基づき、システム制御部50が所定のタイミング制御を行う。シャッタ12の走行完了後、S608へ処理を進める。S608で制御部50bは、ミラーダウン動作のために駆動信号を駆動モータ41bに出力する。ミラーダウン動作が完了し、上述した一連の処理を終了する。
【0043】
次に、図6のS604で判定部50aにより高速モードが選択されたと判定され、バネ・アップ方式によりミラーを駆動する際の状態検出動作について、図7のフローチャートを用いて説明する。
S801にて制御部50bは、ミラーアップ動作用の駆動信号を出力し、駆動モータ41bを第1の方向に駆動して、カムギヤ401を図4における反時計回りに回転させる。次のS802は、ミラーアップ動作の完了信号の入力を確認する処理である。制御部50bがミラーアップ動作の完了信号が入力されたと判定したとき、カムギヤ401は、アップ位置に相当する位相角まで回転している(図4(C)参照)。ミラー130がアップ位置へ駆動された場合(S802でyes)、S805へ処理を進める。S805では駆動モータ41bの駆動が停止し、ミラーアップ動作が完了する。一方、S802でミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力されない場合(S802でno)、S803へ処理を進める。S803では駆動モータ41bの第1の方向への駆動開始時点からの経過時間がシステム制御部50によって測定され、制御部50bは計測時間が第1待ち時間を超えたか否かを判定する。計測時間が第1待ち時間を超えたと判定された場合(S804でyes)、S804へ処理を進める。計測時間が第1待ち時間以下であると判定された場合(S804でno)、S802に戻る。第1待ち時間が経過してもカムギヤ401がミラーアップ完了位置まで回転できない場合には、駆動モータ41b、カムギヤ401を含むミラー駆動機構の動作に支障があると判断することができる。S804で報知部54は、異常を知らせるエラーメッセージの表示や音声によりユーザへの報知処理を行ってから、S805に進む。
【0044】
次に、図6のS604にて静音モードが選択されたことを判定部50aが判定し、モータ・アップ方式によりミラーを駆動する際の状態検出動作について、図8のフローチャートを用いて説明する。
S901にて制御部50bはミラーアップ動作用の駆動信号を出力し、駆動モータ41bを高速モードでのアップ動作時とは反対方向となる第2の方向に駆動する。これにより、カムギヤ401は図5における時計回り方向に回転する。次のS902で、ミラーアップ動作の完了信号の入力を確認する処理が行われる。制御部50bはミラーアップ動作の完了信号が入力されたと判定した場合、S910に処理を進める。つまり、カムギヤ401がミラー130のアップ位置に相当する位相角まで回転した場合(図5(D)参照)、制御部50bは駆動モータ41bの駆動を停止させ、ミラーアップ動作が完了する。一方、ミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力されない場合(S902でno)、S903へ処理を進める。S903では駆動モータ41bの第2の方向への駆動開始時点からの経過時間がシステム制御部50により計測される。その計測時間が第2待ち時間を超えた場合(S903でyes)、S904へ処理を進める。また、計測時間が第2待ち時間以下の場合(S903でno)、S902に戻る。第2待ち時間については、通常のミラーアップ動作に必要な時間に対して余裕を見込みつつ、第1待ち時間に比べて短い時間が設定されている。これは、ミラーボックス内に侵入した異物等によりミラー130が押さえつけられ、駆動モータ41bやカムギヤ401の回転阻害により故障が起こらないようにするためである。この第2待ち時間が経過してもカムギヤ401がミラーアップ動作の完了位置まで回転できない場合、以下の可能性が想定される。
・駆動モータ41b、カムギヤ401を含むミラー駆動機構に何らかの故障がある場合。
・ミラー130が何らかの異物により押さえつけられている場合。
【0045】
そこで、S904で制御部50bは駆動モータ41bの第2の方向への駆動を一旦停止させて、S905へ処理を進める。S905で制御部50bは、駆動モータ41bを第2の方向とは反対方向となる第1の方向に駆動し、モータ・アップ方式からバネ・アップ方式に切り替えて、ミラー駆動を再開させる。S906、S908、S909では図7のS802、S803、S804と同様の処理がそれぞれ実行されるので、各処理の説明は省略する。
S906でミラーアップ動作の完了信号が制御部50bに入力された場合、S907へ処理を進める。S907で報知部54は、異物侵入等によりミラー130の駆動が阻害されている可能性がある旨の警告報知処理を行う。ミラー駆動機構に異常がなく、ミラーボックス内の異物によりミラー130の駆動が阻害されている場合、ユーザへの警告表示や音声通知を行うことにより、ユーザに異物等を取り除くよう促すことができる。この場合、駆動モータ41b、カムギヤ401等の制御は正常に完了することとなる。ミラー130の駆動を阻害している異物が取り除かれた後では、その段階でミラー130がミラーアップバネ405の付勢力によりアップ位置に到達する。その後、S910へ処理を進める。
【0046】
以上のように、本実施形態では異物侵入等によりミラー部材の駆動が一時的に阻害された場合でも、故障の虞が無く、安全にミラーアップ駆動を行うことができる。また、このような状況と、実際に駆動機構に故障が発生した状況とを明確に区別することが可能となるので、後者の場合にはユーザに対して報知部54により、適切な対処方法を通知できる。
【0047】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0048】
41 ミラー制御部
50 システム制御部
50a 判定部
50b 制御部
54 報知部
100 撮像装置
130 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像光学系の光軸上に配置される可動のミラー部材と、
前記ミラー部材を前記光軸上にある第1位置と前記光軸から退避させた第2位置との間で駆動する駆動手段と、
前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを検出する検出手段と、
前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記駆動手段は、アクチュエータを有し、前記アクチュエータに連結されることなく前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する第1の駆動方式または前記アクチュエータに連結されて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する第2の駆動方式にて、前記ミラー部材を駆動し、
前記制御手段は、前記ミラー部材を前記第1の駆動方式で駆動するか、前記第2の駆動方式で駆動するかを切り替えるものであって、
前記第2の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際、前記アクチュエータの駆動を開始してから予め設定された待ち時間が経過した後に、前記制御手段は、前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを判定し、
前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置すると判定できない場合に、前記制御手段は、前記第2の駆動方式による前記ミラー部材の駆動から前記第1の駆動方式による前記ミラー部材の駆動へ切り替えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記ミラー部材を前記第2位置に付勢する付勢部材を有し、
前記第1の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際には、前記付勢部材の付勢力で前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動し、
前記第2の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際には、前記アクチュエータの駆動力および前記付勢部材の付勢力で前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際には、前記アクチュエータを第1の方向に駆動することで、前記駆動手段は前記アクチュエータと前記ミラー部材との連結を解除し、
前記第2の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際には、前記アクチュエータを前記第1の方向とは反対方向となる第2の方向に駆動することで、前記駆動手段は前記アクチュエータと前記ミラー部材との連結を維持することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際、前記アクチュエータの駆動を開始してから予め設定された待ち時間が経過した後に、前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを判定し、
前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置すると判定できない場合に、前記制御手段は、その旨をユーザに報知することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記第2の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際の前記待ち時間が、前記第1の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する際の前記待ち時間よりも短く設定されることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像光学系の光軸上に配置される可動のミラー部材と、該ミラー部材を前記光軸上にある第1位置と前記光軸から退避させた第2位置との間で駆動する駆動手段と、前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを検出する検出手段と、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、前記駆動手段は、アクチュエータを有し、前記アクチュエータに連結されることなく前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する第1の駆動方式または前記アクチュエータに連結されて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置へ駆動する第2の駆動方式にて、前記ミラー部材を駆動し、前記制御手段は、前記ミラー部材を前記第1の駆動方式で駆動するか、前記第2の駆動方式で駆動するかを切り替える撮像装置にて実行される制御方法であって、
前記第2の駆動方式にて前記ミラー部材を前記第1位置から前記第2位置に駆動する際、前記アクチュエータの駆動を開始してから予め設定された待ち時間が経過した後に、前記制御手段が、前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置するかどうかを判定し、
前記検出手段の出力に基づいて前記ミラー部材が前記第2位置に位置すると判定できない場合に、前記制御手段が、前記第2の駆動方式による前記ミラー部材の駆動から前記第1の駆動方式による前記ミラー部材の駆動へ切り替えることを特徴とする撮像装置の制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−29694(P2013−29694A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166115(P2011−166115)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】