整地ロータ構成体及び整地ロータ
【課題】組み付けが容易で、材料も削減できる整地ロータ構成体を提供することにある。
【解決手段】偶数多角形の取付け孔105を形成したボス部101、リム部102、リム部102の一方の面102aに周方向等間隔に設けられた整地作用部103、リム部102の他方の面102aに周方向等間隔に設けられて整地作用部103の間に設けられた支持部104を備えて、整地ロータ構成体100を構成する。取付け孔105の断面をN角形とし、整地作用部103及び支持部104の個数をHとしたとき、H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)となるように構成する。
【解決手段】偶数多角形の取付け孔105を形成したボス部101、リム部102、リム部102の一方の面102aに周方向等間隔に設けられた整地作用部103、リム部102の他方の面102aに周方向等間隔に設けられて整地作用部103の間に設けられた支持部104を備えて、整地ロータ構成体100を構成する。取付け孔105の断面をN角形とし、整地作用部103及び支持部104の個数をHとしたとき、H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)となるように構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転支軸の軸心方向に並べて回転支軸に一体回転自在に組み付けられて、水田作業機用の整地ロータを構成する整地ロータ構成体、及び複数の整地ロータ構成体を組み付けて構成された整地ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した整地ロータ構成体は、回転支軸に装着する整地ロータ構成体の個数を変更するだけで、安価に且つ製作容易に回転支軸の軸心方向での長さが種々異なる整地ロータを構成することを可能にしたものである。
この種の整地ロータ構成体として、例えば特許文献1に記載されたものがあった。特許文献1に記載された整地ロータ構成体は、回転支軸に嵌合するボス部を備え、ボス部の外周側に形成されたリム部と、リム部の外周部の複数の整地作用部とを備えて構成されている。ボス部を整地作用部の左右幅と同じ長さ或いは整地作用部の左右幅よりも僅かに長い長さにして、ボス部によって隣接する整地ロータ構成体の左右間隔を定めると共に、長いボス部によって整地作用部の左右の横揺れを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−65979号公報(段落0018、図6、図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の整地ロータ構成体にあっては、ボス部により整地ロータ構成体の幅を定めていたので、長いボス部の分だけ材料が必要であった。さらに整地作用部がリム部の左右に片持ち状に保持されていたので、整地作用部を所定の強度に保つ為に太くしなければならず、この点からも材料が必要であった。
【0005】
本発明の目的は、組み付けが容易で材料も削減でき、しかも優れた整地を行える整地ロータを構成することのできる整地ロータ構成体及び整地ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、回転支軸の軸心方向に並べて前記回転支軸に一体回転自在に組み付けられて水田作業機用の整地ロータを構成する整地ロータ構成体において次のように構成する。
断面が偶数多角形に形成された前記回転支軸に嵌合する偶数多角形の取付け孔を形成したボス部と、前記ボス部に形成したリム部とを備え、
前記リム部から前記取付け孔の軸心方向に延出する整地作用部を、前記リム部の一方の面に周方向等間隔に並べて設け、
前記リム部の他方の面に、隣接する整地ロータ構成体の前記整地作用部の延出端部を各別に嵌合させて支持する支持部を設けるとともに、前記支持部を前記取付け孔の軸心の方向視で前記整地作用部と同一円周上で且つ前記整地作用部の間の位置に形成し、
前記取付け孔の断面をN角形とし、前記整地作用部及び前記支持部のそれぞれの個数をHとしたとき、
H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)
となるように構成してある。
【0007】
〔作用〕
第1発明を、取付け孔が四角形で、n=2の場合(後述する主たる実施の形態の場合)について説明すると、例えば図11,12,14に示すように、N=4、n=2、2n+1=5、整地作用部103の個数H=10である。この場合、H(10)個の整地作用部103がリム部102の一方の面102aに周方向等間隔で配置され、リム部102の他方の面102bに、取付け孔105の軸心の方向視で整地作用部103と同一円周上で整地作用部103の間の位置に支持部104が配置される。支持部104の個数Hは整地作用部103の個数Hの同数のH(10)個である。
したがって、整地作用部と支持部は合わせて2H(20)個で、それぞれ各H(10)個の整地作用部と支持部とが、リム部の一方の面と他方の面に配置されて、取付け孔の軸心の方向視で整地作用部と支持部とが円周方向に交互に一方の面と他方の面に等間隔で配置されることになる。
【0008】
第1発明によると、整地ロータ構成体を回転支軸に組み付けるに当たって、回転支軸に対する整地ロータ構成体の整地作用部の位相を、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体の整地作用部の位相と異なるようにしながら、整地作用部の延出端部を、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体の支持部に嵌合させるように組み付ける。これを所定個数繰り返して回転支軸に複数個の整地ロータ構成体を組み付けることで、整地ロータを組み立てる。単体の整地ロータ構成体では整地作用部はリム部に片持ち状に支持されているが、複数の整地ロータ構成体を組み付けることによって、整地作用部は隣接する整地ロータ構成体の支持部に支持されることによって両持ち状に支持されることとなるので、整地作用部の強度が従来のものよりも高いものとなり、その分だけ整地作用部の材料を削減することが可能となった。
【0009】
整地ロータとして組み付けられた状態で整地ロータ構成体の幅は、リム部の幅(厚み)とリム部に取り付けた整地作用部の幅とによって定まるので、従来のようにボス部を整地ロータ構成体の幅に相当する長さまで長くする必要がなく、ボス部としては整地ロータ構成体を支持するためだけの短く小さなものとすることができるようになって、この点からも材料の削減を図ることができた。
【0010】
第1発明によると、整地ロータ構成体を回転支軸に組み付けるに当たって、整地ロータ構成体の整地作用部を、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体の支持部の位相に一致するように組み付けるだけでよいので、整地ロータ構成体の位相の位置決めが容易に行え、組み付けを楽に行うことができる。具体的には、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体と同一位相の状態から、N角形の取付け孔の頂点を一つずらせて整地ロータ構成体を組み付ければよい。例えば、取付け孔が四角形の場合は、90(360/N)°ずらせばよい。
【0011】
〔第1発明の効果〕
第1発明によると、整地ロータ構成体を構成するための材料を軽減でき、軽量で丈夫な整地ロータ構成体を得ることができた。複数の整地ロータ構成体の組み付けが容易に行えるようになって作業性の向上を図ることができた。
【0012】
〔第2発明の構成〕
本第2発明は、第1発明の構成において次のように構成する。
前記整地作用部と前記支持部とが、前記リム部の一方の面と他方の面とに対して、前記取付け孔を中心とする同一半径の円周上における(360/2H)°の位相差で交互に配置され、且つそれぞれH個の前記整地作用部及び前記支持部のうちN/2個の前記整地作用部とN/2個の前記支持部とが、前記取付け孔の中心を通る前記取付け孔の対角線の延長線上に位置するように配設してある。
【0013】
〔作用効果〕
第2発明によると、取付け孔がN角形の場合、取付け孔の中心を通る取付け孔の対角線のなす角度は(360/N)度である。取付け孔(N角形)に対する整地作用部の個数Hは、
H=N(2n+1)/2(但し、n=1,2,3・・・とする)・・・・(1)
であるから、隣接する整地作用部のなす角度は(360/H)となる。したがって、前述の角度(360/N)の中に存在する整地作用部の個数Hは、(360/N)/(360/H)=H/Nである。上記式(1)より、H/N=(2n+1)/2となる。
【0014】
つまり、取付け孔(N角形)の隣接する頂点の間に(n+1/2)個の整地作用部を備えている。例えば四角形、六角形、八角形においてn=1のときは、整地作用部の個数Hは6個、9個、12個となり、取付け孔(N角形)の隣接する頂点の間には(n+1/2)=1.5個の整地作用部が存在する。端数(0.5)個は、隣接する整地作用部の間の中間位置(リム部の他方の面の支持部が存在する位置で(360/2H)°の位相差の位置)に相当し、この位置には支持部が存在する。これにより、取付け孔(N角形)の中心を通る取付け孔の対角線の延長線上には、交互に整地作用部と支持部とが存在する。
【0015】
したがって、N角形の回転支軸に整地ロータ構成体を組み付ける場合、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体に対して、整地ロータ構成体を同一位相の状態からN角形の取付け孔の頂点を一つずらせて組み付ければ、整地作用部の延出端部を一つ前に組み付けられた整地ロータ回転体の支持部に嵌合させることができる。このように整地ロータ構成体を組み付けるに当たって、整地ロータ構成体を一つ前に組み付けられた整地ロータ構成体と同位相の状態から取付け孔の隣の頂点まで位相をずらすことにより簡単に組み付けることができる。
【0016】
〔第3発明の構成〕
本第3発明は、第1発明又は第2発明の構成において次のように構成する。
前記偶数多角形を四角形又は六角形又は八角形としてある。
【0017】
〔作用効果〕
第3発明によると、偶数多角形を四角形又は六角形又は八角形とすることにより、整地作用部の個数を6〜12個の比較的少ない個数で整地ロータ構成体を構成することができる。一つの整地ロータ構成体に対して、整地作用部の個数が多すぎると隣接する整地作用部の間隔が小さくなって整地機能が損なわれるが、第3発明によると隣接する整地作用部の間隔が適切なものとなって、泥押しを抑えワラ屑等を田面内へ押し込みながら、泥土を良好に掻き均して整地を行うことができるように、整地ロータ構成体を構成することができる。
【0018】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明〜第3発明のいずれか一つの複数の整地ロータ構成体を、隣接する前記整地ロータ構成体に対して位相を(360/N)°だけずらして前記回転支軸に組み付けられている。
【0019】
〔作用効果〕
整地作用部が整地ロータの全長に亘って同一位相であると、整地作用部の個数が少ない場合ほど断続的に大きな負荷が作用するが、第4発明においては、隣接する整地ロータ構成体の整地作用部の位相が異なるので、整地ロータの全体としての負荷が平均化され易く振動の少ない駆動が可能になるとともに、整地が均一化され易く良好な整地を行うことができる整地ロータが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乗用型田植機の全体を示す側面図である。
【図2】苗植付け装置と整地ロータを示す側面図である。
【図3】苗植付け装置の駆動構造を示す平面図である。
【図4】接地フロート及び整地ロータを示す平面図である。
【図5】整地板の取付け構造を示す一部縦断側面図である。
【図6】整地板の分解斜視図である。
【図7】ロータ伝動機構、及びロータ伝動機構への入力軸の接続構造を示す断面図である。
【図8】(a)は支持手段の整地ロータを下降操作した状態を示す側面図、(b)は支持手段の整地ロータを上昇操作した状態を示す側面図である。
【図9】苗植付け装置及び整地ロータの昇降制御を示すブロック図である。
【図10】整地ロータを示す断面図である。
【図11】第1及び第2の整地ロータ構成体を示す斜視図である。
【図12】第1の整地ロータ構成体を示す側面図である。
【図13】別の実施の形態の整地ロータ構成体を示す側面図である。
【図14】回転支軸に組み付ける整地ロータ構成体の取付け孔の形状(N角形)と整地作用部の個数の関係を示す表である。
【図15】別の実施の形態において、(a)は整地作用部の個数が6個の場合の取付け孔の形状(四角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図、(b)は整地作用部の個数が10個の場合の取付け孔の形状(四角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図である。
【図16】別の実施の形態において、(a)は整地作用部の個数が9個の場合の取付け孔の形状(六角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図、(b)は整地作用部の個数が12個の場合の取付け孔の形状(八角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る整地ロータ構成体100及び整地ロータ50が装備された乗用型水田作業機の一例である乗用型田植機の全体を示す側面図である。乗用型田植機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪1及び左右一対の駆動自在な後輪2が装備された自走車を備え、自走車の車体フレーム3の後部にリンク機構4を介して連結された水田作業装置としての苗植付け装置10を備え、自走車の車体後部に設けた肥料タンク21が装備された施肥装置20を備えて構成してある。
【0022】
乗用型田植機は、苗の植付け作業及び田面Tに肥料を供給する施肥作業を行なう。
自走車は、車体前部に設けたエンジン5、ミッションケース6、前輪1を支持する前輪駆動ケース7、後輪2を支持する後輪駆動ケース8を備え、エンジン5の動力をミッションケース6の内部に位置する走行トランスミッション(図示せず)を介して前輪駆動ケース7及び後輪駆動ケース8に伝達して前輪1及び後輪2を駆動して走行する。自走車は、車体後部に設けた運転座席9aが装備された搭乗型の運転部9を備え、運転部9に搭乗して操縦するよう搭乗型になっている。自走車は、車体前部の両横側に設けた予備苗収容装置30を備えている。予備苗収容装置30は上下四段に設けた予備苗棚30aを備え、予備苗棚30aに予備の苗を一枚ずつ載置して収容する。
【0023】
リンク機構4は、アッパーリンク4aとロアーリンク4bとを備えた四連リンク機構からなり、昇降シリンダ31によって車体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、苗植付け装置10の下部に車体横方向に並んで位置する四つの接地フロート11及び一つの接地センサフロート12が田面Tに接地した下降作業位置と、接地フロート11及び接地センサフロート12が田面Tから高く上昇した上昇非作業位置とに、苗植付け装置10を昇降操作する。苗植付け装置10を下降作業位置に下降させて自走車を走行させると、苗植付け装置10は、エンジン5の動力によって駆動されて、苗植付け装置10の後部に車体横方向に並んで位置する八つの苗植付け機構13(図2、図3参照)によって田面Tに苗を植え付ける。
【0024】
図1に示すように、施肥装置20は、肥料タンク21を備える他、肥料タンク21の下部に連設された肥料繰出し機構22、肥料繰出し機構22の肥料排出部に送風口が連通された電動ブロワ23を備えて構成してあり、肥料繰出し機構22は車体横方向に並んだ八つの肥料排出口を備えている。肥料繰出し機構22の肥料排出口は、苗植付け装置10の下部に車体横方向に並んで位置する八つの作溝施肥器24(図2参照)に肥料供給ホース25を介して接続されている。肥料繰出し機構22は、走行トランスミッションの動力を後輪駆動ケース8に伝達する伝動系統から取り出した動力によって駆動される。
【0025】
施肥装置20は、肥料タンク21に貯留された粒状の肥料を肥料繰出し機構22によって肥料タンク21から肥料排出口に繰出し、肥料排出口に繰出した肥料を電動ブロワ23によって供給される搬送風によって肥料供給ホース25に供給する。肥料供給ホース25は、供給された肥料を電動ブロワ23からの搬送風によって作溝施肥器24に供給する。作溝施肥器24は、苗植付け機構13により植え付けられた苗の近くの田面Tに溝を形成し、形成した溝に肥料供給ホース25からの肥料を供給する。これにより、苗植付け装置10が苗の植付け作業を行うのに伴い、施肥装置20は苗の横側近くに肥料を供給する。
【0026】
苗植付け装置10について説明する。
図2は苗植付け装置10を示す側面図である。図3は苗植付け装置10の駆動機構を示す平面図である。苗植付け装置10は、八つの苗植付け機構13、接地フロート11、接地センサフロート12、車体横向きの四角形の鋼管材でなるメインフレーム14aを備えて構成されたフレーム14、フレーム14の前部の上側に下端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で設けた苗載せ台15を備えている。
【0027】
図2及び図3に示すように、苗植付け装置10のフレーム14は、メインフレーム14aの車体横方向での中央部に取り付けたフィードケース16を備え、メインフレーム14aから車体後方向きに延出された四つの植付け駆動ケース17を備えて構成してある。植付け駆動ケース17は、車体横方向に所定間隔を隔てて並んでいる。
【0028】
苗植付け機構13は、植付け駆動ケース17の後端部の両横側に一つずつ位置するように配置されており、植付け駆動ケース17の後端部に回転駆動自在に支持されている。苗植付け機構13は、植付け駆動ケース17に回転支軸13aを介して回転駆動自在に支持された回転ロータ13b、及び回転ロータ13bの両端部に回転駆動自在に支持された植付けアーム13cを備えて構成してある。苗植付け機構13は、自走車のミッションケース6の内部に設けた作業トランスミッション(図示せず)の動力によって駆動される。
【0029】
自走車の作業トランスミッションの動力が回転軸32を介してフィードケース16に入力され、フィードケース16に入力された動力がフィードケース16から伝動軸33を介して植付け駆動ケース17の入力軸17aに伝達され、入力軸17aの動力が伝動チェーン34を介して回転支軸13aに伝達される。苗植付け機構13は、植付けアーム13cに設けられた植付け爪13dの先端が回転軌跡を描いて苗載せ台15の下端部と田面Tとの間を上下に往復移動し、一方の植付けアーム13cの植付け爪13dと他方の植付けアーム13cの植付け爪13dとによって交互に、苗載せ台15に載置された苗の下端部から一株分の苗を取り出し田面Tに植え付ける。
【0030】
苗載せ台15は、車体横方向に並ぶ八つの苗載置部を備えている。苗載せ台15は、フィードケース16に設けた苗横送り機構(図示せず)によって苗植付け機構13の苗の植付けに連動して車体横方向に往復移送され、苗植付け機構13による苗の下端部からの苗の取出しが苗の横方向での一端側から他端側に亘って行なわれるように、苗載置部に載置された苗を苗植付け機構13に対して車体横方向に移送する。
【0031】
図2,4,5,7に示すように、接地フロート11及び接地センサフロート12は、後端側の上部に設けた取付けブラケット11a,12aを備えている。接地フロート11及び接地センサフロート12の取付けブラケット11a,12aは、車体横向きの一本のフロート支軸36から車体後方向きに延出した左右一対の支持アーム37の軸心P周りに上下揺動自在に支持されている。フロート支軸36は、フレーム14に回転及び位置固定自在に支持されている。
【0032】
接地フロート11及び接地センサフロート12は、フレーム14に対して軸心P周りに各別に上下揺動するように支持されている。接地フロート11及び接地センサフロート12の前端側は、フレーム14にリンク機構(図示せず)を介して昇降自在に連結されており、苗植付け装置10が上昇非作業位置に上昇された場合、フレーム14から大きく垂れ下がらないようにリンク機構によって支持される。
【0033】
図2,4,5,6に示すように、接地センサフロート12と左右の接地フロート11との間に整地板26が配設されており、整地板26はフロート支軸36に固定されている。整地板26は整地作用部26aと取付部26bとからなり、整地作用部26aは複数のリブ27を備えている。取付部26bには取付部材28の一端部28aを挿入するための孔26cとボルト孔26dとが形成されており、取付部材28の他端部28bにはナット28cを固定してある。整地板26の取付部26bをフロート支軸36の下面に当て付けた状態で、二個の取付部材28の一端部28aを孔26cに挿通して取付部26bの下面に係止し、他端部28bのナット28cに、ボルト29を取付部26bの孔26cに挿通した状態で螺合して、整地板26をフロート支軸36に固定する。
【0034】
フロート支軸36は、車体横方向での中間部から苗載せ台15の裏面側に向けて一体回転自在に延出された植付け深さ調節レバー40を備えている。植付け深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸心周りにレバーガイド41のガイド溝に沿わせて揺動操作して固定することにより、フロート支軸36がフレーム14に対して回転して支持アーム37が上下に揺動操作し、接地フロート11及び接地センサフロート12の後端側のフレーム14に対する高さが変更されて、苗の植付け深さが変更される。このとき整地板26の整地作用部26aは、フロート支軸36の回転に対して接地フロート11及び接地センサフロート12と同方向に揺動する。苗の植付け深さが浅くなるように、フロート支軸36を図5の時計方向に回転させると、フレーム14に対して接地フロート11及び接地センサフロート12が下降すると同時に整地板26の整地作用部26aも下降する。逆に、フロート支軸36を図5の反時計方向に回転させると、フレーム14に対して接地フロート11及び接地センサフロート12が上昇すると同時に整地板26の整地作用部26aも上昇して、苗の植付け深さが深くなる。
【0035】
接地フロート11及び接地センサフロート12は、苗植付け装置10を植付け深さ調節レバー40の操作位置に対応した対地高さに支持し、苗植付け機構13による苗の植付け深さを植付け深さ調節レバー40の操作位置に対応した植付け深さにする。植付け深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸心周りに揺動操作してレバーガイド41に係止することにより、接地フロート11及び接地センサフロート12によって設定される苗植付け装置10の対地高さを変更でき、苗植付け機構13による苗の植付け深さを変更できる。自走車の進行に伴って接地フロート11及び接地センサフロート12で整地され、接地センサフロート12と左右の接地フロート11との間の隙間が整地板26によって整地される。
【0036】
図9に示すように、接地センサフロート12の前端側に連動ロッド42bを介して連係させた植付け深さ検出器42を苗植付け装置10に設けてある。植付け深さ検出器42を連係させた制御装置43に、昇降シリンダ31の操作弁44の電磁操作部を連係させてある。
【0037】
植付け深さ検出器42は、連動ロッド42bに操作アーム42aが連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、接地センサフロート12を接地センサとして田面Tからフレーム14までの高さを検出し、検出結果を制御装置43に出力する。自走車の前後傾斜などに起因して苗植付け装置10の対地高さが変化した場合、接地センサフロート12の前端側に作用する接地反力の大きさが変化して接地センサフロート12の前端側が軸心P周りにフレーム14に対して昇降し、連動ロッド42bが昇降操作されて植付け深さ検出器42の操作アーム42aを揺動操作する。したがって、植付け深さ検出器42は接地センサフロート12の前端側のフレーム14に対する高さを基に、苗植付け機構13の苗の植付け深さを検出する。
【0038】
制御装置43は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段46を備えている。昇降制御手段46は、植付け深さ検出器42による検出結果を基にフレーム14の田面Tからの高さを検出し、フレーム14の田面Tからの高さを基に操作弁44を操作して昇降シリンダ31を操作し、フレーム14の田面Tからの高さが設定高さになるよう苗植付け装置10を昇降操作する。
【0039】
したがって、苗植付け装置10は、自走車が前後に傾斜するなどしても、接地センサフロート12を接地センサとした昇降制御手段46による昇降制御によって、フレーム14の田面Tからの高さが設定高さに維持され、苗植付け機構13による苗の植付け深さが植付け深さ調節レバー40によって設定された設定植付け深さになる状態で苗の植付けを行なう。
【0040】
図9に示す昇降レバー47は、回転ポテンショメータ48を操作して、回転ポテンショメータ48により上昇及び下降指令などの指令を制御装置43に出力し、制御装置43により操作弁44を操作して苗植付け装置10を昇降操作するものである。図9に示す制御感度設定器49は、昇降制御手段46による苗植付け装置10の昇降制御の制御感度を鈍感側や敏感側に変更するものである。
【0041】
図4に示すように、接地センサフロート12の前端部12bが接地センサフロート12の左右の接地フロート11の前端部11bよりも車体前方側に位置するように、接地センサフロート12及び接地フロート11を配置してある。これにより、接地フロート11を自走車の後輪2の後側に近づけて配置することが可能となり、苗植付け装置10を自走車に近づけて連結することを可能にしている。
【0042】
図3及び図4に示すように、苗植付け装置10は、接地センサフロート12の左側に位置する一対の接地フロート11の前側に設けた左右一対の整地ロータ50を備え、接地センサフロート12の右側に位置する一対の接地フロート11の前側に設けた左右一対の整地ロータ50を備えており、接地センサフロート12の前側に設けた整地ローラ90を備えている。図2,3,4に示すように、左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50は、整地ロータ50の後端部が接地センサフロート12の前端部12bよりも車体後方側に位置する状態で配置されている。
【0043】
左側及び右側の整地ロータ50は、左右一対の整地ロータ50に共用の一本の回転支軸51を備えている。左側及び右側の整地ロータ50は、回転支軸51の一端部と植付け伝動ケース17とに亘って連結した伝動ケース61、回転支軸51の左右一対の整地ロータ50の間に位置する部位とメインフレーム14aとに亘って連結した支持手段70、回転支軸51の他端部とメインフレーム14aとに亘って連結した支持手段70を介して、フレーム14に支持されている。
【0044】
図7に示すように、伝動ケース61の入力軸62と植付け駆動ケース17の入力軸17aとをジョイント55を介して一体回転及び脱着自在に連結することにより、伝動ケース61を植付け駆動ケース17に連結している。ジョイント55は、植付け伝動ケース17の入力軸17aと伝動ケース61の入力軸62とを接続する継手部材56、植付け伝動ケース17の入力軸17a及び伝動ケース61の入力軸62と接続部材56と連結するシャーピン57、シャーピン57のスライド移動を規制するカラー58、カラー58の回転軸心方向へのスライド移動を規制するサークリップ59により構成されている。ジョイント55を用いることにより、接続構造をコンパクトにして軽量化でき、周辺のレイアウトも容易となる。カラー58とサークリップ59で一対のシャーピン57の抜け止めを行うので、接続部材56の一対のピン孔を決めることで、入力軸17a,62の軸心方向の位置を決めることができ、軸心方向の規制部品の部品点数を削減することができる。シャーピン57を採用することで、整地ロータ50に対して大きな駆動負荷が生じたときにシャーピン57がせん断されることで、整地ロータ50や他の装置の破損を防止することができる。
【0045】
植付け駆動ケース17と伝動ケース61の間の伝動系は、植付け駆動ケース17の入力軸17aの植付け駆動ケース17から露出した軸部分と、伝動ケース61の入力軸62の伝動ケース61から露出した部分とによって構成されており、植付け駆動ケース17及び伝動ケース61から露出した状態になっている。伝動ケース61は、伝動ケース61の出力軸64の断面四角形の角軸形端部64aと整地ロータ50の角筒形の回転支軸51とが一体回転自在に嵌合していることにより、回転支軸51に連結している。
【0046】
図3及び図7に示すように、左側及び右側の整地ロータ50は、自走車に設けた作業トランスミッションからフィードケース16に伝達された動力が、伝動ケース61を備えて成るロータ伝動機構60によって伝達されて、回転支軸51の車体横向きの軸心X周りに回転駆動される。
【0047】
図2,3,4に示すように、整地ローラ90の支軸91の両端側を下端部で回転自在に支持する支持アーム92の上端側を、フレーム14におけるメインフレーム14aから車体前方向きに延出した左右一対の支持フレーム93の延出端部に支持させてあり、整地ローラ90は支軸91の車体横向きの軸心Y周りに遊動自在に支持されている。
【0048】
支持アーム92は、支持フレーム93に連結ピン94を介して上下揺動自在に支持されている。支持アーム92の上端側と支持フレーム93に設けたバネホルダー95とに亘ってバネ96を連結してあり、支持アーム92は支持アーム92の上端側が高さ調節手段97に当接して受け止め支持されるまでバネ96によって下降付勢されて、整地ローラ90を田面Tに下降付勢する。
【0049】
したがって、苗植付け装置10は、自走車の通過跡に車輪跡や整地不良等による荒れがあっても、接地フロート11が滑走する箇所にあっては、接地フロート11に先立って整地ロータ50の整地及びワラ屑等の田面T内への押し込みを行い、整地ロータ50及び接地フロート11による整地を終えた箇所に苗の植付けを行う。接地センサフロート12が滑走する箇所においては、整地ローラ90の転動しながらの鎮圧による整地を行ない、整地ローラ90及び接地センサフロート12による整地を終えた箇所に苗の植付けを行う。
【0050】
左側及び右側の整地ロータ50のロータ伝動機構60は、伝動ケース61の内部に設けたロータ変速部65を備えて構成してある。図7に示すように、ロータ変速部65は、伝動ケース61の入力軸62と出力軸64とに亘って巻回した高速伝動の巻掛け伝動体66及び低速伝動の巻掛け伝動体67を備え、入力軸62に高速伝動の巻掛け伝動体66及び低速伝動の巻掛け伝動体67を巻回するように設けた一対の輪体66a,67aと、輪体66a,67a及び入力軸62に亘って設けた速度切換え機構68とを備えて構成してある。高速伝動の巻掛け伝動体66及び低速伝動の巻掛け伝動体67はチェーンによって構成してあり、一対の輪体66a,67aはチェーンスプロケットによって構成してある。
【0051】
図7に示すように、速度切換え機構68は、入力軸62の組付け溝62aに摺動自在に係入された切換え体68a、及び伝動ケース61の支持部61aに摺動操作自在に支持された操作軸68bを備えて構成してある。操作軸68bは、切換え体68aの一端側に相対回転自在に係合したシフトアーム68cを一体摺動自在に備えている。
【0052】
操作軸68bが高速付勢バネ68dに抗して摺動操作されると、切換え体68aがシフトアーム68cによって低速位置に摺動操作され、切換え体68aの切換え突部68eが高速伝動の巻き掛け体66の輪体66aから離脱して低速伝動の巻掛け伝動体67の輪体67aに係合し、入力軸62から輪体66aへの伝動を切りにして高速伝動の巻掛け伝動体66を遊動状態に切換え、入力軸62から輪体67aへの伝動を入りにして低速伝動の巻掛け伝動体67を伝動状態に切り換える低速入り状態になる。
【0053】
操作軸68bが高速付勢バネ68dによって摺動操作されると、切換え体68aの切換え突部68eが低速伝動の巻掛け伝動体67の輪体67aから離脱して高速伝動の巻掛け伝動体66の輪体66aに係入し、入力軸62から輪体67aへの伝動を切りにして低速伝動の巻掛け伝動体67を遊動状態に切り換え、入力軸62から輪体66aへの伝動を入りにして高速伝動の巻掛け伝動体66を伝動状態に切り換える高速入り状態になる。
【0054】
したがって、ロータ伝動機構60は、速度切換え機構68が高速入り状態に操作されることにより、伝動ケース61の入力軸62の動力をロータ変速部65によって高速側に変速して伝動ケース61の出力軸64から回転支軸51に伝達し、整地ロータ50を回転方向F(図2参照)に高速駆動する。ロータ伝動機構60は、速度切換え機構68が低速入り状態に操作されることにより、伝動ケース61の入力軸62の動力をロータ変速部65によって低速側に変速して伝動ケース61の出力軸64から回転支軸51に伝達し、整地ロータ50を回転方向Fに低速駆動する。図1に示すように、苗載せ台15の裏面側における上部に揺動自在に設けた変速操作具69に、操作軸68bが操作ケーブル69aを介して連結されている。
【0055】
したがって、運転座席9aから車体後方向きに手を伸ばすことによって変速操作具69を揺動操作でき、変速操作具69を揺動操作することにより、左側及び右側の整地ロータ50のロータ変速部65を高速状態又は低速状態に変速操作でき、左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50を共に高速駆動又は低速駆動されるように変速できる。
【0056】
整地ロータ50を支持する支持手段70は、整地ロータ50の回転支軸51を軸支部71aで回転自在に支持する軸支リンク71、軸支リンク71の一端側に連結ピン72aを介して相対回転自在に連結された中間リンク72、中間リンク72の他端側に連結ピン73aを介して相対回転自在に連結された揺動リンク73、中間リンク72の中間部に遊端側が連結ピン74aを介して相対回転自在に連結された操作リンク74を備えて構成されている。
【0057】
揺動リンク73の基端側は、メインフレーム14aに固定されたステー75の支持部75aの上端側に枢支ピン73bを介して回転自在に支持されている。操作リンク74の基端側は、ステー75の支持部75aの上下方向での中間部に車体横向きの連動軸76を介して回転自在に支持されている。
【0058】
図8に示すように、支持手段70は、操作リンク74が連動軸76の車体横向きの軸心周りに下降側に揺動操作されることにより、整地ロータ50を下降操作する。操作リンク74が下降側に揺動操作されると、中間リンク72が操作リンク74によって下げ操作されて軸支リンク71を下げ操作する。このとき、中間リンク72は揺動リンク73による支持のために連結ピン74aの軸心周りに操作リンク74に対して回転しながら下げ操作されて、伝動ケース61が入力軸62の軸心周りで下降揺動することを可能にする。したがって、整地ロータ50が入力軸62の軸心周りに伝動ケース61と共にフレーム14に対して下降揺動する。
【0059】
図8に示すように、支持手段70は、操作リンク74が連動軸76の車体横向きの軸心周りに上昇側に揺動操作されることにより、整地ロータ50を上昇操作する。操作リンク74が上昇側に揺動操作されると、中間リンク72が操作リンク74によって上げ操作されて軸支リンク71を上げ操作する。このとき、中間リンク72は、揺動リンク73による支持のために連結ピン74aの軸心周りに操作リンク74に対して回転しながら上げ操作されて、伝動ケース61が入力軸62の軸心周りで上昇揺動することを可能にする。したがって、整地ロータ50が入力軸62の軸心周りに伝動ケース61と共にフレーム14に対して上昇揺動する。
【0060】
図8(a),(b)に示すように、左側の整地ロータ50を支持する一方の支持手段70における操作リンク74に扇形ギヤ77を一体回転自在に備えさせ、扇形ギヤ77に出力ギヤ78aが噛み合っている電動モータで成る昇降モータ78をステー75に支持している。昇降モータ78は、出力ギヤ78aによって扇形ギヤ77を連動軸76の軸心周りに上昇側及び下降側に回転操作して、操作リンク74を上昇側及び下降側に揺動操作する。
【0061】
連動軸76は、支持手段70の操作リンク74を一体回転自在に連結して、左側の整地ロータ50を支持する一対の支持手段70と右側の整地ロータ50を支持する一対の支持手段70とを、上昇側及び下降側に連動して作動するように連動させ、一つの支持手段70に作用する昇降モータ78による左側の整地ロータ50と右側の整地ロータ50の下降及び上昇操作を可能にしている。
【0062】
図8及び図9に示すように、昇降モータ78及び連動軸76の一端側に連動させたロータ位置検出器80を制御装置43に連係させてある。制御装置43に、整地深さ設定器81及び設定植付け深さ検出センサ45が連係されている。制御装置43は、自動高さ調節手段82を備えている。ロータ位置検出器80は、連動軸76に連係させた回転ポテンショメータによって構成してあり、連動軸76の回転位置を基に整地ロータ50のフレーム14に対する車体上下方向での位置を検出し、この検出結果を制御装置43に出力する。設定植付け深さ検出センサ45は、フロート支軸36に連係させた回転ポテンショメータによって構成してあり、フロート支軸36の操作位置を基に、植付け深さ調節レバー40によって設定される設定植付け深さを検出し、検出結果を制御装置43に出力する。
【0063】
整地深さ設定器81は、左側及び右側の整地ロータ50の下端50aを接地センサフロート12の接地底面12cよりも低い配置高さに位置させる間隔を設定整地深さD(図2及び図9参照)として設定し、設定整地深さDを制御手段43に出力する。整地深さ設定器81は、回転操作自在なダイヤル形の操作具を備え、操作具が回転操作されることにより、設定整地深さDを浅側及び深側に変更する。
【0064】
自動高さ調節手段82は、設定植付け深さ検出センサ45及びロータ位置検出器80による検出結果、整地深さ設定器81による設定整地深さDを基に昇降モータ78を操作して、整地ロータ50が接地センサフロート12のフレーム14に対する高さの変更にかかわらず設定整地深さDを維持するように整地ロータ50を昇降調節する。
【0065】
したがって、植付け深さ調節レバー40を操作して接地センサフロート12のフレーム14に対する高さ(苗の植付け深さ)を変更しても、この変更に連係して自動高さ調節手段82によって整地ロータ50の昇降調節が行なわれ、左側及び右側の整地ロータ50は整地深さ設定器81によって設定された設定整地深さDを維持する。
【0066】
図2及び図8に示すように、左側及び右側の整地ロータ50の後方にロータカバー85を設けてある。ロータカバー85は、整地ロータ50の外周部に沿うように成形された湾曲形の板材によって構成してある。ロータカバー85は、整地ロータ50によって跳ね上げられた泥土を接地フロート11などに掛からないように受け止めて田面Tに落とす。ロータカバー85の上端側にロータカバー85の車体横方向の全長に亘って設けた管形の取付けバー85aを備えている。取付けバー85aは、伝動ケース61に設けた支持板61a(図2参照)と支持手段70の軸支リンク71とに亘って連結されており、ロータカバー85は支持手段70及び伝動ケース61に支持されて整地ロータ50と共に昇降操作される。
【0067】
図3及び図4に示すように、整地ローラ90は、整地ローラ90の車体横方向での中間部に設けた排水溝90aを備えており、整地ローラ90の前側に位置する水を整地ローラ90の前側に溜まり難いように排水溝90aによって後方に排出しながら整地を行う。整地ローラ90の排水溝90aは、苗植付け装置10が上昇非作業位置に上昇された際に回転軸32を入り込ませて、整地ローラ90と回転軸32の当接を回避する。図2及び図3に示すように、支持アーム92に作用する高さ調節手段97は、支持フレーム93に支持部材98を固設して設けた雌ネジ部に螺着されたネジ軸によって構成してある。ネジ軸は回転操作自在な操作ノブ97aを備えている。
【0068】
植付け深さ調節レバー40による接地センサフロート12のフレーム14に対する高さ(苗の植付け深さ)を変更した場合、自動高さ調節手段82による整地ロータ50の高さ調節が行なわた場合、支持アーム92に作用する高さ調節手段97を操作ノブ97aの回転操作によって操作することにより、高さ調節手段97の支持アーム92に対するストッパ位置が変化して、整地ローラ90を整地に適切な高さに調節することができる。
【0069】
苗の植付け深さが中間位置から最浅位置の範囲では、整地ローラ90を最下限位置に設定してあっても、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも上側に位置している。
苗の植付け深さが中間位置から最深位置の範囲では、整地ローラ90を最下限位置に設定してあると、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも下側に位置する。したがって、高さ調節手段97を操作することにより、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも設定高さD1(図2参照)を隔てた高い配置高さで、整地ロータ50の下端50aよりも高い配置高さに位置するように整地ローラ90の高さを調節することができる。
【0070】
図10に示すように、整地ロータ50は回転支軸51を備え、回転支軸51に複数個の第1の整地ロータ構成体100と、1個の第2の整地ロータ構成体110を組み付けて構成してある。回転支軸51は、回転支軸51の一端部と中間部とに位置する中実軸部52を備え、一対の中実軸部52の四角形の連結部52aに一体回転自在に連結した四角形で短尺の筒軸部53を備え、回転支軸51の中間部に位置する中実軸部52の四角形の連結部52aに一端側を一体回転自在に連結した四角形で長尺の筒軸部54を備えて構成してある。
【0071】
回転支軸51は、中実軸部52が支持手段70における軸支リンク71の軸支部71aに相対回転自在に支持されることにより、支持手段70に回転自在に支持されて、整地ロータ50を支持手段70に回転自在に支持させる。回転支軸51は、筒軸部54の中実軸部52に連結する側とは反対側の端部が、伝動ケース61の出力軸64の四角形の端部64aに一体回転自在に連結されることにより、伝動ケース61の出力軸64に一体回転自在に連結されている。
【0072】
図10,11,12に示すように、整地ロータ構成体100はボス部101とボス部101に形成されたリム部102とを備えており、リム部102の一方の面102aにリム部102の周方向に所定間隔を隔てて並べて設けた10個の整地作用部103と、リム部102の他方の面102bにリム部102の周方向に所定間隔を隔てて並べて設けた10個の支持部104とを備えて構成してある。ボス部101、リム部102、整地作用部103及び支持部104は合成樹脂で一体成形してあり、ボス部101に四角形の取付け孔105を備えている。
【0073】
整地作用部103は、一端部をリム部102に連結した状態で且つ整地作用部103のリム部102からの延出方向が同一になる状態で、等しい間隔でリム部102から取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に延出しており、整地作用部103の延出端部103bが開口された筒形に構成してある。図12に示すように、整地作用部103の断面形状は、リム部102の外周側端での整地ロータ50の回転方向Fの幅W1が、リム部102の内周側端での整地ロータ50の回転方向Fの幅W2よりも大であり、リム部102の半径方向での幅Lが幅W1よりも大である形状に設定されている。
【0074】
整地作用部103と支持部104とは、整地作用部103のリム部102の周方向での位相と支持部104のリム部102の周方向での位相とが異なる状態で配置されている。整地作用部103と支持部104とは、整地作用部103の配列ピッチと支持部104の配列ピッチとが同一である状態で、取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向視において、隣接する整地作用部103の間に一つの支持部104が位置している。
【0075】
支持部104は嵌合凹入部106を備えており、嵌合凹入部106は取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に向かって開口している。支持部104の外周形状及び嵌合凹入部106の形状は、整地作用部103の断面形状に相似した形状に設定されている。
【0076】
図10及び図11に示すように、整地ロータ構成体110は、ボス部111が中心部に設けられた蓋板部112を備え、蓋板部112の一方の側面部に蓋板部112の周方向に所定間隔を隔てて並べて設けた10個の第2の支持部113を備えている。蓋板部112は合成樹脂によって構成してあり、支持部113は蓋板部112に一体成形してある。蓋板部112は、ボス部111に蓋板部112の回転軸心を軸心として設けた四角形の取付け孔114を備えている。
【0077】
支持部113は、整地ロータ構成体100の整地作用部103の配列ピッチと同じ配列ピッチで並んでおり、支持部113も嵌合凹入部115を備えている。嵌合凹入部115は取付け孔114の軸心の方向に向かって開口しており、支持部113の外周形状及び嵌合凹入部115の形状は、整地ロータ構成体100の整地作用部103の断面形状に相似した形状に設定されている。
【0078】
図4及び図10に示すように、整地ロータ構成体100の6個を、回転支軸51の軸心Xの方向に並べて取付け孔105に回転支軸51の筒軸部54を組み付け(挿入し)、整地ロータ構成体110の1個を、最も端に位置する整地ロータ構成体100と隣り合わせにして、取付け孔114に回転支軸51の筒軸部54を組み付ける(挿入する)。
【0079】
隣接する整地ロータ構成体100の間において、一方の整地ロータ構成体100の支持部104が位置するリム部102の面102bと、他方の整地ロータ構成体100の整地作用部103が位置するリム部102の面102aとが対向し、一方の整地ロータ構成体100の支持部104の取付け孔105周りでの位相と、他方の整地ロータ構成体100の整地作用部103の取付け個0卯105周りでの位相とを一致させる。
【0080】
整地ロータ構成体100,110の間において、整地ロータ構成体100の整地作用部103が位置するリム部102の面102aと、整地ロータ構成体110の支持部113が位置する蓋板部112の面とが対向し、整地ロータ構成体100の整地作用部103の取付け孔105周りでの位相と、整地ロータ構成体110の支持部113の取付け孔114周りでの位相とを一致させる。これにより、左側及び右側の整地ロータ50のうちの長尺側の整地ロータ50が構成される。
【0081】
図4及び図10に示すように、整地ロータ構成体100の4個を、回転支軸51の軸心方向に並べて取付け孔105に回転支軸51の筒軸部53を組み付け(挿入し)、整地ロータ構成体110の1個を、最も端に位置する整地ロータ構成体100と隣り合わせにして取付け孔114に回転支軸51の筒軸部53を組み付ける(挿入する)。隣接する整地ロータ構成体100の向き及び位相、整地ロータ構成体100,110の向き及び位相は、長尺側の整地ロータ50が構成される場合と同様にすることにより、左側及び右側の整地ロータ50のうちの短尺側の整地ロータ50が構成される。
【0082】
長尺側の整地ロータ50が構成される場合においても、短尺側の整地ロータ50が構成される場合においても、整地ロータ構成体100を取付け孔105の四角形によって筒軸部54,53に嵌合させることにより回転支軸51に一体回転自在に連結して、回転支軸51による整地ロータ50の回転駆動を可能にする。整地ロータ構成体110を取付け孔114の四角形によって筒軸部54,53に嵌合させることにより回転支軸51に一体回転自在に連結して、回転支軸51による整地ロータ50の回転駆動を可能にする。
【0083】
隣接する整地ロータ構成体100の間において、一方の整地ロータ構成体100の整地作用部103の延出端部103bが、他方の整地ロータ構成体100の嵌合凹入部106に入り込んで支持されて、整地作用部103の延出端部103bが露出しないように嵌合凹入部106に収容される。整地ロータ構成体100,110の間において、整地ロータ構成体100の整地作用部103の延出端部103bが、整地ロータ構成体110の嵌合凹入部115に入り込んで支持されて、整地作用部103の延出端部103bが露出しないように嵌合凹入部115に収容される。
【0084】
整地ロータ50の前側に位置する部位において、隣接する整地ロータ構成体100のリム部102の間、整地ロータ構成体100,110のリム部102と蓋板部112との間に、整地ロータ構成体100の隣接する整地作用部103によって流入口120(図8参照)が形成される。整地ロータ50の後側に位置する部位において、隣接する整地ロータ構成体100のリム部102の間、整地ロータ構成体100,110のリム部102と蓋板部112との間に、整地ロータ構成体100の隣接する整地作用部103によって流出口121(図8参照)が形成される。
【0085】
これにより、整地ロータ50の前側に位置する泥水を、流入口120から整地ロータ50の内部に流入させて流出口121から整地ロータ50の後側に流出させるように、流入口120と流出口121を連通させる流水路が隣接する整地ロータ構成体100のリム部102の間、整地ロータ構成体100,110のリム部102と蓋板部112との間に形成される。
【0086】
図10に示すように、整地ロータ構成体100において、ボス部101の取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向での長さを、整地作用部103の取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向での長さよりも小に設定してある。これにより隣接する整地ロータ構成体100のボス部101の間に位置する回転支51の部位が、ボス部101によって覆われないで露出した部分となり、整地ロータ50の内部の流水路を泥水流動が容易となるように極力広くしている。
【0087】
整地ロータ構成体100の支持部104と整地作用部103とが整地ロータ構成体100の周方向に位置ずれしていることにより、取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に並ぶ複数の流入口120において、隣接する流入口120が整地ロータ50の周方向に互いに位置ずれした千鳥状に配置される。
【0088】
図12に示すように、整地作用部103の作用面103aは、ボス部101に近づくほど回転方向Fの下手側に位置するように、リム部102の半径方向に対して傾斜した状態に構成してある。これにより、図8に示すように、整地ロータ50の回転に伴って整地作用部103が田面Tの上方近くに位置した際、整地作用部103の作用面103aが水平面またはそれに近い状態となる対地姿勢となり、整地作用部103が泥水によって受ける進行抵抗を小に抑制しながら整地ロータ50による整地を行うことができる。
【0089】
図10及び図11に示すように、整地ロータ構成体100はリム部102に環状防塵部107を備えて、整地ロータ構成体110は蓋板部112に環状防塵部116を備えている。環状防塵部107,116は軸支リンク71に軸支部71aや伝動ケース61の端部61bを覆っており、軸支部71aと回転支軸51との間に対する異物侵入や伝動ケース61の端部61bと出力軸64との間に対する異物侵入を防止する。
【0090】
この実施の形態は整地ロータ構成体100において、四角形の取付け孔105を形成したリム部102に対して、10個の整地作用部103と10個の支持部104を備えているが、これは次の関係に基づくものである。
(1)リム部102の取付け孔105は、断面が偶数多角形に形成された回転支軸51に嵌合する偶数多角形であること。
(2)リム部102から取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に延出する整地作用部103を、リム部102の一方の面102aに周方向等間隔に並べて設け、リム部102の他方の面102bに、隣接する整地ロータ構成体100の整地作用部103の延出端部103bを各別に嵌合させて支持する支持部104を設けていること。
(3)支持部104を取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向視で整地作用部103と同一円周上で、且つ、整地作用部103の間の位置に形成してあること。
(4)回転支軸51及び取付け孔105の断面をN角形とし、整地作用部103及び支持部104のそれぞれの個数をHとしたとき、
H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)
となるように構成してあること。
【0091】
この実施の形態においては、取付け孔105が正四角形(N=4)で、n=2が場合である。図14にNが4〜10、nが1〜4の場合の10通りのパターンを示している。N=4、n=2のときは、2n+1=5で整地作用部103の個数H及び支持部104の個数Hは10個となる。整地作用部103と支持部104は合わせて20個で、10個の整地作用部103と10個の支持部104とが、リム部102の一方の面102aと他方の面102bに配置されて、取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向視で、整地作用部103と支持部104とが円周方向に交互に一方の面102aと他方の面102bに等間隔で配置される。
【0092】
整地ロータ構成体100,110を回転支軸51に組み付けるに当たっては、図10及び図11に示すように、最初に整地ロータ構成体110を回転支軸51に組み付け(取付け孔105に回転支軸51を挿入し)、次に整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相を整地ロータ構成体110の支持部113に一致させた状態で、整地ロータ構成体100を回転支軸51に組み付ける(取付け孔105に回転支軸51を挿入する)。
【0093】
次の整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相を、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相と異なるようにしながら(90°ずらしながら)、整地作用部103の延出端部103bを、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の支持部104に嵌合されるように組み付ける(取付け孔105に回転支軸51を挿入する)。
【0094】
これを4個又は6個と繰り返して、回転支軸51に整地ロータ構成体100を組み付けることで、整地ロータ50を組み立てる。単体の整地ロータ構成体100では整地作用部103がリム部102に対して片持ち状に支持されているだけであるが、これらを組み付けることによって整地作用部103は、隣接する整地ロータ構成体100の支持部104、又は整地ロータ構成体110の支持部113に支持されることによって両持ち状に支持されることになるので、整地作用部103の強度が向上し、整地作用部103の材料を削減することができる。
【0095】
回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の幅は、リム部102の幅(厚み)と、整地作用部103の幅とによって定まるので、ボス部101を整地ロータ構成体100の幅に相当する長さまで長くする必要がなく、ボス部101としては整地ロータ構成体100を保持するためだけの短く小さなものとすることができて、この点からも材料の削減を図ることができる。
【0096】
整地ロータ構成体100を組み付けるに当たって、隣接する整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相が異なるので、整地ロータ50の全体としての負荷が平均化され易く振動の少ない駆動が可能になるとともに、整地も均一化され易く良好な整地を行うことができる。
【0097】
整地ロータ構成体100を回転支軸51に組み付けるに当たって、整地ロータ構成体100の整地作用部103を、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の支持部104と位相が一致するように組み付けるだけでよいので、組み付ける整地ロータ構成体100の位相の位置決めが容易に行え、組み付けを楽に行うことができる。具体的には、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100と同一位相の状態から、N角形の取付け孔105(回転支軸51)の頂点を一つずらせて組み付ければよい。取付け孔105(回転支軸51)が前述のように四角形の場合は、90(360/N)°ずらせばよい。これにより、整地ロータ構成体100を構成するための材料を軽減でき、整地ロータ構成体100を軽量で丈夫なものとすることができて、整地ロータ構成体100の組み付けが容易に行える。
【0098】
整地作用部103と支持部104とが、リム部102の一方の面102aと他方の面102bとに対して、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を中心とする同一半径の円周上における(360/2H)°の位相差で交互に配置されて、H個の整地作用部103及び支持部104のうちN/2個の整地作用部103とN/2個の支持部104とが、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上に位置するように構成している。これにより、図12に示すように、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上に整地作用部103又は支持部104が存在するので、取付け孔105のある一つの頂点とその延長線上に位置する整地作用部103又は支持部104が存在することを容易に認識し易い。
【0099】
取付け孔105がN角形の場合、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線のなす角度は(360/N)度である。取付け孔105(N角形)に対する整地作用部103の個数Hは、
H=N(2n+1)/2(但し、n=1,2,3・・・とする)・・・・(1)
であるから、隣接する整地作用部103のなす角度は(360/H)となる。したがって、前述の角度(360/N)の中に存在する整地作用部103の個数Hは、(360/N)/(360/H)=H/Nである。上記式(1)より、H/N=(2n+1)/2となる。
【0100】
つまり、取付け孔105(N角形)の隣接する頂点の間に(n+1/2)個の整地作用部103を備えている。例えば四角形、六角形、八角形においてn=1のときは、整地作用部103の個数Hは6個、9個、12個となり、取付け孔105(N角形)の隣接する頂点の間には(n+1/2)=1.5個の整地作用部103が存在する。端数(0.5)個は、隣接する整地作用部103の間の中間位置(リム部102の他方の面102bの支持部104が存在する位置で(360/2H)°の位相差の位置)に相当し、この位置には支持部104が存在する。これにより、取付け孔105(N角形)の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上には、交互に整地作用部103と支持部104とが存在する。
【0101】
したがって、N角形の回転支軸51に整地ロータ構成体100を組み付ける場合、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100に対して、整地ロータ構成体100を同一位相の状態からN角形の取付け孔105(回転支軸51)の頂点を一つずらせて組み付ければ、整地作用部103の延出端部103bを、一つ前に組み付けられた整地ロータ回転体100の支持部104に嵌合させることができる。このように整地ロータ構成体100を組み付けるに当たって、整地ロータ構成体100を一つ前に組み付けられた整地ロータ構成体100と同位相の状態から取付け孔105(回転支軸51)の隣の頂点まで位相をずらすことにより簡単に組み付けることができる。
【0102】
取付け孔105(回転支軸51)を四角形又は六角形又は八角形とすることで、6〜12個の比較的少ない整地作用部103の個数Hで整地ロータ構成体103を構成することができる。一つの整地ロータ構成体103に対して、整地作用部103の個数Hが多すぎると隣接する整地作用部103の間隔が小さくなって整地機能が損なわれるが、取付け孔105(回転支軸51)を四角形又は六角形又は八角形とすることで、隣接する整地作用部103の間隔が適切なものとなって、泥押しを抑えワラ屑等を田面T内へ押し込みながら、泥土を良好に掻き均して整地を行うことができるように、整地ロータ構成体100を構成することができる。
【0103】
〔別の実施の形態〕
(1)主たる実施の形態では、取付け孔105(回転支軸51)が四角形(N=4)で、整地作用部103の個数Hが10個(n=2)とした場合であるが、Nが4〜10の偶数多角形で、nが1〜4のうち、図14に示す10通りのパターンのものが整地ロータ50を構成するのに機能的に良好に作用するものとして都合がよい。
【0104】
(2)図13には整地ロータ構成体100の別の実施の形態を示しており、整地ロータ構成体100は取付け孔105(回転支軸51)が四角形で、n=1の場合であり、リム部102の一方の面102aに形成した整地作用部103と、リム部102の他方の面102bに形成した支持部104とをそれぞれ6個ずつ形成してある。取付け孔105の中心を通る取付け孔105の対角線の延長線上には整地作用部103と支持部104とが交互に存在する。主たる実施の形態(図12)の場合も同様に、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上には整地作用部103と支持部104とが交互に存在する。
【0105】
主たる実施の形態の場合はn=2で、隣接する対角線の前述の延長線の間には、延長線上のものを除いて整地作用部103と支持部104とがそれぞれ2個存在するのに対し、図13に示す整地ロータ構成体100の場合はn=1で、隣接する前述の対角線の延長線の間には、延長線上のものを除いて整地作用部103と支持部104とがそれぞれ1個存在する。この関係はnが2を超える場合や他の多角形の場合も当てはまる。図15(a)(b)は、これを模式化したものである。
【0106】
(3)図16(a)は、取付け孔105(回転支軸51)が六角形(N=6)で、n=1の場合である。図16(b)は、取付け孔105(回転支軸51)が八角形(N=8)で、n=1の場合である。図16(a)(b)において、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上には、整地作用部103と支持部104とが交互に配置されており、隣接する前述の対角線の延長線の間にそれぞれ1個の整地作用部103と支持部104とが存在する。
【0107】
(4)本発明において、取付け孔105(回転支軸51)の形状である多角形(N角形)は正多角形を言うが、例えば正四角形、正六角形、正八角形は幾何学上の厳密且つ正確な正四角形、正六角形、正八角形を言うのではなく、(360/N)°の位相差のどの位相差のときでもリム部102を回転支軸51に組み付けることのできる形状を言い、取付け孔105(回転支軸51)の頂点付近の形状として丸みがあったり、割れ止め用のピンホールが形成されていてもよいものである。N角形の各辺が同一形状であれば、直線でなくても多少内側(凹状)又は外側(凸状)に湾曲していてもよい。
【0108】
(5)整地作用部103を、中空構造の他、中実構造に構成して実施してもよい。
【0109】
(6)整地作用部103及び支持部104の断面形状を上記した形状の他、矩形、円形、楕円形など各種の形状に設定して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、苗の植付け作業に代えて、田面に種子を供給する播種作業を行なう構成を採用した水田作業装置を備えたものにも利用できる。
【符号の説明】
【0111】
50 整地ロータ
51 回転支軸
100 整地ロータ構成体
102 リム部
102a リム部の一方の面
102b リム部の他方の面
103 整地作用部
103b 延出端部
104 支持部
105 取付け孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転支軸の軸心方向に並べて回転支軸に一体回転自在に組み付けられて、水田作業機用の整地ロータを構成する整地ロータ構成体、及び複数の整地ロータ構成体を組み付けて構成された整地ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
上記した整地ロータ構成体は、回転支軸に装着する整地ロータ構成体の個数を変更するだけで、安価に且つ製作容易に回転支軸の軸心方向での長さが種々異なる整地ロータを構成することを可能にしたものである。
この種の整地ロータ構成体として、例えば特許文献1に記載されたものがあった。特許文献1に記載された整地ロータ構成体は、回転支軸に嵌合するボス部を備え、ボス部の外周側に形成されたリム部と、リム部の外周部の複数の整地作用部とを備えて構成されている。ボス部を整地作用部の左右幅と同じ長さ或いは整地作用部の左右幅よりも僅かに長い長さにして、ボス部によって隣接する整地ロータ構成体の左右間隔を定めると共に、長いボス部によって整地作用部の左右の横揺れを防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−65979号公報(段落0018、図6、図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の整地ロータ構成体にあっては、ボス部により整地ロータ構成体の幅を定めていたので、長いボス部の分だけ材料が必要であった。さらに整地作用部がリム部の左右に片持ち状に保持されていたので、整地作用部を所定の強度に保つ為に太くしなければならず、この点からも材料が必要であった。
【0005】
本発明の目的は、組み付けが容易で材料も削減でき、しかも優れた整地を行える整地ロータを構成することのできる整地ロータ構成体及び整地ロータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
第1発明は、回転支軸の軸心方向に並べて前記回転支軸に一体回転自在に組み付けられて水田作業機用の整地ロータを構成する整地ロータ構成体において次のように構成する。
断面が偶数多角形に形成された前記回転支軸に嵌合する偶数多角形の取付け孔を形成したボス部と、前記ボス部に形成したリム部とを備え、
前記リム部から前記取付け孔の軸心方向に延出する整地作用部を、前記リム部の一方の面に周方向等間隔に並べて設け、
前記リム部の他方の面に、隣接する整地ロータ構成体の前記整地作用部の延出端部を各別に嵌合させて支持する支持部を設けるとともに、前記支持部を前記取付け孔の軸心の方向視で前記整地作用部と同一円周上で且つ前記整地作用部の間の位置に形成し、
前記取付け孔の断面をN角形とし、前記整地作用部及び前記支持部のそれぞれの個数をHとしたとき、
H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)
となるように構成してある。
【0007】
〔作用〕
第1発明を、取付け孔が四角形で、n=2の場合(後述する主たる実施の形態の場合)について説明すると、例えば図11,12,14に示すように、N=4、n=2、2n+1=5、整地作用部103の個数H=10である。この場合、H(10)個の整地作用部103がリム部102の一方の面102aに周方向等間隔で配置され、リム部102の他方の面102bに、取付け孔105の軸心の方向視で整地作用部103と同一円周上で整地作用部103の間の位置に支持部104が配置される。支持部104の個数Hは整地作用部103の個数Hの同数のH(10)個である。
したがって、整地作用部と支持部は合わせて2H(20)個で、それぞれ各H(10)個の整地作用部と支持部とが、リム部の一方の面と他方の面に配置されて、取付け孔の軸心の方向視で整地作用部と支持部とが円周方向に交互に一方の面と他方の面に等間隔で配置されることになる。
【0008】
第1発明によると、整地ロータ構成体を回転支軸に組み付けるに当たって、回転支軸に対する整地ロータ構成体の整地作用部の位相を、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体の整地作用部の位相と異なるようにしながら、整地作用部の延出端部を、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体の支持部に嵌合させるように組み付ける。これを所定個数繰り返して回転支軸に複数個の整地ロータ構成体を組み付けることで、整地ロータを組み立てる。単体の整地ロータ構成体では整地作用部はリム部に片持ち状に支持されているが、複数の整地ロータ構成体を組み付けることによって、整地作用部は隣接する整地ロータ構成体の支持部に支持されることによって両持ち状に支持されることとなるので、整地作用部の強度が従来のものよりも高いものとなり、その分だけ整地作用部の材料を削減することが可能となった。
【0009】
整地ロータとして組み付けられた状態で整地ロータ構成体の幅は、リム部の幅(厚み)とリム部に取り付けた整地作用部の幅とによって定まるので、従来のようにボス部を整地ロータ構成体の幅に相当する長さまで長くする必要がなく、ボス部としては整地ロータ構成体を支持するためだけの短く小さなものとすることができるようになって、この点からも材料の削減を図ることができた。
【0010】
第1発明によると、整地ロータ構成体を回転支軸に組み付けるに当たって、整地ロータ構成体の整地作用部を、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体の支持部の位相に一致するように組み付けるだけでよいので、整地ロータ構成体の位相の位置決めが容易に行え、組み付けを楽に行うことができる。具体的には、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体と同一位相の状態から、N角形の取付け孔の頂点を一つずらせて整地ロータ構成体を組み付ければよい。例えば、取付け孔が四角形の場合は、90(360/N)°ずらせばよい。
【0011】
〔第1発明の効果〕
第1発明によると、整地ロータ構成体を構成するための材料を軽減でき、軽量で丈夫な整地ロータ構成体を得ることができた。複数の整地ロータ構成体の組み付けが容易に行えるようになって作業性の向上を図ることができた。
【0012】
〔第2発明の構成〕
本第2発明は、第1発明の構成において次のように構成する。
前記整地作用部と前記支持部とが、前記リム部の一方の面と他方の面とに対して、前記取付け孔を中心とする同一半径の円周上における(360/2H)°の位相差で交互に配置され、且つそれぞれH個の前記整地作用部及び前記支持部のうちN/2個の前記整地作用部とN/2個の前記支持部とが、前記取付け孔の中心を通る前記取付け孔の対角線の延長線上に位置するように配設してある。
【0013】
〔作用効果〕
第2発明によると、取付け孔がN角形の場合、取付け孔の中心を通る取付け孔の対角線のなす角度は(360/N)度である。取付け孔(N角形)に対する整地作用部の個数Hは、
H=N(2n+1)/2(但し、n=1,2,3・・・とする)・・・・(1)
であるから、隣接する整地作用部のなす角度は(360/H)となる。したがって、前述の角度(360/N)の中に存在する整地作用部の個数Hは、(360/N)/(360/H)=H/Nである。上記式(1)より、H/N=(2n+1)/2となる。
【0014】
つまり、取付け孔(N角形)の隣接する頂点の間に(n+1/2)個の整地作用部を備えている。例えば四角形、六角形、八角形においてn=1のときは、整地作用部の個数Hは6個、9個、12個となり、取付け孔(N角形)の隣接する頂点の間には(n+1/2)=1.5個の整地作用部が存在する。端数(0.5)個は、隣接する整地作用部の間の中間位置(リム部の他方の面の支持部が存在する位置で(360/2H)°の位相差の位置)に相当し、この位置には支持部が存在する。これにより、取付け孔(N角形)の中心を通る取付け孔の対角線の延長線上には、交互に整地作用部と支持部とが存在する。
【0015】
したがって、N角形の回転支軸に整地ロータ構成体を組み付ける場合、一つ前に回転支軸に組み付けられた整地ロータ構成体に対して、整地ロータ構成体を同一位相の状態からN角形の取付け孔の頂点を一つずらせて組み付ければ、整地作用部の延出端部を一つ前に組み付けられた整地ロータ回転体の支持部に嵌合させることができる。このように整地ロータ構成体を組み付けるに当たって、整地ロータ構成体を一つ前に組み付けられた整地ロータ構成体と同位相の状態から取付け孔の隣の頂点まで位相をずらすことにより簡単に組み付けることができる。
【0016】
〔第3発明の構成〕
本第3発明は、第1発明又は第2発明の構成において次のように構成する。
前記偶数多角形を四角形又は六角形又は八角形としてある。
【0017】
〔作用効果〕
第3発明によると、偶数多角形を四角形又は六角形又は八角形とすることにより、整地作用部の個数を6〜12個の比較的少ない個数で整地ロータ構成体を構成することができる。一つの整地ロータ構成体に対して、整地作用部の個数が多すぎると隣接する整地作用部の間隔が小さくなって整地機能が損なわれるが、第3発明によると隣接する整地作用部の間隔が適切なものとなって、泥押しを抑えワラ屑等を田面内へ押し込みながら、泥土を良好に掻き均して整地を行うことができるように、整地ロータ構成体を構成することができる。
【0018】
〔第4発明の構成〕
第4発明は、第1発明〜第3発明のいずれか一つの複数の整地ロータ構成体を、隣接する前記整地ロータ構成体に対して位相を(360/N)°だけずらして前記回転支軸に組み付けられている。
【0019】
〔作用効果〕
整地作用部が整地ロータの全長に亘って同一位相であると、整地作用部の個数が少ない場合ほど断続的に大きな負荷が作用するが、第4発明においては、隣接する整地ロータ構成体の整地作用部の位相が異なるので、整地ロータの全体としての負荷が平均化され易く振動の少ない駆動が可能になるとともに、整地が均一化され易く良好な整地を行うことができる整地ロータが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】乗用型田植機の全体を示す側面図である。
【図2】苗植付け装置と整地ロータを示す側面図である。
【図3】苗植付け装置の駆動構造を示す平面図である。
【図4】接地フロート及び整地ロータを示す平面図である。
【図5】整地板の取付け構造を示す一部縦断側面図である。
【図6】整地板の分解斜視図である。
【図7】ロータ伝動機構、及びロータ伝動機構への入力軸の接続構造を示す断面図である。
【図8】(a)は支持手段の整地ロータを下降操作した状態を示す側面図、(b)は支持手段の整地ロータを上昇操作した状態を示す側面図である。
【図9】苗植付け装置及び整地ロータの昇降制御を示すブロック図である。
【図10】整地ロータを示す断面図である。
【図11】第1及び第2の整地ロータ構成体を示す斜視図である。
【図12】第1の整地ロータ構成体を示す側面図である。
【図13】別の実施の形態の整地ロータ構成体を示す側面図である。
【図14】回転支軸に組み付ける整地ロータ構成体の取付け孔の形状(N角形)と整地作用部の個数の関係を示す表である。
【図15】別の実施の形態において、(a)は整地作用部の個数が6個の場合の取付け孔の形状(四角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図、(b)は整地作用部の個数が10個の場合の取付け孔の形状(四角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図である。
【図16】別の実施の形態において、(a)は整地作用部の個数が9個の場合の取付け孔の形状(六角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図、(b)は整地作用部の個数が12個の場合の取付け孔の形状(八角形)と整地作用部及び支持部の関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る整地ロータ構成体100及び整地ロータ50が装備された乗用型水田作業機の一例である乗用型田植機の全体を示す側面図である。乗用型田植機は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪1及び左右一対の駆動自在な後輪2が装備された自走車を備え、自走車の車体フレーム3の後部にリンク機構4を介して連結された水田作業装置としての苗植付け装置10を備え、自走車の車体後部に設けた肥料タンク21が装備された施肥装置20を備えて構成してある。
【0022】
乗用型田植機は、苗の植付け作業及び田面Tに肥料を供給する施肥作業を行なう。
自走車は、車体前部に設けたエンジン5、ミッションケース6、前輪1を支持する前輪駆動ケース7、後輪2を支持する後輪駆動ケース8を備え、エンジン5の動力をミッションケース6の内部に位置する走行トランスミッション(図示せず)を介して前輪駆動ケース7及び後輪駆動ケース8に伝達して前輪1及び後輪2を駆動して走行する。自走車は、車体後部に設けた運転座席9aが装備された搭乗型の運転部9を備え、運転部9に搭乗して操縦するよう搭乗型になっている。自走車は、車体前部の両横側に設けた予備苗収容装置30を備えている。予備苗収容装置30は上下四段に設けた予備苗棚30aを備え、予備苗棚30aに予備の苗を一枚ずつ載置して収容する。
【0023】
リンク機構4は、アッパーリンク4aとロアーリンク4bとを備えた四連リンク機構からなり、昇降シリンダ31によって車体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、苗植付け装置10の下部に車体横方向に並んで位置する四つの接地フロート11及び一つの接地センサフロート12が田面Tに接地した下降作業位置と、接地フロート11及び接地センサフロート12が田面Tから高く上昇した上昇非作業位置とに、苗植付け装置10を昇降操作する。苗植付け装置10を下降作業位置に下降させて自走車を走行させると、苗植付け装置10は、エンジン5の動力によって駆動されて、苗植付け装置10の後部に車体横方向に並んで位置する八つの苗植付け機構13(図2、図3参照)によって田面Tに苗を植え付ける。
【0024】
図1に示すように、施肥装置20は、肥料タンク21を備える他、肥料タンク21の下部に連設された肥料繰出し機構22、肥料繰出し機構22の肥料排出部に送風口が連通された電動ブロワ23を備えて構成してあり、肥料繰出し機構22は車体横方向に並んだ八つの肥料排出口を備えている。肥料繰出し機構22の肥料排出口は、苗植付け装置10の下部に車体横方向に並んで位置する八つの作溝施肥器24(図2参照)に肥料供給ホース25を介して接続されている。肥料繰出し機構22は、走行トランスミッションの動力を後輪駆動ケース8に伝達する伝動系統から取り出した動力によって駆動される。
【0025】
施肥装置20は、肥料タンク21に貯留された粒状の肥料を肥料繰出し機構22によって肥料タンク21から肥料排出口に繰出し、肥料排出口に繰出した肥料を電動ブロワ23によって供給される搬送風によって肥料供給ホース25に供給する。肥料供給ホース25は、供給された肥料を電動ブロワ23からの搬送風によって作溝施肥器24に供給する。作溝施肥器24は、苗植付け機構13により植え付けられた苗の近くの田面Tに溝を形成し、形成した溝に肥料供給ホース25からの肥料を供給する。これにより、苗植付け装置10が苗の植付け作業を行うのに伴い、施肥装置20は苗の横側近くに肥料を供給する。
【0026】
苗植付け装置10について説明する。
図2は苗植付け装置10を示す側面図である。図3は苗植付け装置10の駆動機構を示す平面図である。苗植付け装置10は、八つの苗植付け機構13、接地フロート11、接地センサフロート12、車体横向きの四角形の鋼管材でなるメインフレーム14aを備えて構成されたフレーム14、フレーム14の前部の上側に下端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で設けた苗載せ台15を備えている。
【0027】
図2及び図3に示すように、苗植付け装置10のフレーム14は、メインフレーム14aの車体横方向での中央部に取り付けたフィードケース16を備え、メインフレーム14aから車体後方向きに延出された四つの植付け駆動ケース17を備えて構成してある。植付け駆動ケース17は、車体横方向に所定間隔を隔てて並んでいる。
【0028】
苗植付け機構13は、植付け駆動ケース17の後端部の両横側に一つずつ位置するように配置されており、植付け駆動ケース17の後端部に回転駆動自在に支持されている。苗植付け機構13は、植付け駆動ケース17に回転支軸13aを介して回転駆動自在に支持された回転ロータ13b、及び回転ロータ13bの両端部に回転駆動自在に支持された植付けアーム13cを備えて構成してある。苗植付け機構13は、自走車のミッションケース6の内部に設けた作業トランスミッション(図示せず)の動力によって駆動される。
【0029】
自走車の作業トランスミッションの動力が回転軸32を介してフィードケース16に入力され、フィードケース16に入力された動力がフィードケース16から伝動軸33を介して植付け駆動ケース17の入力軸17aに伝達され、入力軸17aの動力が伝動チェーン34を介して回転支軸13aに伝達される。苗植付け機構13は、植付けアーム13cに設けられた植付け爪13dの先端が回転軌跡を描いて苗載せ台15の下端部と田面Tとの間を上下に往復移動し、一方の植付けアーム13cの植付け爪13dと他方の植付けアーム13cの植付け爪13dとによって交互に、苗載せ台15に載置された苗の下端部から一株分の苗を取り出し田面Tに植え付ける。
【0030】
苗載せ台15は、車体横方向に並ぶ八つの苗載置部を備えている。苗載せ台15は、フィードケース16に設けた苗横送り機構(図示せず)によって苗植付け機構13の苗の植付けに連動して車体横方向に往復移送され、苗植付け機構13による苗の下端部からの苗の取出しが苗の横方向での一端側から他端側に亘って行なわれるように、苗載置部に載置された苗を苗植付け機構13に対して車体横方向に移送する。
【0031】
図2,4,5,7に示すように、接地フロート11及び接地センサフロート12は、後端側の上部に設けた取付けブラケット11a,12aを備えている。接地フロート11及び接地センサフロート12の取付けブラケット11a,12aは、車体横向きの一本のフロート支軸36から車体後方向きに延出した左右一対の支持アーム37の軸心P周りに上下揺動自在に支持されている。フロート支軸36は、フレーム14に回転及び位置固定自在に支持されている。
【0032】
接地フロート11及び接地センサフロート12は、フレーム14に対して軸心P周りに各別に上下揺動するように支持されている。接地フロート11及び接地センサフロート12の前端側は、フレーム14にリンク機構(図示せず)を介して昇降自在に連結されており、苗植付け装置10が上昇非作業位置に上昇された場合、フレーム14から大きく垂れ下がらないようにリンク機構によって支持される。
【0033】
図2,4,5,6に示すように、接地センサフロート12と左右の接地フロート11との間に整地板26が配設されており、整地板26はフロート支軸36に固定されている。整地板26は整地作用部26aと取付部26bとからなり、整地作用部26aは複数のリブ27を備えている。取付部26bには取付部材28の一端部28aを挿入するための孔26cとボルト孔26dとが形成されており、取付部材28の他端部28bにはナット28cを固定してある。整地板26の取付部26bをフロート支軸36の下面に当て付けた状態で、二個の取付部材28の一端部28aを孔26cに挿通して取付部26bの下面に係止し、他端部28bのナット28cに、ボルト29を取付部26bの孔26cに挿通した状態で螺合して、整地板26をフロート支軸36に固定する。
【0034】
フロート支軸36は、車体横方向での中間部から苗載せ台15の裏面側に向けて一体回転自在に延出された植付け深さ調節レバー40を備えている。植付け深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸心周りにレバーガイド41のガイド溝に沿わせて揺動操作して固定することにより、フロート支軸36がフレーム14に対して回転して支持アーム37が上下に揺動操作し、接地フロート11及び接地センサフロート12の後端側のフレーム14に対する高さが変更されて、苗の植付け深さが変更される。このとき整地板26の整地作用部26aは、フロート支軸36の回転に対して接地フロート11及び接地センサフロート12と同方向に揺動する。苗の植付け深さが浅くなるように、フロート支軸36を図5の時計方向に回転させると、フレーム14に対して接地フロート11及び接地センサフロート12が下降すると同時に整地板26の整地作用部26aも下降する。逆に、フロート支軸36を図5の反時計方向に回転させると、フレーム14に対して接地フロート11及び接地センサフロート12が上昇すると同時に整地板26の整地作用部26aも上昇して、苗の植付け深さが深くなる。
【0035】
接地フロート11及び接地センサフロート12は、苗植付け装置10を植付け深さ調節レバー40の操作位置に対応した対地高さに支持し、苗植付け機構13による苗の植付け深さを植付け深さ調節レバー40の操作位置に対応した植付け深さにする。植付け深さ調節レバー40をフロート支軸36の軸心周りに揺動操作してレバーガイド41に係止することにより、接地フロート11及び接地センサフロート12によって設定される苗植付け装置10の対地高さを変更でき、苗植付け機構13による苗の植付け深さを変更できる。自走車の進行に伴って接地フロート11及び接地センサフロート12で整地され、接地センサフロート12と左右の接地フロート11との間の隙間が整地板26によって整地される。
【0036】
図9に示すように、接地センサフロート12の前端側に連動ロッド42bを介して連係させた植付け深さ検出器42を苗植付け装置10に設けてある。植付け深さ検出器42を連係させた制御装置43に、昇降シリンダ31の操作弁44の電磁操作部を連係させてある。
【0037】
植付け深さ検出器42は、連動ロッド42bに操作アーム42aが連動された回転ポテンショメータによって構成してあり、接地センサフロート12を接地センサとして田面Tからフレーム14までの高さを検出し、検出結果を制御装置43に出力する。自走車の前後傾斜などに起因して苗植付け装置10の対地高さが変化した場合、接地センサフロート12の前端側に作用する接地反力の大きさが変化して接地センサフロート12の前端側が軸心P周りにフレーム14に対して昇降し、連動ロッド42bが昇降操作されて植付け深さ検出器42の操作アーム42aを揺動操作する。したがって、植付け深さ検出器42は接地センサフロート12の前端側のフレーム14に対する高さを基に、苗植付け機構13の苗の植付け深さを検出する。
【0038】
制御装置43は、マイクロコンピュータを利用して構成してあり、昇降制御手段46を備えている。昇降制御手段46は、植付け深さ検出器42による検出結果を基にフレーム14の田面Tからの高さを検出し、フレーム14の田面Tからの高さを基に操作弁44を操作して昇降シリンダ31を操作し、フレーム14の田面Tからの高さが設定高さになるよう苗植付け装置10を昇降操作する。
【0039】
したがって、苗植付け装置10は、自走車が前後に傾斜するなどしても、接地センサフロート12を接地センサとした昇降制御手段46による昇降制御によって、フレーム14の田面Tからの高さが設定高さに維持され、苗植付け機構13による苗の植付け深さが植付け深さ調節レバー40によって設定された設定植付け深さになる状態で苗の植付けを行なう。
【0040】
図9に示す昇降レバー47は、回転ポテンショメータ48を操作して、回転ポテンショメータ48により上昇及び下降指令などの指令を制御装置43に出力し、制御装置43により操作弁44を操作して苗植付け装置10を昇降操作するものである。図9に示す制御感度設定器49は、昇降制御手段46による苗植付け装置10の昇降制御の制御感度を鈍感側や敏感側に変更するものである。
【0041】
図4に示すように、接地センサフロート12の前端部12bが接地センサフロート12の左右の接地フロート11の前端部11bよりも車体前方側に位置するように、接地センサフロート12及び接地フロート11を配置してある。これにより、接地フロート11を自走車の後輪2の後側に近づけて配置することが可能となり、苗植付け装置10を自走車に近づけて連結することを可能にしている。
【0042】
図3及び図4に示すように、苗植付け装置10は、接地センサフロート12の左側に位置する一対の接地フロート11の前側に設けた左右一対の整地ロータ50を備え、接地センサフロート12の右側に位置する一対の接地フロート11の前側に設けた左右一対の整地ロータ50を備えており、接地センサフロート12の前側に設けた整地ローラ90を備えている。図2,3,4に示すように、左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50は、整地ロータ50の後端部が接地センサフロート12の前端部12bよりも車体後方側に位置する状態で配置されている。
【0043】
左側及び右側の整地ロータ50は、左右一対の整地ロータ50に共用の一本の回転支軸51を備えている。左側及び右側の整地ロータ50は、回転支軸51の一端部と植付け伝動ケース17とに亘って連結した伝動ケース61、回転支軸51の左右一対の整地ロータ50の間に位置する部位とメインフレーム14aとに亘って連結した支持手段70、回転支軸51の他端部とメインフレーム14aとに亘って連結した支持手段70を介して、フレーム14に支持されている。
【0044】
図7に示すように、伝動ケース61の入力軸62と植付け駆動ケース17の入力軸17aとをジョイント55を介して一体回転及び脱着自在に連結することにより、伝動ケース61を植付け駆動ケース17に連結している。ジョイント55は、植付け伝動ケース17の入力軸17aと伝動ケース61の入力軸62とを接続する継手部材56、植付け伝動ケース17の入力軸17a及び伝動ケース61の入力軸62と接続部材56と連結するシャーピン57、シャーピン57のスライド移動を規制するカラー58、カラー58の回転軸心方向へのスライド移動を規制するサークリップ59により構成されている。ジョイント55を用いることにより、接続構造をコンパクトにして軽量化でき、周辺のレイアウトも容易となる。カラー58とサークリップ59で一対のシャーピン57の抜け止めを行うので、接続部材56の一対のピン孔を決めることで、入力軸17a,62の軸心方向の位置を決めることができ、軸心方向の規制部品の部品点数を削減することができる。シャーピン57を採用することで、整地ロータ50に対して大きな駆動負荷が生じたときにシャーピン57がせん断されることで、整地ロータ50や他の装置の破損を防止することができる。
【0045】
植付け駆動ケース17と伝動ケース61の間の伝動系は、植付け駆動ケース17の入力軸17aの植付け駆動ケース17から露出した軸部分と、伝動ケース61の入力軸62の伝動ケース61から露出した部分とによって構成されており、植付け駆動ケース17及び伝動ケース61から露出した状態になっている。伝動ケース61は、伝動ケース61の出力軸64の断面四角形の角軸形端部64aと整地ロータ50の角筒形の回転支軸51とが一体回転自在に嵌合していることにより、回転支軸51に連結している。
【0046】
図3及び図7に示すように、左側及び右側の整地ロータ50は、自走車に設けた作業トランスミッションからフィードケース16に伝達された動力が、伝動ケース61を備えて成るロータ伝動機構60によって伝達されて、回転支軸51の車体横向きの軸心X周りに回転駆動される。
【0047】
図2,3,4に示すように、整地ローラ90の支軸91の両端側を下端部で回転自在に支持する支持アーム92の上端側を、フレーム14におけるメインフレーム14aから車体前方向きに延出した左右一対の支持フレーム93の延出端部に支持させてあり、整地ローラ90は支軸91の車体横向きの軸心Y周りに遊動自在に支持されている。
【0048】
支持アーム92は、支持フレーム93に連結ピン94を介して上下揺動自在に支持されている。支持アーム92の上端側と支持フレーム93に設けたバネホルダー95とに亘ってバネ96を連結してあり、支持アーム92は支持アーム92の上端側が高さ調節手段97に当接して受け止め支持されるまでバネ96によって下降付勢されて、整地ローラ90を田面Tに下降付勢する。
【0049】
したがって、苗植付け装置10は、自走車の通過跡に車輪跡や整地不良等による荒れがあっても、接地フロート11が滑走する箇所にあっては、接地フロート11に先立って整地ロータ50の整地及びワラ屑等の田面T内への押し込みを行い、整地ロータ50及び接地フロート11による整地を終えた箇所に苗の植付けを行う。接地センサフロート12が滑走する箇所においては、整地ローラ90の転動しながらの鎮圧による整地を行ない、整地ローラ90及び接地センサフロート12による整地を終えた箇所に苗の植付けを行う。
【0050】
左側及び右側の整地ロータ50のロータ伝動機構60は、伝動ケース61の内部に設けたロータ変速部65を備えて構成してある。図7に示すように、ロータ変速部65は、伝動ケース61の入力軸62と出力軸64とに亘って巻回した高速伝動の巻掛け伝動体66及び低速伝動の巻掛け伝動体67を備え、入力軸62に高速伝動の巻掛け伝動体66及び低速伝動の巻掛け伝動体67を巻回するように設けた一対の輪体66a,67aと、輪体66a,67a及び入力軸62に亘って設けた速度切換え機構68とを備えて構成してある。高速伝動の巻掛け伝動体66及び低速伝動の巻掛け伝動体67はチェーンによって構成してあり、一対の輪体66a,67aはチェーンスプロケットによって構成してある。
【0051】
図7に示すように、速度切換え機構68は、入力軸62の組付け溝62aに摺動自在に係入された切換え体68a、及び伝動ケース61の支持部61aに摺動操作自在に支持された操作軸68bを備えて構成してある。操作軸68bは、切換え体68aの一端側に相対回転自在に係合したシフトアーム68cを一体摺動自在に備えている。
【0052】
操作軸68bが高速付勢バネ68dに抗して摺動操作されると、切換え体68aがシフトアーム68cによって低速位置に摺動操作され、切換え体68aの切換え突部68eが高速伝動の巻き掛け体66の輪体66aから離脱して低速伝動の巻掛け伝動体67の輪体67aに係合し、入力軸62から輪体66aへの伝動を切りにして高速伝動の巻掛け伝動体66を遊動状態に切換え、入力軸62から輪体67aへの伝動を入りにして低速伝動の巻掛け伝動体67を伝動状態に切り換える低速入り状態になる。
【0053】
操作軸68bが高速付勢バネ68dによって摺動操作されると、切換え体68aの切換え突部68eが低速伝動の巻掛け伝動体67の輪体67aから離脱して高速伝動の巻掛け伝動体66の輪体66aに係入し、入力軸62から輪体67aへの伝動を切りにして低速伝動の巻掛け伝動体67を遊動状態に切り換え、入力軸62から輪体66aへの伝動を入りにして高速伝動の巻掛け伝動体66を伝動状態に切り換える高速入り状態になる。
【0054】
したがって、ロータ伝動機構60は、速度切換え機構68が高速入り状態に操作されることにより、伝動ケース61の入力軸62の動力をロータ変速部65によって高速側に変速して伝動ケース61の出力軸64から回転支軸51に伝達し、整地ロータ50を回転方向F(図2参照)に高速駆動する。ロータ伝動機構60は、速度切換え機構68が低速入り状態に操作されることにより、伝動ケース61の入力軸62の動力をロータ変速部65によって低速側に変速して伝動ケース61の出力軸64から回転支軸51に伝達し、整地ロータ50を回転方向Fに低速駆動する。図1に示すように、苗載せ台15の裏面側における上部に揺動自在に設けた変速操作具69に、操作軸68bが操作ケーブル69aを介して連結されている。
【0055】
したがって、運転座席9aから車体後方向きに手を伸ばすことによって変速操作具69を揺動操作でき、変速操作具69を揺動操作することにより、左側及び右側の整地ロータ50のロータ変速部65を高速状態又は低速状態に変速操作でき、左側の整地ロータ50及び右側の整地ロータ50を共に高速駆動又は低速駆動されるように変速できる。
【0056】
整地ロータ50を支持する支持手段70は、整地ロータ50の回転支軸51を軸支部71aで回転自在に支持する軸支リンク71、軸支リンク71の一端側に連結ピン72aを介して相対回転自在に連結された中間リンク72、中間リンク72の他端側に連結ピン73aを介して相対回転自在に連結された揺動リンク73、中間リンク72の中間部に遊端側が連結ピン74aを介して相対回転自在に連結された操作リンク74を備えて構成されている。
【0057】
揺動リンク73の基端側は、メインフレーム14aに固定されたステー75の支持部75aの上端側に枢支ピン73bを介して回転自在に支持されている。操作リンク74の基端側は、ステー75の支持部75aの上下方向での中間部に車体横向きの連動軸76を介して回転自在に支持されている。
【0058】
図8に示すように、支持手段70は、操作リンク74が連動軸76の車体横向きの軸心周りに下降側に揺動操作されることにより、整地ロータ50を下降操作する。操作リンク74が下降側に揺動操作されると、中間リンク72が操作リンク74によって下げ操作されて軸支リンク71を下げ操作する。このとき、中間リンク72は揺動リンク73による支持のために連結ピン74aの軸心周りに操作リンク74に対して回転しながら下げ操作されて、伝動ケース61が入力軸62の軸心周りで下降揺動することを可能にする。したがって、整地ロータ50が入力軸62の軸心周りに伝動ケース61と共にフレーム14に対して下降揺動する。
【0059】
図8に示すように、支持手段70は、操作リンク74が連動軸76の車体横向きの軸心周りに上昇側に揺動操作されることにより、整地ロータ50を上昇操作する。操作リンク74が上昇側に揺動操作されると、中間リンク72が操作リンク74によって上げ操作されて軸支リンク71を上げ操作する。このとき、中間リンク72は、揺動リンク73による支持のために連結ピン74aの軸心周りに操作リンク74に対して回転しながら上げ操作されて、伝動ケース61が入力軸62の軸心周りで上昇揺動することを可能にする。したがって、整地ロータ50が入力軸62の軸心周りに伝動ケース61と共にフレーム14に対して上昇揺動する。
【0060】
図8(a),(b)に示すように、左側の整地ロータ50を支持する一方の支持手段70における操作リンク74に扇形ギヤ77を一体回転自在に備えさせ、扇形ギヤ77に出力ギヤ78aが噛み合っている電動モータで成る昇降モータ78をステー75に支持している。昇降モータ78は、出力ギヤ78aによって扇形ギヤ77を連動軸76の軸心周りに上昇側及び下降側に回転操作して、操作リンク74を上昇側及び下降側に揺動操作する。
【0061】
連動軸76は、支持手段70の操作リンク74を一体回転自在に連結して、左側の整地ロータ50を支持する一対の支持手段70と右側の整地ロータ50を支持する一対の支持手段70とを、上昇側及び下降側に連動して作動するように連動させ、一つの支持手段70に作用する昇降モータ78による左側の整地ロータ50と右側の整地ロータ50の下降及び上昇操作を可能にしている。
【0062】
図8及び図9に示すように、昇降モータ78及び連動軸76の一端側に連動させたロータ位置検出器80を制御装置43に連係させてある。制御装置43に、整地深さ設定器81及び設定植付け深さ検出センサ45が連係されている。制御装置43は、自動高さ調節手段82を備えている。ロータ位置検出器80は、連動軸76に連係させた回転ポテンショメータによって構成してあり、連動軸76の回転位置を基に整地ロータ50のフレーム14に対する車体上下方向での位置を検出し、この検出結果を制御装置43に出力する。設定植付け深さ検出センサ45は、フロート支軸36に連係させた回転ポテンショメータによって構成してあり、フロート支軸36の操作位置を基に、植付け深さ調節レバー40によって設定される設定植付け深さを検出し、検出結果を制御装置43に出力する。
【0063】
整地深さ設定器81は、左側及び右側の整地ロータ50の下端50aを接地センサフロート12の接地底面12cよりも低い配置高さに位置させる間隔を設定整地深さD(図2及び図9参照)として設定し、設定整地深さDを制御手段43に出力する。整地深さ設定器81は、回転操作自在なダイヤル形の操作具を備え、操作具が回転操作されることにより、設定整地深さDを浅側及び深側に変更する。
【0064】
自動高さ調節手段82は、設定植付け深さ検出センサ45及びロータ位置検出器80による検出結果、整地深さ設定器81による設定整地深さDを基に昇降モータ78を操作して、整地ロータ50が接地センサフロート12のフレーム14に対する高さの変更にかかわらず設定整地深さDを維持するように整地ロータ50を昇降調節する。
【0065】
したがって、植付け深さ調節レバー40を操作して接地センサフロート12のフレーム14に対する高さ(苗の植付け深さ)を変更しても、この変更に連係して自動高さ調節手段82によって整地ロータ50の昇降調節が行なわれ、左側及び右側の整地ロータ50は整地深さ設定器81によって設定された設定整地深さDを維持する。
【0066】
図2及び図8に示すように、左側及び右側の整地ロータ50の後方にロータカバー85を設けてある。ロータカバー85は、整地ロータ50の外周部に沿うように成形された湾曲形の板材によって構成してある。ロータカバー85は、整地ロータ50によって跳ね上げられた泥土を接地フロート11などに掛からないように受け止めて田面Tに落とす。ロータカバー85の上端側にロータカバー85の車体横方向の全長に亘って設けた管形の取付けバー85aを備えている。取付けバー85aは、伝動ケース61に設けた支持板61a(図2参照)と支持手段70の軸支リンク71とに亘って連結されており、ロータカバー85は支持手段70及び伝動ケース61に支持されて整地ロータ50と共に昇降操作される。
【0067】
図3及び図4に示すように、整地ローラ90は、整地ローラ90の車体横方向での中間部に設けた排水溝90aを備えており、整地ローラ90の前側に位置する水を整地ローラ90の前側に溜まり難いように排水溝90aによって後方に排出しながら整地を行う。整地ローラ90の排水溝90aは、苗植付け装置10が上昇非作業位置に上昇された際に回転軸32を入り込ませて、整地ローラ90と回転軸32の当接を回避する。図2及び図3に示すように、支持アーム92に作用する高さ調節手段97は、支持フレーム93に支持部材98を固設して設けた雌ネジ部に螺着されたネジ軸によって構成してある。ネジ軸は回転操作自在な操作ノブ97aを備えている。
【0068】
植付け深さ調節レバー40による接地センサフロート12のフレーム14に対する高さ(苗の植付け深さ)を変更した場合、自動高さ調節手段82による整地ロータ50の高さ調節が行なわた場合、支持アーム92に作用する高さ調節手段97を操作ノブ97aの回転操作によって操作することにより、高さ調節手段97の支持アーム92に対するストッパ位置が変化して、整地ローラ90を整地に適切な高さに調節することができる。
【0069】
苗の植付け深さが中間位置から最浅位置の範囲では、整地ローラ90を最下限位置に設定してあっても、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも上側に位置している。
苗の植付け深さが中間位置から最深位置の範囲では、整地ローラ90を最下限位置に設定してあると、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも下側に位置する。したがって、高さ調節手段97を操作することにより、整地ローラ90の下端90bが接地センサフロート12の接地底面12cよりも設定高さD1(図2参照)を隔てた高い配置高さで、整地ロータ50の下端50aよりも高い配置高さに位置するように整地ローラ90の高さを調節することができる。
【0070】
図10に示すように、整地ロータ50は回転支軸51を備え、回転支軸51に複数個の第1の整地ロータ構成体100と、1個の第2の整地ロータ構成体110を組み付けて構成してある。回転支軸51は、回転支軸51の一端部と中間部とに位置する中実軸部52を備え、一対の中実軸部52の四角形の連結部52aに一体回転自在に連結した四角形で短尺の筒軸部53を備え、回転支軸51の中間部に位置する中実軸部52の四角形の連結部52aに一端側を一体回転自在に連結した四角形で長尺の筒軸部54を備えて構成してある。
【0071】
回転支軸51は、中実軸部52が支持手段70における軸支リンク71の軸支部71aに相対回転自在に支持されることにより、支持手段70に回転自在に支持されて、整地ロータ50を支持手段70に回転自在に支持させる。回転支軸51は、筒軸部54の中実軸部52に連結する側とは反対側の端部が、伝動ケース61の出力軸64の四角形の端部64aに一体回転自在に連結されることにより、伝動ケース61の出力軸64に一体回転自在に連結されている。
【0072】
図10,11,12に示すように、整地ロータ構成体100はボス部101とボス部101に形成されたリム部102とを備えており、リム部102の一方の面102aにリム部102の周方向に所定間隔を隔てて並べて設けた10個の整地作用部103と、リム部102の他方の面102bにリム部102の周方向に所定間隔を隔てて並べて設けた10個の支持部104とを備えて構成してある。ボス部101、リム部102、整地作用部103及び支持部104は合成樹脂で一体成形してあり、ボス部101に四角形の取付け孔105を備えている。
【0073】
整地作用部103は、一端部をリム部102に連結した状態で且つ整地作用部103のリム部102からの延出方向が同一になる状態で、等しい間隔でリム部102から取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に延出しており、整地作用部103の延出端部103bが開口された筒形に構成してある。図12に示すように、整地作用部103の断面形状は、リム部102の外周側端での整地ロータ50の回転方向Fの幅W1が、リム部102の内周側端での整地ロータ50の回転方向Fの幅W2よりも大であり、リム部102の半径方向での幅Lが幅W1よりも大である形状に設定されている。
【0074】
整地作用部103と支持部104とは、整地作用部103のリム部102の周方向での位相と支持部104のリム部102の周方向での位相とが異なる状態で配置されている。整地作用部103と支持部104とは、整地作用部103の配列ピッチと支持部104の配列ピッチとが同一である状態で、取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向視において、隣接する整地作用部103の間に一つの支持部104が位置している。
【0075】
支持部104は嵌合凹入部106を備えており、嵌合凹入部106は取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に向かって開口している。支持部104の外周形状及び嵌合凹入部106の形状は、整地作用部103の断面形状に相似した形状に設定されている。
【0076】
図10及び図11に示すように、整地ロータ構成体110は、ボス部111が中心部に設けられた蓋板部112を備え、蓋板部112の一方の側面部に蓋板部112の周方向に所定間隔を隔てて並べて設けた10個の第2の支持部113を備えている。蓋板部112は合成樹脂によって構成してあり、支持部113は蓋板部112に一体成形してある。蓋板部112は、ボス部111に蓋板部112の回転軸心を軸心として設けた四角形の取付け孔114を備えている。
【0077】
支持部113は、整地ロータ構成体100の整地作用部103の配列ピッチと同じ配列ピッチで並んでおり、支持部113も嵌合凹入部115を備えている。嵌合凹入部115は取付け孔114の軸心の方向に向かって開口しており、支持部113の外周形状及び嵌合凹入部115の形状は、整地ロータ構成体100の整地作用部103の断面形状に相似した形状に設定されている。
【0078】
図4及び図10に示すように、整地ロータ構成体100の6個を、回転支軸51の軸心Xの方向に並べて取付け孔105に回転支軸51の筒軸部54を組み付け(挿入し)、整地ロータ構成体110の1個を、最も端に位置する整地ロータ構成体100と隣り合わせにして、取付け孔114に回転支軸51の筒軸部54を組み付ける(挿入する)。
【0079】
隣接する整地ロータ構成体100の間において、一方の整地ロータ構成体100の支持部104が位置するリム部102の面102bと、他方の整地ロータ構成体100の整地作用部103が位置するリム部102の面102aとが対向し、一方の整地ロータ構成体100の支持部104の取付け孔105周りでの位相と、他方の整地ロータ構成体100の整地作用部103の取付け個0卯105周りでの位相とを一致させる。
【0080】
整地ロータ構成体100,110の間において、整地ロータ構成体100の整地作用部103が位置するリム部102の面102aと、整地ロータ構成体110の支持部113が位置する蓋板部112の面とが対向し、整地ロータ構成体100の整地作用部103の取付け孔105周りでの位相と、整地ロータ構成体110の支持部113の取付け孔114周りでの位相とを一致させる。これにより、左側及び右側の整地ロータ50のうちの長尺側の整地ロータ50が構成される。
【0081】
図4及び図10に示すように、整地ロータ構成体100の4個を、回転支軸51の軸心方向に並べて取付け孔105に回転支軸51の筒軸部53を組み付け(挿入し)、整地ロータ構成体110の1個を、最も端に位置する整地ロータ構成体100と隣り合わせにして取付け孔114に回転支軸51の筒軸部53を組み付ける(挿入する)。隣接する整地ロータ構成体100の向き及び位相、整地ロータ構成体100,110の向き及び位相は、長尺側の整地ロータ50が構成される場合と同様にすることにより、左側及び右側の整地ロータ50のうちの短尺側の整地ロータ50が構成される。
【0082】
長尺側の整地ロータ50が構成される場合においても、短尺側の整地ロータ50が構成される場合においても、整地ロータ構成体100を取付け孔105の四角形によって筒軸部54,53に嵌合させることにより回転支軸51に一体回転自在に連結して、回転支軸51による整地ロータ50の回転駆動を可能にする。整地ロータ構成体110を取付け孔114の四角形によって筒軸部54,53に嵌合させることにより回転支軸51に一体回転自在に連結して、回転支軸51による整地ロータ50の回転駆動を可能にする。
【0083】
隣接する整地ロータ構成体100の間において、一方の整地ロータ構成体100の整地作用部103の延出端部103bが、他方の整地ロータ構成体100の嵌合凹入部106に入り込んで支持されて、整地作用部103の延出端部103bが露出しないように嵌合凹入部106に収容される。整地ロータ構成体100,110の間において、整地ロータ構成体100の整地作用部103の延出端部103bが、整地ロータ構成体110の嵌合凹入部115に入り込んで支持されて、整地作用部103の延出端部103bが露出しないように嵌合凹入部115に収容される。
【0084】
整地ロータ50の前側に位置する部位において、隣接する整地ロータ構成体100のリム部102の間、整地ロータ構成体100,110のリム部102と蓋板部112との間に、整地ロータ構成体100の隣接する整地作用部103によって流入口120(図8参照)が形成される。整地ロータ50の後側に位置する部位において、隣接する整地ロータ構成体100のリム部102の間、整地ロータ構成体100,110のリム部102と蓋板部112との間に、整地ロータ構成体100の隣接する整地作用部103によって流出口121(図8参照)が形成される。
【0085】
これにより、整地ロータ50の前側に位置する泥水を、流入口120から整地ロータ50の内部に流入させて流出口121から整地ロータ50の後側に流出させるように、流入口120と流出口121を連通させる流水路が隣接する整地ロータ構成体100のリム部102の間、整地ロータ構成体100,110のリム部102と蓋板部112との間に形成される。
【0086】
図10に示すように、整地ロータ構成体100において、ボス部101の取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向での長さを、整地作用部103の取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向での長さよりも小に設定してある。これにより隣接する整地ロータ構成体100のボス部101の間に位置する回転支51の部位が、ボス部101によって覆われないで露出した部分となり、整地ロータ50の内部の流水路を泥水流動が容易となるように極力広くしている。
【0087】
整地ロータ構成体100の支持部104と整地作用部103とが整地ロータ構成体100の周方向に位置ずれしていることにより、取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に並ぶ複数の流入口120において、隣接する流入口120が整地ロータ50の周方向に互いに位置ずれした千鳥状に配置される。
【0088】
図12に示すように、整地作用部103の作用面103aは、ボス部101に近づくほど回転方向Fの下手側に位置するように、リム部102の半径方向に対して傾斜した状態に構成してある。これにより、図8に示すように、整地ロータ50の回転に伴って整地作用部103が田面Tの上方近くに位置した際、整地作用部103の作用面103aが水平面またはそれに近い状態となる対地姿勢となり、整地作用部103が泥水によって受ける進行抵抗を小に抑制しながら整地ロータ50による整地を行うことができる。
【0089】
図10及び図11に示すように、整地ロータ構成体100はリム部102に環状防塵部107を備えて、整地ロータ構成体110は蓋板部112に環状防塵部116を備えている。環状防塵部107,116は軸支リンク71に軸支部71aや伝動ケース61の端部61bを覆っており、軸支部71aと回転支軸51との間に対する異物侵入や伝動ケース61の端部61bと出力軸64との間に対する異物侵入を防止する。
【0090】
この実施の形態は整地ロータ構成体100において、四角形の取付け孔105を形成したリム部102に対して、10個の整地作用部103と10個の支持部104を備えているが、これは次の関係に基づくものである。
(1)リム部102の取付け孔105は、断面が偶数多角形に形成された回転支軸51に嵌合する偶数多角形であること。
(2)リム部102から取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向に延出する整地作用部103を、リム部102の一方の面102aに周方向等間隔に並べて設け、リム部102の他方の面102bに、隣接する整地ロータ構成体100の整地作用部103の延出端部103bを各別に嵌合させて支持する支持部104を設けていること。
(3)支持部104を取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向視で整地作用部103と同一円周上で、且つ、整地作用部103の間の位置に形成してあること。
(4)回転支軸51及び取付け孔105の断面をN角形とし、整地作用部103及び支持部104のそれぞれの個数をHとしたとき、
H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)
となるように構成してあること。
【0091】
この実施の形態においては、取付け孔105が正四角形(N=4)で、n=2が場合である。図14にNが4〜10、nが1〜4の場合の10通りのパターンを示している。N=4、n=2のときは、2n+1=5で整地作用部103の個数H及び支持部104の個数Hは10個となる。整地作用部103と支持部104は合わせて20個で、10個の整地作用部103と10個の支持部104とが、リム部102の一方の面102aと他方の面102bに配置されて、取付け孔105の軸心(回転支軸51の軸心X)の方向視で、整地作用部103と支持部104とが円周方向に交互に一方の面102aと他方の面102bに等間隔で配置される。
【0092】
整地ロータ構成体100,110を回転支軸51に組み付けるに当たっては、図10及び図11に示すように、最初に整地ロータ構成体110を回転支軸51に組み付け(取付け孔105に回転支軸51を挿入し)、次に整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相を整地ロータ構成体110の支持部113に一致させた状態で、整地ロータ構成体100を回転支軸51に組み付ける(取付け孔105に回転支軸51を挿入する)。
【0093】
次の整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相を、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相と異なるようにしながら(90°ずらしながら)、整地作用部103の延出端部103bを、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の支持部104に嵌合されるように組み付ける(取付け孔105に回転支軸51を挿入する)。
【0094】
これを4個又は6個と繰り返して、回転支軸51に整地ロータ構成体100を組み付けることで、整地ロータ50を組み立てる。単体の整地ロータ構成体100では整地作用部103がリム部102に対して片持ち状に支持されているだけであるが、これらを組み付けることによって整地作用部103は、隣接する整地ロータ構成体100の支持部104、又は整地ロータ構成体110の支持部113に支持されることによって両持ち状に支持されることになるので、整地作用部103の強度が向上し、整地作用部103の材料を削減することができる。
【0095】
回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の幅は、リム部102の幅(厚み)と、整地作用部103の幅とによって定まるので、ボス部101を整地ロータ構成体100の幅に相当する長さまで長くする必要がなく、ボス部101としては整地ロータ構成体100を保持するためだけの短く小さなものとすることができて、この点からも材料の削減を図ることができる。
【0096】
整地ロータ構成体100を組み付けるに当たって、隣接する整地ロータ構成体100の整地作用部103の位相が異なるので、整地ロータ50の全体としての負荷が平均化され易く振動の少ない駆動が可能になるとともに、整地も均一化され易く良好な整地を行うことができる。
【0097】
整地ロータ構成体100を回転支軸51に組み付けるに当たって、整地ロータ構成体100の整地作用部103を、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100の支持部104と位相が一致するように組み付けるだけでよいので、組み付ける整地ロータ構成体100の位相の位置決めが容易に行え、組み付けを楽に行うことができる。具体的には、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100と同一位相の状態から、N角形の取付け孔105(回転支軸51)の頂点を一つずらせて組み付ければよい。取付け孔105(回転支軸51)が前述のように四角形の場合は、90(360/N)°ずらせばよい。これにより、整地ロータ構成体100を構成するための材料を軽減でき、整地ロータ構成体100を軽量で丈夫なものとすることができて、整地ロータ構成体100の組み付けが容易に行える。
【0098】
整地作用部103と支持部104とが、リム部102の一方の面102aと他方の面102bとに対して、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を中心とする同一半径の円周上における(360/2H)°の位相差で交互に配置されて、H個の整地作用部103及び支持部104のうちN/2個の整地作用部103とN/2個の支持部104とが、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上に位置するように構成している。これにより、図12に示すように、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上に整地作用部103又は支持部104が存在するので、取付け孔105のある一つの頂点とその延長線上に位置する整地作用部103又は支持部104が存在することを容易に認識し易い。
【0099】
取付け孔105がN角形の場合、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線のなす角度は(360/N)度である。取付け孔105(N角形)に対する整地作用部103の個数Hは、
H=N(2n+1)/2(但し、n=1,2,3・・・とする)・・・・(1)
であるから、隣接する整地作用部103のなす角度は(360/H)となる。したがって、前述の角度(360/N)の中に存在する整地作用部103の個数Hは、(360/N)/(360/H)=H/Nである。上記式(1)より、H/N=(2n+1)/2となる。
【0100】
つまり、取付け孔105(N角形)の隣接する頂点の間に(n+1/2)個の整地作用部103を備えている。例えば四角形、六角形、八角形においてn=1のときは、整地作用部103の個数Hは6個、9個、12個となり、取付け孔105(N角形)の隣接する頂点の間には(n+1/2)=1.5個の整地作用部103が存在する。端数(0.5)個は、隣接する整地作用部103の間の中間位置(リム部102の他方の面102bの支持部104が存在する位置で(360/2H)°の位相差の位置)に相当し、この位置には支持部104が存在する。これにより、取付け孔105(N角形)の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上には、交互に整地作用部103と支持部104とが存在する。
【0101】
したがって、N角形の回転支軸51に整地ロータ構成体100を組み付ける場合、一つ前に回転支軸51に組み付けられた整地ロータ構成体100に対して、整地ロータ構成体100を同一位相の状態からN角形の取付け孔105(回転支軸51)の頂点を一つずらせて組み付ければ、整地作用部103の延出端部103bを、一つ前に組み付けられた整地ロータ回転体100の支持部104に嵌合させることができる。このように整地ロータ構成体100を組み付けるに当たって、整地ロータ構成体100を一つ前に組み付けられた整地ロータ構成体100と同位相の状態から取付け孔105(回転支軸51)の隣の頂点まで位相をずらすことにより簡単に組み付けることができる。
【0102】
取付け孔105(回転支軸51)を四角形又は六角形又は八角形とすることで、6〜12個の比較的少ない整地作用部103の個数Hで整地ロータ構成体103を構成することができる。一つの整地ロータ構成体103に対して、整地作用部103の個数Hが多すぎると隣接する整地作用部103の間隔が小さくなって整地機能が損なわれるが、取付け孔105(回転支軸51)を四角形又は六角形又は八角形とすることで、隣接する整地作用部103の間隔が適切なものとなって、泥押しを抑えワラ屑等を田面T内へ押し込みながら、泥土を良好に掻き均して整地を行うことができるように、整地ロータ構成体100を構成することができる。
【0103】
〔別の実施の形態〕
(1)主たる実施の形態では、取付け孔105(回転支軸51)が四角形(N=4)で、整地作用部103の個数Hが10個(n=2)とした場合であるが、Nが4〜10の偶数多角形で、nが1〜4のうち、図14に示す10通りのパターンのものが整地ロータ50を構成するのに機能的に良好に作用するものとして都合がよい。
【0104】
(2)図13には整地ロータ構成体100の別の実施の形態を示しており、整地ロータ構成体100は取付け孔105(回転支軸51)が四角形で、n=1の場合であり、リム部102の一方の面102aに形成した整地作用部103と、リム部102の他方の面102bに形成した支持部104とをそれぞれ6個ずつ形成してある。取付け孔105の中心を通る取付け孔105の対角線の延長線上には整地作用部103と支持部104とが交互に存在する。主たる実施の形態(図12)の場合も同様に、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上には整地作用部103と支持部104とが交互に存在する。
【0105】
主たる実施の形態の場合はn=2で、隣接する対角線の前述の延長線の間には、延長線上のものを除いて整地作用部103と支持部104とがそれぞれ2個存在するのに対し、図13に示す整地ロータ構成体100の場合はn=1で、隣接する前述の対角線の延長線の間には、延長線上のものを除いて整地作用部103と支持部104とがそれぞれ1個存在する。この関係はnが2を超える場合や他の多角形の場合も当てはまる。図15(a)(b)は、これを模式化したものである。
【0106】
(3)図16(a)は、取付け孔105(回転支軸51)が六角形(N=6)で、n=1の場合である。図16(b)は、取付け孔105(回転支軸51)が八角形(N=8)で、n=1の場合である。図16(a)(b)において、取付け孔105の中心(回転支軸51の軸心X)を通る取付け孔105の対角線の延長線上には、整地作用部103と支持部104とが交互に配置されており、隣接する前述の対角線の延長線の間にそれぞれ1個の整地作用部103と支持部104とが存在する。
【0107】
(4)本発明において、取付け孔105(回転支軸51)の形状である多角形(N角形)は正多角形を言うが、例えば正四角形、正六角形、正八角形は幾何学上の厳密且つ正確な正四角形、正六角形、正八角形を言うのではなく、(360/N)°の位相差のどの位相差のときでもリム部102を回転支軸51に組み付けることのできる形状を言い、取付け孔105(回転支軸51)の頂点付近の形状として丸みがあったり、割れ止め用のピンホールが形成されていてもよいものである。N角形の各辺が同一形状であれば、直線でなくても多少内側(凹状)又は外側(凸状)に湾曲していてもよい。
【0108】
(5)整地作用部103を、中空構造の他、中実構造に構成して実施してもよい。
【0109】
(6)整地作用部103及び支持部104の断面形状を上記した形状の他、矩形、円形、楕円形など各種の形状に設定して実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、苗の植付け作業に代えて、田面に種子を供給する播種作業を行なう構成を採用した水田作業装置を備えたものにも利用できる。
【符号の説明】
【0111】
50 整地ロータ
51 回転支軸
100 整地ロータ構成体
102 リム部
102a リム部の一方の面
102b リム部の他方の面
103 整地作用部
103b 延出端部
104 支持部
105 取付け孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転支軸の軸心方向に並べて前記回転支軸に一体回転自在に組み付けられて、水田作業機用の整地ロータを構成する整地ロータ構成体であって、
断面が偶数多角形に形成された前記回転支軸に嵌合する偶数多角形の取付け孔を形成したボス部と、前記ボス部に形成したリム部とを備え、
前記リム部から前記取付け孔の軸心方向に延出する整地作用部を、前記リム部の一方の面に周方向等間隔に並べて設け、
前記リム部の他方の面に、隣接する整地ロータ構成体の前記整地作用部の延出端部を各別に嵌合させて支持する支持部を設けるとともに、前記支持部を前記取付け孔の軸心の方向視で前記整地作用部と同一円周上で且つ前記整地作用部の間の位置に形成し、
前記取付け孔の断面をN角形とし、前記整地作用部及び前記支持部のそれぞれの個数をHとしたとき、
H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)
となるように構成してある整地ロータ構成体。
【請求項2】
前記整地作用部と前記支持部とが、前記リム部の一方の面と他方の面とに対して、前記取付け孔を中心とする同一半径の円周上における(360/2H)°の位相差で交互に配置され、且つそれぞれH個の前記整地作用部及び前記支持部のうちN/2個の前記整地作用部とN/2個の前記支持部とが、前記取付け孔の中心を通る前記取付け孔の対角線の延長線上に位置するように配設してある請求項1に記載の整地ロータ構成体。
【請求項3】
前記偶数多角形を四角形又は六角形又は八角形としてある請求項1又は2に記載の整地ロータ構成体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の複数の整地ロータ構成体を、隣接する前記整地ロータ構成体に対して位相を(360/N)°だけずらして前記回転支軸に組み付けられている整地ロータ。
【請求項1】
回転支軸の軸心方向に並べて前記回転支軸に一体回転自在に組み付けられて、水田作業機用の整地ロータを構成する整地ロータ構成体であって、
断面が偶数多角形に形成された前記回転支軸に嵌合する偶数多角形の取付け孔を形成したボス部と、前記ボス部に形成したリム部とを備え、
前記リム部から前記取付け孔の軸心方向に延出する整地作用部を、前記リム部の一方の面に周方向等間隔に並べて設け、
前記リム部の他方の面に、隣接する整地ロータ構成体の前記整地作用部の延出端部を各別に嵌合させて支持する支持部を設けるとともに、前記支持部を前記取付け孔の軸心の方向視で前記整地作用部と同一円周上で且つ前記整地作用部の間の位置に形成し、
前記取付け孔の断面をN角形とし、前記整地作用部及び前記支持部のそれぞれの個数をHとしたとき、
H=N(2n+1)/2(但し、Nは偶数で、n=1,2,3・・・とする)
となるように構成してある整地ロータ構成体。
【請求項2】
前記整地作用部と前記支持部とが、前記リム部の一方の面と他方の面とに対して、前記取付け孔を中心とする同一半径の円周上における(360/2H)°の位相差で交互に配置され、且つそれぞれH個の前記整地作用部及び前記支持部のうちN/2個の前記整地作用部とN/2個の前記支持部とが、前記取付け孔の中心を通る前記取付け孔の対角線の延長線上に位置するように配設してある請求項1に記載の整地ロータ構成体。
【請求項3】
前記偶数多角形を四角形又は六角形又は八角形としてある請求項1又は2に記載の整地ロータ構成体。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の複数の整地ロータ構成体を、隣接する前記整地ロータ構成体に対して位相を(360/N)°だけずらして前記回転支軸に組み付けられている整地ロータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−188770(P2011−188770A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56341(P2010−56341)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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