説明

有機光電変換素子、それを用いた太陽電池、及び光センサアレイ

【課題】高い曲線因子、開放電圧、および光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機薄膜太陽電池、およびそれを構成する有機半導体材料を提供する。
【解決手段】陰極、陽極、およびp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記バルクヘテロジャンクション層と前記陰極の間に、少なくとも下記一般式(1)で表される化合物層を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機光電変換素子、太陽電池及び光センサアレイに関し、さらに詳しくは、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子、この有機光電変換素子を用いた太陽電池、および光アレイセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の化石エネルギーの高騰によって、自然エネルギーから直接電力を発電できるシステムが求められており、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いた太陽電池、GaAsやCIGSなどの化合物系の太陽電池、あるいは色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案・実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの太陽電池で発電するコストは未だ化石燃料を用いて発電・送電される電気の価格よりも高いものとなっており、普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、設置時に補強工事が必要であり、これらも発電コストが高くなる一因であった。
【0004】
このような状況に対し、化石燃料による発電コストよりも低コストな発電コストを達成しうる太陽電池として、陽極と陰極との間に電子供与体層(p型半導体層)と電子受容体層(n型半導体層)とが混合されたバルクヘテロジャンクション層を挟んだバルクヘテロジャンクション型光電変換素子が提案されて(例えば、非特許文献1参照)いる。
【0005】
これらのバルクヘテロジャンクション型太陽電池においては、陽極・陰極以外は塗布プロセスで形成されているため、高速かつ安価な製造が可能であると期待され、前述の発電コストの課題を解決できる可能性がある。さらに、上記のSi系太陽電池・化合物半導体系太陽電池・色素増感太陽電池などと異なり、160℃より高温のプロセスがないため、安価かつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
【0006】
なお発電コストには、初期の製造コスト以外にも発電効率及び素子の耐久性も含めて算出されなければならないが、前記非特許文献1では、太陽光スペクトルを効率よく吸収するために、長波長まで吸収可能な有機高分子を用いることによって、5%を超える変換効率を達成するにいたっている。
【0007】
なお光電変換効率は、短絡電流(Jsc)×開放電圧(Voc)×曲線因子(FF)の積で算出されるが、上記のような高効率の有機薄膜太陽電池を含めて一般に有機光電変換素子は曲線因子が0.55程度と低いものに留まっており、これらをシリコン系太陽電池並みの値(0.65〜0.75)に向上できれば一層の光電変換効率を得られるものと期待される。
【0008】
曲線因子は光電変換素子の内部抵抗と密接に関わっており、曲線因子向上のためには有機薄膜の低抵抗化、電荷分離効率の向上(整流性の向上)が有効であることが知られている。
【0009】
有機EL素子と同様にバソキュプロイン(BCP)からなる正孔ブロック層を挿入することで電荷の分離効率が向上し、光電変換効率を向上できるとの開示があるが(例えば、特許文献1参照)、これらの材料は結晶性が高く溶解性が低いため、生産性の高い塗布方式に適用することは困難であるといった課題を有していた。
【0010】
また、塗布プロセスで作製できる正孔ブロック層としてTiOx層が開示されているが(例えば、非特許文献2参照)、TiOx層を形成するためには水分とチタニウムアルコキシド類を反応させる必要があり、水分によって劣化が起きる有機光電変換素子においては好ましい作製法であるとは言えず、耐久性において課題を有している。
【0011】
また、類似の構成を有しながら、逆の機能を有する有機エレクトロルミネッセンス素子(OLED)においては、同様に発光効率向上のために、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体を正孔ブロック層に用いるとの開示があるが(例えば、特許文献2、3参照)、一般に正孔ブロック層が正孔ブロック層として機能するかどうかは隣接する層のHOMOレベルとの関係で決まるため、OLEDにおいて用いられる正孔ブロック層がどのようなものでも有機光電変換素子に適用できるとは限らず、特にバルクヘテロジャンクション層に含まれるn型半導体であるフラーレン誘導体のHOMOおよびLUMOが比較的深いため、有機光電変換素子にも効果的に非水系の塗布法で形成することのできる正孔ブロック層の開発が待ち望まれていた。
【0012】
他方で、n型半導体材料として一般的に用いられるフラーレン化合物やペンタセン化合物にシリルエチニル基を導入して溶解性を向上する技術が開示されている(例えば、特許文献4、非特許文献3参照)。しかし、シリルエチニル基を正孔ブロック層用材料に適用した例はこれまでに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第65800027B2号明細書
【特許文献2】WO2004/053019号
【特許文献3】WO2004/095889号
【特許文献4】WO2010/067792号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】A.Heeger:Nature Mat.;vol.6(2007),p497
【非特許文献2】A.Heeger:Science;vol.317(2007),p222
【非特許文献3】J.Mater.Chem.,vol.19(2009),p3049
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い曲線因子、開放電圧、および光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機薄膜太陽電池、およびそれを構成する有機半導体材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0017】
1.陰極、陽極、およびp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記バルクヘテロジャンクション層と前記陰極の間に、少なくとも下記一般式(1)で表される化合物を含有する層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【0018】
【化1】

【0019】
〔式中、R、R、Rは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基から選ばれる置換基を表し、Qは4価のケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、から選ばれるいずれかの原子を表し、Lは二価の連結基または単なる結合手を表し、Lは二価または三価の連結基、または単なる結合手を表し、Aは縮合環を有していても良い5員または6員の炭素環または複素環を表し、nは1または2を表す。〕
2.前記一般式(1)のQで表される原子が4価のケイ素原子であることを特徴とする前記1に記載の有機光電変換素子。
【0020】
3.前記一般式(1)のAが、下記一般式(A1)〜一般式(A7)から選ばれる何れかであることを特徴とする前記1又は2に記載の有機光電変換素子。
【0021】
【化2】

【0022】
〔式中、X〜Xは各々独立に炭素原子または窒素原子を表し、Xは炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子、スズ原子を表し、R〜Rは各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基から選ばれる少なくとも1種の基、または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、n1、n2は各々独立して0から4の整数を表し、一般式(A1)におけるR、R、Rの少なくとも1個はLとの結合手であり、一般式(A2)におけるR〜Rの少なくとも1個はLとの結合手であり、一般式(A3)におけるR又はRはLとの結合手である。〕
【0023】
【化3】

【0024】
〔式中、R又はR10は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R又はR10はLとの結合手を表し、X10は酸素原子、硫黄原子、−NR′−を表し、R′は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基を表す。〕
【0025】
【化4】

【0026】
〔式中、R11、R16、R17は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、x、y、zは各々独立に0または1であり、R12〜R15、R18、R19は各々独立に水素原子または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、隣接するR12とR13、R14とR15、R18とR19が互いに結合して縮合環を形成しても良く、これら縮合環は置換基を有しても良く、一般式(A5)におけるR11〜R15、あるいは縮合環上の置換基のうち少なくとも1つがLとの結合手であり、一般式(A6)におけるR12、R13、R16〜R19、あるいは縮合環上の置換基のうち少なくとも1つがLとの結合手である。〕
【0027】
【化5】

【0028】
〔式中、R21、R22は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R23〜R26は、水素原子、上記R〜Rと同義の置換基、または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R21〜R26のいずれか1個がLとの結合手である。〕
4.前記一般式(1)のAが前記一般式(A1)〜一般式(A4)から選ばれる何れかであることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0029】
5.前記一般式(1)のAが前記一般式(A1)又は一般式(A4)であることを特徴とする前記1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0030】
6.前記一般式(1)で表される化合物を含有する層が、溶液塗布法によって作製されたことを特徴とする前記1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【0031】
7.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
【0032】
8.前記1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されていることを特徴とする光センサアレイ。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、高い曲線因子、開放電圧、および光電変換効率を有し、かつ耐久性を有する有機薄膜太陽電池、およびそれを構成する有機半導体材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図2】p−i−nの三層構成の光電変換層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図3】タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。
【図4】光センサアレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討したところ、前記一般式(1)で表される部分構造を有する化合物を含有する層が、バルクヘテロジャンクション層と陰極の間に存在していることで、上記課題を達成できることを見出した。
【0037】
以下、本発明を更に詳しく説明する。
【0038】
(有機光電変換素子および太陽電池の構成)
図1は、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子からなる太陽電池の一例を示す断面図である。図1において、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10は、基板11の一方面上に、透明電極(一般に陽極)12、正孔輸送層17、バルクヘテロジャンクション層の光電変換部14、電子輸送層18及び対極(一般に陰極)13が順次積層されている。
【0039】
基板11は、順次積層された透明電極12、光電変換部14及び対極13を保持する部材である。本実施形態では、基板11側から光電変換される光が入射するので、基板11は、この光電変換される光を透過させることが可能な、すなわち、この光電変換すべき光の波長に対して透明な部材である。基板11は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が用いられる。この基板11は、必須ではなく、例えば、光電変換部14の両面に透明電極12及び対極13を形成することでバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10が構成されてもよい。
【0040】
光電変換部14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有して構成される。p型半導体材料は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型半導体材料は、相対的に電子受容体(アクセプタ)として機能する。ここで、電子供与体及び電子受容体は、“光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する電子供与体及び電子受容体”であり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
【0041】
図1において、基板11を介して透明電極12から入射された光は、光電変換部14のバルクヘテロジャンクション層における電子受容体あるいは電子供与体で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。発生した電荷は、内部電界、例えば、透明電極12と対極13の仕事関数が異なる場合では透明電極12と対極13との電位差によって、電子は、電子受容体間を通り、また正孔は、電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。例えば、透明電極12の仕事関数が対極13の仕事関数よりも大きい場合では、電子は、透明電極12へ、正孔は、対極13へ輸送される。なお、仕事関数の大小が逆転すれば電子と正孔は、これとは逆方向に輸送される。また、透明電極12と対極13との間に電位をかけることにより、電子と正孔の輸送方向を制御することもできる。
【0042】
なお図1には記載していないが、正孔ブロック層、電子ブロック層、電子注入層、正孔注入層、あるいは平滑化層等の他の層を有していてもよい。
【0043】
さらに好ましい構成としては、前記光電変換部14が、いわゆるp−i−nの三層構成となっている構成(図2)である。通常のバルクヘテロジャンクション層は、p型半導体材料とn型半導体層が混合した、14i層単体であるが、p型半導体材料単体からなる14p層、およびn型半導体材料単体からなる14n層で挟むことにより、正孔及び電子の整流性がより高くなり、電荷分離した正孔・電子の再結合等によるロスが低減され、一層高い光電変換効率を得ることができる。
【0044】
さらに、太陽光利用率(光電変換効率)の向上を目的として、このような光電変換素子を積層した、タンデム型の構成としてもよい。図3は、タンデム型のバルクヘテロジャンクション層を備える有機光電変換素子からなる太陽電池を示す断面図である。タンデム型構成の場合、基板11上に、順次透明電極12、第1の光電変換部14′を積層した後、電荷再結合層15を積層した後、第2の光電変換部16、次いで対電極13を積層することで、タンデム型の構成とすることができる。第2の光電変換部16は、第1の光電変換部14′の吸収スペクトルと同じスペクトルを吸収する層でもよいし、異なるスペクトルを吸収する層でもよいが、好ましくは異なるスペクトルを吸収する層である。また第1の光電変換部14′、第2の光電変換部16がともに前述のp−i−nの三層構成であってもよい。
【0045】
以下に、これらの層を構成する材料について述べる。
【0046】
〔p型半導体材料〕
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられる。
【0047】
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
【0048】
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
【0049】
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、またはTechnical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、WO2008/000664号に記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv Mater,2007p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー、等のポリマー材料が挙げられる。
【0050】
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン、等のオリゴマーが好適に用いることができる。
【0051】
これらの化合物の中でも、溶液プロセスが可能な程度に有機溶剤への溶解性が高く、かつ乾燥後は結晶性薄膜を形成し、高い移動度を達成することが可能な化合物が好ましい。より好ましくは、本発明のn型有機半導体材料であるフラーレン誘導体と適度な相溶性を有するような化合物(適度な相分離構造形成し得る化合物)であることが好ましい。
【0052】
またバルクヘテロジャンクション層上にさらに溶液プロセスで電子輸送層や正孔ブロック層を形成する際には、一度塗布した層の上にさらに塗布することができれば、容易に積層することができるが、通常溶解性の良い材料からなる層の上にさらに層を溶液プロセスによって積層使用とすると、下地の層を溶かしてしまうために積層することができないという課題を有していた。したがって、溶液プロセスで塗布した後に不溶化できるような材料が好ましい。
【0053】
このような材料としては、Technical Digest of the International PVSEC−17, Fukuoka, Japan, 2007, P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェンのような、塗布後に塗布膜を重合架橋して不溶化できる材料、または米国特許出願公開第2003/136964号、および特開2008−16834号等に記載されているような、熱等のエネルギーを加えることによって可溶性置換基が反応して不溶化する(顔料化する)材料などを挙げることができる。
【0054】
[n型半導体材料]
本発明のバルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料としては、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、p型半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
【0055】
しかし、各種のp型半導体材料と高速(〜50fs)かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体が好ましい。フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、およびこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
【0056】
中でも[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7329709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
【0057】
〔バルクヘテロジャンクション層の形成方法〕
電子受容体と電子供与体とが混合されたバルクヘテロジャンクション層の形成方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、前述の正孔と電子が電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法が好ましい。また塗布法は、製造速度にも優れている。
【0058】
塗布後は残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集または結晶化が促進され、バルクヘテロジャンクション層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、バルクヘテロジャンクション層のキャリア移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。
【0059】
光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)14は、電子受容体と電子供与体とが均一に混在された単一層で構成してもよいが、電子受容体と電子供与体との混合比を変えた複数層で構成してもよい。この場合、前述したような塗布後に不溶化できるような材料を用いることで形成することが可能となる。
【0060】
〔電子輸送層・正孔ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陰極との中間に電子輸送層18を形成することで、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0061】
電子輸送層18としては、オクタアザポルフィリン、p型半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができるが、同様に、バルクヘテロジャンクション層に用いられるp型半導体材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。より好ましくは、n型半導体のHOMO準位よりも深い材料を電子輸送層として用いることである。また、電子を輸送する特性から、電子移動度の高い化合物を用いることが好ましい。
【0062】
このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用するほうが好ましい。本発明においては、前記HOMO準位が深く電子移動度の高い本発明の一般式(1)で表される化合物を電子輸送層(兼正孔ブロック層)として用いることで、曲線因子および光電変換効率の向上といった効果を得ることができる。
【0063】
一般式(1)において、R、R、Rは各々独立に、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、tert−ブチル、n−オクチル、n−デシル、n−ヘキサデシル等)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数4〜8であり、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル等)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニル、p−メチルフェニル、ナフチル等)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には、例えば、イミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、ベンズオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル等)、アルキルシリル基(トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等)を表す。
【0064】
さらにこれらの置換基は置換されていてもよく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、さらにアルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えば、プロパルギル、3−ペンテニルなどが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる。)、シクロアルキルオキシ基(好ましくは炭素数4〜8であり、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、アセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えば、フェニルオキシカルボニルなどが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えば、メトキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えば、フェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えば、スルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、カルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メチルチオ、エチルチオなどが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えば、フェニルチオなどが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メシル、トシルなどが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、メタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えば、ジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、などが挙げられる。
【0065】
、R、Rとして好ましくは炭素原子数1〜6のアルキル基、アルキルシリル基である。
【0066】
Qは4価のケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子から選ばれるいずれかの原子を表し、好ましくはケイ素原子である。
【0067】
は二価の連結基または単なる結合手を表す。二価の連結基としては、アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン−1,3−ジイル基、等)、ビニレン基、エチニル基、アリーレン基、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−NR”−(R”は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基、等)、およびこれらの二価の連結基を複数結合して形成した二価の基が挙げられる。Lとして好ましくはアルキレン基、ビニレン基、エチニル基、アリーレン基であり、より好ましくはエチニル基である。
【0068】
は二価または三価の連結基、または単なる結合手を表す。二価の連結基としては、Lで挙げた二価の連結基と同様の基、およびこれら連結基が複数結合して形成した二価の基が挙げられる。三価の連結基としては、炭素原子、窒素原子、リン原子、ホウ素原子、メチン基、ベンゼン環、トリアジン環、あるいはこれら三価の連結基にLで挙げた二価の連結基が結合して形成した三価の基が挙げられる。Lで表される二価の基としては好ましくはアルキレン基、アリーレン基であり、三価の基として好ましくはベンゼン環、トリアジン環である。
【0069】
は縮合環を有していても良い5員または6員の炭素環または複素環を表す。
【0070】
炭素環としては例えばベンゼン、シクロペンタジエン等が挙げられる。
【0071】
複素環としては例えば、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、フラン、チオフェン、ボロール、ホスホール、シロール、ゲルモール、スタノール、およびチタン原子を含有する複素環が挙げられる。これらに縮合可能な環としては、Aとして挙げた芳香族環あるいは芳香族複素環が挙げられる。
【0072】
として好ましくは上記一般式(A1)〜(A7)である。
【0073】
一般式(A1)において、X〜Xは各々独立に炭素原子または窒素原子を表す。X〜Xが炭素原子の場合、少なくとも1つは置換基を有していることが好ましく、置換基としては、特に限定されないが、好ましくは、CからC20までのアルキル基、CからC20までのアルコキシル基、アリール基、芳香族複素環基、CからC20までのシクロアルキル基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、又は、CからC20までのアルキル基、CからC20までのアルコキシル基、アリール基、芳香族複素環基、またはCからC20までのシクロアルキル基の置換したスルフィニル基を表す。また、X〜Xで表される炭素原子のうち少なくとも1つが一般式(1)におけるLとの結合手と結合しても良い。
【0074】
好ましくは、X〜Xのうち少なくとも1つが窒素原子である。
【0075】
〜Rは置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、該置換基としては水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基から選ばれる少なくとも1種の基が挙げられる。n1、n2は各々独立して0から4の整数を表し、好ましくは0から2の整数である。R、R、Rの少なくとも1個がLとの結合手である。
【0076】
一般式(A2)において、X〜X、R、R、n1、n2は一般式(A1)におけるX〜X、R、R、n1、n2と同義である。R、Rは一般式(A1)におけるRと同義であり、R〜Rの少なくとも1個がLとの結合手である。
【0077】
一般式(A3)において、X〜X、R、R、n1、n2は一般式(A1)におけるX〜X、R、R、n1、n2と同義であり、R、Rの少なくとも1個がLとの結合手である。
【0078】
一般式(A4)において、R、R10は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R又はR10はLとの結合手を表す。
【0079】
10は酸素原子、硫黄原子、−NR′−を表し、R′は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基を表す。好ましくは、X10は酸素原子である。
【0080】
一般式(A5)、(A6)において、x、y、zは各々独立に0または1であり、R11、R16、R17は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表す。
【0081】
12〜R15、R18、R19は各々独立に水素原子、置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、隣接するR12とR13、R14とR15、R18とR19が互いに結合して縮合環を形成しても良く、これら縮合環は置換基を有しても良い。
【0082】
一般式(A5)においてR11〜R15、あるいは縮合環上の置換基のうち少なくとも1つがLとの結合手であり、一般式(A6)においてR12、R13、R16〜R19、あるいは縮合環上の置換基のうち少なくとも1つがLとの結合手である。
【0083】
一般式(A7)において、R21、R22は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R23〜R26は水素原子、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、一般式(A7)においてR21〜R26のいずれか1個がLとの結合手である。
【0084】
一般式(A1)〜(A7)のうちAとして好ましくは一般式(A1)〜(A4)であり、さらに好ましくは一般式(A1)、(A4)である。nは1または2を表す。
【0085】
一般式(1)で表される化合物は、分子内にAおよび(−L−QR)の部分構造を各々少なくとも1つ有していれば特に限定されず、この部分構造がさらに置換基を有していても良く、前述の二価の連結基(単なる結合手を含む)あるいは三価の連結基とともに複数結合して二量体、三量体、多量体を形成していても良い。好ましくは、分子内に一般式(1)のAで表される基が複数存在する化合物である。
【0086】
以下に一般式(1)で表される化合物の具体的化合物例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0087】
【化6】

【0088】
【化7】

【0089】
【化8】

【0090】
【化9】

【0091】
【化10】

【0092】
【化11】

【0093】
【化12】

【0094】
【化13】

【0095】
【化14】

【0096】
【化15】

【0097】
【化16】

【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
本発明に用いられる化合物は当該業者であれば公知の製造方法を参考に容易に合成することが可能である。以下に一般式(1)で表される化合物の合成例を示すが、本発明はこれらの合成方法に限定されない。
【0103】
(化合物合成例)
【0104】
【化21】

【0105】
1.化合物(7)の合成
窒素雰囲気下、トリエチルアミン20ml中氷冷撹拌しながら、中間体(1)7.38g(20mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.702g(1mmol)、塩化第一銅0.38g(2mmol)を滴下した。滴下終了後反応液を室温に戻し、一晩撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液、ついで飽和食塩水で洗浄し、酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出液:ヘキサン−酢酸エチル)、黄色アモルファスの例示化合物(7)6.50gを得た(収率96%)。
【0106】
2.例示化合物(93)の合成
【0107】
【化22】

【0108】
2−1.中間体(2)の合成
5−ブロモイソフタル酸7.50g(30.6mmol)に塩化チオニル11mlを加え、4時間加熱還流した。反応終了後過剰の塩化チオニルを減圧留去し、5−ブロモイソフタル酸クロリドを得た。
【0109】
乾燥ピリジン120ml中に2−(1H−テトラゾール−5−イル)ピリジン2.25g(15.3mmol)を加え撹拌しながら上記で得た5−ブロモイソフタル酸クロリドをゆっくり加え、添加終了後8時間加熱還流した。放冷後、反応混合物を水1000mlに注ぎ、固体をろ取、水洗後80℃で乾燥した。固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶離液:塩化メチレン−メタノール=20:1)、中間体(2)5.20gを得た(11.6mmol、収率76%)。
【0110】
2−2.例示化合物(93)の合成
窒素雰囲気下、トリエチルアミン20ml中氷冷撹拌しながら、中間体(2)5.00g(11.2mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロリド0.393g(0.56mmol)、塩化第一銅0.21g(1.12mmol)を滴下した。滴下終了後反応液を室温に戻し、一晩撹拌した。反応液に酢酸エチルを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液、ついで飽和食塩水で洗浄し、酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、ろ液を減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(溶出液:ヘキサン−酢酸エチル)、無色アモルファスの例示化合物(93)5.93gを得た(10.8mmol、収率97%)。
【0111】
これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
【0112】
〔正孔輸送層・電子ブロック層〕
本発明の有機光電変換素子10は、バルクヘテロジャンクション層と陽極との中間には正孔輸送層17を、バルクヘテロジャンクション層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となるため、これらの層を有していることが好ましい。
【0113】
これらの層を構成する材料としては、例えば、正孔輸送層17としては、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT、ポリアニリン及びそのドープ材料、WO2006/019270号等に記載のシアン化合物、などを用いることができる。なお、バルクヘテロジャンクション層に用いられるn型半導体材料のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、バルクヘテロジャンクション層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用するほうが好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、バルクヘテロジャンクション層に用いたp型半導体材料単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。バルクヘテロジャンクション層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
【0114】
〔その他の層〕
エネルギー変換効率の向上や、素子寿命の向上を目的に、各種中間層を素子内に有する構成としてもよい。中間層の例としては、正孔ブロック層、電子ブロック層、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などを挙げることができる。
【0115】
<電極>
本発明に関わる光電変換素子においては、少なくとも陽極と陰極とを有する。また、タンデム構成をとる場合には中間電極を用いることでタンデム構成を達成することができる。なお本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。
【0116】
また透光性があるかどうかといった機能から、透光性のある電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合がある。通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
【0117】
〔陽極〕
本発明の陽極は、好ましくは380〜800nmの光を透過する電極である。材料としては、例えば、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の透明導電性金属酸化物、金、銀、白金等の金属薄膜、金属ナノワイヤー、カーボンナノチューブ用いることができる。
【0118】
またポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン及びポリナフタレンの各誘導体からなる群より選ばれる導電性高分子等も用いることができる。また、これらの導電性化合物を複数組み合わせて陽極とすることもできる。
【0119】
〔陰極〕
陰極は導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用しても良い。陰極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子の取り出し性能及び酸化等に対する耐久性の点から、これら金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0120】
陰極の導電材として金属材料を用いれば陰極側に来た光は反射されて第1電極側に反射され、この光が再利用可能となり、光電変換層で再度吸収され、より光電変換効率が向上し好ましい。
【0121】
また、陰極13は、金属(例えば金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素からなるナノ粒子、ナノワイヤー、ナノ構造体であってもよく、ナノワイヤーの分散物であれば、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成でき好ましい。
【0122】
また、陰極側を光透過性とする場合は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、銀及び銀化合物等の陰極に適した導電性材料を薄く1〜20nm程度の膜厚で作製した後、上記陽極の説明で挙げた導電性光透過性材料の膜を設けることで、光透過性陰極とすることができる。
【0123】
〔中間電極〕
また、前記図3のようなタンデム構成の場合に必要となる中間電極の材料としては、透明性と導電性を併せ持つ化合物を用いた層であることが好ましく、前記陽極で用いたような材料(ITO、AZO、FTO、酸化チタン等の透明金属酸化物、Ag、Al、Au等の非常に薄い金属層またはナノ粒子・ナノワイヤーを含有する層、PEDOT:PSS、ポリアニリン等の導電性高分子材料等)を用いることができる。
【0124】
なお前述した正孔輸送層と電子輸送層の中には、適切に組み合わせて積層することで中間電極(電荷再結合層)として働く組み合わせもあり、このような構成とすると1層形成する工程を省くことができ好ましい。
【0125】
〔基板〕
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0126】
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0127】
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよいし、透明導電層を転写する反対側にはハードコート層が予め形成されていてもよい。
【0128】
〔光学機能層〕
本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していて良い。光学機能層としては、たとえば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度発電層に入射させることができるような光拡散層などを設けても良い。
【0129】
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
【0130】
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
【0131】
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
【0132】
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属または各種無機酸化物などのナノ粒子・ナノワイヤー等を無色透明なポリマーに分散した層などを挙げることができる。
【0133】
〔パターニング〕
本発明に係る電極、発電層、正孔輸送層、電子輸送層等をパターニングする方法やプロセスには特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。
【0134】
バルクヘテロジャンクション層、輸送層等の可溶性の材料であれば、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取っても良いし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしても良い。
【0135】
電極材料などの不溶性の材料の場合は、電極を真空堆積時にマスク蒸着を行ったり、エッチング又はリフトオフ等の公知の方法によってパターニングすることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成しても良い。
【0136】
(封止)
また、作製した有機光電変換素子10が環境中の酸素、水分等で劣化しないために、有機光電変換素子だけでなく有機エレクトロルミネッセンス素子などで公知の手法によって封止することが好ましい。例えば、アルミまたはガラスでできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上10を接着剤で貼合する手法、ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法、ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)または有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法、及びこれらを複合的に積層する方法等を挙げることができる。
【0137】
(光センサアレイ)
次に、以上説明したバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子10を応用した光センサアレイについて詳細に説明する。光センサアレイは、前記のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が受光によって電流を発生することを利用して、前記の光電変換素子を細かく画素状に並べて作製し、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する効果を有するセンサである。
【0138】
図4は、光センサアレイの構成を示す図である。図4(A)は、上面図であり、図4(B)は、図4(A)のA−A’線断面図である。
【0139】
図4において、光センサアレイ20は、保持部材としての基板21上に、下部電極としての陽極22、光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換部24及び陽極22と対をなし、上部電極としての陰極23が順次積層されたものである。光電変換部24は、p型半導体材料とn型半導体材料とを一様に混合したバルクヘテロジャンクション層を有してなる光電変換層24bと、バッファ層24aとの2層で構成される。図4に示す例では、6個のバルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子が形成されている。
【0140】
これら基板21、陽極22、光電変換層24b及び陰極23は、前述したバルクヘテロジャンクション型の光電変換素子10における陽極12、光電変換部14及び陰極13と同等の構成及び役割を示すものである。
【0141】
基板21には、例えば、ガラスが用いられ、陽極22には、例えば、ITOが用いられ、陰極23には、例えば、アルミニウムが用いられる。そして、光電変換層24bのp型半導体材料には、例えば、前記BP−1前駆体が用いられ、n型半導体材料には、例えば、前記例示化合物13が用いられる。また、バッファ層24aには、PEDOT(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン)−PSS(ポリスチレンスルホン酸)導電性高分子(スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP)が用いられる。
【0142】
このような光センサアレイ20は、次のようにして製作された。
【0143】
ガラス基板上にスパッタリングによりITO膜を形成し、フォトリソグラフィにより所定のパターン形状に加工した。ガラス基板の厚さは、0.7mm、ITO膜の厚さは、200nm、フォトリソグラフィ後のITO膜における測定部面積(受光面積)は、0.5mm×0.5mmであった。次に、このガラス基板21上に、スピンコート法(条件;回転数=1000rpm、フィルター径=1.2μm)によりPEDOT−PSS膜を形成した。その後、該基板を、オーブンで140℃、10分加熱し、乾燥させた。乾燥後のPEDOT−PSS膜の厚さは30nmであった。
【0144】
次に、上記PEDOT−PSS膜の上に、P3HT(ポリ−3ヘキシルチオフェン)とPCBMの1:1混合膜を、スピンコート法(条件;回転数=3300rpm、フィルター径=0.8μm)により形成した。このスピンコートに際しては、P3HTおよびPCBMをクロロベンゼン溶媒に=1:1で混合し、これを攪拌(5分)して得た混合液を用いた。P3HTとPCBMの混合膜の形成後、窒素ガス雰囲気下においてオーブンで180℃、30分加熱しアニール処理を施した。アニール処理後のP3HTとPCBMの混合膜の厚さは70nmであった。
【0145】
その後、所定のパターン開口を備えたメタルマスクを用い、P3HTとPCBMの混合膜の上に、電子輸送層として化合物(I−1)を5nm蒸着し、ついで陰極としてのアルミニウム層を蒸着法により形成(厚さ=10nm)した。その後、PVA(polyvinyl alcohol)をスピンコートで1μm形成し、150℃で焼成することで図略のパッシベーション層を作製した。以上により、光センサアレイ20が作製された。
【0146】
【化23】

【実施例】
【0147】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0148】
実施例1
<比較の有機光電変換素子1の作製>
ガラス基板上にパターン形成した透明電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
【0149】
この透明基板上に、導電性高分子であるBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃で大気中10分間加熱乾燥した。
【0150】
これ以降は、基板をグローブボックス中に持ち込み、窒素雰囲気下で作業した。まず、窒素雰囲気下で上記基板を140℃で3分間加熱処理した。クロロベンゼンにp型半導体材料として、プレクストロニクス社製プレックスコアOS2100を1.5質量%、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製E100(PCBM)を1.5質量%を溶解した液を作製し、0.45μmのフィルタでろ過をかけながら500rpmで60秒、ついで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温で30分放置した。
【0151】
次にアルドリッチ社製バソキュプロイン(BCP)を0.5質量%の比率で2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールと混合した溶液を1200rpmでスピンコートし、膜厚15nmの正孔ブロック層を形成した。
【0152】
次に、上記一連の有機層を成膜した基板を大気に晒すことなく真空蒸着装置内に設置した。2mm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまで真空蒸着機内を減圧した後、Alを100nmを蒸着した。最後に120℃で30分間の加熱を行い、比較の有機光電変換素子1を得た。なお蒸着速度は2nm/秒で蒸着し、2mm角のサイズとした。
【0153】
得られた有機光電変換素子1は、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出した。
【0154】
【化24】

【0155】
<比較の有機光電変換素子2の作製>
比較の有機光電変換素子1において、正孔ブロック層としてバソキュプロインの0.5%2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール溶液に代えて、エタノールにTi−イソプロポキシドを25mmol/lになるように溶解した液を調製し、取り出し電極部をマスキングした後に1500rpmでスピンコートした後、大気中に取り出して60分間放置してTi−イソプロポキシドを加水分解することによって、膜厚15nmのTiOx層を形成し、正孔ブロック層とした以外は同様にして、比較の有機光電変換素子2を作製した。
【0156】
<比較の有機光電変換素子3の作製>
比較の有機光電変換素子1において、正孔ブロック層をバソキュプロインに代えて、前記比較化合物(I−1)に変更した以外は同様にして、本発明の有機光電変換素子3を作製した。
【0157】
<本発明の有機光電変換素子4〜33の作製>
比較の有機光電変換素子1において、正孔ブロック層をバソキュプロインに代えて、下記表1記載の本発明の化合物に変更した以外は同様にして、本発明の有機光電変換素子4〜33を作製した。
【0158】
得られた有機光電変換素子1〜33について、下記の変換効率と曲線因子の評価、および耐久性評価を行った。
【0159】
(変換効率および曲線因子の評価)
上記作製した光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を4.0mmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部をそれぞれ測定し、平均値を求めた。またJsc、Voc、FFから式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
【0160】
式1 Jsc(mA/cm)×Voc(V)×FF=η(%)
(耐久性評価)
ソーラーシミュレーター(AM1.5G)の光を100mW/cmの照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定した初期変換効率を100とし、陽極と陰極の間に抵抗を接続したまま100mW/cmの照射強度で100h照射し続けた後の変換効率を評価し、相対低下効率を算出した。
【0161】
式2 相対低下効率(%)=(1−暴露後の変換効率/暴露前の変換効率)×100
【0162】
【表1】

【0163】
表1から、本発明の正孔ブロック層を利用した方が曲線因子が向上し、変換効率も高いものが得られることがわかる。また、耐久性を示す相対低下効率も低く、耐久性が高いことがわかる。
【符号の説明】
【0164】
10 バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子
11 基板
12 陽極
13 陰極
14 光電変換部(バルクヘテロジャンクション層)
14p p層
14i i層
14n n層
14′ 第1の光電変換部
15 電荷再結合層
16 第2の光電変換部
17 正孔輸送層
18 電子輸送層
20 光センサアレイ
21 基板
22 陽極
23 陰極
24 光電変換部
24a バッファ層
24b 光電変換層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、陽極、およびp型半導体材料とn型半導体材料が混合されたバルクヘテロジャンクション層を有する有機光電変換素子であって、前記バルクヘテロジャンクション層と前記陰極の間に、少なくとも下記一般式(1)で表される化合物を含有する層を有することを特徴とする有機光電変換素子。
【化1】

〔式中、R、R、Rは各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基から選ばれる置換基を表し、Qは4価のケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、から選ばれるいずれかの原子を表し、Lは二価の連結基または単なる結合手を表し、Lは二価または三価の連結基、または単なる結合手を表し、Aは縮合環を有していても良い5員または6員の炭素環または複素環を表し、nは1または2を表す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)のQで表される原子が4価のケイ素原子であることを特徴とする請求項1に記載の有機光電変換素子。
【請求項3】
前記一般式(1)のAが、下記一般式(A1)〜一般式(A7)から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1又は2に記載の有機光電変換素子。
【化2】

〔式中、X〜Xは各々独立に炭素原子または窒素原子を表し、Xは炭素原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、チタン原子、スズ原子を表し、R〜Rは各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基から選ばれる少なくとも1種の基、または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、n1、n2は各々独立して0から4の整数を表し、一般式(A1)におけるR、R、Rの少なくとも1個はLとの結合手であり、一般式(A2)におけるR〜Rの少なくとも1個はLとの結合手であり、一般式(A3)におけるR又はRはLとの結合手である。〕
【化3】

〔式中、R又はR10は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R又はR10はLとの結合手を表し、X10は酸素原子、硫黄原子、−NR′−を表し、R′は水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、スルホニル基を表す。〕
【化4】

〔式中、R11、R16、R17は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、x、y、zは各々独立に0または1であり、R12〜R15、R18、R19は各々独立に水素原子または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、隣接するR12とR13、R14とR15、R18とR19が互いに結合して縮合環を形成しても良く、これら縮合環は置換基を有しても良く、一般式(A5)におけるR11〜R15、あるいは縮合環上の置換基のうち少なくとも1つがLとの結合手であり、一般式(A6)におけるR12、R13、R16〜R19、あるいは縮合環上の置換基のうち少なくとも1つがLとの結合手である。〕
【化5】

〔式中、R21、R22は、上記R〜Rと同義の置換基または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R23〜R26は、水素原子、上記R〜Rと同義の置換基、または一般式(1)におけるLとの結合手を表し、R21〜R26のいずれか1個がLとの結合手である。〕
【請求項4】
前記一般式(1)のAが前記一般式(A1)〜一般式(A4)から選ばれる何れかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項5】
前記一般式(1)のAが前記一般式(A1)又は一般式(A4)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される化合物を含有する層が、溶液塗布法によって作製されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機光電変換素子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機光電変換素子がアレイ状に配置されていることを特徴とする光センサアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−49352(P2012−49352A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190528(P2010−190528)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】