説明

柱梁接合金具及び柱梁接合構造

【課題】 木製の柱と梁との接合金具及び接合構造であって、高さ寸法を容易かつ高精度に調整することができる柱梁接合金具及びこれを用いて柱と梁とを高い精度で接合する柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】 ラーメン架構体を形成する木製柱1と木製梁2との接合構造において、柱1と梁2とを接合する柱梁接合金具13の上側の水平板部13aに突出部20を設ける。この突出部20の上面を研磨することにより、柱梁接合金具13の高さが高精度で調整され、柱の切り欠き1bの鉛直方向の高さ寸法と正確に対応する。したがって、柱梁接続金具13を介して柱1と梁2を容易に正確な高さに接合することができるとともに、曲げモーメントを確実に伝えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、木造建築物における柱と梁とを接合する接合金具及び接合構造に係り、特に、柱と梁との接合部で相対的な変形を拘束し、双方間で曲げモーメントの伝達が生じるように柱と梁とを接合するための接合金具及びこれを用いた柱梁接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に普及している木造建築物では柱と梁との接合を、柱に設けたほぞ穴に梁の端部を加工したほぞを差し入れることによって行っている。このような接合構造では、双方間における変形を許容し、曲げモーメントはほとんど伝達されない。つまり、曲げモーメントに抵抗することができず、複数の柱および複数の梁(胴差、軒けた、土台等の横方向に架設される部材を含む)で形成される軸組みは、変形が生じ易い。このため、柱間の壁内に筋交いを配置し、地震時等の水平方向力が作用したときの変形に抵抗するものとなっている。
【0003】
筋交いは、一般的に複数の位置に設けられ、さらに傾斜の方向が逆となる二つの方向に必要となる。したがって、従来の木造建築物では筋交いを設ける壁体を確保する必要があるために、開口部の設定や屋内空間の利用に支障を生じることがある。このような事情から、柱と梁とをいわゆる剛結合、つまり曲げモーメントの伝達が生じる結合とし、軸組みをラーメン構造とする提案がなされている。
【0004】
特許文献1に記載の梁と柱の接合構造は、図8に示すように、梁102の柱101と当接する面に2本のスクリュー部材111が所定間隔をおいて鉛直方向にねじ込まれている。これらのスクリュー部材111の下端部には軸線方向にネジ穴が穿設されている。一方、この梁102と対向している柱の端面には切り欠き101aが設けられ、この切り欠き内に柱固定金具112(接続金具)が接合されており、この柱固定金具112の上部に設けられたボルト挿入孔からボルト113を挿通して、前記スクリュー部材111のネジ穴にボルト113を螺合し締め付ける。これにより、柱固定金具112を介して梁102と柱101が連結される。したがって、柱101と梁102との間に曲げモーメントが作用したときに、二つのスクリュー部材111の一方に引張力が、他方には圧縮力が作用し、これらの力がスクリュー部材111の全長にわたる周面から梁102に伝達され、梁102には局所的に大きな応力が集中することがなく、柱101と梁102との間で曲げモーメントの伝達が可能となる。
【0005】
特許文献2に記載の柱と梁の接合構造は、図9に示すように、梁122が柱121と当接する面に埋めこみボルト123(スクリュー部材)が所定間隔をおいて鉛直方向に2本埋め込まれ、この埋めこみボルト123の端部には軸線方向にネジ穴が穿設されている。また、柱121の梁122と対向する端面には切り欠き121aが設けられ、この切り欠き内から柱121の軸線方向に埋め込みボルト124が埋め込まれている。この埋め込みボルト124の端部にも軸線方向にネジ穴が穿設されている。そして、柱121の切り欠き121aに接合金具125が介挿され、この接合金具125に設けられたボルト挿入孔からボルト126が挿通され、梁122及び柱121に埋め込まれている埋め込みボルト123,124のネジ穴にそれぞれボルト126が螺合され、締め付けられることにより接合金具125を介して梁122と柱121とが連結される。
【特許文献1】特開2004−092149号公報
【特許文献2】特開2004−143779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来から知られている接合構造では、次のような未解決の課題がある。
柱の上面に梁を架け渡すように載置して接合する構造において、柱の一部を切り欠いて、この部分に接合金具を配置する構造では、接合金具に高い寸法精度が要求される。つまり、切り欠き内の接合金具を介して柱と梁とを結合するともに柱の端面は梁の下面又は上面に密接させるためには接合金具が切り欠きの寸法に正確に対応している必要がある。特に梁に太径のスクリュー部材をねじ込んでおき、接合金具をこのスクリュー部材に突き当てるように接合する構造では、スクリュー部材を正確に梁又は柱にねじ込むとともに、接合金具が高精度で製作されていることにより、木部材を精度良く組み立てることができる。
【0007】
上記のように用いられる接合金具は、鋼板を溶接により組み立てたてることにより、又は鋳造によって製作することが考えられるが、いずれの方法でも高精度を得るためには所定の寸法よりやや大きく製作し、研磨等により寸法の調整することが望ましい。特に鋳造によって接合金具を製作すると、鋳鉄の冷却時に収縮が生じ、精度を高く仕上げるには研磨等による寸法の調整が必要となる。
しかしながら、接合金具の柱との当接面又は梁との当接面に研磨等の処理を行って、寸法を調整するためには多くの手間を要し、接合金具の製作費用が過大となってしまう。
【0008】
本願発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、曲げモーメントを確実に伝達することが可能に木製の柱と梁とを接合する接合金具及び接合構造であって、簡単な工程で高い精度に仕上げることができる柱梁接合金具及びこの接合金具を用いて正確に柱と梁とを接合することができる柱梁接合構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明は、 木製の梁と木製の柱とに、それぞれ太径のスクリュー部材がねじ込まれ、このスクリュー部材の端面から軸線方向に設けられたネジ穴に螺合したボルトによって、該柱と該梁とに結合される柱梁接合金具であって、 互いに対向し、前記柱にねじ込まれたスクリュー部材の端面と前記梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面とのそれぞれに当接される二つの水平板部と、これらの水平板部の縁部を互いに結合する側板部とを備え、 前記二つの水平板部には、前記柱と前記梁とに固着するためのボルトを挿通するボルト孔が設けられ、 一方の水平板部には、前記柱又は梁にねじこまれたスクリュー部材の端面と当接する領域に突出部を有する柱梁接合金具を提供する。
なお、上記梁は、胴差、軒けた、土台等の横方向に架設される部材一般を含むものである。
【0010】
この柱梁接合金具では、一方の水平板部に突出部が設けられており、この突出部が梁又は柱にねじ込まれたスクリュー部材の端面に当接されるものとなっているので、この突出部の高さを調整することにより、該柱梁接合金具全体の高さを調整し、柱と梁の接合部における所望の寸法に容易に適合させることができる。そして、突出部はスクリュー部材と当接する部分に範囲を限定して設けることができ、この部分の高さを研磨等によって調整する工程は、接合金具の水平板部の全面を研磨することによって寸法を調整する工程より著しく容易であり、要する時間が短縮される。したがって、接合金具の寸法を効率よく調整し、高い精度の接合金具を低コストで製作することが可能となる。
また、高精度で調整された突出部が梁又は柱にねじ込まれたスクリュー部材と当接され、このスクリュー部材を介して梁又は柱に力が伝達される構造となるので、柱と梁とが強固に接合されるとともに、これらが正確な位置で接合され、精度の高い構造躯体を構築することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の柱梁接合金具において、 前記突出部は、前記柱又は梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面の全域に当接するものとする。
【0012】
この柱梁接合金具では、突出部に柱又は梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面の全域が当接しているので、接合金具からスクリュー部材に確実に力が伝達され、さらにスクリュー部材の周面に設けられた螺旋状の張り出し部から柱又は梁に力が伝達される。したがって、柱と梁との接合部に作用するせん断力及び曲げモーメントが柱と梁との間で確実に伝達できる構造となる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の柱梁接合金具において、 前記突出部は、該突出部の上端面が研磨されることにより、該柱梁接合金具の高さが所定の寸法に調整されているものとする。
【0014】
この柱梁接合金具では、前記突出部の上端面が研磨されることにより、柱と梁の接合部に適合する高さに正確に調整される。したがって、柱の上又は下に接合される梁が高い精度を維持して接合される。特に、該柱梁接合金具が鋳造により製造されたものである場合、所望の高さ寸法よりも少し大きく鋳造された突出部が、研磨により柱と梁の接合部の高さ寸法に応じて容易に調整され、低コストで精度の高い接合金具が得られる。
【0015】
請求項4に係る発明は、 横方向に架設される木製の梁と、この梁の上面または下面に端面を当接して接合される木製の柱との接合構造であって、 前記柱の端部には、複数の切り欠きが設けられ、 該切り欠き内から該柱の軸線方向にスクリュー部材がねじ込まれており、 前記梁には、前記柱にねじ込まれたスクリュー部材と対向する位置で鉛直方向にスクリュー部材がねじ込まれ、 前記柱にねじ込まれたスクリュー部材及び梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面から軸線方向に設けられたネジ穴にボルトが螺合され、 前記切り欠き内に配置された接合金具が、前記ボルトによって柱にねじ込まれたスクリュー部材と梁にねじ込まれたスクリュー部材との双方に結合され、該接合金具を介して双方のスクリュー部材が連結されており、 前記接合金具は、互いに対向して前記柱にねじ込まれたスクリュー部材の端面と梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面とのそれぞれに当接される二つの水平板部と、これらの水平板部の縁部を互いに結合する側板部とを備え、 一方の水平板部には、前記柱又は梁にねじこまれたスクリュー部材の端面が当接する突出部を有している柱梁接合構造を提供するものである。
【0016】
この柱梁接合構造では、上記柱梁接合金具を介して、柱にねじ込まれたスクリュー部材と梁にねじ込まれたスクリュー部材とが強固に接合される。そして、この柱梁接合金具は上記突出部の高さを容易に調整することができるので、接合金具全体の高さも柱と梁の接合部の高さに容易かつ正確に適合させることができる。したがって、柱の端面は梁の下面又は上面に正確に当接される。これにより、柱の端面で鉛直方向の荷重が梁と柱との間で伝達されるとともに、複数の位置で柱にねじ込まれたスクリュー部材と梁にねじ込まれたスクリュー部材との間では、柱梁接合金具を介して引張力及び圧縮力が伝達され、接合部で柱と梁との相互間の変形が拘束される。したがって、曲げモーメントに抵抗することができる強固な構造となる。
【0017】
さらに、上記スクリュー部材及び柱梁接合金具を介して伝達される力は、スクリュー部材が広い範囲で木部材と係合されていることにより、分散して木製の柱又は梁に作用し、局部的に大きな応力が発生するのが抑制される。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本願発明に係る柱梁接合金具では、水平板部に設けられた突出部の高さを容易に調整することができ、高い精度で柱と梁とを正確かつ強固に接合することができる。また、このような接合金具を用いて、柱の端面を梁の上面又は下面に密接させるとともに、複数の位置で柱にねじ込まれたスクリュー部材と梁にねじ込まれたスクリュー部材とを高精度で接合し、柱と梁との間で大きな鉛直方向の力と曲げモーメントとが確実に伝達される接合構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本願発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1は、本願発明の柱梁接合構造が好適に用いられる木造建築物の構造躯体を示す概略斜視図である。
この構造躯体は、1階を構成する下層部分及び2階を構成する上層部分が、それぞれラーメン架構体を複数組み合わせて形成されており、これらを積層することによって全体の構造躯体が形成されている。それぞれのラーメン架構体は、木製の柱1、3の上に木製の梁2、4を載置して接合するいわゆる梁勝ち構造となっており、それぞれラーメン架構体を構成する柱1、3の断面は、接合される梁の軸線方向の寸法が大きく、これと直角方向の寸法が小さい扁平な部材となっている。また、梁2、4も鉛直方向の断面寸法が大きく、横方向の断面寸法が小さい扁平な部材を用いている。したがって、各ラーメン架構体の接合部は一方向の曲げに抵抗する構造となっている。
【0020】
これらのラーメン架構体は、平面上で方向が互いに直角となるように、つまり複数のラーメン架構体の梁2−1,2−2,4−1,4−2が互いに直角となるように接合されている。これにより、異なる方向の水平力に抵抗する複数のラーメン架構体が互いに組み合わされ、あらゆる方向の水平力に抵抗可能な構造躯体となっている。そして、上層部分の柱3は、下層のラーメン架構体の梁2上に立設され、これらの接合部でも曲げモーメントが伝達されるものとなっている。
【0021】
図2は、図1に示すラーメン架構体で用いられる梁2と下層部分の柱1との接合構造であって、本願に係る発明の一実施形態を示す分解斜視図である。また、図3は、同じ接合構造の断面図であり、ラーメン架構体の軸線と平行な断面を示すものである。
この接合構造では、柱1の上端面における長辺方向の両端部に切り欠き1bが設けられ、中央部1aは梁2の下面に当接されている。そして、柱1の切り欠き1bからこの柱の軸線方向に2本の第1のスクリュー部材11、11がねじ込まれている。一方、梁2の対応する位置にも鉛直方向に2本の第2のスクリュー部材12、12がねじ込まれており、これら第1及び第2のスクリュー部材11、12には、端面から軸線方向にネジ穴11b、12bが穿設されている。梁2にねじ込まれた第2のスクリュー部材12、12のネジ穴12bには頭なしボルト15が螺合され、この頭なしボルト15にはナット16が螺合されている。一方、柱1にねじ込まれた第1のスクリュー部材11のネジ穴11bには、ボルト14が螺合されている。そして、柱の切り欠き1b内に配置された柱梁接合金具13がボルト14によって第1のスクリュー部材11に結合され、頭なしボルト15とナット16とによって第2のスクリュー部材11に結合されている。これにより、柱1と梁2とはスクリュー部材11,12及び柱梁接合金具13を介して接合される。
【0022】
上記第1及び第2のスクリュー部材11、12は同じものであり、図4に側面図及び正面図を示すように、棒状の鋼部材の側面に螺旋状の張り出し部11a、12aを設けたものであり、両端面には前述のように軸線方向のネジ穴11b、12bが設けられている。それぞれのスクリュー部材11、12は、図2に示すように、梁2又は柱1に鉛直方向の孔を設け、さらに螺旋状の溝を切削した後にねじ込まれたものである。
【0023】
上記頭なしボルト15は、図5に示すように、全長にわたって雄ねじが形成されたボルト(長ねじボルト)であり、ナット16を用いて締め付けることができるようになっている。また、先端に近づくにしたがって径が小さくなっている。
【0024】
上記柱梁接合金具13すなわち本願発明の一実施形態である柱梁接合金具は、図6に示すように、互いに上下で対向する二つの水平板部13a,13bと、これらの縁部を互いに結合する側板部13cとを備え、上側の水平板部13aには上ボルト孔13dが、下側の水平板部には下ボルト孔13eがそれぞれ設けられている。また、上側の水平板部13aには上ボルト孔13dを含んだ周辺領域に突出部20が設けられており、梁2にねじ込まれた第2のスクリュー部材12の下端面の全域がこの突出部の平坦な上面に当接するものとなっている。そして、上ボルト孔13dに挿通された頭なしボルト15とナット16とで締め付けて固着される。下側の水平板部13bは、柱1にねじ込まれた第1のスクリュー部材11の上端面に当接され、下ボルト孔13eに挿通されたボルト14によって固着されるものである。
【0025】
また、上記柱梁接合金具13は、図6に示すように、一方の側部が開放されており、該開放された部分の反対側は、鉛直方向に軸線を有する円筒曲面となっている。つまり、鉛直方向に均等な断面となり、その平面形状の背面側が円弧状となっている。
この柱梁接合金具13の寸法は、水平方向の幅及び奥行きが柱1の幅より小さくなっている。高さは柱1の端部に設けられた切り欠き1bの鉛直方向の寸法とほぼ等しくなるように、上側の水平板部13aに設けられた突出部20を研磨することによって正確に成形されている。
【0026】
この柱梁接合金具13は鋳型に鋳鉄を流し込む鋳造により製作されている。この製造方法では、柱梁接合金具13の完成時のサイズは所望したサイズと誤差が出る可能性が高い。したがって、高い精度を要求される柱梁接合金具13は、高さ寸法が所定の値より少し大きく鋳造される。つまり、上側の水平板部13aに設けられた突出部20の上面は、所望の高さよりも少し高く鋳造され、突出部20の過剰な高さ部分を研磨することにより所望の高さに調整される。この突出部20は、その領域がスクリュー部材と当接する範囲に限定して設けることができ、研磨を施す範囲が限定されるので、水平板部の全域を研磨するより著しく加工量が減少し、効率よく寸法の調整ができるものとなっている。
【0027】
次に、上記柱1と梁2とを接合する工程について説明する。
柱1は、工場等における加工段階において、端部に所定の寸法の切り欠き1bを設ける。そして、この切り欠き1b内から軸線方向に孔を切削し、第1のスクリュー部材11をねじ込む。この第1のスクリュー部材11の端部に設けられたネジ穴11bにボルト14を螺合し、柱梁接合金具13の下側の水平板部13bを切り欠き1b内の端面及び第1のスクリュー部材11の端面に当接させて、該柱梁接合金具13を切り欠き内1bに固定しておく。また、梁2も工場等における作業により、所定の位置に第2のスクリュー部材12をねじ込んでおく。
【0028】
柱1及び梁2を組み立てる現場では、柱1を所定の位置に立設する。一方、その上に架け渡す梁2に埋め込まれた第2のスクリュー部材12のネジ穴12bには頭なしボルト15をねじ込み、先端を下方に突き出しておく。その後、梁2を立設された柱1の上方に吊り揚げて第2のスクリュー部材12に螺合された頭なしボルト15の先端が、柱1に固定された柱梁接合金具13と対向する位置に支持する。そして、梁2をゆっくりと下降させながら柱1に固定された柱梁接合金具13の上ボルト孔に頭なしボルト15を先端から挿通する。このとき、頭なしボルト15は先端部の径が小さくなっており、上ボルト孔13dに容易に導くことができる。そして、さらに梁2をゆっくりと下降させることによって、頭なしボルト先端の傾斜面15aが上ボルト孔13dの内周面にガイドされ、柱1上の正確な位置に載置される。また、柱1の上端部の切り欠き内に固定された柱梁接合金具13は、上側の水平板部13aに設けられた突出部20が研磨により正確な高さに仕上げられているので、梁2の下面は柱の上端面に当接されるとともに、梁2にねじ込まれたスクリュー部材12の端面の全域が柱梁接合金具13の突出部20上に当接され、梁2は正確な高さに支持される。
【0029】
その後、柱1に固定された柱梁接合金具13の側面の開放された部分から頭なしボルト15の先端にナット16を螺合させ、強く締め付けることにより梁2にねじ込まれた第2のスクリュー部材12と強固に接合される。これにより、柱1と梁2とのそれぞれにねじ込まれたスクリュー部材11,12は柱梁接合金具13を介して結合される。
【0030】
上記のように柱1と梁2とが接合されることにより、図7に示すように、梁2の下面は柱1の中央部1aに圧接されるとともに、梁2にねじ込まれた第2のスクリュー部材12、12は、柱断面の長辺方向における両端部で第1のスクリュー部材11、11と柱梁接合金具13を介して連結される。これにより、梁2に作用する鉛直方向の荷重が柱1によって支持されるとともに、柱1と梁2との接合部で双方間の変形が拘束され、曲げモーメントが伝達される。これにより、大きな剛性を有するラーメン架構体が形成され、水平力に対しても抵抗できるものとなる。
【0031】
以上に説明した実施形態は、下層部分の柱1と、その上に支持される梁2との接合構造であるが、梁2とこの上に立設される上層部分の柱3との接合部にも、上下を反転して同様の構成を採用することができる。このときには、梁2にねじ込まれた第2のスクリュー部材に頭なしボルト15を螺合しておき、柱梁接合金具13が固着された柱3をつり上げて柱梁接合金具13のボルト孔に頭なしボルト15が挿通されるように柱をゆっくりと下降させる。
なお、下層部分の柱1と梁2とを上記構造によって接合した後、同じ位置に上層の柱3を立設するときには、梁2にねじ込まれた第2のスクリュー部材12を、上層部分の柱3と梁2の接合にも共通に用いることができる。これにより、下層の柱1と上層の柱3とは、第1のスクリュー部材11及び柱梁接合金具13により結合され、双方の柱1、3は通し柱に近い剛性を有するものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の柱梁接合構造が好適に用いられる木造建築物の構造躯体を示す概略斜視図である。
【図2】本願に係る発明の一実施形態である柱梁接合構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1に示す柱梁接合構造をの断面図であり、ラーメン架構体の軸線と平行な断面を示すものである。
【図4】図2及び図3に示す柱梁接合構造で用いられるスクリュー部材の平面図及び正面図である。
【図5】図2及び図3に示す柱梁接合構造で用いられる頭なしボルトの概略斜視図及び底面図である。
【図6】図2及び図3に示す柱梁接合構造で用いられる接合金具の概略斜視図である。
【図7】図2及び図3に示す柱梁接合構造を示す概略斜視図であって、斜め下方から視た図である。
【図8】従来の柱梁接合構造を示す概略斜視図である。
【図9】従来の柱梁接合構造の他の例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1,3:柱、 1a:柱端面の中央部、 1b:切り欠き、
2,4:梁、
11:第1のスクリュー部材、 11b:ネジ穴、 12:第2のスクリュー部材、 12b:ネジ穴、 13:柱梁接合金具、 13a:上側の水平板部、 13b:下側の水平板部、 13c:側板部、 13d:上ボルト孔、 13e:下ボルト孔
14:ボルト、 15:頭なしボルト、 16:ナット
20:突出部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
木製の梁と木製の柱とに、それぞれ太径のスクリュー部材がねじ込まれ、このスクリュー部材の端面から軸線方向に設けられたネジ穴に螺合したボルトによって、該柱と該梁とに結合される柱梁接合金具であって、
互いに対向し、前記柱にねじ込まれたスクリュー部材の端面と前記梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面とのそれぞれに当接される二つの水平板部と、これらの水平板部の縁部を互いに結合する側板部とを備え、
前記二つの水平板部には、前記柱と前記梁とに固着するためのボルトを挿通するボルト孔が設けられ、
一方の水平板部には、前記柱又は梁にねじこまれたスクリュー部材の端面と当接する領域に突出部を有することを特徴する柱梁接合金具。
【請求項2】
前記突出部は、前記柱又は梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面の全域に当接するものであることを特徴とする請求項1に記載の柱梁接合金具。
【請求項3】
前記突出部は、該突出部の上端面が研磨されることにより、該柱梁接合金具の高さが所定の寸法に調整されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の柱梁接合金具。
【請求項4】
横方向に架設される木製の梁と、この梁の上面または下面に端面を当接して接合される木製の柱との接合構造であって、
前記柱の端部には、複数の切り欠きが設けられ、
該切り欠き内から該柱の軸線方向にスクリュー部材がねじ込まれており、
前記梁には、前記柱にねじ込まれたスクリュー部材と対向する位置で鉛直方向にスクリュー部材がねじ込まれ、
前記柱にねじ込まれたスクリュー部材及び梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面から軸線方向に設けられたネジ穴にボルトが螺合され、
前記切り欠き内に配置された接合金具が、前記ボルトによって柱にねじ込まれたスクリュー部材と梁にねじ込まれたスクリュー部材との双方に結合され、該接合金具を介して双方のスクリュー部材が連結されており、
前記接合金具は、互いに対向して前記柱にねじ込まれたスクリュー部材の端面と梁にねじ込まれたスクリュー部材の端面とのそれぞれに当接される二つの水平板部と、これらの水平板部の縁部を互いに結合する側板部とを備え、
一方の水平板部には、前記柱又は梁にねじこまれたスクリュー部材の端面が当接する突出部を有していることを特徴する柱梁接合構造。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−312819(P2006−312819A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135408(P2005−135408)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】