説明

柱脚金具

【課題】柱を引き寄せすることと同等の機能を発揮する柱脚金具を提供すること。
【解決手段】基礎1に対して連結固定可能な金具本体4に、基礎1上若しくは基礎1上に設置された土台上に立設される柱13の底部に形成されたホゾ孔14に挿入可能なホゾ部5を設け、このホゾ部5に、このホゾ部5を前記ホゾ孔14に挿入した際に前記柱13に設けられた係止孔15と連通する挿通孔6を設けて、連通させた係止孔15と挿通孔6とに前記柱13の側方から係止体16を挿通することでこのホゾ部5と柱13を連結し得るように構成した柱脚金具において、前記係止孔15と前記挿通孔6とに前記係止体16を挿通して前記ホゾ部5と前記柱13を連結した際に、このホゾ部5に対して柱13を上方へ押し上げる押し上げ機構部7を備えた柱脚金具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎と柱を連結するための柱脚金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基礎と柱を連結するために、従来から柱脚金具と称される金具が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この柱脚金具を簡単に説明すると、基礎上に突出するアンカーボルトに連結するアンカーボルト連結部を下部に設け、前記基礎上に立設させる柱の底部に形成したホゾ孔に挿入するホゾ部を上部に設けて成ると共に、前記ホゾ部には、このホゾ部を前記柱のホゾ孔に挿入した際に、柱に設けられた係止孔と連通する挿通孔が設けられていて、連通させた係止孔と挿通孔とに前記柱の側方からドリフトピンを打ち込んで挿通係止することでこのホゾ部に柱を連結することができる構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−294875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の柱脚金具は、ドリフトピンを打ち込みする際の施工性向上を目的として、前記ホゾ部に設けられる挿通孔の孔径寸法が、ドリフトピンの外径寸法よりやや径大に設定されている。
【0006】
しかし、この寸法差によって挿通孔とドリフトピンとに生じる隙間がガタつきを生み、このガタつきが柱の連結位置の精度不良や構造強度低下の要因となる懸念がある。
【0007】
そこで、このような懸念を解消するために、「引き寄せ」と称される手法が実施されることがある。
【0008】
この「引き寄せ」を簡単に説明すると、例えば、挿通孔を、この挿通孔とドリフトピンの径寸法差分ホゾ部に対し通常より基礎側(下側)に位置するように形成し、これによりこの挿通孔と柱の前記係止孔とにドリフトピンを打ち込みすると、丁度ドリフトピンの上側外周面が挿通孔の上側孔縁に当接状態となって、柱が基礎方向に引き寄せられるようにするもので、この構成によれば、挿通孔とドリフトピンとにガタつきが生じないために、上記のような懸念は解消される。
【0009】
しかし、この「引き寄せ」は、ホゾ部への挿通孔の形成位置に高精度を要する上、この挿通孔の位置精度を確保できても、連結する柱(木材)が乾燥によって収縮してしまうと挿通孔と係止孔との位置関係に狂いが生じてしまうため、収縮しにくい品質の木材を使用する必要があるなど、実施は容易ではなかった。
【0010】
本発明は、このような現状に鑑みて開発されたもので、ホゾ部の挿通孔の形成位置に高精度を要したり柱の品質に左右されたりするようなことなしに、柱を引き寄せることと同等な機能を発揮できる画期的な柱脚金具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
基礎1に対して連結固定可能な金具本体4に、基礎1上若しくは基礎1上に設置された土台上に立設される柱13の底部に形成されたホゾ孔14に挿入可能なホゾ部5を設け、このホゾ部5に、このホゾ部5を前記ホゾ孔14に挿入した際に前記柱13に設けられた係止孔15と連通する挿通孔6を設けて、連通させた係止孔15と挿通孔6とに前記柱13の側方から係止体16を挿通することでこのホゾ部5と柱13を連結し得るように構成した柱脚金具において、前記係止孔15と前記挿通孔6とに前記係止体16を挿通して前記ホゾ部5と前記柱13を連結した際に、このホゾ部5に対して柱13を上方へ押し上げる押し上げ機構部7を備えたことを特徴とする柱脚金具に係るものである。
【0013】
また、前記押し上げ機構部7は、螺子部3に螺着して螺動上昇させる回動体8を設けて、この回動体8を回動させて螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記柱13を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1記載の柱脚金具に係るものである。
【0014】
また、前記押し上げ機構部7は、前記金具本体4の下部に設けて、この押し上げ機構部7が前記基礎1若しくは基礎1上に設置された土台と前記柱13との間に配設するように構成すると共に、この押し上げ機構部7は、螺子部3に螺着して螺動上昇させる回動体8と、前記柱13の底部を支承する座板体9とを設けて、この回動体8を回動させて螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記座板体9を介して柱13を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の柱脚金具に係るものである。
【0015】
また、前記金具本体4の下部に、前記基礎1上に突出するアンカーボルト2に連結可能なアンカーボルト連結部10を設けて、このアンカーボルト連結部10とアンカーボルト2を連結することで金具本体4を前記基礎1に連結固定し得るように構成し、前記押し上げ機構部7は、前記アンカーボルト連結部10と連結する前記アンカーボルト2の螺子部3に螺着する回動体8を設けて、この回動体8を回動させて前記螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記柱13を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の柱脚金具に係るものである。
【0016】
また、前記金具本体4の下部に、前記基礎1上に突出するアンカーボルト2に連結可能なアンカーボルト連結部10を設け、このアンカーボルト連結部10は、前記アンカーボルト2が挿通される連結孔11を金具本体4の下部に設け、この連結孔11に挿通して上方に突出させたアンカーボルト2にナット12を螺着することでアンカーボルト2と連結可能な構成とし、前記押し上げ機構部7は、前記アンカーボルト連結部10の前記連結孔11から上方に突出させた前記アンカーボルト2先端の螺子部3に螺着して前記柱13の底部を支持する回動体8を設け、この回動体8を回動させて前記螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記柱13を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の柱脚金具に係るものである。
【0017】
また、前記金具本体4の下部に、前記基礎1上に突出するアンカーボルト2に連結可能なアンカーボルト連結部10を設け、このアンカーボルト連結部10は、前記アンカーボルト2が挿通される連結孔11を前記金具本体4の下部に複数設けて、この複数の連結孔11の夫々に前記アンカーボルト2を挿通し得るように構成し、この複数の連結孔11に挿通して上方に突出させた複数のアンカーボルト2の夫々にナット12を螺着することでアンカーボルト連結部10をアンカーボルト2と連結可能な構成とし、前記押し上げ機構部7は、複数の前記連結孔11の夫々から上方に突出させた複数のアンカーボルト2先端の螺子部3に螺着して前記柱13の底部を支持する回動体8を設け、この複数の回動体8を回動させて前記螺子部3に対し螺動上昇させることで、複数の回動体8が前記柱13を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の柱脚金具に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、係止体を用いてホゾ部に連結した柱を押し上げ機構部によりホゾ部に対して上方へ押し上げることができ、従って、例えば挿通孔の孔径寸法が既存の柱脚金具同様に係止体の外径寸法より大きく設定されていて挿通孔と係止体とに隙間を生じる構成においても、押し上げ機構部で柱を押し上げることにより係止体の外周面を挿通孔の孔縁に確実に当接させることができ、これにより柱を引き寄せすることと同等の機能が発揮されて基礎に対する柱の連結位置の精度不良や構造強度低下のない柱連結構造を実現できる極めて実用性に優れた画期的な柱脚金具となる。
【0019】
また、請求項2記載の発明においては、回動体を螺子部に対して回動操作するだけで柱を押し上げできる一層実用性・操作性に優れた構成の柱脚金具となる。
【0020】
また、請求項3記載の発明においては、柱の底部を座板体で安定的に支承して回動体により押し上げできると共に、回動操作する回動体によって柱の底部が損傷することも確実に防止でき、しかも、柱の経年変化により柱の底部と座板体とに隙間を生じても、この隙間を座板体を上昇させることによって解消することが可能であるなど、一層実用性に優れた構成の柱脚金具となる。
【0021】
また、請求項4,5,6記載の発明においては、基礎上に突出するアンカーボルトを利用して金具本体を基礎に確実に連結固定することができ、しかも、この基礎から突出するアンカーボルトの螺子部を利用して柱を押し上げる押し上げ機構部を簡易に設計実現可能となるなど、一層実用性に優れた構成の柱脚金具となる。
【0022】
更に、請求項5,6記載の発明においては、アンカーボルトに確実に連結可能なアンカーボルト連結部を簡易構成により容易に設計実現可能となり、また、特に請求項6記載の発明においては、複数の回動体によって柱の底部を極めて安定的に支持できるなど、一層実用性に優れた構成の柱脚金具となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施例を基礎に連結固定しようとする状態を示す説明斜視図である。
【図2】本実施例を基礎に連結固定した後、回動体と座板体とを装着しようとする状態を示す説明斜視図である。
【図3】本実施例を基礎に連結固定して回動体と座板体とを装着した後、柱を上方から降ろしてホゾ部を柱のホゾ孔に挿入しようとする状態を示す説明斜視図である。
【図4】本実施例のホゾ部に、柱を連結した状態を示す説明斜視図である。
【図5】図4の部分拡大説明正面図である。
【図6】本実施例の、回動体を回動させて回動体が座板体を介して柱を押し上げる様子を示す部分拡大説明正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0025】
金具本体4を基礎1に対して連結固定し、柱13の底部のホゾ孔14に金具本体4のホゾ部5を挿入することで基礎1上若しくは基礎1上に設置された土台上に柱13を立設し、ホゾ部5の挿通孔6と柱13の係止孔15を連通させ、この連通させた挿通孔6と係止孔15とに柱13の側方から係止体16を挿通することでこのホゾ部5と柱13を連結すると、本柱脚金具を介して基礎1上若しくは基礎1上に設置された土台上に柱13が立設状態に連結固定されることになる。
【0026】
また、本発明は、ホゾ部5に連結した柱13を、押し上げ機構部7によりホゾ部5に対して上方へ押し上げることができる。
【0027】
すると、柱13が上方へ押し上げられることに伴って係止孔15に挿通した係止体16も上方へと移動することになり、例えばこの係止体16の上側外周面がホゾ部5の挿通孔6の上側孔縁に接触するまで柱13を押し上げると、係止体16と挿通孔6のガタつきが解消された状態になる。
【0028】
従って、例えば、挿通孔6の孔径寸法が既存の柱脚金具同様に係止体16の外径寸法より大きく設定されていて挿通孔6と係止体16とに隙間を生じる構成であったとしても、押し上げ機構部7で柱13を押し上げることによって係止体16の外周面を挿通孔6の孔縁に確実に接触させてこの部位のガタつきを解消することができる。
【0029】
即ち、本発明の柱脚金具によれば、柱13を引き寄せることと同等の機能が発揮されて、基礎1に対して柱13を位置精度良く連結することができると共に、柱13が基礎1に対して上方へ引き抜かれるような荷重を受けても、直ちにこの荷重に対する耐力を発揮する高強度の柱連結構造が実現することになる。
【0030】
また、例えば、前記押し上げ機構部7は、螺子部3に螺着して螺動上昇させる回動体8を設けて、この回動体8を回動させて螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記柱13を押し上げるように構成すれば、回動体8を回動操作するだけの簡単な操作によって柱13を押し上げることができる。
【0031】
また、例えば、前記押し上げ機構部7は、前記金具本体4の下部に設けて、この押し上げ機構部7が前記基礎1若しくは基礎1上に設置された土台と前記柱13との間に配設するように構成すると共に、この押し上げ機構部7は、螺子部3に螺着して螺動上昇させる回動体8と、前記柱13の底部を支承する座板体9とを設けて、この回動体8を回動させて螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記座板体9を介して柱13を押し上げるように構成すれば、柱13の底部は、座板体9によって安定的に支承されると共に、この座板体9を介して回動体8が柱13を押し上げるので、回動操作する回動体8によって柱13の底部が損傷することも防止されることになる。
【0032】
また、経年変化により柱13が収縮して柱13の底部と座板体9とに隙間を生じる可能性があるが、このような場合においても、回動体8を回動操作して座板体9を上昇することにより、隙間を解消することができる。
【0033】
また、例えば、前記金具本体4の下部に、前記基礎1上に突出するアンカーボルト2に連結可能なアンカーボルト連結部10を設けて、このアンカーボルト連結部10とアンカーボルト2を連結することで金具本体4を前記基礎1に連結固定し得るように構成し、前記押し上げ機構部7は、前記アンカーボルト連結部10と連結する前記アンカーボルト2の螺子部3に螺着する回動体8を設けて、この回動体8を回動させて前記螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記柱13を押し上げるように構成すれば、アンカーボルト連結部10を基礎1上に突出するアンカーボルト2に連結することによって金具本体4を基礎1に連結固定することができ、この基礎1から突出するアンカーボルト2の螺子部3に螺着した回動体8を回動操作することによって柱13を押し上げることができる。
【実施例】
【0034】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】
本実施例は、基礎1と柱13とを連結する柱脚金具であって、金具本体4の下部に、基礎1上に突出するアンカーボルト2に連結可能なアンカーボルト連結部10を設け、金具本体4の上部に、基礎1上に立設される柱13の底部に形成されたホゾ孔14に挿入可能なホゾ部5を設けている。
【0036】
具体的には、本実施例の金具本体4は、基礎1の上面若しくは基礎1の上面に設置された土台の上面に直接載置当接可能な長方形平板状の載置板部17の上面に、この載置板部17の板面と直交する方向に板面を有し且つ上下方向が長手方向となる長方形平板状の前記ホゾ部5を立設状態に突設した形状に構成している。
【0037】
また、本実施例のホゾ部5は、載置板部17より厚みのある板状体に形成すると共に、このホゾ部5の中ほどより上側の複数個所(図面では十箇所)に、このホゾ部5をその板厚方向に貫通する挿通孔6を形成すると共に、この複数の挿通孔6は、ホゾ部5を前記柱13のホゾ孔14に挿入した際に柱13に設けられた複数の係止孔15と連通する位置に形成している。
【0038】
一方、図示した柱13には、前記ホゾ部5の形状に対応した角孔状の前記ホゾ孔14を形成して、このホゾ孔14にホゾ部5を挿入すると、柱13と金具本体4の双方が回り止め状態となるように構成すると共に、この際に挿通孔6と係止孔15とが連通可能となるように、柱13に対する係止孔15の形成位置を設定構成している。
【0039】
また、この複数の挿通孔6は、その孔径寸法を、この挿通孔6に挿通させる係止体16としてのドリフトピン(以下、ドリフトピン16と称す。)の外径寸法よりもやや径大に設定して、この挿通孔6に対してドリフトピン16を抵抗なく挿通させることができるように構成している。
【0040】
従って、ホゾ部5をホゾ孔14に挿入した際に係止孔15と挿通孔6とを連通させることができ、この連通させた係止孔15と挿通孔6とに前記柱13の側方からドリフトピン16を挿通することでこのホゾ部5と柱13を連結し得るように構成している。図面では、連通させた係止孔15と挿通孔6との全てにドリフトピン16を挿通した場合を示したが、必要強度を確保できる最低限の本数のドリフトピン16を挿通するようにしても良い。
【0041】
尚、このホゾ部5は、本実施例で示した板状体以外にも、前記特許文献1のようなパイプ状体(ホゾパイプ)で構成しても良いし、他の形状に構成しても良い。
【0042】
また、本実施例のアンカーボルト連結部10は、前記アンカーボルト2が挿通される連結孔11を金具本体4下部の前記載置板部17の四隅部に夫々上下貫通状態にして設け、この複数の連結孔11の夫々に挿通して上方に突出させた各アンカーボルト2に、載置板部17の上方から六角ナット12を螺着することでアンカーボルト2(基礎1)と金具本体4とを連結可能な構成としている。図中符号18は座金である。
【0043】
一方、図示した基礎1には、前記アンカーボルト連結部10の四隅(四箇所)の連結孔11に対応させて柱13連結位置に複数本(図面では四本)のアンカーボルト2が突出するように構成している。
【0044】
従って、複数(四本)のアンカーボルト2に対して金具本体4を複数個所(四箇所)で確固に連結固定可能なアンカーボルト連結部10を構成している。
【0045】
本実施例は、前記係止孔15と前記挿通孔6とに前記ドリフトピン16を挿通して前記ホゾ部5と前記柱13を連結した際に、このホゾ部5に対して柱13を上方へ押し上げる押し上げ機構部7を備えている。
【0046】
具体的には、押し上げ機構部7は、前記金具本体4の下部に設けて、この押し上げ機構部7が前記基礎1若しくは基礎1上に設置された土台と前記柱13との間に配設するように構成すると共に、この押し上げ機構部7は、螺子部3に螺着して螺動上昇させる回動体8と、前記柱13の底部を支承する座板体9とを設けて、この回動体8を回動させて螺子部3に対し螺動上昇させることで、回動体8が前記座板体9を介して柱13を押し上げるように構成している。
【0047】
更に詳しくは、回動体8は、前記ナット12より長さ(高さ)のある六角ナットを採用して構成すると共に、この回動体8は、前記アンカーボルト連結部10の前記連結孔11から上方に突出させた複数のアンカーボルト2の、前記ナット12より先端側の螺子部3に夫々螺着する構成とし、この複数(図面では四個)の回動体8の高さを合わせて前記座板体9の下部を安定的に且つ高耐荷重性能をもって支持できる構成としている。
【0048】
また、座板体9は、前記載置板部17と同形状の長方形平板で構成して、この座板体9の上面で柱13の底部(底面)を安定的に載置支承し得るようにすると共に、この座板体9下面の複数個所(四隅部)を前記回動体8で支持するように構成し、更にこの座板体9の中心部には前記ホゾ部5の平面視形状と略合致する長方形状のガイド孔19を貫通形成し、このガイド孔19にホゾ部5を挿通することにより、ホゾ部5を昇降移動ガイドとしてこのホゾ部5に座板体9を昇降移動自在に装着し得るように構成している。
【0049】
従って、複数の回動体8をアンカーボルト2の螺子部3に対し回動させて昇降移動すると座板体9が昇降移動するように設けて、この各回動体8を螺子部3に対し螺動上昇させると各回動体8が前記座板体9を介して柱13を押し上げることになる構成としている。また、柱13は、経年変化により収縮して柱13の底部と座板体9とに隙間を生じる可能性があるが、このような場合においても、回動体8を回動操作して座板体9を上昇させることにより前記隙間を解消することができる構成としている。
【0050】
また、本実施例では、金具本体4を基礎1上に連結固定した際に、前記連結孔11から上方に突出する前記アンカーボルト2の先端部より上方位置で前記座板体9の下部を支持して座板体9の下降移動を阻止する座板支持部20を備えている。
【0051】
具体的には、前記載置板部17の上面の数箇所(図面では六箇所)に小板片21を立設状態に付設して、この複数の小板片21の上縁部で前記座板体9の下面を支持し得る前記座板支持部20を構成している。
【0052】
また、この座板支持部20を構成する前記小板片21は、夫々の高さを統一すると共に、夫々の上縁部を載置板部17の上面と平行となる形状に形成して、この各小板片21の上縁部に座板体9の下面を支持すると、座板体9が載置板部17と平行状態で支持され、且つ載置板部17との間に前記連結孔11から上方へ突出するアンカーボルト2先端部の螺子部3が配設可能な間隙部が形成されるように構成している。
【0053】
また、この座板支持部20に支持した座板体9に前記柱13を支承すると共に、柱13の底部のホゾ孔14に金具本体4のホゾ部5を挿入すると、ホゾ部5の挿通孔6と柱13の係止孔15とが丁度連通状態となるように、座板支持部20による座板体9の支持高さを設定構成している。
【0054】
従って、金具本体4に座板体9を装着して座板支持部20で支持し、柱13の底部のホゾ孔14に金具本体4のホゾ部5を挿入しつつこの座板体9上に柱13の底部を載置支承するだけで、挿通孔6と係止孔15が連通状態となってドリフトピン16を打ち込む準備が整うことになり、挿通孔6と係止孔15とを位置合わせして連通させる手間を要しない施工性に優れた構成としている。
【0055】
次に、このように構成した本実施例の柱脚金具の使用方法(基礎1と柱13の連結方法)を説明する。尚、図面は、基礎1上に直接柱13を立設する場合を示したが、基礎1上に土台を設置し、この土台上に柱13を立設する場合にも本実施例は使用可能である(土台上に柱13を立設する場合は、アンカーボルト2を土台を貫通させて上方へ突出させ、土台の上面に載置板部17を直接載置して本柱脚金具をアンカーボルト2に連結固定する。)。
【0056】
先ず、基礎1の上面から突出する四本のアンカーボルト2を、前記連結孔11に挿通して金具本体4の載置板部17を基礎1の上面に載置し、連結孔11から上方へ突出する各アンカーボルト2の螺子部3に載置板部17の上方からナット12を螺着して締め付けすることで基礎1上に金具本体4を連結固定する。
【0057】
次いで、各アンカーボルト2の先端側の螺子部3に回動体8を螺着し、この回動体8の上方に座板体9を装着して各回動体8で座板体9を支持した後、柱13の底部のホゾ孔14に金具本体4のホゾ部5を挿入すると共に座板体9上に柱13の底部を支承して基礎1上に柱13を立設する。
【0058】
次いで、挿通孔6に柱13の底部を支承することによって連通状態となるホゾ部5の挿通孔6と柱13の係止孔15とに、柱13の側方からドリフトピン16を打ち込んで挿通することでこのホゾ部5と柱13を連結する。
【0059】
次いで、各回動体8を回動操作してアンカーボルト2の螺子部3に対し螺動上昇させることで前記座板体9を介して柱13を押し上げ、柱13に挿通したドリフトピン16の上側外周面をホゾ部5の挿通孔6の上側孔縁に接触させると、ドリフトピン16と挿通孔とのガタつきが解消される。
【0060】
従って、本実施例の場合、挿通孔6の孔径寸法がドリフトピン16の外径寸法より大きく設定されているため、挿通孔6とドリフトピン16とに隙間を生じるが、この隙間によって生じる懸念のあるガタつきを、押し上げ機構部7で柱13を押し上げることによりドリフトピン16の上側外周面を挿通孔6の上側孔縁に当接させて解消することができるので、基礎1に対して柱13を位置精度良く連結することができると共に、柱13が基礎1に対して上方へ引き抜かれるような荷重を受けても、直ちにこの荷重に対する耐力を発揮することになる。
【0061】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0062】
1 基礎
2 アンカーボルト
3 螺子部
4 金具本体
5 ホゾ部
6 挿通孔
7 押し上げ機構部
8 回動体
9 座板体
10 アンカーボルト連結部
11 連結孔
12 ナット
13 柱
14 ホゾ孔
15 係止孔
16 係止体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎に対して連結固定可能な金具本体に、基礎上若しくは基礎上に設置された土台上に立設される柱の底部に形成されたホゾ孔に挿入可能なホゾ部を設け、このホゾ部に、このホゾ部を前記ホゾ孔に挿入した際に前記柱に設けられた係止孔と連通する挿通孔を設けて、連通させた係止孔と挿通孔とに前記柱の側方から係止体を挿通することでこのホゾ部と柱を連結し得るように構成した柱脚金具において、前記係止孔と前記挿通孔とに前記係止体を挿通して前記ホゾ部と前記柱を連結した際に、このホゾ部に対して柱を上方へ押し上げる押し上げ機構部を備えたことを特徴とする柱脚金具。
【請求項2】
前記押し上げ機構部は、螺子部に螺着して螺動上昇させる回動体を設けて、この回動体を回動させて螺子部に対し螺動上昇させることで、回動体が前記柱を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1記載の柱脚金具。
【請求項3】
前記押し上げ機構部は、前記金具本体の下部に設けて、この押し上げ機構部が前記基礎若しくは基礎上に設置された土台と前記柱との間に配設するように構成すると共に、この押し上げ機構部は、螺子部に螺着して螺動上昇させる回動体と、前記柱の底部を支承する座板体とを設けて、この回動体を回動させて螺子部に対し螺動上昇させることで、回動体が前記座板体を介して柱を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の柱脚金具。
【請求項4】
前記金具本体の下部に、前記基礎上に突出するアンカーボルトに連結可能なアンカーボルト連結部を設けて、このアンカーボルト連結部とアンカーボルトを連結することで金具本体を前記基礎に連結固定し得るように構成し、前記押し上げ機構部は、前記アンカーボルト連結部と連結する前記アンカーボルトの螺子部に螺着する回動体を設けて、この回動体を回動させて前記螺子部に対し螺動上昇させることで、回動体が前記柱を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の柱脚金具。
【請求項5】
前記金具本体の下部に、前記基礎上に突出するアンカーボルトに連結可能なアンカーボルト連結部を設け、このアンカーボルト連結部は、前記アンカーボルトが挿通される連結孔を金具本体の下部に設け、この連結孔に挿通して上方に突出させたアンカーボルトにナットを螺着することでアンカーボルトと連結可能な構成とし、前記押し上げ機構部は、前記アンカーボルト連結部の前記連結孔から上方に突出させた前記アンカーボルト先端の螺子部に螺着して前記柱の底部を支持する回動体を設け、この回動体を回動させて前記螺子部に対し螺動上昇させることで、回動体が前記柱を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の柱脚金具。
【請求項6】
前記金具本体の下部に、前記基礎上に突出するアンカーボルトに連結可能なアンカーボルト連結部を設け、このアンカーボルト連結部は、前記アンカーボルトが挿通される連結孔を前記金具本体の下部に複数設けて、この複数の連結孔の夫々に前記アンカーボルトを挿通し得るように構成し、この複数の連結孔に挿通して上方に突出させた複数のアンカーボルトの夫々にナットを螺着することでアンカーボルト連結部をアンカーボルトと連結可能な構成とし、前記押し上げ機構部は、複数の前記連結孔の夫々から上方に突出させた複数のアンカーボルト先端の螺子部に螺着して前記柱の底部を支持する回動体を設け、この複数の回動体を回動させて前記螺子部に対し螺動上昇させることで、複数の回動体が前記柱を押し上げるように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の柱脚金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−184565(P2012−184565A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47223(P2011−47223)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(596036692)株式会社タツミ (16)
【Fターム(参考)】