説明

椅子用の背板ユニット及び背もたれ

【課題】背板を袋体で覆った背もたれにおいて、袋体を背板にしっかりとしかも簡単に取付けできるようにする。
【手段】背板6はサイドメンバー16を有しており、サイドメンバー16は第1係合爪30と第2係合爪31との噛み合わせでサイドフレーム8に離反不能に保持されている。背板6の前面にはクッション材63が重なっている。クッション材63には第1サイド縁部材53が固定されている。表シート64の第1サイド縁部材53はサイドフレーム8とサイドメンバー16との間に外側から入り込んでおり、サイドメンバー16に形成したボス36に嵌め込まれている。裏シート65の第1サイド縁部材53は、サイドフレーム8とサイドメンバー16との間に内側からから入り込んでおり、ボス36に嵌まっている。サイド縁部材53がボス36に嵌まっていることにより、袋体66は左右方向及び上下方向にずれ不能に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、椅子用の背板ユニット及び背もたれに関する。
【背景技術】
【0002】
椅子の背もたれは背板の前面にクッション材を配置してこれをクロス等の表皮材で覆った構成になっていることが多い。表皮材はクッション材のみを覆う構造であることが多いが、表皮材を袋状に構成してこの袋状表皮材でクッション材と背板とをすっぽり覆う構成とすることも行われている。その例が本願出願の出願に係る特許文献1に開示されている。
【0003】
他方、椅子の背もたれとして、外周部を構成する強度メンバーとしてのバックフレームと、このバックフレームの前に配置された背板とを有する構成として、背板をバックフレームに取り付けたものがある。その一例が特許文献2に開示されている。
【0004】
すなわち特許文献1では、背板はバックフレーム(背凭れフレーム)との間に間隔を空けた状態で配置されており、バックフレームにおける左右縦フレームの上部前面に上向きに突出した軸部を一体に設ける一方、背板の左右側部の上部には縦フレームの軸部に上から嵌まる雌形の係合部を設け、更に、バックフレームのうち下寄り部位には平面視で前向きに開口のC字形溝を有する係合片を形成して、背板に設けた上下長手の軸体を係合片に押し込み装着するようになっている。従って、背板とバックフレームとの間には空間が空いており、背板はその全体が後ろに露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−152087号公報
【特許文献2】特開2008−119220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背板を袋状の表皮材で覆った場合、表皮材のずれ動きを阻止する必要がある。特許文献1では表皮材はリブや背面カバー等でずれ不能に保持されているが、例えば特許文献2の背板を袋状の表皮材で覆った場合は、表皮材は前面と背面が全体にわたって露出するため、何らかのずれ防止手段を講じないと表皮材がずれ動いてしまう虞がある。
【0007】
本願発明はこのような現状を改善すべく成されたものであり、袋体のずれ動きを確実に阻止すると共に背もたれの組み立ても容易ならめること等を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は背板ユニットと背もたれとを含んでいる。このたち背板1の発明は背板ユニットに係るもので、この発明は、背板を上向き開口又は下向き開口の袋体で包み込んでいる背板ユニットにおいて、前記袋体の左右側部は前記背板の左右側部に連結されて、前記袋体の開口縁部は前記背板の上端縁又は下端縁に連結されている。なお、本願発明でいう「連結」は、大凡、袋体をずれ不能に保持された状態に取付けるという意味であり、係止・係合のように引っ掛け方式はもとより、ビスによる締結のような固定・固着も含んでいる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の具体化したものであり、この発明は、前記袋体の左右側部は上下適宜範囲にわたって切り開かれており、このため袋体を構成する表裏シートは周方向に連続していない独立部を有しており、前記独立部は左右のサイド部と1つのエンド部とを有しており、前記表シートのサイド部は、前記背板の後面部に外側から回り込んでいてこれに外向き移動不能に連結されている一方、前記裏シートのサイド部は、前記背板の後面部に内側から入り込んでいてこれに内向き移動不能に連結されており、更に、前記表シートのエンド部は、前記背板の上縁部又は下縁部の背面部に後ろから回り込んでいてこれに連結されている一方、前記裏シートのエンド部は背板の上端縁又は下端縁の背面部に内側から入り込んでいてこれに内向き移動不能に連結されている。
【0010】
請求項3の発明は背板2の発明を更に具体化したもので、請求項2において、前記表裏シートのサイド部には帯状のサイド縁部材が固定されており、前記サイド縁部材を背板の背面に設けた係合部に引っ掛けている一方、前記表裏シートのエンド部にはそれぞれ左右長手のエンド縁部材が固定されており、前記縁部材を背板の上端縁又は下端縁の背面部に形成した横長溝に嵌め入れている。
【0011】
請求項4の発明は背もたれに係るものであり、この発明は、背もたれの外周部を構成して強度メンバーとして機能するバックフレームと、前記バックフレームの前面に重ねて配置した背板ユニットとを備えており、前記背板ユニットは請求項2又は3の構成になっている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、表皮材を構成する袋体はその左右側部と開口縁とが背板に連結されているため、袋体をずれ不能に保持することができる。従って、袋体の背面(後面)を全体的に露出させた場合であっても、袋体のずれを確実に阻止できる。
【0013】
袋体を背板に連結するに当たって、袋体の内面に背板に対する連結手段を講じることも可能ではあるが、これは現実にかなり厄介である。これに対して請求項2のように表裏シートに独立部を形成してこれを背板に連結する構成を採用すると、背板の左右側部に連結するための連結手段を簡単に講じることができる。
【0014】
表裏シートの独立部を背板に連結する(取り付ける)手段は様々な構成を採用できるが、請求項3のように縁部材を使用すると、簡単な構造で袋体を背板にしっかりと連結できる利点がある。
【0015】
また、請求項4の構成を採用すると、背板ユニットをバックフレームに重ねることで袋体の連結袋体を隠すことが可能になるため、本願発明の適用対象として特に好適であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係る椅子の外観図で、(A)は斜視図、(B)は側面図である。
【図2】椅子を上方から見た斜視図である。
【図3】(A)(B)とも分離斜視図である。
【図4】背板を裏返してバックフレームと並べた部分斜視図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】図5の部分的な拡大図である。
【図7】図4の上部の部分拡大図である。
【図8】(A)はバックフレームの部分的な拡大図、(B)は背もたれの部分的な平面図である。
【図9】背板の下側部の斜視図である。
【図10】(A)はメッシュ式表皮材の取付けを説明するための分離平面図、(B)はアッパーフレームの破断斜視図、(B)はロアフレームの破断斜視図である。
【図11】(A)は背板とメッシュ式表皮材との分離背面図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)は(A)のD−D視断面図、(E)は(A)のE−E視断面図である。
【図12】(A)はメッシュ式表皮材の張り状態を説明するための縦断側面図、(B)は背もたれを図8(A)のXIIB-XIIB 視箇所で切断した側断面図、(C)は背もたれを図8(A)の XIIC-XIIC視箇所で切断した側断面図である。
【図13】(A)は背もたれを図5の XIIIA-XIIIA視箇所で切断した平断面図、(B )は背もたれを図5の XIIIA-XIIIA視箇所で切断した平断面図、(C)は(A)は背も たれを図5の XIIIA-XIIIA視箇所で切断した平断面図である。
【図14】(A)は袋状表皮材でクッションを覆ったクッションユニットの概略正面図、(B)は(A)のB−B視断面図、(C)は(A)のC−C視断面図、(D)は(A)のD−D視断面図である。
【図15】クッションタイプの背もたれに関して図12と同様の図である。
【図16】クッションタイプの背もたれに関して図13と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、事務用に多用されている回転椅子に適用している。以下の説明では方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これは、椅子に普通に着座者した人を基準にして、着座者が向いた方向を前として定義している。正面視方向は着座者と相対向した方向であり、背面視方向は着座者を後ろから見た方向である。
【0018】
(1).概略
図1,2に示すように、椅子は、脚支柱(ガスシリンダ)1のみを表示した脚装置、脚支柱1の状態に固定したベース2、ベース2の上方に配置した座3、座3の後ろに配置された背もたれ4を有している。
【0019】
背もたれ4は、ベース2に後傾動可能に連結されたバックフレーム5と、体圧支持体の一例としてバックフレーム5の前面に取り付けた背板6(インナーシェル)とを強度メンバーとしており、図1(A)に示すように、背板6の前面に薄いシート状のメッシュ式表皮材7を張っている。
【0020】
図3に示すように、バックフレーム5は、その左右側部を構成する上下長手の左右サイドフレーム8と、左右サイドフレーム8の上端に繋がった横長のアッパーフレーム9と、左右サイドフレーム8の下端に繋がった左右長手のロアフレーム10とを有しており、全体として略四角形で前後に開口した枠状になっている。更に、左右サイドフレーム8の下端には、ベース2の左右外面に向けて前向きに延びるサイドアーム11が一体に形成されている。
【0021】
バックフレーム5はポリプロピレンのような合成樹脂を材料にした成形品を使用しているが、アルミダイキャスト品を採用することも可能である。また、例えばサイドアーム11を別部材にするなど、複数の部材で構成することも可能である。
【0022】
例えば図8に明示するように、バックフレーム5を構成するアッパーフレーム9はその左右側部だけに背板6が取り付くように平面視で大きく前向き開口した状態に形成されている。換言すると、バックフレーム5のアッパーフレーム9と背板6との間に横長の上空間13が空いている。従って、背板6の上部には後ろから視認できる上露出部6a(図2参照)が存在している。このため、人がバックフレーム5のアッパーフレーム9を掴むことができると共に、背板6の上端部が弾性変形することも可能になっている。
【0023】
図1(B)や図2に明示するように、バックフレーム5のサイドフレーム8は、着座者の腰よりやや高い位置の部分が最も前となるように側面視で前向き突形に屈曲している。換言するとバックフレーム5のサイドフレーム8は側面視でくの字形に屈曲しており、このためサイドフレーム8は頂点部14を有している。
【0024】
背板6は、バックフレーム5の頂点部14よりも下方の部位ではバックフレーム5に取り付いておらず片持ち梁の状態になっている。或いは、背板6のうちバックフレーム5の頂点部17よりも下方の部位はオーバーハングしている。従って、図1に示すように、背板6の下部は後ろからも視認できる下露出部6bになっている。
【0025】
また、図1に示すように、バックフレーム5のサイドフレーム8は、着座者が凭れ掛かっていないニュートラル状態で頂点部14よりも上の部分は後傾姿勢になって、頂点部14より下方の部分は前傾姿勢になっている。
【0026】
(2).背板及びバックフレーム
次に、背板6とバックフレーム5の構造を説明する。メッシュ式表皮材7の取付け構造は、背板6及びバックフレーム5の構造を説明してから述べる。
【0027】
背板6はポリプロピレンやナイロン樹脂のような合成樹脂製を材料にした成形品であり、図3に示すように、上下長手の左右のサイドメンバー16と、サイドメンバー16の上端間に一体に繋がったアッパーメンバー17と、左右サイドメンバー16の下端に一体に繋がったロアメンバー18とで略四角形の外形を構成し、更に、その内部には、左右サイドメンバー16に繋がった横長サポート板19が多段に配置されている。
【0028】
例えば図4に示すように、バックフレーム5におけるサイドフレーム8のうち背板6が重なる支持部は前向きに開口した溝形になっている。すなわち、サイドフレーム8の支持部にはその全長にわたって延びる縦長溝20が形成されている。アッパーフレーム9のうち背板6のアッパーメンバー17と重なる部分部も前向き開口の溝形になっている。
【0029】
他方、背板6の各メンバー16,17,18は後ろ向きに開口した溝形になっている。このため、バックフレーム5と背板6とで挟まれた部分は中空部になっている。換言すると、バックフレーム5と背板6とが重なり合うことで中空構造体が構成されている。
【0030】
そして、図13に示すように、サイドフレーム8とサイドメンバー16とは前後方向から重なっている。サイドフレーム8の背部21は平面視で外側に行くほど前に出るように緩く湾曲しており、これに内壁22と外壁23とを設けることで縦長溝20を形成している。サイドフレーム8の背部21は内壁22よりも内側にはみ出ている。背板6のサイドメンバー16前向き凹状に緩く湾曲しており、これに、サイドフレーム8の内壁22に向けて延びる内向きリブ24を形成することにより、後ろ向きに開口した浅い溝が形成されている。
【0031】
サイドフレーム8の内壁22とサイドメンバー16の内向きリブ24とには、互いに噛み合う内側段部25を形成している。このように内側段部25が互いに噛み合っていることにより、背板6は内向きずれ不能に保持されている。サイドフレーム8の内壁22と背板6の内側段部25との間にはスリット状の隙間が空いている。
【0032】
このため、表皮材の厚さが相違してもその厚さを吸収できる。また、サイドフレーム8の内壁22と背板6の内向きリブ24とがこすれ合って粉が発生する可能性があるが、仮に粉が発生しても粉は上記の隙間に溜まるため外部から視認できず、このため美感低下を防止できる。
【0033】
サイドフレーム8の内側段部25と背板6の内向きリブ24とは、表皮材7を介して当接するようになっている。このため背板6はサイドフレーム8に対する前後位置が正確に規定されている。
【0034】
サイドフレーム8の外壁23は細巾のリブ状になっていて背部22の外端よりも内側にずれて形成されており、このため、外壁23の外側には外側段部26が形成されている。サイドフレーム8の外壁23とサイドメンバー16との間には、若干の空間が空いている。
【0035】
例えば図4に示すように、背板6におけるサイドメンバー16の内面には、上下長手で板状の雄形嵌合部27が上下離れて3個形成されている。他方、サイドフレーム8の縦長溝20には、背板6の雄形嵌合部27を左右から挟む2枚のリブより成る雌形嵌合部28が3対形成されている。なお、サイドメンバー16に雌形嵌合部28を形成して、サイドフレーム8に雄形嵌合部27を形成してもよい。
【0036】
これら雌雄嵌合部27,28が嵌まり合うことにより、背板6はバックフレーム5に対して左右ずれ不能に保持されている。このため、ロッキングに際してサイドメンバー16がサイドフレーム8に対して内向きにずれ移動することはなく、また、サイドフレーム8とサイドメンバー16とが一体化したような状態になって、背もたれ4の全体の剛性が高くなっている。
【0037】
図4,5に示すように、背板6におけるサイドメンバー16の溝内には、側面視で下向き鉤形の第1係合爪30が上下に離反して2個形成されている一方、バックフレーム5のサイドフレーム8には、第1係合爪30と噛み合う上向き鉤形の第2係合爪31が上下に離反して2個形成されている。これら係合爪30,31 は請求項に記載した係合手段の具体例であり、これらの噛み合いにより、背板6はバックフレーム5に対して前向き移動不能に保持されている。
【0038】
例えば図5に示すように、サイドフレーム8のうち頂点部14の箇所には仕切り板32が形成されており、縦長溝20は仕切り板32で上下に分断された状態になっている。そして、縦長溝20のうち仕切り板32のすぐ上の箇所の内側面に、上面33aが側面視で上に行くほど前に傾斜した下ガイド部33を形成している一方、背板6におけるサイドメンバー16には、下ガイド部33と内壁22との間に入り込む下部突起34を形成し、下部突起34に、下ガイド部33の傾斜面に重なり合う横向きストッパー34aを設けている。
【0039】
背板6を、その上部がバックフレームから大きく離れるように手前に傾けることにより、横向きストッパー34aを下ガイド部33の内側に嵌め込むことができる。サイドメンバー16には、下部突起34に繋がった状態で上に延びる下部位置決め突起35を設けている。下部位置決め突起35は、サイドフレーム8における縦長溝20の底面に近接している(当接させてもよい。)。
【0040】
従って、下部位置決め突起35はサイドフレーム8とサイドメンバー16との前後位置及び左右位置を規制するストッパーの役目も果たしている。下部位置決め突起35は縦リブと多数の横リブとが交叉した形態を成しており、下部突起34と縦長溝20の内側面とには空間が空いている。
【0041】
例えば図4〜7に示すように、背板6のサイドメンバー16には、請求項に記載した係止手段として、ボス36が上下適宜間隔で複数個後ろ向き突設されている。ボス36は先端に行くほど外径が小さくなる台錘状に形成されている。他方、サイドフレーム8の縦長溝20には、サイドメンバー16のボス36が当接する受け部37を形成している(図13(B)も参照)。
【0042】
ボス36及び受け部37も、サイドフレーム8とサイドメンバー16との前後位置を規制する着せ手段の役目を果たしている。図11に示すように、ボス部36は、背板6のサイドフレーム8とアッパーフレーム9との連接箇所にも形成している。
【0043】
例えば図4から容易に理解できるように、縦長溝20はアッパーフレーム9の左右側部に形成した横長溝38に連続している。アッパーフレーム9には、上空間13の左右端面を構成する押さえ部39が形成されており、押さえ部39よりも外側に横長溝38が開口している。押さえ部39には前向きの補助リブ40が形成されており、更に、補助リブ40にサイドフレーム8の内壁22と連続する上係合片41が形成されており、上係合片41に上係合穴42が空いている。
【0044】
他方、背板6のアッパーメンバー17には、上係合穴42に上から嵌まり係合する上係合爪43が形成されている。また、アッパーメンバー17のうち上係合爪43の内側にはサイド仕切り板44が形成されている。サイド仕切り板44は、アッパーフレーム9における補助リブ40の外端部に載るように設定されている。サイド仕切り板44には、上係合爪43の上方に位置するストッパー片44aを設けている。
【0045】
図12(C)から理解できるように、ストッパー片44aはアッパーフレーム9の上面板9aに下方から当接可能になっている。
【0046】
図10(B)や図12(A)に示すように、アッパーメンバー17の前面は上に行くに従って後ろにずれるように湾曲しており、このアッパーメンバー17の背面には、3段のリブを形成することで上横溝45と下横溝46とが形成されている。図8に明示するように、上下の横溝45,46は左右サイド仕切り板44の間に形成されている。
【0047】
例えば図4から推測できるように、アッパーメンバー17のサイド仕切り板44はアッパーフレーム9における押さえ部39の外側面の箇所に位置している。従って、図15(B)にも示すように、アッパーメンバー17における上下横溝45,46の左右端部は押さえ部39の手前に位置している。
【0048】
図10(C)に示すように、背板6のロアメンバー18は後ろ向きに開口した断面略つ字形を成しており、上部内面には段部を形成している。また、左右中間部と左右両側部とには前後に開口した下係合穴47が形成されており、係合穴47の箇所に下突起48を上向き突設している。
【0049】
図9に示すように、背板6におけるサイドメンバー16のうち下部突起34よりも下方の部位(すなわち、サイドメンバー16の露出部16a)にも縦長溝が形成されており、この露出部16aの縦長溝に内向き鉤形の鉤形ボス50を突設している。また、露出部16aの縦長溝には支持リブ51を適宜間隔で複数形成している。
【0050】
背板6をバックフレーム5に取り付けるに当たっては、先に表皮材7を背板6に取り付けておき、それから背板6をバックフレーム5に取り付ける。背板6の取り付けは次の手順で行う。
【0051】
すなわち、まず、図5から理解できるように、背板6を手前に倒した姿勢にして下部突起34をサイドフレーム8の下ガイド部33の上に嵌め込み、そのまま下にずらすことで、横向きストッパー34aを下ガイド部33の傾斜面に当接させる。これにより、背板6はバックフレーム5に対して左右にずれない状態に保持される。
【0052】
次いで、背板6を、その下端部を支点にして後ろに倒して若干持ち上げ気味にしてバックフレーム5に押圧することによって雌雄嵌合部27,28を嵌め合わせ、それから背板6を下向きにずらすことにより、第1係合爪30と第2係合爪31とを噛み合わせる。
【0053】
第1係合爪30と第2係合爪31との噛み合わせは、背板6の上端を若干手前に起こした状態で行い、両係合爪30,31が噛み合い切るまでは、ストッパー片44aの先端はアッパーフレーム9の上面板9aに前から弾性に抗して当接している。
【0054】
そして、第1係合爪30と第2係合爪31とが噛み合い切ると、上係合爪43が上係合穴42に嵌まり込むと共に、ストッパー片44aがアッパーフレーム9における上面板9aの下方に入り込み(横長溝38に嵌まり込み)、これにより、背板6はバックフレーム5に対して上下左右及び前後にずれ不能に保持される。このように、ごく簡単な手順で背板6をバックフレーム5に取り付けることができる。
【0055】
なお、背板6の下ガイド部33をサイドフレーム8にセットしてから、背板6を、その下端を支点にして前に倒すことで背板6をバックフレーム5に押さえ込み、これによって係合爪30,31を噛み合わせることも可能である。両係合爪30,31の前面には互いの噛み合いを可能にする傾斜面を形成している。この方法を採用すると組み立ては一層簡単になる。
【0056】
(3).メッシュ式表皮材7の取付け構造
次に、参考としてメッシュ式表皮材7の取付構造を説明する。メッシュ式表皮材7はその外周に固定された縁部材(テープ)によって背板6に取付けられる。
【0057】
すなわち、図10,11に示すように、メッシュ式表皮材7には、サイドメンバー16のうち露出部16aの上方の部位に裏から重なる第1サイド縁部材53と、サイドメンバー16の下露出部16aに裏から重なる第2サイド縁部材54と、背板6の上部のコーナー部に裏から重なるコーナー縁部材55と、コーナー縁部材55の間においてアッパーメンバー17に裏から重なるアッパー縁部材56と、背板6のロアメンバー18に裏から重なるロア縁部材57とが逢着や接着によって固定されている。
【0058】
各縁部材はポリプロピレンのような樹脂シートを使用しているが、他の素材を使用することも可能である。コーナー縁部材55は第1サイド縁部材53に一体に連結することも可能である。また、サイド縁部材53,54とコーナー縁部材55とを一連のものを使用して、メッシュ式表皮材7に逢着してから切り込みを入れて独立化することも可能である。更に、縁部材は線材や紐材を使用したり、溝付き部材を使用するなど、様々の形態のも野を使用できる。
【0059】
第1サイド縁部材53にはサイドメンバー16のボス36に嵌まる第1取付け穴58が形成されており、図13に示すように、第1サイド縁部材53は外側からサイドメンバー16とサイドフレーム8との間に入り込んで、ボス36に嵌め込まれている。第1サイド縁部材53はサイドメンバー16に向いており、このため、外側からはメッシュ式表皮材7しか見えない。また、メッシュ式表皮材7にはアッパーフレーム9の外壁23が当接しており、このためサイドフレーム8の内部(縦長溝20)が見えることはない。このため美感に優れている。
【0060】
図10,11に示すように、第1サイド縁部材53には、サイドフレーム8とサイドメンバー16との連結部の邪魔にならないように切欠き59を形成している。
【0061】
第2サイド縁部材54は切欠きが存在しない帯状の形態を成しており、図9に部分的に示すように、背板6のサイドメンバー16における露出部16aには、内側段部16cと外側段部16dとが形成されており、第2サイド縁部材54は内側段部16cと外側段部16dとの間の空所に嵌め込まれおり、このためその巾方向にずれ不能に保持されている。第2サイド縁部材54も取付け穴58を有しており、これを鉤形ボス50に嵌め込んでいる。
【0062】
また、第2サイド縁部材54も取付け穴58を有しており、これを鉤形ボス50に嵌め込んでいる。
【0063】
コーナー縁部材55も、ボス36に嵌まることで抜け不能に保持されている。コーナー縁部材53は、背板6のコーナー部に合わせて斜め外向きに凸のカーブした外形を有するが、図11においてコーナー縁部材55は内向き凸の姿勢に表示している。裏側に折り返して背板6に取付けると外向きの凸の姿勢になる。コーナー縁部材55の内端部は細巾になっており、図12(C)に示すように、サイド仕切り板44に連接したストッパー片44aの上側に配置されている。
【0064】
図12(A)に示すように、アッパー縁部材56はアッパーメンバー17の上横溝45に後ろから嵌入している。アッパー縁部材56は上横溝45の上面に重なっており、従って、アッパー縁部材56が外に露出することはない。このため美感の問題はない。アッパー縁部材56の左右両端はサイド仕切り板44まで延びている。そして、図12(B)に示すように、アッパー縁部材56の左右端部はアッパーフレーム9に設けた押さえ部39で後ろ向き移動不能に保持されている。このため、アッパー縁部材56は上横溝45に嵌め込んだだけであっても抜け不能に保持されている。
【0065】
図12(B)に示すように、ロア縁部材57はロアメンバー18を後ろから塞ぐように配置されており、左右中間部と左右側部との3カ所に、ロアメンバー18の下係合穴47に嵌入するつ字形の係合爪61を形成しており、係合爪61を係合穴47の下突起48に前から引っ掛けている。これによってロア縁部材56はロアメンバー18に離脱不能に保持されている。
【0066】
(4).クッション材の取付け構造
次に、クッション材及び袋体の取付け構造を説明する。背板6にはクッション材を張ることも可能である。この点を図14〜図16で表示している。クッション材63は、クロス等からなる表裏シート64,65を有する袋体66に収納されている。袋体66は表皮材の一例である。背板6とクッション材63と袋体66とで背板ユニットが構成されている。
【0067】
図14から理解できるように袋体66は基本的には上向きに開口しており、バックフレーム5の頂点部14よりも上の部分では左右側部も切り開かれている。従って、袋体のうちバックフレーム5の頂点部14よりも上の部分で表裏シート64,65は独立部になっている。但し、「表裏シート64,65の独立部」は単に「表裏シート64,65」と称する。背板6の前面にクッション材63を張って、両者を袋体66ですっぽり覆っている。従って、裏シート65は背板6の裏側に位置しており、背板6は裏からは視認できない(透けて見えることは有り得るが。)。
【0068】
そして、表シート64のサイド部と裏シート65のサイド部とに第1サイド縁部材53を取付け、裏シート65のコーナー部にコーナー縁部材55を取付け、表裏シート64,65のエンド部(上端縁)にアッパー縁部材56取り付けている。上シート65にはコーナー縁部材55は取付けていないが、これに取り付けることも可能である。
【0069】
図16に示すように、表シート64に固定した第1サイド縁部材53はメッシュ式表皮材7の場合と同様の態様でボス36に嵌まっている。他方、裏シート65の第1サイド縁部材53は内側からサイドメンバー16に裏側に配置されてボス36に嵌まっている。従って、裏シート65の側部はサイドフレーム8と内壁22とサイドメンバー16の内リブ24とで挟まれている。
【0070】
図15に示すように、表シート64のアッパー縁部材56はメッシュ式表皮材7の場合と同様に上横溝45に嵌まっている一方、裏シート65のアッパー縁部材56は下横溝46に後ろから嵌まっている。そして、上下のアッパー縁部材56の左右端部は、アッパーフレーム9の押さえ部39で後ろ向き移動不能に保持されている。コーナー縁部材55はメッシュ式表皮材7の場合と同様にして配置されている。背板6の露出部6aは袋体66ですっぽり覆われているので、この箇所には縁部材のような取付け手段は必要ない。
【0071】
図16に示すように、クッション材63をサイドメンバー16の側縁まで回り込ませると、クッション材63の縁部がサイドフレーム8の外段部26に入り込み得る。このためクッション材63の縁部を美麗に処理できて美感をアップできる。
【0072】
(5).その他
本願発明は、上記の各実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば背板は単なる板状(シェル状)の形態であってもよい。体圧支持体は必ずしも背板ある必要はなく、例えば、前後に開口したフレーム材にメッシュ状のサポートシートを張った構造でもよい。
【0073】
係合手段としては係合爪と係合穴との組み合わせなど、様々の態様を選択できる。袋体を背板等の体圧支持体に保持する取付け部としては単なる鉤状やフック方式など、様々な方式を採用できる。クッション材を使用せずに、袋体のみで背板を覆う構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明は椅子に適用して有用性を発揮する。よって、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0075】
4 背もたれ
5 バックフレーム
6 背板ユニットを構成する背板
7 メッシュ式表皮材
8 サイドフレーム
9 アッパーフレーム
16 背板のサイドメンバー
17 背板のアッパーメンバー
20 中空部を構成する縦長溝
30,31 係合手段の一例としての係合爪
35 係止部を構成するボス
45 上横溝
46 下横溝
53〜57 縁部材
63 背板ユニットを構成するクッション材
64 表シート
65 裏シート
66 背板ユニットを構成する袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背板を上向き開口又は下向き開口の袋体で包み込んでおり、
前記袋体の左右側部は前記背板の左右側部に連結されて、前記袋体の開口縁部は前記背板の上端縁又は下端縁に連結されている、
椅子用の背板ユニット。
【請求項2】
前記袋体の左右側部は上下適宜範囲にわたって切り開かれており、このため袋体を構成する表裏シートは周方向に連続していない独立部を有しており、前記独立部は左右のサイド部と1つのエンド部とを有しており、
前記表シートのサイド部は、前記背板の後面部に外側から回り込んでいてこれに外向き移動不能に連結されている一方、前記裏シートのサイド部は、前記背板の後面部に内側から入り込んでいてこれに内向き移動不能に連結されており、
更に、前記表シートのエンド部は、前記背板の上縁部又は下縁部の背面部に後ろから回り込んでいてこれに連結されている一方、前記裏シートのエンド部は背板の上端縁又は下端縁の背面部に内側から入り込んでいてこれに内向き移動不能に連結されている、
請求項1に記載した椅子用の背板ユニット。
【請求項3】
前記表裏シートのサイド部には帯状のサイド縁部材が固定されており、前記サイド縁部材を背板の背面に設けた係合部に引っ掛けている一方、
前記表裏シートのエンド部にはそれぞれ左右長手のエンド縁部材が固定されており、前記縁部材を背板の上端縁又は下端縁の背面部に形成した横長溝に嵌め入れている、
背板2に記載した椅子用の背板ユニット。
【請求項4】
背もたれの外周部を構成して強度メンバーとして機能するバックフレームと、前記バックフレームの前面に重ねて配置した背板ユニットとを備えており、前記背板ユニットは請求項2又は3の構成になっている、
椅子の背もたれ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−92538(P2011−92538A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250797(P2009−250797)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】