椅子
【課題】従来よりも簡略な構成で、背凭れ2の傾動時の反力の自動調整機能を実現する。
【解決手段】背凭れ2が傾動したときにこの背凭れ2に反力を加える反力機構3と、座面下に配した流体ポンプ4と、座1を介して着座者の荷重を受けた流体ポンプ4から流出する流体圧力に応じて、反力機構3が背凭れ2に対し発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構5とを具備する椅子を構成した。
【解決手段】背凭れ2が傾動したときにこの背凭れ2に反力を加える反力機構3と、座面下に配した流体ポンプ4と、座1を介して着座者の荷重を受けた流体ポンプ4から流出する流体圧力に応じて、反力機構3が背凭れ2に対し発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構5とを具備する椅子を構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の体重に応じて背凭れの傾動時の反力を自動的に調整し得る椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
体重の大きい着座者に対し背凭れの傾動時の反力を増大させる椅子として、下記特許文献に開示されているようなものが既知である。この椅子は、座を着座者の体重に応じた分量だけ下降させるとともにその下降量に関連して作動する連動機構を有しており、反力を発生させるばね手段の弾性抵抗を連動機構を介して機械的に調整するものである。
【特許文献1】特開平05−184432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記例の如き椅子の連動機構は部品点数の増加を招き、連動機構の構成部材の形状、さらには連動機構それ自体も複雑化するきらいがあった。そして、機構の複雑化は、着座者の体重により機構各部に発生する摩擦の影響を増大させ、背凭れの円滑な傾動を妨げることにつながるのであった。
【0004】
以上に鑑みてなされた本発明は、より簡略な構成で、背凭れの傾動時の反力の自動調整機能を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するべく、本発明では、座と、前記座に対して傾動可能な背凭れと、前記背凭れが傾動したときにこの背凭れに反力を加える反力機構と、前記座の座面下に配した流体ポンプと、前記座を介して着座者の荷重を受けた前記流体ポンプから流出する流体圧力に応じて、傾動した背凭れに対して発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構とを具備する椅子を構成した。
【0006】
流体ポンプ、並びに流体ポンプが吐出する流体圧力を反力機構の近傍へと導く流路(パイプ、チューブ類の配管)は、上記例の椅子における連動機構と比べて簡便に実装可能であり、反力調整機構の簡略化に奏効する。
【0007】
前記流体ポンプは、例えば着座者の荷重を受けて容積が減るように変形し流体を吐出する流体袋であり、前記反力調整機構は、例えば一端が前記流体袋に接続され着座者の荷重を受けて流出する流体が通る配管と、前記配管の他端に接続され前記流体の圧力を受けて伸縮する伸縮装置とを有してなる。
【0008】
前記反力調整機構は、例えば前記流体圧力を利用して前記反力機構が前記背凭れに加える反力の作用点を変位させるものとする。この場合、反力機構が有する、反力を生む弾性部材を前記流体圧力を利用して移動させることにより、前記作用点と前記背凭れの回動中心との距離を変動させるのが簡便である。
【0009】
加えて、前記背凭れが起立位置にあるときに前記作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を許容し、背凭れが起立位置から傾動したときには作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を抑止する係止機構を、前記弾性部材と背凭れとの間に介設していれば、着座者の着座時にその着座者の体躯に合わせて好適な反力の大きさに調整でき、また、背凭れの傾動時に不意に反力が増減したりしない。
【0010】
あるいは、前前記反力機構が前記背凭れに加える反力の作用点を変位させる替わりに、前記流体圧力を利用して前記反力機構を支持する支持位置を変位させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも簡略な構成で、背凭れの傾動時の反力の自動調整機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<第1実施形態>本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図3に示すように、本実施形態の椅子は、座1と、座1に対して傾動可能である背凭れ2と、背凭れ2が傾動したときにこの背凭れ2に反力を加える反力機構3と、座1の座面下に配した流体ポンプ4と、座1を介して着座者の荷重を受けた流体ポンプ4から流出する流体圧力に応じて、反力機構3が発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構5とを具備する。
【0013】
座1は、座面を形作るクッション、張材等を座受11に取り付けたもので、脚6に支持させている。
【0014】
背凭れ2は、背凭れ面を形作るクッション、張材等を背支桿21に取り付けたもので、椅子の本体側、例えば座受11または脚6に傾動可能に軸支させる。
【0015】
反力機構3は、ガススプリング、コイルばね、板ばね、トーションバー等の弾性部材31を用いてなる。弾性部材31は、一端側が直接的に、または他の部材を介して間接的に背凭れ2に接している。弾性部材31の他端側は、椅子の本体側に可動に支持させる。弾性部材31は、着座者によって背凭れ2が傾動操作された際に弾性変形し、その弾性力を反力として背凭れ2に作用させる。図示例では、弾性部材31としてガススプリングを想定しており、その後端側に転動するローラ32を設けこのローラ32を介して背支桿21の下端部に接するようにし、かつ前端側を回動またはスライド可能に座受11に取り付けてある。
【0016】
流体ポンプ4は、着座者の荷重により変形し、流体、特に空気を吐出する流体袋である。尤も、空気以外の気体や、圧縮による体積変化の生じにくい水、油等の液体を用いることを妨げない。
【0017】
反力調整機構5は、反力機構3が背凭れ2に対して作用させる反力の作用点を変位させることで、反力の大きさを変動させる。反力調整機構5は、パイプ、チューブ等の配管52を介して流体ポンプ4に連通し、流体ポンプ4から吐出される流体圧力によって作動する伸縮装置たるアクチュエータ51を有する。アクチュエータ51は、例えば流体圧力によって進退動作するピストンを備えた流体圧シリンダ51である。しかして、そのピストンの進退動作が、背凭れ2に加える反力の作用点の変位を惹起する。本実施形態では、反力機構3の要素である弾性部材31を移動させることで作用点を変位させるようにしている。また、椅子の本体側とガススプリング31との間には、ガススプリング31及び作用点Fが元位置に復帰することを支援する補助弾性部材53を設けている。補助弾性部材53は、ガススプリング31及び作用点Fが元位置から変位するのに伴い弾性変形して弾性力を蓄え、その弾性力を以てガススプリング31を元位置の方に付勢する。
【0018】
背凭れ2を梃子に見立てると、傾動する背凭れ2の回動中心Cが支点、背凭れ面または背支桿21が背凭れ2の傾動操作の力点、背凭れ2と反力機構3との接点Fが作用点となる。着座者が着座1したとき、着座者の荷重を受けた流体ポンプ4は収縮して流体を吐出し、流体圧シリンダ51のピストンを駆動する。シリンダ51から突出するピストンは、補助弾性部材53の付勢力に抗してガススプリング等31を移動させ、その結果作用点Fが支点Cから遠ざかる方向に変位する。ポンプが吐出する流体圧力は着座者の体重が大きいほど増加し、ピストンの突出量、ひいては作用点Fが支点Cから遠ざかる変位量もまた着座者の体重が大きいほど増大する。図2は比較的体重の軽い着座者が着座した状態を示し、図3は比較的体重の重い着座者が着座した状態を示している。これにより、背凭れ2の傾動操作に対抗する反力が増減することとなる。
【0019】
着座者が席を立った暁には、収縮していた流体ポンプ4が膨張して流体を吸込み、ピストンがシリンダ51内に没入するとともにガススプリング等31及び反力の作用点Fが元位置に復帰する。図1はこの状態を示している。
【0020】
<第2実施形態>図4ないし図6に示すように、ガススプリング31の後端側と背凭れ2との間に係止機構7を設け、この係止機構7を介して反力を伝達するように構成することができる。係止機構7は、背凭れ2が所定の起立位置にあるときに作用点Fと支点Cとの距離の変動を許容し、背凭れ2が起立位置から傾動したときに作用点Fと支点Cとの距離の変動を抑止する役割を担う。
【0021】
係止機構7は、例えばガススプリング31の後端側に設けた係止軸72と、背支桿21の下端部に設けたラック状または内歯車状をなす係止部材71とを要素とする。係止軸72は、幅方向に延伸した略水平な軸で、軸端部でローラ33を軸支している。係止部材71は、支点Cから遠ざかる方向に延出し、係止軸72に臨む面に複数段の凹溝711を形成してある。係止軸72は、その何れかの段の凹溝711に選択的に係合することができる。凹溝711に係止軸72が係止した場合、そこが反力の作用点Fとなる。係止部材71の側方には、ローラ33が接触して転動ないし摺動することができる案内用のレール12を設けておく。これらレール12は、背凭れ2の傾動には追随させないよう、椅子の本体側に支持させる。
【0022】
背凭れ2が起立位置にあるとき、係止軸72は係止部材71の凹溝711から離反している。図4はこの状態を示しており、シリンダ51の伸縮を通じてガススプリング31が係止部材71に対し自由に移動することが許される。よって、着座者の体重に応じて作用点Fと支点Cとの距離が可変である。背凭れ2が起立位置から傾動すると、係止部材71が支点C回りに係止軸72に接近する方向に回動し、係止軸72が係止部材71における何れかの段の凹溝711に係合する。図5はこの状態を示しており、ガススプリング31が係止部材71に対し自由に移動することが禁じられる。よって、作用点Fと支点Cとの距離が不変となる。即ち、背凭れ2の後傾に伴い係止部材71の角度が変化するが、このとき係止部材71から操作力の作用を受けたガススプリング31の後端側が支点Cに近づく方向に移動してしまうのを防止できる。因みに、起立位置にある背凭れに初期反力を与える弾性部材(図示せず)を、ガススプリング31とは別に設けておくことが好ましい。
【0023】
<第3実施形態>図7ないし図11に示す実施形態では、まず、ガススプリング31の前端側が椅子の本体側に枢着しており、その後端側が上下に回動する。
【0024】
背支桿21の下端部には、ガススプリング31の後端部に存在するローラ34と接触する接触部22を設けている。接触部22は、側面視ガススプリング31の回動中心即ち前端を中心とした部分円弧状の接触面を有する。
【0025】
着座者が着座すると、流体ポンプ4からの流体がシリンダ51に流れ込み、シリンダ51からピストンが進出してガススプリング31の後端側を下方に押し下げる。従って、図8に示しているように、反力の作用点Fとなる、ローラ34と接触部22との接点が下方に変位する。接触部22の接触面が側面視部分円弧状をなしていることから、背凭れ2が起立位置にある段階でガススプリング31が回動してもその長さが伸縮することはないため、ガススプリング31の回動の際にガススプリング31が接触部22から受ける抵抗力は小さく(摩擦程度)、上下何れの方向にも容易に回動できる。無論、背凭れ2が傾動を開始すれば、ガススプリング31は支点C回りに回動する接触部22に押されて収縮する。
【0026】
但し、背凭れ2を倒し始める際に、不意にガススプリング31が回動して接触部22の接触面に沿って作用点Fがずれるおそれは否めない。このことに対して、本実施形態でも、ガススプリング31と背凭れ2との間に係止機構7を介設している。
【0027】
図9ないし図11に示すように、本実施形態の係止機構7は、背凭れ2に設けた流体袋73と、流体袋73に配管74を介して連通しているアクチュエータ75と、アクチュエータ75によって駆動する係止部材76と、ガススプリング31の後端側に設けた係止爪77とを要素とする。係止部材76は、背凭れ2の回動中心Cと略同心軸回りに回動可能であるように背支桿21に軸支させてあり、側面視接触部に相似した部分円弧状の概形をなす。係止部材76は、支点Cから遠ざかる方向に延出し、係止爪77に臨む面に複数段の凹溝761を形成してあるもので、やはり係止爪77はその何れかの段の凹溝761に選択的に係合することができる。
【0028】
着座者が背凭れ2に凭れていないとき、背凭れ2が起立位置にあり、流体袋73は荷重を受けておらず、係止部材76は係止爪77から離反している。図9はこの状態を示しており、シリンダ51の伸縮を通じてガススプリング31が係止部材76に対し自由に移動することが許される。よって、着座者の体重に応じて作用点Fと支点Cとの距離が可変である。着座者が背凭れ2に凭れかかると、荷重を受けた流体袋73が収縮して流体を吐出し、その流体圧力によりアクチュエータ75を駆動して、係止部材76を前方に変位させる。すると、係止部材76における何れかの段の凹溝761に係止爪77が係合する。図10はこの状態を示しており、ガススプリング31が係止部材76に対し自由に移動することが禁じられる。よって、作用点Fと支点Cとの距離が不変となる。図10の状態からさらに着座者が背凭れ2に荷重をかければ、係止爪77と凹溝761との係合を保ったまま、背凭れ2が起立位置から傾動する。逆に、着座者が背凭れ2に凭れることを止め、背中を背凭れ2から浮かせれば、背凭れ2が起立位置に復帰するとともに流体袋73が膨張して流体を吸込み、アクチュエータ75によって駆動されていた係止部材76が図9に示しているように後方に退避し、係止爪77と凹溝761との係合が解除される。因みに、係止爪77から離反する方向に係止部材76を押し戻すための弾性部材、例えば係止部材76の回動中心近傍に巻きばね(図示せず)を設けておくことが好ましい。
【0029】
<第4実施形態>図12に示す実施形態は、第2実施形態の変形であり、ガススプリング31の前端側(または、下端側)と背凭れ2との間に係止機構7を介設している。詳述すると、背支桿21は、支点Cから背凭れ面に向かって後上方に延伸しており、係止部材78は、支点Cからやや後方に偏倚した箇所に設けてある。第2実施形態と異なり、本実施形態では、係止部材78を椅子の本体側に支持させている。
【0030】
ガススプリング31は、その後端側(上端側)で背支桿21の中間部位に枢着している。ガススプリング31は、シリンダ51のピストンの進退動作によって、前端側(下端側)が前後(上下)に回動する。背支桿21とガススプリング31との間には、ガススプリング31及び作用点Fが元位置に復帰することを支援する補助弾性部材、例えばガススプリング31の回動中心近傍に巻きばね(図示せず)を設けている。
【0031】
背凭れ2の後傾時には、前端側の係止軸79が係止部材78に形成した何れかの段の凹溝781に係合し、係止部材78と背支桿21との間でガススプリング31が圧縮されて反力を発揮する。
【0032】
加えて、本実施形態では、ガススプリング31とは別に、背凭れ2に反力を加える弾性部材35をも設けている。この弾性部材35は、例えば周知の執務用椅子と同様、手動の反力調整機構を伴うコイルスプリングである。
【0033】
各実施形態によれば、座1と、前記座1に対して傾動可能な背凭れ2と、前記背凭れ2が傾動したときにこの背凭れ2に反力を加える反力機構3と、前記座1の座面下に配した流体ポンプ4と、前記座1を介して着座者の荷重を受けた前記流体ポンプ4から流出する流体圧力に応じて、前記反力機構3が傾動した背凭れ2に対して発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構5とを具備する椅子を構成したため、背凭れ2の傾動時の反力の自動調整機能を簡便に実現できる。
【0034】
前記流体ポンプ4が、着座者の荷重を受けて変形し流体を吐出する流体袋であり、前記反力調整機構5が、一端が前記流体袋4に接続され着座者の荷重を受けて流出する流体が通る配管52と、前記配管52の他端に接続され前記流体の圧力を受けて伸縮する伸縮装置51とを有してなり、前記反力機構3が前記背凭れ2に加える反力の作用点Fを変位させるものとしているため、機構の不必要な複雑化を招かない。
【0035】
加えて、前記背凭れ2が起立位置にあるときに前記作用点Fと背凭れ2の回動中心Cとの距離の変動を許容し、背凭れ2が起立位置から傾動したときには作用点Fと背凭れ2の回動中心Cとの距離の変動を抑止する係止機構7を介設しているため、着座者の着座時にその着座者の体躯に合わせて好適な反力の大きさに調整でき、また、背凭れ2の傾動時に不意に反力が増減したりしない。
【0036】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0037】
<第5実施形態>特に、反力調整機構5について、反力機構3が背凭れ2に及ぼす反力の作用点Fを変位させる替わりに、反力機構3の支持位置を変位させるものとしても構わない。例えば、図13ないし図15に示すように、反力機構3の要素であるガススプリング等の弾性部材31の一端側を背支桿21の下端部に回動可能に取り付け、かつ他端側を椅子の本体側、例えば座受11に、一端側を中心とした概略円弧状の軌跡に沿ってスライド可能であるように取り付けておく。
【0038】
本実施形態の反力調整機構5は、背凭れ2の傾動の中心Cと反力の作用点Fとを結ぶ線分に対する反力の作用方向、換言すればガススプリング等31の伸縮方向(弾性変形方向、反力の作用する方向)の角度Aを変化させることで、反力の大きさを変動させる。着座者が着座1したとき、着座者の荷重を受けた流体ポンプ4は収縮して流体を吐出し、流体圧シリンダ51のピストンを駆動する。シリンダ51から突出するピストンは、ガススプリング等31を移動させ、その結果前記線分とガススプリング等31の伸縮方向とがなす角度Aが拡がる(垂直に近づく)。ポンプが吐出する流体圧力は着座者の体重が大きいほど増加し、ピストンの突出量、ひいては角度Aもまた着座者の体重が大きいほど増大する。背凭れ2を同じ角度だけ傾倒させたときのガススプリング等31の変形量は、角度Aが大きい(垂直に近い)ほど大きくなる。図14は比較的体重の軽い着座者が着座した状態を示し、図15は比較的体重の重い着座者が着座した状態を示している。従って、背凭れ2を同じ角度だけ傾倒させたときにガススプリング等31が生み出す反力も大きくなる。このようにして、着座者の体重に応じた反力の自動調整を行うことができる。着座者が席を立った暁には、収縮していた流体ポンプ4が膨張して流体を吸込み、ピストンがシリンダ51内に没入するとともにガススプリング等31が元位置に復帰する。図13はこの状態を示している。
【0039】
<第6実施形態>あるいは、着座者の荷重を受けた流体ポンプ4から流出する流体圧力を、背凭れ2に直接作用させることも考えられる。例えば、図16に示すように、流体ポンプ4とアクチュエータ54とを配管55を介して接続し、流体ポンプ4が吐出する圧力をアクチュエータ54に供給する。そして、このアクチュエータ54を背支桿21の下端部に接続して、アクチュエータ54に流入する流体圧力を背凭れ2に反力として作用させるようにする。この例では、反力機構3として、弾性部材36を別途設けている。その上で、アクチュエータ54が、背凭れ2を起立方向に押し返す反力を加減する自動の反力調整機構5として機能する。弾性部材36に付随する手動の反力調整機構が着座者の好みに応じた反力調整を可能とするものであるのに対し、自動の反力調整機構5は着座者の体重に応じて自動的に反力の強弱を微調整するものである。
【0040】
さらに、反力機構の弾性部材がガススプリングやコイルばね等である場合において、反力調整機構がガススプリング等の端部のスプリングリテーナの位置を伸縮方向に沿って変位させ、これによりガススプリング等の初期収縮量、即ちプリロード力を変化させるようなことも考えられる。
【0041】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の椅子を模式的にした要部側面図。
【図2】同要部側面図。
【図3】同要部側面図。
【図4】本発明の一実施形態の椅子を模式的に示した側面図。
【図5】同要部側面図。
【図6】同要部斜視図。
【図7】本発明の一実施形態の椅子を模式的に示した側面図。
【図8】同要部側面図。
【図9】同要部斜視図。
【図10】同要部側面図。
【図11】同要部側面図。
【図12】本発明の一実施形態の椅子を模式的に示した側面図。
【図13】本発明の一実施形態の椅子を模式的にした要部側面図。
【図14】同要部側面図。
【図15】同要部側面図。
【図16】本発明の一実施形態の椅子を模式的にした要部側面図。
【符号の説明】
【0043】
1…座
2…背凭れ
3…反力機構
4…流体ポンプ
5…反力調整機構
7…係止機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、着座者の体重に応じて背凭れの傾動時の反力を自動的に調整し得る椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
体重の大きい着座者に対し背凭れの傾動時の反力を増大させる椅子として、下記特許文献に開示されているようなものが既知である。この椅子は、座を着座者の体重に応じた分量だけ下降させるとともにその下降量に関連して作動する連動機構を有しており、反力を発生させるばね手段の弾性抵抗を連動機構を介して機械的に調整するものである。
【特許文献1】特開平05−184432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記例の如き椅子の連動機構は部品点数の増加を招き、連動機構の構成部材の形状、さらには連動機構それ自体も複雑化するきらいがあった。そして、機構の複雑化は、着座者の体重により機構各部に発生する摩擦の影響を増大させ、背凭れの円滑な傾動を妨げることにつながるのであった。
【0004】
以上に鑑みてなされた本発明は、より簡略な構成で、背凭れの傾動時の反力の自動調整機能を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するべく、本発明では、座と、前記座に対して傾動可能な背凭れと、前記背凭れが傾動したときにこの背凭れに反力を加える反力機構と、前記座の座面下に配した流体ポンプと、前記座を介して着座者の荷重を受けた前記流体ポンプから流出する流体圧力に応じて、傾動した背凭れに対して発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構とを具備する椅子を構成した。
【0006】
流体ポンプ、並びに流体ポンプが吐出する流体圧力を反力機構の近傍へと導く流路(パイプ、チューブ類の配管)は、上記例の椅子における連動機構と比べて簡便に実装可能であり、反力調整機構の簡略化に奏効する。
【0007】
前記流体ポンプは、例えば着座者の荷重を受けて容積が減るように変形し流体を吐出する流体袋であり、前記反力調整機構は、例えば一端が前記流体袋に接続され着座者の荷重を受けて流出する流体が通る配管と、前記配管の他端に接続され前記流体の圧力を受けて伸縮する伸縮装置とを有してなる。
【0008】
前記反力調整機構は、例えば前記流体圧力を利用して前記反力機構が前記背凭れに加える反力の作用点を変位させるものとする。この場合、反力機構が有する、反力を生む弾性部材を前記流体圧力を利用して移動させることにより、前記作用点と前記背凭れの回動中心との距離を変動させるのが簡便である。
【0009】
加えて、前記背凭れが起立位置にあるときに前記作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を許容し、背凭れが起立位置から傾動したときには作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を抑止する係止機構を、前記弾性部材と背凭れとの間に介設していれば、着座者の着座時にその着座者の体躯に合わせて好適な反力の大きさに調整でき、また、背凭れの傾動時に不意に反力が増減したりしない。
【0010】
あるいは、前前記反力機構が前記背凭れに加える反力の作用点を変位させる替わりに、前記流体圧力を利用して前記反力機構を支持する支持位置を変位させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来よりも簡略な構成で、背凭れの傾動時の反力の自動調整機能を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<第1実施形態>本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。図1ないし図3に示すように、本実施形態の椅子は、座1と、座1に対して傾動可能である背凭れ2と、背凭れ2が傾動したときにこの背凭れ2に反力を加える反力機構3と、座1の座面下に配した流体ポンプ4と、座1を介して着座者の荷重を受けた流体ポンプ4から流出する流体圧力に応じて、反力機構3が発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構5とを具備する。
【0013】
座1は、座面を形作るクッション、張材等を座受11に取り付けたもので、脚6に支持させている。
【0014】
背凭れ2は、背凭れ面を形作るクッション、張材等を背支桿21に取り付けたもので、椅子の本体側、例えば座受11または脚6に傾動可能に軸支させる。
【0015】
反力機構3は、ガススプリング、コイルばね、板ばね、トーションバー等の弾性部材31を用いてなる。弾性部材31は、一端側が直接的に、または他の部材を介して間接的に背凭れ2に接している。弾性部材31の他端側は、椅子の本体側に可動に支持させる。弾性部材31は、着座者によって背凭れ2が傾動操作された際に弾性変形し、その弾性力を反力として背凭れ2に作用させる。図示例では、弾性部材31としてガススプリングを想定しており、その後端側に転動するローラ32を設けこのローラ32を介して背支桿21の下端部に接するようにし、かつ前端側を回動またはスライド可能に座受11に取り付けてある。
【0016】
流体ポンプ4は、着座者の荷重により変形し、流体、特に空気を吐出する流体袋である。尤も、空気以外の気体や、圧縮による体積変化の生じにくい水、油等の液体を用いることを妨げない。
【0017】
反力調整機構5は、反力機構3が背凭れ2に対して作用させる反力の作用点を変位させることで、反力の大きさを変動させる。反力調整機構5は、パイプ、チューブ等の配管52を介して流体ポンプ4に連通し、流体ポンプ4から吐出される流体圧力によって作動する伸縮装置たるアクチュエータ51を有する。アクチュエータ51は、例えば流体圧力によって進退動作するピストンを備えた流体圧シリンダ51である。しかして、そのピストンの進退動作が、背凭れ2に加える反力の作用点の変位を惹起する。本実施形態では、反力機構3の要素である弾性部材31を移動させることで作用点を変位させるようにしている。また、椅子の本体側とガススプリング31との間には、ガススプリング31及び作用点Fが元位置に復帰することを支援する補助弾性部材53を設けている。補助弾性部材53は、ガススプリング31及び作用点Fが元位置から変位するのに伴い弾性変形して弾性力を蓄え、その弾性力を以てガススプリング31を元位置の方に付勢する。
【0018】
背凭れ2を梃子に見立てると、傾動する背凭れ2の回動中心Cが支点、背凭れ面または背支桿21が背凭れ2の傾動操作の力点、背凭れ2と反力機構3との接点Fが作用点となる。着座者が着座1したとき、着座者の荷重を受けた流体ポンプ4は収縮して流体を吐出し、流体圧シリンダ51のピストンを駆動する。シリンダ51から突出するピストンは、補助弾性部材53の付勢力に抗してガススプリング等31を移動させ、その結果作用点Fが支点Cから遠ざかる方向に変位する。ポンプが吐出する流体圧力は着座者の体重が大きいほど増加し、ピストンの突出量、ひいては作用点Fが支点Cから遠ざかる変位量もまた着座者の体重が大きいほど増大する。図2は比較的体重の軽い着座者が着座した状態を示し、図3は比較的体重の重い着座者が着座した状態を示している。これにより、背凭れ2の傾動操作に対抗する反力が増減することとなる。
【0019】
着座者が席を立った暁には、収縮していた流体ポンプ4が膨張して流体を吸込み、ピストンがシリンダ51内に没入するとともにガススプリング等31及び反力の作用点Fが元位置に復帰する。図1はこの状態を示している。
【0020】
<第2実施形態>図4ないし図6に示すように、ガススプリング31の後端側と背凭れ2との間に係止機構7を設け、この係止機構7を介して反力を伝達するように構成することができる。係止機構7は、背凭れ2が所定の起立位置にあるときに作用点Fと支点Cとの距離の変動を許容し、背凭れ2が起立位置から傾動したときに作用点Fと支点Cとの距離の変動を抑止する役割を担う。
【0021】
係止機構7は、例えばガススプリング31の後端側に設けた係止軸72と、背支桿21の下端部に設けたラック状または内歯車状をなす係止部材71とを要素とする。係止軸72は、幅方向に延伸した略水平な軸で、軸端部でローラ33を軸支している。係止部材71は、支点Cから遠ざかる方向に延出し、係止軸72に臨む面に複数段の凹溝711を形成してある。係止軸72は、その何れかの段の凹溝711に選択的に係合することができる。凹溝711に係止軸72が係止した場合、そこが反力の作用点Fとなる。係止部材71の側方には、ローラ33が接触して転動ないし摺動することができる案内用のレール12を設けておく。これらレール12は、背凭れ2の傾動には追随させないよう、椅子の本体側に支持させる。
【0022】
背凭れ2が起立位置にあるとき、係止軸72は係止部材71の凹溝711から離反している。図4はこの状態を示しており、シリンダ51の伸縮を通じてガススプリング31が係止部材71に対し自由に移動することが許される。よって、着座者の体重に応じて作用点Fと支点Cとの距離が可変である。背凭れ2が起立位置から傾動すると、係止部材71が支点C回りに係止軸72に接近する方向に回動し、係止軸72が係止部材71における何れかの段の凹溝711に係合する。図5はこの状態を示しており、ガススプリング31が係止部材71に対し自由に移動することが禁じられる。よって、作用点Fと支点Cとの距離が不変となる。即ち、背凭れ2の後傾に伴い係止部材71の角度が変化するが、このとき係止部材71から操作力の作用を受けたガススプリング31の後端側が支点Cに近づく方向に移動してしまうのを防止できる。因みに、起立位置にある背凭れに初期反力を与える弾性部材(図示せず)を、ガススプリング31とは別に設けておくことが好ましい。
【0023】
<第3実施形態>図7ないし図11に示す実施形態では、まず、ガススプリング31の前端側が椅子の本体側に枢着しており、その後端側が上下に回動する。
【0024】
背支桿21の下端部には、ガススプリング31の後端部に存在するローラ34と接触する接触部22を設けている。接触部22は、側面視ガススプリング31の回動中心即ち前端を中心とした部分円弧状の接触面を有する。
【0025】
着座者が着座すると、流体ポンプ4からの流体がシリンダ51に流れ込み、シリンダ51からピストンが進出してガススプリング31の後端側を下方に押し下げる。従って、図8に示しているように、反力の作用点Fとなる、ローラ34と接触部22との接点が下方に変位する。接触部22の接触面が側面視部分円弧状をなしていることから、背凭れ2が起立位置にある段階でガススプリング31が回動してもその長さが伸縮することはないため、ガススプリング31の回動の際にガススプリング31が接触部22から受ける抵抗力は小さく(摩擦程度)、上下何れの方向にも容易に回動できる。無論、背凭れ2が傾動を開始すれば、ガススプリング31は支点C回りに回動する接触部22に押されて収縮する。
【0026】
但し、背凭れ2を倒し始める際に、不意にガススプリング31が回動して接触部22の接触面に沿って作用点Fがずれるおそれは否めない。このことに対して、本実施形態でも、ガススプリング31と背凭れ2との間に係止機構7を介設している。
【0027】
図9ないし図11に示すように、本実施形態の係止機構7は、背凭れ2に設けた流体袋73と、流体袋73に配管74を介して連通しているアクチュエータ75と、アクチュエータ75によって駆動する係止部材76と、ガススプリング31の後端側に設けた係止爪77とを要素とする。係止部材76は、背凭れ2の回動中心Cと略同心軸回りに回動可能であるように背支桿21に軸支させてあり、側面視接触部に相似した部分円弧状の概形をなす。係止部材76は、支点Cから遠ざかる方向に延出し、係止爪77に臨む面に複数段の凹溝761を形成してあるもので、やはり係止爪77はその何れかの段の凹溝761に選択的に係合することができる。
【0028】
着座者が背凭れ2に凭れていないとき、背凭れ2が起立位置にあり、流体袋73は荷重を受けておらず、係止部材76は係止爪77から離反している。図9はこの状態を示しており、シリンダ51の伸縮を通じてガススプリング31が係止部材76に対し自由に移動することが許される。よって、着座者の体重に応じて作用点Fと支点Cとの距離が可変である。着座者が背凭れ2に凭れかかると、荷重を受けた流体袋73が収縮して流体を吐出し、その流体圧力によりアクチュエータ75を駆動して、係止部材76を前方に変位させる。すると、係止部材76における何れかの段の凹溝761に係止爪77が係合する。図10はこの状態を示しており、ガススプリング31が係止部材76に対し自由に移動することが禁じられる。よって、作用点Fと支点Cとの距離が不変となる。図10の状態からさらに着座者が背凭れ2に荷重をかければ、係止爪77と凹溝761との係合を保ったまま、背凭れ2が起立位置から傾動する。逆に、着座者が背凭れ2に凭れることを止め、背中を背凭れ2から浮かせれば、背凭れ2が起立位置に復帰するとともに流体袋73が膨張して流体を吸込み、アクチュエータ75によって駆動されていた係止部材76が図9に示しているように後方に退避し、係止爪77と凹溝761との係合が解除される。因みに、係止爪77から離反する方向に係止部材76を押し戻すための弾性部材、例えば係止部材76の回動中心近傍に巻きばね(図示せず)を設けておくことが好ましい。
【0029】
<第4実施形態>図12に示す実施形態は、第2実施形態の変形であり、ガススプリング31の前端側(または、下端側)と背凭れ2との間に係止機構7を介設している。詳述すると、背支桿21は、支点Cから背凭れ面に向かって後上方に延伸しており、係止部材78は、支点Cからやや後方に偏倚した箇所に設けてある。第2実施形態と異なり、本実施形態では、係止部材78を椅子の本体側に支持させている。
【0030】
ガススプリング31は、その後端側(上端側)で背支桿21の中間部位に枢着している。ガススプリング31は、シリンダ51のピストンの進退動作によって、前端側(下端側)が前後(上下)に回動する。背支桿21とガススプリング31との間には、ガススプリング31及び作用点Fが元位置に復帰することを支援する補助弾性部材、例えばガススプリング31の回動中心近傍に巻きばね(図示せず)を設けている。
【0031】
背凭れ2の後傾時には、前端側の係止軸79が係止部材78に形成した何れかの段の凹溝781に係合し、係止部材78と背支桿21との間でガススプリング31が圧縮されて反力を発揮する。
【0032】
加えて、本実施形態では、ガススプリング31とは別に、背凭れ2に反力を加える弾性部材35をも設けている。この弾性部材35は、例えば周知の執務用椅子と同様、手動の反力調整機構を伴うコイルスプリングである。
【0033】
各実施形態によれば、座1と、前記座1に対して傾動可能な背凭れ2と、前記背凭れ2が傾動したときにこの背凭れ2に反力を加える反力機構3と、前記座1の座面下に配した流体ポンプ4と、前記座1を介して着座者の荷重を受けた前記流体ポンプ4から流出する流体圧力に応じて、前記反力機構3が傾動した背凭れ2に対して発揮する反力の大きさを変動させる反力調整機構5とを具備する椅子を構成したため、背凭れ2の傾動時の反力の自動調整機能を簡便に実現できる。
【0034】
前記流体ポンプ4が、着座者の荷重を受けて変形し流体を吐出する流体袋であり、前記反力調整機構5が、一端が前記流体袋4に接続され着座者の荷重を受けて流出する流体が通る配管52と、前記配管52の他端に接続され前記流体の圧力を受けて伸縮する伸縮装置51とを有してなり、前記反力機構3が前記背凭れ2に加える反力の作用点Fを変位させるものとしているため、機構の不必要な複雑化を招かない。
【0035】
加えて、前記背凭れ2が起立位置にあるときに前記作用点Fと背凭れ2の回動中心Cとの距離の変動を許容し、背凭れ2が起立位置から傾動したときには作用点Fと背凭れ2の回動中心Cとの距離の変動を抑止する係止機構7を介設しているため、着座者の着座時にその着座者の体躯に合わせて好適な反力の大きさに調整でき、また、背凭れ2の傾動時に不意に反力が増減したりしない。
【0036】
なお、本発明は以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0037】
<第5実施形態>特に、反力調整機構5について、反力機構3が背凭れ2に及ぼす反力の作用点Fを変位させる替わりに、反力機構3の支持位置を変位させるものとしても構わない。例えば、図13ないし図15に示すように、反力機構3の要素であるガススプリング等の弾性部材31の一端側を背支桿21の下端部に回動可能に取り付け、かつ他端側を椅子の本体側、例えば座受11に、一端側を中心とした概略円弧状の軌跡に沿ってスライド可能であるように取り付けておく。
【0038】
本実施形態の反力調整機構5は、背凭れ2の傾動の中心Cと反力の作用点Fとを結ぶ線分に対する反力の作用方向、換言すればガススプリング等31の伸縮方向(弾性変形方向、反力の作用する方向)の角度Aを変化させることで、反力の大きさを変動させる。着座者が着座1したとき、着座者の荷重を受けた流体ポンプ4は収縮して流体を吐出し、流体圧シリンダ51のピストンを駆動する。シリンダ51から突出するピストンは、ガススプリング等31を移動させ、その結果前記線分とガススプリング等31の伸縮方向とがなす角度Aが拡がる(垂直に近づく)。ポンプが吐出する流体圧力は着座者の体重が大きいほど増加し、ピストンの突出量、ひいては角度Aもまた着座者の体重が大きいほど増大する。背凭れ2を同じ角度だけ傾倒させたときのガススプリング等31の変形量は、角度Aが大きい(垂直に近い)ほど大きくなる。図14は比較的体重の軽い着座者が着座した状態を示し、図15は比較的体重の重い着座者が着座した状態を示している。従って、背凭れ2を同じ角度だけ傾倒させたときにガススプリング等31が生み出す反力も大きくなる。このようにして、着座者の体重に応じた反力の自動調整を行うことができる。着座者が席を立った暁には、収縮していた流体ポンプ4が膨張して流体を吸込み、ピストンがシリンダ51内に没入するとともにガススプリング等31が元位置に復帰する。図13はこの状態を示している。
【0039】
<第6実施形態>あるいは、着座者の荷重を受けた流体ポンプ4から流出する流体圧力を、背凭れ2に直接作用させることも考えられる。例えば、図16に示すように、流体ポンプ4とアクチュエータ54とを配管55を介して接続し、流体ポンプ4が吐出する圧力をアクチュエータ54に供給する。そして、このアクチュエータ54を背支桿21の下端部に接続して、アクチュエータ54に流入する流体圧力を背凭れ2に反力として作用させるようにする。この例では、反力機構3として、弾性部材36を別途設けている。その上で、アクチュエータ54が、背凭れ2を起立方向に押し返す反力を加減する自動の反力調整機構5として機能する。弾性部材36に付随する手動の反力調整機構が着座者の好みに応じた反力調整を可能とするものであるのに対し、自動の反力調整機構5は着座者の体重に応じて自動的に反力の強弱を微調整するものである。
【0040】
さらに、反力機構の弾性部材がガススプリングやコイルばね等である場合において、反力調整機構がガススプリング等の端部のスプリングリテーナの位置を伸縮方向に沿って変位させ、これによりガススプリング等の初期収縮量、即ちプリロード力を変化させるようなことも考えられる。
【0041】
その他各部の具体的構成は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態の椅子を模式的にした要部側面図。
【図2】同要部側面図。
【図3】同要部側面図。
【図4】本発明の一実施形態の椅子を模式的に示した側面図。
【図5】同要部側面図。
【図6】同要部斜視図。
【図7】本発明の一実施形態の椅子を模式的に示した側面図。
【図8】同要部側面図。
【図9】同要部斜視図。
【図10】同要部側面図。
【図11】同要部側面図。
【図12】本発明の一実施形態の椅子を模式的に示した側面図。
【図13】本発明の一実施形態の椅子を模式的にした要部側面図。
【図14】同要部側面図。
【図15】同要部側面図。
【図16】本発明の一実施形態の椅子を模式的にした要部側面図。
【符号の説明】
【0043】
1…座
2…背凭れ
3…反力機構
4…流体ポンプ
5…反力調整機構
7…係止機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座と、
前記座に対して傾動可能な背凭れと、
前記背凭れが傾動したときにこの背凭れに反力を加える反力機構と、
前記座の座面下に配した流体ポンプと、
前記座を介して着座者の荷重を受けた前記流体ポンプから流出する流体圧力に応じて、傾動した背凭れを起立方向に押し返す反力の大きさを変動させる反力調整機構と
を具備する椅子。
【請求項2】
前記流体ポンプは、着座者の荷重を受けて変形し流体を吐出する流体袋であり、
前記反力調整機構は、一端が前記流体袋に接続され着座者の荷重を受けて流出する流体が通る配管と、前記配管の他端に接続され前記流体の圧力を受けて伸縮する伸縮装置とを有してなる請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記背凭れの傾動の程度に対応した前記反力の大きさの変化の度合いを、着座者の荷重に応じて自動的に設定するものである請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記反力調整機構は、前記流体圧力を利用して前記反力機構が前記背凭れに加える反力の作用点を変位させるものである請求項1、2または3記載の椅子。
【請求項5】
前記反力機構は反力を生む弾性部材を有し、その弾性部材を前記流体圧力を利用して移動させることにより前記作用点と前記背凭れの回動中心との距離を変動させる請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記背凭れが起立位置にあるときに前記作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を許容し、背凭れが起立位置から傾動したときには作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を抑止する係止機構を、前記弾性部材と背凭れとの間に介設している請求項4または5記載の椅子。
【請求項7】
前記反力調整機構は、前記流体圧力を利用して前記反力機構を支持する支持位置を変位させるものである請求項1、2または3記載の椅子。
【請求項1】
座と、
前記座に対して傾動可能な背凭れと、
前記背凭れが傾動したときにこの背凭れに反力を加える反力機構と、
前記座の座面下に配した流体ポンプと、
前記座を介して着座者の荷重を受けた前記流体ポンプから流出する流体圧力に応じて、傾動した背凭れを起立方向に押し返す反力の大きさを変動させる反力調整機構と
を具備する椅子。
【請求項2】
前記流体ポンプは、着座者の荷重を受けて変形し流体を吐出する流体袋であり、
前記反力調整機構は、一端が前記流体袋に接続され着座者の荷重を受けて流出する流体が通る配管と、前記配管の他端に接続され前記流体の圧力を受けて伸縮する伸縮装置とを有してなる請求項1記載の椅子。
【請求項3】
前記背凭れの傾動の程度に対応した前記反力の大きさの変化の度合いを、着座者の荷重に応じて自動的に設定するものである請求項1または2記載の椅子。
【請求項4】
前記反力調整機構は、前記流体圧力を利用して前記反力機構が前記背凭れに加える反力の作用点を変位させるものである請求項1、2または3記載の椅子。
【請求項5】
前記反力機構は反力を生む弾性部材を有し、その弾性部材を前記流体圧力を利用して移動させることにより前記作用点と前記背凭れの回動中心との距離を変動させる請求項4記載の椅子。
【請求項6】
前記背凭れが起立位置にあるときに前記作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を許容し、背凭れが起立位置から傾動したときには作用点と背凭れの回動中心との距離の変動を抑止する係止機構を、前記弾性部材と背凭れとの間に介設している請求項4または5記載の椅子。
【請求項7】
前記反力調整機構は、前記流体圧力を利用して前記反力機構を支持する支持位置を変位させるものである請求項1、2または3記載の椅子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−82529(P2009−82529A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257139(P2007−257139)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【Fターム(参考)】
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