説明

椅子

【課題】椅子本体とそれを支持する支持体とを備えたロッキング動作可能な椅子において、着座者の脚の蹴り込み空間を広く確保でき、さらには任意のロッキング位置において椅子本体を確実に保持できるものを提供する。
【解決手段】椅子A1のロッキング機構X1に、そのロッキング機構X1の一部を拘束して椅子本体4を任意のロッキング位置で固定する固定手段6と、ロッキング機構X1の他の一部に背もたれ部41が起き上がる方向へ力を付与して椅子本体4を通常位置に復帰させる復帰手段7とを設け、これら固定手段6及び復帰手段7を支持体1と椅子本体4との間にそれぞれ配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロッキング動作可能な椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、背もたれ部及び座部からなる椅子本体をロッキング動作させるための機構を有する椅子において、背もたれ部及び座部をそれぞれ背支桿及び座受部に支持させるとともに、背支桿を支持体に回転可能に取り付け、座受部と支持体との間にリンク部材を設けて、これらで構成されるリンク機構からなるロッキング機構を有するものが知られている。このようなものでは、座部の下側において背支桿を支持体に対する取付部よりもさらに下方に延長した部位と支持体の他の部位との間に亘ってガススプリング等の機構部品を取り付け、そのガススプリングによって背支桿を拘束することで背支桿を任意のロッキング位置で固定するように構成しているのが通例である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このようなものであると、ガススプリング等を配置した箇所は通常、着座者の脚の蹴り込み空間に該当するため、着座者にとってはそのような機構部品が邪魔になったり危険であることがある。また、背支桿の支持体に対する取付部には、背支桿を起き上がらせる方向へ力を付与するための部材として例えば弾性力を付与するトーションバー等を配置している場合がある。しかしながらこのような構成では、一つの背支桿に対して起き上がる方向へ力を付与する構成とそれを拘束する構成の両方を配置することになるため、あるロッキング位置で背支桿を拘束しても、リンク機構を構成しているリンク部材や座受部におけるガタつきを十分に防止することができず緩みが生じることになり、リンク機構に対するオフセット力に対して弱くなって、そのロッキング位置に確実に椅子本体を保持しておくことが難しい。
【0004】
そこで本発明は、以上のような不具合に鑑みて、ロッキング機構を配置する箇所を改良工夫することで、まず着座者の脚の蹴り込み空間を広く確保でき、さらには任意のロッキング位置において椅子本体を確実に保持できる椅子を構成することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのために、本発明の椅子は、背もたれ部及び座部を備えた椅子本体と、背もたれ部を支持する背支桿及び座部を支持する座受部を介して椅子本体を支持する支持体と、椅子本体を通常位置と後傾位置との間でロッキングさせるためのロッキング機構とを具備してなるものにおいて、ロッキング機構に、該ロッキング機構の一部を拘束して椅子本体を任意のロッキング位置で固定する固定手段と、ロッキング機構の他の一部に背もたれ部が起き上がる方向へ力を付与して椅子本体を通常位置に復帰させる復帰手段とを設け、これら固定手段及び復帰手段を前記支持体と椅子本体との間にそれぞれ配置していることを特徴としている。
【0006】
このような構成のものであれば、ロッキング機構を構成する固定手段や復帰手段は、椅子本体と支持体との間に配置されるために、座部の下方において着座者の脚の蹴り込み空間を広く確保することができる。また、ロッキング機構において固定手段が作用する部位と復帰手段が作用する部位とは異なる部位であるため、ロッキング機構を例えばリンク機構から構成しても各部の緩みを小さくすることができ、オフセット力に強く椅子本体を適宜のロッキング位置で確実に保持できることにもなる。
【0007】
上記の作用を有効に発揮し得る具体的なロッキング機構の構成としては、支持体と座受部との間に接続部材を設け、背支桿を座受部の後端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付け、接続部材の両端部を座受部の前端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けて、ロッキング機構をこれら背支桿の一部と接続部材とをリンク要素として具備するリンク機構によって構成したものが挙げられる。
【0008】
このようなリンク機構における固定手段及び復帰手段を適切に配置するには、固定手段が一リンク要素を拘束して椅子本体を任意のロッキング位置で固定するとともに、復帰手段が他の一リンク要素に力を付与して椅子本体を通常位置に復帰させるように構成することが有効である。なお、固定手段によって「一リンク要素を拘束」したり、復帰手段によって「他の一リンク要素に力を付与」したりすることには、リンク要素に対して直接拘束したり力を付与することが含まれるのは勿論のこと、リンク要素を回転可能に支持する軸を介して間接的にリンク要素に対して拘束したり力を付与することも含まれる。より具体的に両手段が上述の作用を有効に奏し得るためには、固定手段を接続部材と支持体との間に配置し、復帰手段を背支桿と支持体との間に配置することが好ましい。特に固定手段を簡素な構成で確実に動作し得るものとするためには、両端部を接続部材及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けたガススプリングを適用することが望ましい。
【0009】
その他、上述のリンク機構からなるロッキング機構と同様に有効なロッキング機構を構成するものとしては、背支桿を座受部の後端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けるとともに、支持体に座受部の前端部を回転可能且つ相対移動可能に支持するガイド部を形成し、このガイド部に沿った座受部の移動に伴って椅子本体をロッキング動作させるロッキング機構を構成したものが挙げられる。
【0010】
この場合、容易な構成で接続部材が座受部と共に適切に動作させるためには、ガイド部を支持体に形成した前後方向に延びる長孔とすることが好ましい。
【0011】
さらに、固定手段と復帰手段とを上述の目的を達するべく適切に配置するためには、固定手段を支持体と座受部の支持体に対する取付部との間に配置し、復帰手段を背支桿と支持体との間に配置することが望ましい。この場合、固定手段を簡素な構成で確実に動作し得るものとするには、両端部を支持体と座受部の支持体に対する取付部とにそれぞれ回転可能に取り付けたガススプリングを適用することが有効となる。
【0012】
また、上記いずれのロッキング機構においても、適切なロッキング動作を奏し得る復帰手段としては、弾性変形により背支桿を椅子本体が復帰する方向へ弾性力を付与するものが望ましい。具体的に復帰手段として小さいスペースに配置でき動作の確実なものとしては、背支桿の支持体に対する取付部において、支持体に一部を固定するとともに他の一部に背支桿の下端部を固定して取り付けたトーションバーが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
【0014】
すなわち本発明のロッキング機構を有する椅子は、そのロッキング機構を、椅子本体と支持体との間に設けた固定手段によってロッキング機構の一部を拘束して椅子本体を任意のロッキング位置で固定し、さらに同じく椅子本体と支持体との間に設けた復帰手段によってロッキング機構の他の一部に背もたれ部が起き上がる方向へ力を付与して椅子本体を通常位置に復帰させるように構成したものである。
【0015】
そのため、固定手段や復帰手段の作用を損なうことなくそれらを椅子本体と支持体との間に配置できることとなり、座部の下方における着座者の脚の蹴り込み空間を広く確保することが可能である。さらに、固定手段が作用する部位と復帰手段が作用する部位とはロッキング機構内の異なる部位であるため、一部材に両手段を作用させていた従来の椅子と比べて、オフセット力に対する強度を向上でき、任意のロッキング位置での椅子本体の保持をガタつきが少なく確実なものとすることができる。
【0016】
具体的なロッキング機構の構成として、座受部の後端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けた背支桿の一部と、両端部を座受部の前端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けた接続部材とをリンク要素とするリンク機構によるものとしている場合には、簡単な構造のロッキング機構で所期の目的を達することができる。
【0017】
この場合、固定手段を背支桿又は接続部材のいずれかのリンク要素を拘束するものとして、復帰手段を他方のリンク要素に力を付与するものとすれば、両手段を上記の適切な位置に配置でき、ロッキング機構の異なる部位に対して適切に作用させることが可能である。より具体的には、固定手段を接続部材と支持体との間に、復帰手段を背支桿と支持体との間にそれぞれ配置すれば、そのような効果をより有効に実現することができる。特に固定手段に、両端部を接続部材及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けたガススプリングを適用することで、簡素な構成で確実な動作が期待できる固定手段を構成することができる。
【0018】
その他のロッキング機構の構成として、背支桿を座受部の後端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付け、更に座受部の前端部を支持体に回転可能に取り付けるとともに支持体に形成したガイド部に沿って移動し得るように構成している場合でも、リンク機構によるものと同様に簡単な構造で所期の目的を達することができる。
【0019】
この場合、ガイド部として支持体に前後方向に延びる長孔を形成すれば、座受部を容易且つ適切に前後にスライド移動させることができる。
【0020】
さらに、固定部材を支持体と座受部の支持体への取付部との間に配置し、復帰手段を背支桿と支持体との間に配置すれば、脚の蹴り込み空間を確実に広くできるだけでなく、リンク機構によるロッキング機能の場合よりも少ない部品点数にも拘わらず、簡素な構成で椅子本体を任意のロッキング位置に固定することが可能である。このような固定手段として、ガススプリングを適用すれば、簡素な構成で確実な動作を期することができる。
【0021】
また、上記いずれのロッキング機構においても、復帰手段として弾性変形により背支桿を椅子本体が復帰する方向へ弾性力を付与するものとした場合には、ロッキング機構が適度なロッキング強さを備えるものとすることができ、ロッキング動作の適正化を図ることができる。このような復帰手段として、背支桿の支持体に対する取付部において、支持体に一部を固定するとともに他の一部に背支桿の下端部を固定して取り付けたトーションバーを適用すれば、小さいスペースにもトーションバーを配置できるので構造の簡素化を図りつつ、確実なロッキング動作を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態を側面視状態で概略的に示す作用説明図。
【図2】本発明の第2の実施形態を側面視状態で概略的に示す作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
(第1の実施形態)
図1に概略的に示す本実施形態に係る椅子A1は、床面に接地するキャスタ81を備えた脚部8に支持された支持体1と、支持体1に取り付けた背支桿2及び座受部3と、これら背支桿2及び座受部3にそれぞれ支持されたクッション性を有する背もたれ部41及び座部42からなる椅子本体4とを具備するものであり、支持体1と椅子本体4との間に形成されるロッキング機構X1によって椅子本体4をロッキング動作し得るように構成したものである。なお、脚部8及び椅子本体4については格別特徴を有するものではないため説明を省略する。
【0025】
以下、具体的に説明すると、支持体1は、一対の側板11間を上方に開口したもので、下端部1bを脚部の上端に回転可能に取り付けるとともに、上端部1aに向けて下端部1bから前上方に傾斜させている。その下端部1bからやや上方の部位には、背支桿2の下端部2aを回転可能に取り付けるとともに、上端部1aには側板11間に亘って設けたピン52を介して接続部材5を回転可能に取り付けている。
【0026】
背支桿2は、座部42の後方で側面視L字型に屈曲させたもので、図示しない上端部を上方に向けてさらに延ばしており、その前面側に背もたれ部41を取り付けている。しかして、支持体1の側板11間に亘って固定した図示しないパイプ部材の内部に弾性変形可能なトーションバー7(図面上、網掛けを附した部分)挿入したうえでその両端部をパイプ部材の両端部に固定し、更にトーションバー7の端部から内側に偏位した位置に背支桿2の下端部2aを固定しており、このトーションバー7を捻りながら背支桿2が回転動作するようにしている。なお、このトーションバー7は、同図に実線で示す通常位置側へ復帰する方向、すなわち背もたれ部41を起き上がらせる方向へ背支桿2に対して弾性力を付与しており、本実施形態における復帰手段を構成するものである。なお、このような態様に限らず、トーションバーは、その中央部を支持体に固定するとともに端部を背支桿の下端部に固定したり、一端部を支持体に固定するとともに他端部を背支桿の下端部に固定するなどの態様によっても、同様の作用を奏する。
【0027】
また、接続部材5の上端部5aは、ピン51を介して座受部3の前端部3aに回転可能に取り付けており、さらにその座受部3の後端部3bを背支桿2の座部42よりも下方における中間高さ位置にピン31を介して回転可能に取り付けている。このようにして、本実施形態では、接続部材5と背支桿2の下端部2aからピン31までの範囲をそれぞれリンク要素とするリンク機構からなるロッキング機構X1を構成している。そして、このロッキング機構X1の可動範囲内において、任意のロッキング位置でリンク要素の動きを固定するための固定手段として、支持体2と接続部材5との間にガススプリング6を配置している。このガススプリング6は、シャフト61とこのシャフト61を突没可能に収容したシリンダ62とを備え、任意の突出長さでシャフト61の突没をロックできる通常のものであり、上方に位置づけたシリンダ62側の上端部6aを接続部材の中間高さ位置に回転可能に取り付けるとともに、シャフト61側となる下端部6bを支持体1の前記トーションバー7を設けた部位よりもやや上方位置に回転可能に取り付けている。なお、シリンダ62の上端部6aの取付位置は、接続部材5を回転可能に支持するピン52よりも上方であればよく、例えば接続部材5の上端部5aを回転可能に支持するピン51と同軸上でも構わない。
【0028】
次に、本実施形態の椅子A1におけるロッキング動作について説明すると、図1に実線で示す通常位置において着座者が座部42に腰掛けるとともに背もたれ部41にもたれ掛けて、椅子本体4に対して後方へ荷重を掛けると、図中矢印で示すように椅子本体4が背支桿2及び座受部3ごと後下方へ移動する。その際、トーションバー7は支持体1と背支桿2との間で捻られて弾性力を蓄えることになる。また同時に、ガススプリング6も後方へ回転しながらそのシャフト61をシリンダ62内に没入させてシリンダ62内の空気を圧縮するように動作する。そして、椅子本体2と背支桿2及び座受部3は、最終的には同図に想像線で示す後傾位置まで移動する。その間、適宜のロッキング位置でガススプリング6のシャフト61をロックすると、接続部材5の回転動作が拘束されることになる結果、ロッキング機構の動きが停止し、その位置で椅子本体4を固定することができる。逆に、前記後傾位置を含む適宜のロッキング位置において、椅子本体4に掛けた荷重を外すとともに、ガススプリング6のシャフト61に対するロックを解除するとシリンダ62内の空気が膨張してシャフト61が突出するとともに、トーションバー7に蓄えられた弾性復帰力が作用して、椅子本体4が通常位置へと復帰することになる。
【0029】
以上のような構成からなる本実施形態の椅子A1によれば、椅子本体4をロッキング動作させるロッキング機構X1の機構部品、具体的には椅子本体4を任意のロッキング位置で固定する固定手段たるガススプリング6と、椅子本体4を通常位置に復帰させるための力を背支桿2に付与する復帰手段たるトーションバー7とを、支持体1と椅子本体4との間に配置しているため、座部4の下側において支持体1よりも下方となる着座者の脚の蹴り込み空間には上記機構部品が何ら存在せず、その蹴り込み空間を広く確保して椅子A1の使用感や安全性を向上することができる。また、ガススプリング6は接続部材5に対して作用し、トーションバー7は背支桿2に対して作用しているため、一部材に対して固定手段と復帰手段とを作用させる構成の従来のものと比べてロッキング機構X1にガタつきが少なくなり、オフセット力に対する強度も向上して椅子本体4を適宜のロッキング位置で確実に保持することもできる。
【0030】
特に、ロッキング機構X1は、支持体1と座受部3とを接続する接続部材5、及び背支桿2の一部をそれぞれリンク要素とするリンク機構からなるものとしているため、簡素な構造にして椅子本体4を確実にロッキング動作させることができる。さらには上記のようにガススプリング6及びトーションバー7を配置することで、リンク機構のガタつきを極力防止することが可能である。また、固定手段としてガススプリング6を適用し、復帰手段としてトーションバー7を適用しているため、極めて簡素な構造で、上述のロッキング動作を容易に実現することもできる。
【0031】
なお、本実施形態においては、ガススプリングを支持体と背支桿との間に配置し、トーションバーを接続部材の支持体又は座受部に対する取付部に設けても、上記と同様の効果を得ることができるなど、種々変更が可能である。
【0032】
(第2の実施形態)
図2に原理図として示す本実施形態に係る椅子A2も、前記第1の実施形態と同様に、キャスタ181を備えた脚部180に支持された支持体110、背支桿120及び座受部130、背もたれ部141及び座部142からなる椅子本体140を具備し、支持体110と椅子本体140との間に形成されるロッキング機構X2によって椅子本体140をロッキング動作し得るように構成したものである。なお、支持体110の下端部110bからやや上方位置に背支桿120の下端部120aを復帰手段として適用したトーションバー170を介して回転可能に接続している点、及び、背支桿120の中間高さ位置に座受部130の後端部130bをピン131を介して回転可能に取り付けている点は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0033】
以下、第1の実施形態と異なる点について具体的に説明する。支持体110の側板111における上端部110aには、座受部130の支持体110に対する移動を案内するためのガイド部として、側方に開口し部分円弧状をなす長孔112を形成しており、左右の長孔112間に亘って支持させたピン132に座受部130の前端部130aを回転可能に取り付けている。このピン132には、前記と同様のガススプリング160の上端部160aを回転可能に取り付けており、さらにガススプリング160の下端部160bを支持体110におけるトーションバー170の取付箇所よりもやや上方位置に回転可能に取り付けている。このようにして、本実施形態におけるロッキング機構X2を構成している。
【0034】
しかして、本実施形態の椅子A2におけるロッキング動作について説明すると、図2に実線で示す通常位置において着座者が椅子本体140に対して後方へ荷重を掛けると、図中矢印で示すように椅子本体140が背支桿120及び座受部130と共に後下方へ移動する。その際、トーションバー170は支持体110と背支桿120との間で捻られて弾性力を蓄える。また同時に、座受部130の前端部130aにおけるピン132が長孔112に沿って後方へ移動するのに伴って、ガススプリング160も後方へ回転しながらそのシャフト161をシリンダ162内に没入させてシリンダ162内の空気を圧縮するように動作する。そして、同図に想像線で示す後傾位置まで移動する間において、適宜のロッキング位置でガススプリング160のシャフト161をロックすると、ピン132の移動が拘束される結果、ロッキング機構の動きが停止し、その位置で椅子本体140を固定することができる。逆に、前記後傾位置を含む適宜のロッキング位置において、椅子本体140に掛けた荷重を外すとともに、ガススプリング160のロックを解除するとシリンダ62内の空気が膨張してシャフト161が突出するとともに、トーションバー170に蓄えられた弾性復帰力が作用して、椅子本体140が通常位置へと復帰することになる。
【0035】
したがって、このような構成からなる本実施形態の椅子A2であっても、ロッキング機構X2の機構部品である固定手段たるガススプリング160と、復帰手段たるトーションバー170とを、支持体110と椅子本体140との間に配置しているため、前記第1の実施形態と同様に、着座者の脚の蹴り込み空間には上記機構部品が何ら存在しないことになり、その蹴り込み空間を広く確保して椅子A2の使用感や安全性を向上することができる。また、ガススプリング6は座受部130に対して作用し、トーションバー170は背支桿120に対して作用しているため、ロッキング機構X2のガタつきを少なくでき、オフセット力に対する強度も向上して椅子本体140を適宜のロッキング位置で確実に保持することもできる。
【0036】
特に、ロッキング機構X2として、背支桿120の支持体110に対する回転動作に伴って、座受部130が支持体110に設けたガイド部に案内されて移動するように構成しているため、少ない部品点数で有効なロッキング機構X2を構成することができる。そのうえガイド部は、支持体110に設けた長孔112であって、この長孔112に沿って座受部130を支持体110に支持させているピン132がスライド移動するようにしているため、座受部130の移動のための構成を極めて簡素にすることができる。
【0037】
しかもその際、支持体110と座受部130の支持体110に対する取付部となるピン132との間に、固定手段としてガススプリング160を設けているため、ピン132の動きを容易に拘束して、椅子本体140の適宜のロッキング位置での固定を容易なものとすることができる。また、固定手段としてガススプリング160を適用し、復帰手段としてトーションバー170を適用しているため、極めて簡素な構造で、上述のロッキング動作を容易に実現することもできる。
【0038】
なお、固定手段及び復帰手段としてはガススプリングやトーションバー以外の適宜のものを適用することができ、それらを支持体と椅子本体との間におけるロッキング機構の異なる部位にそれぞれ作用させるように構成したものであれば、本発明は上述の各実施形態に限らず、適宜の構成を採用することができる。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
A1、A2…椅子
X1、X2…ロッキング機構
1、110…支持体
2、120…背支桿
3、130…座受部
4、140…椅子本体
5…接続部材
6、160…固定手段(ガススプリング)
7、170…復帰手段(トーションバー)
132…長孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれ部及び座部を備えた椅子本体と、背もたれ部を支持する背支桿及び座部を支持する座受部を介して椅子本体を支持する支持体と、椅子本体を通常位置と後傾位置との間でロッキングさせるためのロッキング機構とを具備してなるものにおいて、
ロッキング機構に、該ロッキング機構の一部を拘束して椅子本体を任意のロッキング位置で固定する固定手段と、ロッキング機構の他の一部に背もたれ部が起き上がる方向へ力を付与して椅子本体を通常位置に復帰させる復帰手段とを設け、これら固定手段及び復帰手段を前記支持体と椅子本体との間にそれぞれ配置していることを特徴とする椅子。
【請求項2】
支持体と座受部との間に接続部材を設けるとともに、背支桿を座受部の後端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付け、接続部材の両端部を座受部の前端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けて、ロッキング機構をこれら背支桿の一部と接続部材とをリンク要素として具備するリンク機構によって構成していることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項3】
固定手段が一リンク要素を拘束して椅子本体を任意のロッキング位置で固定するとともに、復帰手段が他の一リンク要素に力を付与して椅子本体を通常位置に復帰させるように構成していることを特徴とする請求項2記載の椅子。
【請求項4】
固定手段を接続部材と支持体との間に配置し、復帰手段を背支桿と支持体との間に配置していることを特徴とする請求項3記載の椅子。
【請求項5】
固定手段が、両端部を接続部材及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けたガススプリングであることを特徴とする請求項4記載の椅子。
【請求項6】
背支桿を座受部の後端部及び支持体にそれぞれ回転可能に取り付けるとともに、支持体に座受部の前端部を回転可能且つ相対移動可能に支持するガイド部を形成し、このガイド部に沿った座受部の移動に伴って椅子本体をロッキング動作させるロッキング機構を構成していることを特徴とする請求項1記載の椅子。
【請求項7】
ガイド部が、支持体に形成した前後方向に延びる長孔であることを特徴とする請求項6記載の椅子。
【請求項8】
固定手段を支持体と座受部の支持体に対する取付部との間に配置し、復帰手段を背支桿と支持体との間に配置していることを特徴とする請求項7記載の椅子。
【請求項9】
固定手段を、両端部を支持体と座受部の支持体に対する取付部とにそれぞれ回転可能に取り付けたガススプリングから構成していることを特徴とする請求項8記載の椅子。
【請求項10】
復帰手段が、弾性変形により背支桿を椅子本体が復帰する方向へ弾性力を付与するものであることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の椅子。
【請求項11】
復帰手段が、背支桿の支持体に対する取付部において、支持体に一部を固定するとともに他の一部に背支桿の下端部を固定して取り付けたトーションバーであることを特徴とする請求項10記載の椅子。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−69326(P2010−69326A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297476(P2009−297476)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【分割の表示】特願2000−315747(P2000−315747)の分割
【原出願日】平成12年10月16日(2000.10.16)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)
【出願人】(000108627)タカノ株式会社 (250)
【Fターム(参考)】