説明

植付機

【課題】被覆材に種球に適した開孔部を形成して、当該開孔部から圃場に種球を的確に植付けることができる植付機を提供することを目的とする。
【解決手段】走行部14と、種球Gを植付ける植付部17と、前記走行部14と前記植付部17に動力伝達機構16を介して駆動する駆動部13とを有し、種球Gの植付けを行う植付機1であって、前記植付部17は、側面視多角形状の頂部位置にそれぞれ設けられる回転支持部に回転支持される左右一対の無端体3と、前記左右の無端体3・3間に複数架設され、種球Gを保持するとともに圃場面に被覆した被覆材10に開孔部を形成する保持開孔手段20と、保持開孔手段20による開孔部に、当該保持開孔手段20に保持された種球Gを押付けて圃場に植付ける押出装置4とを備え、前記走行部14の走行速度と、前記植付部17の無端体3の回転速度とが同調するように、前記動力伝達機構16を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付機に関し、特に種球をマルチフィルム等の被覆材により被覆された圃場に植付ける技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニンニク等の種球は、適切な植付け姿勢で植付けを行わなければ、発芽不良や生育不良等を起因とする収量の減少及び等級の低下等に繋がっていた。よって、高品質の作物を収穫するには、種球の手植えをせざるを得なかった。
しかし、種球を商品作物として栽培する場合、作付面積の拡大等により、手作業では作業者に大きな負担が掛かっていた。そのため、種球を圃場に植付ける数々の植付機が提示されている。
マルチシートを被覆された圃場に、カッターで構成された開孔手段を用いて、開孔部を形成する手段は、様々な作物の苗の植付技術として公知になっている。しかし、種球を対象とする場合、苗を挟持することが困難であるため以下のような植付機が提示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す植付機は、ニンニク等の種球を植付けるための植付機であって、孔あけ手段、座乗手段、及び覆土手段より構成される。孔あけ手段は、ガスバーナで作業開始前に加熱されて、畝に被覆されたマルチフィルムに接触すると瞬間的に植付孔を開け、次いで畝の土中内に突入して、植付孔を形成させる。この植付機が用いられる場合、座乗手段に着座した作業者によって、植付孔に種球が植付されて、その後マルチフィルムの上面から覆土手段によって覆土される。
特許文献1の植付機では、孔あけ手段の熱によってマルチシートの一部が溶かされて、開孔部が形成されるため、種球に適した開孔部が形成しづらかった。また、種球を植付けるために形成された植付孔に人が直接種球を植付けるため作業効率が低かった。また、株間変更手段を有さずに圃場等の条件に合せた種球の株間の変更を行うことは、容易ではなかった。
【0004】
マルチシートに種球に適した開孔部を形成するとともに、当該開孔部に種球を的確に植付けることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−289805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の状況に鑑み、被覆材に種球に適した開孔部を形成して、当該開孔部から圃場に種球を的確に植付けることができる植付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、走行部と、当該走行部の前方に昇降可能に配置して、種球を植付ける植付部と、前記走行部および前記植付部に動力伝達機構を介して駆動力を付与する駆動部と、を有し、走行しながら走行方向に所定間隔をおいて種球の植付けを行う植付機であって、前記植付部は、左右の植付フレームにおける、側面視多角形状の頂部位置にそれぞれ設けられる回転支持部に回転支持される左右一対の無端体と、前記左右の無端体間に複数架設され、種球を保持するとともに圃場面に被覆した被覆材に開孔部を形成する保持開孔手段と前記保持開孔手段が最下部の植付位置を通過するとき、前記保持開孔手段による開孔部に、当該保持開孔手段に保持された種球を押付けて圃場に植付ける押出装置と、を備えるとともに、前記走行部の走行速度と、前記植付部の無端体の回転速度とが同調するように、前記動力伝達機構を構成したものである。
【0009】
請求項2においては、前記回転支持部は、上部位置と前後の上下中途部位置と前後の下部位置に設けられ、前記下部位置の後側回転支持部に、前記駆動部から駆動力が伝達されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、被覆材に開孔部を形成する時に、被覆材に過剰な張力が発生せず、被覆材に開孔された開孔部の収縮を防止することができる。よって、開孔部を種球に適した状態に保持でき、的確に種球を植付けることができ、被覆材による種球の発育阻害を防止することができる。
【0012】
請求項2においては、前後の下部位置の回転支持部の間が植付位置となり、後側の回転支持部で無端体が駆動されることになり、無端体の弛みによる、押出装置と無端体との不用なロック状態を回避し、種球の押し込み損じを防止することができ、植付けを的確に行うことが可能となる。また、負荷のかかり易い植付位置周囲の支持部材への負荷を軽減することができ、植付フレームの変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る植付機の構成を示す後方斜視図。
【図2】同じく植付機の全体的な構成を示す側面図。
【図3】動力伝達機構の構成を模式的に示す平面図。
【図4】植付部における動力伝達機構を示す側面図。
【図5】同じく部分正面図。
【図6】同じく回転支持部及び植付装置の一部の構成を示す側面図。
【図7】調節孔と回動アームの回動直径を示す正面図、(a)回動直径が最長の状態、(b)回動直径が中間の状態、(c)回動直径が最短の状態。
【図8】保持開孔手段の構成を示した斜視図。
【図9】植付部における植付押出部を示す側面図。
【図10】同じく植付装置の構成を示す正面図。
【図11】駆動部の様態を示す側面図、(a)待機位置での状態の図、(b)待機位置から植付位置への移行途中の状態の図、(c)植付位置での状態の図、(d)植付位置から待機位置に戻る途中の状態の図。
【図12】植付押出体の構成を示す中央横断面図。
【図13】保持開孔手段とガイド部との当接の状態を示す部分側面図。(a)支持軸がガイド板開口部の前端に位置している場合の図。(b)支持軸がガイド板開口部の中途部に位置している場合の図。(c)支持軸がガイド板開口部の後端に位置している場合の図。
【図14】左側の係合部の構成を示す側面図。
【図15】左側の係合部の状態を示す側面図、(a)上方から上部係合部材と係止部材が当接した状態の図、(b)植付押出体の植付ロッドのみが停止した状態の図。
【図16】左側の係合部の状態を示す側面図、(a)上部係合部材が係止部材を押し下げた状態の図、(b)係止部材が元の位置に戻った状態の図。
【図17】左側の係合部の状態を示す側面図、(a)下方から上部係合部材と係止部材が当接した状態の図、(b)植付押出体の植付ロッドのみが停止した状態の図。
【図18】左側の係合部の状態を示す側面図、(a)上部係合部材が係止部材を押し上げた状態の図、(b)植付押出体が係止部材から上昇した状態の図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、畝上にマルチシートを被覆した状態での植付と想定して説明するが、これに特に限定するものではなく、マルチシートを被覆していない略平坦な圃場に植付する場合としてもよい。
【0015】
以下では、図1から図3を参照して、植付機1の全体的な構成について説明する。
説明において、図中に示した矢印Aの方向を植付機1の前方向として、前後左右方向を規定するものとする。
【0016】
植付機1は、マルチシート10を被覆した畝に、種球Gを植付するために使用される植付機である。
植付機1は、主として機体フレーム12、駆動部13、走行部14、運転操作部15、動力伝達機構16、植付部17等を備える。
【0017】
機体フレーム12は、植付機1の骨格を成す構造体であって、上下方向に延設される左右複数の支柱フレームと、該支柱フレームに横設され前後方向に延設される左右の複数の前後フレームと、該前後フレームの間に左右方向に横設される左右フレームとを連結固定して構成される。機体フレーム12の前後略中央には、作業者が植付機1に乗り降りするためのステップ12aが形成される。ステップ12aの左右中央には動力伝達機構16や、植付部17を昇降させ植付面(圃場)と植付部17との距離を適正な高さに保つための昇降リンク機構2等が配置される。昇降リンク機構2は、その上方を前後方向に配置される保護ケース155によって覆われる。
【0018】
走行部14は、左右一対のクローラ140・140等で構成され、駆動部13からの動力がミッションケース141を介して伝達されることによって、植付機1を走行可能とするものである。
【0019】
前記駆動部13は、動力源であるエンジン131や発電機132等で構成され、走行部14と植付部17に動力を伝達して各部を駆動させるためのものである。駆動部13は、機体フレーム12の後部上に搭載され、機体フレーム12前部に連結される植付部17と前後方向の重量バランスが取れるように配置される。駆動部13の上方には、種球Gが収納されたカゴ153等を載せる載置部154が配設される。
【0020】
運転操作部15は、機体フレーム12の前後中央部に配設され、走行部14や植付部17の操縦が行われる。運転操作部15は、作業者が着座する座席151・151、走行部14及び植付部17の操縦を行うための複数の操作レバー等を配置した操作コラム152等で構成される。
【0021】
座席151は、エンジン131前方で機体フレーム12上に左右に並置される。操作コラム152は、座席151の周囲近傍に配置されるが、本実施形態では機体右外側の座席151の右斜め前方に配置される。操作コラム152の操作レバー等の操作によって走行部14への動力の断接や変速操作、及び、植付部17への動力の断接操作ができるように構成される。
【0022】
操作コラム152は、箱状に形成される。操作コラム152の上面に、作業クラッチレバー、走行クラッチレバー、サイドクラッチレバー、植付高さ自動調整スイッチ、走行方向自動調整スイッチが配置される。操作コラム152の後面には、エンジン停止スイッチ、植付昇降スイッチ、植付部駆動スイッチ等が配置される。植付機1の走行速度を変速させる走行変速レバーは、本実施形態において、右座席151の下右側面に配置される。
【0023】
図1、図2及び図4に示すように、植付部17は、圃場に種球Gを植付けるため、植付機1の前部に配置される。本実施形態における植付部17は、各種植付装置等を植付フレーム18及びその内部に配置して構成される。
【0024】
前記植付フレーム18は、植付部17の骨格を成す構造体であって、機体フレーム12の後部から昇降リンク機構2を介して、機体フレーム12の前方に配設される。
主植付フレーム19は、パイプ等の棒材を側面視において後下部が開放される多角形に屈曲することで形成され、左右の機体幅より若干短い間隔をおいて、左右一対となるように配置される。
詳細には、主植付フレーム19は、その一端が植付部17の後部の上下中途部に位置するように形成される。主植付フレーム19の後端から前上方に向けて、前高後低となるように後傾斜部19aが形成される。さらに植付部17の上部では、水平部19bが形成される。水平部19bの前部からは、前上部が前低後高となるように前上傾斜部19cが形成される。前上傾斜部19cの下部から植付部中央に向けて前高後低となるように前下傾斜部19dが形成される。そして、主植付フレーム19の他端は、植付部17の前下部に位置するように形成される。
【0025】
左右の主植付フレーム19・19には、上下方向及び前後方向に側部植付フレーム19fが配置される。左右の主植付フレーム19・19間には、横植付フレーム19e・19eが横設される。
このように構成することで、植付フレーム18は内部に空間が形成され、その空間内に各種植付装置が配置可能となる。さらに主植付フレーム19・19は、その左右外側をカバー171によって覆われる。主植付フレーム19・19の両内側には、無端体カバー172が内方に突出するように配置される。
【0026】
また、図1に示すように、前記主植付フレーム19・19の後部間には補給ボックス170が架設されている。当該補給ボックス170は、植付部17の保持開孔手段20に挿入される種球Gが挿入前に一時的に収容される容器である。作業者は補給ボックス170内の種球Gを手で取り出して、保持開孔手段20に挿入する。補給ボックス170は、植付部17の左右幅よりも若干短く、その上方を開放した樋状に形成される。この補給ボックス170の左右両側部が主植付フレーム19の後傾斜部19aの後内側、及び無端体カバー172の後端に固設される。なお、補給ボックス170は左右連通した構成としているため、左右一側の作業者の前方で種球Gがなくなった場合には、左右他側の補給ボックス170内の種球Gを一側へ容易に移動させて、種球Gの補充を行うことができる。そして、補給ボックス170内の種球Gがなくなれば、種球Gは座席151の後方のカゴ153から補給ボックス170に補給することが可能である。
【0027】
図1から図3に示すように、動力伝達機構16は、エンジン131の駆動力を走行部14及び植付部17へ伝達するものである。動力伝達機構16は、本実施形態ではベルトとプーリ、チェーンとスプロケット、伝動軸、ギヤ等で構成しているが、限定するものではない。
【0028】
具体的には、機体の後部に配置されたエンジン(駆動源)131からは、機体内方へと出力軸160が突出される。出力軸160上には、第一エンジンプーリ161及び第二エンジンプーリ162が固定される。
エンジン131前方の発電機132からは、前記出力軸160と平行な入力軸163が機体内方へと突出される。入力軸163の端部にはジェネレータプーリ164が固定される。ジェネレータプーリ164と第二エンジンプーリ162には、無端ベルト165が巻回される。よって、エンジン131からの回転力(駆動力)は、第二エンジンプーリ162、ジェネレータプーリ164及び無端ベルト165を介して発電機132へと伝達され、発電に利用される。
【0029】
一方、座席151下方の機体フレーム12に、伝動軸166が左右方向に回動自在に支持される。第一プーリ167は、第一エンジンプーリ161の前方となるように、伝動軸166上に固設される。第一エンジンプーリ161と第一プーリ167には、無端のベルト168が巻回される。
【0030】
伝動軸166の右端には、動力を走行部14へ伝達する第一走行プーリ260が固設される。伝動軸166の左端には、動力を植付部17へ伝達する第一植付プーリ360が固設される。エンジン131の駆動力は、伝動軸166を介して、第一走行プーリ260及び第一植付プーリ360に伝達される。
【0031】
以下に走行部14への駆動力の伝達について説明する。
ミッションケース141は、クローラ140・140の左右中途部かつ上部に配置される。ミッションケース141から突出した入力軸261には、第一走行プーリ260の直下となるように第二走行プーリ262が固設される。第一走行プーリ260と第二走行プーリ262には、無端のベルト263に巻回される。
従って、伝動軸166の動力は、第一走行プーリ260からベルト263を介して、第二走行プーリ262へと伝達され、入力軸261を介してミッションケース141へと伝達される。
【0032】
ミッションケース141の後部(図3においては作図の便宜上、前後を逆に記載)には、出力軸264・264が外方に突出するように配置される。出力軸264・264の外端には、走行駆動スプロケット265・265が固設される。走行駆動スプロケット265・265の下方(図3においては作図の便宜上、前方に記載)には走行駆動軸に固設した走行伝動スプロケット266・266が配置される。走行駆動スプロケット265・265と走行伝動スプロケット266・266には、無端の伝動チェーン267・267が巻回される。前記走行駆動軸の他端には走行部14のクローラ140・140を回転駆動する走行輪268・268が固設されている。
【0033】
従って、入力軸261を介してミッションケース141に伝達された動力は、ミッションケース141内で変速された後、左右の出力軸264・264及び走行駆動スプロケット265・265へ伝達される。さらに動力が伝動チェーン267・267を介して走行輪268・268へ伝達されることで、走行部14のクローラ140・140は走行駆動される。
【0034】
次に、植付部17への駆動力の伝達を図3から図5を用いて説明する。
前記伝動軸166の前方には、後ギヤケース361が配置される。後ギヤケース361は機体略中央の機体フレーム12に支持される。
後ギヤケース361には、伝動軸166と略平行になるように左右伝達軸362が機体外方(左方)へと突出するように配置される。当該左右伝達軸362の左端には、第二植付プーリ362aが固設される。第一植付プーリ360と第二植付プーリ362aには、無端のベルト360aが巻回される。
【0035】
後ギヤケース361内の左右伝達軸362の右端部には、ベベルギア362bが固設される。当該ベベルギア362bは、同じく後ギヤケース361内のベベルギア363aと噛合される。当該ベベルギア363aは、前後伝達軸363の一端(後端)に固設される。前後伝達軸363は、前後方向を長手方向として保護ケース155に内装される。つまり、前後伝達軸363は、左右伝達軸362に対し略直角に前方へ延設して配設される。前後伝達軸363の他端は、植付部17の後部の略中央に支持されたギヤケース364内に挿入される。当該ギヤケース364内の前後伝達軸363前端にベベルギア363bが固設される。ベベルギア363bはギヤケース364内のベベルギア365aと噛合される。ベベルギア365aは植付入力軸365の右端部に固設される。
【0036】
ただし、前記左右伝達軸362、前後伝達軸363は、それらの中途部に自在継手などを有した構成とされており、植付部17のみが昇降しても無理なく動力伝達方向を変換させるように構成されている。
【0037】
こうして、動力は、伝動軸166の左端上の第一植付プーリ360から無端のベルト360aを介して第二植付プーリ362aに伝達される。第二植付プーリ362aの動力は、左右伝達軸362及び前後伝達軸363を介して、動力伝達方向を変換させながら植付入力軸365へと伝達される。
【0038】
植付入力軸365は、ギヤケース364から左方へ突出され、運転操作部15の前部で、植付部17の左の植付フレーム18後部に回動自在に支持される。
【0039】
植付入力軸365の左右中途部には、押出装置4へと動力を伝達する第一植付伝達機構16aの駆動スプロケット40が固設される。
一方、植付入力軸365の左端には、無端体3へと動力を伝達する第二植付伝達機構16bの駆動スプロケット30が固設される。
【0040】
つまり、植付入力軸365の動力は、その前方に配置された第一植付伝達機構16a及び第二植付伝達機構16bに同時に伝達される。
【0041】
図3及び図4に示すように、第一植付伝達機構16aは、主として駆動スプロケット40、従動スプロケット41、テンションスプロケット42、押出駆動スプロケット43、伝動チェーン44、押出駆動軸45によって構成される。
植付入力軸365の左右中途部には、駆動スプロケット40が固設される。植付入力軸365の前上方(植付部17の上部)には、植付部17の左右幅よりも若干短い押出駆動軸45が配置される。押出駆動軸45は、植付フレーム18の左右に回転自在に支持される。押出駆動軸45の左端には、押出駆動スプロケット43が固設される。駆動スプロケット40の前上方には、従動スプロケット41が配置され、押出駆動スプロケット43の後下方には、テンションスプロケット42が配置される。
【0042】
駆動スプロケット40、従動スプロケット41、テンションスプロケット42及び押出駆動スプロケット43には、無端の伝動チェーン44が巻回される。ただし、従動スプロケット41は伝動チェーン44外周に係合され、テンションスプロケット42は伝動チェーン44の内周に係合される。よって、伝動チェーン44は、適度な張力が保たれ、押出駆動スプロケット43と駆動スプロケット40間で垂れることを防止できる。
【0043】
従って、植付入力軸365から駆動スプロケット40、伝動チェーン44及び押出駆動スプロケット43を介して、押出駆動軸45に動力が伝えられる。押出駆動スプロケット43と押出駆動軸45との間には、後述するクラッチが配置され、クラッチの作用により動力の伝達が規制される。そして、無端体駆動軸33に伝えられた動力は、押出装置4を作動させる。
【0044】
第二植付伝達機構16bは、主として駆動スプロケット30、回転軸31、従動スプロケット31a、従動スプロケット31b、テンションスプロケット34、無端体駆動スプロケット32、無端体駆動軸33、伝動チェーン30a・32aによって構成される。
前記植付入力軸365の左端には、駆動スプロケット30が固設される。植付入力軸365の前下方(植付部17の後下部)には、回転軸31が配置される。回転軸31は、その両端を左の植付フレーム18に回転自在に支持される。回転軸31の右端上には、従動スプロケット31aが固設され、回転軸31の左端上には、従動スプロケット31bが固設される。
【0045】
駆動スプロケット30及び従動スプロケット31aには、無端の伝動チェーン30aが巻回される。従動スプロケット31aの下方(植付位置17b上方)には、無端体駆動軸33が配置される。無端体駆動軸33は、左右の植付フレーム18に回動自在に支持される。
無端体駆動軸33の左端には、無端体駆動スプロケット32が固設される。無端体駆動スプロケット32の右側の無端体駆動軸33上には、テンションアーム34aの下端が回動自在に支持される。テンションアーム34aの上端には、左方に突出するように回動軸34bが固設される。回動軸34bの右端には、回動自在にテンションスプロケット34が支持される。従動スプロケット31b、無端体駆動スプロケット32及びテンションスプロケット34には、無端の伝動チェーン32aが巻回される。テンションアーム34aは図示しないバネにより付勢されて、伝動チェーン32aに張力を付与することが可能な構成となっている。
【0046】
従って、植付入力軸365の動力は、駆動スプロケット30、伝動チェーン30a及び従動スプロケット31aを介して、回転軸31に伝達される。そして、回転軸31の動力は、従動スプロケット31b、伝動チェーン32a、テンションスプロケット34、無端体駆動スプロケット32を介して、無端体駆動軸33に伝達される。
【0047】
さらに、図4から図6に示すように、無端体駆動軸33上には、主植付フレーム19の両内側に、内無端体駆動スプロケット35・35が固設される。側面視において所定空間が形成されるように、左右の無端体従動スプロケット36・37・38・39が配置される。左右の無端体従動スプロケット36・37・38・39には、無端のチェーン等で構成された無端体3が巻回される。無端体3は左右対称に配置されるので、以下、左側を主として説明する。
【0048】
また、植付位置17bは、種球Gを圃場へと植付ける位置であって、植付部17の最下部に配置される。
下無端体従動スプロケット39及びその後方の内無端体駆動スプロケット35の下端が、側面視で前後水平方向に並べて配置される。更に、前記各無端体従動スプロケット36・37・38・39に巻回された無端体3の回転に伴い、植付部17の下部において、保持開孔手段20が後方へ略水平に移動するように、ガイド部材174が配置されている。当該ガイド部材174は保持開孔手段20のローラ29がガイドされる構成としている。
【0049】
こうして、補給位置17aと植付位置17bの間に無端体3が巻回され、保持開孔手段20は、補給位置17a以外では、挿入方向が鉛直方向を向いた状態で回転駆動される構成とされる。よって、内無端体駆動スプロケット35が植付位置17bの後部側で引っ張って駆動するように配置されて、無端体3を回転駆動する構成としているので、植付位置17bの無端体3は植付作業時において常に引っ張られる状態となって弛まず、走行及びクランク駆動部5に同期して正確に植付けることが可能となる。そして、種球G(保持開孔手段20)は大きく揺動されることがなく、振り落とされることもなく、確実に補給位置17aから植付位置17bへと搬送される。
【0050】
無端体3は、前述したように無端のチェーン等で構成され、植付フレーム18の内部に側面視で多角形(五角形)となるよう張設されている。詳述すると、無端体3は、左右一対で植付フレーム18の左右両内側に側面視多角形状の頂部位置となるようにそれぞれ設けられる回転支持部である内無端体駆動スプロケット35、各無端体従動スプロケット36・37・38・39に巻回される。左右の無端体3の間には、保持開孔手段20が無端体3の回転方向に所定間隔毎に左右方向に横架される。
【0051】
そして、運転操作部15の前方で種球Gを保持開孔手段20へ容易に補給(挿入)できるように、補給位置17aは前高後低の所定角度に傾斜して配置される。すなわち、植付部17の前後中央部の最上部に上無端体従動スプロケット37が配置され、当該上無端体従動スプロケット37の高さが、植付作業時において、前方視界を確保できるように作業者の目の高さよりも低く、膝よりも高く、肩の高さ程度とされる。
上無端体従動スプロケット37の後下方に配設される後無端体従動スプロケット36の高さは、ステップよりも高く作業者の胸よりも低い、座席151の座面の高さ程度とされる。こうして、上無端体従動スプロケット37と内無端体駆動スプロケット35との間に張設された無端体3が前高後低に傾斜して配設され、補給位置17aが配置される。
【0052】
前記補給位置17aは、座席151前方で、座席151に着座した作業者の手が届く範囲に配置される。補給位置17aは、詳しくは、上無端体従動スプロケット37と後無端体従動スプロケット36との間で、無端体3が前高後低に所定角度傾斜するように配置される。この角度を保ちながら保持開孔手段20が斜め前上方へ移動するように、内無端体駆動スプロケット35が植付フレーム18に配設されている。すなわち、上無端体従動スプロケット37と後無端体従動スプロケット36との間の無端体3の下方には、前後方向を長手方向とする板状のガイド部材173が配置される。ガイド部材は、無端体3と平行となるように植付フレーム18に固設される。ガイド部材173は、保持開孔手段20の両側に設けた後述するローラ29がその上面を転動してガイドされ、種球ホルダ21の種球挿入面が作業者側を向きながら前上方へ移動するように構成される。この補給位置17aでは、保持開孔手段20が複数列(本実施形態では三列)平行に配置されるようにし、種球Gの補給時間に多少の余裕があり、補給のタイミングを逃しても容易に修正できるようにしている。
こうして、作業者は座席151に着座したまま、種球Gを後述する保持開孔手段20に供給し易い姿勢で作業できるようになり、疲労を軽減し、作業効率が向上できる。
【0053】
前記構成によって、エンジン131からの動力は、伝動軸166から、第一走行プーリ260を介して、走行部14へと伝達される。また、エンジン131からの動力は、伝動軸166から、第一植付プーリ360を介して、植付入力軸365へと伝達され、さらに植付部17の押出装置4及び無端体3へと伝達される。
従って、植付部17は、走行部14に同期して駆動されてマルチシート10が被覆された畝に進行方向に所定間隔Pをおいて開孔部を形成し、その開孔部から畝に種球Gを植付けることができる。
【0054】
前記無端体駆動スプロケット32は、その径(歯数)を変更することで、種球Gの植付間隔(株間)Pを変更することができる。つまり、無端体駆動スプロケット32の径が大きく(歯数が多く)なれば、株間Pは長くなり、その径が小さく(歯数が少なく)なれば株間Pは短くなる。
作業者は、無端体駆動スプロケット32を変更することで、所望の株間Pを選択することが可能となる。ただし、無端体駆動スプロケット32に、有段または無段の変速機構を配置する構成とすることもでき、その場合には有段または無段の変速機構はレバー等の操作具で容易に変速操作できることが好ましい。
【0055】
次に、植付部17の植付フレーム18内に配置される各植付装置について、図6から図10を用いて説明する。
植付部17の各植付装置は、主として、前記無端体3上に配置される保持開孔手段20、押出装置4等により構成される。
【0056】
図1、図8、または図9に示すように、保持開孔手段20は、種球Gを保持しながら、植付位置17bに達した時に、マルチシート10に孔を開ける手段である。保持開孔手段20は、主としてケース体23、複数の種球ホルダ21、及び開孔体26により構成される。
【0057】
ケース体23は、左右方向を長手とする上下分割可能な箱状の構造体である。ケース体23の上面及び下面には、種球Gの挿入及び排出ができるように、複数(本実施形態では四条であるため上下四箇所の計八箇所)の上下開口部23aが左右方向に所定間隔をあけて上下一対となるように形成される。
ケース体23の上開口部23aの周囲下側には、種球Gの挿入孔を有し種球Gを保持するための種球ホルダ21がそれぞれ固設される。また、開孔体26が前記種球ホルダ21の下方のケース体23上に配置される。
【0058】
開孔体26は、四つの板材をそれぞれ側面視逆L字状に屈曲して、一側を開閉駆動部24に回動自在に配置される。その他側は、下方へ突出させ、この他側の先端をマルチシート10に容易に突き刺して開孔部を形成できるように、尖状に形成される。
【0059】
開孔体26を開閉駆動するための開閉駆動部24は、リンク機構により構成され、前記種球ホルダ21と開孔体26との間に配置される。開閉駆動部24の両側には、駆動アーム25が回動自在に連結される。駆動アーム25の外端は内方に押されることで、開孔体26を開くように構成される。
また、植付フレーム18(図1参照)の下部内側の前記駆動アーム25側には、カム体(図示省略)が前後方向に設けられる。カム体は、前記駆動アーム25の外端が当接して開孔体26がマルチシート10に開孔部を形成するように内側に突出して形成される。
【0060】
つまり、駆動アーム25の外端が、カム体と当接された状態では、開孔体26の下端が開口部23aの周辺に位置し、開孔体26は開かれる。駆動アーム25とカム体が当接することなく、駆動アーム25がケース体23の外方に突出された状態では、開孔体26の下端が、開口部23aの中心に位置し、開孔体26は閉じられている。
【0061】
よって、マルチシート10に刺った四本の開孔体26の下端が、開口部23aの中心より外方へ回動することにより、マルチシート10の所定位置に所定の大きさの開孔部が形成される。
【0062】
前記ケース体23の左右両側の上部には、支持軸27・27が外方に突出するように配置される。当該支持軸27・27の外周には、側面視L字状の取付板28が回転自在に取付けられている。取付板28・28の一面は前記無端体3・3の外周上に取付けられる。
こうして、保持開孔手段20は、補給位置17aと植付位置17b以外の位置では、支持軸27を中心に揺動自在に支持され、その自重により種球ホルダ21の挿入軸心は鉛直方向を向いたまま搬送(移動)される。
【0063】
前記ケース体23の左右両側の下部には、前後方向に所定間隔をおいてローラ29・29が回転自在に突出するように配置される。前記補給位置17aと植付位置17bにおいて、無端体3と平行に配置されたガイド部材173・174によりその搬送姿勢が規制される。つまり、種球ホルダ21と開孔体26が、補給位置17aでは所定角度傾斜した状態で搬送され、植付位置17bでは圃場面と平行に搬送される。
【0064】
次に押出装置4について説明する。
押出装置4は、保持開孔手段20が最下端の植付位置17bを移動するときに、保持開孔手段20の開孔体26によって、マルチシート10が被覆された圃場に開孔部が形成された直後に、保持開孔手段20に保持された種球Gを下方に押付けて開孔部に種球Gを植付ける装置である。
押出装置4は、主として、クランク駆動部5、揺動部6、植付押出部7、ガイド部8、係合部9によって構成される。
【0065】
図4から図7に示すように、クランク駆動部5は、植付部17の左側に配置された第一植付伝達機構16aの駆動力を植付押出部7へと伝達するためのものである。クランク駆動部5は、主として、クラッチ、回動アーム53、従動アーム54、連結アーム55、上ロッド支持体56により構成される。クランク駆動部5は、植付部17の側部植付フレーム19fの左右外側にそれぞれ配置され、左右一対となるように配置される。前記クラッチは、電磁ソレノイド50、係合レバー51、係合体52より構成される。
【0066】
前記第一植付伝達機構16aの押出駆動スプロケット43は、クラッチ(詳細には係合体52)を介して押出駆動軸45に連結される。つまり、係合体52は、押出駆動軸45に外嵌したバネクラッチと当該バネクラッチの一端に係合した係合ディスクより構成され、係合ディスクの外周に突起を設けて、当該突起がその後方に配置された係合レバー51と係合可能に構成している。こうして、係合体52が係合レバー51と係合することによって、押出駆動スプロケット43から押出駆動軸45への動力の伝達が断たれ、係合を解除することによって、押出駆動スプロケット43から押出駆動軸45へ動力が伝達されるように構成している。また、係合レバー51は、その近傍に配置されたアクチュエータである電磁ソレノイド50の作動体となるピストンと連結される。当該電磁ソレノイド50が作動されると、ピストンが縮小されて係合レバー51が回動され、係合レバー51と係合体52との係合が解除され、動力が伝達される。電磁ソレノイド50は、図示しない植付位置17b付近のリミットスイッチの入切(リミットスイッチは保持開孔手段20が所定の位置に達したかを検知する)によって作動するように制御される。
【0067】
押出駆動軸45の左右両端には、それぞれ回動アーム53の一端が固定される。回動アーム53の他端部には、その長手方向に所定間隔をおいて複数の調節孔53a・53aが開口される。調節孔53a・53a・53aの内一つに、回動軸54aの一端(内側)が貫装される。当該回動軸54aの他端(外側)には、従動アーム54の一端が回動自在に配置される。つまり、複数の調節孔53a・53a・53aは、クランク駆動部5の長さ調節機構の役割を果たす。従動アーム54の他端には、貫装孔が開口される。当該貫装孔には、連結軸54bの一端(外側)が固設される。連結軸54bの他端(内側)は、連結アーム55の上部に回動自在に支持される。左右の連結アーム55の下部は上ロッド支持体56が横設される。
【0068】
上ロッド支持体56は、植付部17の左右幅よりも若干短い板体である。上ロッド支持体56には、後述する植付押出部7の植付押出体70が左右方向に所定間隔(種球ホルダ21と同数で同位置)をおいて取付けられる。さらに上ロッド支持体56の左右両側には、後述する揺動部6の揺動連結体62・62に対して上下方向に摺動自在に嵌合されるように、上下方向に開口部を有した円筒状の摺動体57・57が配置される。
【0069】
前記構成によって、保持開孔手段20が植付位置17bの所定位置に達したときリミットスイッチの接点に当接してONとなり、リミットスイッチと接続された電磁ソレノイド50が作動して、係合レバー51が回動して係合体52から外れる。すると、係合体52は押出駆動軸45と係合されて一体的に回動することとなり、動力が押出駆動軸45へと伝達される。よって、左の押出駆動スプロケット43の回転力が、押出駆動軸45に伝達され、図11に示すように、押出駆動軸45に固設された左右の回動アーム53を回転させる。なお、前記リミットスイッチは当接部が通過することによりその後OFFとされ、電磁ソレノイド50は元の位置に戻る。そして、係合体52が一回転すると、再び係合レバー51と係合し、係合体52から押出駆動軸45への動力伝達は断たれる。この押出駆動軸45が一回転すると、これに連結された回動アーム53も一回転し、従動アーム54を前後揺動しながら上下に移動させ、当該従動アーム54から連結アーム55を介して上ロッド支持体56が連動して上下に移動される。つまり、クランク駆動部5の作動(図11の(c)参照)により、植付押出部7が下方に移動された時に、圃場に種球Gが植付けられる。
【0070】
また、前述のクランク駆動部5の長さ調節機構は、回動アーム53の調節孔53a・53a・53aのいずれかに回動軸54aが貫装されることで、回動軸54aの回動直径を長短変更することで構成される。回動軸54aの回動直径を長短変更することで、回動アームとリンク(回動軸54a、従動アーム54、連結軸54b、連結アーム55より構成されるリンク)の連結長さの上下移動量を調節できて、クランク駆動部5の昇降距離が調整される。従って、クランク駆動部5の上ロッド支持体56に連結された植付押出体70の昇降高さが変更され、種球Gの植付深さを所望の深さに容易に変更することができる。
【0071】
次に、揺動部6について図6及び図10を用いて説明する。
揺動部6は、主として回動支点軸60、横設体61、揺動連結体62、下ロッド支持体63により構成される。揺動部6は、押出駆動軸45の直下に前後に揺動自在に配置される。
回動支点軸60・60は、押出駆動軸45の直下で、左右の側部植付フレーム19fの上部から内方に突出するように配置され、側部植付フレーム19f(図1)に回動自在に支持される。回動支点軸60・60には、それぞれの内端下部に横設体61が固設される。横設体61は、左右方向を長手とする板体を側面視略逆凹字状に屈曲させた部材である。横設体61の左右両端部には、上下方向を長手とする棒状の揺動連結体62・62の上端が固設される。揺動連結体62・62の下端には、前記横設体61と略平行で前記横設体61よりも若干左右長さの短い下ロッド支持体63の両端が固設される。下ロッド支持体63には、前記上ロッド支持体56と同様に後述する植付押出部7の植付押出体70を摺動可能に支持する開口支持部63aが形成される。
【0072】
図10及び図12に示すように、植付押出部7は、複数(本実施例においては四本)の植付押出体70により構成され、植付押出体70は、主植付フレーム19内の空間に左右所定間隔(保持開孔手段20の開口部23aの間隔)をおいて配置される。植付押出体70は、主として、ガイドパイプ71、植付ロッド72によって構成される。
【0073】
ガイドパイプ71は、上下方向を長手とする円筒状の部材であって、その上端が上ロッド支持体56に取付部材71aを介して固設される。ガイドパイプ71の上下中途部は、揺動部6の下ロッド支持体63の開口支持部63aに摺動可能に保持される。さらにガイドパイプ71の下部は、後述するガイド部8の横ガイド板81に上下方向摺動可能に保持される。
【0074】
ガイドパイプ71内には、上下方向を長手とする棒材である植付ロッド72が、上下方向摺動自在に内装される。ガイドパイプ71の下端には、保持体73が固設される。保持体73には上下に開口部が形成される。開口部は、保持開孔手段20によって保持された種球Gの上部を保持し易いように形成される。
【0075】
ガイドパイプ71には、植付ロッド72が内装される。当該植付ロッド72は、ガイドパイプ71よりも若干長い棒材によって構成される。植付ロッド72の上部は、後述する係合部9の取付部材92を介して左右方向に延設された支持軸93にそれぞれ支持される。植付ロッド72の前記取付部材92と前記上ロッド支持体56との間には、植付ロッド72を上方へ摺動するように付勢するバネ74が配設されている。
【0076】
図6、図9及び図13に示すように、ガイド部8は、植付位置17bにおける、植付押出部7と保持開孔手段20の後方移動を同期させるための構造体であって、植付部17の下部に配置される。
ガイド部8は、主として側部ガイド板80、横ガイド板81、ガイド軸84、同期ガイド棒85、及び引張部材86によって構成される。
【0077】
側部ガイド板80は、前後方向を長手とする板材で構成され、側部植付フレーム19fの下部に左右一対となるように配置される。側部ガイド板80の前後部には、同一形状の開口部80a・80aが形成される。開口部80aは、その前端から中途部にかけて略水平に開口され、中途部から後端にかけて前低後高となるように開口される。つまり、開口部80aは略逆「へ」字状の長孔に開孔されている。
【0078】
横ガイド板81は、断面視略逆U字状に形成され、当該横ガイド板81の左右両側端部の前後両側からそれぞれガイド軸84・84・84・84が側方に突設され、当該ガイド軸84・84・84・84の先端部が前記左右の開口部80a・80a・80a・80aに挿入されて前後摺動自在に支持される。
【0079】
同期ガイド棒85は、上下方向を長手とする棒材であって、保持開孔手段20の左右両側から下方に突出するように配置され、無端体3が周回するときに、無端体3の外周に固設された取付板28と当接し、ガイド部8が保持開孔手段20の後方移動と同期して移動するようにするための部材である。
同期ガイド棒85の上端は、横ガイド板81の左右両端部の前後中途部に固設される。詳細には、横ガイド板81の両端部に貫装孔を開孔して、当該貫装孔に前記同期ガイド棒85の上端を貫装してナット等で同期ガイド棒85と横ガイド板81とを締結させる。
【0080】
引張部材86は、両端部にフックを有する引きバネによって構成される。引張部材86・86の一端は、左右の側部植付フレーム19fに固定された取付部材87・87に係止され、他端は前側のガイド軸84・84に係止される。こうして、横ガイド板81が引張部材86により前方向に引張られるように付勢される。
【0081】
植付作業時においては、図13の(a)に示すように、無端体3が回動されることによって、保持開孔手段20が植付位置17bにおいて前方から後方に移動する。このとき、同期ガイド棒85・85の下端が保持開孔手段20に当接することで、横ガイド板81を固定した横ガイド板81が後方へと移動される。そして、図13の(b)に示すように、横ガイド板81から側方に突設されたガイド軸84・84・84・84は、側部ガイド板80の開口部80a・80a・80a・80aの水平部に沿って、つまり、ガイドされて摺動しながら後方に移動される。
さらに保持開孔手段20が後方へ移動されると、図13の(c)に示すように、ガイド軸84は開口部80aの傾斜部に沿って後上方へ移動される。この保持開孔手段20(横ガイド板81)の後上方への移動によって、同期ガイド棒85・85が持ち上げられ、同期ガイド棒85・85の下端は保持開孔手段20の取付板28よりも上方に移動し、同期ガイド棒85・85と保持開孔手段20との当接が解消されると、引張部材86の前方向への付勢力によって、横ガイド板81が前方へと戻される。つまり、各開口部80aの前端に各ガイド軸84が移動されることとなり、前方に位置する次の保持開孔手段20の取付板28に同期ガイド棒85・85の下端が当接可能となる。
従って、横ガイド板81によって保持された植付押出部7は、植付位置17bにおいて保持開孔手段20の後方への移動に対して同期させて移動(揺動)させることが可能となり、植付時に、植付押出体70の下部を保持開孔手段20の開口部23aに確実に挿入できるようにしている。
【0082】
係合部9は、図10及び図14から図18に示すように、種球Gの植付終了後に植付押出部7が上昇するときに、植付ロッド72の上昇を一時的に規制して、ガイドパイプ71を先に上昇させるための手段である。係合部9は、主として支持軸93の両側に配置される上部係合体90と、下ロッド支持体63の両側に配置される下部係合体91によって構成される。
【0083】
以下説明する係合部9の部材は、左右対称であるため左側のみの構成を説明する。
上部係合体90は、左右の前記植付押出部7の上部からその近傍の摺動体57の後部にかけて左右一対となるようにそれぞれ配置される。上部係合体90は、取付部材92、支持軸93、ピン93a、上部係合部材94、支持部材95によって構成される。
取付部材92は、側面視において略逆L字状に屈曲された板材であって、水平部92a及び垂直部92bによって構成される。水平部92aの前部に貫装孔が開口され、当該貫装孔に植付押出部7の植付ロッド72の上部が貫装されて、植付ロッド72と取付部材92が締結される。
取付部材92・92・92・92は、揺動部6の揺動連結体62・62間の支持軸93に略等間隔をおいて固設され、水平部92aの下面と垂直部92bの前面に当接して固設される。さらに、左右両側の取付部材92・92の外側の支持軸93上には、上部係合部材94が回動自在に外嵌される。当該上部係合部材94と取付部材92との間に捩じりバネが外嵌され、上部係合部材94が図14矢印B方向へ回動するように付勢されている。一方、上部係合部材94から内側方へピン93aが突設され、当該ピン93aが水平部92aの下面と当接することでストッパーの役目を果たしている。
【0084】
支持部材95は、その前下部前面が前記摺動体57の後上部に固設される。支持部材95は、上下方向を長手とする板材により構成され、その上部に上下方向を長手とする長穴95aが開口される。長穴95aには、前記支持軸93の左端部(外端部)が摺動自在に貫装される。
【0085】
下部係合体91は、植付押出体70が最上方に位置する植付待機状態において、左右両側に配置された上部係合部材94の後下方に配置される。下部係合体91は、係止部材96、回動部材96d、回動支持軸96c、回動支点軸97、上支持部材98b、下支持部材98a、及び付勢部材99によって構成される。
【0086】
下支持部材98aは、上下方向を長手とする二枚の板部材により構成され、左右所定間隔をおいて下ロッド支持体63の両側後部にその下端が固設される。下支持部材98aは、その上部に上下所定間隔をおいて複数の開口部が開口される。
上支持部材98bは、板部材を平面視において後方を開放させた凹字状に屈曲して形成される。上支持部材98bの下両側部には、前記下支持部材98aと同等の間隔をおいた複数の開口部が開口される。よって、上支持部材98bと下支持部材98aは、それらの開口部を側面視で一致させた状態で、ボルト等で貫装し締結させることで一体化される。また、複数の開口部が開口されているため、一致させる開口部を変更することで、下部係合体91の高さ調節が可能となっている。
【0087】
上支持部材98bの上部に配置される係止部材96は、板材を正面視において、逆凹字状に屈曲させて形成される。係止部材96には、水平部96a及び垂直部96b・96bが形成される。水平部96aの前端は全幅が切り欠かかれ、側面視において垂直部96b・96bの前下部が前高後低となるように切り欠かれる。垂直部96b・96bの前上部には回動支持軸96cが垂直部96b・96bに横設され、円筒状の回動部材96dが回動支持軸96cに貫通されることによって回動自在に支持される。
そして、係止部材96の垂直部96b・96bの後下部の内側に、上支持部材98bの上部が、側面視において重なるように配置される。両者が重なった部分には、それぞれに貫装孔が開口されており、さらに当該貫装孔に回動支点軸97が回動可能に貫装されて、その両端には、抜け止めが施される。
【0088】
付勢部材99は、コイルバネ等で構成され、前記回動支点軸97に外嵌される。付勢部材99の一端は、係止部材96の上後端に係止され、他端は上支持部材98bの後面に係止される。従って、係止部材96は、付勢部材99の付勢力によって、回動支点軸97を中心としてその前部を下方向(C方向)に回動するように付勢され、係止部材96の水平面部の下面が上支持部材98bの上面に当接される。
【0089】
前記構成において、クランク駆動部5の上ロッド支持体56の下方移動によって、植付押出部7が下方に移動される。そのため、図14に示すように、植付押出部7に連結された上部係合体90が係止部材96に接近する。さらに、図15の(a)に示すように、上部係合部材94の後端が、係止部材96の前端である回動部材96dと当接する。さらに、図15の(b)に示すように、係止部材96の付勢力によって、上部係合部材94の下降移動が停止される。つまり、支持軸93及び取付部材92を介して連結された植付ロッド72の下降移動を停止させる。よって、支持軸93が支持部材95の長穴95aの下端から上端に至るまで、植付押出体70の下降移動が停止され、ガイドパイプ71のみが下降移動する。
【0090】
支持軸93が支持部材95の長穴95aの上端と当接した状態で、植付押出体70が更に下降されると、図16の(a)に示すように、上部係合部材94が付勢部材94a(図10参照)の付勢力に抗して支持軸93を中心にC方向に回動される。そして、上部係合部材94の下方への移動により、上部係合部材94と係止部材96との当接が解除されると、上部係合部材94は、図16の(b)の実線で示すように、付勢部材94aの付勢力によってピン93aが取付部材92と当接する元の位置に戻る。
【0091】
種球Gが圃場の開孔部に植付けられた後、クランク駆動部5の上ロッド支持体56の上方移動によって、植付押出部7が上方に移動される。図17の(a)に示すように、上部係合部材94の後端が、係止部材96の前端の回動部材96dと再び当接する。さらに、図17の(b)に示すように、係止部材96の抗力によって、上部係合部材94の上方移動が停止する。つまり、支持軸93及び取付部材92を介して、連結された植付ロッド72の上昇移動が停止する。よって、ピン93aが支持部材95の長穴95aの上端から下端に至るまで、植付ロッド72の上昇が停止し、ガイドパイプ71のみが上昇する。
【0092】
ここで、植付部の下端に着目すると、保持体73の内側に種球Gの上部が付着した場合(図12参照)、植付押出体70と保持体73とが、同時に上昇すると、種球Gは保持体73内に付着した状態で上昇することになる。しかし、ガイドパイプ71に連結された保持体73が、所定高さ上昇した後に、植付押出体70が上昇すれば、保持体73に種球Gが付着していた場合であっても、植付押出体70のみが残ることで保持体73への種球Gの付着を解消することが可能である。また植付け直後に、保持体73内に土等の異物が付着していた場合であっても、植付押出部7が後から上昇することによって、土を下方へ押し出すことができる。延いては、植付押出体70先端の保持体73の土等による種球Gの損傷を回避することができる。
【0093】
さらに、クランク駆動部5の上ロッド支持体56の上方移動によって、図18の(a)に示すように、付勢部材99の付勢力に抗して、上部係合部材94は上方に移動し、係止部材96の前端は回動支点軸97を中心に上方に回動する。上部係合部材94の上方への移動により、上部係合部材94との係合が解消されて、係止部材96は、図18の(b)に示すように、付勢部材99の付勢力によって元の位置に戻る。
前記一連の動きを保持開孔手段20毎に行うことで種球Gの押付は行われる。
【0094】
前記構成によって、クランク駆動部5が上下移動することによって、揺動部6の前後方向に規制されながら、植付押出部7が昇降させる。よって、保持開孔手段20に保持された種球Gを圃場へと植付けることができる。
【0095】
以上の如く、本実施形態の植付機1は、走行部14と、当該走行部14の前方に昇降可能に配置して、種球を植付ける植付部17と、前記走行部14と前記植付部17に動力伝達機構16を介して駆動する駆動部13と、を有し、走行しながら走行方向に所定間隔Pをおいて種球Gの植付けを行う植付機1であって、前記植付部17は、左右の植付フレーム18における、側面視多角形状の頂部位置にそれぞれ設けられる回転支持部に回転支持される左右一対の無端体3・3と、前記左右の無端体3・3間に複数架設され、種球Gを保持するとともに圃場面に被覆した被覆材(マルチシート10)に開孔部を形成する保持開孔手段20と、前記保持開孔手段20が最下部の植付位置17bを通過するとき、前記保持開孔手段20による開孔部に、当該保持開孔手段20に保持された種球Gを押付けて圃場に植付ける押出装置4と、を備えるとともに、前記走行部14の走行速度と、前記植付部17の無端体3の回転速度とが同調するように、前記動力伝達機構16を構成したものである。
【0096】
このように構成することにより、被覆材10に開孔部を形成する時に、被覆材10に過剰な張力が発生せず、被覆材10に開孔された開孔部の収縮を防止することができる。よって、開孔部を種球Gに適した状態に保持でき、的確に種球Gを植付けることができ、被覆材10による種球Gの発育阻害を防止することができる。
【0097】
本実施形態の植付機1は、前記回転支持部35・36・37・38・39は、上部位置と前後の上下中途部位置と前後の下部位置に設けられ、前記下部位置の後側回転支持部35に、前記駆動部13から駆動力が伝達されるものである。
【0098】
このように構成することにより、前後の下部位置の回転支持部35・39の間が植付位置17bとなり、後側の回転支持部35で無端体3が駆動されることになり、無端体3の弛みによる、押出装置4と無端体3との不用なロック状態を回避し、種球Gの押し込み損じを防止することができ、植付けを的確に行うことが可能となる。また、負荷のかかり易い植付位置17b周囲の支持部材への負荷を軽減することができ、植付フレーム18の変形を防止することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 植付機
3 無端体
4 押出装置
10 被覆材(マルチシート)
13 駆動部
14 走行部
16 動力伝達機構
17 植付部
17b 植付位置
18 植付フレーム
20 保持開孔手段
35 回転支持部(内無端体駆動スプロケット)
36 回転支持部(後無端体従動スプロケット)
37 回転支持部(上無端体従動スプロケット)
38 回転支持部(前無端体従動スプロケット)
39 回転支持部(下無端体従動スプロケット)
G 種球
P 株間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行部と、当該走行部の前方に昇降可能に配置して、種球を植付ける植付部と、前記走行部および前記植付部に動力伝達機構を介して駆動力を付与する駆動部と、を有し、走行しながら走行方向に所定間隔をおいて種球の植付けを行う植付機であって、
前記植付部は、
左右の植付フレームにおける、側面視多角形状の頂部位置にそれぞれ設けられる回転支持部に回転支持される左右一対の無端体と、
前記左右の無端体間に複数架設され、種球を保持するとともに圃場面に被覆した被覆材に開孔部を形成する保持開孔手段と、
前記保持開孔手段が最下部の植付位置を通過するとき、前記保持開孔手段による開孔部に、当該保持開孔手段に保持された種球を押付けて圃場に植付ける押出装置と、を備えるとともに、
前記走行部の走行速度と、前記植付部の無端体の回転速度とが同調するように、前記動力伝達機構を構成したことを特徴とする植付機。
【請求項2】
前記回転支持部は、上部位置と前後の上下中途部位置と前後の下部位置に設けられ、
前記下部位置の後側回転支持部に、前記駆動部から駆動力が伝達されることを特徴とする請求項1に記載の植付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−45338(P2011−45338A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198804(P2009−198804)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(391025914)八鹿鉄工株式会社 (131)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】