説明

椎茸の熟成人工榾木の製造方法

【課題】椎茸が発芽寸前に至る熟成に時間が余り掛からなく、また、比較的に未熟であっても菌糸の繁殖の余地が残され活性が持続されているために、厚肉で大きな良品質の椎茸が発育させ得る椎茸の熟成人工榾木の製造方法を提供する。
【解決手段】材料を水で練り固めたブロック状の培地に、種菌の増殖により表面が白色ないし霜降り状の皮膜で覆われるまで全体的に菌糸を蔓延させる初期培養工程に続いて、適度の温度条件の環境下において裸の培地に間断に散水を施して菌糸の増殖をさらに促進することにより椎茸の発芽手前の状態にまで管理する熟成培養工程を設けた椎茸の熟成人工榾木の製造方法において、その熟成培養工程を、皮膜が白色ないし霜降り状から黄土色に変化するまで管理する熟成前期培養工程と、黄土色から茶褐色に変化するまで管理する熟成後期培養工程とに分け、その両工程の間に、洗浄水の吹きつけにより皮膜を洗う中間洗浄工程を設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、おが粉やふすま等の材料を水で練り固めブロック状に成形した培地に種菌を摂取し、ハウス内管理によりその培養を促進して椎茸が発芽する手前まで熟成させる椎茸の熟成人工榾木の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、椎茸等の人工栽培においては、コナラ、サクラ、クヌギ等の広葉樹の原木に種菌を接種した自然榾木を用いる原木栽培と、同じような広葉樹等のおが粉、或いは米糠やふすま等の細目、粗目の材料に水を混入してブロック状に練り固めた培地としての人工榾木を用いる菌床栽培とが採用されるが、原木栽培であると、原木の入手困難に加えて、作業労働がきついこと、椎茸が発芽する手前まで管理する熟成期間が長い等の理由から菌床栽培が主流となっている。
【0003】
菌床栽培の場合であると、材料を練り合わせてからプラスチック製の袋等に充填してブロック状に成形し、その状態で加熱殺菌した後、種菌を摂取してから菌糸が全体に蔓延するまで増殖させることにより、菌糸の蔓延により雑菌を受け付けない状態にしてから、袋から出してブロック状の裸で棚等に並べ或いはコンテナ内に並べて、通常は20〜25°Cの温度条件の下で、散水して適正湿度を保ちながら熟成を促進することにより発芽手前の培地、つまり、手間隙を余りかけないでも椎茸の栽培が即刻なされ得る熟成人工榾木の製造がなされる。ちなみにこれは、同一工場内で椎茸の栽培に移され、或いは、必要としている栽培農家等に提供される。
【0004】
椎茸の熟成人工榾木とは、このように熟成させて椎茸の子実体が発芽手前の状態のものを言い、熟成するにつれて、最初は地色が褐色であっものが表面を菌糸で白く覆いやゝ硬い菌糸塊の凹凸の皮膜が生じ、やがて黄土色から褐色に変色するので、この外観を観察して熟成が完了した発芽手前の時点を捉えていた。しかし、このような判断は必ずしも確実ではないので、培地のセルロース/リグニンの比によって判断する手法が提案される(特許文献1)。これによると、培地のセルロース/リグニンの重量比率が3.3以上に質変化していると、榾木が熟成しており良品質の椎茸を多量に発生させることができるとされる。
【特許文献1】特公平4−75730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、茸類の菌糸は腐朽菌であって、その活動によって変化するセルロース/リグニンの比率を3.3以上に設定すると、言わば腐朽が完了に近い活力に乏しい完熟状態になるので、それだけ時間が掛かるという不利な点があり、また、時間の経過とともに繁殖した菌糸体の活力が乏しくなるために、一層良品質の椎茸を生産するには限界があるという問題があった。なお、ここに良品質とは、椎茸が完全に笠開きしない状態において直径が大きく厚肉である等の状態をいうものとする。
【0006】
この発明は、上記のような実情に鑑みて、椎茸が発芽寸前に至る熟成に時間が余り掛からなく、また、比較的に未熟であっても菌糸の繁殖の余地が残され活性が持続されているために、厚肉で大きな良品質の椎茸が発育させ得る椎茸の熟成人工榾木の製造方法を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、この発明は、材料を水で練り固めたブロック状の培地に、種菌の増殖により表面が白色ないし霜降り状の皮膜で覆われるまで全体的に菌糸を蔓延させる初期培養工程に続いて、適度の温度条件の環境下において裸の培地に間断に散水を施して菌糸の増殖をさらに促進することにより椎茸の発芽手前の状態にまで管理する熟成培養工程を設けた椎茸の熟成人工榾木の製造方法において、その熟成培養工程を、皮膜が白色ないし霜降り状から黄土色に変化するまで管理する熟成前期培養工程と、黄土色から茶褐色に変化するまで管理する熟成後期培養工程とに分け、その両工程の間に、洗浄水の吹きつけにより皮膜を洗う中間洗浄工程を設けることを特徴とする椎茸の熟成人工榾木の製造方法を提供するものである。
【0008】
椎茸の熟成人工榾木の製造方法を上記のように構成したから、熟成培養工程の中間において、皮膜の表面に長く存在して既に力の乏しくなった古い菌糸体を洗浄水で洗い流すことにより、再度新しく活力ある菌糸体が育成される余地を作ることになり、リグニンに比較的不朽が進行している完熟型培地の生産日数の短縮が可能となり、加えて品質の良好な椎茸の生産が可能となった。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明によれば、椎茸の熟成人工榾木の製造について、椎茸の発芽寸前に至る熟成までに時間が余り掛からないため、省力化になると同時に栽培ハウスの稼働率が良好となる。また、その熟成人工榾木によれば、比較的に未熟であっても菌糸の繁殖の余地が残され活性が持続されるので、厚肉で大きな良品質の椎茸を収穫することができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、この発明の最良と考えられる実施形態を説明する。表1は、前記特許文献1の発明に係る具体的な現場での実施マニュアル(従来実施例)と、本発明に係る具体的な現場での実施マニュアル(本発明実施例)とを比較して示すもので、以下に、本発明の実施形態についてその作業工程を(1)〜(8)の各項目に分けて説明する。その項目の名称(明細書記載上の名称)と違う名称が表1では使われているので、括弧でそのマニュアル実施上の名称を右に併記することとした。
【表1】

【0011】
【表2】

【0012】
【表3】

【0013】
【表4】

【0014】
【表5】

【0015】
なお、全体の工程は、前半的な前の工程と、それを基に本格的に培養させる熟成培養工程とに大きくは分けられるが、熟成培養工程を前後(サ)(ス)に分け、その間に、(シ)の中間洗浄工程を設けたことが取り分け大きな特徴である。
【0016】
また、この実施形態においては、本出願人に特有のものとして、図2に示すようなコンテナCを使用した。これについて予め説明すると、底11が網状や格子状等の通気性および通水性を有し、前後左右の各側面および上面が開放されている構造であって、熟成人工榾木P(図4参照)となる培地Paが前後左右に並べて収納され、後記するようにコンテナCを縦横に積み重ねて熟成促進等に必要な管理がなされる。
【0017】
(1)袋詰め培地の成形、殺菌及び植菌工程
〔表1〕(ア〜エの欄)及び〔表2〕(オ〜クの欄)
主成分となるおが粉(ナラ、クヌギ等)に栄養剤、米糠、ふすま等を加水しながら混合する(表1の(ア)(ウ)の欄参照)。この混合物をレトルト袋1に充填し、培地Paを円柱形に形成する(図1)。さらに、円柱形の天面部の中央に植菌を施す植菌穴2を形成した後、レトルト袋1の上部を折り曲げる。そして、蒸気釜に入れ121°Cの高温下で約90分程度、滅菌処理する。殺菌処理を終えた培地Paに椎茸菌を植菌しレトルト袋1の上部をミシンによって縫合する。植菌については、培地Paの中央に穿設棒(上径21〜34mm、下径15〜20mm)で突いて植菌穴2を形成し、それに種菌を充填して摂取した。なお、図1において、袋1の口は一部5を開口してシール6が施され、その上がミシン糸7により通気可能に縫い合わされる。この状態で、次の袋詰め形態の初期培養工程に移される。
【0018】
(従来との比較)
おが粉(ナラ、クヌギ等)は細目と粗目とを混合して使用するが、従来の配分比率より多くしたことにより、混合時間の短縮、吸水率の向上、出来高量が増加した。また、それに応じてその栄養分等も変化させ加水時間を長くした(表1の(ウ)の欄参照)。
【0019】
種菌の充填工程においては、植菌穴の径および深さを大きくとった(表2の(カ)の欄を参照)。これは、菌が榾木内部より浸透し、増殖しやすくするためである。このことの証明として、植菌を終えた榾木の品種は従来よりも高く推移していることを確認した。この現象は菌の活性化が円滑になっていることを示しており、完熟促進にも影響しているのは確かである。さらに、高圧釜を利用した滅菌工程においては、処理温度の幅を広げ(119°C〜121°C)、蒸らし時間を20〜30分と10分間程短縮した。これは高温処理が過剰になりおが屑の成分、栄養分の分解防止に留意したものである。また、植菌培地品温(中心部)を22〜27°C(比較例では培地品温は20〜25°C)に保った状態にして、菌糸体の活性化が持続しやすくやゝ高めに温度管理した(表2の(ク)の欄参照)。
【0020】
(2)袋詰め形態の培養工程(培養(一)、(二)工程)
〔表3〕(ケ、コの欄)
植菌を終えた培地に温度管理を施し、暗室での培養を行う工程であり、培養が進行すると培地全体に椎茸菌が蔓延し、表面が菌の色で霜降り状及び白色に変化する。
【0021】
(従来との比較)
この工程においては、温度管理を20〜26°C(表3(ケ)の欄参照)と高めに管理するとともに、温度幅を3段階に分け管理をする。また、植菌を終えた培地をパレット積みにし、自動的に一定の温度管理がなされた倉庫に搬入し、規定の日数が経過すると搬出されるという自動倉庫システムを併用した。このことにより、作業員が2工数削減になった。また、規則正しい温度管理が実施され、生産効率が向上した。
また、品質管理に関しても、従来の測定計器よりさらに詳細な状況を把握するため、放射温度計等を採用した(表3の(ケ)の欄参照)。これらのことにより、従来例よりも2〜3日の生産工程期間を短縮できた。
【0022】
(3)破袋工程〔(ケ)の欄〕
培養工程において菌が表面まで蔓延したレトルト入り培地のレトルトを取り除く工程であり、レトルトを取り除かれた榾は皮膜室に移動される。
【0023】
(従来との比較)
従来は破袋後の培地を洗浄していないが、本発明の場合は、培地表面の有害なバクテイリア除去を目的として、0.3ppm以下の水道飲料水レベルの塩素水で洗浄する。
【0024】
(4)熟成初期培養工程(皮膜工程、培養(二)工程、コンテナ配置)
〔表3〕(コの欄)
破袋後の培地に温度管理と散水管理(霧状)を施し、さらに培養を進行させ培地表面に膜を形成させる。膜の形成によりそれ以降、培地内部には細菌、バクテリア等の影響は受けにくくなる。
【0025】
(従来との比較)
この工程においては、通常は皮膜室において培地をコンテナに搭載し、多段に重ねパレットに搭載(30〜36コンテナ)して配置をするが、本発明の場合、パレットに搭載せずコンテナを多段(9段)にし最上段に空コンテナを載せキャスター付き台車に搭載する。図3は、多段に積み重ねたコンテナC,C,・・の上に空のコンテナCを上下逆にした被せた状態を示し、この状態で散水が行われると、散水が分散されて下の培地Paに均等に行き渡る。
【0026】
パレットに搭載する場合は、多数の培地を一度にまとめて管理できるが、温度摂取、水分吸収が行き渡らない可能性が大きくなる恐れがある。この点、キャスター付き台車に載せることにより少数集中管理が可能となり、コンテナに搭載されている培地の環境状況は向上する。
また、通常最上段のコンテナ内の培地は、室内の暖房から送風される暖気を直接受けることにより、乾燥による膜の硬化現象に陥りやすいが、前記図3について記した如く、最上段に空コンテナCを置くことにより、それを防ぐことが可能となり品質のバラつきが減少した。さらに、温度、培地の含水率、炭酸ガス濃度等において管理が好都合になった。
また、温度管理に関しては、22〜24°Cと高めに管理することにより、菌糸の伸びを促進させる。
【0027】
(5)熟成前期培養工程(培養(三)(前期)工程)
〔表4〕(サの欄)
従来例では(表4の(サ)の左欄参照)、膜を形成させた培地をさらに、温度、間断散水管理を施し23〜25日間、熟成させる。培養(三)前期においての温度帯は20〜24°Cであり、散水時間は10〜20時間(日)とし、うち1回は4時間以上の散水時間を設定する。また、広い室内のため、上段と下段の温度が均一になりにくく、培地重量のバラつきが生じやすい。これを解消するため、パレット単位で天地返しを実施する。
いずれにしても、培地はこの工程、つまり(サ)欄の工程において表面の皮膜が白色の状態から黄土色に変化し樹皮化してくることを目処とする。
【0028】
(従来との比較)
本発明の実施形態では(表4の(サ)の右欄参照)、日数に関しては16〜21日とし、温度帯は24〜28°Cと高めに管理する。日数は従来の工程より4〜7日短縮となるが、間断散水時間の下限を18時間とした。散水時間を多めに設定することにより培地の発熱効果を促進させ短期間でも熟成作用が円滑に移行できる。
また、次の工程である培養(三)工程に移行する際には検品洗浄を実施し、不良培地を選別する。洗浄をすることにより滅菌処理を施し、後期工程においての培地自体のバクテリア、有害菌の付着による障害、未熟を防止する。また、この時点で検品を実施することにより完熟状態になった培地の完成度を上げることにより繋がり、また、不良品も廃棄せずに再皮膜を施せる割合が増加させることができる。併せてコンテナ単位の天地返しを実施し培地重量のバラつきを防止する。
【0029】
(6)中間洗浄工程
〔表4〕(シの欄)
先の熟成前期培養工程と次の熟成後期培養工程とにおいて培養室を変えることとし、その移動の際に、検品とともに洗浄することとした。この場合、コンテナ単位で洗浄し、不良品を選別するために、コンテナCの積み上げの8段目から順次下へ検品しながら洗浄し、他のパレットへ天地替えのように下から順に積み上げた。洗浄については、0.3ppm塩素滅菌水を噴霧しながら、皮膜3(図4参照)の表面を洗い出すようにする。
【0030】
検品は、皮膜3について、ハゲ(中のおが屑等が見えていること)、腐れ、スミダレ(真っ黒に変化すること)、厚膜(皮膜3が過度に厚い)などが見られるものを選別し、また、袋の破片が付着しているときはそれを剥がす等して行う。なお、コンテナCの移転によりパレットが空くと、それをスミパイン1000倍液で消毒する。
【0031】
(従来との比較)
特許文献1等の他の発明には当該中間洗浄工程は存在しなく(表4の(シ)左欄参照)、熟成培養工程は連続的に行われる。本願発明では、この中間洗浄工程が非常に重要である。洗浄によって皮膜3はやゝ薄膜となり通気性が良好となり、しかも、この時に、表面の菌糸体が洗い流されることになって、皮膜3の表面に新規に菌糸の再生の余地を付与することになり、菌糸体に再び活性化させる機会を与えることになるからである。その結果、完熟に至らない(セルロース/リグニンの値が低い)時点において培養を完了することによって、培地Paの熟成人工榾木Pに発芽促進および活性が維持される。
【0032】
(7)熟成後期培養工程(培養(三)(後期)工程)
〔表4〕(スの欄)
培養(三)(前期)工程を経て培地の表面は黄土色に変化した状態にあり、さらに温度管理(20〜24°C)、間断散水管理(2〜28°C)を施し、表面を茶褐色に変化させ完全熟成させる。
【0033】
(従来との比較)
熟成期間を19〜24日とし、温度管理は24〜28°Cと高めに設定する。また、間断散水時間は14〜18時間と従来と比較して長く設定する。
この理由としてはこれまで記してきたように培地の発熱、品温に留意したものであり、熟成を促進させるためである。また、これまでの各工程の管理手法の相乗効果が影響し、この工程の時点で完熟効果が見受けられる培地を多く確認している。
【0034】
(8)出荷検品工程
〔表5〕(セ、ソの欄)
不具合のない製品として出荷するために検査する工程である。
【0035】
(熟成日数の合計に関して)
熟成日数とは培養(二)、(三)(前期、後期)をあわせた日数であり、50〜65日以下を目処とし、55日を基本としているが、本発明は以上のような各工程の取り組みにより40〜55日間で主成分であるセルロース/リグニンの比率が1.8〜3.2以下の値における(直ちに椎茸の発芽に臨ませ得る)完熟型培地の生産を可能にした。表6、表7、表8は、同比率以下の榾木について発芽させた。
【0036】
セルロース/リグニンの比率は、「JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.60および61」の試験結果による。また、表6に、上記のように生産した熟成人工榾木Pにより椎茸を栽培した結果を、特許文献1(比較例)との比較で示す。これに示すように、栽培可能な日数はほゞ同じであるが、椎茸の収穫量と品質が圧倒的に違っている。品質については、表7では変形率について示す通り、本発明の場合が優れている。また、表8では等級別品率について示したが、厚肉、半開きの大きさ、新鮮度(裏側が白いものが新鮮)等を基準として、良質なものから順にA,B,C,Dとランク付けしてそれぞれの収穫割合を示した。また、単に鮮度が良いばかりでなく、鮮度が長く維持され傷まないことも本願発明の場合の椎茸の品質について言える特徴でもある。
【表6】

【0037】
【表7】

【0038】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施形態として示す袋詰め培地の正面図である。
【図2】この発明の実施に使用する特殊コンテナの斜視図である。
【図3】散水時における同コンテナの使用例を示す正面図である。
【図4】この発明の実施として培地が熟成した熟成人工榾木(又は熟成培養工程中の培地)を示す一部切欠した斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
P 椎茸の熟成人工榾木
Pa 培地
C コンテナ
1 レトルト袋
2 植菌穴
3 皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
材料を水で練り固めたブロック状の培地に、種菌の増殖により表面が白色ないし霜降り状の皮膜で覆われるまで全体的に菌糸を蔓延させる初期培養工程に続いて、適度の温度条件の環境下において裸の培地に間断に散水を施して菌糸の増殖をさらに促進することにより椎茸の発芽手前の状態にまで管理する熟成培養工程を設けた椎茸の熟成人工榾木の製造方法において、その熟成培養工程を、皮膜が白色ないし霜降り状から黄土色に変化するまで管理する熟成前期培養工程と、黄土色から茶褐色に変化するまで管理する熟成後期培養工程とに分け、その両工程の間に、洗浄水の吹きつけにより皮膜を洗う中間洗浄工程を設けることを特徴とする椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項2】
材料を水で練り固めたブロック状の培地に種菌を接種するにおいて、種菌を充填する植菌穴の径および深さを大きくとることを特徴とする請求項1記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項3】
滅菌工程においては、処理温度の幅を広げ(119°C〜121°C)、蒸らし時間を20〜30分と10分間程度短縮することを特徴とする請求項1又は2記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項4】
熟成培養工程において、自動的に一定の温度管理がなされた倉庫に搬入し、規定の日数が経過すると搬出されるという自動倉庫システムを併用することを特徴とする請求項1,2または3記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項5】
初期培養工程において、レトルト袋入りの培地に培養を施し、破袋後の培地については、0.3ppm以下の水道飲料水レベルの塩素水で洗浄することを特徴とする請求項1,2,3または4記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項6】
培地を熟成させるについて、培地を収納したコンテナを多段に積み重ね、最上段に空コンテナを載せ、この状態でキャスター付き台車に搭載し、積載にパレットは用いないことを特徴とする請求項1,2,3,4または5記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項7】
熟成前期培養工程において、間断散水時間の下限を18時間とし、散水時間を多めに設定することを特徴とする請求項1,2,3,4,5または6記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。
【請求項8】
熟成後期培養工程において、熟成期間を19〜24日とし、温度管理は24〜28°Cと高めに設定し、また、間断散水時間は14〜18時間と従来と比較して長く設定することを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6または7記載の椎茸の熟成人工榾木の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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