説明

樹脂型枠

【課題】 使用状態の把握が容易な樹脂型枠を提供する。
【解決手段】 本樹脂型枠は、打設されるコンクリートに接触する接触面と、接触面と平行で接触面の反対側に位置する非接触面とを有する樹脂型枠本体と、非接触面に固定され透明又は半透明の材料からなるバーコード担体10であって、非接触面と平行な平行面2と、非接触面と垂直な複数の垂直面3〜6とを有するバーコード担体と、バーコード担体の底部内に溜められる着色液体と、平行面と複数の垂直面のそれぞれに貼着される複数のバーコードラベル7と、複数のバーコードラベル7には、当該バーコードラベルが貼着された面が鉛直下向きとなり、着色液体により着色される際にのみ有効となり、それ以外では無効となる欠落部8を有するバーコードが表記されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用状態の把握を容易にした樹脂型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素に代表される温室効果ガス対策は、人類が直ちに解決を目指すべき重要な課題の一つである。経済の失速を防止しつつ二酸化炭素削減を強力に実施すべきである。本出願人は、コンクリートを養生するために使用される型枠の分野における新規な提案を行う。
【0003】
型枠の主要な材料は、現在に至るも南洋材を伐採して製造されるコンクリートパネル(通常「コンパネ」と略称する。)である。
【0004】
これに変わるものとして、樹脂型枠が開発され実用に供されている。樹脂型枠には完全なリサイクルが可能なものがあり、次世代型枠として注目されている。
【0005】
しかしながら、第1に、樹脂型枠の単価はコンパネの単価の5倍程度となる、第2に、初期投資が多大になる、第3に、単一現場で償却できない、という諸問題が内在する。
【0006】
使用回数を加味して、コストについて述べると、コンパネの転用(繰り返し使用)回数は、通常約5回程度であるが、樹脂型枠の転用回数は約50回であり、コンパネの10倍である。単価を使用回数で単純に割ると、使用回数1回あたりの単価は、コンパネの方が樹脂型枠の2倍程度高くなる。つまり、樹脂型枠は、環境負荷の面だけでなく使用回数あたりの単価の面でも、コンパネよりも優れている。
【0007】
しかしながら、次に述べるように、樹脂型枠を長期使用する際にその使用時間を有効に管理するための手段が存在しないため、樹脂型枠は本格的に実用される状態には至っていない。
【0008】
例えば、型枠が壁、梁、床等、構築すべき建物の部分によって、現場に持ち込まれ、組み込まれるが、その後、コンクリートが打設されてから養生が進行し、離型されるまでの時間が大きく異なる。
【0009】
このような使用部分における使用時間の差を含めて管理をするための技術手段は存在しない。現実には、現場監督らの勘に頼った使用がなされているに過ぎない。
【特許文献1】特開2004−332301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、使用状態の把握が容易な樹脂型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明に係る樹脂型枠は、打設されるコンクリートに接触する接触面と、接触面と平行で接触面の反対側に位置する非接触面とを有する樹脂型枠本体と、非接触面に固定され透明又は半透明の材料からなるバーコード担体であって、非接触面と平行な平行面と、非接触面と垂直な複数の垂直面とを有するバーコード担体と、バーコード担体の底部内に溜められる着色液体と、平行面と複数の垂直面のそれぞれに貼着される複数のバーコードラベルと、複数のバーコードラベルには、当該バーコードラベルが貼着された面が鉛直下向きとなり、着色液体により着色される際にのみ有効となり、それ以外では無効となる欠落部を有するバーコードが表記されている。
【0012】
この構成により、建物の使用部位(使用期間)に応じて、着色液体が重力の作用で鉛直下向きの正しい面に集中し、この面のバーコードラベルの欠落部が補完され読み取り可能となるが、他の面のバーコードラベルの欠落部は補完されず、無効となる。したがって、使用部位による使用期間の差を反映した管理が可能となり、樹脂型枠の使用状態を容易に把握することができる。
【0013】
第2の発明に係る樹脂型枠では、バーコード担体は、透明板からなる立方体である。
【0014】
この構成により、バーコード担体をシンプルかつ容易に形成することができ、正しい面において着直液体による欠落部の補完を確実に実行できる。
【0015】
第3の発明に係る樹脂型枠では、着色液体は、黒色液体である。
【0016】
この構成により、バーコードの白黒パターンと同様に、補完される欠落部の読み取りを実行できる。
【0017】
第4の発明に係る樹脂型枠では、バーコードは、1次元バーコードであり、第5の発明に係る樹脂型枠では、バーコードは、2次元バーコードである。
【0018】
これらの構成により、種々の形態のバーコードを担持すべき情報量に応じて選択することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、着色液体により鉛直下向きに位置するバーコードのみが有効となり、このバーコードは、使用の態様を示し、使用箇所における使用時間の差を反映した管理を実施できる。これにより、樹脂型枠を長期使用する際に、正確な時間管理が可能となり、樹脂型枠の使用促進に資することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず、本形態に係る樹脂型枠の説明に先立ち、樹脂型枠が実用的に利用されていない現状への解決策等を述べる。
【0021】
「背景技術」の項で述べたが、樹脂型枠を使用する際の初期投資の問題は、樹脂型枠を取り扱うレンタル・リース会社を立ち上げれば、対応可能である。
【0022】
しかしながら、各現場において各樹脂型枠が実際に使用される回数を、誰(どこ)がどのように管理するかが未解決であるため、未だレンタル・リース体制が取れていないのが現状である。
【0023】
<場所>
移動中の経路を除けば、重要な場所は、レンタル・リース会社のストックヤード(多数の樹脂型枠を整理保管する場所)、同会社の集中管理室(各樹脂型枠の貸し出し・返却を集中的に管理するセクション)及び実際の現場(貸し出された樹脂型枠が使用される場所であり、これは極めて多岐にわたる。)である。
【0024】
<要領>
(1)貸し出された樹脂型枠は、現場でくみ上げられる毎に、建物のどの箇所に使用されるかが決定される。その都度、現場作業員あるいはそれを管理する監督等が各樹脂型枠の使用回数を読み込む。
【0025】
(2)当該労働力の提供に対する対価を適正に取り扱うため、エコポイント制等を導入する考え方は有力である。しかしながら、(1)において、入力される使用回数が正確であることを保証できる判定法、逆に言えば、不正入力の防止法を確立しなければならない。
【0026】
<その他>
現状では、もし各樹脂型枠の使用履歴を申告できるようにしたとしても、その申告の内容の正否は、現場の良心にゆだねるしかなかった。この点が、上記レンタル・リース業が成立しない原因ということができる。
【0027】
ここで、樹脂型枠は、その使用される建物の部位により、その使用日数(養生日数)が異なるし、1年という工期中でも、10回使用される樹脂型枠があるかと思えば、3回しか使用されない樹脂型枠もある。レンタル・リースの料金は、このような使用日数に基づいて定めるのが通常である。
【0028】
また、使用型枠といえども無限日数使用できるものではなく、使用日数には限界があり、おそらく樹脂型枠のメーカが樹脂型枠の型番毎に保障使用回数(例えば50日等)を設定し、保障使用回数に達したか、あるいはそれに近い使用回数となった樹脂型枠をリサイクルに回すという取り扱いになるであろう。
【0029】
<考察>
エコポイント制を導入したとしても、レンタル・リース会社の目が届かない現場において、作業員等が入力する情報の信頼性を担保できる手法が必要である。
【0030】
この点について、本発明者らは、次の点に着目した。即ち、建物の使用部位が、壁、柱、梁の側面等、垂直な面であるときは、使用型枠のうち、コンクリートに接する接触面は、垂直に使用され、養生期間は約7日程度の短期であるということができる。
【0031】
また、建物の使用部位が、スラブ底、梁底等、水平な面であるときは、使用型枠のうち、コンクリートに接する接触面は、水平に使用され、養生期間は約28日程度の長期であるということができる。全体的に考えれば、このように、使用期間を短期と長期の2つに分類すれば、実用上十分である。
【0032】
レンタル・リース料金をごまかす(過小評価する)意図があるか否かは問わず、実際には長期で使用しているにもかかわらず、短期であると申告すれば、これは虚偽申告となる。逆に、短期で使用しているにもかかわらず、長期と申告すれば、いたずらにリサイクルする周期を短縮する結果となり、これも環境に配慮するという点からして好ましくない。
【0033】
即ち、樹脂型枠の使用期間が短期と長期とのいずれかであるかを、作業員等の意図がどうであれ、間違いなく正確に申告できるキーデバイスがあれば、問題は一気に解決に向かうということができる。本発明者らは、このためのキーデバイスを鋭意研究し、本発明を完成するに至ったものである。
【0034】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0035】
ここで、図1は、本発明の一実施の形態におけるバーコード担体の展開図、図2は、本発明の一実施の形態におけるバーコード担体の斜視図、図3は、本発明の一実施の形態における樹脂型枠(縦置き)の斜視図、図4は、本発明の一実施の形態における樹脂型枠(縦置き)の斜視図、図5は、本発明の一実施の形態における樹脂型枠(水平置き)の斜視図、図6は、本発明の一実施の形態における樹脂型枠(水平置き)の斜視図である。
【0036】
図1に示すように、本形態のバーコード担体は、樹脂型枠の非接触面に固定され透明又は半透明の材料(例えばアクリル製の透明パネル)を組み合わせて構成される。
【0037】
本形態では、透明で正方形をなす樹脂板を接合して、透明の立方体のバーコード担体としている。接合面1は、樹脂型枠の非接触面に、例えば接着等により、固定される。
【0038】
平行面2は、接合面1及び樹脂型枠の非接触面及び接触面と平行である。
【0039】
垂直面3〜6は、平行面2、接合面1及び樹脂型枠の非接触面及び接触面と垂直である。
【0040】
しかしながら、後の説明から明らかなように、非接触面と平行な平行面2と、非接触面と垂直な複数の垂直面3〜6とを有すれば十分であり、例えば、直方体、多角柱(例えば六角柱や八角柱)等、種々変更できる。
【0041】
接合面1は、樹脂型枠の非接触面に固定されるから、外部から視認できず、バーコード7は貼着されない。但し、あまり意味はないが貼着してはならないということではない。
【0042】
平行面2と、複数の垂直面3〜6とのそれぞれには、バーコード7が貼着される。図1では、1次元バーコードが例示されているが、2次元バーコードとすることもできる。
【0043】
特筆すべきは、バーコード7の一部が欠落部8となっており、欠落部8がそのままの状態にあるときは、無効とされる点である。図1では、欠落部8は一箇所としているが、複数箇所とすることもできる。
【0044】
欠落部8は、バーコードラベル7の一部を透明又は半透明として構成しても良いし、あるいは、バーコードラベル7そのものの一部を欠落(つまりその部分では貼らずに)させて構成しても良い。
【0045】
バーコードラベル7に担持させる情報は、全ての面において一致させても良いし、ほとんど共通させるが、各面を識別する情報を付加するなど一致しない部分を設けても良い。
【0046】
いずれにせよ、接合面1を除く、平行面2、垂直面3〜6のそれぞれにバーコードラベル7を貼っておく。
【0047】
そして、少量の着色液体9をバーコード担体10の内部に溜めておく。着色液体9としては、望ましくは、黒インク等が使用されるが、欠落部8の奥に着色液体9が存在した際、欠落部8が欠落部8そのものとしてではなく、黒色の部分であると、バーコードリーダあるいはセンサに認識されさえすればよく、着色液体9は、濃い色をすることが望ましいが、必ずしも真っ黒でなくてもよい。
【0048】
ここで、着色液体9は、バーコード担体10の内部空間のわずかの容量を占める程度の体積とする。このようにすると、バーコード担体10がとりうる様々な姿勢において、最も底(つまり鉛直下向き)となる面に着色液体9が集中して溜まり、着色液体9が溜まる方向が重力の向きを示すからである。
【0049】
あまり着色液体9の体積を大きくすると、最も底ではない(側面となる)面の欠落部8にまで着色液体9が至り、その欠落部8が補完されるおそれがあるから好ましくない。
【0050】
ここで、着色液体9の移動は、重力の作用によるものであるから、電池等、外部エネルギ源は、不要である点においても有利である。
【0051】
このバーコード担体10を樹脂型枠14に固定した際において、上述した短期/長期の使用期間を識別する過程を以下図3〜図6を参照しながら説明する。
【0052】
まず、上述したように、建物の使用部位が、壁、柱、梁の側面等、垂直な面であるときは、使用型枠のうち、コンクリートに接する接触面は、垂直に使用され、養生期間は約7日程度の短期である。
【0053】
この場合、図3、図4に示すような位置関係になる。即ち、このとき、接触面13が垂直となり、接触面13と平行面2は、平行であるから、平行面2は、垂直となる。なお、樹脂型枠14の接触面13は、フラットであるが、それと平行で反対側の非接触面11側には、通常補強のためのリブ12が適宜形成される。
【0054】
逆に、垂直面3〜6のうち2面は垂直となり、残りの2面は水平となる。ここで、水平な残りの2面のうち、一方(つまり垂直面3〜6のうちの一面)は、鉛直下向きで水平という姿勢になる。
【0055】
したがって、この一方に着色液体9が集中し、この一方に貼着されたバーコードラベル7の欠落部8のみが補完され、有効となる。逆に、他のバーコードラベル7は全て無効であり、読み取り不能である。
【0056】
言い換えれば、作業員等は、樹脂型枠14を組み上げた状態で、バーコード担体10の底に向けてバーコードリーダまたはセンサを当てればよいのであって、難しいことは何も考える必要はない。
【0057】
但し、万一誤った面のバーコードラベルにバーコードリーダまたはセンサを当てても、読み取り不能であるから、作業員等は自らの誤りに気づくことができる。
【0058】
建物の使用部位が、スラブ底、梁底等、水平な面であるときは、使用型枠のうち、コンクリートに接する接触面は、水平に使用され、養生期間は約28日程度の長期である。
【0059】
この場合、図5、図6に示すような位置関係になる。即ち、このとき、接触面13が水平となり、接触面13と平行面2は、平行であるから、平行面2は、鉛直下向きで水平となる。
【0060】
逆に、垂直面3〜6は、全て垂直となる。
【0061】
したがって、平行面2のみに着色液体9が集中し、平行面2に貼着されたバーコードラベル7の欠落部8のみが補完され、有効となる。逆に、他のバーコードラベル7は全て無効であり、読み取り不能である。
【0062】
言い換えれば、この場合においても、作業員等は、樹脂型枠14をくみ上げた状態で、バーコード担体10の底に向けてバーコードリーダまたはセンサを当てればよいのであって、難しいことは何も考える必要はない。
【0063】
但し、万一誤った面のバーコードラベルにバーコードリーダまたはセンサを当てても、読み取り不能であるから、作業員等は自らの誤りに気づくことができる。
【0064】
以上により、建物の使用部位にあわせて、正しい位置にあるバーコードラベルのみが読み取り可能となる。
【0065】
言い換えれば、本形態のバーコード担体10は、樹脂型枠の使用期間が短期と長期とのいずれかであるかを、作業員等の意図がどうであれ、間違いなく正確に申告できるキーデバイスとなることが理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の樹脂型枠は、例えば、樹脂型枠をレンタル・リースする分野において、各樹脂型枠の使用回数を管理するために好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施の形態におけるバーコード担体の展開図
【図2】本発明の一実施の形態におけるバーコード担体の斜視図
【図3】本発明の一実施の形態における樹脂型枠(縦置き)の斜視図
【図4】本発明の一実施の形態における樹脂型枠(縦置き)の斜視図
【図5】本発明の一実施の形態における樹脂型枠(水平置き)の斜視図
【図6】本発明の一実施の形態における樹脂型枠(水平置き)の斜視図
【符号の説明】
【0068】
1 接合面(平行面)
2 平行面
3〜6 垂直面
7 バーコードラベル
8 欠落部
9 着色液体
10 バーコード担体
11 非接触面
12 リブ
13 接触面
14 樹脂型枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
打設されるコンクリートに接触する接触面と、前記接触面と平行で前記接触面の反対側に位置する非接触面とを有する樹脂型枠本体と、
前記非接触面に固定され透明又は半透明の材料からなるバーコード担体であって、前記非接触面と平行な平行面と、前記非接触面と垂直な複数の垂直面とを有するバーコード担体と、
前記バーコード担体の底部内に溜められる着色液体と、
前記平行面と前記複数の垂直面のそれぞれに貼着される複数のバーコードラベルと、
前記複数のバーコードラベルには、当該バーコードラベルが貼着された面が鉛直下向きとなり、前記着色液体により着色される際にのみ有効となり、それ以外では無効となる欠落部を有するバーコードが表記されていることを特徴とする樹脂型枠。
【請求項2】
前記バーコード担体は、透明板からなる立方体である請求項1記載の樹脂型枠。
【請求項3】
前記着色液体は、黒色液体である請求項1または2記載の樹脂型枠。
【請求項4】
前記前記バーコードは、1次元バーコードである請求項1から3のいずれかに記載の樹脂型枠。
【請求項5】
前記前記バーコードは、2次元バーコードである請求項1から3のいずれかに記載の樹脂型枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74601(P2011−74601A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224601(P2009−224601)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(508012611)株式会社JUST.WILL (9)
【Fターム(参考)】