説明

樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け構造並びに樹脂製ケースへの樹脂部品取付け方法

【課題】樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を取付けるための取付けスペースを小さくして、取付け部品の外形形状内のスペースに納める。
【解決手段】樹脂製のケースを構成する上ケースに樹脂製の取付け部品である操作ボタンユニット部7を組み付けるために、上ケースに嵌合突起15,16を突設すると共に、操作ボタンユニット部7に嵌合孔を形成しておき、嵌合孔に嵌合突起15,16を嵌合することによって操作ボタンユニット部7を上ケースに取付ける場合、嵌合孔を、操作ボタンユニット部7の取付け部位10,10aにおいて、ユニットケース9に帯状片部11,13の一端側を一体に植設すると共に、帯状片部11,13の他端側を孔形状部12,14に形成した後、取付け部位10、10aに対して切り離して、孔形状部12,14が弾性的に拡開可能にすることにより構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電話機などの電子機器のような、樹脂製ケースにキーユニット等の取付け部品を取付けるための樹脂製ケースへの樹脂製の取付け部品取付け構造並びに取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の樹脂製ケースへの樹脂製の取付け部品取付け構造は、樹脂製のケースに嵌合突起を突設し、嵌合突起が嵌合する嵌合孔を取付け部品側に突設した取付けボスに形成しておき、嵌合孔に嵌合突起を圧入することによって、樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を取付けるようにしていた。
【0003】
そして、従来技術に一例として、前記嵌合突起の側壁部に突条を設けて、嵌合突起を嵌合孔に挿入するとき、突条を潰しながら圧入固定されるものが知られており、この場合、嵌合突起を一度嵌合孔に圧入してしまうと、突条が潰れていることから、何度も圧入嵌合を繰り返すことができないものである(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−23746号公報。
【0004】
そこで、嵌合孔に対する嵌合突起の圧入嵌合を容易にしかも圧入嵌合を繰り返し行えるようにするために、嵌合孔の一部から続くスリット部を形成しておき、このスリット部によって、嵌合孔が嵌合突起の圧入嵌合時に弾性的に拡開するように構成していたものも知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、嵌合孔が嵌合突起の圧入嵌合時に弾性的に拡開させるように構成するには、スリット形状がある程度長く形成する必要があり、このためには、嵌合孔部分はスリット部を含めてある程度大きく形成する必要がある。
【0006】
この結果、嵌合孔は、取付け部品において形成スペースを大きく占有することになり、樹脂製のケースにできるだけ多くの取付け部品を取付けるように構成する場合の妨げとなっており、また、取付け部品の外形形状内のスペースに、嵌合孔を収めることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑み、樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を取付けるための取付けスペースを小さくして、取付け部品の外形形状内のスペースに納めることが可能な樹脂製ケースへの樹脂製の取付け部品取付け構造並びに樹脂製ケースへの樹脂部品取付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、樹脂製のケースに樹脂製の部品を組み付けるために、ケースに嵌合突起を突設すると共に、取付け部品に嵌合孔を形成しておき、嵌合孔に嵌合突起を嵌合することによって取付け部品をケースに取付けるように構成する場合、嵌合孔を、取付け部品の取付け部位に帯状片部の一端側を一体に植設すると共に、帯状片部の他端側を孔形状部に形成した後、取付け部位に対して切り離して、孔形状部が弾性的に拡開可能にすることにより構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成する本発明は、取付け部品側の孔形状部を帯状片部によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、取付け部品の外形形状内の内方に納めることができることから、樹脂製のケース側を省スペース化することができて、他の多数の取付け部品の取付けを確保することができるばかりでなく、嵌合突起を孔形状部に圧入嵌合する際、孔形状部を弾性変形可能な帯状片部によって構成し、帯状片部の他端側を弾性変形させながら拡開させて嵌合突起を圧入嵌合させることができて、従来の取付けボスを取付け孔に嵌合するよりも容易に行うことができ、取付け部品のケースへの仮止め構造として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
請求項1に記載の本発明は、樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を組み付けるために、ケースに嵌合突起を突設すると共に、取付け部品に嵌合孔を形成しておき、嵌合孔に嵌合突起を嵌合することによって取付け部品をケースに取付けるように構成した樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品の取付け構造であって、嵌合孔を、取付け部品の取付け部位に帯状片部の一端側を一体に植設すると共に、帯状片部の他端側を孔形状部に形成した後、取付け部位に対して切り離して、孔形状部が弾性的に拡開可能に構成したことを特徴とする。
【0011】
かかる構成により、取付け部品側の孔形状部を帯状片部によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、取付け部品の外形形状内の内方に納めることができることから、樹脂製のケース側を省スペース化することができて、他の多数の取付け部品の取付けを確保することができるばかりでなく、嵌合突起を孔形状部に圧入嵌合する際、孔形状部を弾性変形可能な帯状片部によって構成し、帯状片部の他端側を弾性変形させながら拡開させて嵌合突起を圧入嵌合させることができて、従来の取付けボスを取付け孔に嵌合するよりも容易に行うことができ、取付け部品のケースへの仮止め構造として最適である。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の発明における帯状片部が、取付け部品の外形形状内方側に形成したことを特徴とするものである。
【0013】
かかる構成により、取付け孔を構成する帯状片部を取付け部品の外形形状内の内方に納めることによって、樹脂製のケース側に多数の取付け部品の取付けを確保することができ、ケース自体の大型化を防ぐことができる。
【0014】
請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の発明におけるケースが、電子機器用ケースであることを特徴とする。
【0015】
かかる構成により、電子機器用ケースにおいて、取付け部品側の孔形状部を帯状片部によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、取付け部品の外形形状内の内方に納めることができることから、電子機器用ケース側に多数の取付け部品の取付けを確保することができ、ケース自体の大型化を防ぐことができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の発明における電子機器用ケースが電話機の上ケースであり、取付け部品が電話機におけるキーユニットであることを特徴とする。
【0017】
かかる構成により、電話機において、キーユニット側の孔形状部を帯状片部によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、取付け部品の外形形状内の内方に納めることができることから、上ケース側に多数の取付け部品の取付けを確保することができ、電話機自体の大型化を防ぐことができる。
【0018】
請求項5に記載の本発明は、樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を組み付ける場合、ケースに突設した嵌合突起を、取付け部品に形成した嵌合孔に嵌合することによって取付け部品をケースに取付けるように構成した樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け方法であって、取付け部品の取付け部位に一体に一端側を植設した帯状片部の他端側を、孔形状部に形成した後、所定の間隙を持って取付け部品の取付け部位に対して切り離して、孔形状部を弾性的に拡開しながら嵌合突起に嵌合し、その後、孔形状部の復帰力により嵌合突起を弾性的に抱持嵌合して、ケースに前記取付け部品を取り付けたことを特徴とするものである。
【0019】
かかる構成によれば、取付け部品側の孔形状部を帯状片部によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、取付け部品の外形形状内の内方に納めることができることから、樹脂製のケース側に多数の取付け部品の取付けを確保することができるばかりでなく、嵌合突起を孔形状部に圧入嵌合する際、孔形状部を弾性変形可能な帯状片部によって構成し、帯状片部の他端側を弾性変形させながら拡開させて嵌合突起を圧入嵌合させることができて、従来の取付けボスを取付け孔に嵌合するよりも容易に行うことができ、取付け部品のケースへの仮止め構造として最適である。
【0020】
以下、図を用いて本発明を実施するための最良の形態における実施例を説明する。
【0021】
図1は、本発明にかかる実施例を採用した電子機器としての電話機を描画した平面図、図2は図1における上面カバーの裏面側から描画した背面図、図3は図2におけるキーユニットの一例である操作ボタンユニット部を取り外した状態における分解斜視図、図4は同じく操作ボタンユニット部を拡大して描画した平面図である。
【0022】
先ず、図1及び図2に示すように、電子機器としての電話機を構成する種々の部品を搭載する上ケース1は、不図示の下ケースと共に樹脂製のケース2を構成している。
【0023】
上ケース1には、その表面に表出させるように、ハンドセット置部3、ディスプレイ部4の他に、ファンクションキー群をユニット化したファンクションキーユニット部5、ダイヤルボタン群をユニット化したダイヤルボタンユニット部6、或いは、モニターボタン7a、音量ボタン7b、発信・保留ボタン7cをユニット化した操作ボタンユニット部7等のキーユニット8が配設されている。
【0024】
そして、キーユニット8の例えば、操作ボタンユニット部7は、図3に示すように、モニターボタン7a、音量調整ボタン7b、発信・保留ボタン7cをそれぞれ押し動作可能に支承するユニットケース9を有して構成している。
【0025】
ユニットケース9は、ケース2と同様に樹脂の成形品であり、略長方形の外形形状を呈する外形枠体部9aとモニターボタン7a、音量調整ボタン7b、発信・保留ボタン7cの間を区切るように配設された仕切り枠体部9bを有して構成している。
【0026】
そして、外形枠体部9aとモニターボタン7a及び音量調整ボタン7bの間を仕切る仕切り枠体部9bとの交差部において、仕切り枠体部9bが弧状となって二股に分かれて、仕切り枠体部9bに取り囲まれた部分がユニットケース9の第1の取付け部位10を構成しており、取付け部位10内には、外形枠体部9aから一端側が延在して第1の帯状片部11が植設されている。
【0027】
第1の帯状片部11は、外形枠体部9aの肉厚より薄肉状に形成され、且つ、他端側が巻回されることにより嵌合孔を構成する第1の孔形状部12を形成した後、取付け部位10に対して所定の間隙を持って切り離されて、第1の孔形状部12を弾性的に拡開可能に構成している。
【0028】
かかる構成により、帯状片部11は、外形枠体部9aの外形形状内の内方に納められるように配置されている。
【0029】
また、第2の取付け部位10aである発信・保留ボタン7cが対向する外形枠体部9aの部位には、外形枠体部9aの外形形状の外方に突出するように、やはり嵌合孔を構成する第2の帯状片部13が形成されている。
【0030】
第2の帯状片部13は、やはり外形枠体部9aの肉厚より薄肉状に形成され、且つ、他端側が巻回されることにより第2の孔形状部14を形成した後、外形枠体部9aに対して所定の間隙を持って切り離され、第2の孔形状部14を弾性的に拡開可能に構成している。
【0031】
かかる構成により、外形枠体部9aの外形形状部の外側において、第2の取付け部位10aが形成されている。
【0032】
また、上ケース1の天井部壁1aには、第1及び第2孔形状部12,14に嵌合する嵌合突起15、16がそれぞれ突設されている。
【0033】
嵌合突起15、16は、上ケースの天井部壁1a側の基端側に、複数のリブ15a、16aが形成されていて、帯状片部11、13の受け部を構成している。
【0034】
以上のように構成する本発明において、図3に示す状態から、ユニットケース9を上ケースの所定の位置に取付ける場合、上ケース1側の嵌合突起15、16に、帯状片部11、13がそれぞれ形成する孔形状部12、14に嵌合する。
【0035】
この際、嵌合する過程で、帯状片部11、13は,嵌合突起15、16の嵌入により弾性変形して、孔形状部12、14を拡径し、嵌合突起15、16の嵌合を円滑に行い、帯状片部11,13がリブ15a、16aの先端に当接して受けられた状態で、帯状片部11、13の復帰力により、嵌合突起15,16を弾性的に抱持して、ユニットケース9が上ケース1に取り付けられることになる。
【0036】
したがって、キーユニット8を構成する操作ボタンユニット部7側の孔形状部12,14をそれぞれ帯状片部11,13によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、操作ボタンユニット部7における外形枠体9aの外形形状内の内方に納めることができることから、樹脂製のケース2を構成する上ケース1側は省スペース化できることにより他の多数の取付け部品の取付け部位を確保して、電話機の大型化を防ぐことができるばかりでなく、嵌合突起15,16を孔形状部12,14に圧入嵌合する際、孔形状部12,13を弾性変形可能な帯状片部11,13によって構成し、帯状片部11,13の他端側を弾性変形させながら拡開させて嵌合突起15,16を圧入嵌合させることができて、従来の取付けボスを取付け孔に嵌合するよりも容易に行うことができ、操作ボタンユニット部7の上ケース2への仮止め構造として最適である。
【0037】
なお、上記実施の形態における帯状片部11,13と同様に、やはりキーユニット8を構成するダイヤルボタンユニット部6のユニットケース20にも、別の帯状片部17が形成され、上ケース1の天井部壁1aに形成した嵌合突起18に嵌合する孔形状部を構成して、ユニットケース20を上ケース1に取付けるようにしている。
【0038】
また、上記実施の形態においては、両帯状片部11,13によってそれぞれ形成される両孔形状部12,14は円弧状に形成したが、これに限定されるものではなく、多角形状やV字形、U字形に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明は、取付け部品側の孔形状部を帯状片部によって構成したために、従来の嵌合突起が占有するスペースより小さくすることができ、しかも、取付け部品の外形形状内の内方に納めることができることから、樹脂製のケース側の省スペース化を果たして他の多数の取付け部品の取付けを確保して、電子機器のケースの大型化を防ぐことができるばかりでなく、嵌合突起を孔形状部に圧入嵌合する際、孔形状部を弾性変形可能な帯状片部によって構成し、帯状片部の他端側を弾性変形させながら拡開させて嵌合突起を圧入嵌合させることができて、従来の取付けボスを取付け孔に嵌合するよりも容易に行うことができ、取付け部品のケースへの仮止め構造として最適となるために、電話機などの電子機器のような、樹脂製ケースにキーユニット等の取付け部品を取付けるための樹脂製ケースへの樹脂製の取付け部品取付け構造並びに取付け方法等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる実施例を採用した電子機器としての電話機を描画した平面図
【図2】図1における上面カバーの裏面側から描画した背面図
【図3】図2における操作ボタンユニット部を取り外した状態における分解斜視図
【図4】同じく操作ボタンユニット部を拡大して描画した平面図
【符号の説明】
【0041】
1 上ケース
2 ケース
7 操作ボタンユニット部(キーユニットの一例)
8 キーユニット(取付け部品)
9 ユニットケース
10 第1の取付け部位
10a 第2の取付け部位
11 第1の帯状片部
12 第1の孔形状部(嵌合孔)
13 第2の帯状片部
14 第2の孔形状部(嵌合孔)
15、16 嵌合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を組み付けるために、前記ケースに嵌合突起を突設すると共に、前記取付け部品に嵌合孔を形成しておき、前記嵌合孔に前記嵌合突起を嵌合することによって前記取付け部品を前記ケースに取付けるように構成した樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品の取付け構造であって、前記嵌合孔を、前記取付け部品の取付け部位に帯状片部の一端側を一体に植設すると共に、帯状片部の他端側を孔形状部に形成した後、前記取付け部位に対して切り離されていて、前記孔形状部が弾性的に拡開可能にすることにより構成したことを特徴とする樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け構造。
【請求項2】
前記帯状片部は、前記取付け部品の外形形状内方側に形成したことを特徴とする請求項1に記載の樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け構造。
【請求項3】
前記ケースが、電子機器用ケースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け構造。
【請求項4】
前記電子機器用ケースが電話機の上ケースであり、前記取付け部品が前記電話機におけるキーユニットであることを特徴とする請求項3に記載の樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け構造。
【請求項5】
樹脂製のケースに樹脂製の取付け部品を組み付ける場合、前記ケースに突設した嵌合突起を、前記取付け部品に形成した嵌合孔に嵌合することによって前記取付け部品を前記ケースに取付けるように構成した樹脂製ケースへの樹脂製取付け部品取付け方法であって、前記取付け部品の取付け部位に一体に一端側を植設した帯状片部の他端側を、孔形状部に形成した後、所定の間隙を持って前記取付け部品の取付け部位に対して切り離した状態として、前記孔形状部を弾性的に拡開しながら前記嵌合突起に嵌合し、その後、前記孔形状部の復帰力により前記嵌合突起を弾性的に抱持嵌合して、前記ケースに前記取付け部品を取り付けたことを特徴とする樹脂製ケースへの樹脂部品取付け方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−173407(P2007−173407A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−367014(P2005−367014)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】