説明

橋梁劣化監視記録装置および橋梁劣化監視記録システム

【目的】
道路橋や線路橋等の橋梁強度の調査費用が膨大になり、さらに橋梁の強度(寿命)を正確に予測できないという問題を解決することを目的としている。
【構成】
道路橋の部材などの変異量を監視記録する目的で制御回路にて発光時間を制御した先鋭な光ビームを照射する送光装置を被監視物に固着し、その光ビームを安定した場所に固定した受光装置にて受光し、上記の受光装置に上記の光ビームを受光する受光素子の列を設けて、光ビームが照射した受光素子の信号出力を増幅した電流によって表面が変色する記録体に記録針を通して供給し、被監視物の変位量を監視、記録することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック・鉄道等が鉄道橋や道路橋等の橋梁を通過する際に生じる振動の方向と振幅を定期的に監視・記録(記憶)することによって、橋梁の劣化状況を直視的に監視し、定量評価できる橋梁劣化監視記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長年の使用に耐えてきた橋梁の一つである道路橋の強度(寿命)は、その道路橋の建設年次を参考に50年を経過したものを順次調査し診断していた。従来の方法としては、専門企業の専門家による目視点検が主であった。この目視点検において、クレーン等を用い、大掛かりな作業となっていた。その他の方法としては、道路橋の多くの場所に加速度センサーやひずみ計などを取り付け、これら複数の計測器から多くのデータを取り、それらを専門家(専門企業)が分析予測することにより、補修時期や架け替え時期などを決定していた。
これら大掛かりな装置を用いる作業、そして専門家及び専門会社に依頼しなければならない分析予測を省き、かつ単純に橋梁を監視・記録する必要がある。
【0003】
図5は、従来技術の特許文献1の構成例を示す図である。
特許文献1では、非接触式振動・変位計測装置であるMは、計測対象領域に対して照準を定めるレンズ部11と、計測対象領域にレーザ光を照射する照射部12と、レーザ光の反射光を受光する受光部13と、を備える光学系15と、光学系15を駆動する駆動部20と、レンズ部11によって計測対象領域に照準が定められた時の駆動部20の制御情報を記憶する記憶部25と、駆動部20の制御情報に基づいて照射部12から照射されるレーザ光の照準を定める照準位置規定部と、照準位置規定部により定められた照準にレーザ光を照射し、計測対象領域の振動又は変位によって生じる反射光の出力の変化を検出する検出部と、反射光の出力の変化に基づいて計測対象領域の変位状態又は振動状態を解析する振動解析部30とを備えることにより、レーザードップラーを利用し測定の簡易化を図っている。
【0004】
また、特許文献2では、構造物の振動特性の非接触計測システムにおいて、レーザードップラーを用いる場合、橋梁などの高い箇所を計測対象面とする時、レーザーが反射する面を如何に設定するかが問題となることを解決するために、レーザー光を利用した構造物の振動特性の非接触計測装置に、ペイント弾を着弾させ再帰性反射塗料を付着させることにより非接触計測対象面を形成し、河川橋梁や高所等、従来反射ターゲットとして用いてきた再帰性反射シール等を簡単に貼付できない場所へ迅速にかつ的確に非接触計測対象面を形成することができ、振動測定による構造物検査作業の効率化と安全性を向上させている。更に、構造物の振動を長距離非接触測定できる新しいシステムであるUドップラー装置から照射されたレーザー光は、再帰性反射が行われるので、その再帰性反射したレーザー光をUドップラー装置で的確に検出することができ、正確な非接触計測を実施している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−309899号公報
【特許文献2】特開2008−281422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法では道路橋の強度調査費用が膨大になってしまうことや道路橋の強度(寿命)を正確に予測できないなどの問題があった。また、財政難のために寿命のきた道路橋を見逃してしまい、補修工事が遅延したり、架け替え工事も実施できないなど、人命に係わる大きな問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
道路橋の部材などの変異量を監視記録する目的で制御回路にて発光時間を制御した先鋭な光ビームを照射する送光装置を被監視物に固着し、その光ビームを安定した場所に固定した受光装置にて受光し、上記の受光装置に上記の光ビームを受光する受光素子の列を設けて、光ビームが照射した受光素子の信号出力を増幅した電流によって表面が変色する記録体に記録針を通して供給し、被監視物の変位量を監視、記録することを特徴としている。
【0008】
また、受光装置を被監視物に固着し、送光装置を固定場所に設置するように設置場所の変更が可能としている。
【0009】
さらに、蓄電池(バッテリー)を搭載または別置きして、AC100V電源が供給されないところでも使用可能となっている。
【0010】
また更に、無線LANカードを搭載し、無線通信機能をもたせ採取データの無線送信が可能としている。
【発明の効果】
【0011】
今回の道路橋の劣化の自動監視装置を用いて、道路橋の数箇所の振動の方向と振動の振幅データを毎年定期的に採取し、そのデータの経年における変化の度合いを直視的に確認・分析することで道路橋の劣化の度合いを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の送光部の構成を説明する図。
【図2】この発明の受光部の構成を説明する図。
【図3】送光部から放射された光ビームを受光部にて、電気信号として得る経路を説明する図。
【図4】変位量の一例を示す図。
【図5】従来技術の一例を示す図。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明を含む送光装置の要部を示す。
1−1は振動を受けて変位する、例えば橋梁(きょうりょう)の部材のような被監視物で、1−2は発光体で、1−3に示す発光制御回路によって、後述のように発光の休止時間と開始時間と、発光に必要な電力を供給する時間が制御される。
【0014】
1−4は集光器で発光体1−2の光ビーム1−5を収束し、後述する図2にて示す受光装置を指向する光ビーム1−5を発射する。
発光制御回路の出力1−6は、後述する受光装置(図2)の動作を自動的に操作する信号を送り出す。
【0015】
図2は受光装置で図1にて示した送光装置が発射した光ビーム1−5を受光装置の容器2−2にて収納した受光素子の列2−4にて受光する。
受光素子の容器2−2の内部は、反射防止加工2−3が施してあり、光ビーム1−5以外の光が受光素子の列2−4に入射しないようにしてある。
受光素子の列2−4は、例えばフォトダイオードを変位量の変化が区別(認識)できる程度の間隔で配列したもので、上記のフォトダイオードの間隔は後述する図4にて示す変位量の記録にて説明する。
【0016】
信号出力2−5は、上記フォトダイオードの出力電流を増幅し、記録信号ケーブル2−6によって、変位量の記録(図4)の説明に示した記録針の列4−1に供給する。
【0017】
図3は光ビーム1−5から電気信号を得る経路を示す。
受光素子の列2−4の信号出力2−5は増幅回路の列3−3に供給され、増幅されて、記録信号のケーブル2−6をとおって、記録電気信号の列3−7として、記録針の列4−1に供給される。
本実施例では、記録面3−8を記録紙としている。
記録基板3−5の表面には記録面3−8の表面に電流を流すことによって変色する物質が付着しており、後述のように光ビーム1−5を受光した位置に変色像を作る。
3−2は、受光素子の列2−4が光ビーム1−5を電気信号に変換するために必要な電力を受光素子の列2−4に供給するための受光素子の電源である。
また、3−4は、受光素子の列から出力された信号出力2−5を増幅して、記録面3−8に接触できるように配列した記録針の列3−6と、信号出力2−5が供給される増幅回路の列3−3とに必要な電力を供給するための記録用電源である。
【0018】
図4は変位量の記録例4−4と記録面の送り方向4−3などを示す。記録針の列4−1に記録信号のケーブル2−6から伝送される記録電気信号の列3−7の電流によって記録面3−8が変色される。記録面3−8には変位量の目盛4−2と光ビーム1−5の記録を開始する時間マーク4−6と記録休止のマーク4−7を発光制御回路1−3の制御信号に従って作図する。
記録面3−8は、矢印(←―)にて示した記録面の送り方向に進められる。
上記のような動作で変位量の記録例4−4に例示したような光ビーム1−5の変位量が記録される。
【0019】
記録面3−8は、記録紙を例としているが、図3における3−5乃至3−8の構成を変更(改良)することにより、陰極線管(CRT:Cathode Ray Tube、ブラウン管)、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)等の一般的な表示器にすることも可能である。
【0020】
本実施例において、監視及び記録する方向を変更する場合には、受光装置の設定角度を予定(予測)される光ビームの変位の方向に合致するように設置すればよい。
【0021】
また、本実施例において、監視及び記録の密度を向上させるためには、より尖鋭な光ビームを用い、受光素子の列の受光素子の配置の間隔を縮小すればよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路橋の部材などの変異量を監視記録する目的で制御回路にて発光時間を制御した先鋭な光ビームを照射する送光装置を被監視物に固着し、その光ビームを安定した場所に固定した受光装置にて受光し、上記の受光装置に上記の光ビームを受光する受光素子の列を設けて、光ビームが照射した受光素子の信号出力を増幅した電流によって表面が変色する記録体に記録針を通して供給し、被監視物の変位量を監視、記録することを特徴とする橋梁劣化監視記録装置。
【請求項2】
受光装置を被監視物に固着し、送光装置を固定場所に設置するように設置場所の変更を可能とすることを特徴とする請求項1記載の橋梁劣化監視記録装置。
【請求項3】
蓄電池(バッテリー)を搭載または別置きにすることにより、AC100V電源が供給されないところでも使用可能とすることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載の橋梁劣化監視記録装置。
【請求項4】
無線LANカードを搭載し、無線通信機能をもたせ採取データを無線送信できることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の橋梁劣化監視記録装置。
【請求項5】
被監視物の監視記録装置から無線送信された複数の採取データを遠隔地で受信し、その採取データを集約して表示し集中監視ができる橋梁劣化監視記録装置及び橋梁劣化監視記録システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−122824(P2011−122824A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278150(P2009−278150)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】