説明

機械の作業進行を可視化するための表示ユニットを有する工作機械または生産機械

本発明は工作機械または生産機械に関し、その機械は機械の作業進行およびパラメータ又はそのいずれか一方を可視化するための表示ユニット(4、5)を有し、表示ユニット(4、5)として投影ディスプレイ(4)が設けられている。この表示ユニットは、工作機械または生産機械のオペレータに従来の表示ユニットまたは操作盤にくらべて改善された可視化およびインプットを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械の作業進行およびパラメータ又はそのいずれか一方を可視化するための表示ユニットを有する工作機械または生産機械に関するものである。
【0002】
ほとんどの市販されている工作機械または生産機械は現在、表示ユニットまたは操作盤を有し、それを使用して製造過程ないし生産過程が現場でパラメータ設定、制御かつ監視され得る。表示ユニットとしてその際通常は電子管スクリーンまたはLCDスクリーンが使用される。このスクリーンは通常は機械の横または前に操作盤の一体化構成部分として存在するか、または可動のいわゆる構架に取付けられている。
【0003】
本発明は表示ユニットとして投影ディスプレイが使用されるという考え方に基づいている。その際投影ディスプレイは慣用として存在している従来通常の表示ユニットないし操作盤に付加して、または従来通常の表示ユニットないし操作盤の代わりに使用され得る。
【0004】
図1にはLCDスクリーン9および2つのキーボード10および11を有するこのような操作盤3が示されている。
【0005】
投影ディスプレイでは表示すべき画像は投影装置から不透明な面の上に投影される。これはたとえば特殊鋼または合成樹脂から成っていてよいなんらかの平らな板であってよい。それにより情報が、それらをオペレータが最も容易に受け入れまた対応付け得る場所、たとえば直接に機械ハウジング及び機械の作業空間又はそのいずれか一方に提供され得る。
【0006】
本発明の課題は、工作機械または生産機械のオペレータに対し投影ディスプレイを使用して従来の表示ユニットないし操作盤にくらべて改善された可視化可能性を提供することである。
【0007】
この課題は、冒頭にあげた形式の工作機械または生産機械に対して、表示ユニットとして投影ディスプレイが設けられていることにより解決される。
【0008】
投影装置から画像が投影される板は、その際たとえば温度や汚れのような周囲の影響に対して完全に感応せず、従って従来使用された技術によっては可能でなかった場所においても表示が行われ得る。ディスプレイの大きさは投影技術では本質的に、利用される投影面、すなわち板の大きさによってのみ制限される。それにより表示の大きさ及び同時に表示される情報の量に関する大きいフレキシビリティが生ずる。さらに機械の要求またはカスタマの希望によるスケーリングが問題なく可能である。
【0009】
本発明の第1の有利な実施形態は、投影ディスプレイとして平らな板が設けられ、その上に投影装置を用いて画像が投影されることを特徴とする。このような板は経済的に製作され得る。
【0010】
この関連で板が機械ハウジング及び機械の作業空間内、又はそのいずれか一方に取付け可能であることは有利である。いずれにせよ存在している機械ハウジングに板が特に経済的に取付けられ得る。板が機械の作業空間内に取付けられると、オペレータに製造過程ないし生産過程ならびに板の上に投影装置から投影される情報を同時に目に入れることが可能となる。
【0011】
さらに、この板が機械ハウジングの一体化構成部分であることは有利である。この板が機械ハウジングの一体化構成部分であれば、投影ディスプレイの特に経済的な実現が可能である。
【0012】
さらに、表示ユニットが仮想的な光学的に示されるインプット手段を有し、また制御操作がインプット手段を用いて捕捉可能であり、またそのように機械がオペレータにより制御可能であることは有利である。投影ディスプレイを用いて、情報が表示され得るだけでなく、オペレータからたとえば機械の制御のパラメータ設定および制御命令のような制御操作も通知され得るならば、従来の表示ユニットないし操作盤が完全に投影ディスプレイにより置換され得る。
【0013】
この関連でインプット手段の制御操作がカメラを用いてまたは接触感応性の板を用いて捕捉可能であることは有利である。カメラまたは接触感応性の板を用いてのこのような捕捉は特に信頼できる。
【0014】
本発明の1つの実施例が図面に示されており、以下詳細に説明される。
【0015】
図1には1つの実施例の枠内で本発明による工作機械が示されている。工作機械は作業空間8を有し、そのなかで生産過程ないし製造過程が行われる。この作業空間は2つの引き戸1および2により機械のオペレータの作業領域から隔てられ得るようになっている。図1には両方の引き戸1および2が開かれた状態で示されている。
【0016】
さらに、機械は従来の表示ユニットないし操作盤3を有する。これらは表示目的でLCDスクリーン9を、またインプット手段としてなかんずく2つのキーボード10および11を有する。操作盤3を使用して機械は現場でオペレータにより操作、特にパラメータ設定および制御をされ得る。さらに、引き戸1はガラス板12を備え、引き戸2はガラス板13を備え、これらのガラス板がオペレータに作業空間8のなかの監視を可能にする。
【0017】
引き戸2の外側に平らな板4及び投影装置5が取り付けられている。板4および投影装置5は一緒になっていわゆる投影ディスプレイを形成する。投影装置5はオペレータにより可視的に認識可能な画像を板4の上に投影する。
【0018】
実施例では投影装置5を使用して機械の作業進行およびパラメータ又はそのいずれか一方を可視化するための表示領域7とインプット手段としてのいわゆる仮想的なキーボード領域15とが板4の上に投影される。ここで言及すべきこととして、もちろんインプット手段として例えば仮想的なマウスのような他のインプット手段も考えられる。
【0019】
オペレータにより可視的なキーボード領域15を用いて実行される操作はその際光学的に投影装置5に統合されているカメラにより捕捉され、機械の制御に利用される。仮想的なキーボード領域15はこうして仮想的なタッチスクリーンとして動作する。もちろんインプットの捕捉は代替的に接触感応性の板を用いても行われ得る。
【0020】
こうして実施例では、機械は操作盤3とならんで投影ディスプレイの形態で付加の操作および表示可能性を有する。実施例中の本発明による表示ユニットはこうして表示機能だけでなく操作機能をも有するので、従来の市販の操作盤3はこうして完全に省略されることも可能である。
【0021】
引き戸1および2が閉じられると、窓13のすぐ下側に引き戸2の上に投影ディスプレイを直接に配置することによりオペレータに製造過程の間に投影ディスプレイのなかに表示される情報と作業空間8のなかで進行する過程とを並列に同時に目に入れることが可能である。たとえば誤機能が生じた場合には、オペレータは直接に仮想的なキーボード15を介して相応の制御命令を機械に与えることができる。しかし代替的に板4が直接に、たとえば監視窓13の1つの隅に取り付けられることもできる。
【0022】
もちろん、引き戸2に取り付けられる表示ユニットに付加してまたは代替的に、破線で示されている板6及び破線で示されている投影装置14からなる別の表示ユニットを機械の作業空間8内に取り付けることも考えられ得る。オペレータにこうして、引き戸1および2が開かれた状態で、または引き戸が閉じられた状態では、監視窓12および13を通して、作業空間8内の生産過程ないし製造過程と板6の上に表示される生産過程ないし製造過程に関する情報との並列的、可視的な捕捉が可能になる。
【0023】
しかしこの関連でなかんずく、投影装置14をたとえば故障した機械構成要素または工具構成要素に標識をつけるために利用することも考えられ得る。
【0024】
工作機械または生産機械における場合によっては統合された操作可能性を有する表示ユニットとして投影ディスプレイを使用することは、始動、生産、製造、診断およびサービスの過程における革新的な使用のために特に良く適している。その際にしばしば、情報を可能なかぎり良く作業空間内の進行に結び付けて機械にもたらすことが重要である。既存の機械構成要素のなかに投影ディスプレイを統合することにより、いわば制御の操作および表示が機械と融合される。設置場所の縮小および構成要素の減少により、従来の構成技術により実現されている表示ユニットないし操作盤の使用にくらべてコストの顕著な低減が生ずる。
【0025】
作業空間内またはその近傍に位置する投影ディスプレイを使用してオペレータが情報を自由に利用できることは、始動、生産、製造、診断およびサービスの範囲における決定的な革新を可能にする。すなわち、たとえば製造過程で生じている障害の指摘が発生場所のすぐ近くで可視化され得る。さらに、作業命令が段階的に直接に機械に表示され得るので、これらが、従来の表示ユニットないし操作盤を用いる場合よりも本質的に容易に追随され得る。
【0026】
さらに、この投影ディスプレイは外部の影響に対する特に高い堅牢性により優れているので、これは実際上機械のなか、機械の周りまたは機械そのものの任意の個所に取付けられ得る。情報とならんでインプット手段、たとえばキーボードが投影され、また操作がたとえば投影装置のなかに統合されていてよいカメラを用いて、または接触感応性の板(仮想的なタッチスクリーン)を用いて捕捉されるので、従来の表示ユニットないし操作ユニットが場合によっては完全に省略され得る。
【0027】
本発明による表示ユニットはその際基本的に従来市販の表示ユニットないし操作盤に付加して、または代替として使用され得る。
【0028】
ここで言及すべきこととして、工作機械とは例えば単軸または多軸の旋盤、フライス盤、ボール盤または研削盤と理解され得ることである。工作機械にはまた加工センタ、直線または回転トランスファマシン、レーザ機械または圧延機および歯切り盤も属する。すべてに共通することは、材料が加工され、その際これらの加工が多軸で行われ得ることである。生産機械にはたとえば繊維加工機、合成樹脂加工機、木材加工機、セラミックス加工機または石材加工機が属する。成形技術、包装技術、印刷技術、搬送技術、ポンプ技術、ファン技術の機械、巻き上げ機械ならびにロボットも同じく生産機械に属する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による工作機械の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1、2 引き戸
3 操作盤
4 板
5 投影装置
6 板
7 表示領域
8 作業空間
9 LCDスクリーン
10、11 キーボード
12、13 ガラス板
14 投影装置
15 キーボード領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の作業進行およびパラメータ又はそのいずれか一方を可視化するための表示ユニット(4、5)を有する工作機械または生産機械において、表示ユニット(4、5)として投影ディスプレイ(4)が設けられていることを特徴とする工作機械または生産機械。
【請求項2】
投影ディスプレイ(4)として平らな板(4)が設けられ、その板の上に投影装置(5)を用いて画像(7、15)が投影されることを特徴とする請求項1記載の工作機械または生産機械。
【請求項3】
板(4)が機械ハウジング(2)に及び機械の作業空間(8)内に、又はそのいずれか一方に取付け可能であることを特徴とする請求項2記載の工作機械または生産機械。
【請求項4】
板(4)が機械ハウジングの一体化構成部分であることを特徴とする請求項2記載の工作機械または生産機械。
【請求項5】
表示ユニット(4、5)が仮想的な光学的に示されるインプット手段(15)を有し、また制御ハンドリングがインプット手段(15)を用いて捕捉可能であり、またそのように機械がオペレータにより制御可能であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の工作機械または生産機械。
【請求項6】
インプット手段(15)の操作がカメラを用いてまたは接触感応性の板(4)を用いて捕捉可能であることを特徴とする請求項5記載の工作機械または生産機械。

【公表番号】特表2006−527094(P2006−527094A)
【公表日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508286(P2006−508286)
【出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006138
【国際公開番号】WO2004/108348
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】