説明

歩行型田植機

【課題】苗載せ台の車体前方側に設けた苗横送り機構と、苗載せ台の裏面側に設けた苗縦送り機構とを備えた歩行型田植機において、苗横送り機構と苗縦送り機構との連動手段の泥土付着や、苗縦送り機構の駆動不良を発生しくくしながら苗横送り機構から苗縦送り機構に動力伝達できるようにする。
【解決手段】苗載せ台21が左右の横移送ストロークエンドに到達するに伴って苗横送り軸42の駆動力を苗縦送り動力として取り出す動力取り出し部60を苗横送り機構40に設けてある。動力取り出し部60の出力体61と苗縦送り機構50の入力体55とに連結された車体前後向きの連動杆70を設けてある。苗載せ台21の苗載置部21a,21aの間に位置する仕切り壁部24に、連動杆70が挿通する貫通孔24aを設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操縦ハンドルの車体前方側に上端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で車体横方向に移動自在に設けた苗載せ台と、車体横方向に並んだ複数の苗植え付け機構と、前記苗載せ台を回転駆動自在な苗横送り軸によって前記苗植え付け機構の苗植え運動に連動させて車体横方向に往復移送するよう前記苗載せ台の車体前方側に設けた苗横送り機構と、前記苗載せ台の苗を駆動自在な苗縦送り体によって前記苗植え付け機構に向けて縦送りするよう前記苗載せ台の裏面側に設けた苗縦送り機構とを備えた歩行型田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した歩行型田植機として、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
特許文献1に記載された歩行型田植機では、横送りケース23内に横送りネジ24をすべり子受け25を介して左右幅方向に横断貫通状態に軸架し、横送りネジ24の左右側端と苗載台10の下部左右側壁とを左右一対の連結体31,31を介して連結し、横送りネジ24に噛み合ったすべり子26をすべり子受け25に取り付け、すべり子受け25を回転駆動することにより、横送りネジ24を往復摺動させて苗載台10を左右幅方向に横送りするよう横送り機構22を構成している。
横送りケース23と、苗載台10の下部後壁に取付けた苗縦送り機構38との間に、苗縦送り駆動機構39を介設している。
苗縦送り駆動機構39は、横送りケース23内に軸架した間欠回動軸40と、間欠回動軸40に基端を連結した前後揺動アーム41と、前後揺動アーム41の先端に前端を連結した押引きロッド42と、押引きロッド42の後端に先端を連結した前後揺動片43と、前後揺動片43と支軸44を同じくする上下揺動片45とから構成している。上下揺動片45の先端部を苗縦送り機構38の縦送りカム38aの先端部に当接させて、縦送りカム38aを間欠的に揺動させることにより、苗載台10上にて苗マットを上下縦方向に一定量づつ縦送りする。(各符号は、公報に記載されたものである。)
【0003】
【特許文献1】特開平6−46625号公報(段落〔0020〕、〔0025〕、〔0026〕、図2,6,7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の歩行型田植機において、苗横送り機構から苗縦送り動力を取り出し、この苗縦送り動力を苗縦送り機構に伝達して苗縦送り機構を駆動するよう構成すれば、苗載せ台が左右の横移送ストロークエンドに到達するに伴って苗載せ台の苗を苗植え付け機構に向けて縦送りするという適切なタイミングでの苗縦送りを行いやすい。
上記した従来の技術を適用して苗横送り機構と苗縦送り機構とを連動させた場合、苗横送り機構に設ける動力取り出し部の出力体と苗縦送り機構の入力体とを連動させる連動杆が、苗載せ台の前方から苗載せ台の下方を通って苗載せ台の裏面側に至ることになり、連動杆および連動杆に連結する部材が低い配置レベルに位置して、苗植え付け機構などによって跳ね上げられた泥土が連動杆などに付着しやすくなっていた。
【0005】
前記連動杆を苗載せ台の前方から苗載せ台の横外側を通って苗載せ台の裏面側に至るように配置すると、連動杆の配置レベルを高くすることができる。この場合、連動杆が苗縦送り機構における苗縦送り体の支軸に対してこれの端部で連動し、苗縦送り機構が駆動される際、発生する苗縦送り抵抗によっては、支軸の曲がりや捩れ歪が発生し、連動杆に近い苗縦送り体と連動杆から遠い苗縦送り体との作動量や作動タイミングが異なる駆動不良が発生しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、上記した泥土付着や駆動不良を発生しくくしながら苗横送り機構から苗縦送り機構に動力伝達して苗縦送りをすることができる歩行型田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本第1発明は、操縦ハンドルの車体前方側に上端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で車体横方向に移動自在に設けた苗載せ台と、車体横方向に並んだ複数の苗植え付け機構と、前記苗載せ台を回転駆動自在な苗横送り軸によって前記苗植え付け機構の苗植え運動に連動させて車体横方向に往復移送するよう前記苗載せ台の車体前方側に設けた苗横送り機構と、前記苗載せ台の苗を駆動自在な苗縦送り体によって前記苗植え付け機構に向けて縦送りするよう前記苗載せ台の裏面側に設けた苗縦送り機構とを備えた歩行型田植機において、
前記苗載せ台が左右の横移送ストロークエンドに到達するに伴って前記苗横送り軸の駆動力を苗縦送り動力として取り出す動力取り出し部を前記苗横送り機構に設けるとともに、前記動力取り出し部の出力体と前記苗縦送り機構の入力体とに連結された車体前後向きの連動杆を設け、
前記苗載せ台の隣り合う一対の苗載置部の間に位置する仕切り壁部に、前記連動杆が挿通する貫通孔を設けてある。
【0008】
本第1発明の構成によると、苗載せ台が苗横送り機構によって横移送されて左右の移送ストロークエンドに到達するに伴い、動力取り出し部によって苗横送り軸から苗縦送り動力が取り出され、この苗縦送り動力が出力体から出力される。出力体からの苗縦送り動力を連動杆によって苗縦送り機構の入力体に伝達して苗縦送り機構を駆動できる。連動杆は、苗載せ台の隣り合う一対の苗載置部の間に位置する仕切り壁部に設けた貫通孔を挿通しているから、従来技術を基に連動杆を配置した場合に比べ、連動杆の配置高さを高くして連動杆などの泥付着を発生しにくくした状態で、かつ連動杆を苗縦送り体の支軸に対して苗載せ台横方向での内側に位置する部位で連動させて支軸の歪を発生しにくくした状態で苗縦送り機構を駆動できる。苗縦送り機構を駆動すると、苗縦送り機構の苗縦送り体が苗載せ台の苗を苗植え付け機構に向けて縦送りする。
【0009】
したがって、苗横送り機構から取り出した苗縦送り動力によって苗縦送り機構を駆動して、苗縦送りを適切なタイミングで、かつ構造面などで有利に行わせることができるものでありながら、連動杆などの泥付着による故障や、苗縦送り機構の部材歪による駆動不良が発生しにくくて耐久性や苗送り精度に優れた高品質の歩行型田植機を得ることができる。
【0010】
本第2発明では、前記連動杆が、車体側面視で前記苗載せ台の苗載置面に対して垂直な姿勢で前記仕切り壁部を貫通している。
【0011】
本第2発明の構成によると、本第1発明の構成による作用、効果を奏するに加え、次の作用、効果を奏する。
【0012】
連動杆が苗載せ台の苗載置面に対して傾斜した姿勢で仕切り壁部を貫通すると、連動杆の傾斜姿勢での動きにかかわらず連動杆と仕切り壁部との接触が発生しないように、仕切り壁部の貫通孔の苗載せ台上下方向での大きさを連動杆の外径に比して大にする必要がある。本第2発明の構成によると、連動杆が車体側面視で苗載置面に対して垂直な姿勢で仕切り壁部を貫通しているものだから、仕切り壁部の貫通孔の苗載せ台上下方向での大きさを比較的小にしても、連動杆と仕切り壁部との接触を回避することができる。
【0013】
したがって、連動杆が仕切り壁部を貫通して連動杆などの泥付着による故障や、苗縦送り機構の部材歪を回避しやすいことに加え、苗載せ台が貫通孔の存在にかかわらず強度を備えた高品質の歩行型田植機を得ることができる。
【0014】
本第3発明では、前記連動杆が、前記苗横送り軸の回転軸芯と前記苗縦送り体の回転軸芯とを通る直線よりも低い配置高さに位置している。
【0015】
本第3発明の構成によると、本第1または第2発明の構成による作用、効果を奏するに加え、次の作用、効果を奏する。
【0016】
本第3発明の構成によると、連動杆、動力取り出し部および苗縦送り機構において連動杆に連結される部材の配置高さを低くして、連動杆、動力取り出し部、苗縦送り機構の重量によって田植機全体の重心が高くなることを抑制でき、重心高さの面から揺れ動きにくくて操縦しやすい歩行型田植機を得ることができる。
【0017】
本第4発明は、前記苗載せ台の左右端部から車体前方向きに延出した横連結枠部と、前記左右一対の横連結枠部の延出端部に架設された前連結枠部とを有した連結枠を備え、
前記前連結枠部に、前記苗横送り機構の苗載せ台移送体が連結された受動部を設け、
前記動力取り出し部の前記出力体が前記前連結枠部に揺動自在に支持されている。
【0018】
本第4発明の構成によると、本第1〜第3発明のいずれか一つの構成による作用、効果を奏するに加え、次の作用、効果を奏する
【0019】
本第4発明の構成によると、苗横送り機構の苗載せ台移送体による横移送力を前連結枠部の受動部に伝達させ、受動部に伝わった横移送力を前連結枠部と左右の横連結枠部とによって苗載せ台の両横側に作用させて苗載せ台の横移送を行なわせる。これにより、苗載せ台の両横側に横移送力を作用させて苗載せ台をこじれが発生しにくいようスムーズに横移送できるものでありながら、苗載せ台移送体と連結枠とを苗載せ台横方向での一箇所で連結するだけの構造簡単な連結構造を採用して軽量かつ安価にえることができる。
【0020】
本第5発明は、前記前連結枠部に、前記動力取り出し部の前記出力体を待機位置に位置決めするストッパー部を設けてある。
【0021】
本第5発明の構成によると、本第4発明の構成による作用、効果を奏するに加え、次の作用、効果を奏する。
【0022】
本第5発明の構成によると、前連結枠部をストッパー手段に利用して動力取り出し部の出力体を待機位置に位置決めすることができ、苗載せ台の横移送が行なわれる際、出力体を待機位置に精度よく位置決めできるものでありながら、特別なストッパーを必要としない簡単な構造で済ませて安価に得ることができる。
【0023】
本第6発明は、前記動力取り出し部を、前記出力体を揺動自在に備えるとともに左右一対の常時駆動自在な駆動回転体を備えて構成し、
前記出力体に、前記苗載せ台が左側の横移送ストロークエンドに到達するに伴って前記出力体が前記左側の駆動回転体によって揺動操作されるように前記左側の駆動回転体に当接する左受動部と、前記苗載せ台が右側の横移送ストロークエンドに到達するに伴って前記出力体が前記右側の駆動回転体によって揺動操作されるように前記右側の駆動回転体に当接する右受動部と、前記左受動部と前記右受動部とを一体揺動自在に有した出力体本体とを設けてある。
【0024】
本第6発明の構成によると、本第1〜第5発明のいずれか一つの構成による作用、効果を奏するに加え、次の作用、効果を奏する。
【0025】
本第6発明の構成によると、出力体に左受動部と右受動部とを出力体本体によって連結された強固な構造を備えさせ、左受動部と右受動部のいずれが駆動回転体に当接して揺動操作力を受けた場合でも、歪が発生しないとか発生しにくくて出力不足が無い苗縦送り動力を出力体によって出力させることができ、苗縦送り機構の駆動を精度よくかつ強固に行なわせて精度よい苗縦送りを行わせることができる。
【0026】
本第7発明は、前記前連結枠部に、前記苗載せ台に保持された苗の葉と前記苗植え付け機構との接触を回避するよう前記葉に押圧作用する苗葉押さえ部を設けてある。
【0027】
本第7発明の構成によると、本第4又は本第5発明の構成による作用、効果を奏するに加え、次の作用、効果を奏する。
【0028】
本第7発明の構成によると、前連結枠部を苗葉押さえ手段に利用して苗の葉を苗植え付け機構と接触しにくいように押さえ支持することができ、苗葉の苗植え付け機構との接触による損傷を回避しやすいものでありながら、特別な苗葉押さえを必要としない簡単な構造で済ませて安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る歩行型田植機の全体側面図である。図2は、本発明の実施例に係る歩行型田植機の全体平面図である。これらの図に示すように、本発明の実施例に係る歩行型田植機は、一つの駆動自在な走行車輪1と、車体前部に設けたエンジン2と、車体後部に設けた操縦ハンドル3と、前記エンジン2および前記走行車輪1の上方を覆うボンネット4とを有した自走車を備え、前記操縦ハンドル3の車体前方側に上端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で設けた苗載せ台21と、前記自走車の車体フレーム10の下部に設けた左右一対の接地フロート22,22とを有した苗植え付け部20を備え、前記ボンネット4の後端側の上方に設けた予備苗載せ台5を備えている。
【0030】
この歩行型田植機は、2条の苗植え付け作業を行う。
すなわち、前記自走車の前記車体フレーム10は、前記エンジン2に連設されたミッションケース11と、このミッションケース11の両横側部から車体後方向きに延出した植え付け伝動ケース12と、前記左右一位の植え付け伝動ケース12,12の後端部に前端部が連結されたハンドル支持フレーム13とを備えて構成してある。
【0031】
前記操縦ハンドル3は、前記ハンドル支持フレーム13に連結した車体横向きのハンドル杆と、このハンドル杆の左右端部から車体後方向きに延出した握り部3aとを備えている。
【0032】
前記自走車は、前記ミッションケース11から車体後方向きに上下揺動自在に延出した車輪駆動ケース6の延出端部で前記走行車輪1を駆動自在に支持しており、前記車輪駆動ケース6が昇降シリンダ7によってミッションケース11に対して揺動昇降操作されることにより、走行車輪1が車体フレーム10に対して昇降して車体フレーム10が地面に対して昇降することにより、前記苗植え付け部20を、前記左右一対の接地フロート22,22が田面に接地した下降作業状態と、前記左右一対の接地フロート22,22が田面から上昇した上昇非作業状態とに昇降させる。
【0033】
前記苗植え付け部20を下降作業状態にして自走車を走行させると、前記苗植え付け部20は、前記苗載せ台21の車体前方側に位置する左右一対の苗植え付け機構23,23により、前記接地フロート22の滑動によって整地された田面に苗植え付けを行なう。
【0034】
次に、前記苗植え付け部20について詳述する。
図2,3,5に示すように、前記苗載せ台21は、苗載せ台21の表面側に車体横方向に並べて設けた苗載置部21a,21aと、苗載せ台21の横方向での中間部に前記左右一対の苗載置部21a,21aを仕切るように設けた仕切り壁部24と、苗載せ台21の両横端部に苗載置部21aに載置されたマット状苗A(図5参照)の床土に受け止め作用するよう設けた横壁部25とを備えている。前記苗載せ台21の下端側に配置された苗載せ台摺動ガイドレール26は、これの苗受け止め部26aに左右一対の切り欠きを形成して設けた左右一対の苗取り出し口27,27を備えている。苗載せ台摺動ガイドレール26は、前記ハンドル支持フレーム13に支持されている。
【0035】
図4,5に示すように、前記左右一対の苗植え付け機構23,23は、前記植え付け伝動ケース12の延出端部に駆動回動リンク28および揺動リンク29を介して支持された植え付けアーム23aと、この植え付けアーム23aの先端側に支持された苗植え付け爪23bとを備えて構成してある。
つまり、前記各苗植え付け機構23は、前記駆動回動リンク28が前記植え付け伝動ケース12を介して前記ミッションケース11から伝達される駆動力によって回転駆動されることにより、苗植え付け爪23bの先端が苗載せ台21の下端部と田面との間を回転軌跡を描きながら上下に往復移動するように植え付けアーム23aが駆動回動リンク28の駆動力によって揺動駆動され、苗植え付け爪23bの先端側が、前記苗取り出し口27を通過する際、苗載せ台21の前記左右一対の苗載置部21aに載置されているマット状苗Aの下端部から一株分のブロック苗を切断して取り出し、取り出したブロック苗を苗植え付け爪23bによって下降搬送して田面に植え付けるという苗植え運動を行なう。
【0036】
図1,5に示すように、前記苗載せ台21は、前記苗載せ台摺動ガイドレール26と、前記ハンドル支持フレーム13の上端側に保持された支持体14とに車体横方向に摺動自在に支持されている。
【0037】
図1,3,4,5に示すように、前記苗載せ台21は、これの下端部に車体前方側に突出する状態で設けた連結枠30を備えている。前記連結枠30は、苗載せ台21の前記左右一対の横壁部25,25から車体前方向きに延出したアルミ合金製の横連結枠部31と、前記左右一対の横連結枠部31,31の延出端部に架設されたアルミ合金板で成る前連結枠部32とを備えて構成してある。
【0038】
図10,11に示すように、前記左右一対の横連結枠部31,31は、これの基部から苗載せ台裏面側に延出した連結ブロック部33を備えている。前記連結ブロック部33は、苗載せ台21の裏面側に苗載せ台21の全幅にわたってボルト連結されて前記苗載せ台摺動ガイドレール26に対する係止部を構成しているレール部材34の端部に連結ボルト35によって連結されており、前記横連結枠部31の苗載せ台21に対する取り付け強度を向上させている。前記連結ブロック部33は、横連結枠部31から車体横方向での内側に向かって延出しており、苗載せ台21の横幅が連結ブロック部33のために増大することを防止している。
【0039】
図7に示すように、前記前連結枠部32に、これの車体前方向き面の車体横方向での中央部に支持体36を介して板体を支持させて設けた受動部37を備えさせ、この受動部37と、前記自走車に苗載せ台21の車体前方側に配置して設けた苗横送り機構40の苗載せ台移送体41とを連結してある。
【0040】
図4,7に示すように、前記苗横送り機構40は、前記苗載せ台移送体41を備える他、この苗載せ台移送体41を貫通している車体横向きの苗横送り軸42を備えて構成してある。
【0041】
前記苗横送り軸42は、前記左右一対の植え付け伝動ケース12,12の一方の延出端部に立設された伝動ケース43の上端部と、前記左右一対の植え付け伝動ケース12,12の他方の延出端部に立設された支柱フレーム44の上端部とに駆動回転自在に架設されている。前記苗横送り軸42は、苗横送り軸42の一端側と前記苗載せ台移送体41の一端側とにわたって装着された蛇腹管形の苗横送り軸カバー45、苗横送り軸42の他端側と前記苗載せ台移送体41の他端側とにわたって装着された蛇腹管形の苗横送り軸カバー45を備えている。
【0042】
前記苗載せ台移送体41は、前記苗横送り軸42に相対回転および摺動自在に外嵌した筒部41aと、この筒部41aに内装された送り駒体46と、前記筒部41aから車体後方向きに延出した二又形の出力部41bとを備えている。前記出力部41bは、前記連結枠30の前記受動部37に連結ピン47を介して連結されている。前記送り駒体46は、前記苗横送り軸42の外周面に螺旋状に設けられた送り溝42aに摺動自在に係入している。
【0043】
つまり、苗横送り機構40は、前記苗植え付け機構23が駆動される間は常に、前記ミッションケース11から前記植え付け伝動ケース12と前記伝動ケース43とを介して前記苗横送り軸42の一端側に伝達される駆動力によって苗横送り軸42を回転駆動し、この回転駆動力を前記送り溝42aと前記送り駒体46とによるカム作用によって横移送力に変換して苗載せ台移送体41に伝達することにより、苗横送り軸42の回転駆動力によって苗載せ台移送体41を苗横送り軸42に沿わせて車体左右方向に往復移送し、苗載せ台移送体41の移動力を出力部41bから連結枠30の前記受動部37に出力して連結枠30を介して苗載せ台21に伝達する。
【0044】
これにより、前記苗載せ台21は、苗横送り機構40による連結枠30を介しての移送操作によって苗植え付け機構23の苗植え運動に連動させて苗載せ台摺動ガイドレール26に沿わせて車体左右方向に往復移送されて、左右一対の苗載置部21a,21aに位置するマット状苗Aを対応する苗取り出し口27に対して車体横方向に移送し、左右一対の苗植え付け機構23,23によるマット状苗Aの下端部からのブロック苗の取り出しをマット状苗Aの横方向での一端側から他端側に向けて順次に行なわせる。
【0045】
図5,7に示すように、前記苗載せ台21は、苗載せ台21の下端部の裏面側に苗載せ台21の縦方向に並べて設けた上下一対の苗縦送り軸51,51を有した苗縦送り機構50を備えている。
【0046】
前記苗縦送り機構50は、前記上下一対の苗縦送り軸51,51を備える他、前記上下一対の苗縦送り軸51,51に苗縦送り軸51の長手方向に並べて一体回転自在に設けた回転形の苗縦送り体52と、前記上下一対の苗縦送り軸51,51のうちの下側の苗縦送り軸51の苗載せ台横方向での中央部に設けた一方向回転クラッチ53と、前記上下一対の苗縦送り軸51,51の一端側どうしに巻回された連動チェーン54と備えて構成してある。
【0047】
前記上下一対の苗縦送り軸51,51が一体回転自在に備える前記苗縦送り体52は、左右一対の苗載置部21a,21aに分散している。前記各苗縦送り体52は、回転方向に並んだ苗送り爪を備えている。前記各苗縦送り体52は、回転駆動されると、苗送り爪の先端側が苗載置部21aの裏面側から苗載置面側に突出してマット状苗Aの床土に係止して送り作用することにより、マット状苗Aを苗植え付け機構23に向けて縦送りする。
【0048】
前記苗縦送り機構50は、前記一方向回転クラッチ53の入力部材に一体回転自在に設けた揺動アーム形の入力体55を備えており、この入力体55を下側の苗縦送り軸51の回転軸芯まわりにリターンスプリング56に抗して揺動操作されることにより、入力体55によって一方向回転クラッチ53を介して下側の苗縦送り軸51を回転駆動してこの下側の苗縦送り軸51の苗縦送り体52を苗縦送り方向に回転駆動し、下側の苗縦送り軸51によって前記連動チェーン54を介して上側の苗縦送り軸51を回転駆動してこの上側の苗縦送り軸51の苗縦送り体52を苗縦送り方向に回転駆動し、左右一対の苗載置部21a,21aに位置するマット状苗Aを対応する苗縦送り体52によって苗植え付け機構23に向けて縦送りする。
【0049】
図5,7に示すように、前記苗縦送り機構50の前記入力体55は、前記苗横送り機構40に設けた動力取り出し部60の出力体61に、前記苗載せ台21の前記仕切り壁部24に設けた貫通孔24aと、前記連結枠30の前連結枠部32に設けた貫通孔32aとを挿通した車体前後向きのロッド形の連動杆70によって連動されている。
【0050】
前記動力取り出し部60は、前記出力体61を備える他、前記苗横送り軸42の両端部に一体回転自在に設けたアーム形の駆動回転体62,63を備えて構成してある。
【0051】
図9は、前記出力体61の斜視図である。この図と図5,7とに示すように、前記出力体61は、前記前連結枠部32の車体前方向き面に前記支持体36によって設けられた左右一対の支持部36a,36aに連結ピン64を介して枢支された左右一対の連結アーム61a,61aと、前記左右一対の連結アーム61a,61aの遊端側に連結された出力体本体61bとを備えて構成してある。
これにより、出力体61は、苗載せ台21と共に苗横送り軸42に対して車体左右方向に移動し、かつ前記左右一対の連結ピン64,64が備える車体横向きの揺動軸芯Pまわりに前記連結枠30に対して車体前後方向に揺動する。
【0052】
前記出力体本体61bは、左受動部65と、右受動部66と、前記左受動部65と前記右受動部66との間に位置するとともに前記連動杆70に連結された出力アーム67とを一体揺動自在に備えている。
【0053】
図5は、前記出力体61の待機状態での側面図である。図7に実線で示す前記出力体61は、待機状態での出力体61を示している。これらの図に示すように、苗載せ台21が左右の横移送ストロークエンドに到達するまでの間、前記左受動部65が前記左側の駆動体62に当接せず、かつ前記右受動部66が前記右側の駆動体63に当接せず、前記リターンスプリング56が前記出力体61を揺動軸芯Pまわりに車体前方側に揺動操作して前記出力アーム67の遊端部67aを前記前連結枠部32に前記貫通孔32aの下端側に配置して設けてあるストッパー部68に当接させ、出力体61は、前記ストッパー部68によって待機位置に位置決めされている。
【0054】
図6,8は、前記出力体61の出力状態での側面図である。図7に二点鎖線で示す前記出力体61は、出力状態での出力体61を示している。これらの図に示すように、苗載せ台21が左の横移送ストロークエンドに到達するに伴って出力体61の左受動部65と左側の駆動体62のローラで成る操作部62aとが当接し、苗載せ台21が右の横移送ストロークエンドに到達するに伴って出力体61の右受動部66と右側の駆動体63のローラで成る操作部63aとが当接する。いずれの場合も、出力体61が左側の駆動体62または右側の駆動体63によって揺動軸芯Pまわりに待機位置から車体後方側に揺動操作されて出力アーム67が連動杆70を車体後方側に押し操作する。このとき、出力体61の左右一対の連結アーム61a,61aは、前連結枠部32の貫通孔32bに入り込む。出力体61の待機位置からの揺動角度が必要な苗縦送りストロークに対応するものとして設定した設定揺動角度に達すると、左側の駆動体62が左受動部65から外れ、または右側の駆動体63が右受動部66から外れ、出力体61がリターンスプリング56のために待機位置に戻って連動杆70を車体前方側に引き戻し操作する。
【0055】
図9に示すように、前記左受動部65は、前記左側の駆動体62に当接して駆動力を受けた際の出力体61の歪みを発生させにくいように前記左側の連結アーム61aの近くに位置している。前記右受動部66は、前記右側の駆動体62に当接して駆動力を受けた際の出力体61の歪みを発生させにくいように前記右側の連結アーム61aの近くに位置している。
【0056】
つまり、動力取り出し部60は、左右一対の駆動体62,63を前記苗植え付け機構23が駆動されている間は常に苗横送り軸42によって回転駆動し、出力体61を苗載せ台21と共に車体横方向に往復移動させ、苗載せ台21が左の横移送ストロークエンドに到達するに伴い、左側の駆動体62と出力体61の左受動部65とによって苗横送り軸42の駆動力を苗縦送り動力として取り出し、取り出した苗縦送り動力を出力体61の出力アーム67から連動杆70を介して苗縦送り機構50の入力体55に伝達し、苗載せ台21が右の横移送ストロークエンドに到達するに伴い、右側の駆動体63と出力体61の右受動部66とによって苗横送り軸42の駆動力を苗縦送り動力として取り出し、取り出した苗縦送り動力を出力体61の出力アーム67から連動杆70を介して苗縦送り機構50の入力体55に伝達する。
【0057】
これにより、苗載せ台21は、左右の横移送ストロークエンドに到達するに伴い、動力取り出し部60が苗横送り軸42から苗縦送り動力を取り出すとともにこの苗縦送り動力を連動杆70を介して苗縦送り機構50の入力体55に伝達して苗縦送り機構50が駆動されることにより、左右一対の苗載置部21a,21aに位置するマット状苗Aを苗載置部21aに位置する苗縦送り体52によって苗植え付け機構23に向けて、苗植え付け機構23による苗縦方向での取り出し量に対応した縦送り量だけ縦送りし、左右一対の苗植え付け機構23,23によって取り出されるブロック苗の苗縦方向での大きさを所定の大きさにする。
【0058】
図5,6に示すように、前記連動杆70は、車体側面視で苗載置部21aの苗載置面21bに対して垂直な姿勢で仕切り壁部24の貫通孔24aを挿通した組み付け姿勢を備えており、連動杆70と仕切り壁部24との干渉を防止するよう前記貫通孔24aに備えさせる苗載せ台縦方向での大きさを小に抑制している。
【0059】
図5に示すように、前記連動杆70は、前記苗横送り軸42の回転軸芯と前記下側の苗縦送り軸51が備える苗縦送り体52の回転軸芯とを通る直線Lよりも低い配置高さに位置する組み付け姿勢を備えており、連動杆70、動力取り出し部60や苗縦送り機構50で連動杆70に連結する部材の配置高さを低くして、連動杆70、動力取り出し部60、苗縦送り機構50の重量によって田植機全体の重心が高くなることを抑制している。さらに、連動杆70は、出力体61の直線Lに対して揺動軸芯Pとは反対側に位置する部位に連結しており、出力体61の揺動力を苗縦送り機構50の入力体55に効率よく伝達する。
【0060】
図5に示すように、前記連結枠30の前記前連結枠部32の上端側に車体側面視で車体後方側に突出した湾曲形状の押さえ作用面71aを備えた苗葉押さえ部71を設けてある。この苗葉押さえ部71は、前記左右一対の苗載置部21a,21aに位置するマット状苗Aの葉の先端側を前記押さえ作用面71aによって苗植え付け機構23から離れるように押圧支持し、マット状苗Aの葉と苗植え付け機構23との接触を防止する。
【0061】
図12は、前記車体フレーム10の後部の側面図である。この図に示すように、車体フレーム10は、前記ハンドル支持フレーム13と前記伝動ケース43とにわたって連結された補強部材15を備えている。図示していないが、車体フレーム10は、前記補強部材15と同様に、前記ハンドル支持フレーム13と前記支持フレーム44とにわたって連結された補強部材を備えている。前記左右の補強部材15は、前記動力取り出し部60から苗縦送り機構50に苗縦送り動力が伝達される際、ハンドル支持フレーム13の車体後方側への歪みを防止して伝動を効率よく行なわせる。
【0062】
〔別実施例〕
上記した実施例に替え、車体横方向に並ぶ3つ以上の苗植え付け機構によって苗植え付けする構成を備えた歩行型田植機の場合にも本発明を適用することができる。要するに、苗載せ台の隣り合う一対の苗載置部の間に位置する仕切り壁部に前記連動杆が挿通する貫通孔を設けることにより、本発明の目的を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】歩行型田植機の全体側面図
【図2】歩行型田植機の全体平面図
【図3】苗載せ台の下端部と苗横送り機構の平面図
【図4】伝動構造の概略図
【図5】出力体の待機状態での側面図
【図6】出力体の出力状態での側面図
【図7】苗横送り機構と動力取り出し部の平面図
【図8】出力体の出力状態での側面図
【図9】出力体と受動部の斜視図
【図10】連結枠の側面図
【図11】連結枠と苗載せ台の連結構造の平面図
【図12】車体フレームの後部の側面図
【符号の説明】
【0064】
3 操縦ハンドル
21 苗載せ台
21a 苗載置部
21b 苗載置面
23 苗植え付け機構
24 仕切り壁部
24a 貫通孔
30 連結枠
31 横連結枠部
32 前連結枠部
37 受動部
40 苗横送り機構
41 苗載せ台移送体
42 苗横送り軸
50 苗縦送り機構
52 苗縦送り体
55 入力体
60 動力取り出し部
61 出力体
61b 出力体本体
62,63 駆動回転体
65 左受動部
66 右受動部
68 ストッパー部
70 連動杆
71 苗葉押さえ部
L 直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦ハンドルの車体前方側に上端側ほど車体後方側に位置する傾斜姿勢で車体横方向に移動自在に設けた苗載せ台と、車体横方向に並んだ複数の苗植え付け機構と、前記苗載せ台を回転駆動自在な苗横送り軸によって前記苗植え付け機構の苗植え運動に連動させて車体横方向に往復移送するよう前記苗載せ台の車体前方側に設けた苗横送り機構と、前記苗載せ台の苗を駆動自在な苗縦送り体によって前記苗植え付け機構に向けて縦送りするよう前記苗載せ台の裏面側に設けた苗縦送り機構とを備えた歩行型田植機であって、
前記苗載せ台が左右の横移送ストロークエンドに到達するに伴って前記苗横送り軸の駆動力を苗縦送り動力として取り出す動力取り出し部を前記苗横送り機構に設けるとともに、前記動力取り出し部の出力体と前記苗縦送り機構の入力体とに連結された車体前後向きの連動杆を設け、
前記苗載せ台の隣り合う一対の苗載置部の間に位置する仕切り壁部に、前記連動杆が挿通する貫通孔を設けてある歩行型田植機。
【請求項2】
前記連動杆が、車体側面視で前記苗載せ台の苗載置面に対して垂直な姿勢で前記仕切り壁部を貫通している請求項1記載の歩行型田植機。
【請求項3】
前記連動杆が、前記苗横送り軸の回転軸芯と前記苗縦送り体の回転軸芯とを通る直線よりも低い配置高さに位置している請求項1又は2記載の歩行型田植機。
【請求項4】
前記苗載せ台の左右端部から車体前方向きに延出した横連結枠部と、前記左右一対の横連結枠部の延出端部に架設された前連結枠部とを有した連結枠を備え、
前記前連結枠部に、前記苗横送り機構の苗載せ台移送体が連結された受動部を設け、
前記動力取り出し部の前記出力体が前記前連結枠部に揺動自在に支持されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の歩行型田植機。
【請求項5】
前記前連結枠部に、前記動力取り出し部の前記出力体を待機位置に位置決めするストッパー部を設けてある請求項4記載の歩行型田植機。
【請求項6】
前記動力取り出し部を、前記出力体を揺動自在に備えるとともに左右一対の常時駆動自在な駆動回転体を備えて構成し、
前記出力体に、前記苗載せ台が左側の横移送ストロークエンドに到達するに伴って前記出力体が前記左側の駆動回転体によって揺動操作されるように前記左側の駆動回転体に当接する左受動部と、前記苗載せ台が右側の横移送ストロークエンドに到達するに伴って前記出力体が前記右側の駆動回転体によって揺動操作されるように前記右側の駆動回転体に当接する右受動部と、前記左受動部と前記右受動部とを一体揺動自在に有した出力体本体とを設けてある請求項1〜5のいずれか一項に記載の歩行型田植機。
【請求項7】
前記前連結枠部に、前記苗載せ台に保持された苗の葉と前記苗植え付け機構との接触を回避するよう前記葉に押圧作用する苗葉押さえ部を設けてある請求項4又は5記載の歩行型田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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