説明

歯牙観察装置

【課題】上顎の歯牙あるいは下顎の歯牙のどちらを歯列の方向に沿って順に観察していく場合においても、交換作業を行うことなく観察を行う。
【解決手段】歯牙Aを挟んで両側に対向配置されるように間隔をあけて対向配置された2つの照明光発光部6a,6bと、該照明光発光部6a,6bからの照明光を歯牙Aに照射したときの歯牙Aからの戻り光を撮影する撮像素子8bと、歯牙Aを挟んで両側に配置され、歯牙Aからの戻り光を撮像素子8bまで導く2つの導光路と、点灯させる照明光発光部6a,6bを択一的に設定する発光設定部12と、該発光設定部12により点灯させる照明光発光部6a,6bが設定されたときに、2つの導光路を択一的に切り替える導光路切替部13とを備える歯牙観察装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯牙観察装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯牙を挟んで光源と撮像部とを対向配置し、光源から発せられ歯牙を透過あるいは歯牙において散乱した光を撮像部により撮影することによって歯牙の観察を行う歯牙観察装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この歯牙観察装置は、光源と撮像部との位置関係を反転させた2つのマウスピースを着脱可能に設け、U字状に湾曲する歯列のうち、右側の歯列の歯牙を観察する場合と、左側の歯列の歯牙を観察する場合とで、マウスピースを交換して観察することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6201880号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている歯牙観察装置では、上顎の歯牙あるいは下顎の歯牙のどちらを歯列の方向に沿って順に観察していく場合においても、マウスピースを口腔外に一旦取り出して交換作業を行わなければならず、観察に手間がかかるという問題がある。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、上顎の歯牙あるいは下顎の歯牙のどちらを歯列の方向に沿って順に観察していく場合においても、交換作業を行うことなく観察を行うことができる歯牙観察装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、歯牙を挟んで両側に配置されるように間隔をあけて対向配置された2つの照明光発光部と、該照明光発光部からの照明光を歯牙に照射したときの前記歯牙からの戻り光を撮影する撮像素子と、前記歯牙を挟んで両側に配置され、前記歯牙からの戻り光を前記撮像素子まで導く2つの導光路と、点灯させる前記照明光発光部を択一的に設定する発光設定部と、該発光設定部により点灯させる前記照明光発光部が設定されたときに、前記2つの導光路を択一的に切り替える導光路切替部とを備える歯牙観察装置を提供する。
【0006】
本発明によれば、2つの照明光発光部の間に歯牙を配置して、発光設定部により、いずれか一つの照明光発光部から照明光を射出させると、照明光が歯牙に照射され、歯牙からの戻り光が導光路を経由して撮像素子により撮影される。導光路も歯牙を挟んで両側に2つ配置されており、導光路切替部が戻り光を導光する導光路を択一的に切り替えるので、戻り光は切り替えられた側の導光路を経由して撮像素子に到達する。すなわち、いずれの発光部を選択しても、いずれかの導光路を経由して同じ観察条件で撮像素子により画像を取得することができる。その結果、上顎あるいは下顎の歯列に沿って歯牙の観察を行う際に、右側の歯列と左側の歯列とで、歯牙の表裏の照明光発光部を入れ替えるように配置するだけで、先端部を交換することなく観察し続けることができる。
【0007】
上記発明においては、前記導光路切替部が、前記2つの導光路の合流位置に揺動可能に配置され、揺動角度を変更することにより前記導光路を択一的に切り替えるミラーであってもよい。
このようにすることで、ミラーの揺動角度を変更するだけで、導光路を択一的に切り替えて、単一の撮像素子によって、2つの照明光発光部からの照明光の照射に応じた歯牙からの戻り光を択一的に観察することができる。
【0008】
また、上記発明においては、前記ミラーが、前記撮像素子と前記咬合面との間に配置されるとともに、前記撮像素子と前記咬合面との間から退避可能に設けられていてもよい。
このようにすることで、ミラーを撮像素子と咬合面との間に配置した状態では、ミラーの揺動によって導光路を切り替えて観察を行い、ミラーを撮像素子と咬合面との間から退避させた状態では、撮像素子によって、咬合面から入射される戻り光を撮影して観察することができる。
【0009】
また、上記発明においては、前記照明光発光部が、赤外光または近赤外光を含む照明光を射出し、前記導光路切替部が、前記歯牙を挟んで、前記発光設定部により設定された前記照明光発光部とは反対側に配置される前記導光路により前記歯牙からの戻り光を導光するように切り替えてもよい。
【0010】
このようにすることで、照明光発光部から透過性の高い赤外光または近赤外光からなる照明光を歯牙に照射すると、歯牙において透過または散乱させられた照明光の透過・散乱光からなる戻り光が、歯牙を挟んで照明光発光部とは反対側に射出される。導光路切替部が、戻り光を導光する導光部を、歯牙を挟んで照明光発光部とは反対側の導光路に切り替えているので、切り替えられた導光路を介して戻り光が導光され、撮像素子により撮影される。これにより、歯牙の内部構造を示す画像により歯牙の観察を行うことができる。
【0011】
また、上記発明においては、前記導光路を覆う筐体と、該筐体の前記間隔方向の両端に配置され、該筐体と外部の物体との接触または近接を検出する物体センサと、前記筐体と外部の物体との接触または近接を検出した前記物体センサに対して、前記歯牙を挟んで反対側に配置される照明光発光部を点灯させる点灯制御部を備えていてもよい。
【0012】
このようにすることで、2つの照明光発光部の間に上顎あるいは下顎の歯列の歯牙を配置するように、口腔内に挿入すると、筐体の両端に設けられたいずれかの物体センサに患者の頬の内面が接触あるいは近接し、物体センサにより検出される。点灯制御部は、物体センサからの出力に基づいて、頬の内面が接触あるいは近接したことを検出した物体センサとは反対側の照明光発光部を点灯させるので、右側の歯列の観察においても左側の歯列の観察においても、舌側の照明光発光部を点灯させて、歯牙を透過して頬側の導光路により導光された戻り光を同一条件下で観察することができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記歯牙を挟んで両側に配置され、白色光を射出する2つの白色光発光部を備え、前記発光設定部が、点灯させる前記照明光発光部を設定したときに、設定された前記照明光発光部とは前記歯牙を挟んで反対側に配置される前記白色光発光部を点灯させるよう設定してもよい。
【0014】
このようにすることで、白色光発光部から発せられた白色光が歯牙に照射されると、歯牙の表面において反射した白色光が、白色光発光部と同じ側に配置されている導光部を介して撮像素子に導かれる。これにより撮像素子は、照明光発光部から発せられた近赤外光あるいは赤外光からなる照明光の透過・散乱光画像を取得するとともに、白色光発光部から発せられた白色光の反射光画像を取得することができる。
【0015】
また、上記発明においては、前記撮像素子の前段に配置され、所定の波長を有する励起光を遮断する励起光カットフィルタとを備えていてもよい。
このようにすることで、歯牙に励起光を照射すると、歯牙に投与され、う蝕部位等に特異的に集積する蛍光物質から蛍光が発生する。そして、発生した蛍光は、切り替えられた導光路を介して撮像素子に到達する。これにより、撮像素子によりう蝕部位等の画像を取得することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上顎の歯牙あるいは下顎の歯牙のどちらを歯列の方向に沿って順に観察していく場合においても、交換作業を行うことなく観察を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る歯牙観察装置を示す全体構成図である。
【図2】図1の歯牙観察装置のヘッド部であって、一方のLEDを点灯させた状態を示す縦断面図である。
【図3】図1の歯牙観察装置のヘッド部であって、図2の状態とは異なるLEDを点灯させた状態を示す縦断面図である。
【図4】図2および図3の状態において(a)撮像素子により取得された画像、(b)回転処理を施した画像、(c)反転処理を施した画像をそれぞれ示す図である。
【図5】図1の歯牙観察装置の変形例であって、図2の状態から揺動ミラーを退避させて、歯牙の咬合面を観察している状態を示す縦断面図である。
【図6】図1の歯牙観察装置の変形例であって、励起光発光部を有する歯牙観察装置を示す縦断面図である。
【図7】図1の歯牙観察装置の変形例であって、物体センサを有する歯牙観察装置を示す縦断面図である。
【図8】図1の歯牙観察装置の変形例であって、白色光源を更に有する歯牙観察装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る歯牙観察装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る歯牙観察装置1は、図1に示されるように、口腔内に挿入される挿入部2と、該挿入部2の先端に配置されたヘッド部3と、挿入部2の基端側に配置されたグリップ部4とを備えている。
【0019】
ヘッド部3は、図2に示されるように、歯牙Aの両側に跨って被せられる略U字状の筐体5と、該筐体5が歯牙Aに被せられたときに、歯牙Aを挟んで両側に配置され、それぞれ近赤外光あるいは赤外光を含む照明光を発生する2つのLED(照明光発光部)6a,6bと、同じく歯牙Aを挟んで両側に配置される2つの導光路7a,7bと、該導光路7a,7bにより導光された歯牙Aからの光を撮影する撮像光学系8とを備えている。
【0020】
各導光路7a,7bは、歯牙Aの側面からの光を2回偏向して、歯牙Aの咬合面9の上方に導く2枚の固定ミラー10a,10bをそれぞれ備えている。咬合面9の上方において、2つの導光路7a,7bは合流し、該合流位置には、咬合面9の上方に導かれた光を咬合面9から離れる方向に偏向する揺動ミラー11が設けられている。揺動ミラー11は、その揺動角度を2つの角度位置間で変更することにより、2つの導光路7a,7bの内のいずれかの導光路7a,7bを介して導光されてくる歯牙Aの側面からの光を択一的に偏向して、歯牙Aの咬合面9から離れる方向に指向させるようになっている。
【0021】
撮像光学系8は、筐体5が歯牙Aに被せられ、2つのLED6a,6bが歯牙Aの両側面を挟むように配置されたときに、揺動ミラー11を挟んで歯牙Aの咬合面9に対向する位置に配置されている。撮像光学系8は、揺動ミラー11側から順に、歯牙Aからの光を集光する集光レンズ8aと、該集光レンズ8aにより集光された光を撮影する撮像素子8bとを備えている。この撮像素子8bとしては、例えば、CCDやCMOS等が挙げられる。
【0022】
グリップ部4は、図1に示されるように、スイッチ12と、該スイッチ12からの信号に基づいて点灯させるLED6a,6bを切り替えるとともに、揺動ミラー11の角度位置を切り替える切替制御部13とを備えている。
本実施形態においては、切替制御部13は、スイッチ12が1回押されることにより、一方のLED6a(6b)を点灯させるときには、当該点灯しているLED6a(6b)に対し歯牙Aを挟んで反対側に配置される導光路7a(7b)が利用されるように、揺動ミラー11の角度位置を設定するようになっている。
【0023】
すなわち、図2に示されるように、図面上において、歯牙Aの右側に配置されているLED6aを点灯させるときには、歯牙Aの左側に配置されている導光路7aが利用されるように、揺動ミラー11の角度を+45°の角度に設定するようになっている。一方、図3に示されるように、歯牙Aの左側に配置されているLED6bを点灯させるときには、歯牙Aの右側に配置されている導光路7bが利用されるように、揺動ミラー11の角度を−45°の角度に設定するようになっている。
【0024】
このように構成された本実施形態に係る歯牙観察装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る歯牙観察装置1を用いて歯牙Aの観察を行うには、グリップ部4を把持して挿入部2の先端に配置されたヘッド部3を口腔内に挿入し、上顎あるいは下顎の歯列を跨ぐようにヘッド部3の筐体5を歯牙Aに被せる。これにより、歯牙Aの表側と裏側の両側面に2つのLED6a,6bが近接配置され、かつ、その両側面にそれぞれ導光路7a,7bが配置される。
【0025】
この状態で、グリップ部4に設けられたスイッチ12を押すと、切替制御部13が一方のLED6a(6b)を点灯させるとともに、歯牙Aを挟んで当該LED6a(6b)とは反対側に配置されている導光路7a(7b)が利用されるように揺動ミラー11が揺動させられる。
例えば、歯牙Aの裏側に配置されるLED6aが点灯するように切り替えられると、歯牙Aの表側に配置されている導光路7aが利用されるように揺動ミラー11の揺動角度が切り替えられる。
【0026】
これにより、歯牙Aの裏側のLED6aから発せられた赤外光または近赤外光は、歯牙Aを透過あるいは散乱させられて歯牙Aの表側の導光路7aに入り、導光路7aを構成する2枚の固定ミラー10aによって2回偏向された後、揺動ミラー11によって撮像光学系8の方向に偏向されて、集光レンズ8aにより集光され、撮像素子8bにより撮影される。赤外光または近赤外光は、歯牙Aにおける透過性が高いので、歯牙Aを透過あるいは散乱させられた光が撮像素子8bにより撮影されると、歯牙Aの内部構造、すなわち、エナメル層と象牙層との境界を良好に示す画像が取得されることになる。
【0027】
歯列は、U字状に湾曲しているので、歯列の右側の歯牙Aを観察する場合と、歯列の左側の歯牙Aを観察する場合とでは、歯牙Aに対するヘッド部3の被せ方が反転する。すなわち、歯列の右側の歯牙Aを観察するためにヘッド部3を歯牙Aに被せたときに、当該歯牙Aの裏側に配置されていたLED6aは、歯列の左側の歯牙Aを観察するためにヘッド部3を歯牙Aに被せたときには、当該歯牙Aの表側に配置されるようになる。
【0028】
そこで、観察する歯牙Aを左右に変更したときには、グリップ部4に設けられたスイッチを押すことにより、発光するLED6a,6bおよび利用する導光路7a,7bを切り替えて、いずれの歯牙Aに対しても同一の条件、すなわち、例えば、歯牙Aの裏側から照明して歯牙Aの表側に透過あるいは散乱した光を撮影することができる。この場合に、従来のようにマウスピースを付け替える必要がなく、スイッチ12の操作だけで簡易に切り替えることができるという利点がある。
【0029】
本実施形態に係る歯牙観察装置1によれば、図2および図3に示されるように、歯牙Aから発せられた赤外光あるいは近赤外光の透過・散乱光は固定ミラー10a,10bによって2回、揺動ミラー11によって1回の合計3回変更させられるので、撮像素子8bにより取得される画像は、実際の歯列に対して反転した画像となっている。
また、2つの導光路7a,7bを介した歯牙Aからの光を単一の撮像素子8bにより撮影しているので、上額あるいは下顎の右側の歯列と左側の歯列の歯牙Aを撮影した画像は180°回転している。
【0030】
そこで、図4に示されるように、撮像素子8bにより取得された画像(a)については、画像処理することによって、右側の歯列の画像に対しては右90°回転処理(b)と反転処理(c)とを行い、左側の歯列の画像に対しては左90°回転処理(b)と反転処理(c)とを行うことにより、例えば、歯列に沿って頬側から観察した一連の歯牙Aの画像を得ることができる。
【0031】
なお、本実施形態においては、スイッチ12の操作によっていずれかのLED6a(6b)を点灯させ、いずれかの導光路7a(7b)を利用することとしたが、これに代えて、図5に示されるように、スイッチ12の操作によって、揺動ミラー11を撮像光学系8と歯牙Aの咬合面9との間から退避可能に設けることとしてもよい。このとき、2つのLED6a,6bは同時に点灯させることにしてもよい。
【0032】
このようにすることで、LED6a(6b)から発せられ、歯牙Aにおいて透過あるいは散乱させられた後、歯牙Aの咬合面9から発せられて、撮像光学系8の光軸方向に指向された光が、集光レンズ8aによって集光され、撮像素子8bにより撮影される。これにより、歯牙Aを咬合面9方向から見た歯牙Aの内部構造を示す画像を取得することができる。
【0033】
また、本実施形態に係る歯牙観察装置1においては、図6に示されるように、揺動ミラー11と歯牙Aの咬合面9との間に、歯牙Aに対して励起光を照射する励起光発光部14を備えるとともに、集光レンズ8aと撮像素子8bとの間に、励起光の波長帯域の光のみを遮断する励起光カットフィルタ8cを備えていてもよい。
【0034】
歯牙Aのう蝕の観察は、歯牙Aに蛍光薬剤を塗布して行われる。したがって、励起光発光部14から発生した励起光(例えば、レーザ光)によって励起した蛍光薬剤からの蛍光を、歯牙Aにおける透過あるいは散乱光の導光路7a,7bと同じ導光路7a,7bを経由して撮像素子8bにより撮影することによって、内部構造を明らかに表示した画像中に、う蝕を示す蛍光の画像を重ね合わせた画像を取得することができる。本実施例では、励起光として近赤外光を用いて蛍光薬剤の蛍光を発生させている。励起光の波長は限定されるものではなく、目的の蛍光を励起させる光の波長ならどのようなものでもよい。
【0035】
集光レンズ8aと撮像素子8bとの間に設けられた励起光カットフィルタ8cにより、撮像素子8bの方向に向かう所定の波長を有する励起光が遮断されるので、撮像素子8bには、励起光を取り除かれた蛍光が入射し、鮮明な画像を取得することができる。これにより、エナメル層と象牙層との境界に対して、う蝕がどの程度進達しているのかを容易かつ鮮明に観察することができる。
【0036】
また、本実施形態においては、図7に示されるように、グリップ部4に設けたスイッチ12に代えて、筐体5の両側面に外部の物体(例えば、頬の内面B)の近接または接触を検出する物体センサ15a,15bを設けてもよい。この場合に、切替制御部13は、物体センサ15a,15bの出力に基づいて、LED6a,6bおよび揺動ミラー11を切り替えるようになっている。
【0037】
例えば、患者の頬の内面Bが一方の物体センサ15a(15b)に近接または接触したことが検出された場合には、歯牙Aを挟んでその物体センサ15a(15b)とは反対側に配置されているLED6a(6b)を点灯させることとすればよい。この場合には、常に、歯牙Aの裏側に配置されたLED6aによって歯牙Aを照明し、歯牙Aの表側に配置された導光路7aを利用して導光した光を検出することができる。また、物体の接触あるいは近接を検出した物体センサ15a(15b)と同じ側に配置されているLED6b(6a)によって歯牙Aを照明し、反対側に配置されている導光路7b(7a)を利用することにしてもよい。
【0038】
また、本実施形態においては、図8に示されるように、白色光を発生する白色光源16a,16bを配置することにしてもよい。白色光は歯牙Aの表面において反射するので、赤外光あるいは近赤外光を発生するLED6a,6bとは逆に、歯牙Aに対して導光路7a,7bと同じ側に配されるものが点灯させられるようになっている。
【0039】
図8に示す例では、歯牙Aを挟んで物体センサ15aとは反対側のLED6aが点灯し、物体センサ15aと同じ側の導光路7aが利用可能となるように揺動ミラー11の角度位置が設定され、かつ、物体センサ15aと同じ側の白色光源16aが点灯させられている。また、励起光を発生する励起光発光部14も点灯している。
これにより、歯牙Aの内部構造を示す透過・散乱光の画像と、う蝕を示す蛍光画像と、歯牙Aの外観を表す白色光画像とが重ね合わせられた状態で撮像素子8bにより取得されることになる。
【0040】
図8に示す例では、物体センサ15a,15b、励起光発光部14および励起光カットフィルタ8c、白色光源16a,16bおよびLED6a,6bを全て含んだものを例示したが、物体センサ15a,15bの代わりに図1のスイッチ12を採用してもよいし、励起光発光部14、白色光源16a,16bおよびLED6a,6bのいずれか1つのみを備えることとしてもよい。
【0041】
また、励起光発光部14としては、外部に設けたレーザ光源(図示略)からのレーザ光を導く光ファイバ(図示略)の端部を配置してもよいし、レーザ光を発生するレーザダイオードのような光源自体を配置してもよい。
【符号の説明】
【0042】
A 歯牙
B 頬の内面(物体)
1 歯牙観察装置
5 筐体
6a,6b LED(照明光発光部)
7a,7b 導光路
8b 撮像素子
8c 励起光カットフィルタ
9 咬合面
11 揺動ミラー(ミラー)
12 スイッチ(発光設定部)
13 切替制御部(導光路切替部、点灯制御部)
14 励起光発光部
15a,15b 物体センサ
16a,16b 白色光源(白色光発光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙を挟んで対向配置されるように間隔をあけて対向配置された2つの照明光発光部と、
該照明光発光部からの照明光を歯牙に照射したときの前記歯牙からの戻り光を撮影する撮像素子と、
前記歯牙を挟んで両側に配置され、前記歯牙からの戻り光を前記撮像素子まで導く2つの導光路と、
点灯させる前記照明光発光部を択一的に設定する発光設定部と、
該発光設定部により点灯させる前記照明光発光部が設定されたときに、前記2つの導光路を択一的に切り替える導光路切替部とを備える歯牙観察装置。
【請求項2】
前記導光路切替部が、前記2つの導光路の合流位置に揺動可能に配置され、揺動角度を変更することにより前記導光路を択一的に切り替えるミラーである請求項1に記載の歯牙観察装置。
【請求項3】
前記ミラーが、前記撮像素子と前記咬合面との間に配置されるとともに、前記撮像素子と前記咬合面との間から退避可能に設けられている請求項2に記載の歯牙観察装置。
【請求項4】
前記照明光発光部が、赤外光または近赤外光を含む照明光を射出し、
前記導光路切替部が、前記歯牙を挟んで、前記発光設定部により設定された前記照明光発光部とは反対側に配置される前記導光路により前記歯牙からの戻り光を導光するように切り替える請求項1から請求項3のいずれかに記載の歯牙観察装置。
【請求項5】
前記導光路を覆う筐体と、
該筐体の前記間隔方向の両端に配置され、該筐体と外部の物体との接触または近接を検出する物体センサと、
前記筐体と外部の物体との接触または近接を検出した前記物体センサに対して、前記歯牙を挟んで反対側に配置される照明光発光部を点灯させる点灯制御部を備える請求項4に記載の歯牙観察装置。
【請求項6】
前記歯牙を挟んで両側に配置され、白色光を射出する2つの白色光発光部を備え、
前記発光設定部が、点灯させる前記照明光発光部を設定したときに、設定された前記照明光発光部とは前記歯牙を挟んで反対側に配置される前記白色光発光部を点灯させるよう設定する請求項4または請求項5に記載の歯牙観察装置。
【請求項7】
前記撮像素子の前段に配置され、所定の波長を有する励起光を遮断する励起光カットフィルタを備える請求項1から請求項6のいずれかに記載の歯牙観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−147909(P2012−147909A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8245(P2011−8245)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】