説明

気相環境浄化材及びその製造方法

【課題】 化石燃料をエネルギー源とする大型燃焼装置からの排煙中に含まれる高温度・高濃度のNOxやPM等を除去・低減し得る気相環境浄化材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 無機質材料として石炭灰を30〜60重量%、水酸化カルシウムを10〜30重量%、木質炭素化物を2〜4重量%、及び水を互いに混練(P3,P4)してペースト状の混練物とし、これを成形型に入れて(P5)、70〜95℃の加温環境下で硬化促進し(P6)、無機質材料の融点近傍の1250℃で焼結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相環境の浄化を図るための気相環境浄化材であって、特に高温気相環境下にある窒素酸化物等の大気汚染物質、中でも化石燃料をエネルギー源とする大型燃焼装置からの排煙中に含まれる高温度・高濃度の窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM:Particle Materials)等の有害な大気汚染物質を消去無害化して気相環境を浄化するために用いられる気相環境浄化材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前の20世紀からの科学と技術の顕著な発展によって、一部先進国において数多くの利便性と快適性を与えられたが、一方で資源とエネルギーの著しい消費による地球規模の温暖化、有害ガスの発生等の環境破壊が進み、21世紀は人類存亡の危機に直面しているとも言われるようになっている。地球温暖化は、エネルギー消費の拡大に伴う二酸化炭素(CO)等の温室効果ガスの増加に基づくもので、現在の高度の科学技術をもってしてもエネルギーを化石資源に求める限り、CO等の発生量を抑制する技術はほぼ限界に達しつつある。かかるCOの発生量を抑える手段として、近年、樹木の炭素固定能力が評価され、森林資源の持続的成長と生態系の保続管理に不可欠な樹木の炭化物としての合理的利用が脚光を浴びており、これらのことが大きく期待される時代となっている。
【0003】
又、わが国では大都市圏やトンネル等の覆蓋道路や大都市圏における工場や自動車からの排気ガス、特に人体に有害な窒素酸化物(以下「NOx」と表記する)や、粒子状物質(以下「PM」と表記する)の汚染が深刻となっている。NOx、特に二酸化窒素(NO)の主な発生源としては、石油や石炭等の化石燃料をエネルギー源とする火力発電所,大型重工業産業,及び,産業廃棄物処理場等における大型燃焼装置である固定発生源と、ディーゼル車等の移動発生源とがある。主要大気汚染物質のうちNOx、特にNOは光オキシダントの原因物質とされ、大都市圏や覆蓋道路では環境基準の1時間値の1日平均値の0.04〜0.06ppmを上回る10ppm以上の高い濃度で推移している。
【0004】
これらの影響を抑えるため排気ガスの発生源や拡散後の周辺環境、特にトンネル等の覆蓋道路における大気環境の浄化技術が研究され、NOxの濃縮や、加熱脱着操作等の手法がとられることもあった。ところが、これらの手法は稼動エネルギー消費が大きく、設備費・運転費も厖大な額に達することから、現状では、それら覆蓋道路の閉鎖空間の浄化は、排気装置により汚染空気を外部に放出拡散させるという手法により行われるのが殆どになっている。
【0005】
一方、固定発生源からのNOx抑制策としては、運転条件の変更や燃焼装置の改善と、燃料の転換や燃料の脱窒等の燃料の改善とがあるが、現状では重油から硫黄分を除去するような技術は確立されていない。このため、固定発生源である大型燃焼装置からの排煙中のNOx除去技術は、発生した排煙中の高温度、高濃度のNOxを除去する方法・技術で、今後のNOx低減対策上極めて重要である。
【0006】
ここで、化石燃料をエネルギー源としている大型燃焼炉や、多様な物質を燃焼しているゴミ焼却施設等の大型燃焼装置からの排煙浄化の現状の装置としてバグフィルターがあるが、これは煤塵、塩化水素、硫黄酸化物(SOx)、水銀、ダイオキシン類の吸着に限定され、NOxのそれは不可能である。また、排煙に苛性ソーダ水溶液を吹きかける湿式洗煙装置や、汚染浄化に広く用いられている活性炭塔があるがいずれもNOx浄化の対象とはならない。
【0007】
又、例えばチタン、バナジウム、タングステン、モリブデン等の酸化物を触媒とし、アンモニアを添加する触媒脱硝装置や、高温度下で尿素を添加する無触媒脱硝装置により、生成されたNOxを抑制する技術もある。しかしながら、これらは、エネルギー消費が大きく、設備費、運用費ともに巨額であり、その用に供されるのは極めて限定されている。そして、重工業や産業廃棄物焼却処理施設において、上記の脱硝装置・システムを介して排出されるNOxの規制濃度として、例えば、100t/日の排ガス量のごみ焼却場において250ppm以下(大気汚染防止法)とされてはいるが、排煙中の高温度、高濃度のNOx汚染対策の現状は、有効煙突高に基づいた所定の高さを有する煙突から大気への拡散に依存せざるを得ない状況にある。
【0008】
ところで、平成8〜9年度文部省科学研究費補助金「残廃木材の高温焼成炭と遷移金属元素酸化物の複合によるNOxの無害化変換材料の開発」等の研究の中では、400〜1800℃、特に600〜1000℃で炭化された木質炭素化物は周辺環境のNOxを常温で無害な二窒素(N)還元変換できること、また、高い耐熱性、耐酸化性、耐熱衝撃性、熱に対する高寸法安全性をもつ木炭調製法と高機能複合材料についての技術開発、さらに、炭素化木材は木材自身の自己発熱によって炭素化されるため、製造過程における二酸化炭素(CO)の生成量が少ないことや、燃焼しない限り炭素は固定されCOを発生しないこと等の特徴をもつことが報告されており、NOxの無害化変換複合材料の創成が提案されている。
【0009】
そして、特許文献1には、気相環境用の浄化用成形体として、木質炭素化物の優れた機能・作用を封殺することなく所望の形状に成形し得るようにするために、粉状、粒状又は片状の木質炭素化物と、天然多孔質無機材料素材とを含む混合組成物を所定の型枠内に充填した状態で加熱することにより一体的に複合し得ることが開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、移動発生源より発生し、トンネル等の覆蓋道路や地下駐車場等の閉鎖空間に滞留するNOxの消去対策として、セメントペーストと、木質炭素化物とを混合してスラリー状の混合物とし、これを基材表面に吹き付けて養生・固化させてなる壁状成形体を用いることが開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開2003−201189号公報
【特許文献2】特開2006−232630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、今日の社会経済システムは前世紀からの科学技術の進歩によって多くの利便性や快適性を受けているものの、その一方では、大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済活動によって急速な資源及びエネルギーの過大な消費が招来されることとなり、この結果、急速かつ膨大な環境負荷を増大させて、人類の生存基盤である自然環境のバランスを崩し、様々な環境問題を引き起こすに至っている。中でも、大気に係る環境問題として、(1)温室効果ガスの発生による地球温暖化、(2)健康被害をもたらす有害ガスの増加の二つがあり、これらの問題を解決するために、生成排気されるガスや排気ガスを新たなエネルギーを使用せずに消去無害化できる材料と技術が求められている。
【0013】
とりわけ、大型燃焼装置で生成されて煙突から大気に拡散される排煙に含まれる高温度でかつ高濃度のNOxによる汚染対策が急務であり、かかる高温度・高濃度のNOxやPMを除去・低減し得る技術の開発が求められている。すなわち、高温度の気相環境にも耐えうる耐熱性と、そのような高温気相環境下でもNOx等の除去能に優れ、かつ、高濃度のNOx等に対しても高い除去能を示す気相環境浄化材の開発が求められている。
【0014】
かかる気相環境浄化材の開発において、本発明者らは上述の木質炭素化物の利用により実現させることを企図し、その実現に向けて種々検討を加えた。その際、次のような社会的背景をも考慮した。
【0015】
すなわち、CO2の持続的固定に大きく寄与する森林資源の合理的、持続的活用は自然環境と生態系の健全な保全のため不可欠であり、その森林撫育・保続に必要な間伐材等未利用森林資源や、林地に侵入してその生態系を破壊するタケ、ササなどの地域木質資源を用いることができれば、新しい地域産業の創成と振興に寄与貢献しながら地域環境の保全や地域の経済活動の活性化をもたらし得る。
【0016】
又、化石燃料のうち石油資源の枯渇と高騰に伴い、従来、重工業を支えてきた燃料としての石炭の高エネルギー・低コスト面が再評価されて、重用されてきているものの、そこで生成排出される厖大な量の石炭灰はセメント添加物以外に用途がなく、その大半は産業廃棄物として処理されており、新たな活用が求められている。
【0017】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、特に化石燃料をエネルギー源とする大型燃焼装置からの排煙中の高温度・高濃度のNOxやPM等の除去・低減を意図したものであり、高温度の気相環境にも耐えうる耐熱性と、そのような高温気相環境下でもNOx等に対する優れた除去能と、高濃度のNOx等に対しても十分な除去能とを備えた気相環境浄化材及びその製造方法を提供することにある。加えて、そのような気相環境浄化材の製造の際に、未利用木質資源や産業廃棄物の高度な活用を図り得るようにすることも併せて目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、気相環境浄化材に係る第1の発明では、無機質材料、アルカリ土類金属水酸化物、及び、水に対し、木質バイオマスを原料にした粒子状もしくは粉状の木質炭素化物、又は、粒子状もしくは粉状の木質バイオマスそれ自体のいずれか一方もしくは双方を加えて混練することにより、上記木質炭素化物又は木質バイオマスの一方もしくは双方が均一に分散された状態のペースト状の二次混練物とされ、この二次混練物が所定の成形型内に充填された状態で硬化され、さらに硬化した状態の成型硬化体が所定温度条件で焼結されてなる、気相環境浄化材とした(請求項1)。あるいは、無機質材料及びアルカリ土類金属水酸化物に水を加えて混練することによりペースト状にした一次混練物に対し、木質バイオマスを原料にした粒子状もしくは粉状の木質炭素化物、又は、粒子状もしくは粉状の木質バイオマスそれ自体のいずれか一方もしくは双方を加えてさらに混練することにより上記木質炭素化物又は木質バイオマスの一方もしくは双方が均一に分散された状態のペースト状の二次混練物とされ、この二次混練物が所定の成形型内に充填された状態で硬化され、さらに硬化した状態の成型硬化体が所定温度条件で焼結されてなる、気相環境浄化材とした(請求項2)。
【0019】
本発明の場合、上記の成型硬化体の内部に均一に分散した状態で複合包含された木質炭素化物又は木質バイオマスが焼結によりその一部又は全部が熱分解して放散され、これにより、気相環境浄化材の表面及び内部に細孔が生成されて気相環境浄化材はNOxやPM等の吸着機能を発揮する多孔質のものとなる。かかる細孔を生成するために、上記一次混練物に対し加えられる上記木質炭素化物又は木質バイオマスとしては、1〜1000μmの微細径に調製したものが好ましい(請求項3)。複合包含された木質炭素化物又は木質バイオマス(以下、これらを「木質炭素化物等」という)は細孔を生成するための鋳型材料としての役割を備えているため、他材料との混練時の混合性の他に、鋳型材料としてのサイズ効果や、その細孔のサイズに基づくNOx低減に及ぼす影響を中心にサイズを設定する必要がある。粉粒径が1μm未満では混練時においてナノサイズ粉粒固有の凝集、凝縮を招いて、不均質成型を招く原因の可能性がある一方、1000μmよりも大径になると上記の鋳型材料としてのサイズが大き過ぎることになると考えられる。以上の木質炭素化物等は、成型硬化体が焼結される過程において、気相環境浄化材に対して木質炭素化物のもつ高度の吸着、触媒、分解、還元機能を賦与するとともに、気相環境浄化材内部に種々な細孔を与えて吸着、脱着機能を与え、多孔質でかつ高温気相環下で高濃度のNOxやPMを吸着除去し得る気相環境浄化材を生成させることができる。例えばかかる気相環境浄化材は市販活性炭の10〜15倍の浄化作用を与えることができるようになる。
【0020】
又、一次混練物、二次混練物というように、まず木質炭素化物等以外の原料を混練してペースト状にした上で、木質炭素化物等を配合して混練するという二段階の混練を経ているため、木質炭素化物が十分にかつ確実に均一分散状態で複合包含され、気相環境浄化材として均一多孔質を備えてNOx等の低減効果を高めることが期待される。なお、二段階の混練を経ずに、予め粒状もしくは粉状の所定サイズに調製した木質炭素化物又は木質バイオマスと、無機質材料と、アルカリ土類金属水酸化物と、水とを所定配合で混練することにより、上記の二次混練物に相当するペースト状の混練物を調製し、これを成形型にて成型・硬化させ、そして焼結して気相環境浄化材を得るようにしてもよい。
【0021】
上記の無機質材料としては、石炭の燃焼残渣である石炭灰、天然の多孔質無機物質である珪藻頁岩やゼオライト、工業製品である酸化アルミニウムや合成ゼオライト及び耐火材料素材を配合した無機質材料であるキャスタブルの内から選択された1又は2以上を組み合わせたものを用いることができ(請求項4)、上記のアルカリ土類金属水酸化物としては、水溶性で硬化反応促進作用が大きいことから水酸化カルシウム[Ca(OH)]を用いることが好ましいが、この他に水酸化マグネシウム[Mg(OH)]も用いることができ(請求項5)、上記の木質バイオマスとしては、間伐材、林業廃材等の廃木材や未利用木材、竹や笹等の竹材及び微粉化可能な有機質材料の内から選択された1又は2以上の組み合わせを用いることができ(請求項6)、上記の木質炭素化物としては、250〜2200℃の炭化温度で炭素化されてなる木炭及び竹炭の内の一方又は双方を用いることができる(請求項7)。炭化温度として250℃は木質バイオマスがその炭素化過程において自己発熱反応を開始することになる温度であり、2200℃は炭素化物に芳香族化合物の重縮合が認められることになる温度である。中でも、木質バイオマスの炭化温度としては、600〜1000℃が好ましい。
【0022】
ここで、無機質材料としては、高温気相環境として煙突からの排煙温度である250℃〜800℃を超える融点を有するものから選択される。上記の石炭灰であればその原料となる石炭産地によって異なるがその融点は1250℃であり、ゼオライトは1110℃などであり、上記の排煙温度よりも高い融点を有することという条件を満たすものである。又、「石炭の燃焼残渣である石炭灰」とは多孔質無機物であり、かかる石炭灰としては、例えば微粉炭燃焼ボイラの燃焼ガスから集塵機で採取された石炭灰であるフライアッシュ、上記燃焼ガスが通過時に落下採取されたシンダアッシュ、上記の微粉炭燃焼ボイラの炉底に落下して採取されたクリンカアッシュがあり、それぞれ微粉状態に粒度調整したものを用いる。無機質材料としては、特に石炭灰が機能上において優れる他、その用途拡大に対し社会的要請も高く、石炭灰単独で用いる他、他のゼオライト、珪藻頁岩、酸化アルミニウム及びキャスタブルの内から選択使用するにしても石炭灰と組み合わせて用いることが好ましい。又、アルカリ土類金属水酸化物は、それが有するポゾラン作用によって成型混練物の硬化を促進することになる。
【0023】
硬化成型体を焼結して得られる気相環境浄化材は、用いる成形型に応じて種々の形態となし得るものである。すなわち、粉粒、顆粒、棒状材、粗朶状棒材、板状、ハニカム等目的に沿った任意の形状に成型可能である。例えば、粉粒状の形態で気相環境浄化材を提供する場合には、煙突やその導入路等の排煙処理施設の内壁に低濃度キャスタブルと混合して吹付けが可能であり、顆粒状の形態ではバグフィルターあるいは排煙処理塔にそのまま充填してNOxやPMを含む汚染ガスを浄化することができ、棒状材、粗朶状棒材、スレート板あるいはハニカム状の形態では排気装置内に設置するための浄化装置として、装置の目的や形状に沿った敷設や施用が可能となる。例えば図3に示すように、浄化装置として構成する場合、図3(a)では浄化装置の本体となる外装ケーシング(例えば円筒形)11内に、多数本の棒状材(例えば直径10〜20mm)又は粗朶状棒材に成型した気相環境浄化材12,12,…を排煙の流れに沿って延びるように並べ、排煙を外装ケーシング11の一側から他側に流すようにしたり、図3(b)では浄化装置の本体となる外装ケーシング(例えば角筒形)13内に複数枚の板状の気相環境浄化材14,14,…を互いに間隔(スリット)を開けて平行に配設し、そのスリットに沿って外装ケーシング13の一側から他側に排煙を流すようにしたりすればよい。いずれの浄化装置も、煙突や排気システムの煙道や排気過程に敷設されて排気浄化装置のガス通導部に設置され、排煙が流れる間に気相環境浄化材12又は14と接触してNOx等が吸着除去されることになる。長さの例としては例えば10〜100mmである。
【0024】
そして、本発明の気相環境浄化材は上記の成型硬化体を所定温度条件で焼結してセラミック化してなるものであるから、高温気相環境下においても優れた耐熱性・耐久性を発揮し、高温気相環境に含まれるNOxやPMを吸着・除去し得ることになる。従って、大型燃焼装置やシステムのもつ煙突や排煙装置内を250〜500℃の高温度の気相環境下で移動し、しかも2000〜10000ppmという高濃度を保持するNOxやPMなどの高温気相環境に存する有害汚染物質をその高温気相環境から消去・無害化し得ることになる。
【0025】
又、気相環境浄化材の製造方法に係る第2の発明では、無機質材料2(図1参照)及びアルカリ土類金属水酸化物3(図1では水酸化カルシウムを例示)に水4を加えて混練することによりペースト状の一次混練物を調製する工程P3と、木質バイオマス1を炭素化P1して粉砕・分級P2することにより粒子状もしくは粉状の微細径の木質炭素化物を得る工程P1,P2と、上記一次混練物に対し上記木質炭素化物を加えて混練することにより上記木質炭素化物が均一に分散された状態のペースト状の二次混練物を調製する工程P4と、上記二次混練物を所定の成形型内に充填することにより成型する工程P5と、成形型内に成型された状態の成型混練物を加温環境下で硬化させる工程P6と、硬化された状態の成型硬化体を所定温度条件で焼結する工程P7とを備えることとした(請求項8)。
【0026】
本発明の場合、上記の第1の発明に係る気相環境浄化材の内の特に木質炭素化物を配合した気相環境浄化材5の製造方法が特定されることになる。上記の木質炭素化物を得る工程として、木質バイオマスを250〜2200℃の炭化温度で炭素化P1し、得られた木質炭素化物を粉砕・分級P2することにより1〜1000μmの微細径範囲に調製することができる(請求項9)。250〜2200℃の炭化温度の意義や、1〜1000μmの微細径範囲の意義については上述の通りである。
【0027】
又、上記の無機質材料2としては、石炭の燃焼残渣である石炭灰、ゼオライト、珪藻頁岩、酸化アルミニウム及びキャスタブルの内から選択された1又は2以上を組み合わせたものを用いることができ、上記のアルカリ土類金属水酸化物としては、Ca(OH)を用いることが好ましいが、この他にMg(OH)も用いることができ、上記の木質バイオマス1としては、間伐材、林業廃材等の廃木材や未利用木材、竹や笹等の竹材及び微粉化可能な有機質材料の内から選択された1又は2以上の組み合わせを用いることができる等の点も第1の発明と同様である。
【0028】
上記の成型する工程P5では成形型に対し押出や圧縮等の手法を用いて充填・成型すればよく、成型された成型混練物が水酸化カルシウム化(アルカリ土類金属水酸化物)のもつポゾラン作用(反応)によってコンクリート様に硬化が促進されることになる。この硬化させる工程P6として、水の沸点よりも低温側の70〜95℃での加温環境下で硬化させるようにすることができる(請求項10)。このようにすることにより、上記のアルカリ土類金属水酸化物のポゾラン作用に基づく硬化反応をより一層促進させることが可能となり、20〜25℃の常温では25〜35日間要するところ、10〜20時間という短時間で硬化させ得ることとなって製造工程の著しい時間短縮を図り得ることになる。又、無機質材料としてフライアッシュを使用することにより、そのフライアッシュの有するポゾラン作用によっても硬化促進を図り得ることになる。さらに、硬化後の焼結工程P7として、原料の無機質材料が有する融点を著しく超えることのない実質的に融点近傍の温度で焼結させるようにすることができる(請求項11)。焼結工程によって、複合包含している木質炭素化物の一部又は全部が熱分解・焼却して炭素化物を放散させることで代わりに細孔(空隙)を生成してNOxやPM等の吸着・除去能を獲得し得る上に、その焼結温度を無機質材料の有する融点まで加熱することにより、大型燃焼装置の排煙通路や煙突等の高温気相環境下であっても、十分なる耐熱性を獲得し得る上に、高強度を発揮して耐久性をも獲得し得るようになる。
【0029】
上記二次混練物の調製を含む工程までにおける配合としては、図2に例示するように、無機質材料を5〜95重量%と、アルカリ土類金属水酸化物(図2では水酸化カルシウムを例示)を1〜50重量%と、木質炭素化物を0.5〜30重量%と、残部を占める水との割合にするようにすることができる(請求項12)。さらに好ましくかつ具体的な配合としては、無機質材料としてフライアッシュを30〜60重量%、アルカリ土類金属水酸化物として水酸化カルシウムを10〜30重量%、木質炭素化物として木炭粉を2〜4重量%、水として残部を、それぞれ用いるようにすることができる(請求項13)。水の割合は所定量が配合された混合物の混練が可能であり、混練に続く成型に必要な粘度を保持できる量とすればよい。このような配合及び材料を選択することにより、NOx等の除去能として最も高いものを得ることができるようになる。さらに、これらの配合時に、ペースト状の混練物の粘度を増大させる増粘剤として有機微小粉末(例えば強力粉等の小麦粉)を4〜10重量%配合するようにすることができる(請求項14)。このようにすることにより、高粘度の二次混練物を調製することが可能となり、以後の成型・硬化の工程での取扱いを容易にしてスムースに進行させ得る上に、有機質であるため焼結によってその増粘剤自体も熱分解・焼却されたり炭素化して、NOx等の吸着能の強化にも寄与し得ることになる。有機微小粉末としては、小麦粉や米紛あるいはメチルセルロースなどが挙げられる。
【0030】
なお、上記所定の微細径範囲の木質炭素化物を予め調製しておき、この木質炭素化物と、無機質材料と、アルカリ土類金属水酸化物と、水とを混練することにより上記の二次混練物に相当する混練物を調製し、これにより、上記の一次混練物を調製するための混練工程P3を省略するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0031】
以上、説明したように、本発明の気相環境浄化材によれば、常温の気相環境はもちろんのこと、高温気相環境において優れた耐熱性及び耐久性を発揮しつつ、その高温気相環境に含まれる高濃度のNOxやPMを吸着除去することができる。このため、特に現状では煙突有効高さに依拠した高い煙突から大気へ排煙して拡散する以外に方途のない高温度・高濃度のNOxやPMの有害汚染物質を省エネルギー的に消去・無害化することができ、環境汚染の抑制と公害防止に大きく寄与することができるようになる。そして、本発明の気相環境浄化材の製造方法によれば、このような顕著な効果を有する気相環境浄化材を確実に製造することができることになる。
【0032】
加えて、このような気相環境浄化材を、石炭灰や、間伐材等を用いて製造することにより、社会的要請を満たしつつ、安価に製造することができるようになる。すなわち、従来はその用途が極めて限定されていた間伐材の利用促進を図ることができ、地球温暖化に大きく寄与する森林資源の持続的生産と保全の為に不可欠である間伐促進と、そこで生産される多量の間伐材の用途拡大とを効果的に実現させることが期待し得る。又、近時、石油の枯渇と高騰により重要性が増大した石炭火力発電より排出される厖大な量の石炭灰(フライアッシュ等)は特筆すべき利用の方法がなく、その多くが産業廃棄物として処理されて社会問題化しているが、その材料特性を活かして、これを主原料とすることによって、地場での安定的なしかも低廉なコストで原料供給が可能となって、気相環境浄化材の製造コストの低減化にも寄与し得ることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を具体化した実施例を示すことにより実施形態を説明する。併せて実施例1〜6と、比較例1〜2とについて試験を実施してその性能を確認した。
【0034】
試験は、図4に示すような装置を用いて実施した。この試験装置は煙突等の排煙装置からの高温度・高濃度のNOxやPMを含む排煙を想定しており、その模型的高温条件・環境を設定するため、電気加熱管状炉24内に石英管22を敷設し、その石英管22において条件や環境が整えられるようにした。この石英管22を所定の排煙温度(250℃又は100℃)に設定し、所定量の気相環境浄化材21を石英管22内に置き、所定濃度(500ppm又は100ppm)の窒素酸化物に係るガスを石英管22の一側(同図の左側)から他側(同図の右側)に流して通過させ、石英管22より排出されたガスの出口濃度を窒素酸化物測定用ガス検知管により計測し、窒素酸化物の低減性能を評価した。具体的には、煙突出口や排煙装置排煙部の温度条件を設定できるように長さ1200mm、内径20mmの石英管22を、加熱部長さ300mm、管状炉内径30mmをもつ電機加温型管状炉24内に設置した。石英管22の加熱部位の温度は設定温度の±5℃以内に維持できた。石英管22の加熱部位の中央部分に所定の形状の気相環境浄化材21を所定量挿入し、前後をセラミックウール23,23で位置ずれしないように保持させ、昇温速度10℃/分により設定温度(250℃又は100℃)に到達させて、所定濃度の二酸化窒素を60ml/分の速度で気相環境浄化材21中を4〜5分間通過させた後、排出されたガスをテドラーバッグに捕集して、二酸化窒素濃度測定用検知管により、その低減濃度を計測した。
【0035】
ここで、大型焼却炉内の燃焼排ガスの温度は炉内において平均800℃前後とされており、排煙装置排出部入口のガス温度200〜250℃であり、通煙中の煙突や排煙部の内部の排ガス温度は約100℃、流速はおおよそ25cm/秒以下とされている。又、現在の大気汚染の主要原因はディーゼル車などの移動発生源と火力発電所、産業廃棄物焼却処理施設などの固定発生源があり、後者の固定発生源は500〜2000ppmの濃度範囲を越え、10000ppmに達する場合も少なくないとされる。さらに、石油及び石炭の燃焼に伴って発生する窒素酸化物は、燃焼用空気に含まれている窒素と酸素が高温下において反応して窒素酸化物となるサーマル窒素酸化物と、燃料中に含まれている各種の窒素化合物が燃焼に際して酸化されて窒素酸化物となるフューエル窒素酸化物との2種類があり、後者のフューエル窒素酸化物はディーゼル車の移動発生源と並んで大気汚染の大半を占める固定発生源である。
【0036】
以上を考慮し、又、気相環境浄化材の性能評価に供する実際の排ガスや煙の調達は不可能であることから、高純度窒素(N)を用いて、これを所定濃度(100ppm、500ppm)に調整した二酸化窒素(NO)を含む研究用ガスを用いた。又、上記の石英管23の入口側に供給するガス温度として250℃と100℃との2種類に設定した。
【0037】
又、石油や石炭の燃焼で生成するNOxは、先ずNOの生成があり、これは直ちに大気中の酸素と反応して排煙中ではNO+1/2O→NOとなる。そのNOは NO←→NO+1/2Oの平衡を保ち、常温〜約250℃ではNO側に有利で解離度は0〜5%であり、NOの解離はほとんど認められないが、500℃では70%の解離が進むとされる。前記煙突や排煙装置の入口温度や通気温度に対応した温度条件化において、窒素酸化物の濃度測定を行った。前記NO←→NO+1/2Oの平衡に温度依存性のあることから、気相環境浄化材の窒素酸化物低減性能の評価では、気相環境浄化材を設置しないブランク試験を並行し、比較した。
【0038】
以下、図5にまとめを示すように実施例1〜6と、比較例1〜2とについて、説明する。なお、実施例で用いた木質炭素化物は、新潟県産スギの間伐材を木質バイオマスとして用い、バッチ式炭化炉において所定の炭素化温度(図5参照)にて炭素化を施したスギ木炭である。このスギ木炭を従来のボールミル及び遊星回転ポットミルで粉砕した結果、0.1〜5000μmの粒径をもつ木炭粉末を得ることができた。そして、粉砕した木炭粉粒を、分級機を用いて粒径1μm以下、1〜100μm、100〜500μm、500〜1000μm、1000μm以上に分級し、この内から1〜1000μm範囲のものを用いた。
【実施例1】
【0039】
原料組成がフライアッシュ(北陸電力株式会社富山新港石炭火力発電所産)59重量%、水酸化カルシウム12重量%、炭素化温度600℃で炭素化したスギ炭素化物2重量%、水27重量%からなる混練物を成型して80℃の加温環境下で18時間の硬化処理を施し、これを1250℃で0.5時間の焼結に付して、直径5mm、長さ80〜100mmの棒状の気相環境浄化材を得た。この棒状の気相環境浄化材を3〜5mmの粒径の粉粒に粉砕、篩別して、2.5gを石英管22に挿入保持させて、石英管22の温度を250℃に設定し、500ppmの二酸化窒素を60ml/分を5分間導入、貫通処理した。二酸化窒素の出口濃度は75〜100ppm(試験数N=6)であり、例えば、ごみ焼却炉(100t/日)の大気汚染防止法に基づく排気窒素酸化物法規制値の250ppmを十分下廻る低減が認められた。なお、ブランクでは390〜450ppm(試験数N=5)の二酸化窒素が検知された。
【0040】
また、100℃の加温下において同様にして100ppmの二酸化窒素の導入処理を施した後の出口濃度は0〜85ppm(試験数N=6)であった。なお、ブランクのそれは85〜94ppmであった。
【0041】
また、気相環境浄化材の原料の600℃で炭素化したスギ炭素化物の設定配合率は2%であるが、焼結直後の材中固定炭素率は0.03%であり、焼結処理後の炭素分が材中に残存していることが認められた。
【実施例2】
【0042】
原料組成のフライアッシュ30重量%、水酸化カルシウム30重量%、600℃で炭素化したスギ炭素化物4重量%、水36重量%からなる混練棒状成型物を80℃の加温環境下で、18時間の硬化処理に付し、次いで1250℃で30分間焼成して得た直径15mm、長さ8〜15mmの棒状の気相環境浄化材を、3〜5mmの粒径の粉粒に粉砕、篩別して、その2.0gを石英管22に挿入保持させ、石英管温度を100℃に設定して、500ppmの二酸化窒素を流速60ml/分で4分間導入した。通過させた二酸化窒素の出口濃度は50〜75ppm(試験数N=6)であり、気相環境浄化材による顕著な二酸化窒素の低減効果が認められた。なお、ブランクのそれは420〜460ppmであった。
【0043】
また、同様の材料により100ppmの二酸化窒素を100℃の加温下で貫通処理した濃度は0〜10ppmであった。ブランクは86〜93ppmであった。
【0044】
この気相環境浄化材の混練、成型過程での600℃で炭素化したスギ炭素化物の設定配分炭素化物量は4.0%であり、これの設定固定炭素量は3.4%であって、これの焼結を経た材中固定炭素量は0.05%であった。前記実施例1のそれに対し炭素量の増加が窒素酸化物の低減に寄与する傾向が認められた。
【実施例3】
【0045】
気相環境浄化材の原料を混練して成型する際に、増粘剤を添加して成型を容易にすることができる。本実施例3は増粘剤を配合して得た気相環境浄化材である。
【0046】
原材料のフライアッシュ30重量%、水酸化カルシウム29重量%、600℃で炭素化したスギ炭素化物20重量%、水35重量%の配合に、増粘剤として小麦粉強力粉を4重量%配合して、前記と同様に成型した後80℃の加温環境下で18時間の硬化処理を施し、これを1250℃で30分間焼結して、直径20mm、長さ100mmの棒状の気相環境浄化材を得た。これを粒径3〜5mmに粉砕、篩別した材2.0gを100℃の加熱下の石英管22内に保持し、500ppmの二酸化窒素を60ml/分で4分間貫通させた時の二酸化窒素の出口濃度は25〜50ppmである。増粘剤として配合した小麦粉強力粉がとくに気相環境浄化材の性能低下を招くことはなかった。
【実施例4】
【0047】
原材料組成がゼオライト(日東粉化工業株式会社製)30重量%、フライアッシュ30重量%、水酸化カルシウム5重量%、800℃で炭素化したスギ炭素化物5重量%、水30重量%を混練して成型し、1100℃で焼結した厚さ2〜3mm、縦100mm、横100mmの薄板を粉砕して粒径約5mmに篩別し、その4gを窒素酸化物低減性能評価に供した。石英管温度250℃,NO濃度500ppm、流速60ml/分で5分間流した排出ガス濃度は200〜225ppm(試験数N=5)であった。
【0048】
また、上記材料4gを同様にして、NO濃度100ppmのガスを100℃加熱下で5分間流した時のNOの出口濃度は30〜50ppm(試験数N=5)であった。
【実施例5】
【0049】
気相環境浄化材の原料組成をキャスタブル(AGCセラミックス株式会社製)30重量%、フライアッシュ30重量%、水酸化カルシウム5重量%、800℃で炭素化したスギ炭素化物5重量%、水30重量%を混練して、前記と同様の薄板状に成型し、これを80℃、18時間処理を施して固化した後、1100℃で1時間加熱焼結した気相環境浄化材4gを250℃の加温下の石英管22内に置き、500ppmのNOを60ml/分で貫通させて流した後のNOの出口濃度は180〜220ppm(試験数N=5)であった。
【0050】
また、上記の気相環境浄化材4gを100℃加温下において、NO濃度が100ppmのガスを5分間貫通させて流したときの出口ガスのNOの出口濃度は40〜50ppm(試験数N=6)であった。
【実施例6】
【0051】
気相環境浄化材の原料として珪藻頁岩(和光純薬工業株式会社製)を用い、その配合を珪藻頁岩37重量%、フライアッシュ15重量%、水酸化カルシウム1重量%、600℃で炭素化したスギ炭素化物2重量%、水45重量%として、これを混練し直径5mm、長さ10〜15cmの粗朶様の細い棒状に成型した。この成型物を80℃、18時間の硬化処理に付し、次いで1000℃で1時間の焼結を行い、珪藻頁岩を含む気相環境浄化材を得た。本材を粉砕、篩別して得た粒径3〜5mmの顆粒4gに対し、250℃加温下で60ml/分でNO濃度が500ppmのガスを貫通して流した。処理後のNOの出口濃度は、175〜200ppm(試験数N=6)であり、100℃の加温下では30〜40ppmであって、NO消去性能が確認された。
【比較例1】
【0052】
比較例1として木質炭素化物を配合せず、フライアッシュを主体組成とした材料の性能を検証した。フライアッシュ60重量%、水酸化カルシウム7重量%、水33重量%を混練して、直径5mm、長さ10〜15cmの棒状の材料を成型し、80℃、18時間の硬化促進処理を施し、この硬化成型物に対し1250℃で1時間の焼結を行い、比較例を調製した。本材を3〜5mmの粒径に粉砕、篩別した顆粒4gを石英管22の所定の位置に置いて250℃加温下で500ppmのNOガスを60ml/分で貫通させて流した。出口側のNOの出口濃度は185〜250ppm(試験数N=6)であった。また同様の材料4gを100℃の加温下において100ppmのNOガスを60ml/分で貫通して流した。出口側のNOの出口濃度は40〜50ppm(試験数N=6)であった。
【比較例2】
【0053】
比較例2として木質炭素化物を配合せず、フライアッシュを主体組成とした材料の性能を検証した。この際、混練成型を容易とするため、増粘剤として小麦粉を添加した。フライアッシュ55重量%、水酸化カルシウム7重量%、小麦粉強力粉5重量%、水33重量%を混練して、直径5mm、長さ10〜15cmの棒状の材料を成型し、80℃、18時間の硬化促進処理を施した。この硬化成型物を1250℃で1時間の焼結を行い、比較例2を調製した。本材を3〜5mmの粒径に粉砕、篩別した顆粒4gを石英管の所定の位置に置いて250℃加温下で500ppmのNOガスを60ml/分で貫通させて流した。出口側のNOの出口濃度は175〜250ppm(試験数N=6)であった。同様の材料4gを100℃の加温下において100ppmのNOガスを60ml/分で貫通させて流した時のNOの出口濃度は30〜40ppm(試験数N=6)であった。本材中には鋳型となる木質炭素化物を配合していないが、有機質材料としては増粘剤の小麦粉が存在する。本材料に痕跡の固定炭素が認められることから、小麦粉が木質炭素化物に代替する若干の機能をもつことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の製造方法の工程を示すブロック説明図である。
【図2】配合可能な割合を示す表である。
【図3】気相環境浄化材を用いた浄化装置の例を示し、図3(a)は棒状の気相環境浄化材を用いた例であり、図3(b)は薄板状の気相環境浄化材を用いた例である。
【図4】実施例と比較例との試験装置を示す模式図である。
【図5】実施例と比較例との配合及び試験結果をまとめた表である。
【符号の説明】
【0055】
1 木質バイオマス
2 無機質材料
3 水酸化カルシウム(アルカリ土類金属水酸化物)
4 水
12,14 気相環境浄化材
P1 炭素化工程
P3,P4 混練工程
P5 成型工程
P6 硬化工程
P7 焼結工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質材料、アルカリ土類金属水酸化物、及び、水に対し、木質バイオマスを原料にした粒子状もしくは粉状の木質炭素化物、又は、粒子状もしくは粉状の木質バイオマスそれ自体のいずれか一方もしくは双方を加えて混練することにより、上記木質炭素化物又は木質バイオマスの一方もしくは双方が均一に分散された状態のペースト状の二次混練物とされ、この二次混練物が所定の成形型内に充填された状態で硬化され、さらに硬化した状態の成型硬化体が所定温度条件で焼結されてなる
ことを特徴とする気相環境浄化材。
【請求項2】
無機質材料及びアルカリ土類金属水酸化物に水を加えて混練することによりペースト状にした一次混練物に対し、木質バイオマスを原料にした粒子状もしくは粉状の木質炭素化物、又は、粒子状もしくは粉状の木質バイオマスそれ自体のいずれか一方もしくは双方を加えてさらに混練することにより上記木質炭素化物又は木質バイオマスの一方もしくは双方が均一に分散された状態のペースト状の二次混練物とされ、この二次混練物が所定の成形型内に充填された状態で硬化され、さらに硬化した状態の成型硬化体が所定温度条件で焼結されてなる
ことを特徴とする気相環境浄化材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の気相環境浄化材であって、
上記一次混練物に対し加えられる上記木質炭素化物又は木質バイオマスは、1〜1000μmの微細径に調製されている、気相環境浄化材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の気相環境浄化材であって、
上記無機質材料は、石炭の燃焼残渣である石炭灰、ゼオライト、珪藻頁岩、酸化アルミニウム及びキャスタブルの内から選択された1又は2以上を組み合わせたものである、気相環境浄化材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の気相環境浄化材であって、
上記アルカリ土類金属水酸化物は、水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムである、気相環境浄化材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の気相環境浄化材であって、
上記木質バイオマスは、間伐材、廃木材、竹材及び微粉化可能な有機質材料の内から選択された1又は2以上の組み合わせである、気相環境浄化材。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の気相環境浄化材であって、
上記木質炭素化物は、250〜2200℃の炭化温度で炭素化されてなる木炭及び竹炭の内の一方又は双方である、気相環境浄化材。
【請求項8】
無機質材料及びアルカリ土類金属水酸化物に水を加えて混練することによりペースト状の一次混練物を調製する工程と、
木質バイオマスを炭素化して粉砕・分級することにより粒子状もしくは粉状の微細径の木質炭素化物を得る工程と、
上記一次混練物に対し上記木質炭素化物を加えて混練することにより上記木質炭素化物が均一に分散された状態のペースト状の二次混練物を調製する工程と、
上記二次混練物を所定の成形型内に充填することにより成型する工程と、
成型型内に成型された状態の成型混練物を加温環境下で硬化させる工程と、
硬化された状態の成型硬化体を所定温度条件で焼結する工程と
を備えていることを特徴とする気相環境浄化材の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の気相環境浄化材の製造方法であって、
上記木質炭素化物を得る工程として、木質バイオマスを250〜2200℃の炭化温度で炭素化し、得られた木質炭素化物を粉砕・分級することにより1〜1000μmの微細径範囲に調製するようにする、気相環境浄化材。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の気相環境浄化材の製造方法であって、
上記硬化させる工程として、70〜95℃の加温環境下で硬化させるようにする、気相環境浄化材の製造方法。
【請求項11】
請求項8〜請求項10のいずれかに記載の気相環境浄化材の製造方法であって、
上記焼結する工程として、原料の無機質材料が有する融点を著しく超えることのない実質的に融点近傍の温度で焼結させるようにする、気相環境浄化材の製造方法。
【請求項12】
請求項8〜請求項11のいずれかに記載の気相環境浄化材の製造方法であって、
上記二次混練物の調製を含む工程までにおける配合として、無機質材料を5〜95重量%と、アルカリ土類金属水酸化物を1〜50重量%と、木質炭素化物を0.5〜30重量%と、残部を占める水との割合にする、気相環境浄化材の製造方法。
【請求項13】
請求項8〜請求項12のいずれかに記載の気相環境浄化材の製造方法であって、
無機質材料として石炭の燃焼残渣である石炭灰を30〜60重量%、アルカリ土類金属水酸化物として水酸化カルシウムを10〜30重量%、木質炭素化物として木炭粉を2〜4重量%、水として残部を、それぞれ用いるようにする、気相環境浄化材の製造方法。
【請求項14】
請求項8〜請求項13のいずれかに記載の気相環境浄化材の製造方法であって、
上記二次混練物の調製を含む工程までに、ペースト状の混練物の粘度を増大させる増粘剤として有機微小粉末を4〜10重量%配合するようにする、気相環境浄化材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−52992(P2010−52992A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220567(P2008−220567)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(595081862)田辺建設株式会社 (1)
【Fターム(参考)】