説明

水平保持装置

【課題】空気ばねを用いた水平保持装置であって、単一のセンサ機構で複数の空気ばねを制御可能な水平保持装置を得る。
【解決手段】対象物を載置する対物台と床面との間の異なる平面位置に位置し、供給空気圧力に応じて床面に対する対物台の傾きを変化させる複数の空気ばねユニット;上方が開放された半球状凹面を有し床面に固定された固定台座;この半球状凹面に全方向に相対回動可能に係合する半球状凸面を有し上記対物台と一緒に動く回動台;及びこの回動台の固定台座に対する相対回動位置に応じて、上記複数の空気ばねユニットに対する供給空気圧力を変化させる傾斜センサ機構;を備えた水平保持装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気ばねを用いた水平保持装置に関し、特に単一センサで制御可能な構成が簡易な水平保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気ばねを用いた水平保持装置として、レベリングバルブを用いた装置が知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005-69303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この装置は、空気ばねの数と同数のレベリングバルブを必要とする(空気ばね毎にレベリングバルブを必要とする)ため、構造が複雑化するという問題がある。
【0004】
本発明は、空気ばねを用いた水平保持装置であって、単一のセンサ機構で複数の空気ばねを制御可能な水平保持装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による水平保持装置は、対象物を載置する対物台と床面との間の異なる平面位置に位置し、供給空気圧力に応じて床面に対する対物台の傾きを変化させる複数の空気ばねユニット;上方が開放された半球状凹面を有し床面に固定された固定台座;この固定台座の半球状凹面に全方向に相対回動可能に係合する半球状凸面を有し対物台と一緒に動く回動台;及びこの回動台の固定台座に対する相対回動位置に応じて、複数の空気ばねユニットに対する供給空気圧力を変化させる傾斜センサ機構;を備えたことを特徴としている。
【0006】
傾斜センサ機構は、具体的には、固定台座の半球状凹面に空気ばねユニットの数に応じて開口させた圧力供給口と圧力排出口、及び上記回動台の半球状凸面に空気ばねユニットの数に応じて開口させた吸排制御ポートを設け、各吸排制御ポートにより、固定台座に対する回動台の傾きに応じて、上記圧力供給口と圧力排出口を選択的に対応する空気ばねユニットに連通させる機構を用いることができる。
【0007】
空気ばねユニットは、対物台の平面中心に関し直交二方向に位置を異ならせて4個を配置するのが実際的である。この態様では、固定台座の半球状凹面に開口させる圧力供給口と圧力排出口、及び回動台の半球状凸面に設ける吸排制御ポートもそれぞれ4個(セット)となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、単一の傾斜センサ機構により複数の空気ばねユニットを制御し、対物台を水平に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1、図2は、本発明による水平保持装置10の全体構造を示している。この水平保持装置10は、平面矩形の対物台11を有し、この対物台11の下面と床面12との間に、4つの空気ばねユニット13が配置されている。これらの空気ばねユニット13は、対物台11の平面中心を通る直交二方向上に位置を異ならせている。各空気ばねユニット13は、ダイヤフラム13aを有する気密圧力室13bを備えており、ダイヤフラム13aは支持ロッド13cを介して対物台11に結合されている。従って、各空気ばねユニット13の気密圧力室13bに対する供給空気圧力を変化させると、対物台11の高さ(傾き)が変化する。
【0010】
対物台11の平面中心裏面と床面12との間には、傾斜センサ機構20が配置されている。この傾斜センサ機構20は、床面12に固定された固定台座21と、この固定台座21に相対回動自在に支持された回動台22とを備えている。すなわち、固定台座21は、上方が開放された半球状凹面21aを備えており、回動台22は、この半球状凹面21aに全方向に相対回動自在に摺接する半球状凸面22aを備えている。この半球状凸面22aには、分断させたすべり軸受(面)22b(図5、図7参照)が添着(形成)されている。
【0011】
回動台22にはまた、その上面に対物台11の下面を支える空気ばねユニット13方向に延びる4個の腕を有する十字腕22cを備えており、この十字腕22cを介して対物台11と回動台22が一緒に回動する。
【0012】
固定台座21の半球状凹面21aには、各空気ばねユニット13に対応させて、4個の圧力供給口24と圧力排出口25が平面的にみて90゜間隔で開口している(図6参照)。圧力供給口24と圧力排出口25の間には、中立閉空間26が存在する。全ての圧力供給口24は、レギュレータ30を介して圧縮空気源31に接続されており(図4、図6)、全ての圧力排出口25は大気に開放されている。また、圧力供給口24、圧力排出口25及び中立閉空間26は、固定台座21の半球状凹面21aに接着したシール部材29によって区画されており、シール部材29は、回動台22の半球状凸面22aに接触して空気漏れを防ぐ。固定台座21を金属材料としたとき、ゴム材料からなるシール部材29は例えば焼付(加硫)接着技術によって半球状凹面21aに接着することができる。
【0013】
回動台22には、各空気ばねユニット13(圧力供給口24、圧力排出口25)に対応させて、平面的にみて90゜間隔で吸排制御ポート28が設けられている。各吸排制御ポート28は、半球状凸面22aに開口する供給ポート28aと排出ポート28b、及びこれらの供給ポート28aと排出ポート28bに連通する切替ポート28cを有し、切替ポート28cは、フレキシブルパイプ28dを介して空気ばねユニット13の気密圧力室13bに連通している。
【0014】
以上のそれぞれ4つ存在する空気ばねユニット13、十字腕22c、圧力供給口24、圧力排出口25、中立閉空間26及び吸排制御ポート28は、対応しており、以下の説明では、方向(位置)を特定するため、N、S、E、Wのサフィックスを付すことがある。
【0015】
吸排制御ポート28の供給ポート28aと排出ポート28bは、回動台22(対物台11)が水平状態である(傾きが許容範囲にある)ときには、中立閉空間26に連通し、圧力供給口24と圧力排出口25のいずれにも連通しない(図4)。すなわち、空気ばねユニット13の気密圧力室13bには、新たに圧縮空気は供給されない。
【0016】
これに対し、回動台22が固定台座21に対して回動すると、その回動方向に応じて、空気ばねユニット13に接近する側(方向)のいずれかの十字腕22cに対応する吸排制御ポート28の供給ポート28aが圧力供給口24に連通してその切替ポート28cを対応する空気ばねユニット13の気密圧力室13bに連通させる。また、その吸排制御ポート28とは反対側に位置する、空気ばねユニット13から離れる方向の十字腕22cに対応する吸排制御ポート28の排出ポート28bは、圧力排出口25に連通して対応する空気ばねユニット13の気密圧力室13bを大気に連通させる。この空気流路の切替により、対物台11の水平補償機能が営まれる。
【0017】
なお、装置組立て終了時には、各気密圧力室13bに圧縮空気が供給されていないため、各気密圧力室13bに圧縮空気を供給する必要がある。この圧縮空気の供給は、初期バランスを確保するため、徐々に行う。対物台11は、各気密圧力室13b内の圧力が上昇したとき、水平状態が保たれていない場合には、本発明のバランス機構によって水平状態になる。一方、対物台11の水平状態が保たれていた場合には、バランス機構は作用しない(中立位置のままである)。このとき、各気密圧力室13b内の圧力は所定の数値を維持する。装置組立て終了時には、以上のようにして対物台11の水平補償機能が営まれる。
【0018】
図8、図9は、一例として、十字腕22cEが下降し、十字腕22cWが上昇する方向に、回動台22が回動した状態を示している。回動台22が許容範囲以上に傾くと、圧力供給口24Eと吸排制御ポート28Eの供給ポート28aEとが連通して吸排制御ポート28Eには、圧縮空気源31からレギュレータ30を介して圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、切替ポート28cE、フレキシブルパイプ28dEを介して空気ばねユニット13Eに供給される。従って、気密圧力室13bE内の圧力は上昇し、この内圧上昇によってダイヤフラム13aEが押し上げられる。ダイヤフラム13aEが押し上げられると、支持ロッド13cEを介して対物台11が部分的に押し上げられる。
【0019】
一方、回動台22の許容範囲以上の回動により排出ポート28bWは、圧力排出口25Wに連通され、その結果、空気ばねユニット13Wは、フレキシブルパイプ28dW、切替ポート28cW、排出ポート28bW、及び圧力排出口25Wを介して大気に連通され、空気ばねユニット13W内の空気は大気中に排出される。従って、空気ばねユニット13W内の空気が排出される結果、対物台11は部分的に下降する。このため、対物台11は水平状態に戻る方向に回動し、やがて、供給ポート28aEと排出ポート28bWが中立閉空間26Eに連通し、供給ポート28aWと排出ポート28bEが中立閉空間26Eに連通すると、回動台22の回動が止まる。
【0020】
以上の回動台22のE-W方向の回動に際しては、回動台22の吸排制御ポート28Nと28Sも位置を変えるが、その供給ポート28aNと排出ポート28bNは、中立閉空間26Nとの連通を維持し、その供給ポート28aSと排出ポート28bSは、中立閉空間26Sとの連通を維持する(図9)。よって、N-S方向には影響を与えない。
【0021】
以上は、回動台22のE-W方向の回動を例に本装置の動作を説明したものであるが、N-S方向の回動も同様である。
【0022】
次に、回動台22のE-W方向(N-S方向)以外の回動について本装置の動作を説明する。この動作は、回動台22のE-W方向とN-S方向の回動の合成で得られる。
図10は、一例として、固定台座21の四隅のうち一隅(図10中の右下)が下降する方向に回動台22が回動した状態を示している。すなわち、十字腕22cE、22cSは、それぞれ、水平状態から同位置まで下降し、この十字腕22cE、22cSの下降に伴い、十字腕22cN、22cWがそれぞれ同位置まで上昇する状態である。
【0023】
まず、圧縮空気の供給動作について説明する。
回動台22が許容範囲以上に回動する(十字腕22cE、22cSが許容範囲以上に下降する)と、圧力供給口24Eと吸排制御ポート28Eの供給ポート28aEとが連通し、同時に、圧力供給口24Sと吸排制御ポート28Sの供給ポート28aSとも連通する。これらが連通すると、吸排制御ポート28E、28Sには、レギュレータ30を介して圧縮空気源31から圧縮空気が供給される。この圧縮空気は、切替ポート28cE、フレキシブルパイプ28dEを介して空気ばねユニット13Eに供給され、同時に、切替ポート28cS、フレキシブルパイプ28dSを介して空気ばねユニット13Sにも供給される。従って、気密圧力室13bE、13bS内の圧力は上昇し、内圧上昇によってダイヤフラム13aE、13aSが押し上げられる。このダイヤフラム13aE、13aSが押し上げられると、対物台11は支持ロッド13cE、13cSを介して部分的に押し上げられる。
【0024】
別言すると、十字腕22cE、22cSが、それぞれ、水平状態から同じ位置まで下降するとき、圧力供給口24E(圧力供給口24S)から供給ポート28aE(供給ポート28aS)に流入する圧縮空気量は等しく、気密圧力室13bE、13bS内に供給される圧縮空気量も等しい。従って、気密圧力室13bE、13bS内の内圧上昇も等しく、十字腕22cE、22cSは同じ位置まで押し上げられる。
【0025】
次に、空気ばねユニット13W、13N内の空気の排出動作について説明する。
十字腕22cW、22cNが許容範囲以上に上昇すると、排出ポート28bWは、圧力排出口25Wに連通する。また、排出ポート28bNも、圧力排出口25Nに連通する。これらが連通すると、空気ばねユニット13Wは、フレキシブルパイプ28dW、切替ポート28cW、排出ポート28bW、及び圧力排出口25Wを介して大気に連通し、同時に、空気ばねユニット13Nも、フレキシブルパイプ28dN、切替ポート28cN、排出ポート28bN、及び圧力排出口25Nを介して大気に連通する。従って、空気ばねユニット13W、13N内の空気は大気中に排出される。そして、空気ばねユニット13W、13N内の空気が排出される結果、対物台11は部分的に下降する。
別言すると、十字腕22cW、22cNが、それぞれ、水平状態から同じ位置まで上昇するとき、排出ポート28bW(排出ポート28bN)から圧力排出口25W(圧力排出口25N)を介して大気中に排出される空気量は等しく、気密圧力室13bW、13bN内から大気中に排出される空気量も等しい。従って、気密圧力室13bW、13bN内の内圧下降も等しく、十字腕22cW、22cNは同じ位置まで下降する。
以上のように、回動台22は対物台11が水平状態に戻る方向に回動し、やがて、供給ポート28aE、28aSと排出ポート28bW、28bNが中立閉空間26Eに連通し、供給ポート28aW、28aNと排出ポート28bE、28bSが中立閉空間26Eに連通する(対物台11が水平状態に戻る)と、回動台22の回動が止まる。
【0026】
以上の実施形態では、理解を容易にするため、圧力供給口24と圧力排出口25の角度間隔、及び吸排制御ポート28の供給ポート28aと排出ポート28bの角度間隔を誇張して描いているが、実際の装置構成では、必要とされる対物台11の水平度に応じてこれらの角度間隔を小さく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による水平保持装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の水平保持装置から対物台を除いて描いた平面図である。
【図3】図1の水平保持装置の傾斜センサ機構だけを描いた平面図である。
【図4】図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【図5】図3、図7のV-V線に沿う断面図である。
【図6】傾斜センサ機構の半球状凹面を有する固定台座の平面図である。
【図7】傾斜センサ機構の半球状凸面を有する回動台の底面図である。
【図8】本発明による水平保持装置が傾いた状態を示す、図4に対応する断面図である。
【図9】図8の状態におけるエア吸排流路を示す、図6に図7の吸排制御ポートを重ねて描いた平面図である。
【図10】本発明による水平保持装置が傾いた別の状態を示す、図9に対応する平面図である。
【符号の説明】
【0028】
10 水平保持装置
11 対物台
12 床面
13 空気ばねユニット
13a ダイヤフラム
13b 気密圧力室
13c 支持ロッド
20 傾斜センサ機構
21 固定台座
21a 半球状凹面
22 回動台
22a 半球状凸面
22b 軸受
22c 十字腕
24 圧力供給口
25 圧力排出口
26 中立閉空間
28 吸排制御ポート
28a 供給ポート
28b 排出ポート
28c 切替ポート
28d フレキシブルパイプ
29 シール部材
30 レギュレータ
31 圧縮空気源


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を載置する対物台と床面との間の異なる平面位置に位置し、供給空気圧力に応じて床面に対する対物台の傾きを変化させる複数の空気ばねユニット;
上方が開放された半球状凹面を有し床面に固定された固定台座;
この固定台座の半球状凹面に全方向に相対回動可能に係合する半球状凸面を有し上記対物台と一緒に動く回動台;及び
この回動台の固定台座に対する相対回動位置に応じて、上記複数の空気ばねユニットに対する供給空気圧力を変化させる傾斜センサ機構;
を備えたことを特徴とする水平保持装置。
【請求項2】
請求項1記載の水平保持装置において、上記傾斜センサ機構は、固定台座の半球状凹面に空気ばねユニットの数に応じて開口させた圧力供給口と圧力排出口、及び上記回動台の半球状凸面に空気ばねユニットの数に応じて開口させた吸排制御ポートを備え、各吸排制御ポートは、固定台座に対する回動台の傾きに応じて、上記圧力供給口と圧力排出口を選択的に対応する空気ばねユニットに連通させる水平保持装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の水平保持装置において、上記空気ばねユニットは、対物台の平面中心に関し直交二方向に位置を異ならせて4個が配置されている水平保持装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−154992(P2007−154992A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350609(P2005−350609)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000005175)藤倉ゴム工業株式会社 (120)
【Fターム(参考)】