説明

水田作業機

【課題】水田用作業部に粉粒体供給装置と薬剤供給装置とを夫々装備している状態で機体前後方向でのコンパクト化を図ることが可能となる水田作業機を提供する。
【解決手段】肥料を圃場に供給する施肥装置Aと、薬剤を圃場に供給する薬剤供給装置Bとを備えた水田用作業部12が、昇降機構11を介して走行機体3の後部に昇降操作自在に連結され、施肥装置Aと薬剤供給装置Bとが、各装置A,B夫々の機体前後方向での後端位置が水田用作業部12の後端位置よりも機体前方側に位置する状態で且つ各装置A,B夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥料を圃場に供給する施肥装置又は種籾を圃場に供給する播種装置からなる粉粒体供給装置と、薬剤を圃場に供給する薬剤供給装置とを備えた水田用作業部が、昇降機構を介して走行機体の後部に昇降操作自在に連結されている水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記水田作業機の一例としての施肥装置を備えた水田作業機において、従来では、例えば、特許文献1に記載されるように、水田用作業部に圃場に苗を植付ける苗植付装置が備えられ、その苗植付装置における植付機構の上方側に位置する状態で施肥装置が配備され、その施肥装置の機体後方側に突出する状態で除草剤等の薬剤を圃場に供給する薬剤供給装置が配備される構成となっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−137491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の水田作業機は、走行機体の走行に伴って、圃場に肥料又は種籾を供給する粉粒体供給作業を行うとともに、除草剤等の薬剤を供給する薬剤供給作業も併せて行えるようにしながら、粉粒体供給装置及び薬剤供給装置を水田用作業部に備えて、それら各装置を圃場の供給対象箇所に近い箇所に位置させることにより、送風ブロア等の粉粒体の強制送り装置が不要な簡素な構成となるようにしたものである。
【0005】
しかしながら、上記従来構成では、粉粒体供給装置よりも機体後方側に突出する状態で薬剤供給装置が配備されていることから、水田用作業部の前後方向の長さが大きなものとなって、機体全体の前後方向の寸法が大型化する不利があった。
【0006】
説明を加えると、機体全体の前後方向の寸法が大型化すると、例えば、軽トラックの荷台に搭載することを想定したような小型の水田作業機であっても、水田用作業部に粉粒体供給装置と薬剤供給装置とを夫々装備する状態であれば、軽トラックの荷台に搭載することができなくなる等の不利な面がある。
【0007】
本発明の目的は、水田用作業部に粉粒体供給装置と薬剤供給装置とを夫々装備している状態で機体前後方向でのコンパクト化を図ることが可能となる水田作業機を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水田作業機は、肥料を圃場に供給する施肥装置又は種籾を圃場に供給する播種装置からなる粉粒体供給装置と、薬剤を圃場に供給する薬剤供給装置とを備えた水田用作業部が、昇降機構を介して走行機体の後部に昇降操作自在に連結されているものであって、その第1特徴構成は、前記粉粒体供給装置と前記薬剤供給装置とが、各装置夫々の機体前後方向での後端位置が前記水田用作業部の後端位置よりも機体前方側に位置する状態で且つ各装置夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている点にある。
【0009】
第1特徴構成によれば、粉粒体供給装置及び薬剤供給装置の夫々が、それらの機体前後方向での後端位置が水田用作業部の後端位置よりも機体前方側に位置する状態で配備されているから、水田用作業部の後端位置よりも機体後方側には何も存在しない状態となる。又、粉粒体供給装置及び薬剤供給装置の夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されているので、粉粒体供給装置及び薬剤供給装置を前後方向の寸法を大型化させずに水田用作業部に備えさせることができるものとなって、水田用作業部の後端位置よりも機体前方側に位置する状態で配備するようにしながらも水田用作業部の前後長さを小さくすることができる。
【0010】
従って、水田用作業部の後端位置よりも機体後方側には何も存在しない状態で、且つ、水田用作業部の前後長さを大型化させる必要がない状態で、粉粒体供給装置及び薬剤供給装置の夫々を適切に配備することができるから、水田用作業部に粉粒体供給装置と薬剤供給装置とを夫々装備している状態で機体前後方向でのコンパクト化を図ることが可能となる水田作業機を提供できるに至った。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記粉粒体供給装置と前記薬剤供給装置とが機体横幅方向に並ぶ状態で配備されている点にある。
【0012】
第2特徴構成によれば、粉粒体供給装置と薬剤供給装置とが機体横幅方向に並ぶ状態で配備されるので、両装置を上下方向の寸法を大きくさせない状態で配備することができ、機体前後方向でのコンパクト化に加えて上下方向のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成に加えて、前記粉粒体供給装置が機体横幅方向に沿って並ぶ状態で複数備えられ、前記薬剤供給装置が複数の粉粒体供給装置の間に配備されている点にある。
【0014】
第3特徴構成によれば、粉粒体供給装置は、機体横幅方向に沿って並ぶ状態で複数備えるようにして、機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所に同時に粉粒体(肥料又は種籾)を供給することができ作業効率を向上させることができる。ちなみに、粉粒体供給装置としての施肥装置又は播種装置のいずれにおいても、機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所に同時に粉粒体(肥料又は種籾)を供給する場合が多い。
【0015】
それに対して、薬剤供給装置は、供給対象領域に対して薬剤を拡散させた状態で供給するものであり、供給対象領域が機体横幅方向での幅が広くても粉粒体供給装置の個数よりも少ない個数で対応することが可能である。そこで、薬剤供給装置を複数の粉粒体供給装置の間に配備することで、供給対象領域に対して左右両側に分散させた状態で薬剤を効率よく供給させることができる。
【0016】
本発明の第4特徴構成は、第3特徴構成に加えて、前記薬剤供給装置における薬剤貯留部の蓋部が前記複数の粉粒体供給装置における粉粒体貯留部の上部よりも上側に突出する状態で、前記薬剤貯留部の下部を前記複数の粉粒体供給装置における粉粒体貯留部の間に形成された空間に入り込ませて配備されている点にある。
【0017】
第4特徴構成によれば、薬剤供給装置における薬剤貯留部の蓋部が複数の粉粒体供給装置における粉粒体貯留部の上部よりも上側に突出するので、薬剤貯留部の蓋部を左右両側に位置する粉粒体貯留部によって邪魔されることなく開閉操作することができる。又、薬剤貯留部の下部を前記複数の粉粒体供給装置における粉粒体貯留部の間に形成された空間に入り込ませて配備しているので、薬剤貯留部と粉粒体貯留部とを近づけることにより機体横幅方向でのコンパクト化を図ることができる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、第1特徴構成に加えて、前記粉粒体供給装置と前記薬剤供給装置とが上下方向に並ぶ状態で配備されている点にある。
【0019】
第5特徴構成によれば、粉粒体供給装置と薬剤供給装置とが上下方向に並ぶ状態で配備されるので、両装置を機体横幅方向の寸法を大きくさせない状態で配備することができ、機体前後方向でのコンパクト化に加えて機体横幅方向のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0020】
又、粉粒体供給装置を圃場に近い低い位置に配備しているような場合であれば、薬剤供給装置をその上方に配備するようにすると、薬剤を高い位置から広い領域に拡散供給させ易いものとなる等の利点がある。
【0021】
本発明の第6特徴構成は、第5特徴構成に加えて、前記粉粒体供給装置が機体横幅方向に沿って並ぶ状態で複数備えられ、前記薬剤供給装置が複数の粉粒体供給装置の並び方向の中間部の上方に位置する状態で配備されている点にある。
【0022】
第6特徴構成によれば、粉粒体供給装置は、機体横幅方向に沿って並ぶ状態で複数備えるようにして、機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所に同時に粉粒体(肥料又は種籾)を供給することができ作業効率を向上させることができる。ちなみに、粉粒体供給装置としての施肥装置又は播種装置のいずれにおいても、機体横幅方向に並ぶ複数の供給箇所に同時に粉粒体(肥料又は種籾)を供給する場合が多い。
【0023】
それに対して、薬剤供給装置は、供給対象領域に対して拡散させた状態で供給するものであり、供給対象領域が機体横幅方向での幅が広くても粉粒体供給装置の個数よりも少ない個数で対応することが可能である。そこで、薬剤供給装置を複数の粉粒体供給装置の並び方向の中間部の上方に位置する状態で配備することで、供給対象領域の中間部に近い位置から薬剤を効率よく供給させることができる。
【0024】
本発明の第7特徴構成は、第3,第4又は第6特徴構成に加えて、前記薬剤供給装置が前記水田用作業部の機体横幅方向中央部に位置する状態で配備されている点にある。
【0025】
第7特徴構成によれば、薬剤供給装置が供給対象領域に対して薬剤を拡散させた状態で供給するような場合に、水田用作業部の機体横幅方向中央部に位置しているから、水田用作業部の機体横幅方向の広い範囲にわたり極力均等に拡散供給することができる。
【0026】
本発明の第8特徴構成は、第1特徴構成〜第7特徴構成のいずれかに加えて、前記薬剤供給装置が前記粉粒体供給装置に支持される状態で配備されている点にある。
【0027】
第8特徴構成によれば、薬剤供給装置が粉粒体供給装置に支持される状態で配備されているので、薬剤供給装置を粉粒体供給装置を支持するための支持機構とは別の支持機構を用いる必要がなく支持機構の兼用化により構造を簡素化できる。
【0028】
本発明の第9特徴構成は、第1特徴構成〜第8特徴構成のいずれかに加えて、前記粉粒体供給装置が前記走行機体に搭載されるエンジンの動力により駆動操作されるように構成され、前記薬剤供給装置が、電動アクチュエータにより駆動されて貯留部から薬剤を繰り出す繰出し機構と、電動モータにより駆動されて薬剤を機体後方に向けて拡散放出させる拡散放出機構とを備えて構成されている点にある。
【0029】
粉粒体供給装置によって供給される粉粒体(肥料又は種籾)は、設定間隔おきに圃場に供給する必要があり、走行機体の走行状態と対応させた状態で供給する必要があるが、第9特徴構成によれば、粉粒体供給装置が走行機体と搭載されたエンジンにて駆動するようにすることで、走行機体の走行に応じて適切に設定間隔おきに圃場に供給することができる。
【0030】
一方、薬剤供給装置においては、電動アクチュエータにより駆動される繰出し機構により薬剤を貯留部から繰出して、その繰出した薬剤を電動モータにより駆動される拡散放出機構によって機体後方に向けて拡散放出させることになる。
このように電動アクチュエータにより繰出し機構を駆動操作するものであるから、電動アクチュエータの駆動条件を変更させることにより、使用される薬剤の種類によって供給条件を変更させることを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の全体平面図である。
【図3】水田用作業部の側面図である。
【図4】水田用作業部の背面図である。
【図5】繰出し機構の縦断側面図である。
【図6】薬剤供給装置の縦断側面図である。
【図7】拡散放出機構の平面図である。
【図8】乗用型直播機の全体側面図である。
【図9】水田用作業部の後面図である。
【図10】別実施形態の水田作業部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
以下、図面に基づいて、本発明に係る水田作業機の一例としての乗用型田植機について説明する。
図1に示すように、乗用型田植機は、操向操作自在な左右一対の前輪1及び左右一対の後輪2を備えた走行機体3の前部側に、エンジン4及びミッションケース5を備え、走行機体3の中央部にステアリングハンドル6等を装備した操縦部7と運転座席8とを備えて構成され、又、走行機体3の左右両側に予備苗のせ台9が配設されている。
走行機体3の後方には、リフトシリンダ10の操作により昇降機構としてのリンク機構11を介して昇降操作自在に連結された水田用作業部12に苗植付装置13が備えられ、その苗植付装置13に、圃場における苗の植付け箇所の横側に肥料を供給する施肥装置A(粉粒体供給装置Fの一例)と、例えば除草剤等の薬剤を散布する状態で圃場に供給する薬剤供給装置Bとが備えられている。
【0033】
苗植付装置13は、リンク機構11の後部にフィードケース14が連結され、そのフィードケース14に連結されて機体左右方向に延びる支持フレーム(図示せず)に2個の伝動ケース15が後向きに片持ち状に連結されている。伝動ケース15の後部の左右両側部に植付アーム16がクランク機構17により上下に揺動自在に支持され、各植付アーム16に夫々植付爪18が備えられて4条植え形式に構成されている。
【0034】
又、苗植付装置13には、苗のせ台20が左右に一定ストロークで往復横送り駆動自在に備えられており、苗のせ台20がストロークエンドに達する毎に、載置された苗を所定量だけ下方に送るベルト式の縦送り装置21が苗のせ台20に備えられている。又、苗植付装置12の下部には接地フロート19が支持されている。
【0035】
そして、エンジン4の動力が動力取り出し軸22及びフィードケース14を介して前記各伝動ケース15に伝達されて、植付アーム16が駆動される一方、フィードケース14に伝達される動力により苗のせ台20が往復横送り駆動されて、苗のせ台20の下部から上下に揺動運動する植付アーム16が、その先端部に備えられた植付爪18により1株ずつ苗を取り出して田面に植え付けるように構成されている。又、苗のせ台20が往復横送りのストロークエンドに達すると、フィードケース14に伝達される動力により縦送り装置21が駆動されて、苗のせ台20に載置された苗が下方に送られる構成となっている。
【0036】
そして、この乗用型田植機では、施肥装置Aが機体横幅方向に沿って並ぶ状態で2組備えられ、薬剤供給装置Bが2組の施肥装置Aの間に配備される構成となっている。つまり、施肥装置Aと薬剤供給装置Bとが機体横幅方向に並ぶ状態で配備されている。
【0037】
次に施肥装置Aについて説明する。
施肥装置Aは、機体横幅方向に沿って並ぶ状態で2組備えられており、夫々の施肥装置Aは次のように構成されている。
図3,4に示すように、各施肥装置Aは、粉粒状の肥料を貯留する粉粒体貯留部としての肥料貯留ホッパー23と、この肥料貯留ホッパー23の肥料を苗植付装置13の植付け作動と同期して繰出す2個の肥料繰出し機構24と、各肥料繰出し機構24からの肥料を圃場の供給箇所に案内する2個のホース25と、田面上に溝を作成するとともにホース25にて案内される肥料を溝内に供給する2個の作溝器26とを備えて構成されている。作溝器26は整地フロート19の下面に設けた溝切り板27の後端に備えられている。そして、この左右の施肥装置Aは、左右両側の伝動ケース15から固定立設された左右の支柱28の上部に連結固定された横向きフレーム29に夫々支持される状態で備えられている。前記肥料貯留ホッパー23は、上部が開放されるホッパー本体23Aと、そのホッパー本体23Aの上部を開閉自在な蓋部23Bとを備える。
【0038】
前記各肥料繰出し機構24は、苗植付装置13の植付アーム16の上下揺動に連動して繰出し操作が行われるように構成されている。
つまり、図5に示すように、肥料繰出し機構24には、繰出しケース30の内部に、周囲に肥料繰出し用の凹部31が形成された繰出しロール32が横向き軸芯周りで回動自在に備えられ、この繰出しロール32が回動しながら肥料貯留ホッパー23内の肥料を下方に繰出すことができるように構成されている。
【0039】
図4に示すように、機体左側の2つの繰出しケース30において、両繰出しケース30の繰出しロール32同士にわたって一本の六角軸からなる駆動軸33が取り付けられ、この駆動軸33には、左側の一対のクランク機構17におけるクランクアーム34に亘って連結した連動部材35から押し引きロッド36a及び取り付け位置調整用の連係部材36bを介して、一方向回転クラッチ37にて一方向のみ回転する状態で動力が伝達されるように構成されている。又、機体右側の2つの繰出しケース30においても、左側のものと同様にして駆動軸33とクランクアーム34との連動機構が構成されている。
【0040】
従って、施肥装置Aは、苗植付装置13による苗植付け作動が行われると、それに伴って、クランクアーム34が揺動して駆動軸33が設定量ずつ往復回動操作されて繰出しロール32が往復回動して、肥料を所定量ずつ繰出してホース25を介して圃場に肥料を供給することができるように構成されている。
【0041】
次に薬剤供給装置Bについて説明する。
図4に示すように、薬剤供給装置Bは、薬剤を貯留する薬剤貯留部としての薬剤貯留ホッパー38と、その薬剤貯留ホッパー38の下部に位置して貯留される薬剤を繰り出す繰出し手段としての薬剤繰出し機構39と、繰り出されて供給経路としての案内通路40(図6参照)を通して落下供給される薬剤を拡散させる拡散放出機構41とを備えて構成され、薬剤繰出し機構39及び拡散放出機構41は、ケーシング42に収納される構成となっている。薬剤貯留ホッパー38は、上部が開放されるホッパー本体38Aと、そのホッパー本体38Aの上部を開閉自在な蓋部38Bとを備える。
【0042】
図6に示すように、薬剤繰出し機構39は、薬剤の通過用開口43が形成された金属製の開口形成板44と、通過用開口43を閉塞する閉状態と薬剤の通過用開口43を開放する開状態とにわたりスライド移動自在な金属製のシャッター部材45と、そのシャッター部材45を閉状態と開状態とに切り換える電動アクチュエータとしてのソレノイド46とを備えて構成されている。
【0043】
シャッター部材45は、ソレノイド46に備えられるコイルバネ47が作用することにより閉位置(通過用開口31を閉じる位置)に移動付勢され、ソレノイド46に通電することによりコイルバネ47の付勢力に抗して引き操作することにより開位置(通過用開口31を開放する位置)に移動操作することができるように構成されている。
【0044】
図6,7に示すように、拡散放出機構41は、横向き姿勢の受止め面48Aを備えるとともに縦向きの回転軸芯Y周りで駆動回転される受止め体48と、その受止め体48の受止め面48Aに立設された拡散用羽根体49と、受止め体48を縦向きの回転軸芯Y周りで回転駆動する電動モータ50とを備えて構成されている。
【0045】
そして、薬剤繰出し機構39により繰り出された薬剤が案内通路40を通して落下供給されて、受止め体48にて受止められたのち、電動モータ50により回転駆動される拡散用羽根体49によって、機体後方に向けて拡散放出させるように構成されている。
【0046】
この薬剤供給装置Bは、図示しない制御装置によりソレノイド46の駆動状態を制御する構成となっており、シャッター部材45を開作動させる時間を、図示しない手動操作式の調節器によって任意の値に変更調節することができるように構成されている。
【0047】
図3,4に示すように、薬剤供給装置Bは、左右の施肥装置Aの間であって且つ水田用作業部12の機体横幅方向の中間部に位置する状態で配備されており、ケーシング42が横向きフレーム29に支持される状態で備えられている。つまり、薬剤供給装置Bは専用の支持機構を備えずに施肥装置Aに支持される状態で配備される構成となっている。
【0048】
そして、この乗用型田植機では、上述したように、機体横幅方向に沿って並ぶ2組の施肥装置Aの間に薬剤供給装置Bが備えられて、施肥装置Aと薬剤供給装置Bとが機体横幅方向に並ぶ状態で配備されており、図3に示すように、施肥装置Aと薬剤供給装置Bとが、各装置A,B夫々の機体前後方向での後端位置E1,E2が苗植付装置13の後端位置E3よりも機体前方側に位置する状態で且つ各装置A,B夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている。
【0049】
具体的には、施肥装置Aにおける連係部材36bの後端位置E1と、薬剤供給装置Bにおけるケーシング42の後端位置E2との夫々が、苗植付装置13におけるクランクアーム34の後端位置E3よりも機体前方側に位置する状態で、施肥装置A及び薬剤供給装置Bが夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている。
【0050】
又、図4に示すように、薬剤供給装置Bにおける薬剤貯留ホッパー38の蓋部38Bが左右両側の施肥装置Aにおける肥料貯留ホッパー23の上部よりも上側に突出する状態で、薬剤貯留ホッパー38の下部を左右両側の施肥装置Aにおける肥料貯留ホッパー23の間に形成された空間に入り込ませて配備されている。
このように構成することで、薬剤貯留ホッパー38の蓋部38Bが開閉操作し易いものとなり、薬剤貯留ホッパー38のホッパー本体38Aと左右両側の施肥装置Aにおける肥料貯留ホッパー23とを近づけて配備することができ、機体横幅方向にコンパクトに配備できるものとなる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態を説明する。この実施形態では、水田作業機の一例として、水田用作業部12に粉粒体供給装置Fとして種籾を圃場に供給する播種装置Cを備えた乗用型直播機に本発明を適用した場合について説明する。
【0052】
図8に示すように、走行機体3の後部にリンク機構11を介して昇降自在に備えられた水田用作業部12に播種装置Cと薬剤供給装置Bとが備えられている。
尚、この実施形態では、走行機体3の後部に施肥装置Aが配備され、施肥装置Aは、繰出された肥料を長いホース60を介して圃場に供給するように構成され、強制的に肥料を送るための強制送風用のブロア61が備えられている。
【0053】
図9に示すように、水田用作業部12は、リンク機構11の下端部に連結された作業部フレーム51を備えており、その作業部フレーム51が備える支持フレーム52に車体横幅方向に並ぶ状態で6つの播種装置Cが備えられている。
【0054】
各播種装置Cは、種籾貯留ホッパー53に貯留される種籾を所定量ずつ繰出す種籾繰出し機構54が備えられ、繰出された種籾が筒状体55にて案内されながら圃場面に落下供給されるように構成されている。種籾繰出し機構54は、図示はしないが、施肥装置Aと同様に、周囲に種籾繰出し用の凹部が形成された繰出しロールが横向き軸芯周りで回動して種籾を下方に繰出すことができるように構成されている。又、繰出しロールは、走行機体3に搭載されたエンジン4の動力が動力取り出し軸22を介して伝えられて駆動される構成となっている。
【0055】
薬剤供給装置Bは、上記実施形態で説明したものと同様の構成であるから詳細な説明は省略するが、図8,9に示すように、作業部フレーム51から立設された支柱56により支持される構成となっており、この薬剤供給装置Bは、複数の播種装置Cの並び方向の中間部の上方であって且つ水田用作業部12の機体横幅方向中央部に位置する状態で配備されている。
【0056】
そして、この乗用型直播機では、上述したように、機体横幅方向に沿って並ぶ6つの播種装置Cの上方に薬剤供給装置Bが備えられて、播種装置Cと薬剤供給装置Bとが上下方向に並ぶ状態で配備されており、図8に示すように、播種装置Cと薬剤供給装置Bとが、各装置B,C夫々の機体前後方向での後端位置E4,E2が水田用作業部12の後端位置E3よりも機体前方側に位置する状態で且つ各装置B,C夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている。
【0057】
具体的には、播種装置Cにおける種籾貯留ホッパー53の後端位置E4と、薬剤供給装置Bにおけるケーシング42の後端位置E2との夫々が、水田用作業部12における整地フロート19の後端位置E3よりも機体前方側に位置する状態で、播種装置C及び薬剤供給装置Bが夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている。
【0058】
〔別実施形態〕
(1)上記第1実施形態では、水田用作業部12に施肥装置Aと薬剤供給装置Bとを備えるものにおいて、施肥装置Aと薬剤供給装置Bとが機体横幅方向に沿って並ぶ状態で配備される構成としたが、このような構成に代えて、水田用作業部12に施肥装置Aと薬剤供給装置Bとを備えるものにおいて、施肥装置Aと薬剤供給装置Bとが上下方向に並ぶ状態で配備されるものでもよい。
【0059】
(2)上記第2実施形態では、水田用作業部12に播種装置Cと薬剤供給装置Bとを備えるものにおいて、播種装置Cと薬剤供給装置Bとが上下方向に並ぶ状態で配備される構成としたが、このような構成に代えて、水田用作業部12に播種装置Cと薬剤供給装置Bとを備えるものにおいて、播種装置Cと薬剤供給装置Bとが機体横幅方向に沿って並ぶ状態で配備される構成としてもよい。
【0060】
(3)上記各実施形態では、薬剤供給装置Bにおける拡散放出機構41が、拡散用羽根体49を備える受止め体48を縦向きの回転軸芯Y周りで電動モータ50にて回転駆動する構成としたが、例えば、図10に示すように、受止め体48の受止め面48Aが機体後方側ほど下方に位置する傾斜姿勢となり、斜め姿勢の回転軸芯Y1周りで回転駆動される構成とし、繰出される薬剤を受止め体48に落下案内する案内通路40も回転軸芯に沿うような斜め姿勢に形成する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、乗用型田植機や乗用型直播機等の水田作業機であって、粉粒体供給装置と薬剤供給装置とを備えた水田用作業部が昇降機構を介して走行機体の後部に昇降操作自在に連結されている水田作業機に適用できる。
【符号の説明】
【0062】
3 走行機体
4 エンジン
11 昇降機構
12 水田用作業部
23 粉粒体貯留部
38 薬剤貯留部
38B 蓋部
39 繰出し機構
41 拡散放出機構
46 電動アクチュエータ
50 電動モータ
A 施肥装置
B 薬剤供給装置
C 播種装置
E1,E2,E3,E4 後端位置
F 粉粒体供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥料を圃場に供給する施肥装置又は種籾を圃場に供給する播種装置からなる粉粒体供給装置と、薬剤を圃場に供給する薬剤供給装置とを備えた水田用作業部が、昇降機構を介して走行機体の後部に昇降操作自在に連結されている水田作業機であって、
前記粉粒体供給装置と前記薬剤供給装置とが、各装置夫々の機体前後方向での後端位置が前記水田用作業部の後端位置よりも機体前方側に位置する状態で且つ各装置夫々の機体前後方向での位置が略同じになる状態で配備されている水田作業機。
【請求項2】
前記粉粒体供給装置と前記薬剤供給装置とが機体横幅方向に並ぶ状態で配備されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項3】
前記粉粒体供給装置が機体横幅方向に沿って並ぶ状態で複数備えられ、前記薬剤供給装置が複数の粉粒体供給装置の間に配備されている請求項2記載の水田作業機。
【請求項4】
前記薬剤供給装置における薬剤貯留部の蓋部が前記複数の粉粒体供給装置における粉粒体貯留部の上部よりも上側に突出する状態で、前記薬剤貯留部の下部を前記複数の粉粒体供給装置における粉粒体貯留部の間に形成された空間に入り込ませて配備されている請求項3記載の水田作業機。
【請求項5】
前記粉粒体供給装置と前記薬剤供給装置とが上下方向に並ぶ状態で配備されている請求項1記載の水田作業機。
【請求項6】
前記粉粒体供給装置が機体横幅方向に沿って並ぶ状態で複数備えられ、前記薬剤供給装置が複数の粉粒体供給装置の並び方向の中間部の上方に位置する状態で配備されている請求項5記載の水田作業機。
【請求項7】
前記薬剤供給装置が前記水田用作業部の機体横幅方向中央部に位置する状態で配備されている請求項3、4又は6記載の水田作業機。
【請求項8】
前記薬剤供給装置が前記粉粒体供給装置に支持される状態で配備されている請求項1〜7のいずれか1項に記載の水田作業機。
【請求項9】
前記粉粒体供給装置が前記走行機体に搭載されるエンジンの動力により駆動操作されるように構成され、
前記薬剤供給装置が、電動アクチュエータにより駆動されて貯留部から薬剤を繰り出す繰出し機構と、電動モータにより駆動されて薬剤を機体後方に向けて拡散放出させる拡散放出機構とを備えて構成されている請求項1〜8のいずれか1項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−200220(P2012−200220A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68754(P2011−68754)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】