説明

水田除草兼用溝切り機

【課題】 一台の自走型走行装置に対し、その利用目的に応じて除草装置や溝切り装置を適宜着脱可能に装着し、圃場の除草作業と溝切り作業との夫々に兼用可能とする新たな農業用機械を提供する。
【解決手段】 本体フレーム3の前端がわ適所に自走用車輪4を軸着し、その上部適所に操縦用ハンドル5,5を設け、後端がわに自走用車輪4の駆動源6を設けた走行装置2からなり、当該本体フレーム3の自走用車輪4、軸着部分付近に設けた除草装置取り付け用ブラケット31に、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼76を配した水平杆71を有する除草装置7を、連結アーム8,8を介して着脱自在に装着し、当該本体フレーム3中途適所に設けた溝切り装置取り付け用ブラケット33に、舳先状の溝切り装置9が、その先端がわから上方に延伸した連結アーム92を介して着脱自在に装着した水田除草兼用溝切り機1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用機械に関連するあらゆる分野をその技術分野とするものであり、特に水田用の除草用機械および溝切り用機械などを製造する分野は勿論のこと、その製造および使用に必要となる装備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
稲作農家にとって田植えや稲刈りといった農繁期に並び、収穫に大きな影響を及ぼすのが水田に発生する稗など雑草の除草や、給水や排水を速やかにし、水の管理を円滑且つ圃場の全体に亘り、均質に行えるようにする灌水用の溝切りなどの作業であり、こうした地道な作業を怠ると収量を大きく減少させたり、収穫米の品質を悪化させてしまうことになるため、多大な時間と労力とを費やしながら、手作業によって一本々々の雑草を抜き、鍬や自作したその他の溝切り用具などを用いて土壌表面に溝を切り、圃場の管理を徹底しなければならないことから、特に兼業農家にとっては負担の大きな作業となっていた。
【0003】
(従来の技術)
そこで、その打開策となるようなものとして、例えば特開2001−178202号公報「圃場用溝きり刃」発明として提案されているもののように、溝形成部を有し、この溝形成部を圃場の地中に部分的に埋没させつつ前進させ、前記溝形成部の横断面輪郭に対応する溝を形成するようになっている圃場用溝切り刃において、張出し部が前記溝形成部による溝の形成に伴い、溝の両側の地表部に排出されて来る土を左右方向外方へ拡散しつつ、上方から押圧して、盛上がり部の形成を抑制するように、前記溝形成部の上端から左右方向外方へ張出して、かつ前記溝形成部との一体成形により形成されている圃場用溝切り刃を一輪型自走車に搭載し、その一輪型自走車の走行に伴い、土中埋没部分が土中内を前進し、土中に溝を形成するようにしたものが提案されている。
【0004】
さらには、特開2002−204603号公報に開示された「除草装置及び回転除草機構」発明のように、駆動源の駆動によって車輪を回転させて自走する自走部と、該自走部の前方側に設けられ、土面に対して傾斜した状態で回動するように軸支された回転基部の外周に羽板部を複数放射状に設けてなる回転除草機構であって、前記羽板部の掻き出し面側が凹曲状に形成され、且つ同羽板部の下側片部が土面と接触するように凸曲状に形成され、その下側辺部を土面に接地させることで前記回転基部を回動するとともに、前記羽板部で土を攪拌し掻き出すように構成されている回転除草機構を有する除草部とを備え、自走部を自走させながら前記除草部によって除草作業を行う除草装置であり、前記自走部の後方側に、該自走部に牽引させるように乗用部を設けた除草装置とし、回転除草機構が、雑草の根を切り、雑草を根本から掘り起こし、雑草を土と共に攪拌し、確実な除草を行えるものとし、作業者は、乗用部に立つことにより、自走部の走行に合わせて歩行する必要がなく、労働負担の軽減を実現、可能としたもの、または、特開2006−6240号公報の「水田用除草機」発明に開示された、植付苗の株間を除草する株間除草機構が走行機体に装着され、株間除草機構は、植付苗の上方から下方に向けて離間する傾斜をもった回転軸に板刃が放射状に設けられ株間で接地抵抗により自転する非駆動式のロータ刃を備えており、株間除草機構は、ロータ刃の株間への侵入量を調整する侵入量調整機構を介して走行機体に装着されてなる水田用除草機のように、取付位置調整機構によって植付苗の品種、成育状況等に対応して株間除草機構のロータ刃の株間への侵入量が調整され、回転するロータ刃の植付苗の茎等への接触が防止されるため、除草作業による植付苗の傷付け損傷が防止される効果が得られるもの等が散見される。
【0005】
しかしながら、これら「圃場用溝きり刃」、「除草装置及び回転除草機構」および「水田用除草機」に開示された各発明は、何れも一輪型または二輪型の自走車を採用しているにも拘わらず、圃場用の溝切り機としての使用か、または圃場用の除草機械としての使用かの何れか一方にのみ専用に使用するものとなっており、稲作農家が双方の機械を準備するには多大な経費が必要となる上、それらの使用の頻度は何れも年間を通じて多くとも数回程度に留まり、夫々の保管場所も不可欠な上、維持管理は勿論個々の機械毎に行わなければならず、農家の負担ばかりが増えてしまうという大きな欠点を有するものであった。
【特許文献1】(1)特開2001−178202号公報 (2)特開2002−204603号公報 (3)特開2006−6240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある「圃場用溝きり刃」は、一輪型自走車のエンジンと車輪とを繋ぐ伝動軸用パイプの中途適所に吊下状に設けられたステーに所定角度に固定された培土板からなって、当該一輪型自走車は、基本的に圃場の溝切り専用に使用することとなるものであり、また、次に示した「除草装置及び回転除草機構」は、駆動源を搭載した左右二輪型の自走部の前方に、回転除草機構を有した除草部を設け、同自走部の後方に乗用部を牽引させるよう連結したものとし、水田の除草作業専用に用いるものとなっており、後者の「水田用除草機」は、前方上部にエンジンを搭載した一輪型の自走機体の後方上部に運転用ハンドルを延伸させ、該自走機体前方下部に株間除草機構を設けたものとし、当該自走機体もやはり水田用の除草作業専用のものであって、それ以外の用途への利用ができず、経済的負担を嫌ってそれらの機械の購入を断念し、従前までのように人手に頼る作業へと後戻りするか、または圃場用の溝切り専用の自走車、および自走型の除草機を夫々個別に購入するかの何れかしか選択できず、労働負担の軽減の為に購入する場合には、既に田植機やトラクター、コンバインなどの様々な農業用機械を導入している稲作農家にとって、経済的負担をより一層拡大させてしまう要因となってしまうという問題を生じさせていた。
【0007】
(発明の目的)
そこで、この発明は、一台の自走型走行装置に対し、その利用目的に応じて除草装置や溝切り装置を適宜着脱可能に装着し、圃場の除草作業と溝切り作業との夫々に兼用可能とする新たな農業用機械の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の水田除草兼用溝切り機を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の水田除草兼用溝切り機は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となる本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわかまたは後端がわかの何れか一方の適所に操縦用ハンドルを設け、同後端がわかまたは中途上がわかの何れか他方の適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を有する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着されてなるものとした構成を要旨とする水田除草兼用溝切り機である。
【0009】
これを換言すると、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となる本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわかまたは後端がわかの何れか一方の適所に操縦用ハンドルを設け、同後端がわかまたは中途上がわかの何れか他方の適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を有する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着され、除草作業の際には、溝切り装置を溝切り装置取り付け用ブラケットから取り外し、溝切り作業のときには、除草装置を除草装置取り付け用ブラケットから取り外して利用し得るものとした構成からなる水田除草兼用溝切り機となる。
【0010】
上記の基本的な構成によるこの発明の水田除草兼用溝切り機を、より具体的なものとして示すと、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となるパイプ状の本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわの適所に左右の操縦用ハンドルを設け、同後端がわの適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を、パイプ状本体フレーム中に配する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを着脱可能に設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着されてなるものとした水田除草兼用溝切り機ということができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、この発明の水田除草兼用溝切り機によれば、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となる本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわかまたは後端がわかの何れか一方の適所に操縦用ハンドルを設け、同後端がわかまたは中途上がわかの何れか他方の適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を有する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着されてなるものとしたことから、一台の走行装置を、水田用の除草機械としての利用の外、水田用の溝切り機械としても使用することが可能となり、夫々の専用機械を買い揃えていた従来に比較して格段に経済的な稲作を実現可能とすることができるようになり、しかも以前までは走行装置二台分の格納スペースを必要としていたが、走行装置略一台分のスペースに保管可能となる上、保守点検も一台分の作業に留めることができ、農家の労働負担を大幅に削減できるという秀れた特徴が得られるものである。
【0012】
加えて、当該水田除草兼用溝切り機は、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となるパイプ状の本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわの適所に左右の操縦用ハンドルを設け、同後端がわの適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を、パイプ状本体フレーム中に配する駆動源を設けた走行装置からなるものとしてあり、本体フレームを軽量化し、走行駆動力を削減して駆動源および走行装置全体の小型、軽量化を実現化することができ、駆動源およびその駆動力伝達機構が、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に着脱可能に設けられた除草装置取り付け用ブラケットや、当該本体フレームの中途下がわの適所に設けられた溝切り装置取り付け用ブラケットの取り付け、配置に障害となるのを防ぎ、構造の複雑化を阻止して比較的簡潔な仕組みからなるものとし、小型軽量で除草ならびに溝切り作業や圃場までの運搬作業中の取扱性に優り、耐久強度を高めることができ、故障が少なく耐用年数を延ばし、経済性に優れた農業用機械とすることができるという効果を発揮することになる。
【0013】
さらに除草装置が、その水平杆の各苗条間に対応する箇所の夫々に、苗丈を越える高さに設定可能な脚部を介して、先端がわを上向きに、後端がわを下向きに僅かに彎曲させた案内橇を設け、各脚部の後方には、接地による抵抗力を受けて自動的に回転可能な下向きの除草用攪拌翼および/または車輪翼が適宜配されるよう設定したものでは、案内橇を接地させるよう操縦用ハンドルを操作して除草用攪拌翼および/または車輪翼の接地状態を適正にコントロールすることが可能となって簡単、確実な除草作業を実現化できるという利点が得られる。
【0014】
除草装置が、その水平杆の各苗条間に対応する箇所の夫々に、苗丈を越える高さに設定可能な脚部を介して、先端がわを上向きに、後端がわを下向きに僅かに彎曲させ、しかも左右端縁を含む底面またはその周辺の何れか適所に、圃場地面に刺さり、左右の振れを規制可能とするよう、厚み方向が進行方向に対して略直角となる左右方向に向けられた直進案内翼を下向きに突設した案内橇を設け、各脚部の後方には、接地による抵抗力を受けて自動的に回転可能な下向きの除草用攪拌翼および/または車輪翼が適宜配され、実質的に水平杆適所に高さ調節可能に支持されるようにしたものでは、各案内橇の底面に設けられた直進案内翼が除草装置を直進状に案内することとなって初心者が操縦した場合であっても簡便に安定した走行を実現することができ、除草用攪拌翼や車輪翼が水稲に接触して損傷を与えてしまうことを確実に防止できるという効果がでる。
【0015】
除草装置が、その連結アームを、所定長に設定された上下一対の平行リンク型に形成し、除草装置取り付け用ブラケットと水平杆の左右中央付近との間に、水平杆の所定範囲内の上下移動を許容可能とする衝撃吸収機構が形成されるようにしたものでは、圃場地面の凹凸にも除草用攪拌翼や車輪翼を追従させ、より確実な除草を可能にすることができる上、圃場地面の凹凸に応じて操縦用ハンドルを上下動させる操作が不要となり、さらに軽快な運転操作を実現可能とし、作業者への労働負担を軽減できるものになるという効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
走行装置は、本体フレームの前端がわ適所に軸着された自走用車輪を、同本体フレームの後端がわかまたは中途上がわかの何れか適所に設けられた駆動源により、水田を自走可能とするよう駆動力の発生とそれによる自走用車輪の回転駆動とを可能とし、当該体フレームの中途上がわかまたは後端がわかの適所に設けられた操縦用ハンドルにより、右左折および体フレーム後端がわの上下動操作を可能とする機能を果たすものであり、この発明の水田除草兼用溝切り機の本体を形成するものとし、必要箇所に除草装置取り付け用ブラケットおよび溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、除草装置と溝切り装置とを夫々の適する配置箇所に着脱自在に装着可能としたものとしなければならず、できるだけ小型、軽量で耐久性に優れたものとすべきであり、作業者が操縦用ハンドルを把持したときに、良好なバランスを維持し易い設定のものとするのが望ましい。
【0017】
本体フレームは、自走用車輪によって走行自在に支持され、操縦用ハンドルからの操舵力を受けて方向転換可能とし、駆動源を支持し、除草装置取り付け用ブラケットや溝切り装置取り付け用ブラケットをそれらの適所に配して、除草装置および溝切り装置を適宜位置に着脱可能に装着できるようにする機能を果たし、駆動源の支持や操縦用ハンドルによる走行操作、および除草装置および溝切り装置の装着などに十分に耐える剛性を有するものとしなければならず、後述する実施例に示すように、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となるパイプ状に形成され、その内部に、前端がわに軸着された自走用車輪と、後端がわかまたは中途上がわかの何れか適所に設けられた駆動源とを繋ぐ駆動力伝達機構を内蔵させたものとすることが可能である。
【0018】
自走用車輪は、除草装置や溝切り装置を搭載した走行装置を水田内で沈没せずに自走可能とし、軽快に前進駆動可能とする機能を果たし、輻の長さを轂が水田の地中に没しない程度に設定されたものとしなければならず、泥濘を走行可能とする複数の掻き翼を輪の周縁に沿って突設したものとすべきであり、後述する実施例に示すように、軽量化の観点から本体フレーム左右がわの何れか一方に一輪のみ配したものとするのが望ましい。
【0019】
操縦用ハンドルは、走行装置の走行方向後方に配置した作業者が把持し、駆動源を搭載した本体フレームの後端がわを、自走用車輪の軸着部分を支点に上下傾動操作可能とすると共に、走行装置の左右操舵を可能とする機能を果たし、走行装置の操縦操作力に耐える十分な強度を有するものとしなければならず、左右に枝分かれされたものや、左右に伸びる棒状のもの、または無端のループ状に形成されたものなどとすることが可能であり、後述する実施例に示すように、駆動源の出力操作部分やアクセル操作部分を設けたり、変速ギア用の操作部分、クラッチ操作部分またはブレーキ操作部分などを設けたものとすることができる。
【0020】
駆動源は、自走用車輪に回転駆動力を供給し、走行装置を自走可能とする機能を果たし、自走用車輪に駆動力を伝達する駆動力伝達機構を有するものとしなければならず、作業者が操縦用ハンドルを把持して持ち上げたときに、バランス良く本体フレームの後端がわを傾斜状の姿勢に保持可能とするよう配し、比較的軽量なものとして十分な駆動力を発揮する出力を有するものとすべきであり、バッテリーを有する駆動モータとすることが可能である外、ディーゼルエンジンや、後述する実施例に示すような、燃料タンクを備えた2ストロークサイクルまたは4ストロークサイクルのガソリンエンジンなどとすることができ、作業者のアクセル操作などに応じて作動する自動変速機構または作業者自ら直接的に操作可能な変速機構を設けたものとすることが可能である。
【0021】
駆動力伝達機構は、駆動源で発生した駆動力を自走用車輪の回転力とするよう伝達可能とする機能を果たすものであり、駆動源の出力を自走用車輪に効率的に伝達可能なものとしなければならず、より具体的には、チェーン、ベルト、シャフト、フレキシブルシャフト、歯車など様々な動力伝達機構の中から選択することが可能であり、後述する実施例に示すように、パイプ状の本体フレーム中に内蔵されたシャフトやフレキシブルシャフトと傘歯車、ハイポイドギア、ウォームギアまたは螺子歯車などの組み合わせによるものとすることができ、必要に応じて減速機や変速機などを添設したものとすることが可能である。
【0022】
除草装置取り付け用ブラケットは、本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近の適所に除草装置の連結アームを着脱自在に装着可能とする機能を果たすものであり、除草装置を支持できる程度の十分な強度をもつものとしなければならず、ボルト・ナットや蝶螺子・螺子孔、またはバックルなどを用いて除草装置の連結アームを簡便に仮固定、および取り外し可能としたものとすることができ、本体フレームに対して着脱可能に組み込まれたものとすることができる。
【0023】
溝切り装置取り付け用ブラケットは、本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置の連結アームを着脱自在に装着可能とする機能を果たし、圃場地面に切り込ませる溝切り装置を支障なく支持できる程度に十分な強度を有するものとしなければならず、前記除草装置取り付け用ブラケットと同様に、ボルト・ナットや蝶螺子・螺子孔、バックルなどを用いて溝切り装置の連結アームを、簡単に仮固定することが可能であり、しかも簡単に取り外しできるものとすべきである。
【0024】
除草装置は、走行装置に脱着自在に装着され、走行装置の自走に伴って水田の稲苗条間に発生した雑草を根刮ぎ攪拌状に除草してしまう機能を果たすものであり、走行装置の本体フレーム前端付近に設けられた除草装置取り付け用ブラケットに対して連結アームを介し、脱着自在に装着されたものとしなければならず、該連結アームの前端がわには、複数の稲条間に跨る水平杆の左右中央付近の適所が連結されたものなり、該水平杆の左右間に沿って複数の除草用攪拌翼および/または車輪翼が、圃場地面に接触可能となるよう垂れ下がり状に装着されたものとすべきであり、後述する実施例に示すように、水平杆の各除草用攪拌翼および/または車輪翼の前方となる各部に、苗丈を越える高さに設定可能な脚部を介して、先端がわを上向きに、後端がわを下向きに僅かに彎曲させた案内橇を設けたものとするのが望ましい。
【0025】
連結アームは、除草装置を走行装置の本体フレーム前端付近に対し、着脱自在に連結可能とするものであり、除草装置を安定的に支持できる程度に十分な強度をもち、自走用車輪や本体フレームなどに干渉しないよう支持できるものとしなければならず、所定長に設定された上下一対の平行リンク型に形成し、除草装置取り付け用ブラケットと水平杆の左右中央付近との間に、水平杆の所定範囲内の上下移動を許容可能とする衝撃吸収機構が形成されるよう設定されてなるものとすることができる。
【0026】
衝撃吸収機構は、走行中の走行装置における前後傾斜姿勢の変動に影響を受けず、除草装置の接地姿勢を安定的に保ち、さらに除草装置が水田地表面の凹凸に柔軟に追従できるように機能するものであって、連結アーム自体か、除草装置取り付け用ブラケット、または水平杆、脚部、案内橇、除草用攪拌翼、車輪翼などの取付け部分に、組み込まれたバネや弾性樹脂などの弾性部材からなるものとすることができる外、後述する実施例に示すように、弾性部材を組み込まず、除草装置用の連結アームを、所定長に設定された上下一対の平行リンク型に形成し、水平杆の所定範囲内の上下移動を許容可能としたものとすることが可能である。
【0027】
水平杆は、各除草用攪拌翼および/または車輪翼を、隣接する複数の稲条間、夫々に対応させるよう、除草装置連結アームの先端がわに支持可能とする機能を果たすものであり、該連結アームの先端がわに対して十分な強度をもって連結されたものとし、撓みなどを発生せずに、各除草用攪拌翼および/または車輪翼を支持できる剛性を有するものとしなければならず、各除草用攪拌翼および/または車輪翼の前方に相当する各所に案内橇取付け用の脚部を下向き突設させたものとすることができる。
【0028】
除草用攪拌翼は、走行装置の走行に伴い、圃場地面に接触または下向き刺し込み状とされたときに、地面への接触抵抗を受けて自動的に縦軸心回りに回転駆動されることとなり、土壌を強制的に攪拌状として雑草を根刮ぎ除草してしまう機能を果たすものであり、複数枚の翼を下向き姿勢に配置させ、仮想鉛直線に対し、進行方向左右何れかがわに僅かに傾斜させた軸心回りに回転自在に支持され、地面に接触された翼が抵抗を受けて自動的に回転力を発生可能なものとし、比較的軽量で十分な剛性を有するものとすべきであり、水平杆の左右端に配置された一個ずつを除く水平杆の左右端間のものを、各苗条間に2個ずつ配置させたものとし、一条の苗条を左右がわから挟むよう配させたものとするのが望ましいが、各苗条間に一個ずつ配させたものとすることも可能である。
【0029】
車輪翼は、走行装置の走行に伴い、圃場地面に接触または下向き刺し込み状とされたときに、地面への接触抵抗を受けて自動的に水平状の軸心回りに回転駆動されることとなり、土壌を強制的に攪拌状として雑草を根刮ぎ除草してしまう機能を果たすものであり、走行装置の走行方向に直行状となる水平軸心回りに回転自在に装着された転輪からなり、その外周面壁には、水田地表を攪拌可能とする複数の鈎爪が点在状に突設されたものとすべきであるが、水車状の複数枚の翼を有するものや、棘状の複数本の針または剣などが突設されたものなどとすることも可能であり、それ以外の外周面壁が、土壌表面を上がわから、その重量によって転圧状とするよう形成されたものとするのが望ましい。
【0030】
案内橇は、圃場地面に滑走自在に接地して除草装置の各除草用攪拌翼および/または車輪翼の、地上面への接触状態および土壌への刺さり込み状態を適正に維持するよう案内可能とする機能を果たすものであり、左右幅寸法を稲条間寸法より短く設定し、稲条間に余裕をもって配置できる寸法、形状に設定しなければならず、泥濘を円滑に滑走可能とするよう、先端がわを上向きに湾曲させた橇型に形成しなければならず、後端の沈み込みを阻止できるよう、後端がわを下向きに僅かに彎曲させたものとするのが望ましく、また、左右端縁を含む底面またはその周辺の何れか適所に、圃場地面に刺さり、左右の振れを規制可能とするよう、厚み方向が進行方向に対して略直角となる左右方向に向けられた一枚または複数枚の直進案内翼を下向きに突設したものとすることができる。
【0031】
脚部は、水平杆の稲条間に対応する各所に、それらに対応する各案内橇の上部適所を個別に連結可能とする機能を果たすものであり、圃場地面に接地、滑走する案内橇を所定の姿勢に支持できる程度に、十分な強度をもって連結できるものとし、苗丈を越える高さに設定可能なものとしなければならず、稲の生育状況に応じて高さを調節可能とする、伸縮機構部分と適宜高さに仮固定可能とする螺子やピンなどからなる仮固定機構部分とを有する高さ調節機能を有するものとするのが望ましい。
【0032】
溝切り装置は、本体フレームの適所に着脱自在に装着可能とされ、走行装置の走行に伴い、圃場地面に所定幅、深さの溝を掘削形成可能とする機能を果たすものであり、本体フレームの中途下がわの適所に設けられた溝切り装置取り付け用ブラケットに対し、一体的に設けられた連結アームを介して着脱自在に装着されるものとしなければならず、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有するものとし、泥濘状となった圃場地面に刺し込むことのできる程度に十分な強度を有するものとすべきであり、灌水された泥濘土壌への沈下を容易にするよう、ある程度の重量をもって形成されたものとするのが望ましい。
【0033】
溝切り用底部は、走行装置の前進に伴い、前方から後方に向けて次第に切り溝の深さおよび幅を拡大できるよう溝切り装置の、地中への切り込み部分形状を設定する機能を果たし、舳先状となるよう前方中央が、進行方向に向けて次第に細く上向きに延伸されるよう形成され、進行方向の後方部分が、後方に向けて次第に幅広くなり、下向きに傾斜された形状とされたものとすべきであり、進行方向からの正断面形状が、逆正三角形、逆二等辺三角形、上下反転台形、半円形などとなるように形成したものとするのが望ましい。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【実施例1】
【0034】
図1の除草装置を装着した水田除草兼用溝切り機の斜視図、図2の溝切り装置を装着した水田除草兼用溝切り機の斜視図、図3の走行中の水田除草兼用溝切り機の側面図、および図4の除草作業中の水田除草兼用溝切り機の側面図に示される事例は、進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となる本体フレーム3の前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪4を軸着し、同中途上がわかまたは後端がわかの何れか一方の適所に左右の操縦用ハンドル5,5を設け、同後端がわかまたは中途上がわかの何れか他方の適所に自走用車輪4への駆動力伝達機構61を有する駆動源6を設けた走行装置2からなり、当該本体フレーム3の自走用車輪4、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケット31を設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケット31には、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼76を配した水平杆71を有する除草装置7を、その中央付近から後方に延伸した連結アーム8,8を介して着脱自在に装着し、当該本体フレーム3の中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケット33を設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケット33には、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪4の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部91を有する溝切り装置9が、その先端がわから上方に延伸した連結アーム92を介して着脱自在に装着されてなる、この発明の水田除草兼用溝切り機における代表的な一実施例を示すものである。
【0035】
当該水田除草兼用溝切り機1は、図1中に示すように、パイプ状の本体フレーム3後端に、駆動源6となる4ストロークサイクルまたは2ストロークサイクルのガソリンエンジン6の出力部付近が一体に連結され、同パイプ状本体フレーム3の後端がわから先端がわに亘る、そのパイプ空洞中部に、前方端にベベルギア63を設けた駆動力伝達用の回転シャフト62を、同心状回転自在に装着し、該回転シャフト62の後方端が、ガソリンエンジン6の自動変速機構65を有する出力軸64に連結され、駆動力伝達機構61を形成したものとなっている。
【0036】
前端がわを下方に傾斜させ、後端がわを上方に向けて傾斜させた本体フレーム3の前端であって駆動力伝達機構61のベベルギア63が配された部分には、自走用車輪4の傘歯車が一体化された轂42が、当該パイプ状本体フレーム3に直行状となる水平軸心回りに回転自在となるよう軸着され、回転シャフト62前端のベベルギア63が轂42の傘歯車に歯合されたものとなり、それらギア63やシャフト62などが、外部に露出しないよう轂部蓋45が装着されたものとなっており、当該自走用車輪4は、轂42から複数本の輻43,43,……が放射状に延伸され、それら先端に、周回り沿って点在状となる複数の掻き翼44,44,……が、外径がわに突出するよう形成された輪41が一体化されたものとなっている。
【0037】
当該本体フレーム3の中途部上がわには、左右二股に分岐されてエンジン6よりも後方上がわに延伸した左右操縦用ハンドル5,5の前端が、取付け用ブラケット51を介して連結、固定されたものとなり、右がわの操縦用ハンドル5のグリップ52直前付近には、ガソリンエンジン6から延長されたスロットルケーブル66のスロットルレバー67が装着され、走行装置2が形成されたものとなっている。
【0038】
さらに、当該本体フレーム3の前端がわであって自走用車輪4が軸着された付近の上がわには、上下反転U字状または横転コ字状の枠型に形成された除草装置取り付け用ブラケット31が、そのベース部32を介して着脱可能とするようボルト結合されており、また、同本体フレーム3の自走用車輪4とエンジン6との間に位置する中途部下がわには、前後一対の下向き舌片状または下向き角状板からなり、各下端付近に左右方向(板厚方向)に貫通する取付け孔34が穿孔された溝切り装置取り付け用ブラケット33,33が、一体に固着されたものとなっている。
【0039】
除草装置取り付け用ブラケット31に着脱自在に装着される除草装置7は、隣接する五つの苗条間に跨る長さ寸法に設定された水平棒状の水平杆71を有し、その左右端間中央上部に連結座72が一体化され、同水平杆71の各稲条間に対応する下面の夫々からは、鉛直下向きに垂れ下がり状に連結された、苗の丈寸法より僅かに高い鉛直棒状の脚部73,73,……が突設され、各脚部73,73,……の下端には、先端がわを上向きに、後端がわを下向きに僅かに彎曲させ、しかも左右端縁を含む底面またはその周辺の何れか適所に、図4中に示すように、圃場地面GLに刺さり、左右の振れを規制可能とするよう、厚み方向が進行方向に対して略直角となる左右方向に向けられた一枚または複数枚の直進案内翼75を下向きに突設した案内橇74,74,……の上面適所を結合したものとなっており、当該脚部73,73,……には、テレスコープ型の伸縮機構と、適宜高さに仮固定可能とする仮固定機構とを付属させて高さ調節可能とすることが可能である。
【0040】
各脚部73,73,……の後部上端付近からは、走行装置2の進行方向、後方に向けて略水平状に延伸した除草用攪拌翼76用の支持棒77,77,……が設けられ、それら各支持棒77,77,……の後端寄りとなる下面には、下方に向けた複数枚の翼を有する除草用攪拌翼76を、進行方向の左右何れかがわに僅かに傾斜させた縦軸心回りに回転自在とするよう軸着したものとなり、それら除草用攪拌翼76,76,……の下側傾斜となる翼の下端が、それら前方に配された案内橇74,74,……が圃場地面GL上に接地された場合に、地面GLに刺し込み状となる配置関係に設定されたものとなっている。
【0041】
また、図3および図4中に示すように、各支持棒77,77,……の後尾端には、後方下向き角度を調節可能な間接棒78,78,……の各前方端が、進行方向に直行する左右水平方向に貫通するボルト・ナットによって連結され、それら下向き傾斜とされた後方端には、外周面壁に土壌攪拌用の鈎爪が複数、点在状に突設された車輪翼79,79,……が、進行方向に直行する左右水平方向の軸心回りに回転自在とするよう軸着され、各車輪翼79,79,……の下端が、前方に配された案内橇74,74,……が圃場地面GL上に接地された場合に、圃場地面GLに刺し込み状となる配置関係となるよう設定されたものとすることが可能である。
【0042】
当該除草装置7は、水平杆71連結座72の上下夫々に、上下一対の平行棒状に形成された連結アーム8,8の前端が、上下揺動自在に連結され、進行方向後方に延伸した一対の連結アーム8,8は、それらの後端を、除草装置取り付け用ブラケット31の前端がわ縦枠状部分の上下の夫々に、進行方向に対して左右水平に軸心を向けた蝶ボルト・ナットまたは六角ボルト・ナットによって上下揺動自在、且つ着脱自在に連結され、平行リンク型の衝撃吸収機構81を形成したものとしている。
【0043】
図2中に示すように、除草装置7を取り外した本体フレーム3の溝切り装置取り付け用ブラケット33,33に対して装着される溝切り装置9は、舳先状の外郭形状をなし、斜め上前方に向けられた先端が幅狭く、斜め下後方に向けられた後端が幅広く設定され、前後方向断面が逆二等辺三角形状に形成された溝切り用底部91を有し、先端中央および先端寄り上面の二箇所、夫々から上方に向けて延伸した前後連結アーム92,92の各上端が、溝切り装置取り付け用ブラケット33,33の各取付け孔34,34に重ね合わせるよう配置され、それら連結アーム92,92の端部に穿孔された装着孔93,93を通じて蝶ボルト・ナットまたは六角ボルト・ナットによって着脱自在に確りと仮固定されたものとなる。
【0044】
(実施例の作用)
以上のとおりの構成からなるこの発明の水田除草兼用溝切り機1は、図1、図3および図4中に示したように、溝切り装置取り付け用ブラケット33,33から溝切り装置9を取り外し、除草装置取り付け用ブラケット31に除草装置7を取り付けると自走型の除草装置7としての利用が可能となり、水田に搬入して除草作業を行う際には、エンジン6を起動させ、スロットルレバー67を操作することによって走行速度を調節し、図3中の白抜き矢印に示すように、作業者が左右の操縦用ハンドル5,5を把持して押し下げるよう操作することにより、自走用車輪4を支点に前方の除草装置7を上昇させ、案内橇74,74,……、除草用攪拌翼76,76,……および車輪翼79,79,……を地上面GLから浮かせて円滑に走行、移動させることが可能となる。
【0045】
当該水田除草兼用溝切り機1を泥濘である水田内に移動させ、除草開始位置に配置させた後に、図4中の白抜き矢印に示すように、左右の操縦用ハンドル5,5を上方に引き上げるよう操作し、自走用車輪4を支点に除草装置7の案内橇74,74,……を、隣接する苗条間に覗く圃場地面GLに接するよう姿勢変更させることとなり、このとき除草装置7の連結アーム8,8は、その平行リンク型の衝撃吸収機構81が、同図4中に波線および実線で示すように、除草装置取り付け用ブラケット31に対する水平杆71のある程度の上下動を許容するものとなり、案内橇74,74,……、除草用攪拌翼76,76,……および車輪翼79,79,……が、不用意に地上面GLに刺さり込んでしまうことを防止し、円滑に除草作業を開始することが可能となり、加えて案内橇74,74,……、除草用攪拌翼76,76,……および車輪翼79,79,……が、圃場地面GLの凹凸形状に悉く追従するよう柔軟に上下動可能に支持することとなる。
【0046】
走行装置2を苗条に平行な方向に自走、移動させると、隣接する苗条間の地上面GLに接合された各案内橇74,74,……は、夫々の直進案内翼75,75,……が、土壌中に刺し込み状となって除草装置7の進行方向を直線状に案内して苗条への接触を確実に回避可能とすることが可能となり、それら案内橇74,74,……の後方に配された各除草用攪拌翼76,76,……が土壌中に刺し込み状となり、抵抗を受けた翼が、僅かに傾斜された縦軸心回りに自動的に回転され、土壌表面を攪拌状としてしまい、苗条間に生育している雑草類を攪拌状に除草するものとなる。
【0047】
さらに、図3および図4中に示したように、各除草用攪拌翼76,76,……の後方に車輪翼79,79,……を設けた場合には、それら車輪翼79,79,……が、その下がわとなる周面壁を泥濘状の地上面GLに刺し込み状に接触し、その抵抗によって走行装置2の進行方向に直行状となる水平軸心回りに自動的に回転され、苗条間に残る雑草類を攪拌状に除草するものとなり、また、脚部73,73,……に、テレスコープ型の伸縮機構と、所望の高さに仮固定可能とする仮固定機構とを付属させたものとした場合には、作業者の身長や圃場地面GLの硬さ(自走用車輪4の沈み込み量)などに応じて、適宜高さ調節および仮固定することが可能となる。
【0048】
水田内の要所々々に溝を切る場合には、当該水田除草兼用溝切り機1走行装置2の除草装置取り付け用ブラケット31から除草装置7を取り外すか、またはベース部32諸共除草装置取り付け用ブラケット31および除草装置7を取り外すかの何れか一方の作業を行うと共に、図2に示すように、溝切り装置取り付け用ブラケット33,33に対し、溝切り装置9の各連結アーム92,92の上端を重ね合わせ、蝶ボルト・ナットまたは六角ボルト・ナットを用いて着脱自在に連結し、溝切りを行う苗条間に溝切り装置9の溝切り用底部91を接地させ、溝切り用底部91の後端がわを土壌中に刺し込み状とした上、スロットルレバー67を適度に開いて走行装置2を自走させるよう制御し、走行する溝切り用底部91の後方に側溝状の溝を形成して行くよう操作するものとなり、溝切りを終えた後には、左右の操縦用ハンドル5,5を上向きに引き上げて溝切り装置9の溝切り用底部91を地上に浮上させたままの姿勢で水田の外まで自走移動させることとなる。
【0049】
(実施例の効果)
以上のような構成からなる実施例の水田除草兼用溝切り機1は、前記この発明の効果の項で記載の特徴に加え、除草装置7の衝撃吸収機構81が、その平行リンク状に連結された連結アーム8,8によって、図4中に実線および波線で示すように上下動する際、水平杆71に設けられた案内橇74,74,……、除草用攪拌翼76,76,……および/または車輪翼79,79,……の姿勢を除草に適正な状態に維持したまま上下動させることが可能であり、圃場地面に凹凸があっても浮き上がりや刺さり込みを防止して地面に追従させ、ムラのない除草を実現できるという効果がある。
【0050】
当該除草装置7は、各除草用攪拌翼76,76,……の後方に夫々車輪翼79,79,……を配したものでは、除草用攪拌翼76によって攪拌された土壌面を、車輪翼79が、その鈎爪によって攪拌すると同時にその周面壁が上がわから押し固めるように作用して圃場地面の荒れを防止すると共に、攪拌状とされた雑草の再生を確実に阻止できるようにするという利点を得ることができ、しかも各車輪翼79,79,……を支持する間接棒78,78,……の前端が、各支持棒77,77,……の後端に上下角度調節可能に連結されたものでは、圃場地面の固さに応じて接地高さを自在に調節することができるという効果を発揮するものとなる。
【0051】
また、脚部73,73,……に、テレスコープ型の伸縮機構と、所望の高さに仮固定可能とする仮固定機構とを付属させたものにあっては、作業者の身長や土壌の硬軟などの各種条件に応じて案内橇74,74,……、除草用攪拌翼76,76,……および/または車輪翼79,79,……の上下位置を適宜、自在に調節することが可能となり、より効率的な除草を実現化できるものとすることが可能であり、さらにまた除草装置取り付け用ブラケット31を、ベース部32を介して本体フレーム3適所に着脱自在に装着したものでは、除草作業を行わないときには、除草装置取り付け用ブラケット31自体も簡単に取り外すことが可能となり、走行装置2をさらに軽量化することができ、より軽快な運転、操作を実現させることができる上、従来型の水田用溝切り専用の走行装置2の前方適所にベース部32を装着し、除草装置取り付け用ブラケット31および除草装置7を簡便に着脱自在に取り付け、除草にも使用可能な当該水田除草兼用溝切り機1に変更してしまうことも可能となる。
【0052】
加えて、溝切り装置取り付け用ブラケット33,33を、後端にエンジン6を設けた本体フレーム3の中途部下側に下向き突設状に形成したものとなし、各溝切り装置取り付け用ブラケット33,33が、溝切り装置9を取り外したときに、エンジン6を保護するエンジンガードの役目を果たすものとなり、不用意な接地や接触によるエンジントラブルの発生を未然に防ぐことができるものという利点が得られることになる。
【0053】
(結 び)
叙述の如く、この発明の水田除草兼用溝切り機は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの水田用除草機や水田用の溝切り機などに比較して一台の走行装置を除草機械および溝切り機械の双方に利用することを実現化し、それらを個別に購入するのに比較して遥かに経済的なものとすることができる上、保管スペースを削減し、除草装置や溝切り装置の着脱作業も少人数によって簡単、迅速に行うことができ、走行装置も比較的軽量なものとしていることから、従来負担の大きかった水田の除草や溝切りの作業性を大幅に改善し得るものとなり、人手不足や高齢化、農業用機械購入による経済的負担の増大などに悩む稲作農家は勿論のこと、農機具業界全体においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図面は、この発明の水田除草兼用溝切り機の技術的思想を具現化した代表的な一実施例を示すものである。
【図1】溝切り装置を取り外した水田除草兼用溝切り機を示す斜視図である。
【図2】除草装置を取り外した水田除草兼用溝切り機を示す斜視図である。
【図3】走行移動用の姿勢とした水田除草兼用溝切り機を示す側面図である。
【図4】除草作業中の水田除草兼用溝切り機を示す側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 水田除草兼用溝切り機
2 走行装置
3 本体フレーム
31 同 除草装置取り付け用ブラケット
32 同 ベース部
33 同 溝切り装置取り付け用ブラケット
34 同 取付け孔
4 自走用車輪
41 同 輪
42 同 轂
43 同 輻
44 同 掻き翼
45 同 轂部蓋
5 操縦用ハンドル
51 同 取付け用ブラケット
52 同 グリップ
6 ガソリンエンジン(駆動源)
61 同 駆動力伝達機構
62 同 回転シャフト
63 同 ベベルギア
64 同 出力軸
65 同 自動変速機構
66 同 スロットルケーブル
67 同 スロットルレバー
7 除草装置
71 同 水平杆
72 同 連結座
73 同 脚部
74 同 案内橇
75 同 直進案内翼
76 同 除草用攪拌翼
77 同 支持棒
78 同 間接棒
79 同 車輪翼
8 連結アーム
81 同 衝撃吸収機構
9 溝切り装置
91 同 溝切り用底部
92 同 連結アーム
93 同 装着孔
GL 圃場地面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となる本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわかまたは後端がわかの何れか一方の適所に操縦用ハンドルを設け、同後端がわかまたは中途上がわかの何れか他方の適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を有する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着されてなるものとしたことを特徴とする水田除草兼用溝切り機。
【請求項2】
進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となる本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわかまたは後端がわかの何れか一方の適所に操縦用ハンドルを設け、同後端がわかまたは中途上がわかの何れか他方の適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を有する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着され、除草作業の際には、溝切り装置を溝切り装置取り付け用ブラケットから取り外し、溝切り作業のときには、除草装置を除草装置取り付け用ブラケットから取り外して利用し得るものとしたことを特徴とする水田除草兼用溝切り機。
【請求項3】
進行方向前方から同進行方向後方に向けて上向き傾斜状の姿勢となるパイプ状の本体フレームの前端がわ適所に、左右水平方向に向けられた軸心をもつ自走用車輪を軸着し、同中途上がわの適所に左右の操縦用ハンドルを設け、同後端がわの適所に自走用車輪への駆動力伝達機構を、パイプ状本体フレーム中に配する駆動源を設けた走行装置からなり、当該本体フレームの自走用車輪、軸着部分付近に除草装置取り付け用ブラケットを着脱可能に設けると共に、当該除草装置取り付け用ブラケットには、複数の苗条間に跨り、各条間の夫々に下向き状の除草用攪拌翼を配した水平杆を有する除草装置を、その中央付近から後方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着し、当該本体フレームの中途下がわの適所に溝切り装置取り付け用ブラケットを設け、当該溝切り装置取り付け用ブラケットには、舳先状の外郭形状をなし、自走用車輪の後方となる圃場地面に刺さり込み状となる溝切り用底部を有する溝切り装置が、その先端がわから上方に延伸した連結アームを介して着脱自在に装着されてなるものとしたことを特徴とする水田除草兼用溝切り機。
【請求項4】
除草装置が、その水平杆の各苗条間に対応する箇所の夫々に、苗丈を越える高さに設定可能な脚部を介して、先端がわを上向きに、後端がわを下向きに僅かに彎曲させた案内橇を設け、各脚部の後方には、接地による抵抗力を受けて自動的に回転可能な下向きの除草用攪拌翼および/または車輪翼が適宜配されるようにしてなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の水田除草兼用溝切り機。
【請求項5】
除草装置が、その水平杆の各苗条間に対応する箇所の夫々に、苗丈を越える高さに設定可能な脚部を介して、先端がわを上向きに、後端がわを下向きに僅かに彎曲させ、しかも左右端縁を含む底面またはその周辺の何れか適所に、圃場地面に刺さり、左右の振れを規制可能とするよう、厚み方向が進行方向に対して略直角となる左右方向に向けられた直進案内翼を下向きに突設した案内橇を設け、各脚部の後方には、接地による抵抗力を受けて自動的に回転可能な下向きの除草用攪拌翼および/または車輪翼が適宜配され、実質的に水平杆適所に高さ調節可能に支持されるよう設定されてなるものとした、請求項1ないし3何れか一項記載の水田除草兼用溝切り機。
(案内橇の直進案内翼を説明したもの)
【請求項6】
除草装置が、その連結アームを、所定長に設定された上下一対の平行リンク型に形成し、除草装置取り付け用ブラケットと水平杆の左右中央付近との間に、水平杆の所定範囲内の上下移動を許容可能とする衝撃吸収機構が形成されてなるものとした、請求項1ないし5何れか一項記載の水田除草兼用溝切り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−99575(P2008−99575A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283141(P2006−283141)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(391064278)株式会社美善 (3)
【Fターム(参考)】