説明

汚染制御要素取付システムおよび汚染制御装置

【課題】汚染制御要素取付システム等を提供すること。
【解決手段】繊維材料のマットと、汚染制御要素と接触させることを意図した側面上で少なくともマットの内周面上に提供された研磨材料の微粒子とを含む、汚染制御要素取付システム。ケーシング、汚染制御要素、およびケーシングと汚染制御要素の間に配置された取付システムを含む汚染制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染制御要素(たとえば、触媒担体、フィルターエレメントなど)のための取付システムに関し、特に、乗り物(たとえば、自動車、航空機、または船舶)または発電装置などに使用されるような内燃機関からの排気ガスを処理するために使用すると好適な汚染制御要素のための取付システム関し、特に、汚染制御装置内に汚染制御要素をよりよく保持することができる取付システムに関する。本発明はさらに、汚染制御要素のためのこのような取付システムを有する汚染制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車のエンジンの排気ガス中に含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などを排気ガスから除去するための手段として、セラミック触媒コンバータを使用する排気ガス精製システムがよく知られている。基本的にセラミック触媒コンバータには、金属のケーシングまたはハウジング中にハニカム形セラミック触媒担体(「触媒要素」とも呼ばれる)が収容される。
【0003】
当技術分野において周知のように、様々な種類のセラミック触媒コンバータが利用可能である。一般に、セラミック触媒コンバータは、ケーシング内の触媒担体とケーシングとの間の隙間または間隙に、典型的には無機繊維と、有機繊維および/または一般に液体またはペースト状の有機バインダーとの組み合わせを含む断熱/取付材料が充填された構造が使用される。その結果、隙間または間隙を充填した断熱/取付材料は、触媒担体を保持し、衝突、振動などによる機械的衝撃による触媒担体の偶発的な作用を防止することができる。このような構造を有する触媒コンバータにおいては、触媒担体の破壊および移動は起こらず、意図する作用を長期間にわたって実現することができる。ところで、このような断熱/取付材料が、触媒担体の保持または取り付けの機能を果たす形態にある場合は、これは一般に「触媒担体取付システム」とも呼ばれる。
【0004】
ところで、触媒担体がケーシング内に充填される場合、触媒担体の外周に触媒担体取付システムを巻き付け、それらを一体化し、次に、一体となった物体を加圧下で円筒形ケーシング中に押し込む押し込みシステムが一般に使用されている。押し込みシステムを使用して触媒担体を触媒コンバータ中に組み込む能力(「キャンニング」と呼ばれる)の改善、触媒担体取付システムのクッション特性(弾力性)の改善、および触媒担体取付システム中に使用される無機繊維の空気中への散乱の防止のため、現在、様々な種類の触媒担体取付システムが提案されている。たとえば、図1に示されるような、触媒担体33と、触媒担体33の外周を覆う金属シェル(ケーシング)32と、触媒担体33とケーシング32との間にある保持シール材31とを含む触媒コンバータ35において、50〜3,000pcs/10cmの密度でニードルパンチ処理にかけられた無機繊維マットを含み、0〜2重量%以下の有機含有率を有し、0.15〜0.45g/cmの充填密度において300〜1,000℃の間の温度に加熱すると5〜500kPaの表面圧力が得られる、触媒担体取付システムが提案されている。特開2001−259438号公報を参照されたい。ここでは、保持シール材31が触媒担体取付システムに対応している。触媒コンバータ35は、図示されるように車などの内燃機関36から排気管37までの中間部分に挿入される。キャンニングステップは、図2に示されるように、加圧下で、保護シール部材31が上に巻き付けられた触媒担体33を、ケーシングの開放端から押し込むことで行われる。
【0005】
前述のものと類似の構造を有する触媒コンバータにおいては、0.5〜20重量%の有機バインダーまたは無機バインダーからなるバインダーを、無機繊維をマット状に配列して形成されたマット状物質に加え、組立後の充填密度が0.1〜0.6g/cmとなるよう調整され、マット状物質に加えられたバインダーの固形分の割合を、厚さ方向に3つの部分(上部、中部、および下部)に等分して、評価した場合に、上部および下部のそれぞれのバインダーの固形分の割合が、中部の固形分の割合よりも高くなる、触媒担体取付システムも提案されている(特開2002−4848号公報)。
【0006】
特開2000−206421号公報には、マットの形態に凝集させたセラミック繊維を構成要素として使用し、触媒担体と、触媒担体の外周を覆う金属シェルとの間の間隙に配置され、無機材料の凹凸構造がセラミック繊維の外面に提供された、触媒コンバータ用保持シール材が開示されている。この保持シール材において、無機材料の凹凸構造は、好ましくは金属酸化物粒子からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−259438号公報
【特許文献2】特開2002−4848号公報
【特許文献3】特開2000−206421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
汚染制御装置中に使用される汚染制御要素取付システムは、汚染制御要素(たとえば、触媒担体またはフィルターエレメント)を汚染制御装置中の所望の位置に長時間、少なくとも確実に保持する必要がある。しかし、汚染制御要素とその取付システムとの間の滑りによって、汚染制御装置内の所望の位置から汚染制御要素が移動するのを防止するための改善された能力を示す取付システムが必要とされ続けている。汚染制御装置内の所望の位置に汚染制御要素を保持するために必要な力は、次式で表すことができる:
保持力=(取付システムによって発生する力)×(静止摩擦係数)
取付システムによって発生する力は、汚染制御装置内の取付システムによって発生する圧力によって決定することができる。この圧力は、汚染制御要素とケーシングとの間で取付システムが圧縮される程度に依存しうる。それぞれの間の摩擦係数が典型的には異なるので、取付システムと汚染制御要素との間、および取付システムとケーシングとの間の2つの保持力の計算が必要となりうる。
【0009】
したがって、汚染制御要素の保持力を改善する方法の1つは、取付システムが圧縮される程度を増加させることによって、取付システムによって発生する圧力を増加させることであった。しかし、取付システムが圧縮される程度を過度に増加させると、取付システム中に使用されるセラミック繊維および他の無機繊維に、破損、破壊、またはその他の損傷が生じることがある。このような繊維の損傷によって、取付システムによって発生する力(すなわち保持力)が低下することがあり、取付システムの劣化が起こったり進行したりすることがあり、それによって汚染制御要素の破壊またはその他の損傷が起こりうる。
【0010】
特開2000−206421号公報に記載されるように、凹凸構造を付与するために、触媒担体取付システムを構成するセラミック繊維表面に金属酸化物粒子を接着させる場合、金属酸化物粒子の懸濁液をセラミック繊維表面に接着させ、次にその繊維を高温で焼き付ける方法が使用される。したがって、セラミック繊維の間に架橋または結合が起こり、それによって、セラミック繊維の間の滑りが減少し、さらに、取付システムが硬化し、その結果、取付システムの剛性が増し、可撓性が低下する。一般に、この可撓性の低下によって、取付システムが扱いにくくなる場合がある。具体的には、たとえば、触媒コンバータの組立中、取付システムが触媒担体上に巻き付けられるときに、取付システムに亀裂が生じやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の問題およびその他の問題の発生がより少なく、触媒担体およびフィルターエレメントなどの汚染制御要素を汚染制御装置中の所望の位置に保持するのに有用な、取付システムを提供する。
【0012】
したがって、本発明の一目的は、以下の利点:取付システムを汚染制御要素の周囲に巻き付けながら汚染制御装置のハウジング中に押し込むなどで、汚染制御要素と取付システムとを組み立てるときに、両者の間の移動または分離を防止、または少なくとも大きく制限すること、ケーシング中に汚染制御要素を挿入した後で、汚染制御装置中の適切な位置に汚染制御要素を安定に維持できること、ならびに改善された耐熱性、表面圧力保持特性、耐浸食性、および加工性を示すこと、の1つ以上またはすべてを示す汚染制御要素(たとえば、触媒担体およびフィルターエレメント)の取付システムを提供することである。
【0013】
本発明の別の目的は、汚染制御要素のこのような取付システムが取り付けられた汚染制御装置を提供することである。
【0014】
本発明者は、上述の問題を解決するために鋭意研究を行った結果、圧縮状態下で使用され、汚染制御要素の接触面と取付システムの接触面との間の摩擦係数を増加させることができる粒子の配列を含む汚染制御要素の取付システムを使用することによって、汚染制御装置の組立能力を低下させることなく、汚染制御装置中の所望の位置に汚染制御要素(たとえば、触媒担体またはフィルターエレメント)を保持することの信頼性を改善できることを発見した。
【0015】
本発明の一面によると、汚染制御装置で使用するのに好適な繊維材料を含むマットを含む、汚染制御要素の取付システムが提供される。このマットは所定の厚さを有することができる。圧縮力の適用下で、取付システムをケーシングと汚染制御要素との間に配置することができる。この取付システムは、汚染制御要素の外面または側面と接触するように、取付システムの表面に少なくとも配列された研磨材料の微粒子をさらに含む。
【0016】
本発明の別の面によると、ケーシングと、ケーシングの内側に配置された汚染制御要素と、ケーシングと汚染制御要素との間の間隙に介在する取付システムとを含む汚染制御装置が提供される。この取付システムは、本発明の原理によるものである。
【0017】
本発明による汚染制御装置は、たとえば、内燃機関の排気システム中に使用されるような触媒コンバータおよび排気フィルター装置を含むことができる。そのようなエンジンとしては、乗り物(たとえば、列車、自動車、航空機、船舶など)および発電に使用されるエンジンが挙げられる。
【0018】
本発明の上記目的およびその他の目的は、以下の詳細な説明から容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の触媒コンバータの構造を示す断面図である。
【図2】図1に示される触媒コンバータの金属ケーシング中に触媒担体を押し込む方法を示す斜視図である。
【図3】本発明による触媒コンバータの構造を示す断面図である。
【図4】図3の線分A−Aに沿った触媒コンバータの断面図である。
【図5】図3に示される触媒コンバータの触媒担体取付システムの研磨微粒子の分布状態を示す断面図である。
【図6】本発明による触媒担体取付システムの好ましい例を示す断面図である。
【図7】本発明による触媒担体取付システムの別の好ましい例を示す断面図である。
【図8】本発明による触媒担体取付システムのさらに別の好ましい例を示す断面図である。
【図9】本発明による触媒担体取付システムのさらに別の好ましい例を示す断面図である。
【図10】触媒担体取付システムの摩擦係数の測定方法を典型的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
触媒コンバータに関する本発明の特定の実施形態についてこれより詳細に説明する。本発明がそのような使用に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。たとえば、本発明は、たとえば、排気フィルター処理装置(たとえば、ディーゼルエンジン排気フィルター装置)などの他の汚染制御装置にも適用可能である。本発明によると、たとえば、本発明の取付システムが触媒担体に使用される場合、圧縮力、好ましくは所定の圧縮力の適用下で、触媒担体と金属ケーシングとの間に取付システムが配置される。したがって、触媒担体の望ましくない動きは、取付システムの表面によって発生する圧縮力(すなわち表面摩擦力)によって防止することができる。研磨材料の微粒子は、少なくとも、取付システムの触媒担体との接触面上に配置されるので、触媒担体に対する摩擦係数を増加させることができ、触媒担体の保持信頼性をさらに改善することができる。さらに、触媒担体と、触媒担体周囲に巻き付けられた取付システムとがキャンニングされる(すなわち、金属ケーシング中に組み込まれる)場合、触媒コンバータの組立性能に悪影響を与えることなく、触媒担体と巻き付けられた取付システムとの間の動きを防止することができるか、または少なくとも大きく減少させることができる。
【0021】
要するに、以下の詳細な説明から分かるように、本発明は、以下の利点:取付システムを汚染制御要素の周囲に巻き付けながら汚染制御装置のハウジング中に押し込むなどで、汚染制御要素と取付システムとを組み立てるときに、両者の間の移動または分離を防止、または少なくとも大きく制限すること、ケーシング中に汚染制御要素を挿入した後で、汚染制御装置中の適切な位置に汚染制御要素を安定に維持できること、ならびに改善された耐熱性、表面圧力保持特性、耐浸食性、および加工性を示すこと、の1つ以上またはすべてを示すことができる、触媒担体取付システム、およびその他の汚染制御要素の取付システムを提供する。
【0022】
本発明は、このような汚染制御要素の取付システムが取り付けられ、耐久性および性能が優れている、汚染制御装置をさらに提供する。本発明による触媒コンバータは、車のエンジンおよびその他の内燃機関の排気ガスを処理するために好都合に使用することができる。
【0023】
本発明による汚染制御要素の取付システムおよび汚染制御装置のそれぞれは、種々の形態で好都合に使用することができる。たとえば、汚染制御要素は、触媒担体(または触媒要素)、フィルターエレメント(たとえば、エンジン用の排気ガス精製フィルター)、またはその他の任意の汚染制御要素であってよい。同様に、汚染制御装置は、触媒コンバータ、エンジン用の排気ガス精製装置などの排気ガス精製装置(たとえば、ディーゼル微粒子フィルター)、または取り付けられた汚染制御要素によるその他の任意の汚染制御装置であってよい。触媒担体取付システムおよび触媒コンバータに関して本発明を具体的に説明しているが、本発明が以下の実施形態に特に限定されるものではない。
【0024】
本発明による触媒コンバータは、車のエンジンおよびその他の内燃機関における排気ガスの処理に特に好都合に使用され、少なくともケーシングと、ケーシング内部に配置された触媒担体(触媒要素)とを含むように構成される。以下に詳細に説明する本発明による触媒担体取付システムは、触媒担体の外周面に巻き付けられるようにしてケーシングと触媒担体との間に取り付けられる。
【0025】
本発明の触媒担体取付システムは、ケーシング中に取り付けた場合に好適なかさ密度が得られるように、好ましくは適切な程度で圧縮して使用され、または言い換えると、所定の圧縮力の適用下で使用される。圧縮手段としては、クラムシェル圧縮、スタッフィング圧縮、およびトールニケ圧縮が挙げられる。本発明による触媒担体取付システムは、スタッフィング圧縮などによって、加圧下で触媒担体取付システムを円筒形ケーシング中に押し込むいわゆる「押し込み構造」触媒コンバータの製造に好都合に使用することができる。クラムシェル圧縮などの開放可能なケーシングが使用される場合は、触媒担体取付システムを円筒形ケーシング中に押し込むときに摩擦などの問題は生じない。
【0026】
本発明による触媒コンバータは、それらが押し込み構造を使用する限り、種々の触媒コンバータを含む。触媒コンバータは、好ましくは、モノリス型などに成形された触媒要素、すなわちモノリス触媒担体が取り付けられた触媒コンバータである。この触媒コンバータは小さなハニカム型の通路を有する触媒要素を含むので、従来技術のペレット型触媒コンバータよりも小さく、排気ガスとの接触領域を十分確保しながら排気ガスの抵抗を抑制することができ、より効率的に排気ガスを処理することができる。
【0027】
本発明による触媒コンバータは、種々の内燃機関と組み合わせることで、排気ガスを処理するために好都合に使用することができる。本発明の触媒コンバータの優れた機能および効果は、特に乗用車、バス、トラックなどの自動車の排気システムに取り付けた場合に十分に得ることができる。
【0028】
図3は、本発明による触媒コンバータの典型例を示す断面図であり、構造をより容易に理解できるように切断した状態の触媒コンバータの主要部分を示している。図4は、図3に示される触媒コンバータの線分A−Aに沿った断面図である。これらの図から分かるように、触媒コンバータ10は、金属ケーシング4と、金属ケーシング4の内側に配置されたモノリス固体触媒担体1と、金属ケーシング4と触媒担体1との間にある本発明の触媒担体取付システム2とを含む。図5〜図9を参照しながら以下に詳細に説明するが、触媒担体取付システム2は、許容範囲内にある所定の厚さを有する好適な繊維材料のマットを有し、触媒担体が接触した状態にある研磨材料の微粒子を、触媒担体側面上の少なくともマットの内周面上に含有する。それぞれ円錐台形を有する排気ガス流入口12および排気ガス流出口13が、触媒コンバータ10に取り付けられる。ついでながら、研磨材料の微粒子を「研磨剤」と呼ぶ場合もある。
【0029】
本発明による触媒コンバータ10の場合、基本的には、接着剤または接着シートなどの接合手段を、触媒担体1と触媒担体取付システム2との間に配置する必要はない。しかし、摩擦および本発明の作用に悪影響を与えず、触媒担体1と触媒担体取付システム2との間の接着性が改善され、キャンニング作業を容易にする効果が期待される場合には、接合手段をさらに使用することもできる。好ましくは、接合手段は部分的に使用される。触媒担体取付システム2は、一般に必要ではないが触媒担体取付システム2の表面を損傷などから保護する保護コーティングを有することができる。
【0030】
特に、金属ケーシング内の固体触媒担体は、一般に、複数の排気ガス通路を有するハニカム構造を有するセラミック触媒担体である。本発明の触媒担体取付システムは、この触媒担体の周りに従来通りに完全に巻き付けられるように配置される。断熱材料としての機能以外に、触媒担体取付システムは、触媒担体を金属ケーシング内に取り付けて保持し、触媒担体と金属ケーシングとの間の間隙を封止する。したがって、触媒担体取付システムは、触媒担体を迂回するのを防止するか、そのような望ましくない迂回を少なくとも最小限にする。触媒担体はしっかりと、さらには柔軟性をもって、金属ケーシング内に保持される。
【0031】
本発明による触媒コンバータにおいては、その金属ケーシングは、所望の摩擦および効果により、従来技術において公知の種々の金属材料から任意の形状に製造することができる。好適な金属ケーシングはステンレス鋼でできており、図3に示される形状を有する。
言うまでもなく、任意の好適な形状を有する金属ケーシングは、必要であれば鉄、アルミニウム、およびチタンなどの金属、またはそれらの合金から形成することができる。
【0032】
金属ケーシングと同様の方法で、固体触媒担体も、通常の触媒コンバータに使用される公知の材料から公知の形状に成形することができる。好適な触媒担体は当業者に周知であり、そのようなものとしては金属およびセラミックスから製造されるものが挙げられる。
有用な触媒担体の1つは、米国再発行特許第27,747号明細書に開示されている。セラミック触媒担体は、たとえば米国のコーニング・インコーポレイテッド(Corning Inc.)より市販されている。ハニカムセラミック触媒担体は、コーニング・インコーポレイテッド(Corning Inc.)より商品名「セルコー」(CELCOR)、およびNGKインシュレーテッド・リミテッド(NGK Insulated Ltd.)より商品名「ハニセラム」(HONEYCERAM)で市販されている。金属触媒担体は、ドイツのベーア(Behr GmbH and Co.)より市販されている。ついでながら、触媒モノリスの詳細については、ストルーム(Stroom)らによるSAE技術文書照合番号900,500(SAE Technical Document Reference No.900,500)「自動車触媒コンバータのパッケージング設計のシステムアプローチ」(System Approach to Packaging Design for Automotive Catalytic Converter)、ホウィット(Howitt)によるSAE技術文書照合番号800,082(SEA Technical Document Reference No.800,082)「モノリス触媒担体としての薄肉セラミックス」(Thin Wall Ceramics as Monolithic Catalytic Converter)、およびホウィット(Howitt)らによるSAE技術文書照合番号740,244(SAE Technical Document Reference No.740,244)「モノリスハニカム自動車用触媒コンバータにおける流動効果」(Flow Effect in Monolithic Honeycomb Automotive Catalytic Converter)を参照することができ、これらすべての記載内容全体が本明細書に援用される。
【0033】
上記触媒担体上に担持される触媒は、一般に金属(たとえば白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、およびパラジウム)および金属酸化物(五酸化バナジウム、二酸化チタンであり)、好ましくはコーティングの形態で使用される。このような触媒のコーティングは、米国特許第3,441,381号明細書において詳細に記載されている。
【0034】
本発明の実施において、触媒コンバータは、本発明の範囲から逸脱しない種々の方法によって種々の構造に製造することができる。好ましくは、触媒は、ハニカム形セラミック触媒担体を金属ケーシング内に収容できるように製造され、および最終触媒担体(触媒要素)は、たとえばハニカム形状を有するセラミックモノリス上に白金、ロジウム、またはパラジウムなどの貴金属で形成された触媒層(触媒のコーティング)を支持するように製造することができる。このような構造が使用される場合、比較的高温で有用な触媒作用を得ることができる。
【0035】
本発明によると、本発明の触媒担体取付システムは、金属ケーシングと、金属ケーシング内の触媒要素との間に配置される。触媒担体取付システムは、所望の厚さを有する好適な繊維材料のマット、ブランケットなどで形成される。触媒担体取付システムは、1枚のマットの形態の1つの部材を含むことができるし、たとえば、2枚以上のマットを互いに積層し、場合により接合させることによる複合部材の形態であってもよい。触媒担体取付システムは、一般に、取り扱いが容易なマットまたはブランケットの形態を有するが、必要に応じて他の形態を使用することもできる。触媒担体取付システムの大きさは、使用目的によって広範囲で変化させることができる。マット状触媒担体取付システムが、たとえば、車または乗用車の触媒コンバータに取り付けられて使用される場合、取付システムは一般に、約1.5〜約15mmの厚さ、約200〜約500mmの幅、および約100〜約1,500mmの長さを有する。このような取付システムは、はさみやカッターなどを使用して所望の形状および所望の大きさに切断することができ、そのような状態で使用することができる。
【0036】
触媒担体取付システムは、繊維材料から構成され、好ましくは無機繊維から構成される。触媒担体取付システムを形成するのに好適な無機繊維としては、ガラス繊維、セラミック繊維(たとえば、耐火セラミック繊維)、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、およびボロン繊維を挙げることができる。必要または適切であるのならその他の無機繊維を使用することもできる。これらの無機繊維は、単独、または2種類以上の組み合わせのいずれかで使用することもできる。これらの無機繊維の中では、アルミナ繊維、シリカ繊維、およびアルミナ−シリカ繊維などのセラミック繊維が特に好ましく、特にアルミナ繊維およびアルミナ−シリカ繊維が好ましくは使用される。これらのセラミック繊維は、単独で使用することもできるし、複合繊維およびその他の形態の2種類以上の組み合わせで使用することもできる。他の無機材料を添加剤として、上記のセラミック繊維および他の無機繊維と組み合わせて使用することができる。添加剤の好適な例としては、ジルコニア、マグネシア、カルシア、酸化クロム、酸化イットリウム、および酸化ランタンを挙げることができるが、これらの例に限定されるものでは決してない。これらの添加剤は一般に粉末および微粒子の形態で使用することができ、単独または2種類以上の組み合わせのいずれかで使用することができる。
【0037】
特に、触媒担体取付システム中に使用される無機繊維としては、たとえばアルミナ(Al)およびシリカ(SiO)を含有する無機繊維を挙げることができる。この場合、この無機繊維は、アルミナおよびシリカの2種類の成分を有し、アルミナ対シリカの混合比は好ましくは約40:60〜約96:4の範囲内である。アルミナおよびシリカの混合比がこの範囲から外れる場合、たとえばアルミナの混合比が40%未満となる場合には、たとえば、耐熱性の低下の問題が発生する。
【0038】
無機繊維の厚さ(平均直径)は特に限定されないが、平均直径は好ましくは約2〜7μmである。無機繊維が約2μmよりも小さい平均直径を有する場合、その繊維はもろくなり、十分な強度が不足すると思われる。逆に、無機繊維が約7μmを超える平均直径を有する場合は、取付システムの成形が困難になると思われる。
【0039】
無機繊維の長さも、厚さの場合と同様に特に限定されない。しかし、無機繊維は好ましくは約0.5〜50mmの平均長さを有する。無機繊維の平均長さが約0.5mmよりも小さい場合には、このような繊維を使用して取付システムを形成することが困難となったり実現不可能となったりすることがある。逆に、平均長さが約50mmを超える場合には、取り扱い特性が低下し、そのため取付システムの製造プロセスを円滑に進めることが非常に困難になったり、不可能になったりすることがある。
【0040】
別の方法によると、主としてアルミナ繊維の積層シートからなるアルミナ繊維マットも、本発明を実施する場合の触媒担体取付システムとして好都合に使用することができる。
このようなアルミナ繊維マットにおいては、アルミナ繊維の平均長さは、一般に約20mm〜約200mmの範囲内であり、この繊維の厚さ(平均直径)は、一般に約1μm〜約40μmの範囲内である。アルミナ繊維は好ましくは、約70/30〜約74/26の範囲内のAl/SiO重量比を有するムライト組成を有する。
【0041】
上述のアルミナ繊維マットは、オキシ塩化アルミニウムなどのアルミナ源、シリカゾルなどのシリカ源、ポリビニルアルコールなどの有機バインダー、および水の混合物からなるゾルゲルを紡糸することによって製造することができる。言い換えると、紡糸されたアルミナ繊維前駆体をシートに積層し、次に、好ましくはニードルパンチを行い、さらに一般に、約1,000℃〜約1,300℃の範囲内の高温で焼き付ける。
【0042】
上述のニードルパンチ処理によって、積層面に対して長手方向に繊維の一部が配向する。したがって、シート内部のアルミナ繊維前駆体の一部はシートを貫通し、長手方向に配向して、シートを締め付けるため、シートのかさ比重を増加させることができ、層間の剥離およびずれを防止することができる。ニードルパンチの密度は、広範囲で変化させることができるが、一般に約1〜50パンチ/cmの範囲内である。マットの厚さ、かさ比重、および強度は、ニードルパンチの密度に依存して調整することができる。
【0043】
上述のアルミナ繊維マットの製造において、他のセラミック繊維および無機発泡剤を、アルミナ繊維に追加することができる。この場合、これらの添加剤はマット中に均一に混合することができるが、加熱される場所を避けるように局所的に添加剤を加えると、添加剤の性能を維持しながらコストを下げることができる。上記のセラミック繊維はシリカ繊維またはガラス繊維であり、無機発泡剤はベントナイト、未発泡バーミキュライト、または膨張黒鉛である。
【0044】
図5を参照すると、本発明による触媒コンバータは、ケーシング4と、ケーシング4内に取り付けられた触媒担体1と、触媒担体1の外周面の周りに巻き付けられた状態でケーシング4と触媒担体1との間にある、所望の厚さを有する繊維材料のマット2とを含むことができる。触媒担体との摩擦係数を改善することができる研磨材料の微粒子5が、触媒担体1の外面上または側面上のマット状触媒担体取付システム2の少なくとも内周面2bの上に配列される。図面から分かるように、基本的に研磨材料の微粒子は、触媒担体取付システム2の反対側の表面上には配置されず、すなわち、ケーシング4の側面上の外周面2a上には配置されない。本明細書において使用される用語「少なくとも」とは、研磨材料の微粒子5が、触媒担体取付システム内周面2b上の全体または一部、好ましくは全体および実質的に均一に分布した状態、ならびに、研磨材料の微粒子5が、触媒担体取付システム2の深さ方向に分布した状態を意味する。ついでながら、研磨材料の微粒子5が、触媒担体取付システム2の深さ方向に分布する場合、概して、研磨材料の微粒子5は、触媒担体取付システム2を厚さ方向で見た場合に、粒子5の密度が内周面2bに向かって増加するように分布し、その分布は、研磨材料の微粒子5の適用方法に依存して変動する。
特に好ましくは、研磨材料の微粒子5は、触媒担体取付システム2中に含まれる微粒子5の全量の少なくとも70%の含有率で、内周面2bから50%の深さまで延在する下層領域2L中に含まれる。
【0045】
本発明の実施において、種々の研磨材料の微粒子は、触媒担体の摩擦係数を改善するために使用することができる。研磨材料は、摩擦係数の改善に寄与することができるので、本発明において使用される研磨材料は「摩擦材料」とも呼ぶことができる。研磨材料の好適な例としては、耐熱性を有する金属酸化物(たとえば、アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア、チタニアなど)、SiC、窒化ホウ素、および炭化ホウ素があげられるが、これらに限定されるものではない。これらの研磨材料は、個別に使用することもできるし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
上述の研磨材料は、一般に微粒子の形態で使用される。研磨材料の微粒子は、研磨材料の種類および意図する添加効果によって種々の直径で使用することができるが、好ましくはJIS R6001によって規定される研磨材料の粒度に関して約F1,200〜約F60の粒度を有する。研磨材料の微粒子の粒度がF1,200よりも小さい場合は、場合によっては研磨材料の微粒子が無機繊維中に組み込まれることがあり、触媒担体取付システムの表面から離れるために、摩擦係数の所望の改善効果を得ることができなくなる、または少なくとも大きく減少する。触媒担体取付システムの製造に有機バインダーが併用される場合、内燃機関の動作中などにバインダーの燃焼が起こると、たとえばバインダーに接合した研磨材料の微粒子が、無機繊維の間の隙間または空間に移行しやすくなる。逆に、研磨材料の微粒子の粒度がF60を超える場合、触媒担体に対する投錨効果が不十分となることがある。約30μm(約F406)〜約300μm(F80)の範囲内の平均粒度、および約F240(70μm)〜約F80(300μm)の粒度を有する研磨材料の微粒子の場合に、好ましい結果を得ることができる。
【0047】
前述したように、本発明の触媒担体取付システムは、1枚のマットの形態、または複合マットの形態で使用することができる。図6は、1枚のマットの形態の触媒担体取付システム2の例を示す断面図である。この触媒担体取付システム2は、図5に関して前述した触媒担体取付システム2と同じ構造を有することができる。言い換えると、この触媒担体取付システム2は、無機繊維21を含むことができ、微粒子5が一方の表面(触媒担体と接触する表面)のある領域上に集中し、その一部がその表面上に露出する状態で研磨材料微粒子5を含むことができる。
【0048】
本発明の触媒担体取付システムが複合マットの形態で使用される場合、種々の複合形態を取ることができる。しかし一般に、複合マットは、1枚の研磨剤含有マットと、研磨剤含有マットの繊維材料と同じまたは異なる繊維材料で形成された少なくとも1枚の補助マットとを使用して構成することができる。補助マットの繊維材料は、好ましくは前述の無機繊維である。基本的に、補助マットは、前述の研磨材料の粒子を含まない。性質の観点から、補助マットは、いわゆる「非発泡性または非膨張性のマット」であってよいし、非発泡性マットといわゆる「熱発泡性または膨張性のマット」との組み合わせを含むこともできる。
【0049】
図7〜図9は、本発明の実施に好適な複合マットの例をそれぞれ示す断面図である。
【0050】
図7は、本発明の研磨剤含有マット21と非発泡性マットの補助マットとが一体的に組み合わされて、複合マットの形態を有する触媒担体取付システム2を形成している例を示している。図示される触媒担体取付システム2において、研磨剤含有マット21は、無機繊維、研磨材料の微粒子、および有機バインダーから形成される。一方、非発泡性マット22は、無機繊維および有機バインダーから形成される。研磨剤含有マット21および非発泡性マット22を形成するためには、同じまたは異なる無機繊維を使用することができる。たとえば、高耐熱性を有するアルミナ繊維を研磨剤含有マット21の形成に使用し、アルミナシリカ繊維またはガラス繊維を非発泡性マット22の形成に使用することができる。あるいは、アルミナシリカ繊維を研磨剤含有マット21の形成に使用し、ガラス繊維を非発泡性マット22の形成に使用することもできる。
【0051】
本発明の触媒担体取付システムが湿式法で製造される場合、従来では無機繊維と有機バインダーとを組み合わせて使用される。しかし、本発明の実施においては、有機バインダーの種類およびその使用量は特に限定されないが、従来通り使用することができる。たとえば、ラテックスの形態で提供されるアクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、ポリ酢酸ビニル樹脂などを有機バインダーとして使用することができる。このような有機バインダーは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエステル樹脂などの可撓性熱可塑性樹脂を含むことができる。
【0052】
図8は、複合マットの形態を有する触媒担体取付システム2が、本発明の研磨剤含有マット21を熱発泡性または膨張性マットの補助マット23と一体的に組み合わせることによって形成される例である。図示される触媒担体取付システム2において、研磨剤含有マット21は、無機繊維、研磨材料の微粒子、および有機バインダーから形成され、熱発泡性マット23は、無機繊維、有機バインダー、ならびに熱発泡性または膨張性材料から形成される。研磨剤含有マット21および熱発泡性マット23を形成するためには、同じまたは異なる無機繊維を使用することができる。たとえば、必要であれば高耐熱性を有するアルミナシリカ繊維またはアルミナ繊維を研磨剤含有マット21の形成に使用することができ、アルミナシリカ繊維またはガラス繊維を熱発泡性マット23の形成に使用することができる。たとえば、未発泡バーミキュライトまたは膨張黒鉛を、熱発泡性マット23の形成のための熱発泡性材料として使用することができる。
【0053】
図9は、3層複合マットの形態を有する触媒担体取付システムが、本発明の研磨剤含有マット21を、非発泡性マットの第1の補助マット22、および熱発泡性マットの第2の補助マット23と一体的に組み合わせることによって製造される例を示している。図示される触媒担体取付システム2において、研磨剤含有マット21は、無機繊維、研磨材料の微粒子、および有機バインダーから形成される。一方、非発泡性マット22は、無機繊維および有機バインダーから形成され、熱発泡性マット23は、無機繊維、有機バインダー、および熱発泡性材料から形成される。研磨剤含有マット21、非発泡性マット22、および熱発泡性マット23は、それぞれ前述の方法で形成することができる。この例においては、研磨剤含有マット21および非発泡性マット22の両方は、好ましくは高耐熱性を有するアルミナ繊維から形成される。一方、熱発泡性マット23は、アルミナ繊維、ガラス繊維などを、未発泡バーミキュライトまたは膨張黒鉛などの熱発泡性材料と併用して形成することができる。
【0054】
なお、摩擦力の改善に関して以下の機構が本発明の取付システムにおいて作用すると考えられるが、以下の説明は、本発明の触媒担体取付システムの作用を限定するものではない。
【0055】
本発明の取付システムの保持性能は、前述したように、取付システムの圧縮によって発生した圧力と、汚染制御要素と取付システムとの間の静止摩擦係数との積である「保持力」によって表すことができる。ここで、従来一般に使用されてきた取付システムは、無機繊維および有機バインダーから形成され、圧縮による圧力を発生させながら、繊維の損傷を抑制するように、無機繊維の間の隙間または空間が十分に確保される。本発明の発明者が行った観察によると、無機繊維の間のこれらの隙間または空間は、触媒担体と触媒担体取付システムとの間の接触領域を減少させ、これによって触媒担体と触媒担体取付システムとの間の摩擦係数が実質的に限定される。
【0056】
本発明者は、耐熱性を有する無機粒子が、汚染制御装置と接触する取付システムの側面上または表面上に、好ましくは所定の厚さを有する部分で、配列され、好ましくはその場に接合されると、汚染制御要素と取付システムとの間の接触領域を増加させることができ、さらに汚染制御要素と取付システムとの間の摩擦係数を改善可能であることを発見した。特に、有機バインダーによって取付システムに固定された無機粒子は、特に有機バインダーが燃焼した後で、汚染制御要素と接触する繊維の間の隙間または空間内に移行することができる。汚染制御装置中に取り付けられるとき取付システムに作用する高い圧力によって、これらの空間にこれらの粒子が少なくとも移行しやすくなると考えられる。言い換えると、取付システムによって作用する圧力によって、粒子をこれらの空間内に効率的に押し込むことができると考えられる。取付システムと汚染制御要素との間の空間を充填することによって、粒子が、取付システムと汚染制御要素との間の接触領域を増加させる。
あるいは、またはこれに加えて、希望するなら、これと同じ技術を適用して、取付システムと、汚染制御装置のケーシングまたはハウジングとの間の接触領域を増加させることもできる。粒子が、空間内に移行した状態などの平衡状態に到達すると、取付システムによって作用する圧力が、粒子のさらなる移動、特に取付システムの外への移動を防止、または少なくとも抑制する傾向にある。
【0057】
本発明による取付システムは、製紙に使用されたり、あるいは2003年11月17日に出願された国際公開第2004061279号パンフレット、および1997年2月7日に出願された米国特許第6,051,193号明細書(これらの記載内容全体が本明細書に援用される)に記載されるような湿式積層法によって一般に製造することができる。
一般に、出発物質としての無機繊維および有機バインダーを任意の添加剤と混合した後、無機繊維の開繊、スラリーの調製、製紙による成形、および型の加圧などの工程段階を連続して行うことで、意図する取付システムが得られる。取付システムの構造に依存して、湿式方法と乾式方法との併用によって、または湿式方法の代わりに乾式方法を使用することによって取付システムを製造することもできる。乾式方法は、周知の従来方法によって行うことができ、典型的にはニードルパンチを使用する乾式方法である。
【0058】
より具体的に説明を行う。研磨粒子を含有するマットと、研磨粒子を含有しない補助マットとを含む複合マット形態の触媒担体取付システムは、たとえば以下の方法によって製造することができる。
【0059】
製造方法A
無機繊維および有機バインダーとを含有する第1のスラリー、ならびに無機繊維、研磨材料の微粒子、および有機バインダーを含有する第2のスラリーを調製する。通常の製紙方法によって第1のスラリーから補助マットの前駆体を形成し、従来の製紙方法によって第2のスラリーから研磨剤含有マットの前駆体を同様に形成する。次に、これら2つの前駆体の積層体を、1組の加圧ローラーの間に案内して圧縮することで、高密度にする。最後に、加圧した後の積層体を、1組の加熱ローラーの間で加熱し、乾燥させることで、2層一体型マット状触媒担体取付システムが得られる。
【0060】
製造方法B
無機繊維および有機バインダーとを含有する第1のスラリーを調製し、通常の製紙方法によって第1のスラリーから補助マットの前駆体を形成する。無機繊維、研磨材料の微粒子、および有機バインダーを含有する第2のスラリーを調製し、従来の製紙方法によって第2のスラリーから研磨剤含有マットの前駆体を同様に形成する。次に、得られた2つの前駆体を、通常の接着剤、樹脂、または両面テープなどの任意の接合手段、あるいはステープラーまたはスティッチングなどの機械的固定手段によって接合して一体化することで、2層一体型マット状触媒担体取付システムが得られる。
【0061】
製造方法C
無機塩法を使用してアルミナ繊維前駆体ゾルゲルを調製し、紡糸した後、積層、ニードルパンチング、および所定の温度における焼き付けを行う。次に、有機バインダー中に研磨材料の微粒子を分散させることによって調製したスラリーを、得られたアルミナ繊維ブランケットの表面上に適用し、吸引によって脱水する。こうして、アルミナ繊維ブランケットの表面上に研磨材料の微粒子が選択的に分散し固定された、マット状触媒担体取付システムが得られる。
【0062】
製造方法D
無機塩法を使用してアルミナ繊維前駆体ゾルゲルを調製し、紡糸した後、積層、ニードルパンチング、および所定の温度における焼き付けを行う。次に、無機繊維と、研磨材料の微粒子と、有機バインダーとからなるスラリーを、得られたアルミナ繊維ブランケットの表面上に適用し、吸引によって脱水する。
【実施例】
【0063】
次に、本発明の実施例を参照しながら本発明を説明する。なお、当然のことながら、本発明がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0064】
72重量%のアルミナと28重量%のシリカとからなるアルミナシリカ繊維(三菱化学産資(Mitsubishi Kagaku Sanshi)の製品)を最初に調製し、88重量%のこの繊維と、12重量%のアクリル型ラテックス(「ニッポール(Nippol)LX−816」、日本ゼオン株式会社(Nippon Zeon K.K.)の製品)とを混合して第1のスラリーを得た。このスラリーを調製するときは、固体濃度が5重量%となるように含水率を調整した。次に、この第1のスラリーを脱水し、メッシュ上でシートに成形し、シート状成形品を得た。次に加圧ローラーを使用してこの成形品を圧縮して高密度にした。次に、得られた高密度成形品を、加熱ローラーの使用によって130℃で20分間乾燥させて、非発泡性マットを得た。この非発泡性マットの平均表面密度は約1,200g/mであった。ついでながら、以下の評価試験において本発明の複合マットと比較するための対照サンプルとしてもこの非発泡性マットを使用した。
【0065】
以下の表1に示す研磨材料の微粒子(ここでは「研磨粒子」と記載する)を、種々の粒度または粒径および添加量で、72重量%のアルミナと28重量%のシリカとからなる88重量%のアルミナシリカ繊維(サフィル・カンパニー(Saffil Co.))の製品)と、および12重量%のアクリル型ラテックス(「ニッポール(Nippol)LX−816」、日本ゼオン株式会社(Nippon Zeon K.K.)の製品)との混合物にブレンドすることで、第2のスラリーを得た。
アルミナ研磨剤:「タイプSA−J01」(昭和電工(Showa Denko)の製品)
炭化ケイ素研磨剤:タイプ「C」(昭和電工(Showa Denko)の製品)
ジルコニア研磨剤:タイプ「RZ−8C」(昭和電工(Showa Denko)の製品)
チタニア研磨剤:タイプ「R5N」(堺化学工業(Sakai Kagaku Kogyo)の製品)
【0066】
第2のスラリーを調製するときは、固体濃度が5重量%となるように含水率を調整した。次に、この第2のスラリーを脱水し、メッシュ上でシートに成形し、シート状成形品を得た。次に加圧ローラーを使用してこの成形品を圧縮して高密度にした。次に、得られた高密度成形品を、加熱ローラーの使用によって130℃で20分間乾燥させて、研磨剤含有マットを得た。この研磨剤含有マットの平均表面密度は約200g/mであった。
【0067】
続いて、上記方法で作製した非発泡性マットおよび研磨剤含有マットを積層し、アクリル接着剤を使用して接合させた。こうして、それぞれが長さ260mm、幅90mm、および厚さ12.5mmを有する積層一体型複合マットを得た。これらの複合マットを「サンプル1〜17」と呼んだ。
【0068】
評価試験(摩擦力の測定)
触媒コンバータで使用されるときの触媒担体としての摩擦係数を測定するために、サンプル1〜17および対照試料の触媒担体取付システム(マット)のそれぞれの摩擦力を株式会社島津製作所(Shimazu Seisakusho K.K.)の製品である自動記録器「AGS100D」の使用によって以下のように測定した。
【0069】
長さ50mm、幅25mm、および厚さ12.5mmを有する試験片に各サンプルを切断した。次に、図10に示すように、触媒担体(この場合は、日本硝子(Nippon Glass Co.)のモノリス体)との接触面とは反対側の試験片2の表面を、両面テープでSUSシート(ステンレス鋼シート)46に接合させた。
【0070】
次に、長さ約1mのステンレス鋼コード43を準備し、そのコードの一端をSUSシート46に取り付けた。ロードセル44のすぐしたに滑車45を配置し、ロードセル44を上昇させたときに試験片2に取り付けたSUSシート46が地面に対して平行に移動するように、ステンレス鋼コードの43他方の端をロードセル44に取り付けた。
【0071】
次に、触媒担体41の中心軸が滑車45の進行方向に向かい、地面に対して平行となるように、触媒担体41上に試験片2を置いた。滑車45から最も離れた位置に試験片2が位置するように、ロードセル44の高さを調整した。
【0072】
49Nの加重47をSUSシート46上に取り付けた後、ロードセル44を上昇させ、矢印で示す方向にステンレス鋼コード43を100mm/分の引張速度で引っ張った。試験片2が触媒担体41の表面から滑り始める直前における荷重を静止摩擦力(kgf)として記録した。この値を、SUSシート46を含めた試験片2への荷重で割ることによって、静止摩擦係数を計算した。測定結果はすべて以下の表1に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1にまとめた測定結果から分かるように、本発明による触媒担体取付システムの表面(この実施例では複合マット)に加えることによって、触媒担体に対する摩擦係数を13%改善することができ、触媒担体取付システムの信頼性を改善することができた。
【0075】
汚染制御装置(たとえば触媒コンバータ)の製造
前述の評価試験において優れていると評価されたサンプルに関して、製造に使用した各複合マットを、外径78mmおよび長さ100mmおよびを有する日本ガイシ株式会社(Nippon Gaishi K.K.)の製品である汚染制御要素または本体(たとえば、モノリス触媒担体)の外周に巻き付け、別々に作製した。次に、ガイドコーンを使用して、複合マットが巻き付けられた触媒担体を、内径84mmおよび長さ120mmを有する円筒形のステンレス鋼ケーシングに40mm/秒の速度で押し込んだ。このキャンニング工程中の、触媒担体とケーシングとの間の間隙は約3mmであった。触媒担体および/または複合マットの破壊およびその他の損傷、ならびに触媒コンバータの組立性能の低下などの問題を引き起こさずに、意図する触媒コンバータを製造することができた。さらに、その結果得られた触媒コンバータは、実際の使用においてその意図する排気ガス精製作用を十分に示すことができた。
【0076】
本発明の一般的原理の上記開示および上述の詳細な説明から、当業者には、本発明が許容する種々の修正、再配置、および置換を容易に理解できるだろう。たとえば、本発明による取付システムは、高摩擦層またはコーティングを両面上に有するベースマットを含むことができる。ある高摩擦層は、研磨粒子を含浸させたセラミック繊維(たとえば、耐火性セラミック繊維)を含むことができ、たとえば、2003年11月17日に出願された国際公開第2004061279号パンフレット、および1997年2月7日に出願された米国特許第6,051,193号明細書に開示される方法と類似の湿式積層方法を使用してマットと同時成形することができる。他の高摩擦層は、マット上にロールコーティングされたシリカゾル(コロイダルシリカ)相を含むことができる。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚染制御装置の内側に汚染制御要素を取り付けるのに好適な取付システムであって、
汚染制御装置で使用するのに好適な繊維材料を含み、特定の厚さを有するマットと、
前記取付システムが前記汚染制御装置で使用された場合に、前記汚染制御要素の外周面と接触するように、前記マットの表面に配置された研磨材料の微粒子と
を含む、取付システム。
【請求項2】
前記繊維材料が、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、およびボロン繊維からなる群より選択される少なくとも1種類の無機繊維である、請求項1に記載の取付システム。
【請求項3】
前記繊維材料が、アルミナ繊維、シリカ繊維、アルミナシリカ繊維、およびそれらの組み合わせからなる群より選択されるセラミック繊維である、請求項1または2に記載の取付システム。
【請求項4】
前記セラミック繊維が、ジルコニア、マグネシア、カルシア、酸化クロム、酸化イットリウム、および酸化ランタンからなる群より選択される少なくとも1種類の添加剤を含有する、請求項3に記載の取付システム。
【請求項5】
前記研磨材料の前記微粒子が、前記マット中に含まれる全内容物の少なくとも70%の含有量で、前記マットの前記表面から、前記マットをその厚さ方向で観察した場合に50%の深さまでの範囲の下部領域に含まれる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項6】
前記マットをその厚さ方向で観察した場合に、前記研磨材料の前記微粒子が、前記マットの前記表面に向かって濃度が増加するように分散している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項7】
前記研磨材料が、アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア、チタニア、窒化ホウ素、炭化ホウ素、またはそれらの組み合わせである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項8】
前記研磨材料の前記微粒子が、JIS R6001によって規定される研磨剤粒度に関して約F1,200〜約F60の範囲内の粒度を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項9】
前記取付システムが1枚のマットを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項10】
前記取付システムが、前記マットと、前記マットの前記繊維材料と同じ、または異なる繊維材料で形成された少なくとも1つの補助マットとを含む複合マットである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項11】
前記補助マットの前記繊維材料が無機繊維を含む、請求項10に記載の取付システム。
【請求項12】
前記補助マットが前記研磨材料の粒子を含有しない、請求項10または11に記載の取付システム。
【請求項13】
前記補助マットが、非膨張性マットおよび/または膨張性マットである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項14】
触媒担体である汚染制御要素を取り付けるのに使用するのに好適である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項15】
フィルターエレメントである汚染制御要素を取り付けるのに使用するのに好適である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の取付システム。
【請求項16】
ケーシングと、前記ケーシングの内部に配置された汚染制御要素と、請求項1〜15のいずれか1項に記載の取付システムとを含む汚染制御装置であって、前記ケーシング内の所望の位置に前記汚染制御要素を保持するように前記取付システムが、前記ケーシングと前記汚染制御要素との間に配置されている、汚染制御装置。
【請求項17】
前記汚染制御要素が触媒担体であり、前記汚染制御装置が触媒コンバータである、請求項16に記載の汚染制御装置。
【請求項18】
前記汚染制御要素がフィルターエレメントであり、前記汚染制御装置が排気フィルター処理装置である、請求項16に記載の汚染制御装置。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか1項に記載の汚染制御装置を含む、内燃機関用排気システム。
【請求項20】
請求項19に記載の排気システムを含む内燃機関。
【請求項21】
請求項20に記載の内燃機関を含む乗り物。
【請求項22】
請求項20に記載の内燃機関を含む発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−215179(P2012−215179A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−154742(P2012−154742)
【出願日】平成24年7月10日(2012.7.10)
【分割の表示】特願2007−521689(P2007−521689)の分割
【原出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】