説明

注出容器

【課題】容器本体内の内容物に添加物を容易に添加させることができる注出容器を提供することを目的とする。
【解決手段】容器本体2と中栓4と注出器3と添加物容器5とを備える注出容器1において、中栓4には、ステム44が備えられ、添加物容器5には、内筒部50と外筒部51と下壁部52と上壁部53とが備えられ、内筒部50及び外筒部51のいずれか一方の筒部が、下壁部52及び上壁部53にそれぞれ固定され、一方の筒部と下壁部52と上壁部53が、内筒部50及び外筒部51のいずれか他方の筒部に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となり、注出器3には、添加物容器5が中栓4内に収納された状態において上壁部53を軸方向に沿って押下する押下部9が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を注出する注出容器に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
この種の注出容器として、従来、例えば下記特許文献1に記載されているような、注出容器に収容された薬剤や飲料などの内容物に対して、使用直前に添加物を添加させることが可能な注出容器が提案されている。詳しく説明すると、特許文献1には、容器本体の口部の内側に支持筒が装着されていると共に、その支持筒の内側に中栓が装着された注出容器が記載されている。上記した中栓は、口部に装着されるキャップ部と、キャップ部の天壁部に垂設された収容筒部と、収容筒部の下端に着脱可能に嵌合された蓋体と、から構成されている。上記した収容筒部は、支持筒の内側に挿通され、その内側に添加物が収容されている。この注出容器によれば、使用直前に、中栓を口部から引き上げることで、支持筒の下端に蓋体が係止され、収容筒部の下端部から蓋体が抜け出て収容筒部の下端が開放される。これにより、中栓内に収容された添加物が容器本体の内側に流入し、容器本体内の内容物に添加される。その後、口部にトリガー式噴射器などの注出器を取り付けて使用する。
【0003】
また、特許文献1には、口部の内側に筒状の中栓が装着され、その中栓の下端部に弱化部を介して蓋体が連結され、口部に中栓の上端開口部を閉塞するキャップが装着され、中栓の内側に中筒が挿通された注出容器が記載されている。この注出容器によれば、キャップを外した後にそのキャップを反転させて口部に再装着させることにより、キャップによって中筒が押圧されると共に、その中筒の先端によって弱化部の一部が破断して蓋体が回動して中栓の下端が開放される。これにより、中栓内に収容された添加物が容器本体の内側に流入し、容器本体内の内容物に添加される。その後、口部にトリガー式噴射器などの注出器を取り付けて使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2592498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の注出容器では、中栓を引き上げたりキャップを反転させて再装着させたりすることによって蓋体を外して添加物を添加させる工程の後、注出器を取り付ける工程を行うので、容器本体内の内容物に添加物を添加させる作業が煩雑であるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、容器本体内の内容物に添加物を容易に添加させることができる注出容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る注出容器は、内容物を収容する容器本体と、該容器本体の口部に装着された中栓と、該中栓に着脱可能に装着されていると共に注出口を有する注出器と、添加物を収容すると共に前記中栓の内側に収納可能な添加物容器と、を備える注出容器において、前記中栓には、前記容器本体内に配設されていると共に該容器本体の軸方向に沿って延設されたステムが備えられ、前記添加物容器には、内側に前記ステムを挿通させることが可能な内筒部と、該内筒部の外側に配設された外筒部と、該外筒部と前記内筒部との間を閉塞する下壁部と、該下壁部の軸方向上側に配設されていると共に前記外筒部と前記内筒部との間を閉塞する上壁部と、が備えられ、前記内筒部及び前記外筒部のうちのいずれか一方の筒部が、前記下壁部及び前記上壁部にそれぞれ固定され、前記一方の筒部と前記下壁部と前記上壁部が、前記内筒部及び前記外筒部のうちのいずれか他方の筒部に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となっており、前記注出器には、前記添加物容器が前記中栓内に収納された状態において前記上壁部を軸方向に沿って押下する押下部が備えられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、この注出容器を使用して容器本体内の内容物を注出する前に、まず、中栓の上端から注出器を外して中栓を開放させる。次に、中栓の内側に添加物容器を収納させる。このとき、添加物容器の内筒部の内側に中栓のステムを挿入させる。次に、中栓に注出器を装着させる。このとき、注出器に設けられた押下部が添加物容器の上壁部を軸方向に沿って押下する。これにより、内筒部及び外筒部のうち、上壁部に固定された一方の筒部、及び、その一方の筒部に固定された下壁部が、上壁部と共に軸方向に沿ってそれぞれ下降する。その結果、下壁部が、内筒部及び外筒部のうちの他方の筒部の下端から離間し、その他方の筒部の下端と下壁部との間に隙間が形成され、その隙間から添加物容器内(外筒部と内筒部との間)の添加物が流出して容器本体内の内容物に添加される。その後、添加物が添加された内容物を注出器の注出口から注出する。
【0009】
また、本発明に係る注出容器は、前記注出器と前記中栓とがヒンジ部を介して連結されていることが好ましい。
これにより、ヒンジ部回りに注出器を回動させることにより、中栓の上端から注出器を外して中栓を開放させた際にも、注出器が中栓から分離されることがなく、注出器がヒンジ部を介して中栓に連結される。
【0010】
また、本発明に係る注出容器は、前記注出器に、前記ステムに連結されると共に前記注出口に連通された連通筒部が備えられ、前記上壁部が、下方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状を成していることが好ましい。
これにより、中栓に注出器を装着させた際、注出器の連通筒部が中栓の上壁部に干渉することなく、連通筒部とステムとが連結される。
【0011】
また、本発明に係る注出容器は、前記下壁部及び前記上壁部のうちのいずれか一方の壁部が、前記一方の筒部に対して一体に連結されていると共に前記他方の筒部に対して弱化部を介して分離可能に一体に連結されており、前記下壁部及び前記上壁部のうちのいずれか他方の壁部が、前記内筒部及び前記外筒部に対して別体に形成されていると共に前記一方の筒部に固定されていることが好ましい。
これにより、内筒部と下壁部と外筒部、或いは、内筒部と上壁部と外筒部を一体に成形した後、内筒部と外筒部との間に添加物を注入し、その後、別に成形された上壁部、或いは、下壁部を装着させることにより、内部に添加物が収容された二重筒構造の添加物容器が完成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る注出容器によれば、容器本体に注出器を装着することで、添加物容器の上壁部を注出器に備えられた押下部によって押下して添加物容器を開放するので、混合操作を容易に行うことができる。つまり、注出器を装着するのと同時に添加物容器を開封することができるので、容器本体内の内容物に添加物を容易に添加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は本発明の実施の形態を説明するための容器本体、中栓及び注出器の破断図であり、(b)は本発明の実施の形態を説明するための添加物容器の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するため破断図であり、添加物容器を中栓内に収納させる状態を表した図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するため破断図であり、添加物容器内の添加物を容器本体内の内容物に添加する状態を表した図である。
【図4】本発明の他の実施の形態を説明するための添加物容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る注出容器の実施の形態として、注出器としてトリガー式噴射器を使用したトリガー式噴射器付き容器1について、図面に基いて説明する。
なお、本実施の形態では、容器本体2からみたトリガー式噴射器3(本発明の注出器に相当する。)側、つまり図1(a)における上側を「上方」とし、その反対側、つまり図1(a)における下側を「下方」とする。また、後述するノズル30(本発明の注出口に相当する。)側、つまり図1(a)における左側を「前方」とし、その反対側、つまり図1(a)における右側を「後方」とする。また、図1に示す符号Oは、容器本体2の中心軸線を示しており、以下「軸線O」と記す。また、この軸線O方向を「軸方向」と記し、軸線Oに直交する方向を「径方向」と記し、軸線O周りの方向を「周方向」と記す。
【0015】
図1に示すように、トリガー式噴射器付き容器1は、容器本体2内の内容物Xを噴出させて使用する容器であって、その概略構成としては、内容物Xを収容する容器本体2と、容器本体2の口部20に装着された中栓4と、中栓4に着脱可能に装着されたトリガー式噴射器3と、添加物Yを収容する添加物容器5と、を備えている。
【0016】
図1(a)に示すように、容器本体2は、上端に口部20を有する容器であり、容器本体2の内部には、薬液等の液状の内容物Xが収容されている。上記した口部20の下部22は、上方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状に形成されており、容器本体2の胴部21の上端から軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。なお、口部20の下部22の下端は、胴部21の上端よりも小径であり、口部20の下部22と胴部21との間には段差が形成されている。口部20の上部23は、略円筒形状に形成されており、前記下部22の上端から軸線Oを中心軸線にして軸方向に沿って延設されている。この口部20の上部23の外周面には、雄ねじ24が形成されている。
【0017】
中栓4は、口部20の上部23の内側に嵌合された嵌合筒部40と、嵌合筒部40の上部外周面から径方向外側に向けて突出されたフランジ部41と、フランジ部41の外縁から垂下された外壁部42と、嵌合筒部40の下端に設けられた底壁部43と、底壁部43の内縁から立設されたステム44と、を備えている。
【0018】
嵌合筒部40は、口部20の上部23の内側に貫設された略円筒形状の筒部であり、軸線Oを共通軸にして口部20と同軸上に配設されている。嵌合筒部40の上端は、口部20の上部23の上端から上方に向けて突出されており、嵌合筒部40の下端は、口部20の上部23の下端から下方に向けて突出されている。
フランジ部41は、嵌合筒部40の外周面に沿って全周に亘って形成された円環状の板部である。このフランジ部41は、口部20の上端面上に載置されており、フランジ部41の下面が口部20の上端面に当接されることで中栓4の下方への移動が規制されている。
【0019】
外壁部42は、口部20の外周に周設された筒部である。外壁部42の下部は、下方に向かうに従い漸次拡径されており、外壁部42の外周面は、容器本体2の胴部21の外周面に対して略面一に形成されている。また、外壁部42の上部の内周面には、口部20の雄ねじ24に螺合される雌ねじ47が形成されており、中栓4は口部20に対して螺着されている。
【0020】
底壁部43は、軸線Oの垂直面に沿って配設された略円環状の板部であり、嵌合筒部40の下端とステム44の下端との間に設けられている。
ステム44は、容器本体2内の内容物Xをトリガー式噴射器3に流通させる流通路であり、軸方向に沿って延設された略円筒形状の筒部である。ステム44は、容器本体2の口部20内に配設されていると共に軸線Oを共通軸にして嵌合筒部40と同軸上に配設されている。このステム44の内側には、容器本体2内の内容物X内に配設された吸い上げパイプ6の上端が嵌合されている。
【0021】
中栓4には、上記した嵌合筒部40の内周面と底壁部43の上面とステム44の外周面とによって、添加物容器5を収納する収納室45が形成されている。また、中栓4には、前記した収納室45と容器本体2の内部とを連通する連通口46が形成されている。この連通口46は、底壁部43及び嵌合筒部40に形成された開口であり、底壁部43の内縁から嵌合筒部40の軸方向中間部にかけて延設されている。また、この連通口46は、周方向に複数配設されている。
【0022】
また、中栓4には、その中栓4の上端にトリガー式噴射器3が装着された状態において当該中栓4とトリガー式噴射器3とを連結する止め具7が付設されている。この止め具7は、中栓4の外壁部42の外周面に対向配置された操作板70と、操作板70の軸方向中間部と中栓4の外壁部42とを連結する弾性変形可能なヒンジ部71と、を備えている。操作板70は、ヒンジ部71回りに鉛直面に沿って回動可能なシーソー板であり、中栓4の外壁部42の上端の上方まで延伸されている。また、操作板70の上端には、後述するトリガー式噴射器3側の掛止部37に掛止される鉤状の爪部72が設けられている。また、止め具7は、後述する中栓4とトリガー式噴射器3とを連結するヒンジ部8に対して径方向の反対側に配設されている。具体的には、止め具7は、中栓4の外壁部42のうちの前面側の部分に配設されている。
【0023】
トリガー式噴射器3は、容器本体2内の内容物Xを噴射させるための噴射器であり、その概略構成としては、中栓4の上端を覆う蓋部31と、蓋部31に装着された噴射器本体32と、噴射器本体32を覆うシュラウド33と、を備えている。
【0024】
蓋部31は、中栓4の嵌合筒部40及びステム44の上方に配設された天壁部34と、天壁部34の外縁から垂下された周壁部35と、周壁部35の下端から径方向外側に向けて突出されたフランジ部36と、を備えている。天壁部34は、中央部分に後述する噴射器本体32の連通筒部11が挿通される開口34aが形成された円環状の板部であり、軸線Oに対して垂直に配設されている。周壁部35は、軸線Oを中心軸にして軸方向に沿って延設された筒部であり、周壁部35の下端部は、中栓4の嵌合筒部40の上端部の外周に嵌め込まれている。フランジ部36は、中栓4のフランジ部41の上面に重ね合わせられている。また、蓋部31のフランジ部36の前方側部分には、鉤状の掛止部37が突設されており、この掛止部37には、前記した止め具7の爪部72が掛止されている。
【0025】
また、蓋部31は、ヒンジ部8を介して中栓4に連結されている。ヒンジ部8は、前後方向に直交する水平方向に延在する回転軸であり、蓋部31及び中栓4の後方側部分に配設されている。具体的には、ヒンジ部8は、中栓4のフランジ部41の後方側の外縁と蓋部31のフランジ部36の後方側の外縁との間に設けられている。また、上記した蓋部31と中栓4とヒンジ部8とは、互いに一体に成形されている。
【0026】
また、蓋部31の天壁部34には、添加物容器5が中栓4内に収納された状態(図3に示す状態)において後述する添加物容器5の上壁部53を軸方向に沿って押下する押下部9が設けられている。この押下部9は、蓋部31の天壁部34の下面から垂下された略円筒形状の筒部であり、軸線Oを共通軸にして蓋部31の周壁部35や後述する噴射器本体32の連通筒部11と同軸上に配設されている。
【0027】
噴射器本体32は、その前端部分に設けられたノズル30と、前端部分に垂下された前後方向に揺動可能なトリガー38と、トリガー38の後方に配設されたポンプ39と、蓋部31に被着された装着キャップ10と、図示せぬ連通路を介してノズル30に連通される連通筒部11と、を備えている。装着キャップ10は、略円筒形状の筒部であり、蓋部31のフランジ部36の上方に配置されていると共に蓋部31の図示せぬ立ち上がり筒部の外側に嵌合されている。連通筒部11は、軸方向に沿って延設されていると共に軸線Oを共通軸にして装着キャップ10と同軸上に配設された略円筒形状の筒部である。連通筒部11の下端は、中栓4のステム44の上端に嵌合されており、連通筒部11とステム44とは連通されている。
【0028】
シュラウド33は、上記したポンプ39を覆う断面視コ字形状の外殻部であり、噴出器本体32の外形(外観)を構成するものである。シュラウド33の前面及び下面はそれぞれ開放されている。このシュラウド33は、上記した装着キャップ10の上方に配設されており、シュラウド33の前端部の前方に上記したノズル30が配設され、また、シュラウド33の前端部の下方に上記したトリガー38が配設されている。
【0029】
一方、図1(b)に示すように、添加物容器5は、添加物Yを収容すると共に、図1(a)に示す中栓4の内側(収容室45)に収納可能な二重筒構造の容器である。この添加物容器5の概略構成としては、内筒部50と、外筒部51と、下壁部52と、上壁部53と、を備えている。
【0030】
内筒部50は、円筒形状の筒部であり、この内筒部50の内側には、図1(a)に示す中栓4のステム44が挿通可能となっている。また、内筒部50の外周面には、軸方向に延在する複数の凸リブ54が周方向に間隔をあけて配設されている。
【0031】
外筒部51は、内筒部50の外側に配設された円筒形状の筒部であり、内筒部50と同軸上に配設されている。外筒部51の下端は、内筒部50の下端と略同一の軸方向位置に形成されている。一方、外筒部51の上端は、内筒部50の上端よりも軸方向上側に形成されている。また、外筒部51の上部には、外筒部51の外周面から径方向外側に突出したフランジ部55が全周に亘って形成されている。
【0032】
下壁部52は、内筒部50の下端と外筒部51の下端との間を閉塞する円環状の板部である。この下壁部52の内縁は、内筒部50の下端に対して固定されており、下壁部52の外縁は、外筒部51の下端に対して分離可能に連結されている。詳しく説明すると、下壁部52は、内筒部50の下端から径方向外側に向けて全周に亘って突出したフランジ状の板部であり、下壁部52の内縁と内筒部50の下端とは一体に連結されている。一方、下壁部52の外縁は、外筒部51の下端に対して破断可能な弱化部56を介して分離可能に一体に連結されている。つまり、下壁部52は、内筒部50及び外筒部51と一体成形されており、且つ、弱化部56が破断されることで外筒部51に対しては分離可能となっている。また、下壁部52の上面には、内筒部50の下端部の外周面から径方向外側に向かって下向きに傾斜した略三角形状のリブ57が立設されている。
【0033】
上壁部53は、内筒部50の上端と外筒部51の上端との間を閉塞する蓋体であり、内筒部50及び外筒部51に対して別体に形成されている。この上壁部53は、下方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状(すり鉢状)の壁部であり、その概略構成としては、下方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー部58と、テーパー部58の上端から径方向外側に向かって全周に亘って突出した円環状のフランジ部59と、フランジ部59の外縁から垂下されて外筒部51の上端部の内側に摺動可能に嵌合された円筒形状の摺動筒部60と、を備えている。上記したテーパー部58の下端部(上壁部53の内縁部)は、内筒部50の上端部に嵌合されることで内筒部50の上端部に固定されている。
上述したように、内筒部50と下壁部52とは一体に成形されることで固定され、内筒部50と上壁部53とは嵌合によって固定されており、これら内筒部50と下壁部52と上壁部53とは一体となって外筒部51に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となっている。
【0034】
上記した構成の添加物容器5に添加物Yを充填する方法としては、まず、内筒部50と外筒部51と下壁部52とを一体に成形する。次に、内筒部50や外筒部51の上端側から内筒部50と外筒部51との間に所定量の添加物Yを注入し、その後、内筒部50の上端と外筒部51の上端との間に上壁部53を嵌合させて添加物容器5の上端を閉塞する。これにより、添加物容器5内に添加物Yが密封される。
【0035】
なお、上記した構成からなるトリガー式噴射器付き容器1は、添加物容器5を交換して繰り返し使用することに適した容器であり、例えば、使用者自身が、容器本体2内に水等の内容物Xを充填した後、濃縮液や粉体等の添加物Yが収容された添加物容器5(カートリッジ)を装填し、その添加物容器5内の添加物Yを容器本体2内の内容物Xに添加させて使用することができるものである。
【0036】
次に、上記した構成からなるトリガー式噴射器付き容器1の作用について説明する。
【0037】
まず、トリガー式噴射器付き容器1の使用前に、図2に示すように、中栓4の上端からトリガー式噴射器3を外して中栓4を開放させる。具体的に説明すると、まず、止め具7の操作板70の下端部を径方向内側に向けて押圧し、操作板70をヒンジ部71回りに回動させ、操作板70の上端の爪部72を掛止部37から外す。これにより、止め具7によるトリガー式噴射器3の拘束が解除される。そして、トリガー式噴射器3を後方側に傾倒させ、トリガー式噴射器3をヒンジ部8回りに回動させる。これにより、中栓4の上端からトリガー式噴射器3が外れて中栓4の上端が開放される。このとき、外されたトリガー式噴射器3は、ヒンジ部8を介して中栓4に連結されているので、トリガー式噴射器3が中栓4から分離されることがない。
【0038】
次に、添加物Yが収容された添加物容器5を中栓4の内側に収納させる。具体的に説明すると、添加物容器5の内筒部50の内側に中栓4のステム44を挿入させつつ、添加物容器5の外筒部51を中栓4の嵌合筒部40内に挿入させる。このとき、添加物容器5のフランジ部55が中栓4の嵌合筒部40の上端面に当接するところまで添加物容器5を挿入する。これにより、添加物容器5が中栓4に対する所定の軸方向位置に確実に配置され、添加物容器5の下壁部52と中栓4の底壁部43との間に隙間があけられる。
【0039】
次に、図3に示すように、トリガー式噴射器3を中栓4の上端に被着させる。具体的に説明すると、後方側に傾倒したトリガー式噴射器3を前方側に起こしてトリガー式噴射器3をヒンジ部8回りに回動させ、蓋部31のフランジ部36を中栓4のフランジ部41の上面に重ね合わせると共に、止め具7の爪部72を掛止部37に掛止させて中栓4とトリガー式噴射器3とを拘束する。これにより、中栓4の上端にトリガー式噴射器3が被着されて中栓4の上端が閉塞される。
【0040】
このとき、トリガー式噴射器3の連通筒部11の下端が中栓4のステム44の上端に嵌合され、ステム44と連通筒部11とが連通される。この際、上壁部53がテーパー形状に形成されているので、連通筒部11が上壁部53に干渉することなく、ステム44に連結される。また、トリガー式噴射器3の蓋部31に設けられた押下部9が添加物容器5の上壁部53のフランジ部59の上面を軸方向に沿って押下する。これにより、上壁部53から内筒部50及び下壁部52に押圧力が伝達され、下壁部52の外縁と外筒部51の下端との間の弱化部56が破断し、上壁部53に固定された内筒部50が上壁部53と共に軸方向に沿って押し下げられると共に、内筒部50に連結された下壁部52が内筒部50と共に押し下げられる。その結果、下壁部52の外縁が外筒部51の下端から離間して下壁部52の外縁と外筒部51の下端との間に隙間が形成され、その隙間から添加物容器5内の添加物Yが流出する。そして、その添加物Yは、中栓4の連通口46を通って容器本体2内に流入し、容器本体2内の内容物Xに添加される。
【0041】
次に、トリガー式噴射器3を操作して、添加物Yが添加された内容物Xをノズル30から噴射させる。具体的に説明すると、トリガー38を後方へ揺動させる。これにより、ポンプ39が駆動し、このポンプ39の機能によって、吸い込みパイプ6の下端から容器本体2内の内容物Xが吸い上げられ、その内容物Xが上記したステム44内、連通筒部11内及び図示せぬ連通路を通ってノズル30に送られ、ノズル30から噴出される。
【0042】
また、必要に応じて中栓4内の添加物容器5を交換することも可能である。例えば、容器本体2内の内容物Xが無くなった場合には、中栓4の上端からトリガー式噴射器3を外して空の添加物容器5を中栓4内から引き抜いて取り出す。次に、容器本体2内に内容物Xを注入する。このとき、口部20から中栓4を取り外してもよく、或いは、口部20に中栓4を装着させた状態で、中栓4を通して容器本体2内に内容物Xを注入してもよい。次に、添加物Yが充填されている新たな添加物容器5を中栓4内に収納させ、その後、中栓4の上端にトリガー式噴射器3を被着させる。これにより、添加物Yが添加された内容物Xを再び噴射させることができる。
【0043】
上記したトリガー式噴射器付き容器1によれば、容器本体2にトリガー式噴射器3を装着することで、添加物容器5の上壁部53を押下部9によって押下して添加物容器5の下部を開放するので、混合操作を容易に行うことができる。つまり、トリガー式噴射器3を装着するのと同時に添加物容器5を開封することができるので、容器本体2内の内容物に添加物Yを容易に添加させることができる。
また、押下部9によって上壁部53を軸方向に沿って押下し、内筒部50と下壁部52とを軸方向に沿って下降させることで、外筒部51の下端と下壁部52の外縁との間に隙間が形成されるので、押下部9による押下位置が多少ずれた場合であっても、内筒部50と下壁部52とが容易に押し下げられる。したがって、容器本体2内の内容物Xに添加物Yを容易に添加させることができる。
また、上記した添加物容器5は容易に取り出すことが可能であり、添加物容器5の交換作業を容易に行うことができる。
【0044】
また、上記したトリガー式噴射器付き容器1によれば、中栓4の上端からトリガー式噴射器3を外したとき、ヒンジ部8を介して中栓4とトリガー式噴射器3とが連結されるので、トリガー式噴射器3が中栓4から分離されることがなく、トリガー式噴射器3の紛失を防止することができると共に、トリガー式噴射器3の脱着作業を容易に行うことができる。
【0045】
また、上記したトリガー式噴射器付き容器1によれば、上壁部53がテーパー形状を成しており、中栓4にトリガー式噴射器3を装着させた際、連通筒部11が上壁部53に干渉することなく、連通筒部11とステム44とが連結されるので、中栓4にトリガー式噴射器3を装着させる作業を容易に行うことができる。
【0046】
また、上記したトリガー式噴射器付き容器1によれば、内筒部50と外筒部51と下壁部52とを一体に成形した後、その内筒部50と外筒部51との間に添加物Yを充填し、その後、上壁部53を装着させることで、添加物Yが収容された添加物容器5を作成されるので、密閉された添加物容器5の内部に添加物Yを容易に充填することができる。
【0047】
以上、本発明に係る注出容器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、内筒部50が下壁部52及び上壁部53にそれぞれ固定され、これら内筒部50、下壁部52及び上壁部53が、外筒部51に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となっているが、本発明は、例えば図4(a)に示すように、外筒部151が下壁部152及び上壁部153にそれぞれ固定され、これら外筒部151、下壁部152及び上壁部153が、内筒部150に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となっている添加物容器105であってもよい。詳しく説明すると、下壁部152の外縁は外筒部151の下端に一体的に連結されて固定されており、下壁部152の内縁は、弱化部156を介して分離可能に内筒部150の下端に連結されている。また、上壁部153のテーパー部158の下端部は、内筒部150の上端部の外周面に摺接されており、上壁部153のフランジ部159の外縁には、外筒部151の上端部の内側に嵌合される嵌合筒部160が垂下され、上壁部153は外筒部151の上端に固定されている。このような構成の添加物容器105では、図3に示すように、トリガー式噴射器3を中栓4に被着させた際に、図1(a)に示す押下部9によって上壁部153のフランジ部159の上面が押下されると、弱化部156が破断して上壁部153と共に外筒部151及び下壁部152がそれぞれ押し下げられ、下壁部152の内縁と内筒部150の下端との間に隙間が形成され、その隙間から添加物Yが流出する。なお、このとき、図4(a)に示すように、内筒部150には、ステム44に対して上方から当接して内筒部150の下降を規制するフランジ部155を突設させておくことが好ましい。また、中栓4の下端部に形成される連通口46を、ステム44の軸方向中間部まで延設させることで、添加物容器105の下壁部152の内縁と内筒部150の下端との間から流出した添加物Yが容器本体2内に流入しやすくなる。
【0048】
また、上記した実施の形態では、下壁部52が内筒部50に対して一体に連結されていると共に外筒部51に対して弱化部56を介して一体に連結され、上壁部53が内筒部50や外筒部51に対して別体に形成されていると共に内筒部50に対して固定されているが、本発明は、例えば図4(b)に示すように、上壁部253が内筒部250に対して一体に連結されていると共に外筒部251に対して弱化部256を介して一体に連結され、下壁部252が内筒部250や外筒部251に対して別体に形成されていると共に内筒部250に対して固定されている添加物容器205であってもよい。詳しく説明すると、下壁部252の内縁は内筒部250の下端部の外側に嵌合されて固定されており、下壁部252の外縁は外筒部251の下端部の内周面に摺接されている。また、上壁部253のテーパー部258の下端は内筒部250の上端に一体に連結(一体成形)されて固定されており、上壁部253のフランジ部259の外縁は、弱化部256を介して外筒部251の上端に分離可能に連結されている。これにより、添加物Yが充填された添加物容器205を作成する際には、まず、内筒部250と外筒部251と上壁部253とを一体に成形し、続いて、これを反転させて内筒部250と外筒部251との間に所定量の添加物Yを注入し、その後、内筒部250と外筒部251の間に下壁部252を嵌合させて添加物容器205を密閉する。これにより、添加物容器205内に添加物Yが密封される。
【0049】
また、本発明は、例えば図4(c)に示すように、外筒部351が下壁部352及び上壁部353にそれぞれ固定され、これら外筒部351、下壁部352及び上壁部353が、内筒部350に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となっており、且つ、上壁部353が外筒部351に対して一体に連結(一体成形)されていると共に内筒部350に対して弱化部356を介して分離可能に一体に連結され、下壁部352が内筒部350や外筒部351に対して別体に形成されていると共に外筒部351に対して固定されている添加物容器305であってもよい。この場合も、上述した図4(a)に示す添加物容器105と同様に、内筒部350には、ステム44に対して上方から当接して内筒部350の下降を規制するフランジ部355を突設させておくことが好ましい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、注出器としてトリガー式噴射器3が備えられているが、本発明はトリガー式噴射器付き容器1に限定されるものではない。例えば、注出器として押下ポンプやフォーマーポンプを備えた注出容器であってもよく、或いは、中栓4に被着される蓋部にノズルが立設された構成の注出容器であってもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、一方の壁部(下壁部52)が一方の筒部(内筒部50)に対して一体に連結されていると共に他方の筒部(外筒部51)に対して弱化部56を介して分離可能に一体に連結されており、他方の壁部(上壁部53)が、内筒部50及び外筒部51に対して別体に形成されていると共に一方の筒部(内筒部50)に固定されているが、本発明は、内筒部、外筒部、下壁部及び上壁部を適宜一体に形成したり別体に形成したりすることが可能であり、例えば、内筒部と下壁部と上壁部とを一体に形成して外筒部だけを別体にすることも可能であり、或いは、外筒部と下壁部と上壁部とを一体に形成して内筒部だけを別体にすることも可能であり、或いは、内筒部、外筒部、下壁部及び上壁部をそれぞれ別体にすることも可能である。
【0052】
また、上記した実施の形態では、上壁部53がテーパー状に形成されているが、本発明は、上壁部を他の形状にすることも可能であり、例えば、軸線Oに対して垂直に配設された円環板状の上壁部であってもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、トリガー式噴射器3と中栓4とがヒンジ部8を介して連結されているが、本発明は、注出器と中栓とがヒンジ部を介して連結されていない構成にすることも可能であり、例えば、中栓の上端に注出器が嵌合されたり螺合されたりする構成であってもよい。
【0054】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 トリガー式噴射器付き容器(注出容器)
2 容器本体
3 トリガー式噴射器(注出器)
4 中栓
5,105,205,305 添加物容器
8 ヒンジ部
9 押下部
11 連通筒部
30 ノズル(注出口)
44 ステム
50,150,250,350 内筒部
51,151,251,351 外筒部
52,152,252,352 下壁部
53,153,253,353 上壁部
56,156,256,356 弱化部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する容器本体と、
該容器本体の口部に装着された中栓と、
該中栓に着脱可能に装着されていると共に注出口を有する注出器と、
添加物を収容すると共に前記中栓の内側に収納可能な添加物容器と、
を備える注出容器において、
前記中栓には、前記容器本体内に配設されていると共に該容器本体の軸方向に沿って延設されたステムが備えられ、
前記添加物容器には、内側に前記ステムを挿通させることが可能な内筒部と、該内筒部の外側に配設された外筒部と、該外筒部と前記内筒部との間を閉塞する下壁部と、該下壁部の軸方向上側に配設されていると共に前記外筒部と前記内筒部との間を閉塞する上壁部と、が備えられ、
前記内筒部及び前記外筒部のうちのいずれか一方の筒部が、前記下壁部及び前記上壁部にそれぞれ固定され、前記一方の筒部と前記下壁部と前記上壁部が、前記内筒部及び前記外筒部のうちのいずれか他方の筒部に対して相対的に軸方向に沿って移動可能となっており、
前記注出器には、前記添加物容器が前記中栓内に収納された状態において前記上壁部を軸方向に沿って押下する押下部が備えられていることを特徴とする注出容器。
【請求項2】
請求項1に記載の注出容器において、
前記注出器と前記中栓とがヒンジ部を介して連結されていることを特徴とする注出容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の注出容器において、
前記注出器には、前記ステムに連結されると共に前記注出口に連通された連通筒部が備えられ、
前記上壁部は、下方に向かうに従い漸次縮径されたテーパー形状を成していることを特徴とする注出容器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載の注出容器において、
前記下壁部及び前記上壁部のうちのいずれか一方の壁部は、前記一方の筒部に対して一体に連結されていると共に前記他方の筒部に対して弱化部を介して分離可能に一体に連結されており、
前記下壁部及び前記上壁部のうちのいずれか他方の壁部は、前記内筒部及び前記外筒部に対して別体に形成されていると共に前記一方の筒部に固定されていることを特徴とする注出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−274993(P2010−274993A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131516(P2009−131516)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】