海草付着のためのセメント系材料で製造されたブロックおよび構造物の表面処理工法並びにこれを用いた藻場および人工漁礁による魚介類の生息環境保全工法
【課題】環境破壊が進む中、自然保護の観点から人工魚礁の設置や藻場の形成など各種の対策が推進されている。しかしながら人工漁礁を含むコンクリート製の海洋構造物はその表面が緻密で滑らかであるため海草が付着し難く、その周辺の魚介類の生息環境が効果的に保全されていない。
【解決手段】セメント系材料からなるブロックまたは構造物の表面に海草が付着し易いようにするために、硬化前および硬化後のセメント系材料の表面に粗面加工を施す方法または破断面が粗で小さな空隙や窪み・ひび割れ等を有する固形廃棄物または自然石を表面に埋め込む方法などを用いてブロックまたは構造物を製造し、これを海水中へ敷設または設置して藻場の形成や海草の繁茂する人工漁礁を構築し、魚介類の生息環境を保全する。
【解決手段】セメント系材料からなるブロックまたは構造物の表面に海草が付着し易いようにするために、硬化前および硬化後のセメント系材料の表面に粗面加工を施す方法または破断面が粗で小さな空隙や窪み・ひび割れ等を有する固形廃棄物または自然石を表面に埋め込む方法などを用いてブロックまたは構造物を製造し、これを海水中へ敷設または設置して藻場の形成や海草の繁茂する人工漁礁を構築し、魚介類の生息環境を保全する。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋環境下における人工的な藻場や人工漁礁の構築による魚介類の生息環境保全工法に関するものである。
【0002】
近年、種々の社会的要因に基づく環境破壊が進行する中、沿岸部海域における魚介類の減少が顕在化しており海洋資源の枯渇が懸念されている。このような社会的背景にあって沿岸海域における環境保全が重要視されるようになっており、魚介類の生息環境保全が急務となっている。
【0003】
魚介類の多くは弱肉強食の世界にあり、稚魚を含む小魚の多くは岩陰や海草などの陰に身を潜めて生息し、成長するに従って行動範囲を広げて大きくなる。魚介類の多くは岩陰や海草に卵を産み付け、孵化・繁殖するため岩陰の多い場所や海草などが繁茂する場所には魚介類が豊富といわれている。また海草等の水生植物の多くは水中から養分を吸収して成長するため水生植物が繁茂する水域では水質浄化が盛んであり、環境保全に大いに寄与している。
【0004】
しかしながら海岸・海中構造物の大部分を占めるコンクリート構造物にあっては、その水面下に位置する部分において海草が付着して繁茂している例を見ることは少ない。これはコンクリート表面が滑らかで空隙や凹凸が少ない上に波や水の流れによる水の移動で海草の種子がコンクリート表面に付着し難い状況にあるためと考えられる。
【0005】
そこで海水に接している部分のコンクリート構造物を海草が付着し易いように改善するために、海水面下に設置する人工漁礁や藻場のブロック、防波堤や消波堤などの根固めブロックや消波ブロック、あるいは堤防や突堤、岸壁、ドックなど海岸・海洋構造物自身の海水面下に位置する部分に対して、その表面に海草の種子が付着し定着し易いようにするための表面処理工法が必要と考えられる。
【背景技術】
【0006】
近年コンクリート業界ではポーラスコンクリートを用いたコンクリートへの植物の植生技術[参考文献1]が普及している。またこのポーラスコンクリートを海水中に晒して海草付着に関する実験や藻場へ適用する研究[参考文献2]、[参考文献3]も行われている。
参考文献1:玉井元治、特集*緑とコンクリート/各論[緑とコンクリート]コンクリート材料、コンクリート工学、Vol.32,No.11,pp.64−69,1994
参考文献2:大谷敏広、他3名、藻場復元用ポーラスコンクリートへの産業副産物の適用性に関する研究、第57回セメント技術大会講演要旨、pp.256−257,2003.4
参考文献3:武田浩二、他2名、産業副産物を活用した藻場復元用ポーラスコンクリートの開発、第59回セメント技術大会講演要旨、pp.228−229,2005.4
【0007】
このポーラスコンクリートはその中に連続性の大きな空隙を有するため、透水性が大きく、河川や田んぼの周辺など水分の多い場所で使用すれば、その空隙に水と土粒子が入り込んで植物がコンクリート中で根を張ることも可能である。そのため、このポーラスコンクリートを陸上で使用すれば、従来の護岸工事のようにコンクリートをむき出しにすることなく、その表面を緑草で覆うことも可能である。またこれを海に適用すればポーラスコンクリートに海草が付着し易いといわれている。
【0008】
このようにポーラスコンクリートを応用したエコ・コンクリートは、従来考えられなかった植物とコンクリートとの結びつきを可能にしたという点で画期的である。しかしながら、ポーラスコンクリートは粗骨材の表面を薄いセメントペーストの幕で覆って固めただけのものであり、隣接する粗骨材同士がその薄い幕を通して互いに結合している構造に過ぎない。そのため強度が弱く、大きな荷重が作用する構造物や流れの激しい場所あるいは波の荒い場所などに設置するブロックや構造物においては耐久性に問題があり、長期にわたる安定的な使用は期待できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はポーラスコンクリートのような強度や耐久性に乏しい材料ではなく、強度や耐久性に優れた通常のコンクリートを用いてその表面を海草の種子が付着し易いように加工するところに特徴がある。このように表面処理を施したブロックまたは構造物を海水中に設置すれば藻場の形成が容易となり、また海草の繁茂する人工漁礁の構築も可能になるものと考えられる。
【0010】
魚介類の中には海草を主食とするものも少なからず生息しており、また海草が繁茂すれば海水の浄化にも繋がるので植物性プランクトンや動物性のプランクトンの増殖にも繋がることが考えられる。そこで本方法を用いれば魚介類の生息環境が改善され、ひいては魚介類の自然増殖が可能になるものと考えられる。[写真1]および[写真2]は大潮の干潮時に露出した天然の岩礁に付着する海草類の繁茂状況を示す一例である。また[写真3]は岩礁のひび割れの多い部分にしっかりと根を張って付着している海藻の生育状況を示している。そして[写真4]はこれらの岩礁の陰に産み付けられた魚介類の卵の付着状況を示している。これより、このような場所では魚介類の増殖活動が盛んであり、また魚介類も豊富と考えられる。
【0011】
なおこの沿岸海域における魚介類の生息環境保全工法については、先にポーラス材料を使用したコンクリートの表面処理方法について特願2005−192770にて現在特許申請中であるが、これに関連して実験を続けた結果、ポーラス材料以外でも同様な効果が得られることが実験的に確認されたので、ここに改めて追加的に特許を申請する次第である。
【0012】
従来の藻場の形成には木くずを固めた固形物を用いる方法や炭素繊維などの高価な材料を使用したロープやネットを用いて水生植物を増殖させる方法が用いられている。また人工漁礁においても一般的にその表面が滑らかなコンクリート製の漁礁ブロックを海底に設置しているため海草が付着し難く、魚介類がこれになじむまでにかなりの時間がかかるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明ではこのような高価な材料による藻場の形成や海草の付着し難いコンクリートブロックによる人工漁礁の構築ではなく、より安価な方法を用いて海水中における海草類の生育環境を整え、海草が繁茂する藻場や漁礁を人工的に造り出して魚介類の生息環境保全に寄与することを目的としている。具体的には海水中に敷設するブロックや構造物の表面を海草の種子が付着し易いようにするために、セメント系材料からなるブロックや構造物の表面を粗な表面に加工し、またはブロックや構造物の表面に起伏に富む粗な表面構造を有する材料をその表面がむき出しになるように埋め込んでブロックや構造物を製造する。そしてこれを海水中に設置し、魚介類の生息環境を保全しようとするものである。
【0014】
このような目的でセメント系材料に表面処理を施す方法として次のような方法が考えられる。なおここでいうセメント系材料とは建設材料として一般的に広く用いられている各種のセメントを使用したコンクリート、モルタル、またはセメントペースト等を指すものとする。
1.硬化したセメント系材料の表面に砂吹き付けや高圧水吹きつけを施し、またはワイヤーブラシ等を用いてブラッシングを施す方法
2.硬化前のセメント系材料の表面に目が粗くて吸湿性に富む布状体や網状体を押し当てておき、セメント系材料が凝結・硬化した後にこれを剥ぎ取る方法
3.超固練りのセメント系材料で表面部を構成し、その表面部を空隙の多い構造とする方法
4.凝結・硬化前のセメント材料の表面に水や空気を吹き付け、あるいは箒等を用いて箒目を立ててその表面部を粗に仕上げる方法
5.硬化前のセメント系材料の表面に遅延剤を散布しておき、セメント系材料の躯体部分が硬化した後に、遅延剤散布によって生じた表面部の未硬化層に水または空気を吹き付けて未硬化部分を排除して粗な表面を形成する方法
6.硬化前のセメント硬化体の表面に粗粒のアルミニウム粉末(約0.05〜2mm程度のもの)を散布してその表面部に薄く分散させ、またはアルミニウム粉末を混合したセメント系材料をブロックまたは構造物表面に薄く塗りつけておき、そのセメント系材料の硬化に伴ってアルミニウム粉末から発生する水素ガスによる気泡痕よってセメント系材料の表面を粗に加工する方法
7.セメント系材料の表面に適当な方法を用いて比較的幅の狭い溝または疑似ひび割れ(幅約0.1〜5mm程度)を導入する方法
8.硬化前の軟らかいセメント系材料の表面に、窪みや空隙・ひび割れ等を多く含む粗な表面構造を有する固形物破片を、その表面がむき出しになるように埋め込みまたは貼り付ける方法
なお、ここでいう固形物破片とは煉瓦や瓦・インターロッキングブロック・建築用有孔ブロック・コンクリート塊等の廃棄物破片や火山礫・砂岩・安山岩・凝灰岩など粗な表面構造を有する自然石破片を指している。
【0015】
海草の多くは海水中に露出する岩肌や貝殻に付着して根を下ろし、海水中から養分を吸収して成長するのが大部分である。それゆえ、陸上における植物のように地中へ根を張って地中の水分や養分を吸収すう必要は無く、波や水の流れに対して自分の位置を保つだけのしっかりした根がかりがあればよいと思われる。そこで、コンクリート表面が粗面となるようにその表面を直接処理し、または表面粗度が大きくて起伏に富み窪みや空隙を多く含む材料をコンクリート表面に埋め込んで海草の種子が入り込み易い表面構造を用意すれば、コンクリート表面への海草付着も可能になると考えられる。
【0016】
自然界における岩礁への海草の付着状況を観察すると、[写真1]から[写真3]から判るように比較的大きな海草は砂岩の積層に沿う割れ目や摂理、風化によるひび割れの多い部分にしっかりと根をおろして付着しており、また草丈の小さいものは岩石表面を覆うように一面に付着しているのを見ることができる。しかしながら表面が滑らかでひび割れや摂理の少ない部分にはほとんど付着していない。これより、天然の鉱物素材でもその表面が起伏に富む粗な表面構造を有しているものであれば海草種子が付着して根を下ろすことも可能と考えられる。
【0017】
このような自然界の観察結果を基に、海草が付着し易い表面構造としてセメント硬化体の表面に布目・箒目・疑似ひび割れ等を設ける方法とセメント系硬化体の表面に組な表面構造を有する煉瓦等の破片や各種のセメント系固形廃棄物破片あるいは砂岩等の自然石破片を埋め込む方法について暴露実験を行い、その海草付着効果を検証した。
【0018】
ところで社会は今人間社会と自然環境との調和を目指す持続可能な循環型社会の構築に向けて世界中が努力している。本発明は魚介類の生息環境保全を目的とした技術であるが、同時に煉瓦や瓦・インターロッキングブロック・建築用有孔ブロック・コンクリート等の廃棄物(以後これを固形廃棄物と呼ぶ)を再利用する上でも有意義であり、社会への貢献度は大きいと考えられる。以下、図面および写真を基に本発明の実施例について具体的に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実験における供試体製造に使用したセメントは普通ポルトランドセメント(以後これを普通セメントと呼ぶ)であるが、セメントの種類が海草付着に及ぼす影響を調査するために、普通セメントに粉末度約4000cm2/gの高炉スラグ微粉末と粉末度約3000cm2/gのフライアッシュを混合し、市販の高炉セメント(A種・B種・C種)およびフライアッシュセメント(A種・B種・C種)に相当する手製の混合セメントとして使用した。なおセメントの種類に対する高炉スラグ微粉末およびフライアッシュ混合率は質量比で次の通りである。
普通セメント:普通ポルトランドセメント100%
高炉セメント
A種相当:普通セメント75%、高炉スラグ微粉末25%の混合体
B種相当:普通セメント60%、高炉スラグ微粉末40%の混合体
C種相当:普通セメント35%、高炉スラグ微粉末65%の混合体
フライアッシュセメント
A種相当:普通セメント90%、高炉スラグ微粉末10%の混合体
B種相当:普通セメント80%、高炉スラグ微粉末20%の混合体
C種相当:普通セメント70%、高炉スラグ微粉末30%の混合体
【表1】
【0020】
本実験では予め[表1]に示すようにセメントの種類と表面構造の違いによる22種類の板状体を作成し、これをコンクリートブロックの表面に埋め込んで供試体を作成した。なお板状体は全てモルタルを用いて製作した。[図1]A・Bは今回使用した2タイプの板状体断面を示しており、Aはモルタル板の上面に布目や箒目などの粗面加工を施したケースであり、Bはモルタル板の上面に固形物破片を埋め込んだケースである。
【0021】
今回の実験で使用した板状体の種類は大きく分けて次の2グループに分かれる。グループIはセメントの種類の影響と粗面加工の種類の影響を見るためのもので、比較の基準となる普通セメントを使用した無処理の板状体もこのグループに含まれる。また、粗面加工は布目仕上げと箒目仕上げとした。グループIIは普通セメントを使用したモルタル板の表面に固形廃棄物破片や暴露実験場付近で収集した自然石の破片を埋め込んだものである。
【0022】
これらの板状体は[図2]に示すようにコンクリート打設時にブロック表面に埋め込んで取り付けた。なおこの板状体▲1▼の断面は必ずしも台形状でなくてもよく、[図3]に示すような種々の基本形状が考えられ、またこの他にもこれらを組み合わせた非対称断面や変形断面が考えられる。また板状体の平面形状についても必ずしも正方形や長方形でなくてもよく、円形、台形、等辺多角形、不等辺多角形など種々考えられるが、これらの断面形状や平面形状については実施に当たって適宜選択してよい。
【0023】
ブロック表面への固形物破片の埋め込み方法としては[図2]のように予め板状体▲1▼のモルタル▲3▼中に固形物破片▲2▼をその表面がむき出しになるように埋め込みまたは貼り付けて製作した板状体を型枠▲4▼中に打設したフレッシュコンクリート▲5▼の表面に埋め込む方法と、[図4]のように形枠▲4▼中に打設したフレッシュコンクリート▲5▼の表面に直接固形物破片▲3▼をばらまき、その表面の一部がむき出しになるように埋め込も方法がある。この他にも板状体をブロック表面に取り付ける方法は種々考えられるが、これらについては先に提出した特願2005−192770の中に示しているのでここでは省略する。
【発明の効果】
【0024】
今回の暴露実験は平成17年11月初旬の大潮における干潮時に熊本県宇城市三角町の海岸に設置して行われた。本実験では表面処理方法の異なる各供試体を製作し、海水に浸す前と暴露期間2.5ヶ月後で写真撮影を行い、セメントの種類や表面処理方法の違いによる海草付着状況を比較検討した。なお暴露実験におけるブロック供試体の設置については、大潮の干潮時における水深が約30cm程度となるような場所にほぼ同程度の深さで設置した。
【0025】
[写真5]〜[写真26]に示す各2枚の写真はA(左側)が暴露前供試体の表面構造、B(右側)が暴露後約2.5ヵ月におけるブロックへの海草付着状況を示している。以下[表1]の順番に沿って説明する。
【0026】
[写真5]は普通セメントを使用したモルタル(以後これを普通モルタルと呼ぶ)で製作した無処理の板状体を取り付けた供試体NP−1を示している。暴露前供試体の表面は緻密で平滑であるため暴露後2.5ヶ月においてもその表面(上面)には海草が殆ど付着していない。このように無処理のセメント硬化体表面には海草が付着し難いことが判る。これに対して以下の種々の表面処理を施した供試体上面には緑色海草がよく付着している。
【0027】
まず[写真6]は普通モルタルの表面に麻布を用いて布目を施したNP−2のケースである。暴露2.5ヶ月後の供試体には緑色海草がよく付着している様子が判る。これはモルタル表面に貼り付けた麻布を剥ぎ取る際にモルタル表面に麻布の繊維に基づく細かい窪みが多数残るため、海藻の種子がその中に入り込んで定着し発芽したためと考えられる。
【0028】
[写真7]は普通モルタル表面に竹箒で箒目を施したNP−3のケースである。この供試体にも暴露2.5ヶ月後には緑色海草がよく付着していることが判る。これはモルタル表面に箒目を施すことによって細かな凹凸が多数できるので、その窪みに海草の種子が入り込んで定着したためと考えられる。
【0029】
[写真8]は粗粒のアルミニウム粉末を普通モルタル表面部に混入して発生する気泡を利用してモルタル表面に多数の細かい気泡痕を誘発させたNP−4のケースである。このケースにおいても緑色海草がよく付着していることが判る。
【0030】
上記NP−1からNP−4までのケースはいずれも普通モルタルの表面構造の違いによるものであり、NP−1を除いて他のケースは全てモルタル表面に粗面処理を施したものである。このようにセメント系硬化体の表面に何らかの粗面加工を施せば海草種子が定着し易くなることが判る。セメント系材料の表面に粗面加工を施す方法としては、これらの他に例えば硬化したコンクリートの表面に砂や高圧水等を吹き付け、あるいはワイヤーブラシ等を用いてブラッシングを施す方法や、コンクリート打設時にその表面に遅延剤を散布しておき、コンクリートの躯体部分が硬化した後に遅延剤散布によって生じた未硬化部分に水や空を吹きつけ、あるいはブラッシング等を施して未硬化部分を排除することにより粗面加工を施す方法など考えられる。
【0031】
次に混合セメントを使用したケースについて説明する。まず[写真9]・[写真10]・[写真11]は高炉スラグ微粉末を普通セメントの質量に対して内割りで25%・40%・65%混合した高炉セメントA種・B種・C種に相当する混合セメントを使用したモルタルに箒目を施した供試体BC−1・BC−2・BC−3のケースである。また[写真12]と[写真13]は同じくB種とC種相当の高炉セメント使用モルタルに布目処理を施したBC−4・BC−5のケースである。若干の相違はあるもののいずれもよく緑色海草が付着している様子が判る。これより高炉セメントの種類に基づく海草付着への影響は殆どないものと考えられる。
【0032】
また[写真14]・[写真15]・[写真16]は普通セメントにフライアッシュをセメント質量の内割りで10%・20%・30%混合した場合のフライアッシュセメントA種・B種・C種に相当する混合セメントを使用したモルタルに箒目を施した供試体FA−1・FA−2・FA−3のケースである。フライアッシュ混合率の相違にかかわらず、いずれも緑色海草がよく付着している様子が判る。これよりフライアッシュセメントの種類に基づく海草付着への影響も殆どないものと考えられる。
【0033】
これらのことより一般的に広く使用されている普通ポルトランドセメント・高炉セメントセメント、フライアッシュセメント共に海草付着に対するセメントの種類の影響は殆どなく、むしろセメント硬化体表面の粗度や組織構造が海草付着に大きく影響することが考えられる。
【0034】
次に普通モルタルの表面に各種の固形物破片をその表面がむき出しになるように埋め込んだケースについて説明する。なお本実験では天然素材の固形物破片として火山礫・粗粒砂岩・安山岩の3種類、ガラス廃棄物の再生品としてガラス発泡骨材、固形廃棄物の破片としてコンクリート破砕物・建築用有孔ブロック・煉瓦の3種類の合計7種類を使用したが、これらの固形物破片の内ガラス発泡骨材と火山礫については先の特願2005−192770の中で提示しているので今回の特許申請の中には含めないものとする。
【0035】
まず[写真17]はモルタル表面に阿蘇火山礫の破片を埋め込んだNG−2のケースである。阿蘇火山礫は多孔質であり大小の空隙や窪みを多く含むため海草の種子が付着し易かったものと考えられ、暴露2.5ヶ月後の供試体には緑色海草がよく付着している様子が判る。また[写真18]は暴露実験場周辺で採取した粗粒砂岩の破片を埋め込んだNG−3のケースであり、また[写真19]は同じく安山岩の破片を埋め込んだNG−4のケースである。これらについても暴露2.5ヶ月後の供試体には緑色海草がよく付着している様子が判る。このような砂岩や安山岩などの自然石表面には目に見えるほど大きな気泡やひび割れは見られないが、その破断面は比較的粗で小さな窪みを多数有するため、現地ではよく緑色海草が付着している様子を見ることができる。これより、このように自然石でも組織が粗くて空隙や窪みの多い岩石であれば海藻が付着しやすいものと考えられる。それゆえ火山礫や砂岩・安山岩などの他に凝灰岩なども海草付着のための素材として使用可能と考えられる。
【0036】
[写真20]はガラス発泡骨材を埋め込んだGG−2のケースである。このケースについても緑色海草がよく付着している様子が判る。また[写真21]はコンクリート破砕物を埋め込んだRG−1のケースであり、緑色海草がよく付着している様子が判る。これはコンクリート破砕物の破断面が粗で凹凸が激しく、またコンクリートには小さな気泡やひび割れを多く含むため、海草種子が付着しやすかったものと考えられる。また[写真22]は建築有孔ブロックの破片を埋め込んだRG−2のケースである。建築用有孔ブロックは透水性が大きくて隙間の多いコンクリートであるため、海草種子が入り込むのに適した空隙や窪みを多く含んでおり、海草付着に適しているものと考えられる。さらに[写真23]はレンガの破片を埋め込んだRG−3のケースである。レンガは粘土質の材料を焼き固めて造ったものであり、その破断面には小さな空隙や窪み・ひび割れ等が比較的多く存在して破断面が粗であるため海草種子が付着しやすかったものと考えられる。これと同様に素焼きの植木鉢や土瓦の破断面も粗で空隙が多いため海草付着に適しているのではないかと考えられる。それ故、空隙やひび割れ等を比較的多く含む粗な破断面を有する粘土質材料であれば表面処理材として使用可能と考えられる。ただし、煉瓦や瓦などはその表面が滑らかで緻密な部分を有するため、その破片をセメント系材料の表面に埋め込む場合には極力平滑な部分がブロック表面に出ないように破断面をむき出しにして埋め込む必要がある。またインターロッキング材や各種の小型ブロックはセメント材料や粘土材料で製造されているものが多く、比較的空隙に富む材料で造られているので同様の目的で使用可能と考えられる。
【0037】
最後に[写真24]・[写真25]・[写真26]は普通モルタルの表面に擬似ひび割れを導入したケースである。[写真24]は軟らかいモルタル中にブリキ板で和紙を押し込んで導入した幅約0.3mm・深さ約40mmの疑似ひび割れを有するAC−1であり、また[写真25]は軟らかいモルタル中にグリ−スを薄く塗ったプラスチック板を押し込んで導入した幅約1mm・深さ約40mmの疑似ひび割れを有するAC−2、そして[写真26]は硬化したモルタルの表面に電動カッターで幅約3mm・深さ約40mmのU字溝を導入したAC−3のケースである。これらのケースではいずれも擬似ひび割れや溝に沿って筋状に海草が付着して海草が成長しているのが判る。このように比較的幅の狭い擬似ひび割れや溝をブロック表面に多数導入すれば、海草種子がひび割れや溝に落ち込んで発芽するため粗面加工を施した場合と同様に海草付着に効果があると考えられる。
【0038】
以上の観察結果より、セメント系材料で造られたブロックまたは構造物に対する海草付着の条件は、その表面が粗くて起伏に富み、海草の種子が定着するに必要な空隙や窪みあるいは起伏に富む粗な表面構造を有するものであればよく、必ずしもガラス発泡骨材や軽石のような極端な多孔質材料を使用しなくてもよいものと考えられる。そこで海水中に設置または敷設するセメント系材料からなるブロックや構造物の表面を何らかの方法で粗面処理を施す方法か、または内部空隙の多い固形廃棄物や粗な表面構造を有する自然石等の破片を用いてその表面がむき出しになるように埋め込む方法で表面処理を行えば海藻が付着し易いブロックや構造物を製造可能と考えられる。[図5]はこのようにして造られたブロックを藻場や人工漁礁に適用した場合の魚介類の生息環境に関するイメージ図を示している。▲6▼藻場用ブロックや▲7▼漁礁用ブロックには海草が繁茂し、その周辺には大小多数の魚介類が生息している様子を示している。
【図面および写真の簡単な説明】
【図面】
【0039】
【図1】
板状体断面の一例
【図2】
ブロック表面への板状体取り付け方法の一例
【図3】
板状体断面の種類
【図4】
ブロック表面への固形物破片の直接埋め込みの一例
【図5】
表面処理を施したブロックによる藻場および人工漁礁のイメージ図
【写真】
【写真1】
褐色海草が繁茂する天然漁礁の一例
【写真2】
緑色海草が繁茂する天然漁礁の一例
【写真3】
ひび割れや摂理の発達した岩礁に付着する海草の一例
【写真4】
海草の繁茂する天然漁礁の岩陰に産み付けられた魚介類の卵
【写真5】
無処理の供試体NP−1(海草がほとんど付着していない)
【写真6】
普通セメントを使用した布目仕上げの供試体NP−2(緑色海草がよく付着している)
【写真7】
普通セメントを使用した箒目仕上げの供試体NP−3(緑色海草がよく付着している)
【写真8】
普通セメントを使用した気泡モルタル仕上げの供試体NP−4(緑色海草がよく付着している)
【写真9】
A種高炉セメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体BC−1(緑色海草がよく付着している)
【写真10】
B種高炉セメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体BC−2(緑色海草がよく付着している)
【写真11】
C種高炉セメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体BC−3(緑色海草がよく付着している)
【写真12】
B種高炉セメント(相当)を使用し布目仕上げを施した供試体BC−4(緑色海草がよく付着している)
【写真13】
C種高炉セメント(相当)を使用し布目仕上げを施した供試体BC−5(緑色海草がよく付着している)
【写真14】
A種フライアッシュセメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体FA−1(緑色海草がよく付着している)
【写真15】
B種フライアッシュセメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体FA−2(緑色海草がよく付着している)
【写真16】
C種フライアッシュセメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体FA−3(緑色海草がよく付着している)
【写真17】
普通セメントを使用し火山礫を表面に埋め込んだ供試体NG−2(緑色海草がよく付着している)
【写真18】
普通セメントを使用し粗粒砂岩を表面に埋め込んだ供試体NG−3(緑色海草がよく付着している)
【写真19】
普通セメントを使用し安山岩を表面に埋め込んだ供試体NG−4(緑色海草がよく付着している)
【写真20】
普通セメントを使用しガラス発泡骨材を表面に埋め込んだ供試体GG−2(緑色海草がよく付着している)
【写真21】
普通セメントを使用しコンクリート破砕物を表面に埋め込んだ供試体RG−1 (緑色海草がよく付着している)
【写真22】
普通セメントを使用し建築用有孔ブロック破片を表面に埋め込んだ供試体RG−2(緑色海草がよく付着している)
【写真23】
普通セメントを使用し煉瓦の破片を表面に埋め込んだ供試体RG−3(緑色海草がよく付着している)
【写真23】
普通セメントを使用し煉瓦の破片を表面に埋め込んだ供試体RG−3(緑色海草がよく付着している)
【写真24】
普通セメントを使用し表面に幅0.3mm×深さ40mmの疑似ひび割れを設けた供試体AC−1(緑色海草がよく付着している)
【写真25】
普通セメントを使用し表面に幅約1mm×深さ40mmの疑似ひび割れを設けた供試体AC−2(疑似ひび割れに沿って緑色海草が付着している)
【写真26】
普通セメントを使用し表面に幅約3mm×深さ40mmの溝を設けた供試体AC−3(溝に沿って緑色海草が付着している)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海洋環境下における人工的な藻場や人工漁礁の構築による魚介類の生息環境保全工法に関するものである。
【0002】
近年、種々の社会的要因に基づく環境破壊が進行する中、沿岸部海域における魚介類の減少が顕在化しており海洋資源の枯渇が懸念されている。このような社会的背景にあって沿岸海域における環境保全が重要視されるようになっており、魚介類の生息環境保全が急務となっている。
【0003】
魚介類の多くは弱肉強食の世界にあり、稚魚を含む小魚の多くは岩陰や海草などの陰に身を潜めて生息し、成長するに従って行動範囲を広げて大きくなる。魚介類の多くは岩陰や海草に卵を産み付け、孵化・繁殖するため岩陰の多い場所や海草などが繁茂する場所には魚介類が豊富といわれている。また海草等の水生植物の多くは水中から養分を吸収して成長するため水生植物が繁茂する水域では水質浄化が盛んであり、環境保全に大いに寄与している。
【0004】
しかしながら海岸・海中構造物の大部分を占めるコンクリート構造物にあっては、その水面下に位置する部分において海草が付着して繁茂している例を見ることは少ない。これはコンクリート表面が滑らかで空隙や凹凸が少ない上に波や水の流れによる水の移動で海草の種子がコンクリート表面に付着し難い状況にあるためと考えられる。
【0005】
そこで海水に接している部分のコンクリート構造物を海草が付着し易いように改善するために、海水面下に設置する人工漁礁や藻場のブロック、防波堤や消波堤などの根固めブロックや消波ブロック、あるいは堤防や突堤、岸壁、ドックなど海岸・海洋構造物自身の海水面下に位置する部分に対して、その表面に海草の種子が付着し定着し易いようにするための表面処理工法が必要と考えられる。
【背景技術】
【0006】
近年コンクリート業界ではポーラスコンクリートを用いたコンクリートへの植物の植生技術[参考文献1]が普及している。またこのポーラスコンクリートを海水中に晒して海草付着に関する実験や藻場へ適用する研究[参考文献2]、[参考文献3]も行われている。
参考文献1:玉井元治、特集*緑とコンクリート/各論[緑とコンクリート]コンクリート材料、コンクリート工学、Vol.32,No.11,pp.64−69,1994
参考文献2:大谷敏広、他3名、藻場復元用ポーラスコンクリートへの産業副産物の適用性に関する研究、第57回セメント技術大会講演要旨、pp.256−257,2003.4
参考文献3:武田浩二、他2名、産業副産物を活用した藻場復元用ポーラスコンクリートの開発、第59回セメント技術大会講演要旨、pp.228−229,2005.4
【0007】
このポーラスコンクリートはその中に連続性の大きな空隙を有するため、透水性が大きく、河川や田んぼの周辺など水分の多い場所で使用すれば、その空隙に水と土粒子が入り込んで植物がコンクリート中で根を張ることも可能である。そのため、このポーラスコンクリートを陸上で使用すれば、従来の護岸工事のようにコンクリートをむき出しにすることなく、その表面を緑草で覆うことも可能である。またこれを海に適用すればポーラスコンクリートに海草が付着し易いといわれている。
【0008】
このようにポーラスコンクリートを応用したエコ・コンクリートは、従来考えられなかった植物とコンクリートとの結びつきを可能にしたという点で画期的である。しかしながら、ポーラスコンクリートは粗骨材の表面を薄いセメントペーストの幕で覆って固めただけのものであり、隣接する粗骨材同士がその薄い幕を通して互いに結合している構造に過ぎない。そのため強度が弱く、大きな荷重が作用する構造物や流れの激しい場所あるいは波の荒い場所などに設置するブロックや構造物においては耐久性に問題があり、長期にわたる安定的な使用は期待できない。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はポーラスコンクリートのような強度や耐久性に乏しい材料ではなく、強度や耐久性に優れた通常のコンクリートを用いてその表面を海草の種子が付着し易いように加工するところに特徴がある。このように表面処理を施したブロックまたは構造物を海水中に設置すれば藻場の形成が容易となり、また海草の繁茂する人工漁礁の構築も可能になるものと考えられる。
【0010】
魚介類の中には海草を主食とするものも少なからず生息しており、また海草が繁茂すれば海水の浄化にも繋がるので植物性プランクトンや動物性のプランクトンの増殖にも繋がることが考えられる。そこで本方法を用いれば魚介類の生息環境が改善され、ひいては魚介類の自然増殖が可能になるものと考えられる。[写真1]および[写真2]は大潮の干潮時に露出した天然の岩礁に付着する海草類の繁茂状況を示す一例である。また[写真3]は岩礁のひび割れの多い部分にしっかりと根を張って付着している海藻の生育状況を示している。そして[写真4]はこれらの岩礁の陰に産み付けられた魚介類の卵の付着状況を示している。これより、このような場所では魚介類の増殖活動が盛んであり、また魚介類も豊富と考えられる。
【0011】
なおこの沿岸海域における魚介類の生息環境保全工法については、先にポーラス材料を使用したコンクリートの表面処理方法について特願2005−192770にて現在特許申請中であるが、これに関連して実験を続けた結果、ポーラス材料以外でも同様な効果が得られることが実験的に確認されたので、ここに改めて追加的に特許を申請する次第である。
【0012】
従来の藻場の形成には木くずを固めた固形物を用いる方法や炭素繊維などの高価な材料を使用したロープやネットを用いて水生植物を増殖させる方法が用いられている。また人工漁礁においても一般的にその表面が滑らかなコンクリート製の漁礁ブロックを海底に設置しているため海草が付着し難く、魚介類がこれになじむまでにかなりの時間がかかるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明ではこのような高価な材料による藻場の形成や海草の付着し難いコンクリートブロックによる人工漁礁の構築ではなく、より安価な方法を用いて海水中における海草類の生育環境を整え、海草が繁茂する藻場や漁礁を人工的に造り出して魚介類の生息環境保全に寄与することを目的としている。具体的には海水中に敷設するブロックや構造物の表面を海草の種子が付着し易いようにするために、セメント系材料からなるブロックや構造物の表面を粗な表面に加工し、またはブロックや構造物の表面に起伏に富む粗な表面構造を有する材料をその表面がむき出しになるように埋め込んでブロックや構造物を製造する。そしてこれを海水中に設置し、魚介類の生息環境を保全しようとするものである。
【0014】
このような目的でセメント系材料に表面処理を施す方法として次のような方法が考えられる。なおここでいうセメント系材料とは建設材料として一般的に広く用いられている各種のセメントを使用したコンクリート、モルタル、またはセメントペースト等を指すものとする。
1.硬化したセメント系材料の表面に砂吹き付けや高圧水吹きつけを施し、またはワイヤーブラシ等を用いてブラッシングを施す方法
2.硬化前のセメント系材料の表面に目が粗くて吸湿性に富む布状体や網状体を押し当てておき、セメント系材料が凝結・硬化した後にこれを剥ぎ取る方法
3.超固練りのセメント系材料で表面部を構成し、その表面部を空隙の多い構造とする方法
4.凝結・硬化前のセメント材料の表面に水や空気を吹き付け、あるいは箒等を用いて箒目を立ててその表面部を粗に仕上げる方法
5.硬化前のセメント系材料の表面に遅延剤を散布しておき、セメント系材料の躯体部分が硬化した後に、遅延剤散布によって生じた表面部の未硬化層に水または空気を吹き付けて未硬化部分を排除して粗な表面を形成する方法
6.硬化前のセメント硬化体の表面に粗粒のアルミニウム粉末(約0.05〜2mm程度のもの)を散布してその表面部に薄く分散させ、またはアルミニウム粉末を混合したセメント系材料をブロックまたは構造物表面に薄く塗りつけておき、そのセメント系材料の硬化に伴ってアルミニウム粉末から発生する水素ガスによる気泡痕よってセメント系材料の表面を粗に加工する方法
7.セメント系材料の表面に適当な方法を用いて比較的幅の狭い溝または疑似ひび割れ(幅約0.1〜5mm程度)を導入する方法
8.硬化前の軟らかいセメント系材料の表面に、窪みや空隙・ひび割れ等を多く含む粗な表面構造を有する固形物破片を、その表面がむき出しになるように埋め込みまたは貼り付ける方法
なお、ここでいう固形物破片とは煉瓦や瓦・インターロッキングブロック・建築用有孔ブロック・コンクリート塊等の廃棄物破片や火山礫・砂岩・安山岩・凝灰岩など粗な表面構造を有する自然石破片を指している。
【0015】
海草の多くは海水中に露出する岩肌や貝殻に付着して根を下ろし、海水中から養分を吸収して成長するのが大部分である。それゆえ、陸上における植物のように地中へ根を張って地中の水分や養分を吸収すう必要は無く、波や水の流れに対して自分の位置を保つだけのしっかりした根がかりがあればよいと思われる。そこで、コンクリート表面が粗面となるようにその表面を直接処理し、または表面粗度が大きくて起伏に富み窪みや空隙を多く含む材料をコンクリート表面に埋め込んで海草の種子が入り込み易い表面構造を用意すれば、コンクリート表面への海草付着も可能になると考えられる。
【0016】
自然界における岩礁への海草の付着状況を観察すると、[写真1]から[写真3]から判るように比較的大きな海草は砂岩の積層に沿う割れ目や摂理、風化によるひび割れの多い部分にしっかりと根をおろして付着しており、また草丈の小さいものは岩石表面を覆うように一面に付着しているのを見ることができる。しかしながら表面が滑らかでひび割れや摂理の少ない部分にはほとんど付着していない。これより、天然の鉱物素材でもその表面が起伏に富む粗な表面構造を有しているものであれば海草種子が付着して根を下ろすことも可能と考えられる。
【0017】
このような自然界の観察結果を基に、海草が付着し易い表面構造としてセメント硬化体の表面に布目・箒目・疑似ひび割れ等を設ける方法とセメント系硬化体の表面に組な表面構造を有する煉瓦等の破片や各種のセメント系固形廃棄物破片あるいは砂岩等の自然石破片を埋め込む方法について暴露実験を行い、その海草付着効果を検証した。
【0018】
ところで社会は今人間社会と自然環境との調和を目指す持続可能な循環型社会の構築に向けて世界中が努力している。本発明は魚介類の生息環境保全を目的とした技術であるが、同時に煉瓦や瓦・インターロッキングブロック・建築用有孔ブロック・コンクリート等の廃棄物(以後これを固形廃棄物と呼ぶ)を再利用する上でも有意義であり、社会への貢献度は大きいと考えられる。以下、図面および写真を基に本発明の実施例について具体的に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本実験における供試体製造に使用したセメントは普通ポルトランドセメント(以後これを普通セメントと呼ぶ)であるが、セメントの種類が海草付着に及ぼす影響を調査するために、普通セメントに粉末度約4000cm2/gの高炉スラグ微粉末と粉末度約3000cm2/gのフライアッシュを混合し、市販の高炉セメント(A種・B種・C種)およびフライアッシュセメント(A種・B種・C種)に相当する手製の混合セメントとして使用した。なおセメントの種類に対する高炉スラグ微粉末およびフライアッシュ混合率は質量比で次の通りである。
普通セメント:普通ポルトランドセメント100%
高炉セメント
A種相当:普通セメント75%、高炉スラグ微粉末25%の混合体
B種相当:普通セメント60%、高炉スラグ微粉末40%の混合体
C種相当:普通セメント35%、高炉スラグ微粉末65%の混合体
フライアッシュセメント
A種相当:普通セメント90%、高炉スラグ微粉末10%の混合体
B種相当:普通セメント80%、高炉スラグ微粉末20%の混合体
C種相当:普通セメント70%、高炉スラグ微粉末30%の混合体
【表1】
【0020】
本実験では予め[表1]に示すようにセメントの種類と表面構造の違いによる22種類の板状体を作成し、これをコンクリートブロックの表面に埋め込んで供試体を作成した。なお板状体は全てモルタルを用いて製作した。[図1]A・Bは今回使用した2タイプの板状体断面を示しており、Aはモルタル板の上面に布目や箒目などの粗面加工を施したケースであり、Bはモルタル板の上面に固形物破片を埋め込んだケースである。
【0021】
今回の実験で使用した板状体の種類は大きく分けて次の2グループに分かれる。グループIはセメントの種類の影響と粗面加工の種類の影響を見るためのもので、比較の基準となる普通セメントを使用した無処理の板状体もこのグループに含まれる。また、粗面加工は布目仕上げと箒目仕上げとした。グループIIは普通セメントを使用したモルタル板の表面に固形廃棄物破片や暴露実験場付近で収集した自然石の破片を埋め込んだものである。
【0022】
これらの板状体は[図2]に示すようにコンクリート打設時にブロック表面に埋め込んで取り付けた。なおこの板状体▲1▼の断面は必ずしも台形状でなくてもよく、[図3]に示すような種々の基本形状が考えられ、またこの他にもこれらを組み合わせた非対称断面や変形断面が考えられる。また板状体の平面形状についても必ずしも正方形や長方形でなくてもよく、円形、台形、等辺多角形、不等辺多角形など種々考えられるが、これらの断面形状や平面形状については実施に当たって適宜選択してよい。
【0023】
ブロック表面への固形物破片の埋め込み方法としては[図2]のように予め板状体▲1▼のモルタル▲3▼中に固形物破片▲2▼をその表面がむき出しになるように埋め込みまたは貼り付けて製作した板状体を型枠▲4▼中に打設したフレッシュコンクリート▲5▼の表面に埋め込む方法と、[図4]のように形枠▲4▼中に打設したフレッシュコンクリート▲5▼の表面に直接固形物破片▲3▼をばらまき、その表面の一部がむき出しになるように埋め込も方法がある。この他にも板状体をブロック表面に取り付ける方法は種々考えられるが、これらについては先に提出した特願2005−192770の中に示しているのでここでは省略する。
【発明の効果】
【0024】
今回の暴露実験は平成17年11月初旬の大潮における干潮時に熊本県宇城市三角町の海岸に設置して行われた。本実験では表面処理方法の異なる各供試体を製作し、海水に浸す前と暴露期間2.5ヶ月後で写真撮影を行い、セメントの種類や表面処理方法の違いによる海草付着状況を比較検討した。なお暴露実験におけるブロック供試体の設置については、大潮の干潮時における水深が約30cm程度となるような場所にほぼ同程度の深さで設置した。
【0025】
[写真5]〜[写真26]に示す各2枚の写真はA(左側)が暴露前供試体の表面構造、B(右側)が暴露後約2.5ヵ月におけるブロックへの海草付着状況を示している。以下[表1]の順番に沿って説明する。
【0026】
[写真5]は普通セメントを使用したモルタル(以後これを普通モルタルと呼ぶ)で製作した無処理の板状体を取り付けた供試体NP−1を示している。暴露前供試体の表面は緻密で平滑であるため暴露後2.5ヶ月においてもその表面(上面)には海草が殆ど付着していない。このように無処理のセメント硬化体表面には海草が付着し難いことが判る。これに対して以下の種々の表面処理を施した供試体上面には緑色海草がよく付着している。
【0027】
まず[写真6]は普通モルタルの表面に麻布を用いて布目を施したNP−2のケースである。暴露2.5ヶ月後の供試体には緑色海草がよく付着している様子が判る。これはモルタル表面に貼り付けた麻布を剥ぎ取る際にモルタル表面に麻布の繊維に基づく細かい窪みが多数残るため、海藻の種子がその中に入り込んで定着し発芽したためと考えられる。
【0028】
[写真7]は普通モルタル表面に竹箒で箒目を施したNP−3のケースである。この供試体にも暴露2.5ヶ月後には緑色海草がよく付着していることが判る。これはモルタル表面に箒目を施すことによって細かな凹凸が多数できるので、その窪みに海草の種子が入り込んで定着したためと考えられる。
【0029】
[写真8]は粗粒のアルミニウム粉末を普通モルタル表面部に混入して発生する気泡を利用してモルタル表面に多数の細かい気泡痕を誘発させたNP−4のケースである。このケースにおいても緑色海草がよく付着していることが判る。
【0030】
上記NP−1からNP−4までのケースはいずれも普通モルタルの表面構造の違いによるものであり、NP−1を除いて他のケースは全てモルタル表面に粗面処理を施したものである。このようにセメント系硬化体の表面に何らかの粗面加工を施せば海草種子が定着し易くなることが判る。セメント系材料の表面に粗面加工を施す方法としては、これらの他に例えば硬化したコンクリートの表面に砂や高圧水等を吹き付け、あるいはワイヤーブラシ等を用いてブラッシングを施す方法や、コンクリート打設時にその表面に遅延剤を散布しておき、コンクリートの躯体部分が硬化した後に遅延剤散布によって生じた未硬化部分に水や空を吹きつけ、あるいはブラッシング等を施して未硬化部分を排除することにより粗面加工を施す方法など考えられる。
【0031】
次に混合セメントを使用したケースについて説明する。まず[写真9]・[写真10]・[写真11]は高炉スラグ微粉末を普通セメントの質量に対して内割りで25%・40%・65%混合した高炉セメントA種・B種・C種に相当する混合セメントを使用したモルタルに箒目を施した供試体BC−1・BC−2・BC−3のケースである。また[写真12]と[写真13]は同じくB種とC種相当の高炉セメント使用モルタルに布目処理を施したBC−4・BC−5のケースである。若干の相違はあるもののいずれもよく緑色海草が付着している様子が判る。これより高炉セメントの種類に基づく海草付着への影響は殆どないものと考えられる。
【0032】
また[写真14]・[写真15]・[写真16]は普通セメントにフライアッシュをセメント質量の内割りで10%・20%・30%混合した場合のフライアッシュセメントA種・B種・C種に相当する混合セメントを使用したモルタルに箒目を施した供試体FA−1・FA−2・FA−3のケースである。フライアッシュ混合率の相違にかかわらず、いずれも緑色海草がよく付着している様子が判る。これよりフライアッシュセメントの種類に基づく海草付着への影響も殆どないものと考えられる。
【0033】
これらのことより一般的に広く使用されている普通ポルトランドセメント・高炉セメントセメント、フライアッシュセメント共に海草付着に対するセメントの種類の影響は殆どなく、むしろセメント硬化体表面の粗度や組織構造が海草付着に大きく影響することが考えられる。
【0034】
次に普通モルタルの表面に各種の固形物破片をその表面がむき出しになるように埋め込んだケースについて説明する。なお本実験では天然素材の固形物破片として火山礫・粗粒砂岩・安山岩の3種類、ガラス廃棄物の再生品としてガラス発泡骨材、固形廃棄物の破片としてコンクリート破砕物・建築用有孔ブロック・煉瓦の3種類の合計7種類を使用したが、これらの固形物破片の内ガラス発泡骨材と火山礫については先の特願2005−192770の中で提示しているので今回の特許申請の中には含めないものとする。
【0035】
まず[写真17]はモルタル表面に阿蘇火山礫の破片を埋め込んだNG−2のケースである。阿蘇火山礫は多孔質であり大小の空隙や窪みを多く含むため海草の種子が付着し易かったものと考えられ、暴露2.5ヶ月後の供試体には緑色海草がよく付着している様子が判る。また[写真18]は暴露実験場周辺で採取した粗粒砂岩の破片を埋め込んだNG−3のケースであり、また[写真19]は同じく安山岩の破片を埋め込んだNG−4のケースである。これらについても暴露2.5ヶ月後の供試体には緑色海草がよく付着している様子が判る。このような砂岩や安山岩などの自然石表面には目に見えるほど大きな気泡やひび割れは見られないが、その破断面は比較的粗で小さな窪みを多数有するため、現地ではよく緑色海草が付着している様子を見ることができる。これより、このように自然石でも組織が粗くて空隙や窪みの多い岩石であれば海藻が付着しやすいものと考えられる。それゆえ火山礫や砂岩・安山岩などの他に凝灰岩なども海草付着のための素材として使用可能と考えられる。
【0036】
[写真20]はガラス発泡骨材を埋め込んだGG−2のケースである。このケースについても緑色海草がよく付着している様子が判る。また[写真21]はコンクリート破砕物を埋め込んだRG−1のケースであり、緑色海草がよく付着している様子が判る。これはコンクリート破砕物の破断面が粗で凹凸が激しく、またコンクリートには小さな気泡やひび割れを多く含むため、海草種子が付着しやすかったものと考えられる。また[写真22]は建築有孔ブロックの破片を埋め込んだRG−2のケースである。建築用有孔ブロックは透水性が大きくて隙間の多いコンクリートであるため、海草種子が入り込むのに適した空隙や窪みを多く含んでおり、海草付着に適しているものと考えられる。さらに[写真23]はレンガの破片を埋め込んだRG−3のケースである。レンガは粘土質の材料を焼き固めて造ったものであり、その破断面には小さな空隙や窪み・ひび割れ等が比較的多く存在して破断面が粗であるため海草種子が付着しやすかったものと考えられる。これと同様に素焼きの植木鉢や土瓦の破断面も粗で空隙が多いため海草付着に適しているのではないかと考えられる。それ故、空隙やひび割れ等を比較的多く含む粗な破断面を有する粘土質材料であれば表面処理材として使用可能と考えられる。ただし、煉瓦や瓦などはその表面が滑らかで緻密な部分を有するため、その破片をセメント系材料の表面に埋め込む場合には極力平滑な部分がブロック表面に出ないように破断面をむき出しにして埋め込む必要がある。またインターロッキング材や各種の小型ブロックはセメント材料や粘土材料で製造されているものが多く、比較的空隙に富む材料で造られているので同様の目的で使用可能と考えられる。
【0037】
最後に[写真24]・[写真25]・[写真26]は普通モルタルの表面に擬似ひび割れを導入したケースである。[写真24]は軟らかいモルタル中にブリキ板で和紙を押し込んで導入した幅約0.3mm・深さ約40mmの疑似ひび割れを有するAC−1であり、また[写真25]は軟らかいモルタル中にグリ−スを薄く塗ったプラスチック板を押し込んで導入した幅約1mm・深さ約40mmの疑似ひび割れを有するAC−2、そして[写真26]は硬化したモルタルの表面に電動カッターで幅約3mm・深さ約40mmのU字溝を導入したAC−3のケースである。これらのケースではいずれも擬似ひび割れや溝に沿って筋状に海草が付着して海草が成長しているのが判る。このように比較的幅の狭い擬似ひび割れや溝をブロック表面に多数導入すれば、海草種子がひび割れや溝に落ち込んで発芽するため粗面加工を施した場合と同様に海草付着に効果があると考えられる。
【0038】
以上の観察結果より、セメント系材料で造られたブロックまたは構造物に対する海草付着の条件は、その表面が粗くて起伏に富み、海草の種子が定着するに必要な空隙や窪みあるいは起伏に富む粗な表面構造を有するものであればよく、必ずしもガラス発泡骨材や軽石のような極端な多孔質材料を使用しなくてもよいものと考えられる。そこで海水中に設置または敷設するセメント系材料からなるブロックや構造物の表面を何らかの方法で粗面処理を施す方法か、または内部空隙の多い固形廃棄物や粗な表面構造を有する自然石等の破片を用いてその表面がむき出しになるように埋め込む方法で表面処理を行えば海藻が付着し易いブロックや構造物を製造可能と考えられる。[図5]はこのようにして造られたブロックを藻場や人工漁礁に適用した場合の魚介類の生息環境に関するイメージ図を示している。▲6▼藻場用ブロックや▲7▼漁礁用ブロックには海草が繁茂し、その周辺には大小多数の魚介類が生息している様子を示している。
【図面および写真の簡単な説明】
【図面】
【0039】
【図1】
板状体断面の一例
【図2】
ブロック表面への板状体取り付け方法の一例
【図3】
板状体断面の種類
【図4】
ブロック表面への固形物破片の直接埋め込みの一例
【図5】
表面処理を施したブロックによる藻場および人工漁礁のイメージ図
【写真】
【写真1】
褐色海草が繁茂する天然漁礁の一例
【写真2】
緑色海草が繁茂する天然漁礁の一例
【写真3】
ひび割れや摂理の発達した岩礁に付着する海草の一例
【写真4】
海草の繁茂する天然漁礁の岩陰に産み付けられた魚介類の卵
【写真5】
無処理の供試体NP−1(海草がほとんど付着していない)
【写真6】
普通セメントを使用した布目仕上げの供試体NP−2(緑色海草がよく付着している)
【写真7】
普通セメントを使用した箒目仕上げの供試体NP−3(緑色海草がよく付着している)
【写真8】
普通セメントを使用した気泡モルタル仕上げの供試体NP−4(緑色海草がよく付着している)
【写真9】
A種高炉セメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体BC−1(緑色海草がよく付着している)
【写真10】
B種高炉セメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体BC−2(緑色海草がよく付着している)
【写真11】
C種高炉セメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体BC−3(緑色海草がよく付着している)
【写真12】
B種高炉セメント(相当)を使用し布目仕上げを施した供試体BC−4(緑色海草がよく付着している)
【写真13】
C種高炉セメント(相当)を使用し布目仕上げを施した供試体BC−5(緑色海草がよく付着している)
【写真14】
A種フライアッシュセメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体FA−1(緑色海草がよく付着している)
【写真15】
B種フライアッシュセメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体FA−2(緑色海草がよく付着している)
【写真16】
C種フライアッシュセメント(相当)を使用し箒目仕上げを施した供試体FA−3(緑色海草がよく付着している)
【写真17】
普通セメントを使用し火山礫を表面に埋め込んだ供試体NG−2(緑色海草がよく付着している)
【写真18】
普通セメントを使用し粗粒砂岩を表面に埋め込んだ供試体NG−3(緑色海草がよく付着している)
【写真19】
普通セメントを使用し安山岩を表面に埋め込んだ供試体NG−4(緑色海草がよく付着している)
【写真20】
普通セメントを使用しガラス発泡骨材を表面に埋め込んだ供試体GG−2(緑色海草がよく付着している)
【写真21】
普通セメントを使用しコンクリート破砕物を表面に埋め込んだ供試体RG−1 (緑色海草がよく付着している)
【写真22】
普通セメントを使用し建築用有孔ブロック破片を表面に埋め込んだ供試体RG−2(緑色海草がよく付着している)
【写真23】
普通セメントを使用し煉瓦の破片を表面に埋め込んだ供試体RG−3(緑色海草がよく付着している)
【写真23】
普通セメントを使用し煉瓦の破片を表面に埋め込んだ供試体RG−3(緑色海草がよく付着している)
【写真24】
普通セメントを使用し表面に幅0.3mm×深さ40mmの疑似ひび割れを設けた供試体AC−1(緑色海草がよく付着している)
【写真25】
普通セメントを使用し表面に幅約1mm×深さ40mmの疑似ひび割れを設けた供試体AC−2(疑似ひび割れに沿って緑色海草が付着している)
【写真26】
普通セメントを使用し表面に幅約3mm×深さ40mmの溝を設けた供試体AC−3(溝に沿って緑色海草が付着している)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系材料の表面に布目・網目・箒目等を施しまたは超固練りのセメント系材料を用いて表面部を構成してその表面部を粗に加工し、あるいはセメント系材料の表面に細長い溝を複数設けるなどの加工を施してなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項2】
硬化前または硬化後の適当な時期にセメント系材料の表面に砂、水または空気等を吹きつけ、あるいはブラッシング等を施してその表面を粗に加工してなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項3】
硬化前のセメント系材料の表面に遅延剤を散布しておき、後に遅延剤散布によって発生した表面部の未硬化部分に水・空気等を吹きつけあるいはブラッシング等を施してその表面を粗に加工してなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項4】
空隙や窪みを多く含む粗な表面構造を有する材料で、煉瓦・土瓦・植木鉢などの粘土系材料の破片、建築用有孔ブロック・インターロッキングブロック・セメント瓦・コンクリート塊などのセメント系廃棄物の破片、あるいは砂岩・安山岩・凝灰岩など組織の粗い自然石の破片等を用いてその表面がむき出しになるようにセメント系材料の表面に埋め込みまたは貼り付けてなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4におけるセメント系材料の表面加工法を用いて製造した板状体をセメント系材料からなるブロックまたは構造物の表面に埋め込みまたは貼り付けてなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のブロックまたは構造物を一部または全部に用いてなる人工漁礁および藻場
【請求項1】
セメント系材料の表面に布目・網目・箒目等を施しまたは超固練りのセメント系材料を用いて表面部を構成してその表面部を粗に加工し、あるいはセメント系材料の表面に細長い溝を複数設けるなどの加工を施してなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項2】
硬化前または硬化後の適当な時期にセメント系材料の表面に砂、水または空気等を吹きつけ、あるいはブラッシング等を施してその表面を粗に加工してなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項3】
硬化前のセメント系材料の表面に遅延剤を散布しておき、後に遅延剤散布によって発生した表面部の未硬化部分に水・空気等を吹きつけあるいはブラッシング等を施してその表面を粗に加工してなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項4】
空隙や窪みを多く含む粗な表面構造を有する材料で、煉瓦・土瓦・植木鉢などの粘土系材料の破片、建築用有孔ブロック・インターロッキングブロック・セメント瓦・コンクリート塊などのセメント系廃棄物の破片、あるいは砂岩・安山岩・凝灰岩など組織の粗い自然石の破片等を用いてその表面がむき出しになるようにセメント系材料の表面に埋め込みまたは貼り付けてなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4におけるセメント系材料の表面加工法を用いて製造した板状体をセメント系材料からなるブロックまたは構造物の表面に埋め込みまたは貼り付けてなるもので、海水中に設置または敷設するためのブロックまたは構造物
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5のブロックまたは構造物を一部または全部に用いてなる人工漁礁および藻場
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2007−215532(P2007−215532A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−73513(P2006−73513)
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(597066474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(597066474)
【Fターム(参考)】
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