説明

液切り容器

【課題】液体と共に収納した収納物が、柔らかく小さくても、液切りの際壊すことなく外部に排出もせず、液体だけを速やかに排液可能な液切り容器を提供する。
【解決手段】容器本体2の上部開口を密閉する蓋体3に、容器本体2の堰部5cに対応する位置の角部7aに液切り通路を外部に開放するための第1の蓋体部分3aと、容器本体2の別の角部7bに対応する位置に、容器本体2内に通じる通気通路を形成する第2の蓋体部分3bとが設けられ、第1の蓋体部分3aを開くことによってなされる容器本体2内の液体の排出が、第2の蓋体部分3bを開いて外気を容器本体2内に取り込みながら行われるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納物を液体と共に収納し、収納部の使用時に液体を排出して使用する液切り容器に関し、例えば、容器本体内の調味液、塩水、保存液等の浸漬水中に浸漬したウニを、その浸漬水から分離して取り出すことで食膳等に提供可能にするウニの水切り容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生ウニを商品化するため、採取したウニを殻割りして生ウニを取り出し、ピンセット等で内蔵等を取り除きながら良質の生ウニを選別している。この場合に、生ウニをその原形を維持するためミョウバン液などの浸漬水に浸漬した後、十分に水切りし、経木で製作した生ウニ用折箱にフォーク等を使って並べて収納している。また、この生ウニ用折箱を積み重ねた状態で出荷している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この折箱を用いる従来技術にあっては、生ウニの下面が折箱に接しているために水分が折箱に吸収されるし、表面側は乾いてしまうことから早期に水分が失われて固くなり、旨味が損なわれてしまうという欠点がある。
【0004】
一方、これに対して、ウニを浸漬する浸漬水を収容しうる透明な容器本体と、この容器本体に開閉自在に取り付けられる蓋体と、前記浸漬水を水切りすることができ且つウニが抜け出ることのない径の小孔を有する水切り用中仕切具とからなるウニ収納容器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。このウニ収納容器では、前記蓋体を容器本体から取り外し、この容器本体を前記水切り用中仕切具とともに反転させてこの水切り用中仕切具を介して浸漬水を排出する。これにより、浸漬水に浸漬されていたウニを前記水切り用の中仕切具に載置させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−104570号公報
【特許文献2】特開2003−128139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような水切り用中仕切具を持つウニ収納容器にあっては、容器本体を逆さにして水切りするために水切り用中仕切具が必要になり、これを収納容器や蓋体とは別に用意するため、全体が三重構造になり、コスト高になるという不都合があった。また、ウニを取り出す際に蓋体を容器本体から取り外すという作業のほかに、容器本体内から水切りされたウニを載せた水切り用中仕切具を取り外すという煩わしい作業があり、取り扱いが面倒であるという不都合があった。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題点を解消するものであり、液体と共に収納した収納物が、柔らかく小さくても、液切りの際壊すことなく外部に排出もせず、液体だけを速やかに排液できる液切り容器を提供することを目的とする。例えば、鮮度を保った状態にて浸漬水中に浸漬されたウニの水切りを速やかに、しかもウニに傷を付けずに浸漬水から分離して容易に取り出すことができ、これを簡単かつ安価な構成にて実現できるウニの水切り容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明にかかる液切り容器は、底部と側壁部とからなり上部が開口する収納物を液体と共に収納する容器本体と、該容器本体の上部開口に着脱可能に設けられ、該上部開口を密閉する蓋体と、よりなり、前記容器本体および蓋体は、それぞれ合成樹脂材で一体成形され、前記容器本体は、側壁の一部を中心にその左右方向に延びる広めの領域に亘って前記側壁部が底部より連続して所定高さに立ち上がる立ち上がり部と、この立ち上がり部に連続しかつ前記領域における前記立ち上がり部の延設方向と交差する方向に略水平に延びる堰部とを有し、前記蓋体は、前記容器本体の前記堰部に対応する位置に、前記堰部に略対応する形状であって、閉蓋時に該堰部との間に所定の間隙を形成する間隙形成部を有し、該堰部と間隙形成部との間の間隙が液体を排液する液切り通路となり、前記容器本体の上部開口を密閉する前記蓋体には、前記堰部に対応する位置の外周側に前記堰部と間隙形成部との間隙で形成する液切り通路を外部に開放するための第1の蓋体部分と、前記容器本体の前記第1の蓋体部分以外の別の外周部近傍位置に、前記容器本体に通じる通気通路を形成する第2の蓋体部分とが設けられ、前記第1の蓋体部分を開くことによってなされる前記容器本体内の液体の排出が、前記第2の蓋体部分を開いて外気を容器本体内に取り込みながら行われるようにしたことを特徴とする。
【0009】
この構成により、開蓋状態の容器本体内に液体および収納物を収納して、この収納物を液体に浸漬した状態とした後、蓋体で容器本体の上部開口を、例えば、熱シールによって密封することで、収納物を液体内に傷めることなく鮮度を保ちながら保持でき、出荷、運搬、陳列を可能にし、市場や消費者に提供できる。
【0010】
一方、容器本体内の液体に浸漬した収納物を食卓に出す際や調理する場合には、容器本体の開口部周縁に、例えば、熱シールされている蓋体のフランジ部に続く前記第1の蓋体部分を剥離して前記外周部(例えば、角部)の一つにおいて容器本体の液切り通路を開放し、容器本体内の前記液体を容器本体外へ速やかに排出するとともに、容器本体の別の部分において前記第2の蓋体部分を剥離して、容器本体内に通じる通気通路を容器本体外へ開放する。これにより、容器本体内には外気がスムースに取り込まれ、容器本体外への液体の排出をよりスムースに行わせる。
【0011】
また、前記堰部と間隙形成部との間の間隙で形成する液切り通路が、前述のように幅広い領域に亘って設けられるため、この間隙を通じて容器本体内から、収納物を損傷しない比較的緩慢な流速で、しかも単位時間当たりの液体の通過量を高めながら、この液体を効率的に容器本体外へ排出することができる。この場合において、前記間隙は収納物の通過を阻止するサイズ、形状であり、従って、前記液体の排出時には収納物の流出は規制される。
【0012】
例えば、ウニの液切り容器であるとすれば、底部と側壁部とからなり上部が開口するウニを浸漬水に浸漬して収納する容器本体と、該容器本体の上部開口に着脱可能に設けられ、該上部開口を密閉する蓋体と、よりなり、
前記容器本体および蓋体は、それぞれ合成樹脂材で一体成形され、
前記容器本体は、一つの角部を中心にその左右方向に延びる広めの領域に亘って前記側壁部が底部より連続して所定高さに立ち上がる立ち上がり部と、この立ち上がり部に連続しかつ前記領域における前記立ち上がり部の延設方向と交差する方向に略水平に延びる堰部とを有し、
前記蓋体は、前記容器本体の前記堰部に対応する位置に、前記堰部に略対応する形状であって、閉蓋時に該堰部との間に所定の間隙を形成する間隙形成部を有し、該堰部と間隙形成部との間の間隙が浸漬水を排水する水切り通路となり、
前記容器本体の上部開口を密閉する前記蓋体には、前記堰部に対応する位置の角部に前記堰部と間隙形成部との間隙で形成する水切り通路を外部に開放するための第1の蓋体部分と、前記容器本体の前記角部以外の別の角部に対応する位置に、前記容器本体に通じる通気通路を形成する第2の蓋体部分とが設けられ、
前記第1の蓋体部分を開くことによってなされる前記容器本体内の浸漬水の排出が、前記第2の蓋体部分を開いて外気を容器本体内に取り込みながら行われるようにする。
【0013】
この構成により、開蓋状態の容器本体内に浸漬水およびウニを収納して、このウニを浸漬水に浸漬した状態とした後、蓋体で容器本体の上部開口を、例えば、熱シールによって密封することで、ウニを浸漬水内に傷めることなく鮮度を保ちながら保持でき、出荷、運搬、陳列を可能にし、市場や消費者に提供できる。
【0014】
また、本発明にかかる液切り容器は、前記容器本体および蓋体は平面視で略四角形状をなし、前記堰部およびこの堰部に対向する前記間隙形成部との間隙が、容器本体内からの収納物の流出を規制しつつ前記液体を排水する液切り通路とされることを特徴とする。この構成により、蓋体のフランジ部に続く前記第1の蓋体部分を開くとともに、これに前後して前記第2の蓋体部分をも開くことで、前記堰部と間隙形成部との間隙を収納物が通過することを規制しながら、容器本体内の液体を、前記間隙を通して速やかに容器本体外に排出することができる。
【0015】
また、本発明にかかる液切り容器は、前記蓋体の天部が周辺部から中心部に向かって低くなるように傾斜または湾曲していることを特徴とする。この構成により、収納物とともに液体を収容した容器本体の開口部を、蓋体によって密着させるように閉蓋する際に、容器本体内の空気をこれの中心部から周辺部、さらには容器本体外へ向かって押し出すこととなる。従って蓋体の密閉後に、容器本体内に空気が残留するのを回避できる。これにより、この空気の残留に伴って発生する液体のにごりの発生を、未然に回避することができる。
【0016】
また、本発明にかかる液切り容器は、前記堰部は、第1の蓋体部分方向に向かう複数の凹凸部が左右方向に亘って並列されてなり、前記間隙形成部は、前記凹凸部に対応する複数の凸凹部からなり、堰部の凹凸部に間隙形成部の凸凹部が間隙を有して嵌入され、該間隙が液切り通路となることを特徴とする。この構成により、前記液体の出口となる左右方向の間隙長(液切り通路の巾の長さ)を大きくとって、この間隙を通過する液体の単位時間当たりの排出量を十分に高めることができ、液体の排出速度を収納物の損傷を招かない速度に維持しながら、容器本体外への液体の排出をさらに効率的に行わせることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の収納物の液切り容器によれば、次のような効果を奏する。
(1)容器本体内に収納物、例えばウニと浸積水(保存液)を入れ、ウニを浸漬水に浸漬した状態で収納し、蓋体で密閉し、この状態でウニを商品として出荷、運搬、陳列等に供することができ、更に消費者に提供することができる。
(2)収納物、例えばウニは、保存液としての浸積水に浸漬した状態で液切り容器内に収納されているので、出荷、運搬の際に揺れや衝撃が発生しても浸積水に護られるので、損傷を確実に防止でき、所定の品質を保持することができる。
(3)鮮度を保持し品質を低下させることなく収納物、例えばウニを収納できると共に、鮮度を保った状態にして浸漬水中に浸漬されたウニの水切りを速やかにでき、しかもウニに傷を付けずに浸積水から分離して容易に取り出すことができる。
(4)蓋体は、天部が蓋体の周辺部から中心部に向かって低くなるように傾斜または湾曲して形成されているので、収納物および液体(例えば、ウニおよび浸積水)を収容した容器本体に蓋体を閉蓋すると、容器本体内の空気を中心部から周辺部、さらには容器本体外へ向かって押し出すことができ、その結果、蓋体の密閉後に、容器本体内に空気が残留するのを回避できる。従って、この空気の残留に伴って発生する液体(浸積水)のにごり現象の発生を防止することができる。
【0018】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態によるウニの水切り容器を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態による開蓋状態のウニの水切り容器を示す斜視図である
【図3】本発明の実施の形態によるウニの水切り容器の要部を示す斜視図である。
【図4】図1に示すA−A線における縦断面図である。
【図5】図1に示すB−B線における縦断面図である。
【図6】図1におけるウニの水切り部による水切り状態を示す説明図である。
【図7】図1における通気部による通気状態を示す説明図である。
【図8】図1におけるウニの水切り容器の使用状態を示す説明図である。
【図9】図1におけるウニの水切り容器による水切り状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態にかかる液切り容器として、ウニの水切り容器の実施の形態を、図1乃至図9を参照して説明する。
【0021】
図1に示す本実施形態のウニの水切り容器1は、上部が開口する容器本体2と、この容器本体2の上部開口に被せる着脱可能な蓋体3とからなる。容器本体2および蓋体3は、それぞれ合成樹脂材、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)で一体成形されている。容器本体2および蓋体3は、透明または半透明の合成樹脂材で形成すると、容器1内を透視できるので好ましい。容器本体2は、底部4と、この底部4の周囲から上方に向かって立ち上がる側壁部5とで構成され、上部が開口する。該側壁部5の上部には段部5aを介し蓋体3の周辺部と接触して該周辺部との間で着脱可能に連結する蓋支持部6が設けられている。
【0022】
この蓋支持部6は、前記段部5aに連続する起立片6a、この起立片6aに連続する水平片6b、この水平片6bに連続する垂下片6cおよびこの垂下片6cに連続するフランジ片6dとからなり、主に水平片6bが蓋体3の周辺部と接触して着脱可能に連結する。なお、容器本体2内にウニを収納して展示、販売、運搬される状態においては、前記水平片6bが蓋体3の周辺部に、例えば、熱シールされて容器本体2内が密閉されている。水切り容器1は、平面視で角形(例えば、四角形や六角形)、円形および楕円形等の立方体形状で構成できるが、この実施の形態では、平面視四角形の立方体形状で示している。従って、容器本体2は、四角形の立方体形状であり、蓋体3は、平面視で容器本体2と略同一形状をなる。
【0023】
また、容器本体1は、一つの角部(隅部)7aを中心にその左右に延びる広めの領域に亘って、すなわち図2に示すように、隣り合う二つの側壁部5それぞれの中ほどに及ぶ長さ領域に亘って円弧状をなし、その側壁部5が底部より連続して所定高さに立ち上がる立ち上がり部5bと、この立ち上がり部5bに連続し、前記領域にある立ち上がり部5bの延設方向に対し直交(交差)する方向に、つまり略水平方向に延びる堰部5cとを有する。なお、立ち上がり部5bはこれが設けられる側壁部5以外の他の側壁部5より、例えば略半分程度に低い高さである。
【0024】
また、前記堰部5cには段部5aに連続し、図2および図3に示すように、前記領域内において水平方向に複数本の凹部Pと凸部Qが交互に並設されている。なお、この凹部Pおよび凸部Qの向きは、前記角部7aとこれの対角線状にある容器本体2の他の角部7bとを結ぶ線に対し略並行となる方向である。容器本体1の角部7aの対角線上にある他の角部7bでは、この角部7b付近で連続する側壁部5が図2に示すように平面部5dとなっている。従って、この角部7bでは、その平面部5dの上縁に繋がる前記水平片6bが平面視で略三角形の平坦部6eとなっている。
【0025】
一方、前記蓋体3は、平面視で容器本体2と略同一形状をなし、天部8の外周には係止部9が形成されている。この係止部9は、天部8の外周より連続して立ち上がる起立片9aと、この起立片9aから水平に延びるフランジ片9bとから構成されている。係止部9は、蓋体3を容器本体2に被せたとき、容器本体2の蓋支持部6に嵌合するもので、これにより容器本体2が蓋体3により密閉される。詳しくは、蓋体3を容器本体2に被せたとき、蓋体3のフランジ片9bが容器本体2の蓋支持部6の水平片6bに当接して、容器本体2との間を密閉する。
【0026】
前記蓋体3の天部8の下面には、蓋体3を容器本体2に被せたときの容器本体2の堰部5cに対応する位置に、堰部5cを構成する凹部Pおよび凸部Qに略対応する形状の凸部10および凹部11が設けられる。この凸部10および凹部11は、閉蓋したとき堰部5cの凹部Pおよび凸部Qにそれぞれ嵌入して、これらの間に所定の間隙G(図5参照)を形成し、この所定の間隙Gが容器本体1内に入れられた浸漬水を排出するときの水切り通路となる。以下ではこの所定の間隙Gを水切り通路という。
【0027】
従って、蓋体3の凸部10および凹部11は、堰部5cの凹部Pおよび凸部Qに対応する数が設けられる。本例では堰部5cの凹部Pおよび凸部Qが4個なので、それに対応して凸部10および凹部11も4個設けられている。また、凸部10および凹部11の形状は、堰部5cの凹部Pおよび凸部Qに嵌入可能な形状となる。例えば、凹部Pの形状に略対応する。例えば凹部Pが円弧状に窪んだ形状なので、凸部10の形状もそれに対応してその凹部Pに嵌入できる円弧状の凸形となっている。
【0028】
凸部10を凹部Pに嵌入したとき、凹部Pとの間で水切りをする通路となる間隙Gを形成するので、凸部10の先端は、凹部Pの底部には当接せずに短くなっている形状である。水切りする通路となる間隙Gは、浸漬水21は通過させるが、ウニの通過を規制する間隔(寸法)に形成する。同様に、堰部5cの凸部Qには蓋体3の前記凸部10、10間の凹部11が前記同様の間隙Gを介して嵌合している。
【0029】
また、容器本体2の上部開口を密閉している蓋体3の、前記凹部Pおよび凸部Qに対応する位置は、第1の蓋体部分3aとなっており、この第1の蓋体部分3aは蓋体3の他の部分とは独立して容器本体2との間で部分的に開蓋可能となっている。容器本体2の凹部Pおよび凸部Qは、角部7a付近に設けられているので、蓋体3の部分的に開蓋可能な第1の蓋体部分3aも、蓋体3の角部に設けられている。
【0030】
具体的には、蓋体3の一つの角部において、折線12が設けられ、この折線12より先端側が三角形状の前記第1の蓋体部分3aに形成され、この第1の蓋体部分3aが折線12より蓋体3の他の部分から独立して開蓋できるようになっている。この第1の蓋体部分3aの先端部は、これの容器本体2に対する開閉操作を容易にする突片13となって外方へ延出している。
【0031】
この突片13の下面には、指先によるこの突片13の開蓋操作を容易にする突起18が設けられている。突片13は指で摘み易い形状、サイズとする。本例では第1の蓋体部分3aがそのまま延出した三角形状で、容器本体2の蓋支持部6より外方に延出して摘み易くなっている。なお、折線12の延長線上における第1の蓋体部分3aの端部には、水切り時においてこれの折れ曲げによる前記開蓋を容易とするために、切欠14またはスリットが設けられる。
【0032】
また、蓋体3において、容器本体2の前記平坦部6eに対応する部分は第2の蓋体部分3bとなっており、この第2の蓋体部分3bは前記第1の蓋体部分3aを除き、蓋体3の他の部分とは独立して容器本体2に対し部分的に開蓋可能になっている。この蓋体3には、前記一つの角部の対角線上にある他の角部に折線15が設けられ、この折線15より先端側が三角形の第2の蓋体部分3bとなっている。この第2の蓋体部分3bは折線15を中心に回動するように、容器本体の一部を開放可能となっている。
【0033】
この第2の蓋体部分3bの先端部は、容器本体2に対する開閉操作を容易にする突片16となるように外方に延出されており、指でつまみやすい形状、サイズとなっている。本例では、第2の蓋体部分3bの全体が三角形をなし、容器本体2の蓋支持部6より外方へ延出されている。また、折線15は容器本体2の三角形の平坦部6e上面に対応する位置から外れた、容器本体2の開口部に臨む位置に設けられる。
【0034】
次に、ウニの水切り容器1の使用方法を説明する。先ず、容器本体2内にウニ20と浸漬水(保存液)21を入れ、ウニ20を浸漬水21に浸漬した状態で収納し、蓋体3で図1、図4、図5に示すように密閉する。この状態でウニ20を商品として出荷、運搬、陳列等に供することができ、更に消費者に提供することができる。ウニ20は、保存液としての浸漬水21に浸漬した状態で水切り容器1内に収納されているので、出荷、運搬の際に揺れや衝撃が発生しても浸漬水21に護られるので、損傷を確実に防止でき、所定の品質が保持される。浸漬水21としては、海水を例示できる。
【0035】
水切り容器1内に収納されたウニ20を食卓に出す際や調理する場合には、容器本体2の堰部5cを形成する凹部Pや凸部Qに対応する位置の第1の蓋体部分3aが、蓋体3の他の部分とは独立して部分的に開蓋可能となっているので、この第1の蓋体部分3aで突片13を摘み上げて第1の蓋体部分3aを開放し、この開放側を下方に位置させるように容器本体2を傾ける。また、この作業に前後して第2の蓋体部分3bを開蓋するように突片16を摘み上げ、容器本体2の蓋支持部6から引き剥す。これにより蓋体3の第1の蓋体部分3aで部分的に開放した容器本体2の開放部分から浸漬水21を流出(水切り)させることができる。
【0036】
この場合に、第2の蓋体部分3bが開かれたことによって、図7に示すように、容器本体2内に連通する通気口19から大気が導入されて、容器本体2内の浸漬水21を速やかに、第1の蓋体部分3aが開かれた前記開放部分から容器本体2外へ排出することとなる。図6乃至図9は浸漬水21を容器本体2外へ流出させているその様子を示す。
【0037】
この場合に、容器本体2内の堰部5c上面には水切り通路となる凹部Pおよび凸部Qが設けられ、蓋体3には該堰部5cの凹部Pおよび凸部Qに嵌入して該凹部Pおよび凸部Qとの間に所定の間隙G(浸漬水21は通過させるが、ウニ20の通過は規制する間隔)を保持する凸部10および凹部11が設けられているので、浸漬水21は該間隙(水切り通路)Gを介し第1の蓋体部分3aで部分的に開放した開口から流出するが、ウニ20は間隙Gで堰止められる。従って、水切りされたウニ20だけが容器本体2内に残ることとなる。このように水切りされたウニ20は、蓋体3全体を開蓋して容器本体2のまま、または容器本体2内から取り出して、食卓に載せたり、調理に供したりすることができる。
【0038】
また、容器本体2と蓋体3との間に作られる間隙Gは、前述のように水平方向に長い領域に亘って設けられている。特に、図5に示すように間隙(水切り通路)Gは、水平方向に波形に湾曲しているので一層長い領域となる。従って、第1の蓋体部分3aによって開放された開口部から容器本体外に流出する浸漬水21の流量を高めるとともに、一方、そのときの流速を緩慢にして、浸漬水21の流速を受けることによって本体容器2内や間隙G部でウニ20が傷付くのを防止でき、容器本体2外へ浸漬水21のみを効率的に排出することができる。
【0039】
特に、水切りの際は、水切り容器1を傾けるので、水切り容器1内のウニ20は堰部5cに集中するが、堰部5cの凹部Pおよび凸部Qと蓋体3の凸部10および凹部11が互いに鋭角部分を持たない滑らかな円弧面になるように、容器本体2および蓋体3が成形されることで、ウニ20が前記集中によって損傷を受けることはない。
【0040】
また、蓋体3は、天部8がこの蓋体3の周辺部から中心部に向かって低くなるように傾斜または湾曲するように加工してある。こうすることで、ウニ20とともに浸漬水21を収容した容器本体2の開口部を、蓋体3によって密着させるように閉蓋する際に、容器本体2内の空気をこれの中心部から周辺部、さらには容器本体2外へ向かって押し出すことができる。この結果、蓋体3の密閉後に、容器本体2内に空気が残留するのを回避できる。従って、この空気の残留に伴って発生する浸漬水21のにごり現象の発生を未然に回避することができる。
【0041】
前記においては、堰部5cに凹部Pおよび凸部Qを設け、これらに対し所定幅の間隙Gを介して蓋体3の凸部10および凹部11を嵌合させる場合を例に挙げて説明したが、これらの凹凸部による嵌合構造とせずに、互いに平面で間隙Gを介して平行に向き合う形態としてもよく、前記同様にウニ20を傷めることなく速やかに容器本体2内の浸漬水21を排出させることができる。
【0042】
なお、前記実施の形態は、本発明を制限するものではなく、本発明は、要旨を変更しない範囲において、種々の変更が許容される
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は収納物を液体中に浸漬した状態で収納して、出荷、運搬、陳列を可能にし、市場や消費者に提供でき、液体と共に収納した収納物が柔らかく小さくても、液切りの際、壊すことなく外部に排出もせず、液体だけを速やかに排液する液切り容器に適用して有用である。例えば、鮮度を保った状態にて浸漬水中に浸漬されたウニの水切りを速やかに、しかもウニに傷を付けずに浸漬水から分離して容易に取り出すことができるという効果を有し、容器本体内の浸漬水中に浸漬したウニを、その浸漬水から分離して取り出すことで食膳等に速やかに提供可能にするウニの水切り容器等に有用である。
【符号の説明】
【0044】
1 水切り容器(液切り容器)
2 容器本体
3 蓋体
3a 第1の蓋体部分
3b 第2の蓋体部分
4 底部
5 側壁部
5a 段部
5b 立ち上がり部
5c 堰部
6 蓋支持部
6a 起立片
6b 水平片
6c 垂下片
6d フランジ
6e 平坦部
7 角部
7a、7b 角部
8 天部
9 係止部
10 凸部
11 凹部
12 折線
13 突片
14 切欠
15 折線
16 突片
17 切欠
18 突起
19 通気口
20 ウニ
21 浸漬水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と側壁部とからなり上部が開口する収納物を液体と共に収納する容器本体と、該容器本体の上部開口に着脱可能に設けられ、該上部開口を密閉する蓋体と、よりなり、
前記容器本体および蓋体は、それぞれ合成樹脂材で一体成形され、
前記容器本体は、側壁の一部を中心にその左右方向に延びる広めの領域に亘って前記側壁部が底部より連続して所定高さに立ち上がる立ち上がり部と、この立ち上がり部に連続しかつ前記領域における前記立ち上がり部の延設方向と交差する方向に略水平に延びる堰部とを有し、
前記蓋体は、前記容器本体の前記堰部に対応する位置に、前記堰部に略対応する形状であって、閉蓋時に該堰部との間に所定の間隙を形成する間隙形成部を有し、該堰部と間隙形成部との間の間隙が液体を排液する液切り通路となり、
前記容器本体の上部開口を密閉する前記蓋体には、前記堰部に対応する位置の外周側に前記堰部と間隙形成部との間隙で形成する液切り通路を外部に開放するための第1の蓋体部分と、前記容器本体の前記第1の蓋体部分以外の別の外周部近傍位置に、前記容器本体に通じる通気通路を形成する第2の蓋体部分とが設けられ、
前記第1の蓋体部分を開くことによってなされる前記容器本体内の液体の排出が、前記第2の蓋体部分を開いて外気を容器本体内に取り込みながら行われるようにしたことを特徴とする液切り容器。
【請求項2】
前記蓋体は、天部が周辺部から中心部に向かって低くなるように傾斜または湾曲していることを特徴とする請求項1に記載の液切り容器。
【請求項3】
前記堰部は、第1の蓋体部分方向に向かう複数の凹凸部が左右方向に亘って並列されてなり、前記間隙形成部は、前記凹凸部に対応する複数の凸凹部からなり、堰部の凹凸部に間隙形成部の凸凹部が間隙を有して嵌入され、該間隙が液切り通路となることを特徴とする請求項1または2記載の液切り容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−245980(P2012−245980A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116554(P2011−116554)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(591180646)マルイ包装株式会社 (1)
【Fターム(参考)】