説明

液晶表示装置

【課題】効率よく放熱することが可能な薄膜トランジスタを備えた液晶表示装置を提供する。
【解決手段】基板上にマトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成された表示部と、基板上の表示部の外側領域に設けられ、表示部を駆動するための駆動回路と、を備える液晶表示装置10であって、それぞれに切欠部132aを有した一対の拡散層を備えるポリシリコン半導体層132と、拡散層のそれぞれの上面及び切欠部に沿った端面に接触する第1電極136及び第2電極138と、第1電極136と第2電極138との間の電流をオンオフする電圧が加えられる第3電極134と、を備える薄膜トランジスタを具備した液晶表示装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱効果の高い薄膜トランジスタ(TFT)を備えた液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリシリコンからなる半導体層を備えた薄膜トランジスタ(以下、TFTと称する)を用いて、液晶表示パネルを構成する基板上に画素を駆動するための駆動素子とともに走査線駆動回路や信号線駆動回路などの駆動回路を一体的に形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平09−090419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
走査線駆動回路を一体的に備えた液晶表示装置において、走査線駆動回路のうち最終段のバッファを構成するTFTに過渡的な充電電流、或いはリーク電流が流れる場合がある。この場合、TFTを構成するポリシリコン層が発熱し、TFTとして必要な特性が得られないおそれがある。このような現象は、Pチャネル型のTFT、或いはNチャネル型のTFTのどちらか一方のみで駆動回路を構成する場合に特に顕著となり、表示不良を招く原因となり得る。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、半導体層で発生した熱を効率よく放熱することが可能な薄膜トランジスタを備えた液晶表示装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の様態による液晶表示装置は、基板上にマトリクス状に配置された複数の画素によって構成された表示部と、前記基板上の前記表示部の外側領域に設けられ、前記表示部を駆動するための駆動回路と、を備える液晶表示装置であって、それぞれに切欠部を有した一対の拡散層を備える半導体層と、前記拡散層のそれぞれの上面及び切欠部に沿った端面に接触する第1電極及び第2電極と、前記第1電極と第2電極との間の電流をオンオフする電圧が加えられる第3電極と、を備える薄膜トランジスタを具備する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、半導体層で発生した熱を効率よく放熱することが可能な薄膜トランジスタを備えた液晶表示装置を提供することができる。この事から、液晶表示装置の表示不良を防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1に示すように、液晶表示装置10は、アレイ基板20と、アレイ基板20に対向して配置された対向基板30と、これらアレイ基板20と対向基板30との間に保持された液晶層40と、を備えている。この液晶表示装置10は、画像を表示する表示部100を有している。表示部100は、マトリクス状に配置された複数の画素PXによって構成されている。
【0008】
アレイ基板20は、表示部100において、画素PXの行方向に沿って延在する複数の走査線SL1、SL2、SL3、…、画素PXの列方向に沿って延在する複数の信号線DL1、DL2、DL3、…、これら走査線SLと信号線DLとの交差部付近において画素PX毎に配置されたスイッチング素子21、スイッチング素子21に接続された画素電極22などを備えている。
【0009】
スイッチング素子21は、ポリシリコン半導体層を有した薄膜トランジスタ(TFT)によって構成されている。このスイッチング素子21のゲート電極21Gは、対応する走査線SLに電気的に接続されている(あるいは走査線と一体に形成されている)。スイッチング素子21のソース電極21Sは、対応する信号線DLに電気的に接続されている(あるいは信号線と一体に形成されている)。スイッチング素子21のドレイン電極21Dは、対応する画素PXの画素電極22に電気的に接続されている。
【0010】
対向基板30は、表示部100において、全画素PXに共通の対向電極31などを備えている。これらアレイ基板20及び対向基板30は、全表示画素PXの画素電極22と対向電極31とを対向させた状態で配置され、これらの間にギャップを形成する。液晶層40は、アレイ基板20と対向基板30とのギャップに封止された液晶組成物によって形成されている。
【0011】
アレイ基板20は、表示部100の外側領域において、表示部100を駆動するための駆動回路として信号線駆動回路110、及び走査線駆動回路120を備えている。信号線駆動回路110は、各信号線DL1、DL2、DL3、…に対して、各列の画素PXにそれぞれ書き込む映像信号を供給する。走査線駆動回路120は、各走査線SL1、SL2、SL3、…に対して、行単位の画素群をそれぞれ選択するためのアドレス信号を供給する。
【0012】
図2に示すように、走査線駆動回路120に備えられた最終段のバッファ部Bfは、ポリシリコン半導体層を有した一対の薄膜トランジスタ(TFT)130を備えている。TFT130の出力ラインは、それぞれ走査線SL1、SL2、SL3、…に接続され、バッファ部Bfの出力Voutを、アドレス信号として各走査線に供給している。
【0013】
図3乃至図5に示すように、バッファ部Bfを構成するTFT130は、第1電極としてのソース電極136、第2電極としてのドレイン電極138、及び第3電極としてのゲート電極134を備えている。すなわち、TFT130は、アレイ基板20を構成するガラス基板131上に配置されたアンダーコート膜133上に、島状に形成されたポリシリコン半導体層132を備えている。このポリシリコン半導体層132は、不純物が拡散された一対の拡散層すなわちソース領域132s及びドレイン領域132dと、これらの領域に挟まれたチャネル領域132cと、を有している。TFT130のゲート電極134は、ポリシリコン半導体層132のチャネル領域132c上にゲート絶縁膜135を介して配置されている。TFT130のソース電極136は、ゲート絶縁膜135及びゲート電極134上に配置された層間絶縁膜137を貫くコンタクトホールh1を介してポリシリコン半導体層132のソース領域132sに接触している。また、TFT130のドレイン電極138は、ゲート絶縁膜135及び層間絶縁膜137を貫くコンタクトホールh2を介してポリシリコン半導体層132のドレイン領域132dに接触している。
【0014】
ソース電極136及びドレイン電極138上にはパッシベーション絶縁膜139が形成されている。
【0015】
上述したような構成のTFT130においては、ゲート電極134にゲート電圧が加えられると、ポリシリコン層132のチャネル領域132cにチャネルが形成され(TFT130がオンした状態となり)、ソース電極136とドレイン電極138とが接続されて電流が流れる。
【0016】
ところで、ポリシリコン半導体層130のソース領域132s及びドレイン領域132dは、図3及び図5に示したように、それぞれ少なくとも1つの切欠部132aを有している。なお、図5ではドレイン電極138をその長手方向に略平行なB−B´線に沿って切断した断面構造を図示しているが、ソース電極136の長手方向に略平行となるように切断した断面構造も同様の形状である。
【0017】
各コンタクトホールh1及びh2は、上述したようにゲート絶縁膜135及び層間絶縁膜137を貫いているため、切欠部132aにおいては、アンダーコート層133が露出している。つまり、コンタクトホールh1においては、ソース領域132sの上面132sTが露出するとともに切欠部132aに沿った端面132sEが露出する。同様に、コンタクトホールh2においては、ソース領域132dの上面132dTが露出するとともに切欠部132aに沿った端面132dEが露出する。
【0018】
このため、コンタクトホールh1に充填されたソース電極136は、ソース領域132sの上面132sT及び切欠部132aに沿った端面132sEと接触する。また、コンタクトホールh2に充填されたドレイン電極138は、ドレイン領域132dの上面132dT及び切欠部132aに沿った端面132dEと接触する。
【0019】
このとき、例えば、コンタクトホールh2において、露出したドレイン領域132dの端面132dEの面積の総和(つまり、ドレイン電極138が端面132dEと接触する面積の総和)S1が、露出した切欠部132aの面積の総和(つまり、ドレイン電極138が充填される切欠部の面積の総和)S2より大きくなるように設定されることが望ましい。また、面積の総和S2はドレイン電極138とポリシリコン半導体層132の下層(ここでは、アンダーコート層)との接触面積の総和である。
【0020】
これにより、切欠部132aを有していないドレイン領域132dにドレイン電極138を接触させた場合と比較して、ドレイン領域132dとドレイン電極138との接触面積を拡大することが可能となる。コンタクトホールh1においても同様である。
【0021】
ここで、ソース電極136及びドレイン電極138は、少なくともポリシリコン半導体層132より高い熱伝導率を有する金属材料、例えば、アルミニウムなどを用いて形成されている。このため、ソース電極136及びドレイン電極138とポリシリコン半導体層132との接触面積を拡大することにより、ポリシリコン半導体層132から発生した熱をソース電極136及びドレイン電極138を介して効率的に放熱することが可能となる。したがって、ポリシリコン層132の発熱に起因した課題を解消することができ、安定した表示性能の液晶表示装置を提供することが可能となる。
【0022】
なお、切欠部132aに沿った端面132sE及び132dEの面積は、ポリシリコン半導体層132の膜厚tや、ポリシリコン半導体層132の下層に対する端面132sE及び132dEの成す角度θなどに基づいて制御可能である。つまり、ポリシリコン半導体層132の膜厚tが厚いほど、また、成す角度θが90°より小さな傾斜面(あるいは90°より大きな傾斜面)ほど端面132sE及び132dEの面積を拡大することが可能である。
【0023】
また、図3に示した例では、ポリシリコン半導体層132のソース領域132sとドレイン領域132dには、略矩形状の切欠部132aを形成したが、この例に限定されるものではない。切欠部132aとコンタクトホールh1、h2との配置、大きさ及び形状は、所望する放熱効果の大きさによって決定され、ソース電極136及びドレイン電極138とポリシリコン半導体層132との接触面積が拡大できるような形状であれば良い。
【0024】
なお、上記の実施形態は、2つのゲート電極134を備えたTFT130の場合を説明したが、ゲート電極134は1つでも良い。また、上記の実施形態では、走査線駆動回路の最終段のバッファ部を構成するTFTについて説明したが、表示部の各画素に配置されたTFTも同様の構成を採用することは可能であり、この場合も同様にTFTの放熱効果が改善され、TFTとして安定した特性を得ることが可能となる。
【0025】
また、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の概略図。
【図2】図1に示した液晶表示装置の走査線駆動回路内に備えられた最終段のバッファ部の概略図。
【図3】図2に示したバッファ部を構成するTFTの平面図。
【図4】図3に示したTFTをA−A´線で切断したときの断面図。
【図5】図3に示したTFTをB−B´線で切断したときの断面図。
【符号の説明】
【0027】
10…液晶表示装置、110…信号線駆動回路、120…走査線駆動回路、PX…画素、Bf…バッファ部、130…TFT、132…ポリシリコン半導体層、132a…切欠部、134…ゲート電極、136…ソース電極、138…ドレイン電極、h1、h2…コンタクトホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にマトリクス状に配置された複数の画素によって構成された表示部と、
前記基板上の前記表示部の外側領域に設けられ、前記表示部を駆動するための駆動回路と、を備える液晶表示装置であって、
それぞれに切欠部を有した一対の拡散層を備える半導体層と、
前記拡散層のそれぞれの上面及び切欠部に沿った端面に接触する第1電極及び第2電極と、
前記第1電極と第2電極との間の電流をオンオフする電圧が加えられる第3電極と、
を備える薄膜トランジスタを具備した液晶表示装置。
【請求項2】
前記第1電極及び前記第2電極のそれぞれが前記端面と接触する面積の総和は、それぞれが充填される切欠部の面積の総和より大きい。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記表示部に配置される走査線に対して行単位の画素群をそれぞれ選択するためのアドレス信号を供給する走査線駆動回路を含み、
前記薄膜トランジスタは、前記走査線駆動回路の最終段のバッファに備えられている請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記拡散層は、ポリシリコンで形成されている請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記第1電極及び第2電極は、前記拡散層よりも高い熱伝導率を有する金属で形成されている請求項1記載の液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−126293(P2006−126293A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311261(P2004−311261)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(302020207)東芝松下ディスプレイテクノロジー株式会社 (2,170)
【Fターム(参考)】