液晶表示装置
【課題】セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】コモン電極5が設けられた第2のガラス基板2は、液晶3とは反対側の面に外部ITO9を備える。駆動IC15は、セグメント電極4とコモン電極5の電位を設定して液晶表示パネル30を駆動する。また、駆動IC15は、セグメント電極4およびコモン電極5の各設定電位の最大値をVmax、最小値をVminとしたときに、その各設定電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に、外部ITO9の電位を設定する。
【解決手段】コモン電極5が設けられた第2のガラス基板2は、液晶3とは反対側の面に外部ITO9を備える。駆動IC15は、セグメント電極4とコモン電極5の電位を設定して液晶表示パネル30を駆動する。また、駆動IC15は、セグメント電極4およびコモン電極5の各設定電位の最大値をVmax、最小値をVminとしたときに、その各設定電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に、外部ITO9の電位を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、静電気による表示不良を防止可能な液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの表面に静電気が発生すると、その静電気により液晶に電圧が印加され、表示不良が生じる。このような表示不良を防止するため、液晶表示パネルの上面に帯電防止層を設け、その帯電防止層に生起した静電気を放電する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された液晶表示パネルでは、上面の偏光板上にInTiO3の帯電防止層が設けられる。また、接地パッドに接続されたメタルフレーム(金属フレーム)と帯電防止層とを電気的に接続させている。この結果、液晶表示パネルの上面に生起した静電気は放電され、静電気による表示不良を抑えることができる。
【0003】
図9は、液晶表示パネルの上面に帯電防止層としてITOを設けた構成の例を示す模式的断面図である。図9に示す液晶表示パネルは、セグメント電極54が設けられた第1ガラス基板51と、コモン電極55が設けられた第2ガラス基板52との間に液晶53を挟持する。セグメント電極54およびコモン電極55は、それぞれITO(Indium Tin Oxide)電極である。第1ガラス基板51の外側の面には、偏光板56および拡散板57が設けられ、また、第1ガラス基板51にはピン62,63が取り付けられている。また、第2ガラス基板52の外側の面には、ITO電極59が設けられ、ITO電極59の上層に偏光板58が設けられている。以下、ITO電極59をコモン電極55やセグメント電極54と区別し、外部ITO59と記す。外部ITO59は、偏光板58より広く形成され、偏光板58が存在しない領域の少なくとも一部に導電性弾性体60が設けられる。さらに、液晶表示パネルの外縁にメタルフレーム61が設けられている。メタルフレーム61は接地され、また、導電性弾性体60を介して外部ITO59に電気的に接続されている。
【0004】
液晶表示パネルの第2ガラス基板52側に静電気が発生したとしても、静電気は外部ITO59から、導電性弾性体60およびメタルフレーム61を介して放電される。図9に例示する構成は、特許文献1に記載された構成と、偏光板および帯電防止層の積層順が異なっているが、帯電防止層(図9に示す例では外部ITO59)からメタルフレームを介して静電気を放電する点で同様である。
【0005】
図9に例示した構成では、外部ITO59からメタルフレーム61を介して放電するが、図9に示す構成だけでは、表示不良を改善できない場合があった。図10は、外部ITOを設けても表示不良が生じる状態の例を示す説明図である。図9と同一の要素には、図9と同一の符号を付す。ただし、図10では、導電性弾性体60、メタルフレーム61、ピン62,63、拡散板57の図示を省略している。
【0006】
コモン電極55およびセグメント電極54が重なる領域71の液晶の印加電圧は、コモン電極55およびセグメント電極54の電位を設定することにより制御される。また、セグメント電極54が存在するが、コモン電極が存在しない領域72では、領域71における所望の表示以外の表示が行われないように液晶が一定の状態を保つことが好ましい。しかし、画像表示のためにセグメント電極54は、適宜、電位が切り替えられる。すると、セグメント電極54と、常時、接地電位である外部ITO59との間に電位差が生じる。図11は、セグメント電極54と外部ITO59との間の電位差の例を示す説明図である。例えば、図11に示すように、液晶表示パネルの駆動時に、セグメント電極54が接地電位(GNDと記す。)および、GND以上の電位(Vaとする。)に切り替えられるとする。すると、セグメント電極54の平均電位はVa/2となり、セグメント電極54および外部ITO58の間に電位差が生じる。セグメント電極54および外部ITO58との間に第2ガラス基板52が存在するので、領域72の液晶に電圧Va/2が直接印加されるわけではないが、微少な直流電圧が印加されることにより、領域72の液晶は時間の経過とともに光透過状態になってしまう。すなわち、本来、光透過状態となるべきでない箇所が光透過状態になってしまう。
【0007】
図12は、外部ITO59とセグメント電極54との間に生じる電圧に起因する表示不良を防止する液晶表示パネルの構成例を示す説明図である。図9と同一の要素には、図9と同一の符号を付す。ただし、図12では、導電性弾性体60、メタルフレーム61、ピン62,63、拡散板57の図示を省略している。図12に示す構成では、セグメント電極54が存在するが、コモン電極が存在しない領域72において、第2ガラス基板55上における液晶側の面にITO電極65を設ける。ITO電極65は、液晶53を介してセグメント電極54に対向するように形成される。以下、ITO電極65を、コモン電極55、セグメント電極54、および外部ITO59と区別し、内部ITOと記す。
【0008】
内部ITO65は、対向するセグメント電極54と等しい電位に設定される。具体的には、2枚のガラス基板51,52間に液晶を封止するためのシール材(図示略)に導電性ビーズを含め、導電性ビーズを介して、内部ITO65とセグメント電極54とを電気的に接続するトランスファー構造とする。内部ITO65は、セグメント電極54に電気的に接続されていることにより、常にセグメント電極と等しい電位となる。この結果、領域72において、液晶に電圧が印加されることはなく、図10を参照して説明した表示不良を防止できる。
【0009】
特許文献2には、一方の基板上に信号線を設け、他方の基板上に信号線に対向するダミー電極を設け、ダミー電極と信号線とを接続配線で接続させる液晶パネルが記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−188388号公報(段落0009−0021)
【特許文献2】特開2003−161959号公報(段落0013−0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図12に示すように、第2ガラス基板52上に内部ITO65を形成することにより、コモン電極が存在しない領域72における表示不良の発生を防止することができる。しかし、トランスファー構造でセグメント電極54に接続される内部ITO65を常に形成できるとは限らず、内部ITO65を形成できない場合には、外部ITO59とセグメント電極54との電位差により表示不良が生じる場合がある。
【0012】
例えば、セグメント電極およびコモン電極を電気的に接続させてはならないため、シール材を配置する箇所において一方の基板上のセグメント電極と他方の基板上のコモン電極とが交差する場合、そのシール材には導電性ビーズを含めない。その結果、トランスファー構造でセグメント電極54に接続される内部ITO65を第2ガラス基板52に設けることができない場合がある。
【0013】
また、例えば、第2ガラス基板52に内部ITO65を配置したとしても、その内部ITO65が、他の内部ITOやコモン電極55に囲まれてしまい、シール材まで引き廻すことができず、トランスファー構造でセグメント電極54に接続させることができない場合がある。
【0014】
以下、具体例を示す。図13は、液晶表示画面の例を示す説明図である。図13に示す各領域81は、コモン電極およびセグメント電極が重なる領域であり、各領域81の液晶の状態を制御して表示を行う。
【0015】
図14は、図13に示す例示する液晶表示パネルにおける各電極およびシール材の配置例を示す説明図である。図14(a)は、第2ガラス基板52に形成されたコモン電極および内部ITOを示す。図14(a)では、コモン電極55a,55bおよび内部ITO65a〜65fが配置される。図14(a)に示す例では、2つのコモン電極55a,55bが順次選択される。図14(b)は、第1ガラス基板51に形成されたセグメント電極、およびコモン電極55a,55bに接続される端子54g,54hを示す。図14(b)に示す例では、各セグメント電極54a〜54f以外に、第2ガラス基板上のコモン電極および内部ITOに対向する対向電極82が設けられている場合を示している。
【0016】
図14(c)は、第2ガラス基板52に形成されたシール材を示す。図14(c)に示すシール材83は、電導性ビーズを含む。また、図14(d)は、第1ガラス基板51に形成されたシール材を示す。図14(d)に示すシール材84は、電導性ビーズを含まない。各ガラス基板51,52を対向させ、電導性ビーズを含むシール材83と、電導性ビーズを含まないシール材84とに囲まれた空間に液晶が封止される。
【0017】
図14(a)に示すコモン電極55bと、図14(b)に示すセグメント電極54eとを導通状態にしないように、図14(d)に示すシール材84には電導性ビーズが含められない。すると、図14(a)に示す領域91には、内部ITOを配置しても、トランスファー構造でセグメント電極に接続させることができない。
【0018】
また、図14(a)に示す領域92は、周囲をコモン電極55a,55bおよび内部ITO65aに囲まれている。そのため、領域92には、内部ITOを配置しても、トランスファー構造でセグメント電極に接続させることはできない。
【0019】
このように、図14(a)に示す領域91,92では、トランスファー構造でセグメント電極に接続される内部ITOを配置できないため、外部ITOとセグメント電極との電位差により表示不良が発生し得る。
【0020】
このような問題は、表示を視認する視認者側のガラス基板(第2ガラス基板52)にセグメント電極を形成し、背面側のガラス基板(第1ガラス基板51)にコモン電極を形成し、視認者側のガラス基板にITOを形成する場合でも、同様に発生する。
【0021】
そこで、本発明は、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明による液晶表示装置は、コモン電極が設けられた透明基板(例えば、第2ガラス基板2)と、セグメント電極が設けられた透明基板(例えば、第1ガラス基板1)との間に液晶を挟持する液晶表示パネル(例えば、液晶表示パネル30)を備え、液晶表示パネルの視認側の透明基板(例えば、第2ガラス基板2)は、液晶側とは反対側の面に設けられる透明電極である外部透明電極(例えば、外部ITO9)を備え、コモン電極およびセグメント電極の電位を設定する駆動手段(例えば、駆動IC15)と、駆動手段がコモン電極に設定する各電位および駆動手段がセグメント電極に設定する各電位のうち最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとしたときに、駆動手段がコモン電極に設定する各電位および駆動手段がセグメント電極に設定する各電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に外部透明電極の電位を設定する外部透明電極電位設定手段(例えば、第1の実施の形態における駆動IC15や、第2の実施形態における外部ITO用電位設定部27)とを備えることを特徴とする。
【0023】
外部透明電極電位設定手段が、外部透明電極の電位を(Vmax+Vmin)/2に設定することが好ましい。
【0024】
また、外部透明電極の電位が所定値以上になったときに、外部透明電極の電位を低下させる外部透明電極電位調節手段(例えば、ESD用素子16)を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、液晶表示パネルの視認側の透明基板が、液晶側とは反対側の面に設けられる透明電極である外部透明電極を備え、外部透明電極電位設定手段が、駆動手段がコモン電極に設定する各電位および駆動手段がセグメント電極に設定する各電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に外部透明電極の電位を設定するので、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下の説明で、点灯状態とは、バックライトの光が液晶表示パネルを透過する状態を意味し、消灯状態とはバックライトの光が液晶表示パネルで遮断される状態を意味する。
【0027】
[実施の形態1]図1は、本発明の第1の実施の形態の例を示す説明図である。本発明の液晶表示装置は、液晶表示パネル30と、駆動IC15と、ESD(Electrostatic Discharge )用素子16とを備える。駆動IC15は、液晶表示パネル30を駆動するドライバIC(Integrated Circuit)である。
【0028】
液晶表示パネル30は、セグメント電極4が設けられた第1ガラス基板1と、コモン電極5が設けられた第2ガラス基板2との間に液晶3を挟持する。以下、コモン電極4とセグメント電極5がいずれも複数設けられている場合を例にして説明する。なお、液晶3は、各ガラス基板1,2およびシール材によって封止されるが、シール材の図示は省略している。
【0029】
液晶表示パネル30の種類は、特に限定されない。例えば、TN(Twisted Nematic)モードや、STN(Super-Twisted Nematic)モードであってもよい。また、誘電率異方性が負の液晶を用い、液晶とコモン電極およびセグメント電極との界面に、垂直配向膜を設けた液晶表示パネルであってもよい。
【0030】
各ガラス基板1,2は、いずれも透明基板である。以下、表示が視認される側(視認側と記す。)のガラス基板である第2ガラス基板2にコモン電極5が設けられ、背面側に配置される第1ガラス基板1にセグメント電極4が設けられる場合を例にして説明するが、第2ガラス基板2にセグメント電極が設けられ、第1ガラス基板1にコモン電極が設けられていてもよい。
【0031】
コモン電極5およびセグメント電極4は、いずれもITO電極であり、それぞれ複数設けられる。
【0032】
また、液晶表示パネル30の視認側に配置される第2ガラス基板2は、液晶3が存在している側の面とは反対側の面にITO電極9を備える。以下、ITO電極9を外部ITO9と記す。外部ITO9は、例えば、第2ガラス基板2の視認側の面全体に設けられる。
【0033】
外部ITO9の上層には、その外部ITO9よりも狭い範囲に偏光板8が設けられる。また、第1ガラス基板1は、液晶3が存在している側の面とは反対側の面に偏光板6を備える。なお、図示を省略しているが、図9に例示する構成と同様に、背面側の偏光板6上に拡散板が設けられていてもよい。拡散板は、バックライトの光を液晶表示パネル30の背面側から拡散して照射する。
【0034】
外部ITO9のうち、偏光板8が存在しない領域には、非電導弾性体10が設けられる。また、液晶表示パネルの外縁にメタルフレーム11が設けられる。メタルフレーム11は接地されていてもよい。ただし、外部ITO9とメタルフレーム11との間には非電導弾性体10が存在するので、外部ITO9およびメタルフレーム11は、電気的に接続されていない。
【0035】
駆動IC15は、複数のコモン電極5および複数のセグメント電極4の電位を設定することにより、コモン電極5とセグメント電極4とが重なる領域の液晶の状態を制御する。駆動IC15は、コモン電極5を順に選択し、選択したコモン電極を選択時電位に設定し、選択していないコモン電極を非選択時電位に設定する。また、駆動IC15は、選択したコモン電極と重なる各セグメント電極を、画像データ(表示状態を規定するデータ)に応じて定められた各電位に設定する。
【0036】
駆動IC15は、選択したコモン電極および各セグメント電極の電位を設定することで、そのコモン電極および各セグメント電極間の液晶に電圧を印加する。そして、選択するコモン電極を順次、切り替えることで、液晶表示パネルに画像を表示する。
【0037】
駆動IC15は、第1ガラス基板1上の各セグメント電極4および第2ガラス基板2上の各コモン電極5の電位をそれぞれ設定するが、コモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位は複数種類ある。図1では電位の種類がV0〜V4の5種類であり、駆動IC15が電極に設定できる電位の種類は、この5種類である。本例では、V0<V1<V2<V3<V4であるものとする。このとき、V2=(V0+V4)/2=(V1+V3)/2である。また、図1では、V0が接地電位(GND)である場合を例示しているが、V0は接地電位でなくてもよい。
【0038】
駆動IC15は、コモン電極の設定電位の最大値と最小値の平均値と、セグメント電極の設定電位の最大値と最小値の平均値とが一致するように、コモン電極およびセグメント電極の電位を設定する。本例では、コモン電極の設定電位の最大値、最小値はそれぞれV4,V0であり、その平均値はV2である。また、セグメント電極の設定電位に関しても、最大値、最小値はそれぞれV4,V0であり、その平均値はV2である。コモン電極およびセグメント電極の電位変化(駆動波形)の例については後述する。
【0039】
また、駆動IC15は、外部ITO9の電位も設定し、外部ITO9の電位を一定に保つ。駆動IC15が外部ITO9に設定する電位について説明する。駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとする。駆動IC15は、コモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、(Vmax+Vmin)/2より低く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear1と記す。)から、(Vmax+Vmin)/2より高く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear2と記す。)までの範囲内の電位に、外部ITO9の電位を設定する。すなわち、外部ITO9の電位を、Vnear1〜Vnear2の範囲の電位に設定する。
【0040】
図1に示す例では、コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類は、V0〜V4までの5種類である。そして、Vmax=V4,Vmin=V0であり、(Vmax+Vmin)/2=V2である。よって、Vnear1は、V2より低くV2に直近の電位であるV1である。また、Vnear2は、V2より高くV2に直近の電位であるV3である。従って、駆動IC15は、外部ITO9の電位を、V1〜V3の範囲の電位に設定すればよい。
【0041】
Vnear1〜Vnear2の範囲の電位のうち、最も好ましい電位は(Vmax+Vmin)/2である。図1に示す例では、駆動IC15が、外部ITO9の電位を、(Vmax+Vmin)/2に該当するV2に設定する場合を示している。コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類が奇数種類である場合、その電位の中に(Vmax+Vmin)/2が含まれる。この場合には、駆動IC15は、外部ITO9の電位を、(Vmax+Vmin)/2に設定することが好ましい。
【0042】
ただし、図1に示す駆動IC15は、外部ITO9の電位をV1(=Vnear1)、または、V3(=Vnear2)に設定してもよい。
【0043】
また、コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類が偶数種類である場合、その偶数種類の電位の中に(Vmax+Vmin)/2は含まれない。その場合、駆動IC15は、外部ITO9の電位をVnear1またはVnear2に設定すればよい。
【0044】
例えば、コモン電極およびセグメント電極に対する設定電位の種類がV0、V1,V2,V3の4種類であり、駆動IC15が設定できる電位もこの4種類であるとする。また、V0<V1<V2<V3であるとする。(Vmax+Vmin)/2がV1,V2間の電位であれば、駆動IC15は、電位(Vmax+Vmin)/2を設定することはできない。この場合、Vnear1=V1、Vnear2=V2であり、駆動IC15は、外部ITO9の電位をV1,V2のいずれかに設定すればよい。
【0045】
外部ITO9の電位は、駆動IC15によって設定されるが、静電気が生じることで突発的に上昇することがある。ESD用素子16は、外部ITO9の電位が所定値以上になったときに、外部ITO9の電位を低下させる。静電気が生じて外部ITO9の電位が突発的に上昇しても、ESD用素子16により、外部ITO9の電位は低下する。その結果、駆動IC15は、静電気に起因する高電圧破壊から保護される。
【0046】
ここでは、ESD用素子16がバリスタである場合を例にして説明する。バリスタ(ESD用素子)16は、外部ITO9と接地電位点17とを接続させる。接地電位点17の電位は、常時、接地電位である。バリスタ16は、外部ITO9と接地電位点17との電位差が所定値に達していなければ、高抵抗となり、外部ITO9から接地電位点17への電流を発生させない。外部ITO9がVnear1〜Vnear2の範囲の電位に設定されているときは、この状態となり、外部ITO9から接地電位点17に電流は流れない。一方、外部ITO9の電位が上昇し、外部ITO9と接地電位点17との電位差が所定値以上となったとき、バリスタ16の抵抗は低下し、バリスタ16を介して外部ITO9から接地電位点17に電流が流れる。この結果、外部ITO9の電位は低下するので、駆動IC15は、静電気による高電圧から保護される。
【0047】
ここでは、ESD用素子16がバリスタである場合を例にして説明したが、ESD用素子16はバリスタに限定されず、外部ITO9の電位が所定値以上となったときに外部ITO9の電位を低下させる素子であればよい。例えば、バリスタ以外に、保護ダイオードやサイリスタをESD用素子16として用いてもよい。
【0048】
次に、動作について説明する。ここでは、コモン電極が8本あり、IAPT(Improved Alto-Pleshko Technique )で駆動する場合を例にする。既に説明したように、図1に示す例では、駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の種類は、V0〜V4の5種類であり、V2=(V0+V4)/2である。V0〜V4のうち、駆動IC15は、各コモン電極に対してV0,V1,V3,V4のいずれかの電位を設定し、各セグメント電極に対してV0,V2,V4のいずれかを設定する。
【0049】
また、駆動IC15は、コモン電極の選択期間Tの間に正極性駆動と負極性駆動とを切り替える。正極性駆動とは、選択したコモン電極の電位がセグメント電極の電位よりも高くなるように駆動することである。負極性駆動とは、選択したコモン電極の電位がセグメント電極の電位より低くなるように駆動することである。以下、選択期間Tの前半で負極性駆動を行い、後半で正極性駆動を行う場合を例にして説明する。
【0050】
図2は、コモン電極の駆動波形の例を示す説明図であり、図3は、セグメント電極の駆動波形の例を示す説明図である。
【0051】
第1コモン電極の選択期間を例に説明する。駆動IC15は、選択期間Tの前半では、選択している第1コモン電極の電位をV0に設定し、その選択期間Tの後半では、選択している第1コモン電極の電位をV4に設定する(図2参照)。そして、駆動IC15は、第1コモン電極の選択期間の前半では、選択していないコモン電極の電位をV3に設定する。そして、その選択期間の後半では、選択していないコモン電極の電位をV1に設定する。
【0052】
よって、いずれのコモン電極も、設定される電位の平均値はV2である。
【0053】
また、駆動IC15は、選択したコモン電極と各セグメント電極とが交差する領域(LCDセグメントと記す。)のうち、点灯状態とすべきLCDセグメントにおけるセグメント電極の電位を、第1コモン電極の選択期間の前半ではV4に設定して、その選択期間での後半ではV0に設定する(図3参照)。すると、第1コモン電極の選択期間中、点灯状態とすべきLCDセグメントの液晶には、|V0−V4|の電圧が印加される。具体的には、選択期間の前半で|V0−V4|の電圧が印加され、後半では|V4−V0|の電圧が印加されるが、その電圧の大きさは一定である。また、これらのセグメント電極と、選択されていないコモン電極との電位差は、第1コモン電極の選択期間の前半では|V3−V4|となり、後半では|V1−V0|となるが、その値は一定である。
【0054】
また、駆動IC15は、選択したコモン電極と各セグメント電極とが交差する領域のうち、消灯状態とすべきLCDセグメントにおけるセグメント電極の電位を、第1コモン電極の選択期間中、V2に設定する。すると、第1コモン電極の選択期間中、点灯状態とすべきLCDセグメントの液晶には、|V0−V2|の電圧が印加される。具体的には、選択期間の前半で|V0−V2|の電圧が印加され、後半では|V4−V2|の電圧が印加されるが、その電圧の大きさは一定である。また、これらのセグメント電極と、選択されていないコモン電極との電位差は、第1コモン電極の選択期間の前半では|V3−V2|となり、後半では|V1−V2|となるが、その値は一定である。
【0055】
第1コモン電極の選択期間終了後、駆動IC15は、次のコモン電極を選択し、同様の動作を繰り返す。また、最後のコモン電極(第8コモン電極)の選択期間の終了後には、再び、第1コモン電極から順次、コモン電極を選択していく。この結果、各LCDセグメントの状態が点灯または消灯状態に制御され、所望の画像が表示される。
【0056】
セグメント電極は、各コモン電極との交差部分が全て消灯状態であると画像データで定められている場合には、電位V2に設定され続けることになる(図3参照)。また、セグメント電極は、各コモン電極との交差部分が全て点灯状態であると画像データで定められている場合には、設定電位をV4,V0に交互に切り替えられ、その平均値はV2となる(図3参照)。
【0057】
各LCDセグメントを点灯状態にするか消灯状態にするかによらず、セグメント電極4の平均電位はV2となる。このセグメント電極の平均電位は、(Vmax+Vmin)/2に等しい。
【0058】
また、駆動IC15は、外部ITO9の電位を、Vnear1(V1)からVnear2(V3)までの範囲の電位に設定する。従って、図1に示すセグメント電極4とコモン電極5とが重ならない領域では、セグメント電極の平均電位と外部ITO9の電位との差は、最大で|V3−V2|(=|V1−V2|)に抑えられる。
【0059】
このようにセグメント電極4とコモン電極5とが重ならない領域で、セグメント電極4の平均電位と外部ITO9の電位との差を抑えることができるので、消灯状態であるべき箇所が点灯状態になってしまうことを防止することができる。
【0060】
特に、駆動IC15が外部電極9の電位をV2に設定する場合には、セグメント電極4とコモン電極5とが重ならない領域で、セグメント電極4の平均電位と外部ITO9の電位との差を0にすることができるので、特に好ましい。
【0061】
よって、本発明では、トランスファー構造によって対向電極と導通される内部ITO電極(例えば、図12に例示する内部ITO65)を配置せずに表示不良を防止でき、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、図1に示すように、外部ITO9と接地電位点17との間にESD用素子16を設ける。従って、静電気により外部ITO9の電位が突発的に上昇しても外部ITO9の電位を低下させ、駆動IC15を高電圧破壊から防止することができる。
【0063】
また、上記の例ではデューティ数が8の場合(すなわち、コモン電極が8本)の場合を例に説明したが、デューティ数は特に限定されない。コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類もV0〜V5の5種類に限られない。また、既に説明したように、コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類数は、偶数であってもよい。
【0064】
また、上記の説明ではIAPT駆動の場合を例示したが、他の駆動方式で駆動してもよい。例えば、MLA(マルチラインアドレッシング法)で駆動してもよい。以下、MLA駆動の場合を例にして説明する。
【0065】
MLAでは、複数のコモン電極を同時に選択する。同時選択されるコモン電極数をLとする。そして、各コモン電極の設定電位を規定するL行K列の行列(選択行列)を予め定める。選択行列の要素は1または−1であり、選択行列の各行は、同時選択される各コモン電極に対応する。駆動IC15は、例えば、全てのコモン電極の選択が終了する毎に、選択行列の列を切り換えて選択する。
【0066】
図4は、MLA駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図である。駆動IC15は、選択行列における選択中の列のL個の要素と、正極性駆動か負極性駆動かにより、同時選択しているL個のコモン電極の電位をVmin,Vmaxのいずれかに設定し、選択していないコモン電極の電位をVcに設定する。Vc=(Vmax+Vmin)/2である。
【0067】
また、選択されている複数のコモン電極と、各セグメント電極との重なりであるL個のLCDセグメントの表示データは、“1(点灯)”または“0(消灯)”で表される。駆動IC15は、そのL個のデータからなるベクトルと、選択行列における選択中の列との内積を計算し、その内積と、正極性駆動か負極性駆動かにより、各セグメント電極の電位を設定する。一般に、MLAでは、セグメント電極に対する設定電位はL+1種類である。本例では、L=4であり、セグメント電極に対する設定電位は、V1,V2,Vc,V3,V4の5種類であるとする。ただし、V1<V2<Vc<V3<V4であり、Vc=(V1+V4)/2=(V2+V3)/2である。また、Vmin≦V1であり、V4≦Vmaxである。
【0068】
この場合、駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位は、低い順に、Vmin,V1,V2,Vc,V3,V4,Vmaxとなる。(Vmax+Vmin)/2=Vcである。従って、駆動IC5は、Vcより低くVcに直近の電位V2から、Vcより高くVcに直近の電位V3までの範囲内の電位に、外部ITO9(図1参照)の電位を設定すればよい。特に、外部ITO9の電位をVcに設定することが好ましい。このように外部ITO9の電位を設定すれば、IAPTの場合同様に、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる
【0069】
なお、上記のMLA駆動の例において、セグメント電極に設定されるV1,V4がそれぞれV1=Vmin,V4=Vmaxであってもよい。この場合にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を図5に示す。
【0070】
また、MLAにおいて、Vc=0Vとなるように、各電位が定められていてもよい。
【0071】
また、一般に、MLAでは、セグメント電極に対する設定電位はL+1種類であると述べたが、L=3で、1仮想行を設ける場合には、上記の内積の符号の種類により、セグメント電極に設定する電位の種類を2種類に減少させることができる。この2種類の電位をVp,Vqとする。ただし、Vp<Vqであり、(Vp+Vq)/2=Vcである。この場合にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を図6に示す。コモン電極およびセグメント電極に設定される電位は、低い順に、Vmin,Vp,Vc,Vq,Vmaxの5種類である。この中で、Vcより低くVcに直近の電位はVpであり、Vcより高くVcに直近の電位はVqである。従って、駆動IC5は、外部ITO9(図1参照)の電位をVp〜Vqの範囲の電位に設定すればよい。特に、Vcに設定することが好ましい。
【0072】
[実施の形態2]図7は、本発明の第2の実施の形態の例を示す説明図である。第1の実施の形態と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。第2の実施形態の液晶表示装置は、液晶表示パネル30と、駆動IC15と、ESD用素子16と、外部ITO用電位設定部27とを備える。液晶表示パネル30の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0073】
第2の実施の形態では、外部ITO9(図7参照)に対する電位設定は、駆動IC15ではなく、外部ITO用電位設定部27(以下、単に電位設定部27と記す。)が行う。電位設定部27は、電源(図示略)から供給される電圧を低下させ、外部ITO9をその低下後の電位に設定する電気部品である。例えば、電位設定部27は、電源から13.5Vの電圧を供給され、その電圧を低下させて、外部ITO9の電位を3V等に設定する。ここで述べた13.5Vや3Vは例示であり、この値に限定されるわけではない。電位設定部27として、例えば、ツェナーダイオードや三端子レギュレータを用いればよい。
【0074】
電位設定部27が外部ITO9に設定する電位は、第1の実施の形態と同様の範囲であればよい。すなわち、駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとする。駆動IC15は、コモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、(Vmax+Vmin)/2より低く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear1)から、(Vmax+Vmin)/2より高く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear2)までの範囲内の電位に、外部ITO9の電位を設定すればよい。特に、外部ITO9の電位を(Vmax+Vmin)/2に設定することが好ましい。
【0075】
このように、電位設定部27が外部ITO9の電位を定めることにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、第1の実施の形態では、駆動IC15がコモン電極およびセグメント電極に対して設定可能な電位を外部ITO9に設定する。その場合、コモン電極およびセグメント電極に対して設定する電位の種類が偶数種類である場合には、その偶数種類の電位の中に(Vmax+Vmin)/2は含まれないため、外部ITO9の電位を、最も好ましい電位である(Vmax+Vmin)/2とすることはできない。それに対し、第2の実施の形態では、駆動IC15から独立した電気部品である電位設定部27が外部ITO9の電位を定めるので、外部ITO9の設定電位を自由に定めることができる。そのため、コモン電極およびセグメント電極の設定電位とは無関係に、外部ITO9の設定電位を理想的な値((Vmax+Vmin)/2)にすることができる。
【0077】
例えば、IAPT駆動を行う場合に、コモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の種類が、図8に示すように、V0〜V5の6種類であるとする。ただし、V0<V1<V2<V3<V4<V5であるとする。この場合、(Vmax+Vmin)/2=(V0+V5)/2であり、Vnear1=V2、Vnear2=V3である。駆動IC15は、最も好ましい電位である(V0+V5)/2を設定できないが、電位設定部27は外部ITO9の設定電位を自由に定めることができるので、外部ITO9の電位を(V0+V5)/2とすることができる。
【0078】
なお、各実施の形態において、液晶表示パネル30の背面側にも外部ITOを設けてもよい。その場合、その背面側の外部ITO(図示略)の電位も、視認側の外部ITO9(図1、図7参照)と等電位に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、静電気による表示不良の発生防止が求められる液晶表示装置に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態の例を示す説明図。
【図2】コモン電極の駆動波形の例を示す説明図。
【図3】セグメント電極の駆動波形の例を示す説明図。
【図4】MLA駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図。
【図5】MLA駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図。
【図6】コモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の他の例を示す説明図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の例を示す説明図。
【図8】IAPT駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図。
【図9】液晶表示パネルの上面に帯電防止層としてITOを設けた構成の例を示す模式的断面図。
【図10】外部ITOを設けても表示不良が生じる状態の例を示す説明図。
【図11】セグメント電極と外部ITOとの間の電位差の例を示す説明図。
【図12】外部ITOとセグメント電極との間に生じる電圧に起因する表示不良を防止する液晶表示パネルの構成例を示す説明図。
【図13】液晶表示画面の例を示す説明図。
【図14】液晶表示パネルにおける各電極およびシール材の配置例を示す説明図。
【符号の説明】
【0081】
1 第1ガラス基板
2 第2ガラス基板
3 液晶
4 セグメント電極
5 コモン電極
9 ITO電極(外部ITO)
15 駆動IC
16 ESD用素子
17 接地電位点
27 外部ITO用電位設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置に関し、特に、静電気による表示不良を防止可能な液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルの表面に静電気が発生すると、その静電気により液晶に電圧が印加され、表示不良が生じる。このような表示不良を防止するため、液晶表示パネルの上面に帯電防止層を設け、その帯電防止層に生起した静電気を放電する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された液晶表示パネルでは、上面の偏光板上にInTiO3の帯電防止層が設けられる。また、接地パッドに接続されたメタルフレーム(金属フレーム)と帯電防止層とを電気的に接続させている。この結果、液晶表示パネルの上面に生起した静電気は放電され、静電気による表示不良を抑えることができる。
【0003】
図9は、液晶表示パネルの上面に帯電防止層としてITOを設けた構成の例を示す模式的断面図である。図9に示す液晶表示パネルは、セグメント電極54が設けられた第1ガラス基板51と、コモン電極55が設けられた第2ガラス基板52との間に液晶53を挟持する。セグメント電極54およびコモン電極55は、それぞれITO(Indium Tin Oxide)電極である。第1ガラス基板51の外側の面には、偏光板56および拡散板57が設けられ、また、第1ガラス基板51にはピン62,63が取り付けられている。また、第2ガラス基板52の外側の面には、ITO電極59が設けられ、ITO電極59の上層に偏光板58が設けられている。以下、ITO電極59をコモン電極55やセグメント電極54と区別し、外部ITO59と記す。外部ITO59は、偏光板58より広く形成され、偏光板58が存在しない領域の少なくとも一部に導電性弾性体60が設けられる。さらに、液晶表示パネルの外縁にメタルフレーム61が設けられている。メタルフレーム61は接地され、また、導電性弾性体60を介して外部ITO59に電気的に接続されている。
【0004】
液晶表示パネルの第2ガラス基板52側に静電気が発生したとしても、静電気は外部ITO59から、導電性弾性体60およびメタルフレーム61を介して放電される。図9に例示する構成は、特許文献1に記載された構成と、偏光板および帯電防止層の積層順が異なっているが、帯電防止層(図9に示す例では外部ITO59)からメタルフレームを介して静電気を放電する点で同様である。
【0005】
図9に例示した構成では、外部ITO59からメタルフレーム61を介して放電するが、図9に示す構成だけでは、表示不良を改善できない場合があった。図10は、外部ITOを設けても表示不良が生じる状態の例を示す説明図である。図9と同一の要素には、図9と同一の符号を付す。ただし、図10では、導電性弾性体60、メタルフレーム61、ピン62,63、拡散板57の図示を省略している。
【0006】
コモン電極55およびセグメント電極54が重なる領域71の液晶の印加電圧は、コモン電極55およびセグメント電極54の電位を設定することにより制御される。また、セグメント電極54が存在するが、コモン電極が存在しない領域72では、領域71における所望の表示以外の表示が行われないように液晶が一定の状態を保つことが好ましい。しかし、画像表示のためにセグメント電極54は、適宜、電位が切り替えられる。すると、セグメント電極54と、常時、接地電位である外部ITO59との間に電位差が生じる。図11は、セグメント電極54と外部ITO59との間の電位差の例を示す説明図である。例えば、図11に示すように、液晶表示パネルの駆動時に、セグメント電極54が接地電位(GNDと記す。)および、GND以上の電位(Vaとする。)に切り替えられるとする。すると、セグメント電極54の平均電位はVa/2となり、セグメント電極54および外部ITO58の間に電位差が生じる。セグメント電極54および外部ITO58との間に第2ガラス基板52が存在するので、領域72の液晶に電圧Va/2が直接印加されるわけではないが、微少な直流電圧が印加されることにより、領域72の液晶は時間の経過とともに光透過状態になってしまう。すなわち、本来、光透過状態となるべきでない箇所が光透過状態になってしまう。
【0007】
図12は、外部ITO59とセグメント電極54との間に生じる電圧に起因する表示不良を防止する液晶表示パネルの構成例を示す説明図である。図9と同一の要素には、図9と同一の符号を付す。ただし、図12では、導電性弾性体60、メタルフレーム61、ピン62,63、拡散板57の図示を省略している。図12に示す構成では、セグメント電極54が存在するが、コモン電極が存在しない領域72において、第2ガラス基板55上における液晶側の面にITO電極65を設ける。ITO電極65は、液晶53を介してセグメント電極54に対向するように形成される。以下、ITO電極65を、コモン電極55、セグメント電極54、および外部ITO59と区別し、内部ITOと記す。
【0008】
内部ITO65は、対向するセグメント電極54と等しい電位に設定される。具体的には、2枚のガラス基板51,52間に液晶を封止するためのシール材(図示略)に導電性ビーズを含め、導電性ビーズを介して、内部ITO65とセグメント電極54とを電気的に接続するトランスファー構造とする。内部ITO65は、セグメント電極54に電気的に接続されていることにより、常にセグメント電極と等しい電位となる。この結果、領域72において、液晶に電圧が印加されることはなく、図10を参照して説明した表示不良を防止できる。
【0009】
特許文献2には、一方の基板上に信号線を設け、他方の基板上に信号線に対向するダミー電極を設け、ダミー電極と信号線とを接続配線で接続させる液晶パネルが記載されている。
【0010】
【特許文献1】特開平5−188388号公報(段落0009−0021)
【特許文献2】特開2003−161959号公報(段落0013−0019)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図12に示すように、第2ガラス基板52上に内部ITO65を形成することにより、コモン電極が存在しない領域72における表示不良の発生を防止することができる。しかし、トランスファー構造でセグメント電極54に接続される内部ITO65を常に形成できるとは限らず、内部ITO65を形成できない場合には、外部ITO59とセグメント電極54との電位差により表示不良が生じる場合がある。
【0012】
例えば、セグメント電極およびコモン電極を電気的に接続させてはならないため、シール材を配置する箇所において一方の基板上のセグメント電極と他方の基板上のコモン電極とが交差する場合、そのシール材には導電性ビーズを含めない。その結果、トランスファー構造でセグメント電極54に接続される内部ITO65を第2ガラス基板52に設けることができない場合がある。
【0013】
また、例えば、第2ガラス基板52に内部ITO65を配置したとしても、その内部ITO65が、他の内部ITOやコモン電極55に囲まれてしまい、シール材まで引き廻すことができず、トランスファー構造でセグメント電極54に接続させることができない場合がある。
【0014】
以下、具体例を示す。図13は、液晶表示画面の例を示す説明図である。図13に示す各領域81は、コモン電極およびセグメント電極が重なる領域であり、各領域81の液晶の状態を制御して表示を行う。
【0015】
図14は、図13に示す例示する液晶表示パネルにおける各電極およびシール材の配置例を示す説明図である。図14(a)は、第2ガラス基板52に形成されたコモン電極および内部ITOを示す。図14(a)では、コモン電極55a,55bおよび内部ITO65a〜65fが配置される。図14(a)に示す例では、2つのコモン電極55a,55bが順次選択される。図14(b)は、第1ガラス基板51に形成されたセグメント電極、およびコモン電極55a,55bに接続される端子54g,54hを示す。図14(b)に示す例では、各セグメント電極54a〜54f以外に、第2ガラス基板上のコモン電極および内部ITOに対向する対向電極82が設けられている場合を示している。
【0016】
図14(c)は、第2ガラス基板52に形成されたシール材を示す。図14(c)に示すシール材83は、電導性ビーズを含む。また、図14(d)は、第1ガラス基板51に形成されたシール材を示す。図14(d)に示すシール材84は、電導性ビーズを含まない。各ガラス基板51,52を対向させ、電導性ビーズを含むシール材83と、電導性ビーズを含まないシール材84とに囲まれた空間に液晶が封止される。
【0017】
図14(a)に示すコモン電極55bと、図14(b)に示すセグメント電極54eとを導通状態にしないように、図14(d)に示すシール材84には電導性ビーズが含められない。すると、図14(a)に示す領域91には、内部ITOを配置しても、トランスファー構造でセグメント電極に接続させることができない。
【0018】
また、図14(a)に示す領域92は、周囲をコモン電極55a,55bおよび内部ITO65aに囲まれている。そのため、領域92には、内部ITOを配置しても、トランスファー構造でセグメント電極に接続させることはできない。
【0019】
このように、図14(a)に示す領域91,92では、トランスファー構造でセグメント電極に接続される内部ITOを配置できないため、外部ITOとセグメント電極との電位差により表示不良が発生し得る。
【0020】
このような問題は、表示を視認する視認者側のガラス基板(第2ガラス基板52)にセグメント電極を形成し、背面側のガラス基板(第1ガラス基板51)にコモン電極を形成し、視認者側のガラス基板にITOを形成する場合でも、同様に発生する。
【0021】
そこで、本発明は、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる液晶表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明による液晶表示装置は、コモン電極が設けられた透明基板(例えば、第2ガラス基板2)と、セグメント電極が設けられた透明基板(例えば、第1ガラス基板1)との間に液晶を挟持する液晶表示パネル(例えば、液晶表示パネル30)を備え、液晶表示パネルの視認側の透明基板(例えば、第2ガラス基板2)は、液晶側とは反対側の面に設けられる透明電極である外部透明電極(例えば、外部ITO9)を備え、コモン電極およびセグメント電極の電位を設定する駆動手段(例えば、駆動IC15)と、駆動手段がコモン電極に設定する各電位および駆動手段がセグメント電極に設定する各電位のうち最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとしたときに、駆動手段がコモン電極に設定する各電位および駆動手段がセグメント電極に設定する各電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に外部透明電極の電位を設定する外部透明電極電位設定手段(例えば、第1の実施の形態における駆動IC15や、第2の実施形態における外部ITO用電位設定部27)とを備えることを特徴とする。
【0023】
外部透明電極電位設定手段が、外部透明電極の電位を(Vmax+Vmin)/2に設定することが好ましい。
【0024】
また、外部透明電極の電位が所定値以上になったときに、外部透明電極の電位を低下させる外部透明電極電位調節手段(例えば、ESD用素子16)を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、液晶表示パネルの視認側の透明基板が、液晶側とは反対側の面に設けられる透明電極である外部透明電極を備え、外部透明電極電位設定手段が、駆動手段がコモン電極に設定する各電位および駆動手段がセグメント電極に設定する各電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に外部透明電極の電位を設定するので、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。以下の説明で、点灯状態とは、バックライトの光が液晶表示パネルを透過する状態を意味し、消灯状態とはバックライトの光が液晶表示パネルで遮断される状態を意味する。
【0027】
[実施の形態1]図1は、本発明の第1の実施の形態の例を示す説明図である。本発明の液晶表示装置は、液晶表示パネル30と、駆動IC15と、ESD(Electrostatic Discharge )用素子16とを備える。駆動IC15は、液晶表示パネル30を駆動するドライバIC(Integrated Circuit)である。
【0028】
液晶表示パネル30は、セグメント電極4が設けられた第1ガラス基板1と、コモン電極5が設けられた第2ガラス基板2との間に液晶3を挟持する。以下、コモン電極4とセグメント電極5がいずれも複数設けられている場合を例にして説明する。なお、液晶3は、各ガラス基板1,2およびシール材によって封止されるが、シール材の図示は省略している。
【0029】
液晶表示パネル30の種類は、特に限定されない。例えば、TN(Twisted Nematic)モードや、STN(Super-Twisted Nematic)モードであってもよい。また、誘電率異方性が負の液晶を用い、液晶とコモン電極およびセグメント電極との界面に、垂直配向膜を設けた液晶表示パネルであってもよい。
【0030】
各ガラス基板1,2は、いずれも透明基板である。以下、表示が視認される側(視認側と記す。)のガラス基板である第2ガラス基板2にコモン電極5が設けられ、背面側に配置される第1ガラス基板1にセグメント電極4が設けられる場合を例にして説明するが、第2ガラス基板2にセグメント電極が設けられ、第1ガラス基板1にコモン電極が設けられていてもよい。
【0031】
コモン電極5およびセグメント電極4は、いずれもITO電極であり、それぞれ複数設けられる。
【0032】
また、液晶表示パネル30の視認側に配置される第2ガラス基板2は、液晶3が存在している側の面とは反対側の面にITO電極9を備える。以下、ITO電極9を外部ITO9と記す。外部ITO9は、例えば、第2ガラス基板2の視認側の面全体に設けられる。
【0033】
外部ITO9の上層には、その外部ITO9よりも狭い範囲に偏光板8が設けられる。また、第1ガラス基板1は、液晶3が存在している側の面とは反対側の面に偏光板6を備える。なお、図示を省略しているが、図9に例示する構成と同様に、背面側の偏光板6上に拡散板が設けられていてもよい。拡散板は、バックライトの光を液晶表示パネル30の背面側から拡散して照射する。
【0034】
外部ITO9のうち、偏光板8が存在しない領域には、非電導弾性体10が設けられる。また、液晶表示パネルの外縁にメタルフレーム11が設けられる。メタルフレーム11は接地されていてもよい。ただし、外部ITO9とメタルフレーム11との間には非電導弾性体10が存在するので、外部ITO9およびメタルフレーム11は、電気的に接続されていない。
【0035】
駆動IC15は、複数のコモン電極5および複数のセグメント電極4の電位を設定することにより、コモン電極5とセグメント電極4とが重なる領域の液晶の状態を制御する。駆動IC15は、コモン電極5を順に選択し、選択したコモン電極を選択時電位に設定し、選択していないコモン電極を非選択時電位に設定する。また、駆動IC15は、選択したコモン電極と重なる各セグメント電極を、画像データ(表示状態を規定するデータ)に応じて定められた各電位に設定する。
【0036】
駆動IC15は、選択したコモン電極および各セグメント電極の電位を設定することで、そのコモン電極および各セグメント電極間の液晶に電圧を印加する。そして、選択するコモン電極を順次、切り替えることで、液晶表示パネルに画像を表示する。
【0037】
駆動IC15は、第1ガラス基板1上の各セグメント電極4および第2ガラス基板2上の各コモン電極5の電位をそれぞれ設定するが、コモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位は複数種類ある。図1では電位の種類がV0〜V4の5種類であり、駆動IC15が電極に設定できる電位の種類は、この5種類である。本例では、V0<V1<V2<V3<V4であるものとする。このとき、V2=(V0+V4)/2=(V1+V3)/2である。また、図1では、V0が接地電位(GND)である場合を例示しているが、V0は接地電位でなくてもよい。
【0038】
駆動IC15は、コモン電極の設定電位の最大値と最小値の平均値と、セグメント電極の設定電位の最大値と最小値の平均値とが一致するように、コモン電極およびセグメント電極の電位を設定する。本例では、コモン電極の設定電位の最大値、最小値はそれぞれV4,V0であり、その平均値はV2である。また、セグメント電極の設定電位に関しても、最大値、最小値はそれぞれV4,V0であり、その平均値はV2である。コモン電極およびセグメント電極の電位変化(駆動波形)の例については後述する。
【0039】
また、駆動IC15は、外部ITO9の電位も設定し、外部ITO9の電位を一定に保つ。駆動IC15が外部ITO9に設定する電位について説明する。駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとする。駆動IC15は、コモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、(Vmax+Vmin)/2より低く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear1と記す。)から、(Vmax+Vmin)/2より高く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear2と記す。)までの範囲内の電位に、外部ITO9の電位を設定する。すなわち、外部ITO9の電位を、Vnear1〜Vnear2の範囲の電位に設定する。
【0040】
図1に示す例では、コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類は、V0〜V4までの5種類である。そして、Vmax=V4,Vmin=V0であり、(Vmax+Vmin)/2=V2である。よって、Vnear1は、V2より低くV2に直近の電位であるV1である。また、Vnear2は、V2より高くV2に直近の電位であるV3である。従って、駆動IC15は、外部ITO9の電位を、V1〜V3の範囲の電位に設定すればよい。
【0041】
Vnear1〜Vnear2の範囲の電位のうち、最も好ましい電位は(Vmax+Vmin)/2である。図1に示す例では、駆動IC15が、外部ITO9の電位を、(Vmax+Vmin)/2に該当するV2に設定する場合を示している。コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類が奇数種類である場合、その電位の中に(Vmax+Vmin)/2が含まれる。この場合には、駆動IC15は、外部ITO9の電位を、(Vmax+Vmin)/2に設定することが好ましい。
【0042】
ただし、図1に示す駆動IC15は、外部ITO9の電位をV1(=Vnear1)、または、V3(=Vnear2)に設定してもよい。
【0043】
また、コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類が偶数種類である場合、その偶数種類の電位の中に(Vmax+Vmin)/2は含まれない。その場合、駆動IC15は、外部ITO9の電位をVnear1またはVnear2に設定すればよい。
【0044】
例えば、コモン電極およびセグメント電極に対する設定電位の種類がV0、V1,V2,V3の4種類であり、駆動IC15が設定できる電位もこの4種類であるとする。また、V0<V1<V2<V3であるとする。(Vmax+Vmin)/2がV1,V2間の電位であれば、駆動IC15は、電位(Vmax+Vmin)/2を設定することはできない。この場合、Vnear1=V1、Vnear2=V2であり、駆動IC15は、外部ITO9の電位をV1,V2のいずれかに設定すればよい。
【0045】
外部ITO9の電位は、駆動IC15によって設定されるが、静電気が生じることで突発的に上昇することがある。ESD用素子16は、外部ITO9の電位が所定値以上になったときに、外部ITO9の電位を低下させる。静電気が生じて外部ITO9の電位が突発的に上昇しても、ESD用素子16により、外部ITO9の電位は低下する。その結果、駆動IC15は、静電気に起因する高電圧破壊から保護される。
【0046】
ここでは、ESD用素子16がバリスタである場合を例にして説明する。バリスタ(ESD用素子)16は、外部ITO9と接地電位点17とを接続させる。接地電位点17の電位は、常時、接地電位である。バリスタ16は、外部ITO9と接地電位点17との電位差が所定値に達していなければ、高抵抗となり、外部ITO9から接地電位点17への電流を発生させない。外部ITO9がVnear1〜Vnear2の範囲の電位に設定されているときは、この状態となり、外部ITO9から接地電位点17に電流は流れない。一方、外部ITO9の電位が上昇し、外部ITO9と接地電位点17との電位差が所定値以上となったとき、バリスタ16の抵抗は低下し、バリスタ16を介して外部ITO9から接地電位点17に電流が流れる。この結果、外部ITO9の電位は低下するので、駆動IC15は、静電気による高電圧から保護される。
【0047】
ここでは、ESD用素子16がバリスタである場合を例にして説明したが、ESD用素子16はバリスタに限定されず、外部ITO9の電位が所定値以上となったときに外部ITO9の電位を低下させる素子であればよい。例えば、バリスタ以外に、保護ダイオードやサイリスタをESD用素子16として用いてもよい。
【0048】
次に、動作について説明する。ここでは、コモン電極が8本あり、IAPT(Improved Alto-Pleshko Technique )で駆動する場合を例にする。既に説明したように、図1に示す例では、駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の種類は、V0〜V4の5種類であり、V2=(V0+V4)/2である。V0〜V4のうち、駆動IC15は、各コモン電極に対してV0,V1,V3,V4のいずれかの電位を設定し、各セグメント電極に対してV0,V2,V4のいずれかを設定する。
【0049】
また、駆動IC15は、コモン電極の選択期間Tの間に正極性駆動と負極性駆動とを切り替える。正極性駆動とは、選択したコモン電極の電位がセグメント電極の電位よりも高くなるように駆動することである。負極性駆動とは、選択したコモン電極の電位がセグメント電極の電位より低くなるように駆動することである。以下、選択期間Tの前半で負極性駆動を行い、後半で正極性駆動を行う場合を例にして説明する。
【0050】
図2は、コモン電極の駆動波形の例を示す説明図であり、図3は、セグメント電極の駆動波形の例を示す説明図である。
【0051】
第1コモン電極の選択期間を例に説明する。駆動IC15は、選択期間Tの前半では、選択している第1コモン電極の電位をV0に設定し、その選択期間Tの後半では、選択している第1コモン電極の電位をV4に設定する(図2参照)。そして、駆動IC15は、第1コモン電極の選択期間の前半では、選択していないコモン電極の電位をV3に設定する。そして、その選択期間の後半では、選択していないコモン電極の電位をV1に設定する。
【0052】
よって、いずれのコモン電極も、設定される電位の平均値はV2である。
【0053】
また、駆動IC15は、選択したコモン電極と各セグメント電極とが交差する領域(LCDセグメントと記す。)のうち、点灯状態とすべきLCDセグメントにおけるセグメント電極の電位を、第1コモン電極の選択期間の前半ではV4に設定して、その選択期間での後半ではV0に設定する(図3参照)。すると、第1コモン電極の選択期間中、点灯状態とすべきLCDセグメントの液晶には、|V0−V4|の電圧が印加される。具体的には、選択期間の前半で|V0−V4|の電圧が印加され、後半では|V4−V0|の電圧が印加されるが、その電圧の大きさは一定である。また、これらのセグメント電極と、選択されていないコモン電極との電位差は、第1コモン電極の選択期間の前半では|V3−V4|となり、後半では|V1−V0|となるが、その値は一定である。
【0054】
また、駆動IC15は、選択したコモン電極と各セグメント電極とが交差する領域のうち、消灯状態とすべきLCDセグメントにおけるセグメント電極の電位を、第1コモン電極の選択期間中、V2に設定する。すると、第1コモン電極の選択期間中、点灯状態とすべきLCDセグメントの液晶には、|V0−V2|の電圧が印加される。具体的には、選択期間の前半で|V0−V2|の電圧が印加され、後半では|V4−V2|の電圧が印加されるが、その電圧の大きさは一定である。また、これらのセグメント電極と、選択されていないコモン電極との電位差は、第1コモン電極の選択期間の前半では|V3−V2|となり、後半では|V1−V2|となるが、その値は一定である。
【0055】
第1コモン電極の選択期間終了後、駆動IC15は、次のコモン電極を選択し、同様の動作を繰り返す。また、最後のコモン電極(第8コモン電極)の選択期間の終了後には、再び、第1コモン電極から順次、コモン電極を選択していく。この結果、各LCDセグメントの状態が点灯または消灯状態に制御され、所望の画像が表示される。
【0056】
セグメント電極は、各コモン電極との交差部分が全て消灯状態であると画像データで定められている場合には、電位V2に設定され続けることになる(図3参照)。また、セグメント電極は、各コモン電極との交差部分が全て点灯状態であると画像データで定められている場合には、設定電位をV4,V0に交互に切り替えられ、その平均値はV2となる(図3参照)。
【0057】
各LCDセグメントを点灯状態にするか消灯状態にするかによらず、セグメント電極4の平均電位はV2となる。このセグメント電極の平均電位は、(Vmax+Vmin)/2に等しい。
【0058】
また、駆動IC15は、外部ITO9の電位を、Vnear1(V1)からVnear2(V3)までの範囲の電位に設定する。従って、図1に示すセグメント電極4とコモン電極5とが重ならない領域では、セグメント電極の平均電位と外部ITO9の電位との差は、最大で|V3−V2|(=|V1−V2|)に抑えられる。
【0059】
このようにセグメント電極4とコモン電極5とが重ならない領域で、セグメント電極4の平均電位と外部ITO9の電位との差を抑えることができるので、消灯状態であるべき箇所が点灯状態になってしまうことを防止することができる。
【0060】
特に、駆動IC15が外部電極9の電位をV2に設定する場合には、セグメント電極4とコモン電極5とが重ならない領域で、セグメント電極4の平均電位と外部ITO9の電位との差を0にすることができるので、特に好ましい。
【0061】
よって、本発明では、トランスファー構造によって対向電極と導通される内部ITO電極(例えば、図12に例示する内部ITO65)を配置せずに表示不良を防止でき、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、図1に示すように、外部ITO9と接地電位点17との間にESD用素子16を設ける。従って、静電気により外部ITO9の電位が突発的に上昇しても外部ITO9の電位を低下させ、駆動IC15を高電圧破壊から防止することができる。
【0063】
また、上記の例ではデューティ数が8の場合(すなわち、コモン電極が8本)の場合を例に説明したが、デューティ数は特に限定されない。コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類もV0〜V5の5種類に限られない。また、既に説明したように、コモン電極に設定される各電位およびセグメント電極に設定される各電位の種類数は、偶数であってもよい。
【0064】
また、上記の説明ではIAPT駆動の場合を例示したが、他の駆動方式で駆動してもよい。例えば、MLA(マルチラインアドレッシング法)で駆動してもよい。以下、MLA駆動の場合を例にして説明する。
【0065】
MLAでは、複数のコモン電極を同時に選択する。同時選択されるコモン電極数をLとする。そして、各コモン電極の設定電位を規定するL行K列の行列(選択行列)を予め定める。選択行列の要素は1または−1であり、選択行列の各行は、同時選択される各コモン電極に対応する。駆動IC15は、例えば、全てのコモン電極の選択が終了する毎に、選択行列の列を切り換えて選択する。
【0066】
図4は、MLA駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図である。駆動IC15は、選択行列における選択中の列のL個の要素と、正極性駆動か負極性駆動かにより、同時選択しているL個のコモン電極の電位をVmin,Vmaxのいずれかに設定し、選択していないコモン電極の電位をVcに設定する。Vc=(Vmax+Vmin)/2である。
【0067】
また、選択されている複数のコモン電極と、各セグメント電極との重なりであるL個のLCDセグメントの表示データは、“1(点灯)”または“0(消灯)”で表される。駆動IC15は、そのL個のデータからなるベクトルと、選択行列における選択中の列との内積を計算し、その内積と、正極性駆動か負極性駆動かにより、各セグメント電極の電位を設定する。一般に、MLAでは、セグメント電極に対する設定電位はL+1種類である。本例では、L=4であり、セグメント電極に対する設定電位は、V1,V2,Vc,V3,V4の5種類であるとする。ただし、V1<V2<Vc<V3<V4であり、Vc=(V1+V4)/2=(V2+V3)/2である。また、Vmin≦V1であり、V4≦Vmaxである。
【0068】
この場合、駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位は、低い順に、Vmin,V1,V2,Vc,V3,V4,Vmaxとなる。(Vmax+Vmin)/2=Vcである。従って、駆動IC5は、Vcより低くVcに直近の電位V2から、Vcより高くVcに直近の電位V3までの範囲内の電位に、外部ITO9(図1参照)の電位を設定すればよい。特に、外部ITO9の電位をVcに設定することが好ましい。このように外部ITO9の電位を設定すれば、IAPTの場合同様に、セグメント電極とコモン電極とが重なっていない領域全体で表示不良を防止することができる
【0069】
なお、上記のMLA駆動の例において、セグメント電極に設定されるV1,V4がそれぞれV1=Vmin,V4=Vmaxであってもよい。この場合にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を図5に示す。
【0070】
また、MLAにおいて、Vc=0Vとなるように、各電位が定められていてもよい。
【0071】
また、一般に、MLAでは、セグメント電極に対する設定電位はL+1種類であると述べたが、L=3で、1仮想行を設ける場合には、上記の内積の符号の種類により、セグメント電極に設定する電位の種類を2種類に減少させることができる。この2種類の電位をVp,Vqとする。ただし、Vp<Vqであり、(Vp+Vq)/2=Vcである。この場合にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を図6に示す。コモン電極およびセグメント電極に設定される電位は、低い順に、Vmin,Vp,Vc,Vq,Vmaxの5種類である。この中で、Vcより低くVcに直近の電位はVpであり、Vcより高くVcに直近の電位はVqである。従って、駆動IC5は、外部ITO9(図1参照)の電位をVp〜Vqの範囲の電位に設定すればよい。特に、Vcに設定することが好ましい。
【0072】
[実施の形態2]図7は、本発明の第2の実施の形態の例を示す説明図である。第1の実施の形態と同様の構成要素については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。第2の実施形態の液晶表示装置は、液晶表示パネル30と、駆動IC15と、ESD用素子16と、外部ITO用電位設定部27とを備える。液晶表示パネル30の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0073】
第2の実施の形態では、外部ITO9(図7参照)に対する電位設定は、駆動IC15ではなく、外部ITO用電位設定部27(以下、単に電位設定部27と記す。)が行う。電位設定部27は、電源(図示略)から供給される電圧を低下させ、外部ITO9をその低下後の電位に設定する電気部品である。例えば、電位設定部27は、電源から13.5Vの電圧を供給され、その電圧を低下させて、外部ITO9の電位を3V等に設定する。ここで述べた13.5Vや3Vは例示であり、この値に限定されるわけではない。電位設定部27として、例えば、ツェナーダイオードや三端子レギュレータを用いればよい。
【0074】
電位設定部27が外部ITO9に設定する電位は、第1の実施の形態と同様の範囲であればよい。すなわち、駆動IC15がコモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとする。駆動IC15は、コモン電極に設定する各電位およびセグメント電極に設定する各電位の全てのうち、(Vmax+Vmin)/2より低く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear1)から、(Vmax+Vmin)/2より高く、(Vmax+Vmin)/2に直近の電位(Vnear2)までの範囲内の電位に、外部ITO9の電位を設定すればよい。特に、外部ITO9の電位を(Vmax+Vmin)/2に設定することが好ましい。
【0075】
このように、電位設定部27が外部ITO9の電位を定めることにより、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
また、第1の実施の形態では、駆動IC15がコモン電極およびセグメント電極に対して設定可能な電位を外部ITO9に設定する。その場合、コモン電極およびセグメント電極に対して設定する電位の種類が偶数種類である場合には、その偶数種類の電位の中に(Vmax+Vmin)/2は含まれないため、外部ITO9の電位を、最も好ましい電位である(Vmax+Vmin)/2とすることはできない。それに対し、第2の実施の形態では、駆動IC15から独立した電気部品である電位設定部27が外部ITO9の電位を定めるので、外部ITO9の設定電位を自由に定めることができる。そのため、コモン電極およびセグメント電極の設定電位とは無関係に、外部ITO9の設定電位を理想的な値((Vmax+Vmin)/2)にすることができる。
【0077】
例えば、IAPT駆動を行う場合に、コモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の種類が、図8に示すように、V0〜V5の6種類であるとする。ただし、V0<V1<V2<V3<V4<V5であるとする。この場合、(Vmax+Vmin)/2=(V0+V5)/2であり、Vnear1=V2、Vnear2=V3である。駆動IC15は、最も好ましい電位である(V0+V5)/2を設定できないが、電位設定部27は外部ITO9の設定電位を自由に定めることができるので、外部ITO9の電位を(V0+V5)/2とすることができる。
【0078】
なお、各実施の形態において、液晶表示パネル30の背面側にも外部ITOを設けてもよい。その場合、その背面側の外部ITO(図示略)の電位も、視認側の外部ITO9(図1、図7参照)と等電位に設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、静電気による表示不良の発生防止が求められる液晶表示装置に好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の第1の実施の形態の例を示す説明図。
【図2】コモン電極の駆動波形の例を示す説明図。
【図3】セグメント電極の駆動波形の例を示す説明図。
【図4】MLA駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図。
【図5】MLA駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図。
【図6】コモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の他の例を示す説明図。
【図7】本発明の第2の実施の形態の例を示す説明図。
【図8】IAPT駆動時にコモン電極およびセグメント電極に設定される各電位の例を示す説明図。
【図9】液晶表示パネルの上面に帯電防止層としてITOを設けた構成の例を示す模式的断面図。
【図10】外部ITOを設けても表示不良が生じる状態の例を示す説明図。
【図11】セグメント電極と外部ITOとの間の電位差の例を示す説明図。
【図12】外部ITOとセグメント電極との間に生じる電圧に起因する表示不良を防止する液晶表示パネルの構成例を示す説明図。
【図13】液晶表示画面の例を示す説明図。
【図14】液晶表示パネルにおける各電極およびシール材の配置例を示す説明図。
【符号の説明】
【0081】
1 第1ガラス基板
2 第2ガラス基板
3 液晶
4 セグメント電極
5 コモン電極
9 ITO電極(外部ITO)
15 駆動IC
16 ESD用素子
17 接地電位点
27 外部ITO用電位設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コモン電極が設けられた透明基板と、セグメント電極が設けられた透明基板との間に液晶を挟持する液晶表示パネルを備え、
前記液晶表示パネルの視認側の透明基板は、液晶側とは反対側の面に設けられる透明電極である外部透明電極を備え、
前記コモン電極および前記セグメント電極の電位を設定する駆動手段と、
駆動手段が前記コモン電極に設定する各電位および駆動手段が前記セグメント電極に設定する各電位のうち最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとしたときに、駆動手段が前記コモン電極に設定する各電位および駆動手段が前記セグメント電極に設定する各電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に前記外部透明電極の電位を設定する外部透明電極電位設定手段とを備える
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
外部透明電極電位設定手段は、外部透明電極の電位を(Vmax+Vmin)/2に設定する
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
外部透明電極の電位が所定値以上になったときに、当該外部透明電極の電位を低下させる外部透明電極電位調節手段を備える
請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項1】
コモン電極が設けられた透明基板と、セグメント電極が設けられた透明基板との間に液晶を挟持する液晶表示パネルを備え、
前記液晶表示パネルの視認側の透明基板は、液晶側とは反対側の面に設けられる透明電極である外部透明電極を備え、
前記コモン電極および前記セグメント電極の電位を設定する駆動手段と、
駆動手段が前記コモン電極に設定する各電位および駆動手段が前記セグメント電極に設定する各電位のうち最大の電位をVmaxとし、最小の電位をVminとしたときに、駆動手段が前記コモン電極に設定する各電位および駆動手段が前記セグメント電極に設定する各電位のうち、(Vmax+Vmin)/2より低い直近の電位から(Vmax+Vmin)/2より高い直近の電位までの範囲内の電位に前記外部透明電極の電位を設定する外部透明電極電位設定手段とを備える
ことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
外部透明電極電位設定手段は、外部透明電極の電位を(Vmax+Vmin)/2に設定する
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
外部透明電極の電位が所定値以上になったときに、当該外部透明電極の電位を低下させる外部透明電極電位調節手段を備える
請求項1または請求項2に記載の液晶表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−15030(P2010−15030A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175754(P2008−175754)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】
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