説明

混合リガンドヒドロホルミル化プロセスにおけるノルマル:イソアルデヒド比の制御

ノルマル(N)およびイソ(I)アルデヒドをN:I比で製造するための直列の複数(例えば2つ)の反応ゾーンのヒドロホルミル化プロセスを制御する方法であり、方法は、オレフィン性不飽和化合物を、合成ガス、ならびに、(A)遷移金属(例えばロジウム)、(B)オルガノビスホスファイトリガンドおよび(C)オルガノモノホスファイトリガンドを含む触媒と接触させることを含み、該接触を、第1および後続の1つまたは複数の反応ゾーン内で、各ゾーン内の遷移金属濃度を含むヒドロホルミル化条件で行い、該方法が、第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を低減させてN:I比を低減させること、または第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を増大させてN:I比を増大させること、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ヒドロホルミル化プロセスに関する。一側面において、本発明は、遷移金属(例えばロジウム)触媒を用いるヒドロホルミル化プロセスの直鎖 対 分岐の異性体比の制御に関し、一方別の側面において、本発明は、2つのホスファイトリガンドの混合物を用いて遷移金属が可溶化されるようなプロセスに関する。更に別の側面において、本発明は、リガンドの破壊を伴わない、アルデヒド生成物の直鎖 対 分岐の異性体比の制御である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
可変のノルマル(すなわち直鎖)対イソ(すなわち分岐)指数(VNI)ヒドロホルミル化プロセス(例えば第WO2008/115740号に記載されるもの)は、2つのホスファイトリガンドの混合物を用いてノルマル:イソアルデヒド生成物混合物の調整可能な選択性を可能にする。特に、3成分触媒系は、遷移金属(典型的にはロジウム(Rh))、オルガノポリホスファイトリガンド(典型的にはオルガノビスホスファイトリガンド(obpl))、およびオルガノモノホスファイトリガンド(ompl)を用い、ここでオルガノモノホスファイトリガンド 対 ロジウム(ompl:Rh)モル比は典型的には5対1を超えて(>5:1)維持され、オルガノビスホスファイトリガンド 対 ロジウム(obpl:Rh)モル比は、0から1:1の間に制御されて、N:Iを、obpl:Rhモル比(典型的にはプロピレンについて20から40の間)で得られるものに対してompl:Rh モル比(典型的には1から5の間)に専ら基づいて得られる範囲に亘って制御する。N:Iを制御する従来法は、オルガノビスホスファイトリガンド 対 ロジウム比を制御することである。特に、N:Iを低減させる方法は、オルガノビスホスファイトリガンドを、酸化および加水分解によるリガンドの自然分解を通じてより低濃度にすることである。しかしこの方法の困難な点は、オルガノビスホスファイトリガンドの自然分解が遅い(すなわち時間がかかる)ことである。オルガノビスホスファイトリガンドの分解速度を増大させることは公知であるが、この方法はプロセスの価格を増大させる。関心事は、高価なオルガノビスホスファイトリガンドを分解させることなくN:Iを制御する方法である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の簡単な要約
一態様において、本発明は、ノルマル(N)およびイソ(I)アルデヒドをN:I比で製造するための複数反応ゾーンのヒドロホルミル化プロセスを制御する方法であって、該方法が、オレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素、水素、ならびに、(A)遷移金属(好ましくはロジウム)、(B)オルガノポリホスファイト(好ましくはオルガノビスホスファイト)リガンドおよび(C)オルガノモノホスファイトリガンドを含む触媒と接触させることを含み、該接触を、第1および後続の反応ゾーン内で、各ゾーン内の遷移金属濃度を含むヒドロホルミル化条件で行い、該方法が、第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を低減させてN:I比を低減させること、または第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を増大させてN:I比を増大させること、を含む方法である。一態様において、第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度は、貯蔵ゾーン内に遷移金属を除去することによって低減させる。一態様において、第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度は、新しい遷移金属を第1の反応ゾーンに添加すること、および/または遷移金属を貯蔵ゾーンから第1の反応ゾーンに移し戻すことによって増大させる。
【発明を実施するための形態】
【0004】
好ましい態様の詳細な説明
元素周期表に対する全ての参照は、CRC Press, Inc.,2003が刊行しおよび著作権を有する元素周期表を意味する。また、1つまたは複数の族の任意の参照は、族の番号付けについてIUPAC系を用いてこの元素周期表に表される1つまたは複数の族であるものとする。特記、内容の黙示、または当該分野での慣習がない限り、全ての部およびパーセントは質量基準であり、全ての試験方法は本開示の出願日現在のものである。米国特許実務の目的のために、任意の参照する特許、特許出願または公報の内容はその全部を、特に合成方法、定義(本開示で具体的に与える任意の定義と矛盾しない限りにおいて)および当該分野の一般的知識の開示に関し、参照により全部を本開示に組入れる(またはその同等の米国版を参照により組入れる)。
【0005】
全てのパーセント、好ましい量または測定、範囲および端点は端点を含み、すなわち「10以下(up to)」は10を含む。「少なくとも」は「これを超えまたはこれと等しい」と等価であり、よって「最大(at most)」は「これ未満またはこれと等しい」と等価である。特記がない限り数は近似である。「少なくとも」「を超える」「これを超えまたはこれと等しい」または同様に記載されるパラメータから、「最大」「以下」「未満」「これ未満またはこれと等しい」または同様に記載されるパラメータまでの全範囲は、各パラメータについて示される好ましさの相対程度に関わらず好ましい範囲である。よって、有利な下限値を最も好ましい上限値と組み合わせたものを有する範囲は、本発明の実施に好ましい。用語「有利」は、必要であるよりも高いが用語「好ましくは」よりも低い好ましさの程度を示すのに用いる。数値範囲は、本開示で、とりわけ、反応剤およびプロセス条件の相対量について与える。
【0006】
ヒドロホルミル化プロセス、その反応剤、条件および装置は周知であり、とりわけ第USP4,169,861号,第USP5,741,945号,第USP6,153,800号および第USP7,615,645号,第EP0590613号および第WO2008/115740号に記載されている。典型的には、オレフィン性不飽和化合物(例えばプロピレン)は、合成ガス,すなわち一酸化炭素(CO)および水素(H2)、更に遷移金属、好ましくはロジウム、およびオルガノポリホスファイト、好ましくはオルガノビスホスファイト、およびオルガノモノホスファイトリガンドを含む3成分触媒とともに供給し、接触は、直列に組合せた(すなわち第1の反応ゾーンのアウトプットは後続の反応ゾーンのインプットとして供給する)複数反応器系内へのヒドロホルミル化条件で実施する。加工技術は、従来のヒドロホルミル化プロセスにおいて用いる公知の加工技術のいずれに対応することもできる。例えば、プロセスは、液体状態または気体状態、および連続式、半連続式、またはバッチ式のいずれで行うこともでき、液体リサイクルおよび/もしくは気体リサイクル操作またはそのような系の組合せ(所望により)を含む。同様に、反応含有成分、触媒および溶媒の添加の様式または順序もまた、臨界的ではなく、任意の従来の様式で実現できる。
【0007】
本発明の方法において好適に用いられるオレフィン性不飽和化合物は、ヒドロホルミル化プロセスにおいて対応する1種または複数種のアルデヒド生成物を生成するのにあずかることができ、そして粗液体ヒドロホルミル化生成物流から気化によって分離できるものである。本発明の目的のために、「オレフィン」は少なくとも炭素原子および水素原子を含有し、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合(C=C)を有する脂肪族有機化合物と定義される。好ましくは、オレフィンは、1つまたは2つの炭素−炭素二重結合を含有し、より好ましくは1つの炭素−炭素二重結合を含有する。1つまたは複数の二重結合は、炭素鎖に沿った末端部分(アルファオレフィン)または鎖の任意の内部(内部オレフィン)に位置できる。任意に、オレフィンは、炭素および水素以外の元素(例えば、窒素、酸素、およびハロゲンが挙げられ、好ましくは塩素および臭素である)を含むことができる。オレフィンはまた、官能性置換基(例えばヒドロキシ、アルコキシ、アルキルおよびシクロアルキル置換基が挙げられる)で置換されていることができる。好ましくは、本発明の方法で用いるオレフィンは、全部で3〜10個の炭素原子を有する置換または非置換のオレフィンを含む。本発明の方法に好適な例示のオレフィンとしては、非限定で、以下のブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネンおよびデセンのモノオレフィンの異性体が挙げられ、具体的な非限定例としては1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、および1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、ならびにヘプテン、オクテン、ノネン、およびデセンについても同様に挙げられる。好適なオレフィンの他の非限定例としては、2−メチルプロペン(イソブチレン)、2−メチルブテン、シクロヘキセン、ブタジエン、イソプレン、2−エチル−1−ヘキセン、スチレン、4−メチルスチレン、4−イソプロピルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、アルファ−メチルスチレン、3−フェニル−1−プロペン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、更にアルケノール,例えば、ペンテノール;アルケナール,例えばペンテナール;このような種として挙げられるアリルアルコール、アリルブチレート、ヘキサ−1−エン−4−オール、オクト−1−エン−4−オール、酢酸ビニル、酢酸アリル、3−ブテニルアセテート、ビニルプロピオネート、アリルプロピオネート、メチルメタクリレート、ビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、アリルエチルエーテル、3−ブテンニトリル、5−ヘキセンアミド、およびジシクロペンタジエンが挙げられる。オレフィンはまた、同様または異なる分子量または構造(任意に不活性物,例えば対応する飽和アルカンを有する)の混合物であることができる。
【0008】
好ましくは、本発明の方法において用いるオレフィン流は、ブテン−1、ブテン−2、イソブチレン、ブタン、および任意にブタジエンを含む、C4ラフィネートIまたはC4ラフィネートIIの異性体混合物を含む。C4ラフィネートI流は、15〜50質量%のイソブチレンおよび40〜85質量%のノルマルブテンを含み、100%までの任意の残部は、主としてn−ブタンおよびイソブタンを含む。ノルマルブテンは、一般的には、ブテン−1およびブテン−2の混合物(シス−およびトランス−形)である。相対比率流成分は石油供給物の組成、スチームクラッキングまたは触媒クラッキングの操作および後続のプロセスステップ(C4流はこれに由来する)において用いる条件に左右される。C4ラフィネートII流は、15〜55体積%の1−ブテン、5〜15体積%の2−ブテン(5〜35%のトランス−2−ブテン)、0.5〜5体積%のイソブチレン、および1〜40体積%のブタンを含む。より好ましくは、オレフィン流は、プロピレンまたはプロピレンとプロパンと他の不活性物との混合物を含む。
【0009】
水素および一酸化炭素はまた、本発明のヒドロホルミル化ステップに必要である。これらのガスは、任意の得られる源(石油クラッキングおよびリファインの操作が挙げられる)から得ることができる。合成ガス混合物を好ましく用いる。ガス状水素 対 一酸化炭素のH2:COモル比は、好ましくは1:10〜100:1の範囲であることができ、より好ましいH2:COモル比は、1:10〜10:1、および更により好ましくは2:1〜1:2である。ガスは一般的には反応器内でのこれらの分圧(気相におけるこれらのモル分率基準)(ガスクロマトグラフィで測定したときの)および総圧(ダルトン法を用い)で定量化される。本発明の文脈で用いる「合成ガス分圧」はCOの分圧とH2の分圧との和である。
【0010】
遷移金属リガンド錯体触媒を形成する好適な金属としては、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir),ルテニウム(Ru),鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt),オスミウム(Os)およびこれらの金属の2種以上の混合物から選択されるVIII族金属が挙げられ、好ましい金属はロジウム、コバルト、イリジウムおよびルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルトおよびルテニウムであり、最も好ましくはロジウムである。他の許容される金属としては、クロム(Cr)、モリブデン(Mo),タングステン(W)、およびこれらの金属の2種以上の混合物から選択されるVIB族金属が挙げられる。VIB族およびVIII族からの金属の混合物もまた本発明で使用できる。
【0011】
「錯体」および同様の用語は、1つ以上の電子リッチな分子または原子(すなわちリガンド)と1つ以上の電子欠乏の分子または原子(例えば遷移金属)との結合によって形成される配位化合物を意味する。例えば、本発明の実施において用いるオルガノモノホスファイトリガンドは1つのリン(III)供与体原子を有する。これは1つの非共有電子対を有し、これは金属と配位共有結合を形成できる。本発明の実施において用いるオルガノポリホスファイトリガンドは、2つ以上のリン(III)供与体原子を有し、各々は1つの非共有電子対を有し、その各々は独立または場合により合わせて(例えばキレート化により)遷移金属と配位共有結合を形成できる。一酸化炭素もまた存在でき、遷移金属と錯体化する。錯体触媒の最終的な組成物はまた、追加のリガンド,例えば水素またはアニオン(金属の配位位置または核電荷を満たすもの)を含有できる。例示的な追加のリガンドとしては、例えば、ハロゲン(Cl、Br、I)、アルキル、アリール、置換アリール、アシル、CF3、C25、CN、(R)2POおよびRP(O)(OH)O(ここで、各Rは同じまたは異なり、置換または非置換の炭化水素基,例えばアルキルまたはアリールである)、アセテート、アセチルアセトナート、SO4、PF4、PF6、NO2、NO3、CH3O、CH2=CHCH2、CH3CH=CHCH2、C25CN、CH3CN、NH3、ピリジン、(C253N、モノオレフィン、ジオレフィンおよびトリオレフィン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0012】
遷移金属上の可能な配位位置の数は当該分野で周知であり、選択される特定の遷移金属に左右される。触媒種は、これらの単量体、二量体またはより高い核性の形で、錯体触媒混合物を含むことができる。これは好ましくは、金属(例えばロジウム)1分子当たりに錯体化される少なくとも1つの有機リン含有分子を特徴とする。例えば、ヒドロホルミル化反応において用いる好ましい触媒の触媒種は、オルガノポリホスファイトリガンドまたはオルガノモノホスファイトリガンドに加え、一酸化炭素および水素と錯体化できる。
【0013】
オルガノポリホスファイトリガンドは、複数のホスファイト基を広範に含み、これらの各々は、3つのヒドロカルビルオキシ基に結合した1つの3価リン原子を含有する。2つのホスファイト基に結合および架橋(bridge)するヒドロカルビルオキシ基は、より適切には「2価ヒドロカルビルジオキシ基」という。これらの架橋のジ−基は、任意の特定のヒドロカルビル種に限定されない。一方、リン原子からの側鎖で、2つのホスファイト基に架橋していない(すなわち末端、非架橋)ヒドロカルビルオキシ基は、各々アリールオキシ基から本質的になる必要がある。「アリールオキシ」は、2つの型のアリールオキシ基:(1)単一エーテル結合に結合した1価のアリール基であって、−O−アリールにおけるようなものであり、ここでアリール基は単一芳香環、または一緒に融合、直接結合または間接的に結合(異なる芳香族基がメチレン部分またはエチレン部分等の一般的な基に結合するように)した複数芳香環を含むもの、または(2)2つのエーテル結合に結合した2価アリーレン基であって、−O−アリーレン−O−または−O−アリーレン−アリーレン−O−におけるようなものであり、ここでアリーレン基は単一芳香環、または一緒に融合、直接結合または間接的に結合(異なる芳香族基がメチレン部分またはエチレン部分等の一般的な基に結合するように)した複数芳香環を有する2価炭化水素基を含むもの、のいずれも広範に意味する。好ましいアリールオキシ基は、1つの芳香環、または2〜4の融合または結合した芳香環(約5〜約20個の炭素原子を有する)を含有し、例えばフェノキシ、ナフチルオキシまたはビフェノキシ、更にアリーレンジオキシ基,例えばフェニレンジオキシ、ナフチレンジオキシ、およびビフェニレンジオキシである。これらの基(radicalおよびgroup)のいずれも非置換または置換であることができる。
【0014】
好ましいオルガノポリホスファイトリガンドは、2、3またはより多数のホスファイト基を含む。そのようなリガンドの混合物を所望であれば用いることができる。アキラルのオルガノポリホスファイトが好ましい。代表的なオルガノポリホスファイトとしては、式(I):
【化1】

(式中、Xは、2〜40個の炭素原子を含有する、置換または非置換のn価の有機架橋性基を表し、各R1は同じまたは異なり、6〜40個の炭素原子、好ましくは6〜20個の炭素原子を含有する2価アリーレン基を表し、各R2は同じまたは異なり、6〜24個の炭素原子を含有する置換または非置換の1価アリール基を表し、aおよびbは同じまたは異なることができ、各々は0〜6の値を有し、但しa+bの合計は2〜6であり、nはa+bと等しい)
のものが挙げられる。aが2以上の値を有する場合、各R1基は同じまたは異なることができ、bが1以上の値を有する場合、各R2基は同じまたは異なることができる。
【0015】
Xで表される代表的なn価(好ましくは2価)の炭化水素架橋性基としては、非環式基および芳香族基の両者,例えばアルキレン、アルキレン−Qm−アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、ビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、およびアリーレン−(CH2y−Q−(CH2y−アリーレン基(式中、各yは同じまたは異なり、0または1の値である)が挙げられる。Qは、−C(R32−、−O−、−S−、−NR4−、−Si(R52−および−CO−から選択される2価の架橋性基を表す。ここで各R3は同じまたは異なり、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、およびアニシル基を表し、R4は水素、または置換もしくは非置換の1価炭化水素基,例えば1〜4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、各R5は同じまたは異なり、水素またはアルキル基,好ましくはC1-10アルキル基を表し、そしてmは0または1の値である。上記Xで表されるより好ましい非環式基は、2価アルキレン基であり、Xで表されるより好ましい芳香族基は2価アリーレンおよびビスアリーレン基であり、例えば、第USP4,769,498;4,774,361;4,885,401;5,179,055;5,113,022;5,202,297;5,235,113;5,264,616;5.364,950;5,874,640;5,892,119;6,090,987;および6,294,700号でより全体的に開示されるものである。
【0016】
例示的な好ましいオルガノポリホスファイトとしては、ビスホスファイト,例えば式(II)〜(IV):
【化2】

(式中、式(II)〜(IV)のR1、R2およびXは式(I)について上記で定義したのと同じである)
のものが挙げられる。好ましくは、Xは、アルキレン、アリーレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、およびビスアリーレンから選択される2価炭化水素基を表し、R1は、アリーレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、およびビスアリーレンから選択される2価炭化水素基を表し、そして各R2基は、1価のアリール基を表す。そのような式(II)〜(IV)のオルガノポリホスファイトリガンドは、例えば、第USP4,668,651;4,748,261;4,769,498;4,774,361;4,885,401;5,113,022;5,179,055;5,202,297;5,235,113;5,254,741;5,264,616;5,312,996および5,364,950号に開示を見出すことができる。
【0017】
オルガノビスホスファイトのより好ましい分類の代表は、式(V)〜(VII):
【化3】

のものである。式中、Q、R1、R2、X,mおよびyは上記定義の通りであり、各Arは同じまたは異なり、置換または非置換の2価アリール基を表す。最も好ましくは、Xは2価のアリール−(CH2y−(Q)m−(CH2y−アリール基を表し、式中、各yはそれぞれ0または1の数を有し、mは0または1の値を有し、そしてQは−O−、−S−または−C(R32(式中、各R3は同じまたは異なり、水素またはC1-10アルキル基,好ましくはメチルを表す)である。より好ましくは、式(V)〜(VII)の上記定義のAR基、X基、R1基およびR2基の各アリール基は、6〜18個の炭素原子を含有でき、基は同じまたは異なることができ、Xの好ましいアルキレン基は2〜18個の炭素原子を含有できる。加えて、好ましくは、上記式のXの2価Ar基および2価アリール基はフェニレン基であり、ここで−(CH2y−(Q)m−(CH2y−で表される架橋性基は、式の酸素原子(フェニレン基をそのリン原子に連結するもの)に対してオルト位でフェニレン基に結合している。任意の置換基(そのようなフェニレン基上に存在する場合)は、好ましくは、与えられる置換フェニレン基をそのリン原子に結合させる酸素原子との関係で、フェニレン基のパラおよび/またはオルト位で結合している。
【0018】
更に、所望により、上記式(I)〜(VII)中の任意の与えられるオルガノポリホスファイトはイオン性ホスファイトであることができる。すなわちこれは、−SO3M(式中、Mは無機または有機のカチオンを表す)、−PO3M(式中、Mは無機または有機のカチオンを表す)、−N(R631(式中、各R6は同じまたは異なり、1〜30個の炭素原子を含有する炭化水素基,例えばアルキル基、アリール基、アルカリル基、アラルキル基、およびシクロアルキル基を表し、そしてX1は無機または有機のアニオン、−CO2M(式中、Mは無機または有機のカチオンを表す)を表す)からなる群から選択される1つ以上のイオン性部位を含有できる(例えば、第USP5,059,710;5,113,022;5,114,473および5,449,653号に記載されるような)。よって、所望により、そのようなオルガノポリホスファイトリガンドは、1〜3のそのようなイオン性部位を含有できる。しかし、好ましくは、1つのみのそのようなイオン性部分は、任意の与えられるアリール部位上で置換されている(オルガノポリホスファイトリガンドが1つより多いそのようなイオン性部位を含有する場合)。Mの好適なカチオン種としては、非限定で、水素(すなわちプロトン)、アルカリ金属およびアルカリ土類金属のカチオン,例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム、ルビジウム、カルシウム、バリウム、マグネシウムおよびストロンチウム、アンモニウムカチオンおよび4級アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アルソニウムカチオンおよびイミニウムカチオンが挙げられる。好適なアニオンX1としては、例えば、スルフェート、カーボネート、ホスフェート、クロリド、アセテート、オキサレート等が挙げられる。
【0019】
無論、上記式(I)〜(VII)のそのような非イオン性およびイオン性のオルガノポリホスファイトのR1基、R2基、X基、Q基およびAr基のいずれも、所望により、任意の好適な置換基,任意に1〜30個の炭素原子を含有し、本発明の方法の所望の結果に不利に作用しないもので置換されていることができる。無論、対応する炭化水素基(例えばアルキル、アリール、アラルキル、アルカリルおよびシクロヘキシル置換基)に加えて基の上にあってもよい置換基としては、例えば、シリル基,例えば−Si(R73、アミノ基,例えば−N(R72、ホスフィン基,例えば−アリール−P(R72、アシル基,例えば−C(O)R7、アシルオキシ基,例えば−OC(O)R7、アミド基,例えば−CON(R72および−N(R7)COR7、スルホニル基,例えば−SO27、アルコキシ基,例えば−OR7、スルフィニル基,例えば−SOR7、スルフェニル基,例えば−SR7、ホスホニル基,例えば−P(O)(R72、更にハロゲン、ニトロ、シアノ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ基等が挙げられる。ここで好ましくは、各R7基はそれぞれ同じまたは異なる、1〜約18個の炭素原子を含有する1価炭化水素基(例えばアルキル、アリール、アラルキル、アルカリルおよびシクロヘキシル基)を表す。但し、アミノ置換基(例えば−N(R72)において、一緒にとる各R7はまた、窒素原子とともに複素環式基を形成する2価の架橋性基を表し、そしてアミド置換基(例えば−C(O)N(R72および−N(R7)COR7)において、Nに結合した各R7はまた水素であることができる。無論、特定の与えられるオルガノポリホスファイトを形成する置換または非置換の炭化水素基のいずれも、同じまたは異なることができる。
【0020】
より具体的に、例示的な置換基としては、1級、2級および3級のアルキル基,例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、アミル、sec−アミル、t−アミル、イソオクチル、デシル、オクタデシル等;アリール基,例えばフェニルおよびナフチル;アラルキル基,例えばベンジル、フェニルエチル、およびトリフェニルメチル;アルカリル基,例えばトリルおよびキシリル;脂環式基,例えばシクロペンチル、シクロヘキシル、1−メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、およびシクロヘキシルエチル;アルコキシ基,例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシ、−OCH2CH2OCH3、−O(CH2CH22OCH3、および−O(CH2CH23OCH3;アリールオキシ基,例えばフェノキシ;更にシリル基,例えば−Si(CH33、−Si(OCH33、および−Si(C373;アミノ基,例えば−NH2、−N(CH32、−NHCH3、および−NH(C25);アリールホスフィン基,例えば−P(C652;アシル基,例えば−C(O)CH3、−C(O)C25、および−C(O)C65;カルボニルオキシ基,例えば−C(O)OCH3;オキシカルボニル基,例えば−O(CO)C65;アミド基,例えばCONH2、−CON(CH32、および−NHC(O)CH3;スルホニル基,例えば−S(O)225;スルフィニル基,例えば−S(O)CH3;スルフェニル基,例えば−SCH3、−SC25、および−SC65;ホスホニル基,例えば−P(O)(C652、−P(O)(CH32、−P(O)(C252、−P(O)(C372、−P(O)(C492、−P(O)(C6132、−P(O)CH3(C65)、および−P(O)(H)(C65)が挙げられる。
【0021】
オルガノビスホスファイトの具体例は、第WO2008/115740号のLigands A−Sである。
【0022】
本発明の実施において使用できるオルガノモノホスファイトとしては、1つのホスファイト基を含む任意の有機化合物が挙げられる。オルガノモノホスファイトの混合物もまた使用できる。代表的なオルガノモノホスファイトとしては、式(VIII):
【化4】

のものが挙げられる。式中、R8は、4〜40個またはこれを超える炭素原子を含有する置換または非置換の3価炭化水素基,例えば3価非環式基および3価環式基,例えば3価アルキレン基,例えば1,2,2−トリメチロールプロパンに由来するもの、または3価シクロアルキレン基,例えば1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサンに由来するものを表す。このようなオルガノモノホスファイトは、例えば第USP4,567,306号でより詳細に記載されることを見出すことができる。
【0023】
代表的なジオルガノホスファイトとしては、式(IX):
【化5】

のものが挙げられる。式中、R9は、4〜40個またはこれを超える炭素原子を含有する置換または非置換の2価炭化水素基を表し、そしてWは1〜18個の炭素原子を含有する置換または非置換の1価炭化水素基を表す。
【0024】
式IX中のWで表される代表的な置換および非置換の1価炭化水素基としては、アルキル基およびアリール基が挙げられ、一方、R9で表される代表的な置換および非置換の2価炭化水素基としては、2価非環式基および2価芳香族基が挙げられる。例示的な2価非環式基としては、例えば、アルキレン、アルキレン−オキシ−アルキレン、アルキレン−NX2−アルキレンが挙げられる。ここでX2は水素または置換もしくは非置換の炭化水素基、アルキレン−S−アルキレン、およびシクロアルキレン基である。より好ましい2価非環式基は、2価アルキレン基,例えば第USP3,415,906および4,567,302号でより全体的に開示されるもの、である。例示的な2価芳香族基としては、例えば、アリーレンビスアリーレン、アリーレン−アルキレン、アリーレン−アルキレン−アリーレン、アリーレン−オキシ−アリーレン、アリーレン−NX2−アリーレン(ここでX2は上記定義の通りである)、アリーレン−S−アリーレン、およびアリーレン−S−アルキレンが挙げられる。より好ましくは、R9は2価芳香族基,例えば第4,599,206および4,717,775号でより全体的に開示されるものである。
【0025】
より好ましい分類のジオルガノモノホスファイトの代表は、式(X):
【化6】

のものである。式中、Wは上記定義の通りであり、各Arは、同じまたは異なり、置換または非置換の2価アリール基であり、各yは同じまたは異なり、0または1の数であり、Qは、−C(R102−,−O−,−S−,−NR11−,−Si(Rl22−および−COから選択される2価架橋性基を表す。式中、R10は同じまたは異なり、水素、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基、フェニル基、トリル基、およびアニソル基を表し、R11は水素または1〜10個の炭素原子のアルキル基,好ましくはメチルを表し、各R12は同じまたは異なり、水素または1〜10個の炭素原子を有するアルキル基,好ましくはメチルを表し、そしてmは0または1の数である。このようなジオルガノモノホスファイトは、例えば、第USP4,599,206,4,717,775および4,835,299号でより詳細に記載されている。
【0026】
代表的なトリオルガノモノホスファイトとしては、式(XI)のものが挙げられる。
【化7】

式中、各R13は、同じまたは異なり、置換または非置換の1価炭化水素基,例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルカリル基またはアラルキル基であり、これらは1〜24個の炭素原子を含有できる。代表的なトリオルガノモノホスファイトとしては、例えば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイト、およびトリアリールホスファイト,例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−トリイソプロピル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスファイト、更により好ましくはトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが挙げられる。1価炭化水素基部位自体は官能化されていることができる。但し、官能基は遷移金属と顕著には相互作用しない。そうでなければヒドロホルミル化を阻害する。代表的な官能基としては、アルキル基またはアリール基、エーテル、ニトリル、アミド、エステル、−N(R112、−Si(R123、ホスフェート等が挙げられる。ここでR11およびR12は先に定義した通りである。このようなトリオルガノモノホスファイトは、第USP3,527,809および5,277,532号でより詳細に記載されている。
【0027】
更なる選択肢として、任意のオルガノモノホスファイト−モノホスフェートリガンドまたはオルガノモノホスファイト−ポリホスフェートリガンドを、本発明におけるオルガノモノホスファイトリガンドとして用いることができる。例えば、任意のオルガノポリホスファイトリガンド(先に記載した好ましいオルガノビスホスファイトリガンドが挙げられる)を酸化に供して全て、しかし1つのリン(III)原子をリン(V)原子に転化する。得られる酸化されたリガンドは、オルガノモノホスファイト−ポリホスフェート、または好ましくはオルガノモノホスファイト−モノホスフェートを含むことができる。これは好適には、遷移金属に対して2/1モル過剰で用いて、本発明の実施で用いるオルガノモノホスファイトリガンド成分を与えるようにする。ここで用いる「オルガノモノホスファイトリガンド」および同様の用語は、特記がない限り、オルガノモノホスファイト−モノホスフェートリガンドおよびオルガノモノホスファイト−ポリホスフェートリガンド(用語を用いる文脈で適宜)を包含する。
【0028】
更なる選択肢として、任意のオルガノモノホスホルアミダイトリガンドは、本発明の実施において用いるオルガノモノホスファイトリガンドとして、またはこれとの組合せで、使用でき、任意のオルガノポリホスホルアミダイトリガンドは、本発明の実施において用いるオルガノポリホスファイトリガンドとして、またはこれとの組合せで、使用できる。オルガノホスホルアミダイトリガンドは公知であり、これらはオルガノホスファイトリガンドと同様に用いる。代表的なオルガノホスホルアミダイトリガンドは、式(XII〜XIV)のものである。
【化8】

【化9】

オルガノホスホルアミダイトは、例えば、第USP7,615,645号に更に記載されている。ここで用いる「オルガノモノホスファイトリガンド」および同様の用語は、特記がない限りオルガノモノホスホルアミダイトリガンドを包含し、「オルガノポリホスファイト」および同様の用語は、特記がない限りオルガノポリホスホルアミダイトリガンドを包含する。
【0029】
ヒドロホルミル化触媒は、(A)遷移金属カルボニル水素化物、(B)触媒系において濃度が1以下(そしてこれを包含し):1モル基準(安定化触媒錯体の遷移金属成分に対し)で準備されるオルガノビスホスファイトリガンド、および(C)安定化触媒錯体のロジウム金属成分に対して過剰モル量で準備されるモノデンテートホスファイトリガンド(すなわちオルガノモノホスファイト)の安定化錯体を含む。
【0030】
触媒は、ヒドロホルミル化反応ゾーン内で、インサイチュで調製でき、または、代替として、これはエクスサイチュで調製し、続いて反応ゾーン内に適切なヒドロホルミル化反応物質とともに導入できる。一態様において、触媒は、1モルの好適な遷移金属源を0.1〜1モルのオルガノビスホスファイトリガンドおよび5〜100モルのモノデンテートホスファイトリガンドと混合することによって調製する。一態様において、触媒は、1モルの好適なロジウム源 対 5〜100モルのモノデンテートホスファイトリガンドの比で混合すること、そしてヒドロホルミル化反応の開始後に、ビスホスファイトリガンド(<1モル)を添加することにより調製する。
【0031】
触媒種は、錯体触媒混合物を、その単量体、二量体またはより高い核性の形で含むことができる。これは好ましくは、遷移金属1分子当たりで錯体化される少なくとも1つの有機リン含有分子を特徴とする。例えば、遷移金属はモノデンテートホスファイトリガンドまたはビスホスファイトリガンドのいずれかに加え、一酸化炭素および水素と錯体化できる。
【0032】
触媒およびその調製は、第USP4,169,861,5,741,945,6,153,800および7,615,645号、および第WO2008/115740号でより全体的に記載される。
【0033】
ヒドロホルミル化触媒は反応中および/または生成物分離中に均一形または不均一形であることができる。反応媒体中に存在する金属−リガンド錯体触媒の量は、プロセスを触媒するのに必要な最小量であることが必要であるに過ぎない。遷移金属がロジウムである場合には、ヒドロホルミル化反応媒体中の濃度 100万分の10〜1000部(ppm)(遊離ロジウムとして算出したときの)が、殆どのプロセスのために十分である。一方、10〜500ppmのロジウムを用いることが一般的に好ましく、より好ましくは25〜350ppmロジウムである。
【0034】
金属−リガンド錯体触媒に加え、遊離リガンド(すなわち金属と錯体化していないリガンド)もまた、ヒドロホルミル化反応媒体中に存在できる。遊離のリガンド、モノ−またはポリデンテートは、好ましくは、しかし必須ではなく、用いる金属−リガンド錯体触媒のリガンドと同じである。本発明のヒドロホルミル化プロセスは、ヒドロホルミル化反応媒体中、金属1モル当たり、0.1モル以下から100モル以上の遊離リガンドを含むことができる。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、1〜50モルのリガンド、およびより好ましくは1.1〜4モルのリガンド(反応媒中に存在する金属1モル当たり)の存在下で実施する。リガンドの量は、存在する金属と結合(錯体化)しているリガンドの量と、存在する遊離(錯体化していない)リガンドの量との両者の合計である。無論、所望であれば、補充または追加のリガンドをヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に任意の時点で任意の好適な様式(例えば反応媒体中の既定レベルの遊離リガンドを維持する)で供給できる。
【0035】
一般的な手順として、触媒系をまず、酸素除去した溶媒媒体中で、ヒドロホルミル化反応ゾーン内で形成する。過剰モノデンテートリガンドは溶媒媒体として働くことができる。第1のヒドロホルミル化ゾーンを水素および一酸化炭素で加圧し、選択した反応温度に加熱する。オレフィン性不飽和化合物を第1のヒドロホルミル化ゾーンに供給し、所望の転化収量まで反応を実施し、そしてその時点で効率は実現されており、第1の反応ゾーンの生成物を1つまたは複数の後続の反応ゾーンに移す。ここで新しいおよび/またはリサイクルされた反応剤を添加する。この1つまたは複数の後続の反応ゾーンにおける反応は、所望転化収量および効率が実現されるまで継続し、その時点で最後の反応ゾーンの生成物を回収および精製する。継続系において、触媒を好ましくはリサイクルして第1の反応ゾーンに戻す。
【0036】
ヒドロホルミル化プロセスの反応条件は広範に変化させることができる。例えば、H2:COモル比のガス状水素 対 一酸化炭素は、有利には、1:10〜100:1またはこれを超える範囲であることができ、より好ましくは水素 対 一酸化炭素のモル比は、1:10〜10:1であることができる。有利には、ヒドロホルミル化プロセスは、−25℃を超える、より好ましくは50℃を超える、反応温度で実施できる。ヒドロホルミル化プロセスは、有利には、反応温度200℃未満、好ましくは120℃未満で実施できる。有利には、オレフィン性反応物質、一酸化炭素、水素、および任意の不活性軽質物(inert lights)を含む総ガス圧は、1psia(6.9kPa)〜10,000psia(68.9MPa)の範囲であることができる。好ましくは、プロセスは、オレフィン性反応物質、一酸化炭素、および水素を含む総ガス圧で操作し、水素は2,000psia(13,800kPa)未満、およびより好ましくは500psia(3450kPa)未満である。有利には、一酸化炭素分圧は1psia(6.9kPa)〜1000psia(6,900kPa)、および好ましくは3psia(20.7kPa)〜800psia(5,516kPa)、およびより好ましくは15psia(103.4kPa)〜100psia(689kPa)で変化できる。一方、水素分圧は、好ましくは、5psia(34.5kPa)〜500psia(3,450kPa)およびより好ましくは10psia(69kPa)〜300psia(2,070kPa)で変化する。
【0037】
合成ガス(CO+H2)の供給物流速(flow rate)は、所望のヒドロホルミル化プロセスを得るのに十分な、任意の操作可能な流速に亘って広く変化できる。合成ガス供給物流速は、触媒の具体形、オレフィン供給物流速、および他の操作条件に左右される。同様に、1つまたは複数のオキソ反応器からのベント流速は、所望のヒドロホルミル化プロセスを得るのに十分な任意の操作可能な流速であることができる。ベント流速は反応器のスケールならびに反応物質および合成ガスの供給物の純度に左右される。好適な合成ガス供給物の流速およびベント流速は、周知であり、または当業者によって容易に算出できる。一態様において、H2およびCOの分圧は、ヒドロホルミル化速度が、モノホスファイト触媒についての合成ガス(H2およびCO)分圧について正の次数(order)であり、ビスホスファイト触媒についてのCO分圧について負の次数である条件下で反応が行われるよう制御する(例えば第WO2008/115740Al号に記載されるように)。
【0038】
不活性溶媒は、ヒドロホルミル化反応媒体希釈剤として用いることができる。種々の溶媒を使用でき、ケトン,例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、およびシクロへキサノン;芳香族化合物,例えばベンゼン、トルエンおよびキシレン;ハロゲン化芳香族化合物,例えばo−ジクロロベンゼン;エーテル,例えばテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンおよびジオキサン;ハロゲン化パラフィン,例えば塩化メチレン;パラフィン炭化水素,例えばヘプタン;等が挙げられる。好ましい溶媒は、アルデヒド生成物および/またはアルデヒド生成物のオリゴマー、更に1種または複数種の反応性オレフィンである。
【0039】
一態様において、ヒドロホルミル化プロセスは、多段反応器(例えば第USP5,763,671号に記載されるもの)で実施する。このような多段反応器は、内部の物理障壁(これは容器当たり1つより多い理論的な反応性ステージまたはゾーンを作る)を有して設計できる。効果は、単一連続撹拌タンク反応容器の内側に多くの反応器を有するようなものである。単一容器内の複数の反応性ステージは、反応容器容積を用いるコスト的に有効な方法である。これは、そうでない場合に同じ結果を実現するのに必要な容器の数を顕著に低減させる。しかし明らかに、プロセスの異なる段階で反応物質の異なる分圧を有することがゴールである場合には、2つ以上の反応器または容器を用いる。反応ゾーンは並列または直列であることができるが、最も好ましくは直列である。
【0040】
本発明のヒドロホルミル化プロセスは、典型的には2段階の連続式で実施する。このようなプロセスは当該分野で周知であり、そして(a)1種または複数種のオレフィン性出発物質を一酸化炭素および水素で、溶媒、金属−ホスファイトリガンド錯体触媒、遊離ホスファイトリガンドを含む液体均一反応混合物中でヒドロホルミル化すること;(b)反応温度および圧力の条件を1種または複数種のオレフィン性出発物質のヒドロホルミル化に好ましいものに維持すること;(c)反応媒体への1種または複数種のオレフィン性出発物質、一酸化炭素および水素の補充量を、これら反応物質が使用されるに従って供給すること;ならびに(d)1種または複数種の所望のアルデヒドヒドロホルミル化生成物を所望の任意の様式で回収すること;を含むことができる。連続プロセスは単一パス式で実施できる。ここで蒸気状混合物は1種または複数種の未反応オレフィン性出発物質を含み、蒸発したアルデヒド生成物は液体反応混合物から取り出し、ここからアルデヒド生成物を回収し、補充の1種または複数種のオレフィン性出発物質、一酸化炭素および水素を、次の単一パスのために、1種または複数種の未反応オレフィン性出発物質をリサイクルさせることなく液体反応媒体に供給する。このような型のリサイクル手順は当該分野で周知であり、1種または複数種の所望のアルデヒド反応生成物から分離された金属−ホスファイト錯体触媒流体の液体リサイクル(例えば第USP4,148,830号に開示されるように)、またはガスリサイクル手順(例えばUSP4,247,486号に開示されるように)、更に液体およびガスのリサイクル手順の両者の組合せ(所望により)を含むことができる。本発明の最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続液体触媒リサイクルプロセスを含む。好適な液体触媒リサイクル手順は、例えば、米国特許第4,668,651;4,774,361;5,102,505および5,110,990号に開示されている。複数反応容器で、これらは直列または並列(両スキームの混合物のために)で運転できる。
【0041】
一態様において、本発明は、生成物分離ゾーン(例えば蒸発器)からリサイクルされた触媒の一部(50%以下)を、第1の反応ゾーンから後続の反応ゾーンに転用する。これは第1の反応ゾーン内に存在する遷移金属(例えばロジウム)触媒の量を低減させ、よってオレフィン(例えばプロピレン)の転化を、第1の反応ゾーン内のほぼ同じパーセンテージの転用される触媒(例えば50%以下)によって低下させ、そして後続の反応ゾーンに入るオレフィン(例えばプロピレン)の量を増大させる。これらの後続の反応ゾーンは、より低いオレフィン分圧で操作し、これはモノホスファイトリガンド触媒反応性(これはより低いN:I特性を示す)に有利に働く。よって最終生成物の正味N:I比は低くなる。後続の反応ゾーン内のより高い触媒濃度は効率損失の最小化を助ける。加えて、後続の反応器は、モノホスファイトリガンド(例えば高い合成ガス分圧)に更に有利に働く条件で操作できる。逆に、第1の反応ゾーンから転用される遷移金属触媒の量を低減させることは、最終生成物のN:Iを増大させることになる。
【0042】
一態様において、N:I比は、第1の反応器にいずれのビスホスファイトリガンドも伴わずに新しい遷移金属を添加することによって低くなる。これは、遷移金属前駆体(例えばRh(acac)(CO)2)または実施されるモノホスファイト−金属錯体の添加により実現できる。これは系中のobpl:金属錯体の相対量を低下させる効果を直ちに有する。N:I比の変化量は、2つの金属−リガンド錯体の関係によって、上記のモル平均比率の比により容易に算出される。N:I比の変化は、典型的には、2〜20単位で最小限(金属−モノデンテートリガンド触媒単独のN:I比基準で)である。
【0043】
一態様において、N:I比は、触媒の幾らかか(具体的には金属の幾らかか)(例えば20%以下)を第1の反応ゾーンから貯蔵ゾーン(例えば貯蔵タンク)内に除去することによって低下する。これは、第1の反応ゾーン内で、除去される触媒とほぼ同じパーセンテージ(例えば20%以下)で、プロピレンの転化を低下させ、後続の反応ゾーンに入るプロピレンの量を増大させる。これらの後続の反応ゾーンは、より低いオレフィン分圧で操作し、これはモノホスファイトリガンド触媒に有利に働き、よってより低いN:I特性を示す。よって最終生成物の正味のN:I比は低下する。系からの全触媒の低減はオレフィン転化効率に影響するが、これは後続の反応ゾーンを、反応速度を増大させる条件(例えば、より高い温度、合成ガス圧等)で運転することによって解決でき、これは低いN:I比の条件下で生じる生成物の量を向上させることになる。加えて、後続の反応器は、モノホスファイトリガンドに更に有利に働く条件(例えば高い合成ガス分圧)で操作できる。逆に、触媒を系中に戻すことは、最終生成物のN:I比を増大させることになる。触媒は、これを第1または後続の反応ゾーンから、または生成物分離ゾーンから戻る触媒リサイクル流から、のいずれから除去することによっても除去できる。除去された触媒は、典型的には、温度が低減された空気(酸素)を含まない別個の貯蔵容器内に貯蔵する。
【0044】
先の態様に関連する本発明の更なる態様は、第1の反応ゾーンから除去される触媒の条件を含む。貯蔵時に、この単離された触媒は、通常のリガンド分解を有し続け、そしてobpl:金属比は時間とともに変化することになる。obpl:金属比は、除去された時よりも低くなり、そして、反応ゾーン内の元のobpl:金属比が維持(または増大)されている(この部分の触媒が除去されたことによって)場合には、この単離された触媒の添加はN:I比を低減させることになる。変化量は、貯蔵された触媒のN:I比を測定することにより、または31P NMRにより(錯体化されたビスホスファイトの、その対応分解生成物への転化を探して)予測でき、添加時の新しいobpl:金属比を上記のモデルに基づき評価する。
【0045】
本発明の更なる態様は、(A)触媒が(1)遷移金属(好ましくはロジウム)、(2)オルガノポリホスホルアミダイト(好ましくはオルガノビスホスホルアミダイト)リガンド、および(3)オルガノモノホスファイトリガンドを含み、(B)オルガノモノホスファイトリガンド遷移金属比を2超:1モル過剰に維持し、そして(C)プロセス中の遷移金属の量に対するオルガノポリホスホルアミダイトの量を調整することによってN:I比を制御する、ヒドロホルミル化プロセスである。このプロセスのステップは、(a)ヒドロホルミル化生成物のN:I比を測定すること、および(b)オルガノポリホスホルアミダイトリガンドの濃度を調整して生成物N:Iを上昇または低下させること、を含む。
【0046】
ヒドロホルミル化生成物N:I比の測定は、種々の方法で行うことができる。一例は、反応器またはプロセス流から来る蒸気流または液体流のいずれかの分析である。迅速な方法,例えばガスクロマトグラフィ(GC)、赤外(IR)または核赤外(NIR)を使用できる。生成物N/Iはまた、ノルマルおよび分岐の生成物を分離するのに用いる蒸留カラムからのフローの測定で評価できる。
【0047】
オルガノポリホスホルアミダイトリガンド濃度を、1以下:1 ホスホルアミダイト:遷移金属モル比に増大させることは、N:I比を上昇させる。これは、リガンドのバッチでの漸増添加または連続供給(固体、または固体の溶液のいずれかとして)(好ましくは生成物アルデヒドを溶媒として用いる場合)によって実現できる。この様式において、リガンド供給量を生成物N/Iからのアウトプットと組合せてこれにより制御する場所に制御ループを確立する。
【0048】
オルガノポリホスホルアミダイトリガンドを、1未満:1 ホスホルアミダイト:遷移金属モル比に低減させることは、ヒドロホルミル化生成物N:I比を低下させる。ホスホルアミダイト分解はプロセスに固有であり、よってホスホルアミダイト濃度は低減され、これは経時的なN/I比の降下をもたらす。この自然の遅く安定的な低下はホスホルアミダイトの除去の好ましい方法である。生成物N/I比のより急速な低減が所望される場合には、ホスホルアミダイト濃度の低減は、その分解の程度を増大させることによって実現できる。1つの方法(これによりこれを実現できる)は、抽出器システムを用いて加水分解度を増大させてホスホルアミダイト加水分解を制御してホスホルアミダイト分解生成物を除去することによる。単純に抽出装置の水性相のpHを低下させることは、ホスホルアミダイトの加水分解度の増大をもたらす。
【0049】
ヒドロホルミル化生成物N:I比を低減させる代替の方法は、反応器温度を単純に上昇させることであり、これはひいてはホスホルアミダイトの自然分解度を増大させる。ホスホルアミダイト濃度はまた、そのモノホスフェートおよびジホスフェートの形への酸化によって低減できる。
【0050】
生成物比率の変動性の更なる低減はまた、オルガノポリホスホルアミダイトリガンドの相対濃度を、遷移金属に対して、1以下:1モル比に制御することによって得る。この領域でのアルデヒド生成物比率はホスホルアミダイト濃度に対して反比例である。より高いホスホルアミダイト濃度はより低いアルデヒド比率をもたらす。
【0051】
遷移金属(特にロジウム)およびオルガノポリホスホルアミダイトとオルガノモノホスファイトとの混合リガンド系を含む触媒での安定な可変N:Iプロセスの操作はまた、遷移金属およびトリフェニルホスフィンリガンドを含む触媒(商業的に使用されるヒドロホルミル化触媒)に対して触媒コストの低減の利点を有する。後者の場合、遷移金属がロジウム(最も一般的に使用される)である場合には、ロジウムの濃度は典型的には200〜300ppmである。本態様の混合リガンドプロセスにおけるロジウム濃度は20〜50ppm−極めて高価な貴金属のコストの5〜10倍低減、である。
【0052】
本態様の遷移金属/混合リガンド触媒系により、N:I比 2:1〜100:1(オレフィンがプロピレンである場合)、および2:1〜1,000:1(オレフィンがブテンである場合)のバリエーションが可能になる。
【0053】
具体的態様
ヒドロホルミル化プロセスについての一般的手順
ヒドロホルミル化プロセスは、連続式で操作するガラス圧力反応器内で行う。反応器は、観測用のガラスフロントを有する油浴に部分的に浸した3オンス圧力ボトルからなる。系を窒素でパージした後、約20〜30ミリリットル(mL)、好ましくは20mLの新しく準備したロジウム触媒前駆体溶液を反応器にシリンジで入れる。触媒前駆体溶液は、50〜200ppmロジウム、好ましくは100ppm(ロジウムジカルボニルアセチルアセトナートとして導入)、リガンド1、およびテトラグリム(溶媒として)を含有する。反応器を密閉した後、系を窒素でパージし、油浴を加熱して、所望のヒドロホルミル化反応温度、好ましくは80℃を与える。触媒溶液を、1:1COおよびH2の供給物で、総操作圧150〜160psig(1034〜1103kPa)で30〜60分間、温度50〜100℃の範囲で活性化する。活性化時間後、プロピレンの導入によって反応を開始する。個別のガスの流れを所望のように調整し、窒素を必要に応じて添加して、所望の全体操作圧約150psig(1034kPa)を維持する。供給物ガス(H2、CO、プロピレン、N2)の流れを個別にマスフローメーターで制御し、供給物ガスを触媒前駆体溶液中でフリット金属スパージャーで分散させる。N2、H2、CO、プロピレン、およびアルデヒド生成物の分圧を、ベント流をGC分析およびダルトン法で分析することによって評価する。供給物ガスの未反応部分を、ブチルアルデヒド生成物とともに、窒素流によって揮散させ、実質的に一定の液体レベルを維持する。流れおよび供給物ガス分圧を設定して、ヒドロホルミル化反応度 約1グラム−モルアルデヒド毎リットル反応流体毎時、を得る。出口ガスをガスクロマトグラフィ(GC)によって連続で分析する。反応流体のサンプルを(シリンジで)31PNMRのために抜き出して、リガンドの分解の程度を、反応条件下での時間の関数として評価する。実施において、供給ラインから微量の空気が出て油浴の熱平衡に達するため、系は安定状態条件に到達するのに約1日かかることが観察される;よってリガンド分解検討は、安定状態操作が得られた後にのみ開始する。この装置はまた、ヒドロホルミル化度を反応温度、COおよびH2の分圧、ならびにRh量の関数として与えることができる。
【0054】
反応系は、ロジウム−オルガノモノホスファイト触媒で開始して予備安定状態操作を定め、次いで、ビスホスホルアミダイトリガンドをゆっくり添加することでN/I異性体比を所望の目的比に調整する。ビスホスホルアミダイトリガンド(リガンド2)およびオルガノモノホスファイトリガンド(リガンド1)を以下に示す。
【化10】

【0055】
例1:N:I比10未満のブチルアルデヒド
触媒溶液を準備し、ガラス反応器系に入れる。条件は以下のように定める:
【表1】

【0056】
Rh/リガンド1での数日のヒドロホルミル化の後、少量のリガンド2をトルエン原料溶液から添加する。少量のリガンドはしばしば系中の酸素、水および他の混入物により分解するため、リガンドは、N/I比を監視しながらゆっくり添加する。1日当たり平均0.12当量のリガンド2(ロジウム当たり)を10日間かけて添加し、その間に亘り、アルデヒドN:I比は約2である。リガンド2のアリコート(ロジウム当たり0.14当量)の後続の添加は、アルデヒドN:I比の約7への増大をもたらす。
【0057】
例2:N:I比30のブチルアルデヒド
例1で記載したように、触媒溶液を準備してガラス反応器系に入れる。Rh/リガンド1での数日のヒドロホルミル化の後、少量のリガンド2をトルエン原料溶液から添加する。1日当たり平均0.27当量のリガンド2(ロジウム当たり)を3日間かけて添加し、その間に亘り、アルデヒドN:I比は約2である。リガンド2のアリコート(ロジウム当たり0.4当量)の後続の添加は、アルデヒドN:I比の約32への増大をもたらす。
【0058】
例3:N:I比40のブチルアルデヒド
例1で記載したように、触媒溶液を準備してガラス反応器系に入れる。アルデヒドN:I比 約2にてRh/リガンド1での数日のヒドロホルミル化の後、少量のリガンド2をトルエン原料溶液から添加する。0.80当量のアリコートのリガンド2(ロジウム当たり)を1日目に添加し、その後、リガンド2の後続の添加により、N/I比が顕著に変化する。リガンド2のアリコート(ロジウム当たり0.4当量)の後続の添加により、アルデヒドN:I比が約40に増大する。更に半日後、追加のアリコートのリガンド2を添加する(ロジウム当たり0.2当量)。これによりアルデヒドN:I比が50超に増大する。リガンド2を更に添加はせず、次の日までアルデヒドN:I比を安定的に5未満まで、リガンド2の徐々の分解によって低下させる。
【0059】
例4:N:I比16のブチルアルデヒド
リガンド2の平均分解度(1日当たり0.14当量)、およびリガンド2濃度とN:I比との関係は、例1〜3に基づいて算出できる。これらの結果に基づき、ロジウム当たりリガンド2の0.20当量のアリコートの有効な添加は、アルデヒドN:I比 約16をもたらすことになる。例1で記載したように、触媒溶液を準備してガラス反応器系に入れる。Rh/リガンド1での数日のヒドロホルミル化の後、少量のリガンド2をトルエン原料溶液から添加する。1日当たり平均0.14当量のリガンド2(ロジウム当たり)を7日間かけて添加し、その間に亘り、アルデヒドN:I比は約2である。リガンド2のアリコート(ロジウム当たり0.2当量)の後続の添加は、アルデヒドN/I比の約19への増大をもたらす。
【0060】
例5:追加のロジウムに基づくN:I比の変動
Rh(CO)2(acac)(100ppmRh)、リガンド1(ロジウム当たり10当量)およびテトラグリム(20mL)からなる触媒溶液を準備し、ガラス反応器系に入れる。条件は以下のように定める。
【表2】

【0061】
少量アリコート(ロジウム当たり0.3〜0.8当量)のリガンド2を添加してN:Iを増大させる。一貫の高いN:Iが確立されたら、新しいロジウムのアリコートをシリンジ経由で添加し(25ppmロジウムを、トルエン中に溶解したRh(CO)2(acac)として)、得られる変化を評価する。次いで、各添加(10〜15時間)に続き、系が完全にパージされて安定状態に達するのに十分な時間をかける。ロジウム添加を繰り返し、N:Iを評価する。0〜72時間のタイムラインを以下に示し、対応するM:I比を示す。
【表3】

【表4】

【表5】

【0062】
例5は、追加の新しいロジウムをロジウム−オルガノモノホスファイトおよびビスホスホルアミダイト触媒系に添加することによってノルマル対イソアルデヒド比を迅速および有効に低下させることができることを示す。
【0063】
先の説明によって相当程度詳細に本発明を説明してきたが、この詳細は例示の目的であり、特許請求の範囲への限定と解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルマル(N)およびイソ(I)アルデヒドをN:I比で製造するための複数反応ゾーンのヒドロホルミル化プロセスを制御する方法であって、該方法が、オレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素、水素、ならびに、(A)遷移金属、(B)オルガノポリホスファイトリガンド(obpl)および(C)オルガノモノホスファイトリガンドを含む触媒と接触させることを含み、該接触を、第1および1つ以上の後続の反応ゾーン内で、各ゾーン内の金属濃度およびobpl:金属比を含むヒドロホルミル化条件で行い、該方法が、生成物分離ゾーンから触媒を回収およびリサイクルする該生成物分離ゾーンを更に含み、該方法が、第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を以下の方法:
1.第1の反応ゾーンと1つ以上の後続の反応ゾーンとの間の生成物分離ゾーンからの触媒リサイクル物を区分すること;または
2.いずれのオルガノビスホスファイトリガンドも伴わずに、遷移金属前駆体もしくは金属−オルガノモノホスファイト化合物のいずれかとして遷移金属を添加することによりobpl:金属比を低減させること;または
3.反応系から別個の容器内に遷移金属触媒の20%以下を除去することによって第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を低減させること;または
4.選択肢(C)において除去した遷移金属触媒を第1の反応ゾーンに戻すこと;
の1つ以上によって変化させることを含む、方法。
【請求項2】
貯蔵ゾーン内に遷移金属を除去することによって第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を低減させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
新しい遷移金属を第1の反応ゾーンに添加すること、および/または遷移金属を貯蔵ゾーンから第1の反応ゾーンに移し戻すことによって第1の反応ゾーン内の遷移金属濃度を増大させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
オレフィン性不飽和化合物が、全部で3〜10個の炭素原子を有するオレフィンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
オレフィン性不飽和化合物が、ブテン−1、ブテン−2、イソブチレン、ブタン、および任意にブタジエンを含む、C4ラフィネートIまたはC4ラフィネートIIの異性体混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
合成ガスが、一酸化炭素および水素を、H2:COモル比10:1〜1:10で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
触媒が、(A)ロジウムカルボニル水素化物;(B)触媒系において安定化触媒錯体のロジウム金属成分に対する濃度が1以下:1モル基準で準備されるオルガノビスホスファイトリガンド;および(C)安定化触媒錯体のロジウム金属成分に対して過剰モル量で準備されるオルガノモノホスファイトリガンド、の安定化錯体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
触媒が、5〜100モルのオルガノモノホスファイトリガンドに対して1モルのロジウム源で混合すること、およびヒドロホルミル化反応の開始後、0.1モルから1モル未満のオルガノビスホスファイトリガンドを添加することによって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
オルガノモノホスファイトリガンドが、式
【化1】

のものであり、オルガノビスホスファイトリガンドが式
【化2】

のものである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ヒドロホルミル化条件が、反応温度−25℃超および200℃未満、ならびにオレフィン性反応物質、一酸化炭素、水素、および任意の不活性軽質物を含む総ガス圧1psia(6.8kPa)〜10,000psia(68.9MPa)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
ノルマル(N)およびイソ(I)アルデヒドをN:I比で製造するための複数反応ゾーンのヒドロホルミル化プロセスを制御する方法であって、該方法が、オレフィン性不飽和化合物を、一酸化炭素、水素、ならびに、(A)遷移金属、(B)オルガノポリホスホルアミダイトおよび(C)オルガノモノホスファイトリガンドを含む触媒と接触させることを含み、該接触を、第1および1つ以上の後続の反応ゾーン内で、オルガノモノホスファイトリガンド対遷移金属のモル比2超:1を含むヒドロホルミル化条件で行い、該方法が、(1)ヒドロホルミル化生成物のN:I比を測定すること、および(2)オルガノポリホスホルアミダイトリガンドの濃度を調整して生成物N:Iを上昇または低下させることを含む、方法。
【請求項12】
遷移金属がロジウムであり、オルガノポリホスホルアミダイトがオルガノビスホスホルアミダイトであり、そしてオレフィン性不飽和化合物がプロピレンまたはブテンである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
オルガノビスホスホルアミダイトが、式:
【化3】

のものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
オルガノポリホスホルアミダイトリガンドの濃度を、ヒドロホルミル化生成物の測定されるN:I比に対して上昇させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
オルガノポリホスホルアミダイトリガンドの濃度を、ヒドロホルミル化生成物の測定されるN:I比に対して低下させる、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2013−515061(P2013−515061A)
【公表日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546040(P2012−546040)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2010/060480
【国際公開番号】WO2011/087690
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(508168701)ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー (19)
【Fターム(参考)】