説明

炭化珪素焼結体の製造方法

【課題】炉材を消耗させることなく体積抵抗率が低い炭化珪素焼結体を製造する。
【解決手段】粉砕粉を窒素雰囲気下で焼成することにより焼成粉を生成し、焼成粉を粉砕することにより再粉砕粉を生成し、再粉砕粉を焼結させることにより炭化珪素焼結体を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体各種部材や電子部品に適用して好適な炭化珪素焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、炭化珪素粉体を粉砕することによって生成された粉砕粉を焼結させることにより炭化珪素焼結体を製造する炭化珪素焼結体の製造方法が知られている。
【特許文献1】特開2000−169232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般に、粉砕粉を焼結させることにより製造された炭化珪素焼結体の体積抵抗率は非常に高いために、放電加工により炭化珪素焼結体を成形する場合、成形が完了するまでに多くの時間を要する。なお、このような問題を解決するために、窒素雰囲気下で粉砕粉を焼結させることにより、炭化珪素焼結体中に窒素を固溶させ、炭化珪素焼結体の体積抵抗率を低減させる方法が考えられるが、この方法を用いた場合、焼結時、炉材のカーボンと窒素が反応することにより炉材の消耗が激しくなる。
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、炉材を消耗させることなく体積抵抗率が低い炭化珪素焼結体を製造可能な炭化珪素焼結体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の発明者は、鋭意研究を進めてきた結果、粉砕粉を窒素雰囲気下で焼成することにより焼成粉を生成し、焼成粉を粉砕することにより再粉砕粉を生成し、再粉砕粉を不活性ガス雰囲気下で焼結させることにより炭化珪素焼結体を生成することにより、体積抵抗率が低い炭化珪素焼結体を製造できることを知見した。なお、粉砕粉の焼成温度は、再粉砕粉の焼結温度よりも低いので、炉材のカーボンと窒素が反応することにより炉材が消耗することを抑制できる。またこのような製造方法によれば、炭化珪素焼結体の体積抵抗率を低減させることができるので、放電加工による成形時間を短縮し、製造コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明に係る炭化珪素焼結体の製造方法を実施例に基づきより具体的に説明する。
【0007】
〔実施例1〕
実施例1では、始めに、20[μm]程度の粒度の炭化珪素粉体を粉砕することにより粒度1[μm]以下の粉砕粉を生成し、粉砕粉を圧力110[kPa],温度1900[℃]の窒素雰囲気下で焼成することにより10[μm]程度の粒度の焼成粉を生成する。次に、焼成粉を粉砕することにより粒度2[μm]の再粉砕粉を生成し、再粉砕粉をアルゴンガス雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、実施例1の炭化珪素焼結体を得た。
【0008】
〔従来例1〕
従来例1では、20[μm]程度の粒度の炭化珪素粉体を粉砕することにより粒度2[μm]の粉砕粉を生成し、粉砕粉をホットプレス焼結させることにより、従来例1の炭化珪素焼結体を得た。
【0009】
〔従来例2〕
従来例2では、始めに、20[μm]程度の粒度の炭化珪素粉体を粉砕することにより粒度1[μm]以下の粉砕粉を生成し、粉砕粉を1900[℃]の真空雰囲気下で焼成することにより10[μm]程度の粒度の焼成粉を生成する。次に、焼成粉を粉砕することにより粒度2[μm]の再粉砕粉を生成し、再粉砕粉をホットプレス焼結させることにより、従来例2の炭化珪素焼結体を得た。
【0010】
〔従来例3〕
従来例3では、始めに、20[μm]程度の粒度の炭化珪素粉体を粉砕することにより粒度1[μm]以下の粉砕粉を生成し、粉砕粉を1900[℃]の真空雰囲気下で焼成することにより10[μm]程度の粒度の焼成粉を生成する。次に、焼成粉を粉砕することにより粒度2[μm]の再粉砕粉を生成し、再粉砕粉を温度2300[℃]の窒素雰囲気下で焼結させることにより、従来例3の炭化珪素焼結体を得た。
【0011】
〔評価〕
実施例1及び従来例1〜3の炭化珪素焼結体の体積抵抗率を測定した結果、図1に示すように、実施例1の炭化珪素焼結体の体積抵抗率は2.0×10−3[Ω・cm]であったのに対し、従来例1〜3の炭化珪素焼結体の体積抵抗率はそれぞれ、1.3×10−2,1.1×10−1,3.1×10−2[Ω・cm]であった。また、放電加工により従来例2の炭化珪素焼結体を成形するのに要した時間は25.6時間であったのに対し、実施例1の炭化珪素焼結体を成形するのに要した時間は18.6時間であった。
【0012】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例及び従来例1〜3の炭化珪素焼結体の体積抵抗率を測定した結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化珪素粉体を粉砕することにより粉砕粉を生成する工程と、
前記粉砕粉を窒素雰囲気下で焼成することにより焼成粉を生成する工程と、
前記焼成粉を粉砕することにより再粉砕粉を生成する工程と、
前記再粉砕粉を不活性ガス雰囲気下で焼結させることにより炭化珪素焼結体を生成する工程と
を有することを特徴とする炭化珪素焼結体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−150257(P2008−150257A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341544(P2006−341544)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】