説明

炭素繊維紙から作られるハニカムコアおよびそれから作られる物品

本発明は、20〜85重量%の炭素繊維フロックを含む紙から製造されるハニカムコアに関する。炭素繊維は、少なくとも1.5:1の非円形断面アスペクト比を有する。紙は、少なくとも35%の繊維体積分率を有する。炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.5mmであり、また長さ加重平均繊維長は少なくとも0.9mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維紙から作られる構造ハニカムコアに関する。
【背景技術】
【0002】
高性能繊維状材料から作られるサンドイッチパネル用の、多くはハニカムの形態のコア構造体は様々な用途において、だが比強度または比剛性がきわめて高い価値を有する主に航空宇宙産業において使用される。ハニカムの製造に用いられる紙基材の主成分としてアラミド繊維が長年使用されてきた。ガラス繊維および炭素繊維から作られるハニカムもまた利用できるが、織布基材の形態でのみである。紙基材からのハニカム生産工程は、布基材からのコアの工程よりもコストが低く、したがって大変望ましい。紙基材の使用はまた、より小さなセルサイズの、またより軽量のコアを作ることを可能にする。炭素紙の基材からのコアの生産者に立ちはだかっている難題は、炭素繊維がきわめて脆く、紙のカレンダー加工の間に折れ、砕ける傾向があることである。米坪を増すためにカレンダー加工は必要であり、工程の重要な一部分であるので、これは重大な問題を提起する。カレンダー加工によって引き起こされる高い分率の破砕炭素繊維は、最終ハニカムの機械的性能に重大な影響を与えることになる。したがってきわめて短い破砕炭素繊維の分率ができるだけ少なく、かつ大部分の炭素繊維が最終複合構造物で望ましい特性を与えるのに十分な長さを有する炭素繊維を含有する高密度カレンダー加工紙基材から得られるコア構造体の必要性が存在する。特開平6−210777号公報は、セル壁用原紙としてアラミド繊維と炭素繊維の混合物を使用するハニカムコアを開示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、複数個のハニカムセルを画定する表面を有する複数個の相互に連結した壁を含むハニカム構造物を対象とし、
(i)そのセル壁は、20〜85重量%の炭素繊維を含む紙から形成され、
(ii)その紙は、少なくとも35%の繊維体積分率を有し、
(iii)その炭素繊維は、少なくとも0.5mmの算術平均繊維長を有し、かつ
(iv)その炭素繊維は、少なくとも0.9mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0004】
用語「繊維体積分率」、「算術平均繊維長」、および「長さ加重平均繊維長」は、試験方法の項で述べる定義を有する。
【0005】
本発明はさらに、少なくとも1枚の表面板がコアの両外面に取り付けられている樹脂含浸ハニカムコアを含む構造サンドイッチパネルを対象とし、そのコアのセル壁が、
(i)20〜85重量%の炭素繊維、
(ii)7.5〜50重量%のパラ−アラミド繊維、および
(iii)7.5〜30重量%の高分子結合剤
を含む紙から形成され、
(iv)その紙は、少なくとも35%の繊維体積分率を有し、
(v)その炭素繊維は、少なくとも0.5mmの算術平均繊維長を有し、かつ
(vi)その炭素繊維は、少なくとも0.9mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1a】六辺形の形をしたハニカムの描写図である。
【図1b】六辺形の形をしたハニカムの描写図である。
【図2】六辺形セルの形をしたハニカムの別の描写図である。
【図3】表面板を備えたハニカムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、複数個のハニカムセルを画定する表面を有する複数個の相互に連結した壁を含むハニカムコアを対象とし、そのセル壁は、非円形断面を有する20〜85重量%の炭素繊維を含み、樹脂含浸前に少なくとも35%の繊維体積分率を有する紙から形成される。炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.5mmであり、かつ長さ加重平均繊維長は少なくとも0.9mmである。
【0008】
好ましくは炭素繊維は、0.1〜3.0デニール/フィラメント(dpf)の範囲の線密度および少なくとも1.5:1の繊維断面アスペクト比(幅対高さ)を有する。この比較的小さな繊維線密度と相まって非円形炭素繊維断面は、カレンダー加工および後続のハニカムへの変形の後、短いまたは破砕した炭素繊維の割合の低い紙を提供する。好ましくはこの炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.7mmである。好ましくはこの炭素繊維の長さ加重平均繊維長は少なくとも1.2mmである。この繊維断面は、例えばドッグボーン、豆、楕円、リボン、またはストリップ形状であることができる。
【0009】
図1aは、本発明の或るハニカム1の平面図の例であり、セル壁3によって形成されたセル2を示す。図1bは、図1aで示したハニカムの立面図であり、2つの外面、すなわちセル壁の両端で形成される面4を示す。このコアはまた、縁部5を有する。図2は、このハニカムの三次元図である。六辺形のセル2およびセル壁3を有するハニカム1を示す。「T」寸法、すなわちハニカムの厚さを図2の10で示す。六辺形のセルを示すが、他の幾何学的図形の配列も可能であり、最もあり得る配列のなかには正方形セル、過膨張セル、および屈曲性コアセルがある。このようなセルの型は当該技術分野でよく知られており、あり得る幾何学的図形のセルの型に関するさらなる情報についてはT.BitzerによるHoneycomb Technology(出版社Chapman & Hall,1997)を参照することができる。
【0010】
さらなる実施形態では本発明は、複数個のハニカムセルを画定する表面を有する複数個の相互に連結した壁を含むハニカムコアを対象とし、このセル壁は、非円形断面を有する20〜85重量%の炭素繊維と、7.5〜50重量%のアラミド繊維と、7.5〜30重量%の高分子結合剤とを含み、樹脂含浸前に少なくとも35%の繊維体積分率を有する紙から形成される。この炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.5mmであり、かつ長さ加重平均繊維長は少なくとも0.9mmである。
【0011】
さらに別の好ましい実施形態では、完成ハニカムコアの特性をできるだけ高くするために、樹脂を含浸する前の紙の縦方向対横方向の引張強さ比は2.2以下である。
【0012】
本発明で使用される炭素繊維は、フロックとしても知られる短繊維すなわちチョップトファイバーの形態であることができる。フロックは、連続フィラメント繊維を著しいフィブリル化なしに短い長さに切断することによって製造される。適切な長さ範囲の例は1.5mmから20mmである。本発明で使用するのに適した炭素繊維は、例えばJ.B.DonnetおよびR.C.Bansal著、Carbon Fibers,Marcel Dekker,1984に記載されているような既知の技術的方法を用いてポリアクリロニトリル(PAN)またはピッチ前駆物質のどちらかから製造することができる。非円形炭素繊維断面は、この前駆物質の紡糸中に形成される。好ましくは炭素繊維は、連続フィラメント糸またはトウから作られた、樹脂を含浸し圧密化した試験片を試験することによって定められる少なくとも1667g/dtex(1500g/デニール)の弾性率および少なくとも28g/dtex(25g/デニール)のテナシティを有する。
【0013】
炭素繊維のフロック長が1.5mm未満の場合、それは可飽和紙構造物に加工し、また適切な弾性率および強度を有する最終複合材を提供するには一般にあまりにも短すぎ、またフロック長が20mmを超える場合、均一な湿式堆積ウェブを形成することがきわめて困難である。0.2dpf未満、特に0.1dpf未満の線密度を有するフロックは、十分な断面の均一性および再現性を伴って生産することが困難であり、またフロック線密度が3.0dpfを超える場合、軽乃至中程度の坪量の均一な紙を形成することがきわめて困難である。
【0014】
炭素繊維の表面は、紙の被覆に使用されるマトリックス樹脂とそれら繊維の接着を向上させるために酸化されていてもよい。湿式酸化、ドライ酸化、陽極酸化などの酸化法が当産業界で知られており、A.R.Bunsell編「Fibre Reinforcements for Composite Materials」Composite Materials Series,Volume 2,Elsevier,1988中により詳細に記載されている。
【0015】
本発明で使用されるアラミド繊維は、フロック、パルプ、またはこれらの組合せの形態であることができる。本明細書中で使用される用語アラミドは、アミド(−CONH−)連鎖の少なくとも85%が2個の芳香族環に直接に結合しているポリアミドを意味する。アラミドと一緒に添加剤を使用することができる。実際に、重量で10%程度までの他の高分子材料をアラミドにブレンドできること、あるいはそのアラミドのジアミンを10%ほどの他のジアミンで置き換えた、またはそのアラミドの二酸塩化物を10%ほどの他の二酸塩化物で置き換えたコポリマーを使用することができることが分かっている。本明細書中で使用される用語「パルプ」は、柄(stalk)およびそこから複数のフィブリルが全体に延びている繊維状材料の粒子を意味する。柄は一般に柱状であり、直径10〜50μmである。フィブリルは、直径1μmまたは数μm、長さ10〜100μmの画分のみを測定する一般には柄に結合している細い毛状構成員である。アラミド繊維フロックは、炭素繊維フロックと似た長さのものである。メタアラミド繊維およびパラアラミド繊維の両方が適しており、Kevlar(登録商標)およびNomex(登録商標)という商品名でE.I.DuPont de Nemours,Richmond,VAから、またTwaron(登録商標)という商品名でTeijin Twaron,Conyers,GAから入手できる。一実施形態ではアラミド繊維フロックは、少なくとも1.5:1の非円形断面アスペクト比を有する。さらに、好ましい実施形態では紙組成物中のすべてのフロック繊維の断面アスペクト比が、少なくとも1.5:1である。
【0016】
好ましいパルプ材料はp−アラミドである。しかしながらp−アラミドと、液晶ポリエステル、ポリアレーンアゾール、メタ−アラミド、およびセルロースなどの他の合成または天然繊維とのブレンドを利用することもできる。アラミドパルプの製造方法の一例は、Hainesらの米国特許第5,084,136号明細書に開示されている。
【0017】
本発明の紙における高分子結合剤として様々な熱硬化性および熱可塑性樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、フィブリド、フレーク、粉末、およびフロックの形態で供給することができる。本明細書中で使用される用語「フィブリド」は、100〜1000μmの長さと幅、0.1〜1μmの厚さを有することが知られている小さな薄膜状の、本質的に二次元の粒子の非常に細かく分割したポリマー生成物を意味する。好ましい種類の結合剤樹脂は、アラミド、ポリイミド、フェノール系樹脂、およびエポキシである。しかしながら他の種類の樹脂もまた、使用することができる。
【0018】
フィブリドは、ポリマー溶液を、その溶液の溶媒と混和することができない液体の凝固浴中に流すことによって一般に製造される。ポリマー溶液の流れは、ポリマーが凝固するにつれて激しいせん断力および乱流にかけられる。本発明のフィブリド材料は、メタまたはパラ−アラミド、あるいはこれらのブレンドから選択することができる。より好ましくはフィブリドはメタ−アラミドである。
【0019】
本発明のコアの紙は、雲母、ヒル石などを含めた少量の無機粒子を含むことができ、これらの性能を高める添加剤の添加は、改良された耐火性、熱伝導率、寸法安定性などの特性を紙および最終のコア構造体に与えることになる。
【0020】
本発明の紙中の繊維体積分率は35〜70%である。このような範囲は紙の厚さ全体にわたって被覆用樹脂の含浸を可能にし、こうして完成コア中の紙対被覆用樹脂の最適な重量配分比をもたらす。好ましくはこの紙対被覆用樹脂の重量比は、8:1〜1:1の範囲内である。本発明で使用される紙の厚さは、そのコア構造体の最終の用途または所望の特性によって決まる。幾つかの実施形態では厚さは15〜125μm(0.6〜5ミル)である。より好ましくは厚さは25〜100μm(1〜4ミル)である。幾つかの実施形態では紙の坪量は10〜100g/m2(0.3〜3オンス/平方ヤード)である。
【0021】
本発明のハニカムコアを製造するために使用される紙は、Fourdrinierまたは傾斜長網式抄紙機のような一般に使用される機械を含めて実験用スクリーンから業務用サイズの製紙機械までの任意の規模の設備上で形成することができる。典型的な方法は、水性液体に溶かしたフロックおよび/またはパルプなどの繊維状材料とフィブリドとの分散液を作製すること、その分散液から液体を排出して湿潤組成物を生じさせること、およびその湿潤紙組成物を乾燥することを伴う。この分散液は、繊維を分散させ、次いでフィブリドを加えることによるか、またはフィブリドを分散させ、次いで繊維を加えることによるいずれかで作製することができる。この最終分散液はまた、繊維の分散液をフィブリドの分散液と組み合わせることによって作製することもでき、またこの分散液は無機材料などの他の添加剤を含んでいてもよい。分散液中のフロックおよびパルプ由来の繊維の濃度は、分散液の総重量を基準にして0.01〜1.0重量%の範囲であることができる。ポリマー結合剤の濃度の好適な範囲の例は、固形物の総重量を基準にして30重量%かそれ以下であるべきである。典型的な方法では分散液の液体は一般には水であるが、様々な他の材料、例えばpH調整剤、二次成形助剤、界面活性剤、泡消し剤などを含むこともできる。一般には、分散液をスクリーンまたは他の多孔支持体上に送り、分散固形物を保持し、次いでその液体を通過させることによって分散液から水性液体を排出して湿潤紙組成物を生じさせる。湿潤組成物はいったん支持体上に形成されると、一般にはさらに真空または他の圧力による力によって脱水され、さらに残った液体を蒸発させることによって乾燥される。
【0022】
一つの好ましい実施形態では繊維とフィブリドの形態のポリマー結合剤とを一緒にスラリーにしてワイヤスクリーンまたはベルト上で紙に転換される混合物を形成することができる。アラミド繊維とアラミドフィブリドから紙を形成する方法の例については、Tokarskyの米国特許第4,698,267号および第4,729,921号各明細書、Heslerらの米国特許第5,026,456号明細書、ならびにKirayogluらの米国特許第5,223,094号および第5,314,742号各明細書を参照されたい。
【0023】
いったん紙が形成されたら、それをカレンダー加工して所望の空洞率/見掛密度にしなければならない。この製紙工程における任意選択の最終ステップは、被覆用樹脂と紙の接着を高めるための紙の表面処理を含むことができる。これは、空気、コロナ、またはプラズマ雰囲気中で行われる。他の選択可能な紙の化学的または熱的表面改質が適している場合もある。
【0024】
上記ウェブ基材をハニカムコアに転換する方法は当業熟練者によく知られており、展開およびコルゲーションが挙げられる。展開法は、紙からコアを製造するのに特に適している。このような方法は、Engineered Materials Handbook,Volume 1―Composites,ASM International,1988の第721頁にさらに詳しく述べられている。ハニカムの形成前または後に、樹脂をペーパーウェブに被覆または含浸することができる。紙への塗布後に架橋されて剛性および強度などの最終特性を最適化する樹脂を使用することができる。樹脂の例には、エポキシ、フェノール系、アクリル、ポリイミド、およびこれらの混合物が挙げられ、フェノール系樹脂が好ましい。United States Military Specification MIL−R−9299Cは、適切な樹脂特性を指定している。コアの最終機械的強度は、幾つかの要因の組合せの結果である。主要な既知の寄与要因は、紙組成と厚さ、セルサイズ、および、例えば樹脂で被覆した後の最終コア密度である。セルサイズは、ハニカムコアのセルの内側の内接円の直径である。典型的なセルサイズは3.2mm〜6.2mm(1/8〜1/4インチ)の範囲に及ぶが、他のサイズも可能である。最終コア密度は、一般には29〜240kg/m3(1.8〜15ポンド/立方フィート)の範囲である。
【0025】
本発明はまた、少なくとも1枚の表面板がコアの両外面に取り付けられた樹脂含浸ハニカムコアを含む構造サンドイッチパネルを対象とする。このコアのセル壁は、樹脂含浸前に、20〜85重量%の非円形断面を有する炭素繊維を含む紙から形成され、この紙はさらに少なくとも35%の繊維体積分率、炭素繊維の少なくとも0.5mmの算術平均繊維長、および少なくとも0.9mmの長さ加重平均繊維長を有する。
【0026】
図3は、表面板7および8がコアの二つの外面に取り付けられているハニカムコア6から組み立てられた構造サンドイッチパネル5を示す。好ましい表面板材料はプリプレグ、すなわち熱硬化性または熱可塑性樹脂を含浸した繊維シートであるが、金属表面板もまた利用することができる。金属表面板の場合には、またプリプレグに対する幾つかの状況では接着フィルム9がまた使用される。一般にはコアのどちらの面にも少なくとも2枚のプリプレグ表面板が存在する。
【0027】
本発明はさらに、少なくとも1枚の表面板がコアの両外面に取り付けられた樹脂含浸ハニカムコアを含む構造サンドイッチパネルを対象とする。このコアのセル壁は、樹脂含浸前に、20〜85重量%の非円形断面を有する炭素繊維、7.5〜50重量%のアラミド繊維、および7.5〜30重量%の高分子結合剤を含む紙から形成され、この紙はさらに少なくとも35%の繊維体積分率を有する。この炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.5mmであり、長さ加重平均繊維長は少なくとも0.9mmである。さらに、コア中の紙対被覆用樹脂の重量比は8:1〜1:1である。
【0028】
試験方法
紙の繊維体積分率(繊維によって占められる紙構造物の体積)は、式
繊維の体積分率(%)=100×(紙の見掛密度)×((繊維1の重量分率)/(繊維1の密度)+(繊維2の重量分率)/(繊維2の密度)+‐‐‐+(繊維nの重量分率)/(繊維nの密度))
によって計算され、式中nは紙組成中の異なる繊維の総数である。
【0029】
紙見掛密度は、ASTM D374−99により測定される紙厚およびASTM D646−96により測定される坪量を用いて計算される。繊維デニールは、ASTM D1907−07を用いて測定される。
【0030】
引張強さの縦方向対横方向の比は、ASTM D828−97に準拠して縦方向および横方向の紙の引張強さを測定し、その縦方向の値を横方向の値で割ることによって定められる。
【0031】
炭素繊維の算術平均繊維長および長さ加重平均繊維長は、単一セルの壁を、2つの壁を有するそれらの境界で切断し、その壁の有機成分を硫酸または他の適切な液体で溶解または分解し、炭素繊維をガラスまたは他の適切な濾過材上に堆積させ、炭素繊維長の顕微分析を行うことによって求められる。測定される炭素繊維の総数は200個以上である。0.01mm以上の長さを有する繊維のみを数える。算術平均繊維長は、式
L(算術平均)=(N1×L1+N2×L2+‐‐‐)/((N1+N2+‐‐‐)
に基づいて計算される。
【0032】
長さ加重平均繊維長は、式
L(長さ加重平均)=(N1×L12+N2×L22+‐‐‐)/((N1×L1+N2×L2+‐‐‐)
に基づいて計算される。
式中、L1、L2などはすべて実測長さであり、またN1、N2などは所与の長さを有する繊維の個数である。
【0033】
炭素繊維断面のアスペクト比は、顕微鏡下の繊維断面の最大(幅)寸法および最小(高さ)寸法を測定し、この1番目の数を2番目の数で割ることによって求められる。
【0034】
炭素繊維の弾性率およびテナシティは、樹脂を含浸し圧密化した連続糸またはトウの試験片についてASTM D4018−99に準拠して測定される。
【実施例】
【0035】
実施例1
炭素フロック、p−アラミドフロック、p−アラミドパルプ、およびm−アラミドフィブリドを含む紙を通常の抄紙設備上で形成する。紙の組成は、炭素繊維フロックが40重量%、p−アラミドフロックが15重量%、p−アラミドパルプが30重量%、m−アラミドフィブリドが15重量%である。
【0036】
炭素フロックは、公称フィラメント線密度0.70dtex/フィラメント(0.62デニール/フィラメント)、断面アスペクト比3:1、カット長3.2mm、テナシティ24.1g/dtex(1.92N/tex)、および初期弾性率1889g/dtex(150N/tex)を有する。
【0037】
p−アラミドフロックは、公称フィラメント線密度1.7dtex/フィラメント(1.5デニール/フィラメント)、カット長6.4mm、テナシティ26.8g/dtex(2.13N/tex)、および初期弾性率1044g/dtex(83N/tex)を有する。
【0038】
p−アラミドパルプは、約180mLのカナダ標準濾水度(Canadian Standard Freeness)(CSF)まで高せん断精製することによって上記p−アラミドフロックから製作される。メタ−アラミドフィブリドは、Grossの米国特許第3,756,908号明細書に記載のように作製される。
【0039】
この紙を330℃でカレンダー加工して、厚さ48μm、坪量40.7g/m2(1.2オンス/平方ヤード)、見掛密度0.85g/cm3、繊維体積分率44%、および縦方向対横方向の引張強さ比1:1を有する完成紙を製作する。
【0040】
次いでこのカレンダー加工した紙からハニカムを形成する。紙表面に溶媒和接着剤のノードラインを幅2mmおよびピッチ5mmで塗布し、溶媒を除去する。
【0041】
この接着剤ノードラインを有するシートを長さ500mmに切断する。複数枚のシートを、各シートがその塗布された接着剤ノードラインのピッチの半分またはその間隔の半分だけ他に対してずれるように順に重ね合せる。このずれは、最終のスタックが均一に垂直になるように左右に交互に行われる。ノードラインの幅およびピッチのオフセット量は、展開時にセルサイズが3.2mmになるようなものである。次いで、その枚数の積層シートをプレート間で接着剤の軟化点で熱間圧縮し、接着剤ノードラインを流れさせる。いったん熱が取り除かれると接着剤が固化して、シートをノードラインで互いに接合させる。次いで、等辺断面を有するセルを形成するように、接合されたアラミドシートを積層方向と反対の方向に展開する。シートのそれぞれは、シートがその接合したノードラインの縁部に沿って折り曲げられ、かつ接合していない部分が張力の方向に展開されてシートを互いに引き離すように、相互間で展開される。
【0042】
次いで、この展開されたハニカムを、溶媒系MIL−R−9299C標準フェノール樹脂を含有する槽に入れる。フェノール樹脂は、樹脂をエタノールに溶解した液体の形態で使用される。樹脂は、紙の細孔に浸透するだけでなく、セル壁の内面に付着しかつ内面を覆う。樹脂を含浸させた後、ハニカムを槽から取り出し、乾燥オーブン中で熱風により乾燥して溶媒を除去し、フェノール樹脂を硬化させる。樹脂槽中での含浸のステップおよび乾燥オーブン中での乾燥のステップは、もう2回繰り返される。
【0043】
樹脂で被覆した後の最終コアは、密度48kg/m3(3ポンド/立方フィート)およびセルサイズ3.2mm(1/8インチ)を有することになる。セル壁中の炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.5mmであり、また長さ加重平均繊維長は少なくとも0.9mmである。
【0044】
比較例A
紙を、実施例1の場合と同様だが、円形断面を有する、すなわち公称アスペクト比1:1を有する炭素繊維を用いて作製する。最終の紙は、厚さ48μm、坪数40.7g/m2(1.2オンス/平方ヤード)、見掛密度0.85g/cm3、繊維体積分率44%、および縦方向対横方向の引張強さ比1.1を有することになる。
【0045】
ハニカムを、この紙から実施例1の場合と同じ方法で作製する。樹脂で被覆した後の最終コアは、密度48kg/m3(3ポンド/立方フィート)およびセルサイズ3.2mm(1/8)を有することになる。セル壁中の炭素繊維の算術平均繊維長は少なくとも0.5mmであり、長さ加重平均繊維長は少なくとも0.9mmである。
【0046】
同一のセルサイズ、同一の最終コア密度、および同一の樹脂含有量の場合、実施例1のように非円形断面の炭素繊維を有する紙から作られる本発明のコアは、炭素繊維が比較例Aのように実質的に円形断面を有する他の炭素繊維紙のコアと比較して改良されたせん断強さを有する。
【0047】
実施例2
2枚のプリプレグ表面板を、実施例1からのハニカムの厚さ10mmのスライスの両面に置く。プリプレグは、Hexcel Corporation,Dublin,CAから入手できるG0803型炭素繊維布に付着させた8552エポキシ樹脂である。プリプレグ中の樹脂含有量は35%である。プリプレグの両外面上にはく離層を置き、このプリプレグ−ハニカムアッセンブリをプレス中で180℃で120分間硬化してサンドイッチパネルを製作する。
【図1A】

【図1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のハニカムセルを画定する表面を有する複数個の相互に連結した壁を含むハニカム構造体であって、前記セル壁が20〜85重量%の炭素繊維を含む紙から形成され、
(i)前記紙が少なくとも35%の繊維体積分率を有し、
(ii)前記炭素繊維が少なくとも1.5:1の繊維断面アスペクト比を有し、
(iii)前記炭素繊維が少なくとも0.5mmの算術平均繊維長を有し、かつ
(iv)前記炭素繊維が少なくとも0.9mmの長さ加重平均繊維長を有する、
ハニカム構造体。
【請求項2】
前記炭素繊維が、0.1〜3.0dpfの範囲内の線密度を有する、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
炭素繊維の前記算術平均繊維長が少なくとも0.7mmであり、かつ前記長さ加重平均繊維長が少なくとも1.2mmである、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記紙組成物中のすべてのフロック繊維が、少なくとも1.5:1の繊維断面アスペクト比を有する、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
樹脂を含浸させる前に、前記紙が2.2以下の縦方向対横方向の引張強さ比を有する、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記紙が、少なくとも45%の繊維体積分率を有する、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項7】
前記紙が、フェノール系、ポリアミド、エポキシ、およびこれらの組合せからなる群から選択される樹脂を含浸される、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項8】
前記含浸紙が、8:1〜1:1の範囲の紙対樹脂重量比を有する、請求項7に記載のハニカム構造体。
【請求項9】
前記紙が、7.5〜50重量%のパラ−アラミド繊維と、重量%で7.5〜30部の高分子結合剤とをさらに含む、請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項10】
前記紙が、フェノール系、ポリアミド、エポキシ、およびこれらの組合せからなる群から選択される樹脂を含浸される、請求項9に記載のハニカム構造体。
【請求項11】
前記含浸紙が、8:1〜1:1の範囲の紙対樹脂重量比を有する、請求項10に記載のハニカム構造体。
【請求項12】
少なくとも1枚の表面板がコアの両外面に取り付けられている樹脂含浸ハニカムコアを含む構造サンドイッチパネルであって、前記コアのセル壁が、
(i)少なくとも1.5:1の繊維断面アスペクト比を有する炭素繊維20〜85重量%、
(ii)7.5〜50重量%のパラ−アラミド繊維、および
(iii)7.5〜30重量%の高分子結合剤
を含む紙から形成され、
(a)前記紙が少なくとも35%の繊維体積分率を有し、
(b)前記炭素繊維が少なくとも0.5mmの算術平均繊維長を有し、かつ
(c)前記炭素繊維が少なくとも0.9mmの長さ加重平均繊維長を有する、
サンドイッチパネル。
【請求項13】
前記コアセル壁を形成する前記紙中の前記炭素繊維が、0.1〜3.0dpfの範囲内の線密度を有する、請求項12に記載のサンドイッチパネル。
【請求項14】
前記コアセル壁を形成する前記紙中のすべてのフロック繊維が、少なくとも1.5:1の断面アスペクト比を有する、請求項12に記載のサンドイッチパネル。
【請求項15】
前記コアセル壁を形成する前記紙が、樹脂を含浸させる前に2.2以下の縦方向対横方向の引張強さ比を有する、請求項12に記載のサンドイッチパネル。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511411(P2013−511411A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539998(P2012−539998)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/057019
【国際公開番号】WO2011/062980
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】