説明

燃料供給制御装置および燃料供給制御方法

【課題】燃料タンク内のバイオ燃料の酸化劣化を抑制することが可能な内燃機関の燃料供給制御装置および燃料供給制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】燃料4を貯留する燃料タンク11と、燃料4中のバイオ燃料濃度を検出するバイオ燃料濃度センサ71と、燃料タンク11内の燃料の温度を検出する燃料温度センサ73と、大気温度を検出する大気温度センサ61とを備え、ECU2は、バイオ燃料濃度が閾値TH2以上で、かつ、燃料タンク11内の燃料4の温度と大気温度の差分が閾値TH3以上である場合に、燃料タンク11内に大気を供給して、燃料4を冷却して、その酸化劣化を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料供給制御装置および燃料供給制御方法に関し、詳細には、バイオ燃料を使用可能なディーゼル機関の燃料供給制御装置において、燃料タンク内のバイオ燃料の酸化劣化を防止することが可能な燃料供給制御装置および燃料供給制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギー対策や環境対策等の観点から、ガソリンや軽油等の標準燃料に対する代替燃料としてアルコールや、菜種やパームから作られるバイオ燃料等の含酸素燃料も注目されており、これらの燃料を使用可能な内燃機関の開発も要請されている。
【0003】
特に、バイオ燃料であるバイオ軽油(たとえば、RME:菜種油メチルエステル、廃食油等)は、ディーゼルエンジン用の燃料として着目されている。しかしながら、このバイオ軽油は、標準軽油に比べて酸化劣化し易い燃料であり、時間経過とともに酸化劣化し易い。特に、高温条件下や高濃度条件下で酸化劣化し易いという特徴がある。自動車の場合、燃料が酸素に接触するのは主として燃料タンクである。したがって、燃料タンクでの保管状態が酸化劣化に重大な影響を与える。
【0004】
酸化劣化した燃料がディーゼルエンジンに使用されると、その燃料系装置の金属部品(たとえば、コモンレールやサプライポンプ、インジェクタの金属部品)に対して腐食作用があり、そのメッキ等も腐食させるため、インジェクタ等が作動不良や燃料漏れを起こす虞がある。
【0005】
したがって、かかるバイオ燃料を単体で、あるいは標準軽油に混合してディーゼルエンジンに用いる場合、その燃料性状に基づいて燃料の酸化劣化を抑制する必要があるが、バイオ燃料の酸化劣化を抑制する方法は何ら提案されていない。
【0006】
関連する技術として、例えば、特許文献1では、ディーゼル機関において、アルコール混合燃料が酸化劣化すると鋼板製の燃料容器の腐食が進行するため、鋼版の表層に高耐食制加工処理を施す技術が開示されている。
【0007】
しかしながら、同文献の方法では、高耐食性加工処理にコストがかかるという問題がある。また、燃料タンク内のバイオ燃料の酸化劣化を抑制する方法を何ら提案していない。
【0008】
【特許文献1】特開2004−197058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、上記に鑑みてなされたものであり、燃料タンク内のバイオ燃料の酸化劣化を抑制することが可能な内燃機関の燃料供給制御装置および燃料供給制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決して、本発明の目的を達成するために、本発明は、バイオ燃料を含む燃料を使用可能なディーゼル機関の燃料供給制御装置において、前記燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料中のバイオ燃料濃度を検出するバイオ燃料濃度検出手段と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する燃料温度検出手段と、大気温度を検出する大気温度検出手段と、前記バイオ燃料濃度検出手段で検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度検出手段で検出された大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記燃料タンク内に大気を供給して、前記燃料を冷却する燃料冷却手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の好ましい態様によれば、車速を検出する車速検出手段を備え、前記燃料冷却手段は、前記車速が第3の閾値以上の場合に、前記燃料タンク内に前記大気を供給して、前記燃料を冷却することが望ましい。
【0012】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記燃料タンク内の空気量を検出する空気量検出手段を備え、前記燃料冷却手段は、前記空気量検出手段で検出された燃料タンク内の空気量が第4の閾値以上の場合に、前記燃料タンク内に前記大気を供給して、前記燃料を冷却することが望ましい。
【0013】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記燃料冷却手段は、前記燃料タンク内に大気を導入する第1の通路と、前記第1の通路に配置された大気導入弁と、前記燃料タンク内の空気を排出する第2の通路と、前記第2の通路に配置された大気開放弁と、前記大気導入弁および前記大気開放弁の開閉動作を制御する制御手段とを含み、前記制御手段は、前記バイオ燃料濃度検出手段で検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度検出手段で検出された大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記大気導入弁と前記大気開放弁を開弁させて、前記燃料タンク内に大気を供給して前記燃料を冷却することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の好ましい態様によれば、前記第1の通路は、前記ディーゼル機関の燃焼室に空気を導入する吸気通路に接続されており、前記吸気通路の吸入空気を、前記第1の通路を介して、前記燃料タンク内に供給することが望ましい。
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、バイオ燃料を含む燃料を使用可能な内燃機関の燃料供給制御方法において、燃料タンク内の燃料のバイオ燃料濃度を検出するバイオ燃料濃度検出工程と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する燃料温度検出工程と、大気温度を検出する大気温度検出工程と、前記検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記燃料タンク内に前記大気を供給して、前記燃料を冷却する燃料冷却工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る燃料供給制御装置によれば、バイオ燃料を含む燃料を使用可能なディーゼル機関の燃料供給制御装置において、前記燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料中のバイオ燃料濃度を検出するバイオ燃料濃度検出手段と、前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する燃料温度検出手段と、大気温度を検出する大気温度検出手段と、前記バイオ燃料濃度検出手段で検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度検出手段で検出された大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記燃料タンク内に大気を供給して、前記燃料を冷却する燃料冷却手段と、を備えているので、燃料タンク内のバイオ燃料の酸化劣化を抑制することが可能な内燃機関の燃料供給制御装置を提供することが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の実施例1に係る燃料供給制御装置を適用した内燃機関システムの概略構成を示している。この内燃機関システム1は、コモンレール方式の燃料噴射装置およびターボチャージャ5を備えるディーゼル機関システムとなっており、車両に走行用動力源として搭載されるものである。この内燃機関システム1は、図1に示すように、ECU2、燃料供給系10、燃焼室20、吸気系30、排気系50、および燃料冷却系60等を主要部として構成されている。
【0019】
燃料供給系10は、燃料タンク11、メイン燃料通路P0、メイン燃料通路P0を通過する燃料4の不純物を除去する燃料フィルタ12、燃料ポンプ14、コモンレール15、燃料噴射弁16、還元剤添加弁17、機関燃料通路P1、および添加燃料通路P2等を備えて構成されている。
【0020】
燃料タンク11は、燃料4を貯留するためのものである。燃料4は、例えば、バイオ燃料(例えば、菜種油、大豆油、パーム油等)混合軽油である。なお、使用されるバイオ燃料は、単一種のものとし、例えば、菜種油や大豆油を混合して使用しないものとする。燃料タンク11には、バイオ燃料濃度センサ(バイオ燃料濃度検出手段)71が設けられている。バイオ燃料濃度センサ71は、燃料4中のバイオ燃料濃度L(%)を検出して、検出結果をECU2に出力する。バイオ燃料濃度センサ71は、例えば、燃料4を光学的(光の反射率や屈折率)にまたは誘電率等を測定して、燃料4中のバイオ燃料濃度を検出することができる。また、燃料タンク11には、燃料タンク11内の燃料4の量を計測する燃料量センサ72が設けられている。燃料量センサ72は、燃料タンク11内の燃料4の量を計測し、計測した燃料量をECU2に出力する。さらに、燃料タンク11には、燃料タンク11内の燃料4の温度を計測する燃料温度センサ73が設けられている。燃料温度センサ73は、燃料タンク11内の燃料4の温度を計測し、計測した燃料温度をECU2に出力する。
【0021】
燃料ポンプ14は、燃料タンク11からメイン燃料通路P0を介して、燃料4を汲み上げ、機関燃料通路P1を経てコモンレール15に供給する。コモンレール15は、燃料ポンプ14から供給された燃料4を所定圧力に蓄圧し、各燃料噴射弁16に分配する。電磁弁である燃料噴射弁16は、燃焼室20内に燃料4を噴射供給する。
【0022】
また、燃料ポンプ14は、メイン燃料通路P0に供給される燃料4の一部を、添加燃料通路P2を介して還元剤添加弁17に供給する。電磁弁である還元剤添加弁17は、還元剤として機能する燃料4を、適宜量、適宜タイミングで排気系50のNOx触媒コンバータ(NSR)51の上流に添加供給する。
【0023】
吸気系30は、各燃焼室20内に供給される吸入空気の通路を形成するものである。吸気系30を構成する吸気通路P3には、その最上流部に配設されたエアクリーナー31から下流側に向けて順に、吸気量を検出するエアーフローセンサ32、ターボチャージャ5のコンプレッサ5a、吸入空気を冷却するインタークーラ33、吸気量調節用の吸気絞り弁34が配設されている。
【0024】
排気系50は、各燃焼室20から排出される排気ガスの通路を形成するものである。排気系50を構成する排気通路P4には、上流側から順に、上記ターボチャージャ5の排気タービン5b、NOx触媒コンバータ(NSR:NOx Storage Reduction Catalyst)51、PMフィルタ(DPNF:Diesel Particulate NOx Redudction Filter)52、排気中の酸素濃度を検出する空燃比センサ53、酸化触媒コンバータ54が配設されている。
【0025】
NOx触媒コンバータ(NSR)51には、吸蔵還元型のNOx触媒が担持されている。このNOx触媒は、排気の酸素濃度が高いときに排気中のNOxを吸蔵し、排気の酸素濃度が低いときにその吸蔵したNOxを放出する。またNOx触媒は、上記NOx放出時に、還元剤となる未燃燃料成分がその周囲に十分存在していれば、その放出されたNOxを還元して浄化する。
【0026】
PMフィルタ(DPNF)52は、多孔質材料によって形成されており、排気中の煤を主成分とする微粒子(PM)が捕集されるようになっている。このPMフィルタ(DPNF)52にも、上記NOx触媒コンバータ51と同様に、吸蔵還元型のNOx触媒が担持されており、排気中のNOxの浄化が行われるようになっている。
【0027】
酸化触媒コンバータ54には、酸化触媒が担持されている。この酸化触媒は、排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して浄化する。
【0028】
また、内燃機関システム1には、吸気系30と排気系50をバイパスし、排気の一部を吸気系30に戻すEGR通路P7が設けられている。EGR通路P7には、排気を冷却するためのEGRクーラ56と、排気流量を調整するEGR弁57とが設けられている。
【0029】
燃料冷却系60は、燃料タンク11内の燃料4を冷却するためのものであり、燃料タンク11内に大気(空気)を導入する大気導入通路(第1の通路)P5と、燃料タンク11内の空気を外部に排出する大気開放通路(第2の通路)P6を形成している。大気導入通路P5は、燃料タンク11に連通しており、上流側から順に、大気温度を計測する大気温度センサ61、エアクリーナー62、大気導入用の電磁弁である大気導入弁63が配設されている。大気温度センサ61は、大気温度を検出して、ECU2に出力する。大気導入弁63の開閉動作はECU2によって制御される。大気開放通路P6は、燃料タンク11に連通しており、上流側から順に、大気開放用の電磁弁である大気開放弁64およびキャニスタ65が配置されている。大気開放弁64の開閉動作はECU2によって制御される。キャニスタ65は、吸着材が充填されており、蒸発燃料を吸着材で吸着する。
【0030】
ECU2は、内燃機関システム1の各種制御を実行する。ECU2は、機関制御に係る各種演算処理を実行するCPUと、その制御に必要な制御プログラムやデータ等が記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時的に記憶されるRAMや不揮発性メモリ等からなるメモリと、および外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
【0031】
ECU2の入力ポートには、上述した各センサに加え、機関回転速度を検出するNEセンサ(不図示)やアクセル操作量を検出するアクセルセンサ(不図示)、吸気絞り弁34の開度を検出する絞り弁センサ(不図示)、車速センサ(車速検出手段)80等が接続されている。またECU2の出力ポートには、吸気絞り弁34、EGR弁57、燃料噴射弁16、還元剤添加弁17、大気導入弁63、大気開放弁64等の駆動回路が接続されている。
【0032】
ECU2は、上記各センサから入力される検出信号より把握される機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各機器類の駆動回路に指令信号を出力する。このようにして、ECU2は、上記吸気絞り弁34の開度制御、上記EGR弁57の開度制御に基づくEGR制御、上記燃料噴射弁16からの燃料噴射量、燃料噴射時期、及び燃料噴射圧の制御、PM再生等の各種制御を実行する。また、ECU2は、車速センサ80により検出された車速を受信する。また、ECU2は、燃料量センサ72で計測された燃料タンク11内の燃料量に基づいて、燃料タンク11内の空気量を算出する空気量検出手段として機能する。
【0033】
さらに、ECU2は、燃料タンク11内の燃料4の酸化を防止するために、燃料タンク11内に大気を供給して燃料4を冷却する燃料冷却処理(図2参照)を実行する。具体的には、ECU2は、バイオ燃料濃度が閾値TH2(第1の閾値)以上で、かつ、燃料タンク11内の燃料4の温度と大気温度の差分が閾値TH3(第2の閾値)以上である場合に、燃料冷却系60(大気導入弁63および大気開放弁64)を制御して、燃料タンク11内に大気を供給して燃料4を冷却する。ECU2および燃料冷却系60は、燃料冷却手段として機能する。
【0034】
図2は、上記構成の内燃機関システム1のECU2により実行される燃料冷却処理を説明するためのフローチャートである。
【0035】
同図において、IGがONされると、ECU2は、まず、車速≧閾値TH1(第3の閾値)であるか否かを判断する(ステップS1)。燃料冷却系60において空気流を好適に形成するためには、車両が一定速度以上で走行する必要があるためである。ECU2は、車速≧閾値TH1である場合には(ステップS1の「Yes」)、バイオ燃料濃度センサ71で検出したバイオ燃料濃度L(%)を取り込み、バイオ燃料濃度L(%)≧閾値TH2(第1の閾値:例えば、40%)であるか否かを判断する(ステップS2)。
【0036】
バイオ燃料濃度L(%)≧閾値TH2でない場合には(ステップS2の「No」)、ステップS1に戻る。他方、バイオ燃料濃度L(%)≧閾値TH2である場合には(ステップS2の「Yes」)、ECU2は、大気温度センサ61で検出した大気温度TAおよび燃料温度センサ73で検出した燃料温度TFを取り込み、燃料温度TFと大気温度TAとの差分S=(燃料温度TF−大気温度TA)≧閾値TH3(第2の閾値:例えば、40℃)であるか否かを判断する(ステップS3)。ここで、燃料温度TFと大気温度TAの差分Sを判定しているのは、燃料温度TFと大気温度TAの差分が小さい場合には、大気による燃料冷却効果が少ないからである。
【0037】
差分S≧閾値TH3でない場合には(ステップS3の「No」)、ステップS1に戻る。他方、差分S≧閾値TH3である場合には(ステップS3の「Yes」)、ECU2は、燃料量センサ72で検出した燃料量を取り込み、燃料量に基づいて、燃料タンク11内の空気量(空気層の容量)VA(L)を算出する(ステップS4)。
【0038】
ECU2は、空気量VA(L)≧閾値TH4(第4の閾値)であるか否かを判定する(ステップS5)。例えば、燃料タンク11の容量が60Lの場合に、空気量10L(閾値TH4)以上(燃料の量50L以下)とすることができる。燃料タンク11内の空気量が一定量以上ないと大気による燃料冷却効果が少ないからである。空気量VA(L)≧閾値TH4でない場合には(ステップS5の「No」)、ステップS1に戻る。
【0039】
空気量VA(L)≧閾値TH4である場合には(ステップS5の「Yes」)、ECU2は、IGがOFFされていない場合に(ステップS6の「No」)、大気導入弁63および大気開放弁64を開弁する(ステップS7)。これにより、大気(空気)が外部から大気導入通路P5に導入され、燃料タンク11内を通過して、大気開放通路P6から外部に排出され、燃料タンク11内の燃料が大気により冷却される。
【0040】
ECU2は、大気導入弁63および大気開放弁64を開弁した後、所定時間が経過した場合に(ステップS8)、燃料温度TFの変化ΔT≦閾値TH5であるか否かを判定する(ステップS9)。ステップS8で所定時間をカウントしているのは、大気導入後に、直ちに燃料4の冷却効果がでないので、所定時間経過後に、燃料温度TFの変化ΔTを判定している。
【0041】
燃料温度TFの変化ΔT≦閾値TH5となった場合(ステップS9の「Yes」)、すなわち、燃料4の冷却効果が小さくなった場合には、大気導入弁63および大気開放弁64を閉弁する(ステップS10)。つづいて、ECU2は、IGがOFFされたか否かを判定し(ステップS11)、IGがOFFされた場合には(ステップS11の「Yes」)、当該フローを終了し、IGがOFFされていない場合には(ステップS11の「No」)、ステップS1に戻り、同様の処理を実行する。
【0042】
以上説明したように、実施例1によれば、燃料4を貯留する燃料タンク11と、燃料4中のバイオ燃料濃度Lを検出するバイオ燃料濃度センサ71と、燃料タンク11内の燃料4の温度を検出する燃料温度センサ73と、大気温度を検出する大気温度センサ61とを備え、ECU2は、バイオ燃料濃度Lが閾値TH2(第1の閾値)以上で、かつ、燃料タンク11内の燃料4の温度と大気温度と差分が閾値TH3(第2の閾値)以上である場合に、燃料タンク11内に大気を供給して、燃料4を冷却することとしたので、燃料タンク11内の燃料4を冷却して、バイオ燃料の酸化を防止することが可能となる。
【0043】
また、実施例1によれば、ECU2は、車速が閾値TH1(第3の閾値)以上の場合に、燃料タンク11内に大気を供給して、燃料4を冷却することとしたので、燃料冷却系60において、燃料タンク11内の燃料4を冷却するための好適な空気流を形成することが可能となる。
【0044】
また、実施例1によれば、燃料量センサ72で燃料タンク11内の燃料量を検出し、ECU2は、検出した燃料量に基づいて、燃料タンク11内の空気量を算出し、燃料タンク11内の空気量が閾値TH4(第4の閾値)以上の場合に、燃料タンク11内に大気を供給して、燃料4を冷却することとしたので、効率的に燃料タンク11内の燃料4を冷却することが可能となる。
【0045】
また、実施例1によれば、燃料冷却系60は、燃料タンク11内に空気を導入するための大気導入通路P5(第1の通路)と、当該大気導入通路P5に配置された大気導入弁63と、燃料タンク11内の空気を排出するための大気開放通路P6(第2の通路)と、当該大気開放通路P6に配置された大気開放弁64とを備え、ECU2は、燃料冷却処理では、大気導入弁63と大気開放弁64を開弁して、燃料タンク11内の燃料4を冷却することとしたので、簡単かつ低コストな構成で、燃料タンク11内の燃料4を冷却することが可能となる。
【実施例2】
【0046】
図3を参照して、本発明の実施例2に係る燃料供給制御装置を適用した内燃機関システムの概略構成を示している。図3において、図1と同等機能を有する部位には、同一符号を付して共通する部分の説明は省略する。実施例1では、吸気系30と燃料冷却系60の空気導入口を別々に形成している。これに対して、実施例2では、吸気系30と燃料冷却系60の空気導入口を共通にして、吸気通路P3をインタークーラ33の下流側で分岐させて、大気導入通路P5を形成する。さらに、吸気通路P3の空気導入口に大気温度センサ61を配置する。
【0047】
実施例2によれば、燃料冷却系60を構成する大気導入通路P5を吸気系30の吸気通路P3に接続し、吸気通路P3の吸入空気を、大気導入通路P5を介して、燃料タンク11内に供給することとしたので、大気導入通路P5にエアクリーナーを設ける必要がなくなり、また、燃料冷却系60を簡素な構成とすることが可能となり、より簡単かつ低コストな構成で燃料タンク11内の燃料4を冷却することが可能となる。
【0048】
また、上記実施例1、2では、燃料4としてバイオ燃料混合軽油を使用したが、本発明はこれに限られるものではなく、バイオ燃料単体の場合(バイオ燃料100%、軽油0%)、軽油単体の場合(バイオ燃料0%、軽油100%)、バイオ燃料を含む他の燃料にも適用可能である。
【0049】
また、上記実施例1、2では、燃料4のバイオ燃料濃度を測定する場合に、バイオ燃料濃度センサ71を使用することにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、既存のセンサ(例えば、空燃比センサ53)を使用して、バイオ燃料濃度を検出することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係る燃料供給制御装置および燃料供給制御方法は、燃料タンク内のバイオ燃料の酸化劣化を抑制する場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施例1に係る燃料供給制御装置を適用した内燃機関システムの概略構成を示す図である。
【図2】内燃機関システム1のECU2により実行される燃料冷却処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明の実施例2に係るディーゼル機関の燃料供給制御装置を適用した内燃機関システムの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1 内燃機関システム
2 ECU
4 燃料
5 ターボチャージャ
5a コンプレッサ
5b 排気タービン
10 燃料供給系
11 燃料タンク
12 燃料フィルタ
14 燃料ポンプ
15 コモンレール
16 燃料噴射弁
17 還元剤添加弁
20 燃焼室
30 吸気系
31 エアクリーナー
32 エアーフローセンサ
33 インタークーラ
34 吸気絞り弁
50 排気系
51 NOx触媒コンバータ(NSR)
52 PMフィルタ(DPNF)
53 空燃比センサ
54 酸化触媒コンバータ
56 EGRクーラ
57 EGR弁
60 燃料冷却系
61 大気温度センサ
62 エアクリーナー
63 大気導入弁
64 大気開放弁
65 キャニスタ
71 バイオ燃料濃度センサ
72 燃料量センサ
73 燃料温度センサ
80 車速センサ
P0 メイン燃料通路
P1 機関燃料通路
P2 添加燃料通路
P3 吸気通路
P4 排気通路
P5 大気導入通路(第1の通路)
P6 大気開放通路(第2の通路)
P7 EGR通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオ燃料を含む燃料を使用可能なディーゼル機関の燃料供給制御装置において、
前記燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料中のバイオ燃料濃度を検出するバイオ燃料濃度検出手段と、
前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する燃料温度検出手段と、
大気温度を検出する大気温度検出手段と、
前記バイオ燃料濃度検出手段で検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度検出手段で検出された大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記燃料タンク内に大気を供給して、前記燃料を冷却する燃料冷却手段と、
を備えたことを特徴とする燃料供給制御装置。
【請求項2】
車速を検出する車速検出手段を備え、
前記燃料冷却手段は、前記車速が第3の閾値以上の場合に、前記燃料タンク内に前記大気を供給して、前記燃料を冷却することを特徴とする請求項1に記載の燃料供給制御装置。
【請求項3】
前記燃料タンク内の空気量を検出する空気量検出手段を備え、
前記燃料冷却手段は、前記空気量検出手段で検出された燃料タンク内の空気量が第4の閾値以上の場合に、前記燃料タンク内に前記大気を供給して、前記燃料を冷却することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料供給制御装置。
【請求項4】
前記燃料冷却手段は、前記燃料タンク内に大気を導入するための第1の通路と、前記第1の通路に配置された大気導入弁と、前記燃料タンク内の空気を排出するための第2の通路と、前記第2の通路に配置された大気開放弁と、前記大気導入弁および前記大気開放弁の開閉動作を制御する制御手段とを含み、
前記制御手段は、前記バイオ燃料濃度検出手段で検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料温度検出手段で検出された燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度検出手段で検出された大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記大気導入弁と前記大気開放弁を開弁させて、前記燃料タンク内に大気を供給して前記燃料を冷却することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の燃料供給制御装置。
【請求項5】
前記第1の通路は、前記ディーゼル機関の燃焼室に空気を導入する吸気通路に接続されており、前記吸気通路の吸入空気を、前記第1の通路を介して、前記燃料タンク内に供給することを特徴とする請求項4に記載の燃料供給装置。
【請求項6】
バイオ燃料を含む燃料を使用可能な内燃機関の燃料供給制御方法において、
燃料タンク内の燃料のバイオ燃料濃度を検出するバイオ燃料濃度検出工程と、
前記燃料タンク内の燃料の温度を検出する燃料温度検出工程と、
大気温度を検出する大気温度検出工程と、
前記検出されたバイオ燃料濃度が第1の閾値以上で、かつ、前記燃料タンク内の燃料の温度と前記大気温度の差分が第2の閾値以上である場合に、前記燃料タンク内に前記大気を供給して、前記燃料を冷却する燃料冷却工程と、
を含むことを特徴とする燃料供給制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−133280(P2009−133280A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−311349(P2007−311349)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】