説明

燃料噴射制御補正方法及び燃料噴射制御装置

【課題】ディーゼルエンジンが極低温状態にあっても良好な始動特性を得る。
【解決手段】
電子制御ユニット11により、ディーゼルエンジン1の運転状態に基づいて演算算出された燃料噴射動作の制御に用いられる基本制御量が、補正パラメータにより補正されて、燃料噴射動作が制御されるよう燃料噴射制御装置が構成されており、電子制御ユニット11は、ディーゼルエンジン1の筒内温度予測値を補正パラメータとして用い、その筒内温度予測値は、ディーゼルエンジン1の回転数と合計噴射回数に応じて筒内温度変化量マップ21から求められる筒内温度変化量を、直近に算出された筒内温度予測値に加算することを繰り返して順次更新算出されるよう構成されたものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御における補正方法及びその装置に係り、特に、ディーゼルエンジンの始動特性の改善等を図ったものに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンにおいては、極低温下での始動は、筒内温度が低く、燃料が着火し難いために失火が生じ、クランキング開始からアイドリング回転に至るまでの始動時間が長くなってしまうという問題があることは従来から良く知られているところである。
かかる問題に対する対処策としては、例えば、エンジン冷却水の水温によりエンジンが極低温状態であるか否かを判定し、極低温状態であると判定された場合に、燃料噴射量や噴射タイミング、また、燃料噴射圧力等の燃料噴射制御の補正を行うことで始動時間の適切化を図るのが一般的である。
このようなエンジン冷却水の水温に基づいた噴射制御としては、例えば、特許文献1等に開示されたように、エンジン冷却水の水温を筒内温度として代用し、燃料噴射時期の補正制御を行うようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−294228号公報(第3−5頁、図1−図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジン冷却水の水温は、必ずしも筒内温度を的確に反映したものとは言い難く、そのため、特に、雰囲気温度が低温の場合には、エンジン冷却水の水温と筒内温度の乖離が顕著となるため、上述のような噴射制御における補正が不十分となり、満足した始動特性の確保ができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたもので、ディーゼルエンジンが極低温状態にあっても始動特性を良好に保持できる燃料噴射制御補正方法及び燃料噴射制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る燃料噴射制御補正方法は、
内燃機関の運転状態に応じて前記内燃機関へ対する燃料噴射動作が制御されるよう構成されてなる燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の運転状態に基づいて演算算出された燃料噴射動作の制御に用いられる基本制御量を、補正パラメータにより補正する燃料噴射制御補正方法であって、
前記内燃機関の筒内温度予測値を前記補正パラメータとし、
前記筒内温度予測値は、前記内燃機関の回転数と噴射状態に応じて定められる所定の筒内温度変化量を、直近に算出された筒内温度予測値に加算することを繰り返して順次更新算出されるよう構成されてなるものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る燃料噴射制御装置は、
電子制御ユニットにより、内燃機関の運転状態に基づいて演算算出された燃料噴射動作の制御に用いられる基本制御量が、補正パラメータにより補正されて、前記内燃機関へ対する燃料噴射動作が制御されるよう構成されてなる燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記内燃機関の筒内温度予測値を前記補正パラメータとし、
前記筒内温度予測値は、前記内燃機関の回転数と噴射状態に応じて定められる所定の筒内温度変化量を、直近に算出された筒内温度予測値に加算することを繰り返して順次更新算出されるよう構成されてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、筒内温度の予測値を補正パラメータとして用いるようにしたので、特に、低温時におけるエンジン始動の際の燃料噴射制御に、実際の筒内温度により近似した値を反映でき、そのため、従来と異なり、低温時におけるエンジン始動時のエンジン回転を円滑、かつ、迅速に行うことができ、始動時間の短縮、始動時間のばらつきの軽減が図られるという効果を奏するものである。
さらに、始動時間の短縮、適切化による白煙発生の低減や、エミッション軽減を図ることができるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態における燃料噴射制御装置の構成例を示す構成図である。
【図2】図1に示された燃料噴射制御装置を構成する電子制御ユニットにより実行される本発明の実施の形態における燃料噴射制御補正処理の概略手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図3】図2に示された補正パラメータ演算算出処理の具体的処理手順を示すサブルーチンフローチャートである。
【図4】図3に示された補正パラメータ演算算出処理を実行するために電子制御ユニットに必要とされる機能を機能ブロックを用いて示したブロック図である。
【図5】エンジン始動時におけるエンジン回転数の時間変化、筒内予測温度の時間変化、及び、水温センサの検出温度の時間変化のシュミレーションによる特性例を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1乃至図5を参照しつつ説明する。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における燃料噴射制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における燃料噴射制御装置は、いわゆるコモンレール式燃料噴射制御装置である。
【0010】
このコモンレール式燃料噴射制御装置は、ディーゼルエンジン1の気筒へ燃料を噴射供給する複数の燃料噴射弁2−1〜2−nと、燃料噴射弁2−1〜2−nへ供給する高圧燃料を蓄えるコモンレール3と、コモンレール3へ高圧燃料を圧送する高圧ポンプ4と、燃料タンク6から高圧ポンプ4へ燃料を供給するフィードポンプ5と、後述する噴射制御補正処理などを実行する電子制御ユニット11とに大別されて構成されたものとなっている。かかる構成自体は、従来から良く知られているこの種の燃料噴射制御装置の基本的な構成と同一のものである。
【0011】
かかる構成において、燃料タンク6の燃料は、フィードポンプ5で高圧ポンプ4へ汲み上げられ、汲み上げられた燃料は、高圧ポンプ4によってコモンレール3へ高圧燃料として圧送されるようになっている。なお、図示は省略してあるがコモンレール3の余剰燃料は、燃料タンク6へ戻されるよう配管が設けられている。
燃料噴射弁2−1〜2−nは、ディーゼルエンジン1の気筒毎に設けられており、それぞれコモンレール3から高圧燃料の供給を受け、電子制御ユニット11により実行される燃料噴射制御処理によって、燃料噴射動作が制御されるようになっている。
【0012】
電子制御ユニット11は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の記憶素子(図示せず)を有すると共に、燃料噴射弁2−1〜2−nを駆動するための駆動回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
かかる電子制御ユニット11には、エンジン回転数を検出する回転センサ12、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ13、外気温度を検出する外気温センサ14、ディーゼルエンジン1の冷却水の温度を検出する水温センサ15、燃料噴射弁2−1〜2−nに供給される燃料の温度を検出する燃料温度センサ16などの各種センサの検出信号が、エンジン動作制御や噴射制御に供するために入力されるようになっている。
【0013】
図2には、かかる電子制御ユニット11によって実行される燃料噴射制御補正処理の概略手順がサブルーチンフローチャートに示されており、以下、同図を参照しつつその内容について説明する。
まず、処理が開始されると、補正パラメータの演算算出処理が行われる(図2のSステップ100参照)。補正パラメータは、次述する基本制御量を補正するための補正要素であり、如何なる補正パラメータを用いるか、また、如何なる数の補正パラメータとするかは任意である。
本発明の実施の形態においては、ディーゼルエンジン1の筒内温度予測値を補正パラメータの一つとしている。
【0014】
次いで、基本制御量の演算算出が行われる(図2のステップS200参照)。
基本制御量は、燃料噴射制御のために必要とされる複数の制御因子であり、例えば、燃料噴射量、噴射タイミング、コモンレール圧等である。
これらの基本制御量は、それぞれ従来から用いられている演算式やマップ等を用いて所定の手順によって演算算出されるものである。
【0015】
次いで、先に求められた補正パラメータにより、基本制御量について、必要な補正が行われる(図2のステップS300参照)。
補正パラメータを、いずれの基本制御量の補正に用いるか、また、その補正処理の具体的な手順は、任意に設定されるものである。
本発明の実施の形態においては、先に述べたように、筒内温度予測値が基本制御量の補正に用いられるようになっている。
なお、一連の処理がなされた後は、図示されないメインルーチンへ戻り、他の必要な処理を経た後、再び、上述の一連の処理が繰り返されることとなる。
【0016】
図3には、上述の補正パラメータとしての筒内温度予測値の演算算出の手順を示すサブルーチンフローチャートが、また、図4には、図3に示された筒内温度予測値の演算算出処理を実行するために電子制御ユニット11内に形成されるロジックの構成が模式的に、それぞれ示されており、以下、これらの図を参照しつつ、本発明の実施の形態における筒内温度予測値の演算算出処理の手順について説明する。
【0017】
電子制御ユニット1により処理が開始されると、最初に、燃料噴射制御が始動モードか否かが判定されることとなる(図3のステップS102参照)。
噴射制御自体は、従来から行われているもので、その制御状態は、ディーゼルエンジン1の始動の確実、安定性の確保等を考慮して行われる始動モードと、正常に始動された後の通常制御モードの2つに区分されるようになっており、本発明の実施の形態における筒内温度予測値の演算算出処理は、特に、始動モードで実行されるに適したものであるので、噴射制御が始動モードにあるか否かが判定されることとなる。
【0018】
なお、始動モードは、概ねクランキングが開始されてからディーセルエンジン1のエンジン回転数がアイドル回転数に至るまでの間に行われる噴射制御である。
また、筒内温度予測値は、特に、始動モードにおける燃料噴射制御において、先に述べたように基本制御量の補正に用いることを意図したものであり、そのため、図3に示された処理は、燃料噴射制御が起動モードにある場合に実行されるものとなっている。
【0019】
しかして、ステップS102において、噴射制御は、始動モードであると判定された場合(YESの場合)は、次述するステップS104の処理へ進む一方、始動モードではないと判定された場合(NOの場合)には、一連の処理は実行されることなく、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
【0020】
ステップS104においては、エンジン冷却水の水温の初期値の認識が行われる。すなわち、筒内温度予測値の初期値として、水温センサ15により、この時点で検出されたエンジン冷却水の水温が設定されることとなる。なお、筒内温度予測値の初期値には、エンジン冷却水の水温の他、例えば、エンジン潤滑油の温度が検出可能に構成された車両にあっては、エンジン潤滑油の温度を用いても好適である。
しかる後、クランキングが可能となり、クランキングが開始されることとなる(図3のステップS106参照)。
【0021】
次いで、この時点におけるエンジン回転数及び噴射回数の認識が行われることとなる(図3のステップS108参照)。このエンジン回転数及び噴射回数の認識は、次述するステップS110における筒内温度変化量算出のパラメータとして用いられるものである。
ここで、ステップS108における”噴射回数”は、クランキング開始時からこの時点までの噴射回数の合計数の意味であり、以下、「合計噴射回数」と称することとする。かかる合計噴射回数は、エンジン回転数とクランキング開始時からの経過時間の積として求められる。なお、合計噴射回数は、カムセンサ(図示せず)の検出信号を、クランキング開始時から計数することによっても算出可能であり、そのようにして求めても良い。
上述のようにして得られたこの時点のエンジン回転数、及び、合計噴射回数は、電子制御ユニット11の適宜な記憶領域(図示せず)に、一時的に読み込み、記憶される。
なお、エンジン回転数は、回転センサ12の検出信号に基づいて得られるものである。
【0022】
次に、予め設定された筒内温度変化量マップを用いて、上述のステップS108で得られた合計噴射回数とエンジン回転数に対する筒内温度変化量が求められる(図3のステップS110参照)。
本発明の実施の形態における筒内温度変化量マップは、エンジン回転数と合計噴射回数の種々の組合せに対して生じ得るディーゼルエンジン1の筒内温度の変化量のクランキング開始時からの変化特性を、シミュレーションや試験等から得て、その変化特性のデータをマップ化したものである。
なお、簡易的に、合計噴射回数に代えて、クランキング開始時からの経過時間を用いるようにしても良い。
【0023】
図4には、電子制御ユニット11により本発明の実施の形態における筒内温度予測値の演算算出処理が実行されるために電子制御ユニット11に必要とされる機能、特に、上述のステップS110の処理以降を実行するに必要とされる機能を機能ブロックで示したブロック図が示されており、上述の筒内温度変化量の算出のため、電子制御ユニット11が有する機能について説明する。
図4に示されたように電子制御ユニット11の適宜な記憶領域には、上述したような筒内温度変化量マップ21が記憶されており、上述のようにしてエンジン回転数と合計噴射回数が取得されると、そのエンジン回転数と合計噴射回数に対する筒内温度変化量が、筒内温度変化量マップ21から読み出されるようになっている。
なお、合計噴射回数に代えて、クランキング開始からの経過時間を用いるようにし、筒内温度変化量マップ21を、エンジン回転数とクランキング開始からの経過時間の種々の組合せに対して、ディーゼルエンジン1の筒内温度の変化量が求められるものとしても好適である。
【0024】
再び、図3のサブルーチンフローチャートの説明に戻れば、上述のように筒内温度変化量が求められた後は、筒内温度予測値の演算算出が行われる(図3のステップS112参照)。
すなわち、筒内温度予測値は、直近の筒内温度予測値に、新たな筒内温度予測値の算出時点における筒内温度変化量を加算して求められるものとなっており、順次、この演算を繰り返すことで、繰り返し周期毎に新たな筒内温度予測値が順次更新算出されるものとなっている。
【0025】
図4においては、この筒内温度予測値の演算ロジックは、次述するように表されている。
すなわち、筒内温度変化量マップ21から得られた筒内温度変化量と、直近の筒内温度予測値との加算を行う加算素子22が設けられ、加算素子22の加算結果は、ロジックスイッチ23の一方の入力側に印加されるものとなっている。
ロジックスイッチ23は、2つの入力のいずれか一方を出力するようになっているもので、本発明の実施の形態においては、上述した加算素子22の加算結果と、筒内温度初期値(図3のステップS104参照)が、入力されるようになっている。そして、イグニッション(図示せず)がオンとされた際(図4においては「IG−ON」と表記)に、筒内温度初期値が選択されて出力される一方、それ以外の状態にあっては、加算素子22の加算結果が選択されて出力されるものとなっている。
【0026】
さらに、ロジックスイッチ23の出力側と加算素子22の間には、遅延素子24が設けられ、ロジックスイッチ23の出力、すなわち、筒内温度予測値が次の新たな筒内温度予測値の算出のために、前回の(直近の)筒内予測値として、筒内温度変化量マップ21により得られた筒内温度変化量に加算されるようになっている(図4参照)。
【0027】
再び、図3の説明に戻れば、上述のように筒内温度予測値が算出(図3のステップS112参照)された後は、エンジン回転数Neが、燃料噴射制御における始動モードを終了すべき所定のエンジン回転数、すなわち、始動カット回転数を超えたか否かが判定される(図3のステップS114参照)。
そして、ステップS114において、エンジン回転数Neが始動カット回転数を超えたと判定された場合(YESの場合)には、一連の処理を継続するに適した状態ではないとして処理は終了され、メインルーチン、すなわち、本発明の実施の形態においては、先に図2に示されたルーチンへ戻ることとなる。
一方、ステップへS114において、エンジン回転数Neが始動カット回転数を未だ超えていないと判定された場合(NOの場合)には、先のステップS108の処理へ戻り、それ以降の処理が繰り返されることとなる。
【0028】
次に、上述のように求められた筒内温度予測値を燃料噴射制御における補正パラメータとして用いた場合のクランキング開始時におけるエンジン回転数の変化等について、図5に示されたシュミレーションによる特性例を参照しつつ説明する。なお、図5において、横軸は、クランキング開始時からの経過時間を、右側の縦軸は、筒内温度予測値及びエンジン冷却水の水温を、左側縦軸は、エンジン回転数を、それぞれ示すものとなっている。
まず、図5において、シュミレーションにより求められた従来装置におけるクランキング開始時のエンジン回転数の変化特性例が、点線の特性線により示されている。
【0029】
従来装置にあっては、エンジン冷却水の水温が燃料噴射制御の補正処理に用いられており、必ずしも筒内温度が補正処理に適切に反映されたものとはなっていない。そのため、図5に示された点線の特性線では、始動から6秒後の初爆後、実際の筒内温度が上昇しているはずであるにもかかわらず、エンジン冷却水の水温の変化は微小であるため(図5の一点鎖線の特性線参照)、始動から約8乃至11秒後の間、エンジン回転数がアイドル回転数以下で停滞してしまい、エンジン回転数の円滑な上昇が得られないものとなっている。
【0030】
これに対して、エンジン冷却水の水温に代えて、本発明の実施の形態における筒内温度予測値を燃料噴射制御の補正処理に用いることにより、図5において、実線で示された特性線の如く、従来(点線の特性線参照)と異なり、始動から約8乃至11秒後の間のエンジン回転数の停滞がなく、エンジン回転数の素早い上昇が得られるものとなっている。これは、筒内温度予測値が図5において二点鎖線の特性線で示された如く、従来のエンジン冷却水の水温の場合と異なり、エンジン始動後から適切な上昇特性が得られているためと考えられる。
【0031】
なお、上述した本発明の実施の形態においては、特に、始動の際の燃料噴射制御において、基本制御量の補正の際に用いられているエンジン冷却水の水温に代えて筒内温度予測値を用いるようにしたものであるが、基本制御量として具体的な対象としては、例えば、燃料噴射量や噴射タイミング等が考えられるが、始動時におけるエンジンの回転特性が先に説明したように改善できれば良く、特定の基本制御量に限定される必要はないもので、いずれの基本制御量の補正に用いるかは任意である。また、この場合、一つの基本制御量に用いる場合に限定される必要はなく、複数の基本制御量の補正において、エンジン冷却水の水温に代えて、又は、他の補正パラメータに代えて、筒内温度予測値を用いるようにしても勿論良いものである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
極低温時におけるディーゼルエンジンの始動特性の改善が図られるようにしたので、特に、コモンレール式燃料噴射制御装置に適する。
【符号の説明】
【0033】
1…ディーゼルエンジン
2−1〜2−n…燃料噴射弁
3…コモンレール
11…電子制御ユニット
12…回転センサ
13…アクセル開度センサ
14…外気温センサ
15…水温センサ
16…燃料温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の運転状態に応じて前記内燃機関へ対する燃料噴射動作が制御されるよう構成されてなる燃料噴射制御装置において、前記内燃機関の運転状態に基づいて演算算出された燃料噴射動作の制御に用いられる基本制御量を、補正パラメータにより補正する燃料噴射制御補正方法であって、
前記内燃機関の筒内温度予測値を前記補正パラメータとし、
前記筒内温度予測値は、前記内燃機関の回転数と噴射状態に応じて定められる所定の筒内温度変化量を、直近に算出された筒内温度予測値に加算することを繰り返して順次更新算出されてなるものであることを特徴とする燃料噴射制御補正方法。
【請求項2】
最初の筒内温度予測値は、所定の初期値に、所定の筒内温度変化量を加算して求められ、前記所定の初期値は、エンジン冷却水の水温であることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射制御補正方法。
【請求項3】
所定の筒内温度変化量は、予め設定された、内燃機関の回転数と噴射状態の種々の組合せに対する筒内温度変化量のマップにより、算出時の内燃機関の回転数と噴射状態を基に求められるものであることを特徴とする請求項2記載の燃料噴射制御補正方法。
【請求項4】
噴射状態は、クランキング開始時からの合計噴射回数、又は、経過時間であることを特徴とする請求項3記載の燃料噴射制御補正方法。
【請求項5】
電子制御ユニットにより、内燃機関の運転状態に基づいて演算算出された燃料噴射動作の制御に用いられる基本制御量が、補正パラメータにより補正されて、前記内燃機関へ対する燃料噴射動作が制御されるよう構成されてなる燃料噴射制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
前記内燃機関の筒内温度予測値を前記補正パラメータとし、
前記筒内温度予測値は、前記内燃機関の回転数と噴射状態に応じて定められる所定の筒内温度変化量を、直近に算出された筒内温度予測値に加算することを繰り返して順次更新算出されるよう構成されてなることを特徴とする燃料噴射制御装置。
【請求項6】
電子制御ユニットは、最初の筒内温度予測値を、所定の初期値に、所定の筒内温度変化量を加算して算出する一方、前記所定の初期値として、エンジン冷却水の水温を用いるよう構成されてなることを特徴とする請求項5記載の燃料噴射制御装置。
【請求項7】
電子制御ユニットは、所定の筒内温度変化量を、予め設定された、内燃機関の回転数と噴射状態の種々の組合せに対する筒内温度変化量のマップにより、算出時の内燃機関の回転数と噴射状態を基に算出するよう構成されてなることを特徴とする請求項6記載の燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231716(P2011−231716A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103850(P2010−103850)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】