説明

特異的NAD(P)Hオキシダーゼ抑制剤

白血球のNADPHオキシダーゼ作用を実質的に抑制せず、かつ白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼ作用を阻害する化合物を含有するNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用の抑制剤及びそれを含む医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、NAD(P)Hオキシダーゼ(Nicotinamide adenine dinucleotide(phosphate)oxidase)の過剰発現又は活性化の抑制剤に関するものである。より詳細には、白血球のNADPHオキシダーゼには作用せず、かつ白血球以外の組織において過剰発現又は活性化したNAD(P)Hオキシダーゼに対する抑制作用を示す化合物を有効成分とするNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用の抑制剤に関するものである。
【背景技術】
高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満、加齢、喫煙等のリスクファクターにより、虚血性心疾患(心筋梗塞又は狭心症等)、脳卒中(脳梗塞、脳出血又はくも膜下出血等)、動脈硬化や末梢循環障害(末梢動脈閉塞症等)等が発症したり、症状が増悪したりすることが知られており、これらの発症や症状増悪に関して、近年、スーパーオキシドアニオン(・O)等の活性酸素により生ずる酸化ストレスの重要性がクローズアップされている。また、酸化ストレスが、ガン増殖(Gene.2001,269(1−2),131)、アルツハイマー病の増悪(Biochem.Biophys.Res.Commun.2000,273(1),5)、抗ガン剤による副作用(Toxicology.1999 May 3;134(1):51−62)、さらに狭心症患者の硝酸製剤治療による薬剤耐性(J.Clinical Investigation,1994,187−194)に関与することも報告されている。
従来、スーパーオキシドアニオン等の活性酸素の産生源は、白血球が主体であると考えられてきた。しかし、近年、血管細胞系や心筋細胞等の様々な細胞種においてもスーパーオキシドアニオンの産生が確認され、これらのスーパーオキシドアニオン産生酵素であるNAD(P)Hオキシダーゼが注目されている(Circ−Res.2000.86,494−501)。ところで、白血球に存在するNADPHオキシダーゼと血管細胞系や心筋細胞等の組織に存在するNAD(P)Hオキシダーゼとは、酵素活性や活性調節機構に差異があるため、それぞれのNAD(P)Hオキシダーゼは同一ではないと考えられている(Cardiovascular Research,1998,38,256−262)。
NAD(P)Hオキシダーゼ活性を阻害する化合物として、これまでにDiphenyleneiodonium(以下「DPI」と記す。Biochem.Biophys.Res.Commun.1998,253,295参照)、apocynin(国際公開第01/89517号パンフレット)、及びS17834(Arterioscler−Thromb−Vasc−Biol.,2001,21:1577)等が報告されている。しかしながら、これらの化合物は白血球に存在するNADPHオキシダーゼのみならず、白血球以外の組織に存在するNAD(P)Hオキシダーゼにも作用するものであり、組織特異性を示さない。
白血球のNADPHオキシダーゼの遺伝的欠損症である慢性肉芽種症(Chronic granulmatous disease)の患者では、白血球のスーパーオキシドアニオン産生能が低下しており、免疫力の低下を起こすことが知られている(J.Leukoc.Biol.2001,69,191)。したがって、上述した非特異的NAD(P)Hオキシダーゼの阻害剤を医薬として用いる際には、免疫機能の低下等に基づく副作用が生じることがある。
【発明の開示】
本発明は、NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用がリスクファクターである疾患を予防し、又は症状を軽減する医薬を提供することを課題とする。
本発明者らは鋭意研究した結果、白血球のNADPHオキシダーゼには抑制作用を示さず、白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼに特異的に作用するNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用の抑制剤により、上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、白血球のNADPHオキシダーゼ作用を実質的に抑制せず、かつ白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼ作用を抑制する化合物を含有するNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用の抑制剤、及びそれを有効成分とするNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用に起因する疾病用の医薬組成物に存する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、Achによる内皮依存性弛緩反応に対する化合物の効果を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書において、白血球以外の組織としては、例えば、血管細胞系、心臓、腎臓、網膜及びミクログリア等、並びに腫瘍細胞などが挙げられる。
血管細胞系としては、例えば、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞及び泡沫化マクロファージ等が挙げられる。
NAD(P)Hオキシダーゼは、NADH(Nicotinamide adenine dinucleotide)やNADPH(Nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)を基質としてスーパーオキシドアニオンを産生する全ての酵素を意味する。
NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用とは、NAD(P)Hオキシダーゼの過剰発現又は活性化に基づく作用を意味し、例えば、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、喫煙、心不全、心肥大、虚血性心疾患、血管再開通療法、臓器移植術の虚血再灌流、ガン、痴呆症、又は化学物質(例えば、抗ガン剤、硝酸製剤等)の摂取などのリスクファクターにより惹起される作用が挙げられる。
ここで、NAD(P)Hオキシダーゼの過剰発現とは、生体の恒常性(ホメオスタシス)にとって必要な量を超えた発現であり、同一起源の正常組織にとって必要な量を超えた発現を意味する。NAD(P)Hオキシダーゼの発現部位としては、例えば、血管細胞系、心臓、腎臓、網膜、ミクログリア及び腫瘍細胞等の組織が挙げられるが、これらに限定されるものではない。すなわち、過剰発現したNAD(P)Hオキシダーゼの阻害作用とは、過剰発現しているNAD(P)Hオキシダーゼに対し、その酵素機能を発揮することができないようにする作用をいう。
また、NAD(P)Hオキシダーゼの活性化とは、NAD(P)Hオキシダーゼを構成する各サブユニットのうち、p47hox、p40phox又はp67phox等が細胞膜上にトランスロケーションされ、スーパーオキシドアニオン産生機能を発揮しうる状態にあるNAD(P)Hオキシダーゼを意味する。すなわち、活性化したNAD(P)Hオキシダーゼの抑制作用とは、酵素機能を発生し得る状態のNAD(P)Hオキシダーゼに対し、その酵素機能を抑制する作用を意味し、NAD(P)Hオキシダーゼを構成する各サブユニットのトランスロケーション又は/及び各構成サブユニット間の相互作用を抑制することをいう。
NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用に起因する疾病としては、例えば、虚血性心疾患、心不全、糖尿病性合併症、動脈硬化症、血管再開通療法後の再狭窄若しくは再閉塞、臓器移植後の障害、脳卒中、硝酸製剤耐性、抗ガン剤の副作用、痴呆症、又はガンの進展等が挙げられる。
白血球のNADPHオキシダーゼ作用を実質的に抑制せず、かつ白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼ作用を阻害する化合物としては、例えば、下記一般式(I)〜(VIII)で表される二環式ピリダジン化合物が挙げられる。
一般式(I)

{式中、AはC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル又はそれぞれがC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ若しくはハロゲンから選ばれる1以上の置換基を有していてもよいフェニル、チエニル、フリル、チアゾリル、フェノキシ、C〜Cフェニルアルキル、フェニルチオ、含窒素飽和環基、ピリジル若しくはイミダゾリルを表す。
Bは、−NH−D
〔Dは

(式中、Rは水素又はC〜Cアルキルを表す。Xはハロゲン、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシを表す。kは0〜3の整数を表し、kが2以上の整数のとき、複数のXはそれぞれ異なっていてもよい。)

(式中、Rは水素又はC〜Cアルキルを表す。YはC〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシを表す。mは0〜6の整数を表す。mが2以上のとき、複数のYはそれぞれ異なっていてもよく、任意の2つのYが連結して分岐していてもよいC〜Cアルキレンを形成してもよい。)

(式中、環HはC〜Cシクロアルキルを表す。Y及びmは前記と同義である。)
−CHR
(式中、RはC〜Cアルキルを表す。RはC〜Cシクロアルキル又はチエニルを表す。)
又はC〜Cアルキルを表す。〕
又は

(式中、ZはC〜Cアルキル又はフェニルを表す。nは0〜2の整数を表し、nが2のときこれらのZは異なっていてもよい。)
を表し、
Qはベンゼン環、フラン環又はC〜Cアルキルで置換されていてもよいチオフェン環を表す。}
一般式(I)で表される化合物は、例えば、特許第2730421号明細書に記載された方法に準じて製造することができる。
一般式(II)

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。X’は−COOR(Rは水素又は置換されていてもよいC〜Cアルキルを表す。)、−CONH、−CN、−COR(Rは置換されていてもよいC〜Cアルキル又は置換されていてもよいアリールを表す。)、−NH、−NO又は−OR(Rは前記と同義である。)を表す。]
一般式(II)で表される化合物は、例えば、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1974,752;Synthesis 1983,52;欧州特許公開第197226号明細書;米国特許第4729782号明細書;国際公開第93/09098号パンフレット等に記載された方法に準じて製造することができる。
一般式(III)

(式中、R、R10はそれぞれ独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。)、
一般式(III)で表される化合物は、例えば、Tetrahedron Lett.,37,1996,24,4145等に記載された方法に準じて製造することができる。
一般式(IV)及び(V)

[式中、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。X’’は−OR13(R13は水素、C〜Cアルキル又はアリールを表す。)又は−NR1415(R14及びR15は、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル又はアリールを表す。)]
一般式(IV)で表される化合物は、例えば、Heterocycles(1981),16(1),25−30等に記載された方法に準じて製造することができる。
一般式(V)で表される化合物は、Shenyang Yaoke Daxue Xuebao(2001),18(2),106−109;Chem.Pharm.Bull.(1980),28(9),2763−9;Heterocycles(1981),16(1),25−30等の文献に記載された方法に準じて合成することができる。
一般式(VI),(VII),(VIII)

(式中、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。R及びR19は、それぞれ独立して、水素又はC〜Cアルキルを表す。Y’は酸素又は硫黄を表す。)
一般式(VI)で表される化合物は、例えば、特開2001−335476号公報等に記載された方法に準じて製造することができる。
一般式(VII)で表される化合物は、例えば、Tetrahedron Lett.(1986),27(7),869−872等に記された方法に準じて製造することができる。
一般式(VIII)で表される化合物は、例えば、Pharmazie,46,2,1991,105−8等に記載された方法に準じて製造することができる。
これらのうち、一般式(I)、(II)又は(VIII)で表される二環式ピリダジン化合物、特にペリ位に置換基を有していてもよいフェニル基が結合し、かつそのp位に窒素原子又は酸素原子が結合した二環式ピリダジン化合物が好ましい。
一般式(I)〜(VIII)で表される化合物の薬理学上許容される塩としては、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸等の鉱酸塩;メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸等のスルホン酸塩;酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸塩等のカルボン酸塩などの酸付加塩:ナトリウム、カリウム、マグネシウム等の金属塩;アンモニウム塩;エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の有機アミン塩などの塩基付加塩を用いることができる。
本発明に係るNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用の抑制剤(以下「NAD(P)Hオキシダーゼ抑制剤」と記すことがある。)は、白血球のNADPHオキシダーゼ及び白血球以外の正常な状態のNAD(P)Hオキシダーゼには作用しないので、NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用に起因する疾患、例えば、虚血性心疾患、動脈硬化性疾患、脳卒中、糖尿病性合併症等の又は症状の軽減、特に免疫機能が低下している前記疾患の予防又は症状の軽減に極めて有効である。
本発明に係るNAD(P)Hオキシダーゼ抑制剤を含む医薬組成物は、白血球のNADPHオキシダーゼ作用を実質的に抑制せず、かつ白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼ作用を抑制する化合物と慣用の製剤担体とを、適当な比率で混合した後、常法により処理することにより調製することができる。また、剤形は、投与方法に応じて、適宜、選択すればよく、例えば、経口投与用製剤としては、錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤及びエリキシル剤等が挙げられ、非経口用製剤としては、注射剤、貼付剤及び坐剤等が挙げられる。
また、本発明に係る医薬組成物は、種々のリスクファクターにより惹起される疾患を予防し、又は症状を軽減するので、脂質低下剤、降圧剤、血糖低下剤、血管拡張剤、抗血小板剤、抗凝固剤、脳保護薬、抗ガン剤、利尿剤、強心薬、鎮痛薬、抗浮腫薬、血栓溶解剤、免疫抑制剤、ステロイド、ビタミン剤又は抗酸化剤と、同時に若しくは別々に、又は逐次的に投与する形態で用いることができる。
本発明に係る医薬組成物中に含まれるNAD(P)Hオキシダーゼ抑制剤は、患者の年齢や状態などの条件に応じて、適宜、定めればよい。一般的には、成人に対して0.001〜100mg/kg程度を非経口的に投与するか、0.001〜100mg/kg程度を経口的に投与する量を含むのが好ましい。
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
以下の各試験に使用した化合物の構造式を以下に示す。なお、化合物A及び化合物Bは一般式(I)で表される化合物又はその塩、化合物C〜化合物Gは一般式(II)で表される化合物、化合物Hは一般式(VIII)で表される化合物である。

試験例1 NAD(P)Hオキシダーゼ抑制作用
(方法)
ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells:Bio Whittaker社。以下「HUVEC」と記す。)に44mMグルコースを添加し、8日間培養した。次いで、界面活性剤Triton−X Nonidet P−40を含むLysis bufferを添加し、NAD(P)Hオキシダーゼにより産生したcell lysate中のインターロイキン−8(以下「IL−8」と記す。)を固相酵素免疫検定法(enzyme−linked immuno solvent assay)で測定した。被験化合物はグルコース添加の1日前に添加した。
被験化合物を添加し44mMグルコース存在下で培養した細胞のIL−8産生をA、被験化合物を添加せず44mMグルコース存在下で培養した細胞のIL−8産生をB、被験化合物及び44mMグルコースをともに添加せずに培養した細胞のIL−8産生をCとし、以下の式により抑制率を算出した。
抑制率(%)=100−〔(A−C)/(B−C)〕×100
IC50値は、得られた抑制率をもとに最小二乗法により求めた用量作用直線から算出した。結果を表1に示す。

試験例2 NAD(P)Hオキシダーゼ抑制作用
Wistar系雄性ラット(日本SLC)の尾静脈から0.05Mクエン酸バッファー(pH4.5)に溶解したストレプトゾトシン40mg/kgを投与し、糖尿病ラットを作製した。ストレプトゾトシン静注1週間〜8週間後に、ヘパリン処理したキャピラリーを用いて尾静脈から採血し、直ちに氷冷後、3000rpm,15分,4℃で遠心分離して血清を得た。グルコース測定用キット“GLUネオ シノテスト”(シノテスト社)により、マイクロプレートリーダー(SPECTRAMAX250,Molecular Devices社)を用いて酵素法で血糖値を測定した。
糖尿病ラットに3日間被験化合物(10mg/kg)を1日1回経口投薬した。試験開始4日目に、大動脈のスーパーオキシドアニオン産生を指標とし、David.G.Harrisonらの方法(J.Clin.Invest.91,2546−2551,1993)を改良した以下の方法により、NAD(P)Hオキシダーゼ活性を測定した。
すなわち、上記処置を施していない正常ラット又は糖尿病ラットを腹部大動脈から放血させた後、胸部大動脈を摘出した。摘出した胸部大動脈をKrebs−Hepes buffer中に浸し、周辺組織を除き、約5mmのリング標本を作製した。このリング標本をKrebs−Hepes buffer中、37℃で10分間プレインキュベートした後、0.25mM lucigenin(SIGMA社)を含むKrebs−Hepes buffer中に移した。500μMのNADHを添加し、ルミノメーター(MULTI−BIOLUMAT LB9505C,ワラック・ベルトールド社)を用い、37℃で10分間化学発光数(chemiluminescence:単位 RLU:relative light units)を測定した。測定時間(横軸)に対し化学発光数(縦軸)をプロットした曲線の曲線下面積(以下「AUC」という。)により、総化学発光数を算出した。測定した総化学発光数を、血管リング標本の湿重量で割付け、大動脈単位重量当たりのスーパーオキシドアニオン産生量に標準化した。
被験化合物を投与した糖尿病ラットの標準化した化学発光数をA、被験化合物を投与していない糖尿病ラットの標準化した化学発光数をB、被験化合物を投与していない正常ラットの標準化した化学発光数をCとし、下記式により抑制率(%)を算出した。
抑制率(%)=100−〔(A−C)/(B−C)〕×100
結果を表2及び表3に示す。


表1〜3に示したとおり、44mMグルコース存在下で培養した内皮細胞及び糖尿病ラット大動脈のNAD(P)Hオキシダーゼ活性は正常よりも高く、化合物A〜HはいずれもNAD(P)Hオキシダーゼ阻害作用を示した。
試験例3 正常ラットNAD(P)Hオキシダーゼへの作用
正常Wistar系雄性ラット(日本SLC)に3日間被験化合物(10mg/kg)を投与し、試験例2と同様の方法で、大動脈のスーパーオキシドアニオン産生量を測定した。
被験化合物を投与したラットの標準化した化学発光数をA、被験化合物を投与していないラット(対照群)の標準化した化学発光数をBとし、下式により抑制率(%)を算出した。
抑制率(%)=100−(A/B)×100
結果を表4に示す。

化合物A及びBは、いずれも正常ラットのスーパーオキシドアニオン産生に影響を与えなかった。
試験例4 大動脈NAD(P)Hオキシダーゼ阻害作用
試験例2と同様の方法で摘出した腹部大動脈をKrebs−Hepes buffer中に浸し、周辺組織を除き、約5mmのリング標本を作成した。このリング標本を、被験化合物(化合物A、化合物B又はDPI(SIGMA社))を添加したKrebs−Hepes buffer中、37℃、10分間プレインキュベートした後、リング標本を0.25mM lucigeninを含むKrebs−Hepes buffer中に移した。500μMのNADHと被験化合物を添加し、化学発光数を37℃で10分間測定した。
測定時間(横軸)に対し、化学発光数(縦軸)をプロットした曲線のAUCにより、総化学発光数を算出した。得られた化学発光数値を、血管リング標本の湿重量で割付け、大動脈単位重量当たりのスーパーオキシドアニオン産生量に標準化した。
被験化合物を添加したリング標本の標準化した化学発光数をA、被験化合物を添加しなかったリング標本(対照)の標準化した化学発光数をBとし、下式により阻害率(%)を算出した。
阻害率(%)=100−(A/B)×100
結果を表5に記す。

化合物AはNAD(P)Hオキシダーゼ阻害作用を示さなかったが、非特異的inhibitorであるDPIはNAD(P)Hオキシダーゼ阻害作用を示した。
試験例5 白血球NADPHオキシダーゼに対する作用
正常Wister雄性ラット(日本SLC)の腹部大動脈から採血し、直ちに血液3mLに対し42mLの氷冷Lysis bufferと混和した。5分後、4℃、1100rpmで5分間遠心分離した。沈渣を氷冷Lysis bufferに懸濁し、再び4℃、1100rpmで5分間遠心分離した。この操作を3回繰り返すことにより、白血球を得た。得られた白血球をKrebs−Hepes bufferで懸濁して細胞数を1×10個/mlに調整した。0.25mM lucigenin及び被験薬を添加し、さらにPhorbol 12−myristate 13−acetate(以下「PMA」と記す。SIGMA社。)を添加した後、化学発光数を37℃で10分間測定した。
被験化合物を添加した白血球懸濁液の総化学発光数をA、被験化合物を添加しなかった白血球懸濁液(対照)の総化学発光数をBとしPMAで刺激しなかった白血球懸濁液の総化学発光数をCとし、下式により抑制率(%)を算出した。
抑制率(%)=100−〔(A−C)/(B−C)〕×100
結果を下記表6に示した。

化合物A、Bは、白血球のNADPHオキシダーゼに対する抑制作用を示さなかったが、非特異的inhibitorであるDPIは白血球のNADPHオキシダーゼに対する抑制作用を示した。
試験例1〜5の結果から、一般式(I)〜(VIII)で表される二環式ピリダジン化合物は、白血球のNADPHオキシダーゼには抑制作用を示さず、白血球以外の組織におけるNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用に対する抑制作用を有することが明らかとなった。
試験例6 酸化低密度リポタンパク質(low−density lipoprotein、以下「LDL」と記す。)によるNAD(P)Hオキシダーゼ発現抑制に対する作用
HUVECを24穴コラーゲンコートプレートに播種した。化合物Aを添加し、24時間後に健常人ボランティア血液より調製した酸化LDLを100μg/mL添加した。
酸化LDL添加24時間後に、MgExtractor(TOYOBO)を用いてtotalRNAを抽出し、DNaseI処理(日本gene)を行った。
この一部を分取し、吸光度(OD260)を測定することにより、totalRNAの濃度を算出した。
得られたtotalRNA100ngを用いてRT(reverse transcription)反応(ABI社)を行い、cDNAを合成した。
合成したcDNA10μLを用いてPCR(polymerase chain reaction)を行い(ABI社)、NAD(P)Hオキシダーゼ主要構成成分であるp22phox、内在コントロールとしてβ−actinの発現量を測定した。
p22phoxの発現量をβ−actinの発現量で標準化し、正常の(p22phox)/(β−actin)の発現量を100%として表した。

酸化LDL添加によりHUVECのp22phox発現が、約1.6倍上昇した。一方、化合物A添加群のp22phox発現は、正常群の1.2倍にすぎず、化合物Aが酸化LDL添加によるp22phox発現上昇を抑制したことがわかる。
試験例7 動脈硬化阻害作用
雄性NZWウサギ(日本SLC)に、12週間0.67%コレステロール含有飼料を40g/kg/day及び化合物Aを与えた。耳介静脈からヘパリン処理したキャピラリーを用いて採血し、3000rpmで10分間遠心して得られた血漿中のトータルコレステロール(以下「TC」と記す。)値を、測定キットを用い酵素法で測定した。
結果を表9に示す。
12週間後、ペントバルビタール麻酔下で頸動脈を剥離・摘出した後、脱血し、大動脈を摘出した。得られた頸動脈を、直ちにKrebs緩衝液に浸し、慎重に周囲の組織を除去し、内皮細胞に損傷を与えないようにして、リング標本を作成した。次いで、リング標本を95%O−5%CO混合ガスの通気下で、37℃のKrebs緩衝液を満たしたマグヌス槽中に懸垂し、2gの張力負荷により定常状態となった後、実験を行った。
弛緩反応を測定する際には、ノルエピネフリンであらかじめ標本を収縮させておき、収縮が一定になった時点でアセチルコリンを累積的に添加した。10μMのノルエピネフリンにより引き起こされた収縮を100%として血管の弛緩率を求めた。
トランスジューサー(日本光電)を用いて、等尺性に張力を測定した。対照群に対する二元配置分散分析(Dunnett法)により有意差検定を行った。
摘出した大動脈を弓部・胸部・腹部大動脈に分割し、10%ホルマリン緩衝液で固定後、写真撮影を行い、大動脈に沈着した脂質面積を測定し、大動脈面積に対する脂質沈着部の面積の割合を求めた。
結果を表8に示す。


0.67%コレステロール含有飼料投与で対照群の血漿中のTC値は約2000mg/dLに上昇した。血漿中のTC値は対照群と比較して有意な低下作用を示さなかった。
頸動脈の内皮依存性血管弛緩反応について、アセチルコリン(以下「Ach」と記す。)10−8〜10−5Mの濃度反応曲線を図1に示した。
対照群のAchによる弛緩反応は、正常食群に対して有意に減弱した。一方、化合物A投与群のAchによる弛緩反応は、対象群と比較して、有意に改善された。
化合物Aは動脈硬化のリスクファクターである高脂血症の改善作用なしに、胸部、腹部大動脈への脂質沈着を有意に阻害した。この結果は、血漿中に高濃度の脂質が存在している状態においても、化合物Aが組織への脂質沈着を阻害し、血管内皮依存性弛緩反応を改善することを示している。
試験例8 ラット左冠動脈結紮心筋梗塞モデルに対する作用
SD系雄性ラット(日本SLC)をエーテル麻酔下で背位固定し、Selye H.らの方法(Angiology,1960,11,398)に従い、胸骨左線に沿って縦切開を加え開胸し、心臓を露出させた。左冠動脈を起始部から1−2mmの部位を4号シルク糸により結紮し、心臓を元に戻し、すばやく脱気した後、閉胸した。心電計(日本光電)により心筋梗塞の状態であることを確認した。結紮24時間後に腹部大動脈から放血致死させ心臓を取り出し、中央部の横断輪状切片を、0.1Mリン酸緩衝液に溶解した1%塩化2,3,5−トリフェニルテトラゾリウム(以下「TTC」と記す。)溶液中、遮光下で20分インキュベートした。その後、切片をホルマリン緩衝液で固定し、切片をトレースし、梗塞部(TTC非染色部)面積、左心室面積を算出した。冠動脈結紮直後、化合物Aを1%CMC溶液に懸濁し、経口投与した。
抑制率は次式で算出した。

また、化合物A(1mg/kg)を結紮15分、1時間、3時間後に経口投与し、梗塞抑制作用を検討した。結果を下表に示す。


化合物非投与群において、左心室に対する梗塞率は約40%であったのに対し、化合物A投与群は、0.3mg/kg、1mg/kg投与群で有意な梗塞率の抑制作用があった。
試験例9 ウサギ虚血再灌流心筋梗塞モデルに対する作用
雄性NZWウサギ(日本SLC)を背位固定後、ペントバルビタール麻酔し開胸した後、左冠動脈基始部に4号シルク糸をかけ、さらに長さ1cmのポリエチレンチューブをあてて糸で左冠動脈を結紮した。結紮2時間後にポリエチレンチューブ上の糸を切断し、血流を再開させた。再灌流4時間後に、4号シルク糸で冠動脈基始部を結紮し、3%エバンスブルー液を1mL/kg静脈内投与した。5分後に過剰量のペントバルビタールを投与し心臓及び大動脈を摘出した。心臓を幅3mmの輪状に切断し、左心室面積、虚血領域(エバンスブルー非染色部)をトレースした。
さらに1%TTC溶液中で30分インキュベートした後、梗塞巣(TTC非染色部)をトレースした。化合物A(1mg/kg)は結紮1時間前に投与した。
左心室面積に対する虚血域、梗塞巣の割合を算出した。
心臓の一部を液体窒素で凍結し、クラッシャーにより粉砕、リン酸緩衝液でホモジネートした。この懸濁液を3000rpmで10分、さらに上清8mLを15000rpmで15分遠心分離し、得られた上清をo−dianisidine dihydrochlorideを含むリン酸緩衝液と混合し、25℃、30分静置した後、吸光度(OD460)を測定し、ミエロパーオキシダーゼ(MPO)活性を求めた。MPO活性は正常群の値を100%として表した。結果を表12に示す。

対照群では、虚血域に対する梗塞巣の割合は58%であった。それに対し化合物A投与群では、この割合は14%となり、有意な抑制作用が認められた。また、心筋内への白血球浸潤の指標となるMPO活性は、対照群(梗塞心臓)で正常群に対して有意に増加したが、化合物A投与群では対照群に対して有意に抑制された。
試験例10 ウサギ慢性心筋梗塞(心不全)モデルに対する作用
雄性NZWウサギ(日本SLC)を背位固定後、ペントバルビタール麻酔し開胸した後、左冠動脈基始部に4号シルク糸をかけ、さらに長さ1cmのポリエチレンチューブをあてて糸で左冠動脈を結紮した。結紮2時間後にポリエチレンチューブ上の糸を切断し、血流を再開させた。再開通2時間後に化合物A(1mg/kg)を1回投与し、その後、1日1回12週間にわたり投与した。12週間後に過剰量のペントバルビタールを投与した後、心臓を摘出し、その重量及び左心室中央の壁の厚さを測定した。結果を以下に示す。
致死率と心重量、左心室厚により化合物を評価した。



ウサギ虚血再灌流心筋梗塞後、12週間で被験化合物非投与群は、心重量の増加及び左心室厚の薄弱化が認められ、心筋梗塞後の心不全への移行時にみられる心臓の膨化・腫大を示した。化合物A投与群では、心重量の増加及び左心室厚の薄弱化が抑制された。
試験例11 脳梗塞モデルに対する作用(虚血性脳障害モデル)
ICR系雄性マウス(日本SLC)をエーテル麻酔し、背位に固定し、両総頸動脈を糸で結紮した。すばやく傷をふさぎ、直ちにマウスをケージ内に解放、30分毎に240分までの死亡の有無を確認し、各群の累積死亡率を求めた。総頸動脈結紮1時間前に化合物Bを経口投与した。

化合物B投与群では、両頸動脈結紮による脳虚血モデルに対して、死亡率の改善効果がみられた。
【産業上の利用可能性】
本発明に係るNAD(P)Hオキシダーゼを含む医薬組成物は、種々のリスクファクターにより起こる疾患の予防や症状の軽減に用いることができ、しかも免疫機能に与える影響が小さいので、副作用が少なく、極めて有用なものである。
なお、本出願は、日本特許出願 特願2003−103576号を優先権主張して出願されたものである。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
白血球のNADPHオキシダーゼ作用を実質的に阻害せず、かつ白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼ作用を抑制する化合物を含有するNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用の抑制剤。
【請求項2】
白血球以外の組織が、血管細胞系、心臓、腎臓、網膜、ミクログリア又は腫瘍細胞の組織であることを特徴とする請求項1記載の抑制剤。
【請求項3】
NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用が、糖尿病、高血圧、高脂血症、肥満、喫煙、心不全、心肥大、虚血性心疾患、又は血管再開通療法若しくは臓器移植術の虚血再灌流により生じたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の抑制剤。
【請求項4】
NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用が、ガン又は痴呆症により生じたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の抑制剤。
【請求項5】
NAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用が、化学物質の摂取により生じたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の抑制剤。
【請求項6】
白血球のNADPHオキシダーゼには実質的に作用せず、かつ白血球以外の組織のNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用を抑制する化合物が、下記一般式(I)から(VIII)で表される二環式ピリダジン化合物又はその薬理学上許容される塩であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の抑制剤。
一般式(I)

{式中、AはC〜Cアルキル、C〜Cシクロアルキル又はそれぞれがC〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ若しくはハロゲンから選ばれる1以上の置換基を有していてもよいフェニル、チエニル、フリル、チアゾリル、フェノキシ、C〜Cフェニルアルキル、フェニルチオ、含窒素飽和環基、ピリジル若しくはイミダゾリルを表す。
Bは、−NH−D
〔Dは

(式中、Rは水素又はC〜Cアルキルを表す。Xはハロゲン、C〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシを表す。kは0〜3の整数を表し、kが2以上の整数のとき、複数のXはそれぞれ異なっていてもよい。)

(式中、Rは水素又はC〜Cアルキルを表す。YはC〜Cアルキル又はC〜Cアルコキシを表す。mは0〜6の整数を表す。mが2以上のとき、複数のYはそれぞれ異なっていてもよく、任意の2つのYが連結して分岐していてもよいC〜Cアルキレンを形成してもよい。)

(式中、環HはC〜Cシクロアルキルを表す。Y及びmは前記と同義である。)
−CHR(式中、RはC〜Cアルキルを表す。RはC〜Cシクロアルキル又はチエニルを表す。)
又はC〜Cアルキルを表す。〕
又は

(式中、ZはC〜Cアルキル又はフェニルを表す。nは0〜2の整数を表し、nが2のときこれらのZは異なっていてもよい。)
を表し、
Qはベンゼン環、フラン環又はC〜Cアルキルで置換されていてもよいチオフェン環を表す。}
一般式(II)

[式中、R及びRは、それぞれ独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。X’は−COOR(Rは水素又は置換されていてもよいC〜Cアルキルを表す。)、−CONH、−CN、−COR(Rは置換されていてもよいC〜Cアルキル又は置換されていてもよいアリールを表す。)、−NH、−NO又は−OR(Rは前記と同義である。)を表す。]
一般式(III)

(式中、R、R10はそれぞれ独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。)、
一般式(IV)及び(V)

[式中、R11及びR12は、それぞれ独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。X’’は−OR13(R13は水素、C〜Cアルキル又はアリールを表す。)又は−NR1415(R14及びR15は、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル又はアリールを表す。)]
一般式(VI),(VII),(VIII)

(式中、R16及びR17は、それぞれ独立して、水素、C〜Cアルキル、アルコキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、トリフルオロメチル又はカルボキシルを表す。R及びR19は、それぞれ独立して、水素又はC〜Cアルキルを表す。Y’は酸素又は硫黄を表す。)
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の抑制剤を有効成分とするNAD(P)Hオキシダーゼの過剰作用に起因する疾病用の医薬組成物。
【請求項8】
脂質低下剤、降圧剤、血糖低下剤、血管拡張剤、抗血小板剤、抗凝固剤、脳保護薬、抗ガン剤、利尿剤、強心薬、鎮痛薬、抗浮腫薬、血栓溶解剤、免疫抑制剤、ステロイド剤、ビタミン剤又は抗酸化剤と、同時に若しくは別々に、又は逐次的に投与する形態であることを特徴とする請求項7記載の医薬組成物。

【国際公開番号】WO2004/089412
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505314(P2005−505314)
【国際出願番号】PCT/JP2004/005065
【国際出願日】平成16年4月8日(2004.4.8)
【出願人】(000006725)三菱ウェルファーマ株式会社 (92)
【Fターム(参考)】