説明

球状ナノ粒子の製造方法及び同製造方法によって得られた球状ナノ粒子

【課題】凝集が進行しにくく分散性が優れる球状ナノ粒子の製法を提供する。
【解決手段】液相中に1〜1000nmの大きさの原料粒子あるいは金属酸化物粒子を分散させ、この液相中の粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下の弱いレーザー光を照射して、原料粒子を一旦溶融かつ融合させ、その後液相中で急冷することにより10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子を製造する、あるいは金属酸化物粒子に還元反応を起こさせて、これにより金属球状ナノ粒子若しくは還元球状ナノ粒子またはこれらの複合構造の粒子を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常ゴツゴツした不定形で観察されることが多いナノ粒子を原料として球状のナノ粒子を製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
球状ナノ粒子の製造方法は、以下に述べるいくつかの方法が知られている。
(1)油/水相分離やミセル構造を利用した方法
この技術は、単分散性に優れるが、真球度が高いナノ粒子は限られた材料系や限られたサイズ範囲でのみ実現されている。100nm以上の大きなナノ粒子では、油/水相分離を利用し、10nm以下の小さなナノ粒子では両親媒性有機分子が作るミセル構造を利用して、その限られた液滴空間の中に原料を仕込み、化学プロセスにより粒子を生成させるものである(特許文献1、非特許文献1参照)。
【0003】
この手法自体は安価なプロセスであり、いくつかの系(ポリマーやシリカなどのコロイドナノ粒子・量子ドット系など)は既に市販されているが、液相合成反応が基本なので適用できる系が限定されている。
特に、Fe、Ni、Cu、Coなどの卑金属あるいは酸化しやすい高温・高強度材料である炭化物やホウ化物の球状ナノ粒子の作製法は極めて限定されている(特許文献2、非特許文献2、3参照)。
また、この他にも液相合成条件の制御によって球状粒子が得られているが、どのような系が得られるかは試行錯誤な状態である。
【0004】
(2)微小重力場を利用する方法
上記の液滴空間は、長時間の反応系では、重力の影響を受けて変形することによる真球性の低下や液滴凝集によるサイズ分布の広がりを引き起こす。微小重力場を使って液滴空間の分散安定を図ることで、分散性や真球度を上げる試みも行われているが、微小重力場発生のためのコストを考えると、あくまでも極めて特殊な用途に限定されてしまうという問題がある(非特許文献4参照)。
【0005】
(3)気相中で溶融・急冷する方法
原料粒子を気相中で溶融・急冷する方法は、まずプラズマなどを使って気相中で高温環境を作り出して溶融液滴を生成させる。
これを徐冷させると結晶析出が進行し生成粒子に晶癖が現れてくるため、不活性ガス分子との衝突を繰り返させることで急冷させて、球状液滴が固化した粒子を生成させるという工程が必要となる(非特許文献5参照)。
したがって、プラズマ発生装置やガス冷却装置といった大がかりな仕組みが必要となり、またプロセスを制御すること自体が難しくなる。
この技術は、材料に関する制限は少ないが、サイズの小さい粒子はプロセス中に気化しやすいことから、通常ミクロン以上の大きいサイズの粒子しか得られないという問題がある(特許文献3参照)。
【0006】
また、アモルファスの粒子は、ポリマーやシリカの粒子のように球状のものが得られやすいが、結晶性物質のナノ粒子は特定の結晶面が出やすいことから晶癖を形成するため多面体が形成し易く(特許文献4参照)、通常球形ナノ粒子は得られ難いという問題がある。
最近、金属の薄膜1ミクロン以下の厚さの薄膜を液体中に分散してレーザー光を照射して金属のナノ粒子を作製する方法が提案されている。この手法はレーザー光の照射により大きなサイズの液中分散体が破壊され球状化するというものであり、しかも金属以外の材料についての検討は全くなされていない。これに対し本願発明はナノ粒子を原料として融合により10〜1000nmのナノ粒子を製造する方法であり、酸化物や他の化合物に対する明確な可能性にも言及しており、先の提案とは異なる内容である。(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2001−292549
【特許文献2】特開2006−16653号公報
【特許文献3】特開2004−328545号公報
【特許文献4】特開2008−230872号公報
【特許文献5】国際公開W02006/030605号公報
【非特許文献1】Ozin A G., Arsenault A. NANOCHEMISTRY, (RSC Publishing, Cambridge, 2005)
【非特許文献2】Yamamoto, K. et al. Appl. Phys. Lett. 93 (2008) 082502.
【非特許文献3】Huang, K.C. et al. H. Langmuir 23 (2007) 1419.
【非特許文献4】土田 亮, 繊維と工業 60 (2004) 24.
【非特許文献5】Balasubramanian, C. et al. Nanotechnology 15 (2004) 370.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、特定の結晶面からなる晶癖がある結晶性粒子では、粒子が接触した際に粒子同士が面接触をする可能性が高くなり、これを起点に凝集が進行しやすい。
これに対して、球状ナノ粒子が2個接触した場合を考えると、点接触しかありえないことから凝集が進行しにくく安定な分散性が得られる。このように、球状ナノ粒子は凝集安定性に関して有利であり、特にバイオや医療の分野などでの、さまざまなナノ粒子応用を考える上で、極めて有効な材料となることが期待される(M. Abe et al. J. Magn. Magn. Mater. 321 (2009) 645、参照)。
【0009】
本出願は、このような優れた基本的性質をもつ球状ナノ粒子の簡便かつ汎用性の優れた作製法がこれまで無かったという問題点を解決しようとするものであり、特に、ゴツゴツした不定形で観察されることが多いナノ粒子を原料として使用し、安価に球状のナノ粒子を製造する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上から、本発明は、
1)液相中に1〜1000nmの大きさの原料粒子を分散させ、この液相中の原料粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、原料粒子を溶融させ、その後液相中で急冷することにより10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0011】
原料粒子の下限値を1nmとする理由は、小さな粒子の場合レーザー光吸収による超高温状態生成のため液相中に原子やイオンの状態で飛散・溶解する可能性が極めて大きくなるためである。また、同上限値を1000nmとする理由は、そのサイズが大きくなると熱容量が大きくなり、レーザー光照射により実現する温度が粒子の溶融液相生成に必要な温度に到達し得なくなるためである。
1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下とする理由は、これを超えると粒子の急速加熱溶融によって生成する液滴の爆発的飛散や液相分子の急速な気化による衝撃波の生成が起こり、不定形のナノ粒子が物理的な破砕プロセスにより形成されやすくなるため、好ましくないからである(S. Vladimir et al. Chem. Phys. Lett. 429 (2006) 483、参照)。本願発明の方法により適度なサイズ、すなわち10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子を製造することが可能となる。
【0012】
また、本発明は、
2)液相中に1〜1000nmの大きさの金属酸化物からなる原料粒子を分散させ、この液相中の粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、液相中で原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより金属球状ナノ粒子又は還元球状ナノ粒子を生成させることを特徴とする金属を主成分とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0013】
本願発明は、原料粒子として金属酸化物を使用することにより、1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下の弱いレーザー光を照射して、液相中で原料酸化物粒子に還元反応を起こさせることが可能である。これは本願発明の大きな特徴である。
これは1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下の弱いレーザー光を照射して、液相中で原料酸化物粒子に還元反応を起こさせることが可能であることを意味している。このことは、高温・高硬度物質である炭化物やホウ化物の粒子を原料として、その酸化を抑えながら球状ナノ粒子を製造することも可能であることを示している。
【0014】
また、本発明は、
3)原料粒子を分散させる液相として、水系の溶媒又は有機溶媒を用いることを特徴とする1)又は2)記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
有機溶媒の好適な材料としては、エタノール、アセトン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノールなどを挙げることができる。有機溶媒以外にも場合によっては水などを使用することが可能である。水の場合は酸化性が強いため、酸化物粒子を原料としたときは、酸化物の球状粒子が得られる。
【0015】
4)レーザー照射光の波長を変化させることにより、生成球状ナノ粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする1)〜3)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0016】
また、本発明は、
5)レーザー照射光の照射エネルギーを変化させることにより、生成球状粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする1)〜4)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0017】
また、本発明は、
6)レーザー照射光のパルス幅を変化させることにより、生成球状粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする1)〜5)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法
7)液相種を相違させることにより、生成球状粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする1)〜6)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法
8)液相中に原料粒子を分散させ、これにレーザー光を照射して球状ナノ粒子を製造する際に、超音波を使用して前記液相を攪拌し、中空のナノ粒子を製造することを特徴とする1)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0018】
また、本発明は、
9)液相中に分散させる原料酸化物粒子として、鉄粒子、酸化鉄粒子、鉄に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化鉄の混相若しくはこれらと鉄の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0019】
また、本発明は、
10)液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化銅粒子、銅に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化銅の混相若しくはこれらと銅の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0020】
また、本発明は、
11)液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化ニッケル粒子、ニッケルに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化ニッケルの混相若しくはこれらとニッケルの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0021】
また、本発明は、
12)液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化コバルト粒子、コバルトに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化コバルトの混相若しくはこれらとコバルトの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0022】
13)また、本発明は、
液相中に1〜1000nmの大きさの金属原料粒子、金属酸化物からなる原料粒子、炭化物からなる原料粒子、窒化物からなる原料分子、ホウ化物からなる原料分子から選択した一以上の原料粒子を分散させ、この液相中の粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下の弱いレーザー光を照射して、金属球状ナノ粒子、酸化物球状ナノ粒子、炭化物球状ナノ粒子、窒化物球状ナノ粒子、硼化物球状ナノ粒子又はこれらの混合粒子若しくは複合構造の粒子を生成させることを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0023】
14)また、本発明は、
有機溶媒又は窒素化合物若しくはホウ素化合物を含有する有機溶媒からなる分散液中に、1〜1000nmの大きさの金属原料粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化物、窒化物又はホウ化物からなる球状粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法を、提供する。
【0024】
15)また、本発明は、
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化タングステン粒子、タングステンに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化タングステンの混相若しくはこれらとタングステンの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0025】
16)また、本発明は、
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化亜鉛粒子、亜鉛に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化亜鉛の混相若しくはこれらと亜鉛の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元あるいは酸化反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0026】
17)また、本発明は、
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化チタン粒子、チタンに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化チタンの混相若しくはこれらとチタンの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元あるいは酸化反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする2)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0027】
18)また、本発明は、
液相中に分散させる原料粒子として、粉砕したシリコン粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して球状ナノ粒子を形成する際に、2)〜7)のいずれか一項の方法を用いることを特徴とする球状シリコンナノ粒子の製造方法、を提供する。この場合のシリコン原料は、市販の5ミクロン程度の粒子のシリコンを使用することができる。これを粉砕して、1ミクロン以下のシリコン粒子として原料とすることが有効である。
【0028】
19)また、本発明は、
原料粒子としてホウ素ナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にホウ素ナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化ホウ素(BC)を生成させ、その後液相中の反応生成物を硝酸処理して、未反応のホウ素を除去し、炭化ホウ素粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0029】
20)また、本発明は、
原料粒子としてホウ素ナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にホウ素ナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化ホウ素(BC)を生成させ、その後液相中の反応生成物を硝酸処理して、未反応のホウ素を除去し、炭化ホウ素粒子を製造する際に、3)〜7)のいずれか一項の方法を用いて炭化ホウ素粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0030】
21)また、本発明は、
原料粒子としてタングステンナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にタングステンナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液とタングステン粒子と反応させて炭化タングステン(WC)粒子を生成させ、その後液相中の未反応のタングステンを除去し、炭化タングステン粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
タングステンは融点の高い物質で、溶融が難しい材料であるが、エタノール分散液に非集光でレーザーを照射することにより、溶媒であるエタノールと反応させ炭化タングステンナノ粒子を製造できる。
【0031】
22)また、本発明は、
原料粒子としてタングステンナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にタングステンナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化タングステン(WC)粒子を生成させ、その後液相中の未反応のタングステンを除去し、炭化タングステン粒子を製造する際に、3)〜7)のいずれか一項の方法を用いて炭化タングステンナノ粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
【0032】
23)また、本発明は、
原料粒子として金属粒子と酸化物粒子を使用し、これらの粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせると共に、金属粒子との複合体を形成させ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする3)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
この場合に使用する原料粒子として金属粒子と酸化物粒子は、全く異なる構成物質を使用するケースである。この場合でも、それぞれの構成物質の複合体からなる球状ナノ粒子を製造することができる。
【0033】
24)また、本発明は、
前記23)で得られた球状ナノ粒子を、酸又はアルカリで処理して、金属ナノ粒子又は酸化物ナノ粒子の一方を溶解させて除去し、残存する他方の金属ナノ粒子又は酸化物ナノ粒子のポーラスな粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
この作製されたナノ粒子のポーラス部には、気相又は液相の雰囲気中の処理又は気相又は液相反応により、新たに他の物質を埋め込むことが可能であることは言うまでもない。本願発明はこれらを包含するものである。
【0034】
25)また、本発明は、
原料粒子として光学吸収があり還元反応を行うナノ粒子と光学吸収のない金属酸化物ナノ粒子を使用し、これらの粒子にレーザー光を照射して前記酸化物粒子に還元反応を起こさせて、光学吸収のない金属酸化物ナノ粒子から金属の球状ナノ粒子を形成することを特徴とする3)〜7)のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法、を提供する。
この場合、光学吸収があり還元反応を行うナノ粒子としては、具体的にはカーボン粒子を挙げることができるが、還元性の物質であれば、他の粒子も使用できることは言うまでもない。また光学吸収のない金属酸化物ナノ粒子としては、代表的には、酸化アルミニウムを上げることができるが、他の光学吸収のない金属酸化物でも良い。
【0035】
また、本発明は、
26)原料粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、原料粒子を溶融させ、その後液相中で急冷することにより得られた10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子
27)液相中の金属酸化物からなる原料粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、該液相中で原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより得られた金属球状ナノ粒子若しくは還元球状ナノ粒子又はこれらの複合構造の粒子からなる10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子、を提供する。
【0036】
また、本発明は、
23)上記1)〜25)の製造方法によって得られた10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子、を提供する。この寸法の球状ナノ粒子には、中空ナノ粒子が含まれることは容易に理解できるであろう。
上記の通り、本発明の球状ナノ粒子は、寸法を任意に制御することができるので、球状ナノ粒子の使用目的に応じて寸法を選択できるというメリットがある。本願発明はこれらを達成できる球状ナノ粒子を提供するものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の球状ナノ粒子及びその製造方法は、不定形の原料粒子を液相中に分散させ、これに比較的弱いパルスレーザー光を照射して原料粒子をいったん溶融し、その後急冷されることにより球状ナノ粒子を得る方法(液相レーザー照射法)であり、溶融時間や到達温度などをレーザーの照射条件の制御により調節することができ、急冷条件の制御もし易く、大がかりな装置を必要としないという優れた効果がある。また、これにより真球性やサイズの制御性の高いプロセス技術であり、10〜1000nmの大きさの均一な球状ナノ粒子を製造することができる。
【0038】
さらに、炭化物やホウ化物などの従来適当なナノ粒子作製法がなかった物質にも適用可能であり、材料選択に関する汎用性にも優れているという効果ある。
このようなことから、界面活性剤などによらない分散安定性を示すナノ粒子合成技術を確立することができ、バイオ・医療応用が可能な高い分散安定性を示すナノ粒子、研磨剤や超精密スペーサー粒子膜、ハイパーサーミアなどのガン治療用磁性ナノ粒子、導電性ナノ粒子ペースト、毒性元素を含まないシリコン系医療用高輝度蛍光体の製造等に適用することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】原料Fe/Feナノ粒子(サイズ:70nm)へのレーザー照射による変化を示す図である。
【図2】照射レーザー波長の違いによる生成物の形態変化を示す図である。
【図3】照射レーザーエネルギーの違いによる生成物の形態変化を示す図である。
【図4】照射レーザーエネルギーの違いによる生成物のXRDスペクトル変化を示す図である。
【0040】
【図5】レーザー照射時間の違いによる生成物の形態変化を示す図である。
【図6】原料Fe/Feナノ粒子の分散液相種の違いによる生成物の形態変化を示す図である。
【図7】原料Fe/Feナノ粒子の水中分散液へのレーザー光照射による生成物の形態変化を示す図である。
【図8】原料Fe/Feナノ粒子の分散方法の違いによる生成物の形態変化を示す図である。
【図9】生成物の組成安定性を示す図である。
【0041】
【図10】原料Fe3O4ナノ粒子(サイズ:5nm)をアセトン中に分散した液にレーザー光(532nm)を照射したときの照射レーザーエネルギーの違いによる生成物の形態変化を示す図である。
【図11】照射レーザーエネルギーの違いによる生成物のXRDスペクトル変化を示す図である。
【図12】原料Feナノ粒子(サイズ:5nm)を酢酸エチル中に分散した液に異なる強度のレーザー光(波長:355nm)を照射した時の形態変化を示す図である。
【図13】照射レーザーエネルギーの違いによる生成物のXRDスペクトル変化を示す図(上)、および粒子平均サイズとFe3O4・FeOの相対存在割合のレーザー光照射強度依存性である。
【図14】エタノールあるいはアセトン中に分散した原料Feナノ粒子(サイズ:30〜200nm)へのレーザー照射による生成物の形態変化を示す図である。
【0042】
【図15】酸化銅(CuO)ナノ粒子を原料として、弱いエネルギーでレーザー照射を行ったときの典型的な変化を示す図である。
【図16】酸化銅(CuO)ナノ粒子を原料として、レーザーの照射エネルギーを変化させたときの粒子の形態とそのサイズ分布の変化を示した図である。
【図17】酸化銅(CuO)ナノ粒子を原料として、強いレーザー照射エネルギーである267mJ/cmでレーザー光を照射した時の生成物の電子顕微鏡写真である。
【図18】酸化銅(CuO)ナノ粒子を原料とする場合の、レーザー照射エネルギーの増加に伴う生成物のX線回折スペクトルの変化を示した図である。
【図19】酸化銅(CuO)ナノ粒子を原料とする場合の、レーザー照射エネルギーと平均粒子サイズ(上)や組成(下)の関係を示した図である。
【0043】
【図20】原料NiOナノ粒子(サイズ:<50nm)へのレーザー照射による変化を示す図である。
【図21】原料Coナノ粒子(サイズ:12〜30nm)へのレーザー照射による変化を示す図である。
【図22】原料WOナノ粒子へのレーザー照射による変化を示す図である。
【図23】酸化亜鉛(ZnO)ナノ粒子を水中に分散した液体に弱いエネルギーでレーザー照射を行ったときの典型的な変化を示す図である。
【図24】レーザーの照射エネルギーを変化させたときのZnO粒子の形態とそのサイズ分布の変化を示した図である。
【0044】
【図25】酸化チタン(TiO)ナノ粒子をエタノール中に分散した液体に弱いエネルギーでレーザー照射を行ったときの典型的な変化を示す図である。
【図26】ミクロンサイズのシリコン粒子を粉砕したものをエタノール中に分散した液体に弱いエネルギーでレーザー照射を行ったときの典型的な形態変化を示す図である。
【図27】原料のホウ素ナノ粒子のエタノール分散液に非集光でレーザーを照射し、生成物を硝酸処理することで未反応のホウ素を除去して得られた炭化ホウ素(BC)粒子の電子顕微鏡写真である。
【図28】タングステン粒子を原料として、そのエタノール分散液に非集光でレーザーを照射して得られる球状粒子の電子顕微鏡写真である。
【0045】
【図29】Auナノ粒子のエタノール分散液とFeナノ粒子のエタノール分散液を1:1で混合した液体にレーザー照射をすることで得られる球状粒子とこれを塩酸処理したときに得られる粒子の電子顕微鏡写真である。
【図30】Cナノ粒子とAlナノ粒子をボールミルで粉砕混合した後アルコール中に分散してレーザー光を照射して得られた球状粒子とそのX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の球状ナノ粒子の製造方法は、上記の通り原料粒子(多くの場合、不定形)を液相中に分散させ、これに比較的弱いパルスレーザー光を照射して原料粒子を一旦溶融させ、その後急冷することにより球状ナノ粒子を得る方法(液相レーザー照射法)である。
レーザー光が照射している時間(例えば、ナノ秒オーダー)に、粒子温度は数千度を超えて溶融し、その後急冷して球状ナノ粒子を製造するものである。
【0047】
プロセス自体は、気相中での溶融・急冷法と一見似ているが、溶融時間や到達温度などはレーザーの照射条件の制御により可能であり、急冷条件の制御もし易く、大がかりな装置を必要としないという大きな相違がある。
また、これにより真球性やサイズの制御性の高いプロセス技術として応用可能である。したがって、油/水相分離やミセル構造を利用した真球状ナノ粒子の製造ができない10〜100nmの空白のサイズ領域にも十分対応可能な方法を提供できる。
【0048】
加えて、本発明の製造方法では、炭化物粒子やホウ化物粒子などの従来適当なナノ粒子作製法がなかった物質にも適用可能であり、材料選択に関する汎用性にも優れている。本特許の重要なポイントは、原料粒子(多くの場合不定形)として、ナノ粒子のようなサイズの小さな粒子を用いることである。粒子サイズが小さくその熱容量が小さいため、レーザー光照射に伴う光吸収により粒子の温度が数千度まで達することができる。
この場合、球状のナノ粒子を製造する原料として、金属や酸化物が好適な材料であるが、粒子サイズが小さければ、炭化物粒子やホウ化物粒子にも適用できることは容易に理解できるであろう。
【0049】
本発明の製造方法では、原料粒子がマイクロ秒程度の時間溶融して球状になり、その後急冷してその形状が固定化する。このために投入するレーザー光のエネルギーは1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下で十分である。
もし、これを超えるような条件、すなわち従来の2.0J/cmの条件での照射を行うと、原料粒子の急激な温度上昇とこれに伴う液滴の爆発的飛散や衝撃が発生し、サイズの小さい不定形ナノ粒子生成が起こる可能性がある。このような過度な条件は、既に報告されているレーザー破砕化プロセスに相当し、避けなければならない条件である。
【0050】
本願発明の、液相中での、このような弱いレーザー光の照射による球状ナノ粒子生成で、特に溶融された粒子同士が融合して原料より大きな球状粒子を生成する方法はこれまで全く報告されていない。また、廻りの液相環境を還元性にすることで、例えば原料粒子を還元してナノ粒子を生成させることが可能であるという大きな特徴がある。液相中で弱いレーザー光を照射することによって、ナノ粒子を再編成し、均一な球状ナノ粒子を作製するという説明が、本願発明の理解をより容易にすると思われる。
【0051】
本願発明を適用できる代表的な物質について説明すると、まず液相中に分散させる原料酸化物粒子として酸化鉄を用いる場合であるが、この場合は酸化鉄粒子、鉄に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化鉄の混相若しくはこれらと鉄の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子、さらには鉄を使用することができる。
酸化鉄粉末の代表例として、Fe粒子又はFeにFe層が被覆された粒子を挙げることができる。酸化鉄粉末も多種多様であり、上記の通り、表層に酸化鉄層がある場合もあるが、複数の酸化鉄が混相になっている場合、固溶相となっている場合、そしてこれらの混合物もある。
【0052】
本願発明は、原料粉末として、いずれも使用することが可能である。そして、これらの粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせるのである。これにより、代表的にはFe、FeO、Fe、FeC又はこれらの鉄若しくは酸化鉄相の1つあるいは複数の成分から構成されている球状ナノ粒子又はこれらの球状ナノ粒子の混合物を作製することができる。
球状ナノ粒子は代表例を示したものであり、上記以外のナノ粒子の形成は当然含まれるものである。なお、上記の生成物質の中に、FeC粒子が含まれているが、液相として有機溶媒を使用した場合、有機溶媒の一部の炭素がFeCの球状粒子が形成される場合を示す。この形成は、有機溶媒の種類、原料粉末の種類と量、レーザー光の照射条件等によって変化するものであり、常時形成されるものではない。
【0053】
次に、液相中に分散させる原料酸化物粒子として酸化銅を用いる場合であるが、この場合は、原料酸化物粒子として、酸化銅粒子、銅に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化銅の混相若しくはこれらと銅の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用することができる。
酸化銅原料粉末の代表例として、CuO粒子、CuO粒子、これらの混合物の粒子等を挙げることができる。そして、これらの粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより代表的に、Cu、CuO、CuOの1つ若しくは複数の成分から構成されている球状ナノ粒子、又はこれらの球状ナノ粒子の混合物を作製することができる。
上記酸化鉄粉末の原料を使用した場合と同様に、上記の代表例に示す酸化銅以外の酸化物を使用することができることは、容易に理解できるであろう。
【0054】
次に、液相中に分散させる原料酸化物粒子として酸化ニッケルを用いる場合であるが、この場合は、原料酸化物粒子として、酸化ニッケル粒子、ニッケルに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化ニッケルの混相若しくはこれらとニッケルの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用することができる。
酸化銅原料粉末の代表例として、NiO粒子を挙げることができる。そして、これらの粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより代表的に、Ni、NiOの1つ若しくは複数の成分から構成されている球状ナノ粒子、又はこれらの球状ナノ粒子の混合物を作製することができる。
上記酸化鉄粉末の原料を使用した場合と同様に、上記の代表例に示す酸化銅以外の酸化物を使用することができることは、容易に理解できるであろう。
【0055】
次に、液相中に分散させる原料酸化物粒子として酸化コバルトを用いる場合であるが、この場合は、原料酸化物粒子として、酸化コバルト粒子、コバルトに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化コバルトの混相若しくはこれらとコバルトの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用することができる。
酸化コバルト原料粉末の代表例として、Co粒子、CoO粒子、これらの混合物の粒子を挙げることができる。そして、これらの粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより代表的に、Co、CoO、Coの1つ若しくは複数の成分から構成されている球状ナノ粒子、又はこれらの球状ナノ粒子の混合物を作製することができる。
上記酸化鉄粉末の原料を使用した場合と同様に、上記の代表例に示す酸化銅以外の酸化物を使用することができることは、容易に理解できるであろう。
【0056】
次に、本発明の特徴を、図等を用いて具体的に説明する。なお、以下の説明は、本願発明の理解を容易にするためのものであり、これに制限されるものではない。すなわち、本願発明の技術思想に基づく変形、実施態様、他の例は、本願発明に含まれるものである。
【実施例】
【0057】
(実施例1)
(液相中での弱いレーザー光照射による鉄ナノ粒子の作製)
エタノール中に分散させた原料Fe/Feナノ粒子(直径: 50−100nm)に、Nd:YAGの第2高調波(532nm)をレンズで集光させずに1W(1パルスあたり66mJ/cm)のレーザー出力で10分間照射を行った。
照射前の原料はFe層で被覆されたFe粒子であり、レーザー光照射により図1に示すような球状粒子が非常に効率よく生成した。
その組成はFeとFeOとの混合相であった。すなわち有機溶媒中の還元雰囲気によりFe相が還元されたことがわかる。
【0058】
(実施例2)
エネルギーを変えずにレーザーの照射光の波長を1064nm、532nm、355nmと変化させたところ、図2に示すように、生成球状粒子のサイズは徐々に大きくなり、サイズの制御が可能である。
【0059】
(実施例3)
また、レーザー光の波長と照射時間を一定にして、レーザーの照射エネルギーを1パルスあたり33mJ/cmから0.13J/cmまで変化させたところ、図3に示すように、徐々に球状ナノ粒子サイズが増加した。この時のX線回折スペクトルの変化から高いエネルギーのレーザー光照射によりFeの生成が抑えられ、FeOの占める割合が大きくなることがわかる(図4参照)。
なお、レーザー波長や照射エネルギーを固定して、照射時間の効果を検討したが、この場合には顕著な変化は認められなかった(図5参照)。
【0060】
(実施例4)
原料Fe/Feナノ粒子を分散させる有機溶媒の種類の違いによる生成物の形態やサイズを検討したところ、図6に示すように、溶媒種によってサイズが大きく異なることがわかった。
また、図7に示すようにFe原料ナノ粒子を有機溶媒中ではなく水中でレーザー光照射を行った場合でも球状粒子は生成するが、この場合は水の酸化性を反映して還元相ではなく原料と同じ酸化相のFe球状粒子が生成した。
【0061】
(実施例5)
また、レーザーを照射する際には、粒子の沈降を抑えて効率よく球状粒子が生成するように液相を攪拌することがよく行われるが、本実施例において、通常の攪拌子を使った攪拌と超音波を使った攪拌を比較したところ、超音波を使った場合に図8に示すように球状中空ナノ粒子の生成が確認された。
得られた球状ナノ粒子は、大気中では不安定なFeやFeOの相を含むが、その組成安定性をX線回折により評価したところ、図9に示すように、組成は非常に安定であった。
【0062】
(実施例6)
これまでの実施例は全てサイズが70nmのFe/Feナノ粒子に関するものであったが、異なるサイズのさまざまな酸化鉄系ナノ粒子を原料に用いても同様の結果が得られた。
図10は、化学法により合成したFeナノ粒子(サイズ:5nm)をアセトン中に分散した液に異なる強度のレーザー光(532nm)を照射した時の形態を示したものである。球状粒子がどの条件でも観測されたことがわかるが、その組成はX線回折測定の結果、図11に示すように、低強度の場合のFeからFeO(還元相)、Fe金属、FeC(炭化物)へと徐々に生成物が変化した。この結果はアセトンの持つ強い還元能を示すものである。
【0063】
図12は同じ原料を酢酸エチル中に分散した液に異なる波長(355nm)で異なる強度のレーザー光を照射した時の形態変化を示したものである。
左側は走査電子顕微鏡像、右側は透過電子顕微鏡像である。1パルスあたり33mJ/cmで照射した場合でも球状粒子が生成しているが、中空のものが多くできていることがわかる。
エネルギーを徐々にあげていくと2つの1次粒子がつながったひょうたん型の粒子が見られ、粒子の成長過程が粒子間の融合であることを示している。さらにエネルギーを上げて133mJ/cm以上になると真球状に近づくが、その内部には複合構造を持つことがわかった。この間粒子サイズは徐々に大きくなった。
【0064】
図13によると、照射エネルギーの増加に伴いFeからFeとFeOの混合相へと変化していることがわかる。高いエネルギー照射の試料で見られる内部構造はこの混合相に対応しているものと考えられる。また、酢酸エチルはアセトンと比べて弱い還元能を持つことがわかる。
図14は、別の市販のFe粒子(サイズ: 30〜200nm)であり、この場合でも球状粒子の生成が確認された。以上のように出発原料のサイズによらず、弱いエネルギーのレーザー光照射により、球状粒子が再現性よく生成することがわかった。
【0065】
(実施例7)
これまでの実施例は、全て酸化鉄系のナノ粒子に関するものであるが、さまざまなナノ粒子を原料に用いても同様の結果が得られた。次に、その具体例を示す。
酸化銅(CuO)を原料として同様の弱いエネルギーでレーザー照射を行ったときの典型的な変化を図15に示す。上の図はCuO原料粒子の(a)走査電子顕微鏡写真、(b)粒子サイズ分布、(c)透過電子顕微鏡写真、(d)電子線回折パターンであり、平均34nmのサイズをもった結晶性CuO粒子であった。
【0066】
一方、下の図は、対応するレーザー照射(355nm,66mJ/cm, 30分間、アセトン中)後の粒子の形態を示したものである。同様に、(e)走査電子顕微鏡写真、(f)粒子サイズ分布、(g)透過電子顕微鏡写真、(h)電子線回折パターンであり、平均0.1〜0.2μmのサイズが均一で真球状の粒子が得られ、結晶性も高いことがわかる。図16はレーザーの照射エネルギーを変化させたときの粒子の形態とそのサイズ分布をまとめたものである。数字はmJ/cm単位での照射エネルギーである。
【0067】
50mJ/cm以上の照射エネルギーで球状粒子が観測され、照射エネルギーの増加と共に徐々に徐々にサイズが増加することがわかる。しかし、図17は267mJ/cmでレーザー光を照射した時の生成物の電子顕微鏡写真で数nm程度の小さな粒子しか得られなくなる。図17の(a)は走査電子顕微鏡写真でナノ粒子の凝集体が生成していることがわかる。図17の(b)と(c)は透過電子顕微鏡写真であり、得られた粒子は数nmの大きさのナノ粒子であることを示している。
【0068】
これは、従来から知られている液相レーザーアブレーション法(高強度レーザー光の照射によるナノ粒子生成法)の条件に相当するものと考えられる。
50〜200mJ/cmでの照射エネルギー範囲では粒子は溶融して球状粒子になるが、これより高いレーザー光照射では粒子は沸騰のような現象を起こし始め、ナノ粒子の生成が主となるものと考えられる。
【0069】
図18は得られた粒子のX線回折スペクトルで照射エネルギーの増加と共にCuOからCuO、Cuへと変化していくことがわかる。図19はレーザー照射エネルギーと平均粒子サイズ(a)や組成(b)の関係をグラフにしたものである。酸化鉄の場合と同様に有機溶媒中では還元方向に変化していることがわかる。
【0070】
(実施例8)
NiOナノ粒子を原料としたときは、図20に示すように、Ni金属の球状ナノ粒子が製造できた。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子が得られた。
【0071】
(実施例9)
Coナノ粒子を原料としたときは、図21に示すように、CoとCoOとCoの混合物が得られた。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子であった。
【0072】
(実施例10)
図22に示すように、WOでも同様の手法により球状粒子が得られた。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子であった。
【0073】
(実施例11)
ZnOナノ粒子を原料としたときは、図23に示すように、水中でのレーザー照射によりZnOの球状粒子が得られた。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子が得られた。また、図24に示すように、33mJ/cmの照射では原料と大きな変化はないが、67mJ/cmの以上で球状粒子が生成し、その大きさは照射エネルギーの増加に伴い徐々に増加した。
【0074】
(実施例12)
TiOナノ粒子を原料としたときは、図25に示すように、エタノール中でのレーザー照射によりTiOの球状粒子が得られた。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子が得られた。酸化チタンは原料ナノ粒子として非晶質、アナターゼ相、アナターゼとルチルの混合相などさまざまなものが入手可能であるが、ほぼ同様の照射エネルギー条件で球状サブミクロン粒子が得られるが、その相は有機溶媒を用いた場合は全て高温安定相であるルチル相であった。この事実は本手法が溶融状態を経て球状粒子が生成することと対応している。
【0075】
(実施例13)
Siは原料となる粒子として、市販の5ミクロン程度の粒子を粉砕して原料とし、これをエタノール中に分散してレーザー光を照射したところ図26に示すように球状粒子が得られた。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子が得られた。生成粒子のX線回折結果ではSiと同定された。粉砕を行わないでレーザー光を照射した場合は表面が若干溶融した程度の形態変化しか示さないことから、球状粒子生成には粉砕によって生成した1ミクロン以下の粒子の存在が寄与しているものと考えられる。
【0076】
(実施例14)
これまでの実施例は全て、原料粒子がレーザー光を吸収し、それ自体が溶融して球状粒子を生成する、あるいは原料粒子が熱分解して生成する物質が溶融することで球状粒子を生成させている。一方で、液相成分分子は急速加熱された原料粒子と接することで高温になり熱分解を起こし、活性な状態の生成物が粒子と反応することで原料とは異なる粒子の生成も可能である。すなわち高温化学反応を室温大気圧環境下の環境で実現することができる。その実例を取りあげる。
【0077】
図27は、原料のホウ素ナノ粒子のエタノール分散液に非集光でレーザーを照射し、生成物を硝酸処理することで未反応のホウ素を除去して得られた粒子の電子顕微鏡写真である。得られた球状粒子はX線回折実験結果から炭化ホウ素(BC)であることを確認した。すなわち、エタノール中の炭素と反応することでBCが生成することがわかる。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子が得られた。
【0078】
(実施例15)
図28は、より融点の高いタングステン粒子を原料とし、そのエタノール分散液に非集光でレーザーを照射して得られる球状粒子であり、WCという炭化物が生成することがわかった。この例でも、エタノール中の炭素とタングステンが反応してWCが生成するものと考えられる。この例では、平均粒径がサブミクロンオーダーの球状ナノ粒子が得られた。
【0079】
(実施例16)
これまでの実施例は全て、1種類の原料粒子をさまざまな液相中に分散し、これにさまざまな条件でレーザー光を照射いて球状粒子を得たものである。これとは異なり、複数の原料粒子を液相中に分散してレーザー光を照射した場合の結果について以下に取りあげる。
Auナノ粒子のエタノール分散液とFeナノ粒子のエタノール分散液を1:1で混合し、球状粒子が生成する条件(532nm,100mJ/pulse/cm,60min)でレーザー照射を行うと、図29のように球状粒子が得られた。Au:Fe組成はほぼ仕込み通りの1:1となった。
【0080】
これに塩酸処理を施すと酸化鉄のみが溶出されほぼ金のみが取り残された球状ポーラス粒子が得られた。この実験結果から、原料混合法によりナノコンポジット構造をもつサブミクロン球状粒子が得られること、およびポーラスなサブミクロン球状粒子の作製が可能であることを示している。
いずれも従来法では容易に得られない構造である。ポーラスなサブミクロン球状粒子はポアに新たな物質を導入することにより粒子キャリアーとしての展開も期待される。
【0081】
(実施例17)
上記の例では、Auナノ粒子、Feナノ粒子ともに使用した532nmのレーザー光に対して吸収があるため、粒子の溶融・粒子間の融合が進みナノコンポジット状の粒子が生成されると考えられる。
光学吸収のない粒子ではこのような粒子間の融合は期待できない。光学吸収のある粒子と光学吸収のない粒子との強い接触を実現し溶融を実現できれば、これまで不可能であった高温化学反応を実現できるものと考えられる。このような考えに基づいた結果を取りあげる。
【0082】
図30では、355nmのレーザー光に対して光学吸収のあるCナノ粒子と光学吸収のないAlナノ粒子をボールミルのような粉砕混合機を使って混合した後、アルコール中に分散してレーザー光を照射したところ、生成物のX線回折スペクトルからAlのピークが観測された。すなわちAlのCによる還元反応が進行していることがわかる。
【0083】
以上のように、ナノ粒子分散有機溶媒に弱いレーザー光を照射することで、有機溶媒を使った場合は還元相の、水を使った場合は酸化相の球状ナノ粒子が生成することが多くの系で確認されており、拡張性の高い手法であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の球状ナノ粒子及びその製造方法は、原料粒子を液相中に分散させ、これに比較的弱いパルスレーザー光を照射して原料粒子をいったん溶融し、その後急冷されることにより球状ナノ粒子を得る方法(液相レーザー照射法)であり、溶融時間や到達温度などをレーザーの照射条件の制御により調節することができ、急冷条件の制御もし易く、大がかりな装置を必要としないという優れた効果がある。また、これにより真球性やサイズの制御性の高いプロセス技術であり、10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子を製造することができる。さらに、炭化物などの従来適当なナノ粒子作製法がなかった物質にも適用可能であり、材料選択に関する汎用性にも優れているという効果ある。
【0085】
このようなことから、界面活性剤などによらない分散安定性を示すナノ粒子合成技術を確立することができ、高い分散安定性を示すナノ粒子、研磨剤や超精密スペーサー粒子膜、ハイパーサーミアなどのガン治療用磁性ナノ粒子、導電性ナノ粒子ペースト、毒性元素を含まないシリコン系医療用高輝度蛍光体の製造等、高度なバイオ・医療技術等への利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相中に1〜1000nmの大きさの原料粒子を分散させ、この液相中の原料粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、原料粒子を溶融させ、その後液相中で急冷することにより10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
液相中に1〜1000nmの大きさの金属酸化物からなる原料粒子を分散させ、この液相中の粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、液相中で原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより金属球状ナノ粒子若しくは還元球状ナノ粒子又はこれらの複合構造の粒子を生成させることを特徴とする金属を主成分とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
原料粒子を分散させる液相として、水系の溶媒又は有機溶媒を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
レーザー照射光の波長を変化させることにより、生成球状ナノ粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
レーザー照射光の照射エネルギーを変化させることにより、生成球状粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
レーザー照射光のパルス幅を変化させることにより、生成球状粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
液相種を相違させることにより、生成球状粒子のサイズ及び/又は組成を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
液相中に原料粒子を分散させ、これにレーザー光を照射して球状ナノ粒子を製造する際に、超音波を使用して前記液相を攪拌し、中空のナノ粒子を製造することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、鉄、酸化鉄粒子、鉄に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化鉄の混相若しくはこれらと鉄の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化銅粒子、銅に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化銅の混相若しくはこれらと銅の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化ニッケル粒子、ニッケルに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化ニッケルの混相若しくはこれらとニッケルの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化コバルト粒子、コバルトに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化コバルトの混相若しくはこれらとコバルトの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
液相中に1〜1000nmの大きさの金属原料粒子、金属酸化物からなる原料粒子、炭化物からなる原料粒子、窒化物からなる原料分子、ホウ化物からなる原料分子から選択した一以上の原料粒子を分散させ、この液相中の粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm2以下の弱いレーザー光を照射して、金属球状ナノ粒子、酸化物球状ナノ粒子、炭化物球状ナノ粒子、窒化物球状ナノ粒子、硼化物球状ナノ粒子又はこれらの混合粒子若しくは複合構造の粒子を生成させることを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項14】
有機溶媒又は窒素化合物若しくはホウ素化合物を含有する有機溶媒からなる分散液中に、1〜1000nmの大きさの金属原料粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化物、窒化物又はホウ化物からなる球状粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項15】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化タングステン粒子、タングステンに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化タングステンの混相若しくはこれらとタングステンの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項16】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化亜鉛粒子、亜鉛に酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化亜鉛の混相若しくはこれらと亜鉛の混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元あるいは酸化反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項17】
液相中に分散させる原料酸化物粒子として、酸化チタン粒子、チタンに酸化物層が被覆された粒子、複数の酸化チタンの混相若しくはこれらとチタンの混相又は固溶相からなる粒子、又はこれらの混合物の粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元あるいは酸化反応を起こさせ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項18】
液相中に分散させる原料粒子として、粉砕したシリコン粒子を使用し、該粒子にレーザー光を照射して球状ナノ粒子を形成する際に、請求項2〜7のいずれか一項の方法を用いることを特徴とする球状シリコンナノ粒子の製造方法。
【請求項19】
原料粒子としてホウ素ナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にホウ素ナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化ホウ素を生成させ、その後液相中の反応生成物を硝酸処理して、未反応のホウ素を除去し、炭化ホウ素粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項20】
原料粒子としてホウ素ナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にホウ素ナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化ホウ素を生成させ、その後液相中の反応生成物を硝酸処理して、未反応のホウ素を除去し、炭化ホウ素粒子を製造する際に、請求項3〜7のいずれか一項の方法を用いて炭化ホウ素粒子を製造することを特徴とする球状シリコンナノ粒子の製造方法。
【請求項21】
原料粒子としてタングステンナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にタングステンナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液とタングステン粒子と反応させて炭化タングステン粒子を生成させ、その後液相中の未反応のタングステンを除去し、炭化タングステン粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項22】
原料粒子としてタングステンナノ粒子を使用し、有機溶媒からなる分散液にタングステンナノ粒子を導入し、この分散液中に非集光でレーザー光を照射することにより前記分散液と溶融した粒子と反応させて炭化タングステン粒子を生成させ、その後液相中の未反応のタングステンを除去し、炭化タングステン粒子を製造する際に、請求項3〜7のいずれか一項の方法を用いて炭化タングステンナノ粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項23】
原料粒子として金属粒子と酸化物粒子を使用し、これらの粒子にレーザー光を照射して原料酸化物粒子に還元反応を起こさせると共に、金属粒子との複合体を形成させ、これにより球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項24】
前記請求項23で得られた球状ナノ粒子を、酸又はアルカリで処理して、金属ナノ粒子又は酸化物ナノ粒子の一方を溶解させて除去し、残存する他方の金属ナノ粒子又は酸化物ナノ粒子のポーラスな粒子を製造することを特徴とする球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項25】
原料粒子として光学吸収があり還元反応を行うナノ粒子と光学吸収のない金属酸化物ナノ粒子を使用し、これらの粒子にレーザー光を照射して前記酸化物粒子に還元反応を起こさせて、光学吸収のない金属酸化物ナノ粒子から金属の球状ナノ粒子を形成することを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の球状ナノ粒子の製造方法。
【請求項26】
原料粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、原料粒子を溶融させ、その後液相中で急冷することにより得られた10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子。
【請求項27】
液相中の金属酸化物からなる原料粒子に1レーザーパルスあたり0.5J/cm以下のレーザー光を照射して、該液相中で原料酸化物粒子に還元反応を起こさせ、これにより得られた金属球状ナノ粒子若しくは還元球状ナノ粒子又はこれらの複合構造の粒子からなる10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子。
【請求項28】
請求項1〜25の製造方法によって得られる10〜1000nmの大きさの球状ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−74485(P2011−74485A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165560(P2010−165560)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】