説明

産業機器のコントローラ

【課題】吸気口を通じて筐体内部に吸入される空気を通過させるフィルタの汚れ具合を精度よく判断することができる産業機器のコントローラを提供する。
【解決手段】吸気口18を複数の開口18aにより細分化された構成とし、吸気口18を通じて吸入される空気の流速を高め得るようにする。フィルタ26は、取付枠24、25に取り付けられた状態において、筐体11の前後方向に移動可能とする。取付枠24、25にフィルタ26が取り付けられた状態で、互いに対向するような位置に筐体側電極23およびフィルタ側電極27を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から吸気口を通じて筐体内部に吸入される空気を通過させるように設けられたフィルタを備えた産業機器のコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
産業機器のコントローラ、例えば産業用ロボットのコントローラは、工場において使用されることが多い。この工場の中には、製造する製品の種類や製造設備の運転方法などによっては、油ミスト、塵、埃などのごみが浮遊している場合もある。また、このようなコントローラは、内部に設けられる電子回路や電気回路において発生する熱を除去するため、内部を空冷する機構を備えている。すなわち、コントローラは、外部の空気を吸気口を通じて筐体内部に取り入れるとともに、筐体内部の空気を排気口を通じて外部に排出するファンを備えている。
【0003】
また、コントローラには、ファンの駆動により外部の空気を内部に取り入れる際に、前述したごみ等が筐体内部に進入することを防止するため、吸気口にフィルタが設けられている。このようなフィルタは、付着したごみを自動的に取り除くいわゆる自動清掃機能を備えていないのが一般的である。従って、コントローラを稼動させると、フィルタにごみが付着してやがては目詰まりするので、所定の期間経過後にフィルタの交換を行う必要がある。
【0004】
フィルタを交換する時期の判断は、その汚れ具合を例えば目視により確認して行われることが多い。しかし、コントローラは、棚に収容されたり、他の機器と近接して設置されたりするため、その設置状況によっては、フィルタ部分を目視することが困難となる。この場合、コントローラを一定期間稼動させる度に無条件でフィルタの交換を行うことが考えられる。しかし、フィルタの汚れ具合は周囲の環境などにも依存するため一定ではないので、上記したように定期的な交換を行うと、あまり汚れていないフィルタをむやみに新品に交換してしまったり、目詰まりが酷くなってもなかなか交換されないという事態が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、フィルタの汚れ具合を自動的に判断し、その交換時期を予測することが考案されている。例えば特許文献1には、化繊フィルタにカーボンかすが付着することで、その電気抵抗が変化する点に着目して化繊フィルタの汚れ具合を判断する技術が開示されている。すなわち、化繊フィルタに取り付けた電極間の電気抵抗を検出し、その電気抵抗が高い場合には化繊フィルタがきれいな状態であると判断し、電気抵抗が低い場合には化繊フィルタが汚れた状態であると判断する。
【0006】
また、特許文献2には、フィルタにごみが付着して目詰まりすると、排気ファンにより装置の内部が減圧されることを利用してフィルタの汚れ具合を判断する技術が開示されている。すなわち、フィルタが目詰まりして内部が減圧されるとフィルタがファン側に引き寄せられるので、このフィルタの移動に伴ってオンオフされるスイッチを設け、このスイッチのオンオフに応じてフィルタの汚れ具合を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−56046号公報
【特許文献2】特開平8−5123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2に開示された技術を上記コントローラに適用しようとする場合、以下のような問題が生じる。すなわち、コントローラが設置される環境によっては、例えば塵や埃などの非導電性のごみも浮遊しているため、フィルタに付着するごみが導電性のものであることを前提とする特許文献1記載の技術ではフィルタの汚れ具合を正確に判断することが難しい。また、コントローラの外殻を形成する筐体には、コネクタ用の開口における隙間や筐体を構成するカバー間の隙間などが存在するため、その内部は密閉されていない状態となっている。従って、このようなコントローラにおいては、フィルタの目詰まりにより筐体内部に減圧状態を作り出せないため、特許文献2記載の技術を適用することができない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、吸気口を通じて筐体内部に吸入される空気を通過させるフィルタの汚れ具合を精度よく判断することができる産業機器のコントローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の手段によれば、筐体の外部において吸気口に対向して設けられたフィルタが汚れていない状態でファンが駆動された場合、フィルタにおける空気抵抗が小さいため、外部の空気はほとんどフィルタおよび吸気口を通じて筐体内部に吸入されるとともに、筐体内部の空気は排気口を通じて外部に排出される。ここで、吸気口が複数の開口により細分化された構成となっているので、吸気口を通じて吸入される空気の流速が高められる。このため、空気の吸入方向に移動可能に設けられたフィルタは、この空気の吸入作用により筐体側に移動され、筐体に形成された吸気口に吸着するように押し付けられた状態となる。この筐体には、フィルタと対向する面に筐体側電極が設けられている。また、フィルタには、筐体側電極と対向する位置にフィルタ側電極が設けられている。従って、上記したフィルタの移動に伴って、これら筐体側電極とフィルタ側電極とが接触した状態となり、通電経路が形成される。フィルタ汚れ判断手段は、この通電経路の形成状態に基づいてフィルタの汚れ具合を判断する。この場合には、通電経路が形成されているため、フィルタが汚れていないと判断する。
【0011】
一方、フィルタが汚れて目詰まりしている状態でファンが駆動された場合、フィルタにおける空気抵抗が大きくなるため、外部の空気の吸入経路が以下のように変化する。すなわち、コントローラの筐体は、複数の部材の組み合わせにより構成されているため、内部を密閉状態にすることは難しく、必ず隙間が存在している。このため、フィルタが目詰まりしている状態でファンが駆動された場合、外部の空気は、主として上記隙間から筐体内部に吸入される。ただし、この状態においてフィルタを通じた空気の流れは完全には無くならず、空気抵抗が比較的小さいフィルタの端部を介して外部の空気が少しずつ吸入されている。しかし、この端部を介して吸入される空気の流入量は小さく、吸気口における空気の流速はフィルタが正常なときのように高められない。従って、フィルタが吸気口に押し付けられないか、または、フィルタが吸気口に押し付けられたとしても、その状態は短時間で解除される。このように、フィルタが吸気口に押し付けられる状態が解除されるため、筐体側電極とフィルタ側電極とが離間され、通電経路は形成されない。この場合、フィルタ汚れ判断手段は、通電経路が形成されていないため、フィルタが汚れていると判断する。
【0012】
このような構成によれば、筐体の内部が密閉された状態ではない産業機器のコントローラにおいて、導電性、非導電性のごみが付着することによるフィルタの汚れ具合を精度よく判断することが可能となる。また、このように、吸気口の構造に工夫を施すとともに、フィルタおよび筐体にそれぞれ電極を設けるだけで、フィルタの汚れ具合を判断できるので、構造が複雑化することがないとともに、それに伴う組立作業の複雑化を抑制できる。
【0013】
請求項2記載の手段によれば、フィルタ汚れ判断手段は、通電経路が形成されていない状態が所定時間だけ継続すると、フィルタが汚れていると判断する。フィルタが汚れていない状態であっても、例えば振動などによりフィルタが吸気口に押し付けられている状態が解除することも考えられる。ただし、この場合にはフィルタおよび吸気口を通じた空気の吸入作用は生じているため、フィルタは吸気口から一旦離れた後、直ちに吸気口に吸着される。つまり、通電経路は、一旦形成されていない状態になった後、直ちに形成された状態に戻る。このような振動等による一時的な通電経路の形成状態の変化を検出しない程度に上記所定時間を設定すれば、フィルタの汚れ具合の誤判断を抑制できる。
【0014】
請求項3記載の手段によれば、フィルタ汚れ判断手段は、所定の単位期間中に通電経路が形成されている期間がしきい値期間より低下した場合、フィルタが汚れていると判断する。請求項2記載の手段と同様、振動等による一時的な通電経路の形成状態の変化を検出しない程度に上記しきい値期間を設定すれば、フィルタの汚れ具合の誤判断を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示すコントローラの外観斜視図
【図2】フィルタ取付部分の構成を示す一部断面を含む斜視図
【図3】コントローラの内部を示す断面図
【図4】ロボットシステムの構成を示す斜視図
【図5】各電極の接触状態を検出するための検出回路を示す電気的構成図
【図6】フィルタが汚れている場合の図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図4は、一般的な産業用ロボットのシステム構成を示している。この図4に示すロボットシステム1は、ロボット本体2(産業機器に相当)と、このロボット本体2を制御するコントローラ3と、このコントローラ3に接続されたティーチングペンダント4とから構成されている。
【0017】
ロボット本体2は多関節型として構成され、ベース5と、このベース5に水平方向に旋回可能に支持されたショルダ部6と、このショルダ部6に上下方向に旋回可能に支持された下アーム7と、この下アーム7に上下方向に旋回可能に支持された上アーム8と、この上アーム8に上下方向に旋回可能に支持された手首9とから構成されている。手首9は、先端部に回転(捻り動作)可能なフランジ10を備えている。なお、図示しないが、ワークを把持するハンドはフランジ10に取り付けられるようになっている。
【0018】
図1〜図3は、コントローラ3の構成を概略的に示している。図1はフィルタを取り外した状態を示しており、図2および図3はフィルタを取り付けた状態を示している。以下、コントローラ3の構成について図1〜図3を参照して説明する。コントローラ3の筐体11は、底面板12に側面板13、14、背面板15、前面板16を組み付けるとともに、その上面を覆うように天板17を取り付けることにより矩形箱状に形成されている。背面板15の図1中、右側には、外部の空気を筐体11内部に取り入れるための吸気口18が形成されている。背面板15の図1中、左側下部には、コネクタ19、20を取り付けるための開口部21、22が設けられている。
【0019】
吸気口18は、横長の矩形状をなす複数の開口18aにより細分化された構成であり、これら開口18aは上下方向に所定の間隔おきに形成されている。ただし、この開口18aは、吸気口18の中央部分には形成されていない。この中央部分には矩形板状をなす筐体側電極23が取り付けられている。吸気口18の上側および下側には、取付枠24、25が設けられている。この取付枠24、25には、フィルタ26が着脱自在に取り付けられる。
【0020】
フィルタ26は、例えば化繊フィルタであり、吸気口を通じて筐体11内部に吸入される空気を通過させて当該空気中のごみ等を捕獲する。フィルタ26は、吸気口18の全面を覆うことが可能な大きさの矩形板状をなしている。フィルタ26のほぼ中央部の筐体11側には、フィルタ側電極27が取り付けられている。フィルタ側電極27は、筐体側電極23よりも小さい矩形板状をなしている。これら筐体側電極23とフィルタ側電極27は、取付枠24、25にフィルタ26が取り付けられた状態で、互いに対向するように配置されている。
【0021】
フィルタ26は、取付枠24、25に取り付けられた状態において、筐体11の前後方向(図2中矢印で示す方向、図3中の左右方向)に移動可能に設けられている。つまり、フィルタ26は、吸気口18を通じて筐体11内部に取り入れられる空気の吸入方向に移動可能となっている。図3に示すように、フィルタ26が最も筐体11側に移動した場合には、筐体側電極23とフィルタ側電極27とが接触するようになっている。
【0022】
図3に示すように、筐体11の前面板16には、筐体11内部の空気を外部に排出するための排気口28が形成されている。また、筐体11内部には、ファン29が設けられている。このファン29は、コントローラ3に電源が供給されている期間中、常時駆動されるようになっている。ファン29が駆動されることにより、外部の空気が吸気口18を通じて筐体11内部に吸入されるとともに、筐体11内部の空気が排気口28を通じて外部に排出される。
【0023】
図5は、筐体側電極23とフィルタ側電極27の接触状態を検出する検出回路の電気的構成を示している。この図5に示すように、検出回路31は、フォトカプラ32および抵抗R1、R2により構成されている。フィルタ側電極27は、電源線33に接続されている。筐体側電極23は、抵抗R1およびフォトカプラ32の一次側ダイオードD1を介して接地線34に接続されている。フォトカプラ32の二次側トランジスタT1のエミッタは接地線35に接続されており、コレクタは抵抗R2を介して電源線36に接続されている。二次側トランジスタT1のコレクタの電圧Vdetは、制御部37に与えられている。電源線36と接地線35との間に印加される直流電圧Vccは、制御部37の動作用電源を生成する電源回路から供給される。一方、電源線33と接地線34との間に印加される直流電圧VDDは、上記制御部の動作用電源を生成する電源回路とは異なる系統の電源回路から供給される。
【0024】
このような構成により、フィルタ側電極27と筐体側電極23とが接触している状態(図5中実線で示す状態)では、電源線33からフィルタ側電極27、筐体側電極23、抵抗R1およびダイオードD1を介して接地線34に通じる通電経路が形成される。これにより、トランジスタT1がオンし、電圧Vdetは接地線35と同じ電圧(例えば0V)となる。また、フィルタ側電極27と筐体側電極23とが接触していない状態(図5中破線で示す状態)では、上記通電経路が形成されない。このため、トランジスタT1がオフし、電圧Vdetは電源線36とほぼ同じ電圧(例えば+5V)となる。
【0025】
制御部37(フィルタ汚れ判断手段に相当)は、CPU、ROM、RAMなどを備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御部37は、電圧Vdetの電圧値に基づいて以下のようにフィルタ26の汚れ具合を判断する。すなわち、制御部37は、電圧Vdetの電圧値が+5Vである状態が所定時間だけ継続するという条件を満たすと、フィルタ26が汚れていると判断する。また、制御部37は、上記条件を満たさない場合にはフィルタ26が正常であると判断する。このような判断の理由については、作用説明にて後述する。制御部37は、フィルタ26が汚れていると判断すると、その旨をユーザに報知するための制御を実行する。例えば、所定の表示ランプを点灯させたり、ブザーを鳴らしたりする制御を実行する(いずれも図示せず)。
なお、上記したコントローラ3の構造や部品等の配置については、後述する本実施形態の作用および効果の説明を分かり易くするために模式的に表している。従って、実際の構造や部品等の配置についてはこの限りではない。
【0026】
次に、上記構成の作用について説明する。
まず、フィルタ26が汚れていない状態でファン29が駆動される場合の動作について図3および図5を参照しながら説明する。フィルタ26が汚れていない場合にはその空気抵抗が小さい。このため、図3に実線の矢印で示すように、ファン29の駆動に伴い、外部の空気は、ほとんどフィルタ26および吸気口18を通じて筐体11内部に吸入される。また、筐体11内部の空気は排気口28を通じて外部に排出される。
【0027】
本実施形態の吸気口18は、複数の開口18aにより細分化された構成となっている。このため、上記した吸気口18を通じて吸入される空気の流速が高められ、この高い流速の空気によりフィルタ26が筐体11側に押し付けられる。この際、汚れがあまり付着していないフィルタ26は軽いため、上記押し付け作用がより強まる。これにより、フィルタ側電極27と筐体側電極23とが接触した状態となり、図5に実線で示すように通電経路が形成される。通電経路が形成されると、フォトカプラ32のトランジスタT1がオンして電圧Vdetが0Vとなる。制御部37は、電圧Vdetが0Vであるため、フィルタ26が正常であると判断する。
【0028】
続いて、フィルタ26が汚れて目詰まりしている状態でファン29が駆動される場合の動作について図5および図6を参照しながら説明する。フィルタ26が汚れている場合にはその空気抵抗が大きい。このため、外部の空気は、吸気口18以外の部分を主体として筐体11内部に吸入される。すなわち、図6に実線の矢印で示すように、外部の空気は、筐体11を構成する底面板12、側面板13、14、背面板15、前面板16および天板17の組み合わせ部分における隙間や、コネクタ19、20とこれを取り付けるために形成された開口部21、22との隙間などから筐体11内部に吸入される。
【0029】
ただし、この状態において、フィルタ26を通じた空気の流れは完全には無くならず、図6に破線の矢印で示すように、空気抵抗が中央部と比較して小さい端部を通じて外部の空気が少しずつ吸入されている。しかし、このフィルタ26の端部を通じて吸入される空気の流入量は小さく、吸気口18における空気の流速をフィルタ26が正常なときのように高めることができない。従って、フィルタ26は吸気口18に押し付けられないか、または、フィルタ26が吸気口18に押し付けられたとしても、その状態は短時間で解除される。
【0030】
これにより、フィルタ側電極27と筐体側電極23とが離間した状態となり、図5に破線で示すように通電経路が形成されない。通電経路が形成されていないため、フォトカプラ32のトランジスタT1がオフして電圧Vdetが+5Vとなる。制御部37は、電圧Vdetが+5Vの状態が所定時間だけ継続すると、フィルタ26が汚れていると判断する。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば次のような効果が得られる。
コントローラ3は、吸気口18を複数の開口18aにより細分化された構成とし、吸気口18を通じて吸入される空気の流速を高め得るようにした。これにより、フィルタ26が正常でありその空気抵抗が小さい状態でファン29が駆動されると、高い流速の空気によりフィルタ26が筐体11側に押し付けられ、筐体側電極23とフィルタ側電極27とが接触して通電経路が形成される。一方、フィルタ26が汚れておりその空気抵抗が大きい状態でファン29が駆動されると、筐体11の隙間などから空気が流入され、フィルタ26を通じた空気の流入が弱まる。このため、フィルタ26が筐体11側に押し付けられる作用が弱まり、通電経路が形成されない。制御部37は、検出回路31を介して通電経路の形成状態を検出し、その形成状態の変化に基づいてフィルタ26の汚れ具合を判断する。このように、筐体11の内部が密閉されていないコントローラ3において、通電経路の形成状態に基づいてフィルタ26の汚れ具合を精度よく判断することができる。ユーザは、フィルタ26が汚れていると判断されるときに、その交換を行えばよい。これにより、フィルタ26の交換を適切な時期に行うことができる。
【0032】
上記したとおり本実施形態は、ごみの付着量、つまりフィルタ26を通じた空気の流入量と、吸入される空気によるフィルタ26の移動作用との関係に着目してなされている。このため、フィルタ26に付着するごみの種類(導電性、非導電性)に関わらず、フィルタ26の汚れ具合を精度よく判断できる。
【0033】
吸気口18の構造に上記したような工夫を施すとともに、筐体11およびフィルタ26にそれぞれ筐体側電極23およびフィルタ側電極27を設けるだけで、フィルタ26の汚れ具合を判断できるので、コントローラ3の構造が複雑化することがないとともに、それに伴う組立作業の複雑化を抑制できる。
【0034】
制御部37は、電圧Vdetの電圧値が+5Vである状態、つまり通電経路が形成されていない状態が、所定時間だけ継続するという条件を満たすとフィルタ26が汚れていると判断し、上記条件を満たさない場合にフィルタ26が正常であると判断する。フィルタ26が汚れていない状態であっても、例えば振動などによりフィルタ26が筐体11に押し付けられている状態が解除することも考えられる。ただし、この場合には吸気口18付近の空気の流速は高められているため、フィルタ26は筐体11側から一旦離れた後、直ちに筐体11側に押し付けられる。このような振動などによる一時的なフィルタ26の移動に伴う通電経路の形成状態の変化を検出しない程度に上記所定時間を設定することで、フィルタ26の汚れ具合の誤判断を抑制できる。
【0035】
例えばファン29に異常が生じてその回転速度が低下すると、吸気口18を通じた空気の流速が低下する。これにより、フィルタ26が正常である場合でも、筐体側電極23とフィルタ側電極27が離間した状態となり、通電経路が形成されない。このことを利用すれば、以下のように、ファン29の故障監視を行うこともできる。すなわち、制御部37によりフィルタ26が汚れていると判断され、フィルタ26を新品に交換したにも関わらず、まだフィルタ26が汚れているという判断がなされた場合には、ファン29に故障などの異常が生じていると判断することができる。
【0036】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
制御部37は、電圧Vdetの電圧値の変化に基づいてフィルタ26の汚れ具合を判断すればよい。例えば、コントローラ3に電源が供給されている状態において、電圧Vdetの電圧値が0Vから+5Vに転じた時点でフィルタ26が汚れていると判断してもよい。また、所定の単位期間中に電圧Vdetの電圧値が0Vである期間(通電経路が形成されている期間)よりも+5Vである期間(通電経路が形成されていない期間)のほうが長いという条件を満たすとフィルタ26が汚れていると判断してもよい。すなわち、制御部37は、所定の単位期間中における通電経路が形成されている期間と通電経路が形成されていない期間との割合に基づいてフィルタ26の汚れ具合を判断してもよい。
【0037】
コントローラ3において、コネクタ19、20とこれを取り付けるために形成された開口部21、22との隙間は、例えば接着剤などにより塞ぐことが可能である。ただし、このようにしても、筐体11を構成する底面板12、側面板13、14、背面板15、前面板16および天板17の組み合わせ部分における隙間が必ず存在するため、フィルタ26が汚れている状態における筐体11内部の空気の流れが大きく変わることはない。吸気口18は、複数の開口により細分化された構成であればよく、例えば複数の矩形状の開口を格子状に配置した構成であってもよい。また、これら開口の形状は矩形状に限らず、例えば円形状であってもよい。
検出回路31は、筐体側電極23とフィルタ側電極27が接触することで形成される通電経路を備えた構成であればよい。例えば、フォトカプラ32に代えて、NPN形トランジスタを用い、このトランジスタのベースを筐体側電極23に接続するとともに抵抗R1を介して接地線35に接続する構成でもよい。この場合、直流電圧VDDと直流電圧Vccを同一電源にできる。また、電圧Vdetの出力段の構成についても適宜変更可能である。
【0038】
フィルタ26を取付枠24、25に取り付けた状態で、フィルタ26を筐体11から離す方向への力を加える付勢手段を設けてもよい。これにより、フィルタ26を通じた空気の吸入作用が弱まると、筐体側電極23とフィルタ側電極27との接触状態が積極的に解除されるので、フィルタ26の汚れ具合の検出精度が向上する。この付勢手段としては、例えば、フィルタ26と筐体11との間にばねなどの弾性部材を配置する構成が考えられる。または、背面板15のフィルタ26と対向する部分について、天板17側が底面板12側よりも前方に突出するような形状とした傾斜を設けることが考えられる。
本発明は、6軸制御の産業用ロボットを制御するコントローラ3に限らず、その他の多関節ロボット、スカラロボット、各種の工作機械などの産業機器を制御するコントローラ全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0039】
図面中、2はロボット本体(産業機器)、3はコントローラ、11は筐体、18は吸気口、18aは開口、23は筐体側電極、26はフィルタ、27はフィルタ側電極、28は排気口、29はファン、37は制御部(フィルタ汚れ判断手段)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部材を組み合わせてなる筐体と、
外部の空気を吸入するために前記筐体に形成された吸気口と、
前記筐体内の空気を外部に排出するために前記筐体に形成された排気口と、
外部の空気を前記吸気口を通じて前記筐体内部に吸入するとともに、前記筐体内部の空気を前記排気口を通じて外部に排出するファンと、
前記吸気口を通じて前記筐体内部に吸入される空気を通過させるように前記筐体の外部において前記吸気口に対向するとともに空気の吸入方向に移動可能に設けられたフィルタと、
前記筐体の前記フィルタと対向する面に設けられた筐体側電極と、
前記フィルタの前記筐体側電極と対向する位置に設けられたフィルタ側電極と、
前記筐体側電極と前記フィルタ側電極とが接触することにより形成される通電経路と、
前記通電経路の形成状態に基づいて前記フィルタの汚れ具合を判断するフィルタ汚れ判断手段とを備え、
前記吸気口は、複数の開口により細分化された構成となっていることを特徴とする産業機器のコントローラ。
【請求項2】
前記フィルタ汚れ判断手段は、前記通電経路が形成されていない状態が所定時間だけ継続すると、前記フィルタが汚れていると判断することを特徴とする請求項1記載の産業機器のコントローラ。
【請求項3】
前記フィルタ汚れ判断手段は、所定の単位期間中に前記通電経路が形成されている期間がしきい値期間より低下した場合、前記フィルタが汚れていると判断することを特徴とする請求項1記載の産業機器のコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−207719(P2010−207719A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56352(P2009−56352)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】