説明

田植機

【課題】田植機のミッションケースに整地装置の駆動機構を設けるとなると、出力軸がさらに低い位置に配置されることになり、最低地上高が更に低くなり、圃場下方の障害物と干渉する恐れがあった。
【解決手段】整地装置51の回転駆動力は後車輪12を駆動支持するリヤアクスルケース11より取り出し、該リヤアクスルケース11内の後車輪12駆動用のリヤ車軸14に対して、動力伝達上流側に配置される左右の中間軸24より動力を分岐して取り出し、この左右取り出した動力を再び合流軸となる動力伝動シャフト19に合流させて前記整地装置51に駆動力を伝達させる構成とし、左右の前記中間軸24と動力伝動シャフト19との間の動力伝達経路にそれぞれワンウェイクラッチ41を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部の前方に圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、ミッションケースに整地装置用の駆動機構を設けることなく、走行部から整地装置へ駆動力を伝達するようにした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植機の一形態として、走行部の後方に植付部を昇降自在に連結し、該植付部の前方に整地装置を具備した田植機は公知となっている(例えば「特許文献1」参照。)。
【特許文献1】特開平8−9730号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記「特許文献1」における整地装置への駆動伝達機構は、ミッションケース後部の左右中央部に設けられ、該駆動伝達機構に具備されるPTO出力軸を後方に延出し、ユニバーサルジョイントを介して整地装置の入力軸と連結することで構成されている。この場合、ミッションケース内に整地装置を駆動するための駆動機構は、走行部や植付部の駆動機構とは別に設ける必要があり、その分ミッションケースが大型化することになっていた。
【0004】
特に、小型四条クラスの田植機においては、比較的大型の田植機に比べて最低地上高が低く、ミッションケースの中央部近傍には植付部駆動用のPTO出力軸が配置されるため、整地装置用のPTO出力軸をミッションケースの左右中央部近傍、かつ、後部から後方に向かって延出する場合には、スペース的に余裕がなく、ミッションケース内に駆動機構を設けることは困難であった。
【0005】
また、小型四条クラスの田植機において、ミッションケースに整地装置の駆動機構を設けるとなると、出力軸がさらに低い位置に配置されることになり、最低地上高が更に低くなり、圃場下方の障害物と干渉する恐れがあった。
【0006】
そこで、本発明は、植付部の前方に、圃場面を均す整地装置の駆動伝達機構は、後輪を駆動するためのリヤアクスルケースから左右に動力を取り出して、合流後に伝動軸等を介して整地装置に動力を伝えるようにする。更に、左右一側のリヤアクスルケースから動力を取り出すと、サイドクラッチが切られると駆動できない状態が生じるので、両側のリヤアクスルケースから動力を取り出して合流させて整地装置に動力を伝え、逆回転の動力を伝えないように構成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
即ち、請求項1においては、植付部の前方に、回転運動によって圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、該整地装置の回転駆動力は後車輪を駆動支持するリヤアクスルケースより取り出す構成であって、該リヤアクスルケース内の後車輪駆動用の最終伝達軸に対して、動力伝達上流側に配置される左右の中間軸より動力を分岐して取り出し、この左右取り出した動力を再び合流軸に合流させて前記整地装置に駆動力を伝達させる構成とし、左右の前記中間軸と合流軸との間の動力伝達経路にそれぞれワンウェイクラッチを配置するものである。
請求項2においては、前記リヤアクスルケースは左右方向に延出する中ケース体と、該中ケース体の左右両端部を塞ぐ外ケース体とにより構成し、左右の外ケース体より前記中間軸の端部を外側方向に貫通させて突出して左右の中間ケースの一側に挿入し、該中間ケースは分岐後の動力伝達手段、及び、前記ワンウェイクラッチを収納するものである。
請求項3においては、前記ワンウェイクラッチより動力伝達下流側であって、整地装置への駆動力を断接するクラッチ機構を、前記合流軸と整地用出力軸との間に配置したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
請求項1においては、ミッションケース内に整地装置駆動用の駆動機構を設ける必要がないため、ミッションケースを大型化したり、最低地上高を低くしたりすることなく、従来のミッションケースがそのまま使用できて、後付けが可能となる。また、整地装置は後車輪の回転数よりも大きくする必要があり、リヤアクスルケース内の後車軸に対し減速する前の中間軸より動力を取り出して整地装置へ伝達するため、増速するための伝動機構を簡単にできる。また、左右両側の中間軸より動力を取り出して、左右から合流して整地装置へ動力を伝達するため、左右いずれかのサイドクラッチが作動されて動力の伝達が断たれても、左右他方から動力が伝達されて、常時駆動させることができる。更に、ワンウェイクラッチにより整地装置は逆回転することがなく、逆方向(前上方)への泥はねも生じることがない。また、左右取り出した動力に回転差が生じていても、合流軸に過負荷がかかることがない。
請求項2においては、ワンウェイクラッチは中間ケース内にコンパクトに収納されることになり、また、メンテナンス等もやり易くなる。
請求項3においては、動力を左右取り出した経路毎にクラッチ機構を配置する必要がなく、一カ所だけでよくなり、部品点数や質量等を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施例に係る田植機の全体構成を示す側面図、図2はリヤアクスルケース全体を示す平面断面図、図3はリヤアクスルケースから整地装置への動力伝達経路を示す模式図、図4は整地装置への動力取出機構を示す平面断面図である。
【0011】
まず、本発明の一実施例に係る田植機1の全体構成について、図1を用いて説明する。なお、以下の説明では図中に示す矢印Aの方向を前方向とする。
【0012】
田植機1は走行部2と植付部3とを備え、走行部2の後部に植付部3を昇降機構4により昇降可能に連結して構成されている。走行部2は機体フレーム5を備え、その前部に設けたボンネット7内にエンジンが搭載され、その後下方にはミッションケース6が配設されている。
【0013】
ミッションケース6の前部の左右両側方には、図示せぬフロントアクスルケースが配設されており、該フロントアクスルケースの左右両側にそれぞれ前車輪10・10が取り付けられている。また、機体フレーム5の後部にはリヤアクスルケース11が設けられ、該リヤアクスルケース11の左右両側にそれぞれ後車輪12・12が取り付けられている。
【0014】
そして、エンジンとミッションケース6が伝動ベルトを介して連動連結され、さらにミッションケース6内で変速されてフロントアクスルケースとリヤアクスルケース11内の動力伝達機構を介して前車輪10及び後車輪12に動力が伝達されるように構成している。
なお、本実施例においては、ミッションケース6(図2を参照。)と、リヤアクスルケース11と、は一体的に形成されて、走行ミッション8としている。
【0015】
また、走行部2には、機体フレーム5の前後中央部に運転操作部15が配置されている。この運転操作部15では、前部に走行部2の操向操作を行うためのステアリングハンドル16や、走行部2の変速操作を行うための変速ペダルなどが設けられる。一方、ステアリングハンドル16の後方には座席17が設けられている。
【0016】
植付部3は植付フレーム21や植付用ミッション22や伝動軸ケース23や植付伝動ケース25や苗載台29や植付爪28などを備える。植付部3において、走行部2の後方に植付フレーム21が配設され、該植付フレーム21の中央下部に植付用ミッション22が設けられている。この植付用ミッション22から伝動軸ケース23が左右方向に延設され、該伝動軸ケース23から複数の植付伝動ケース25が適切な間隔をもって後方へ延設されている。植付伝動ケース25の後部にはロータリケース27を介して植付爪28が設けられている。
【0017】
そして、植付用ミッション22と各植付伝動ケース25の植付爪28とが伝動軸ケース23や植付伝動ケース25内の動力伝達機構を介して連動連結されて、走行部2のエンジンからPTO伝動軸66(図2、および、図6参照。)などを介して植付用ミッション22に伝達された動力が、該植付用ミッション22から植付爪28に伝達されて、該植付爪28が駆動されるように構成されている。
【0018】
植付伝動ケース25の上方には苗載台29が配置され、植付フレーム21の後部に左右往復動可能に取り付けられている。こうして、苗載台29が適宜の位置に左右方向に移動された後、植付爪28により当該苗載台29上に載置された苗マットから苗株が切り取られて、圃場に植え付けられるようになっている。
【0019】
また、植付伝動ケース25の下方にはフロート装置が設けられている。フロート装置では、センターフロート31とサイドフロート32・32とが備えられ、センサーフロートとなるセンターフロート31が左右中央に位置し、サイドフロート32・32が当該センターフロート31の左右両側に位置するように配置されている。これらのセンターフロート31とサイドフロート32・32とは後部で伝動軸ケース23と平行に左右方向に延設されたフロート支持体を介して上下方向に揺動可能に支持されている。
【0020】
走行部2と植付部3との間には、昇降機構4が設けられている。昇降機構4ではリヤアクスルケース11に立設された支持フレーム67と植付フレーム21の前下部に左右揺動自在に連結された支持ブラケットとの間にトップリンク42とロワリンク43とが架設され、該ロワリンク43の前部と走行部2との間に昇降用シリンダ44が連結されている。この昇降用シリンダ44が伸縮作動することによって、トップリンク42とロワリンク43とを介して植付部3が走行部2に対して昇降するように構成されている。
【0021】
ここで、昇降用シリンダ44は図示しない油圧駆動部の油圧バルブを切り換えることにより伸縮作動する構成とされている。そして、この油圧バルブと植付部3のセンターフロート31の前端部との間には、連動ワイヤが介設されており、該連動ワイヤによりセンターフロート31の揺動に連動して油圧バルブが作動され、昇降用シリンダ44が伸縮作動されるようになっている。これにより、センターフロート31で感知した圃場の植付面Gの高さに応じて植付部3を適宜昇降させて、苗の植付深さを一定に保持することができるようになっている。
【0022】
また、後車輪12とフロート31・32との間における昇降機構4の下方には、整地装置51が設けられている。整地装置51は植付部3のセンターフロート31やサイドフロート32の前方に配設され、機体左右方向に延出する整地ローラ52を具備し、走行部2のリヤアクスルケース11に設けられた動力取出機構35を介して、連動連結されている。
【0023】
また、前記植付フレーム21には、その左右両側に具備するブラケット(図示せず。)を介して、回動支軸55が回動自在に横架されており、該回動支軸55の下方には複数のリンク機構からなる支持材57が下方に延出して設けられている。該支持材57の下端部に昇降可能に整地装置51が支持されている。
【0024】
また、回動支軸55の中央部には機体前方に延出する昇降操作レバー56が取付けられ、該昇降操作レバー56を前後方向に回動することにより、支持材57を介して整地装置51を昇降させることができる。すなわち、昇降操作レバー56を前方へ回動すると、整地装置51は上昇し、逆に昇降操作レバー56を後方へ回動すると、整地装置51は下降する。
【0025】
こうして、リヤアクスルケース11に伝達された動力が動力取出機構35を介して整地ローラ52に伝達されて、該整地ローラ52が回転駆動されるように構成されている。これにより、整地装置51で圃場の枕地等の整地を可能としている。
【0026】
次に、本発明に係るリヤアクスルケース11から整地装置51へ動力を伝達する動力取出機構35の詳細について、図2、図3を用いて説明する。なお、以下の説明では図中に示す矢印Aの方向を前方向とする。また、本実施例におけるリヤアクスルケース11は、機体の前後方向に配設されるミッションケース6と一体構造となっているが、これに限定されるものではなく、両部材が独立した構造としてもよい。
【0027】
リヤアクスルケース11は平面視左右方向に延出して設けられ、かつ、その中央部において左右に二分割され、ボルト等により左右のケースが固設されている。リヤアクスルケース11の左右各々の内部には、中間軸24、および、リヤ車軸14が左右方向に横架されて前後平行に配設されており、中間軸24とリヤ車軸14はギアを介して連動される。
【0028】
中間軸24は最終伝達軸となるリヤ車軸14に対して動力伝達上流側に配設され、車体中央側の先端部にはリヤ中間ギア26が固設されるとともに、リヤアクスルケース11に軸受33を介して回転自在に軸支されている。また、他方側の端部においては、リヤ車軸14に固設されたファイナルギア(減速ギア)30と噛合するギア部24aが形成されており、該ギア部24aの外側の軸部は後述の外ケース体11bに軸受34を介して回転自在に軸支され、さらに、外ケース体11bを貫通して外部に突出されている。
【0029】
前記リヤアクスルケース11は左右方向に延出する中ケース体11aと、該中ケース体11aの左右両端部の開口を塞ぐように配設される外ケース体11bと、により構成される。外ケース体11bは側面視において、中ケース体11aの左右両端部おける前記開口部の外形に沿った略楕円形状に形成され、前記リヤ車軸14の配置される箇所は、すり鉢状に外側に向かって膨出し、その端面に円形の開口部11cが設けられ、該開口部11cに軸受を介してリヤ車軸14を支持し、該リヤ車軸14の他端は外側に向かって突出されている。このようにして、エンジンの駆動力がリヤ中間ギア26を介して中間軸24に伝達されと、ファイナルギア30を介してリヤ車軸14へと駆動力が伝わり、後車輪12が回転駆動される。
【0030】
また、前記外ケース体11bの前記中間軸24が配置される箇所には、円形の開口部11dが設けられており、該開口部11dに軸受34を介して中間軸24を支持し、その端部が外側に向かって突出されている。なお、中間軸24の外側突出部の先端にはスプロケット38が固設され、動力を取り出せるように構成している。
【0031】
リヤアクスルケース11の左右方向中央部では走行用ミッション8(図1参照。)からの駆動力を、サイドクラッチ機構68を介して前記リヤ中間ギア26へ伝達する構成としている。前記リヤ中間ギア26は摺動ギア62と噛合されており、左右の摺動ギア62・62はそれぞれ内側に爪部を形成し、センタースプロケット63の両側に形成した爪部と咬合されている。なお、センタースプロケット63にはチェン等を介して変速後の動力が伝達される。
【0032】
そして更に前記摺動ギア62は図示しないクラッチフォークに係合され、該クラッチフォークは前記ステアリングハンドル16に連動連結され、ステアリングハンドル16を設定角度以上回動すると、旋回方向側のクラッチフォークが回動されて、摺動ギア62が摺動され、前記爪部の咬合が解除されるように構成している。従って、旋回時等においてステアリングハンドル16が設定角度以上回動されると、センタースプロケット63から摺動ギア62に動力が伝達されず、左右一側の後車輪12が回転駆動されず、他側の後車輪12が回転駆動されるため、機体は前車輪10の左右回動に加えて更に小旋回することが可能となる。
【0033】
次に、本発明に係る動力取出機構35の詳細について、図2乃至図4を用いて説明する。
動力取出機構35は後車輪12の駆動用動力の一部を取り出し、整地装置51へ駆動伝達する機構であり、前記中間軸24の外側突出部と連結するべく、リヤアクスルケース11の左右両側前端部に設けられる。
【0034】
動力取出機構35は中間軸24の外側突出部に固設したスプロケット38や、中間軸24と平行に配置されて合流軸となる動力伝動シャフト19や、該動力伝動シャフト19の両端に配設されるスプロケット39・39や、該スプロケット39と動力伝動シャフト19の間に配設されるワンウェイクラッチ41や該スプロケット39と前記スプロケット38との間に巻回する駆動チェン20や、前記外ケース体11bと後車輪12の間に配置して分岐後の動力伝達手段を収納する中間ケース18や、前記動力伝動シャフト19を収納して左右の中間ケース18・18間に横架する連結ケース58等を備える。なお、動力取出機構35は左右略対称に構成されるため、左右一側について説明する。
【0035】
前記中間ケース18は側面視にて略長方形状、あるいは、楕円形状からなる箱形のケース体であり、左右方向で外ケース体11bと後車輪12との間に配置し、リヤアクスルケース11の左側面より側面視で前斜上方に向かって延出するよう配置され、ボルト等を介して前記外ケース体11bに組み付けられて固定されている。該中間ケース18は平面視において左右に分割され、ボルト等により両者を着脱可能に固設されている。
【0036】
中間ケース18の後部の内側(リヤアクスルケース11側の側面)には、外ケース体11bを貫通して外部に突出した中間軸24の端部を挿入できるように開口部を形成している。該中間軸24の端部にスプロケット38が固設される。また、中間ケース18の前部は、内側に貫通孔を開口して動力伝動シャフト19の一端部を挿入して回転自在に支持している。該動力伝動シャフト19の端部上にワンウェイクラッチ41を介してスプロケット39が取り付けられる。前記スプロケット38と前記スプロケット39には駆動チェン20が巻回され、中間軸24から動力伝動シャフト19に動力が伝達されるように駆動連結される。但し、ワンウェイクラッチ41は中間軸24とスプロケット38との間に介装する構成であってもよい。なお、前記中間軸24、および、動力伝動シャフト19の端部は、各々軸受61・61により回転自在に支持される。
【0037】
動力伝動シャフト19は上述の通り、前記中間軸24と平行に左右方向に設けられ、かつ、リヤアクスルケース11の前斜上方に配設されている。該動力伝動シャフト19の左端部は平面視において左側の中間軸24の左端部と略同位置に配置され、動力伝動シャフト19の右端部は平面視において、右側の中間軸24の右端部と略同位置に配置される。
【0038】
こうして、整地装置51の回転駆動力は後車輪12を駆動支持するリヤアクスルケース11より取り出す構成であって、該リヤアクスルケース11内の後車輪12駆動用の最終伝達軸となるリヤ車軸14に対して、動力伝達上流側に配置される左右の中間軸24より動力を分岐して取り出し、更にスプロケット38・39や駆動チェン20やワンウェイクラッチ41等の動力伝達手段を介して動力が合流軸となる動力伝動シャフト19に伝えて合流される構成としている。
【0039】
このような構成とすることにより、ミッションケース6内に整地装置51駆動用の駆動機構を設ける必要がないため、ミッションケース6を大型化したり、最低地上高を低くしたりすることなく、従来のミッションケースがそのまま使用できて、後付けが可能となる。また、整地装置51は後車輪12の回転数よりも大きくする必要があり、リヤアクスルケース11内の後車軸12に対し減速する前の中間軸24より動力を取り出して整地装置51へ伝達するため、増速するための伝動機構を簡単にできる。また、左右両側の中間軸24・24より動力を取り出して、左右から合流して整地装置51へ動力を伝達するため、左右いずれかのサイドクラッチ機構68が作動されて動力の伝達が断たれても、左右他方から動力が伝達されて、常時駆動させることができる。
【0040】
また、前記合流軸となる動力伝動シャフト19はミッションケース6またはリヤアクスルケース11の上方を跨ぐように配置しているため、動力伝動シャフト19はミッションケース6またはリヤアクスルケース11よりも高い位置に配置されることとなり、下方からの泥飛散等から保護でき、最低地上高を低くすることもないのである。
【0041】
また、左右の中間ケース18・18の間に動力伝動シャフト19が横架されて連結され、左右の前記中間軸24・24と合流軸となる動力伝動シャフト19との間の動力伝達経路にそれぞれワンウェイクラッチ41・41を配置する構成としたので、ワンウェイクラッチ41により整地装置51は逆回転することがなく、逆方向(前上方)への泥はねが発生せず、周囲を汚すことがない。また、左右取り出した動力に回転差が生じていても、動力伝動シャフト19に過負荷がかかることがない。
【0042】
そして、前記中間ケース18は分岐後のスプロケット38・39や駆動チェン20等の動力伝達手段、及び、前記ワンウェイクラッチ41を収納するので、ワンウェイクラッチ41は中間ケース18内にコンパクトに収納されることになり、後車輪12からの泥はね等から動力伝達手段やワンウェイクラッチ41等を保護できる。また、メンテナンス等もやり易くなるのである。
【0043】
左右の前記中間ケース18・18の前部内側間には連結ケース58が横設される。該連結ケース58内に合流軸となる動力伝動シャフト19が収納される。該連結ケース58は左右の筒状に構成された軸ケース59・59と、該軸ケース59・59の間に配設される出力軸ケース60を備える。連結ケース58はミッションケース6の後上方を跨ぐように配設され、或いは、左右一側の軸ケース59がミッションケース6の後部側面に固設して動力伝動シャフト19を貫通するように配設される。
【0044】
このように、分岐後の動力伝達手段を収納する中間ケース18が側面視にて前斜め上方に延出され、左右の中間ケース18・18の前方への突出側端部の内側は、動力伝動シャフト19を収納する連結ケース58で連結されるので、中間ケース18はリヤアクスルケース11の外ケース体11bと後車輪12の間の空間を有効利用して、分岐後の動力を伝達可能となる。そして、左右の中間ケース18・18の前側は連結ケース58で連結されるため、剛性を高めることができ、安定して後述する主力軸ケース60等を支持することができる。
【0045】
前記出力軸ケース60はミッションケース6の左右一側部に配置されてボルト等により固定される。このように、リヤアクスルケース11と、該リヤアクスルケース11の左右両側に固定する中間ケース18・18と、該中間ケース18・18の間に固定し、かつ、ミッションケース6に固定される連結ケース58とが、一体的に連結固定されるため、互いに強固に連結されることになって、剛性が高く強度アップを図ることができる。
【0046】
そして、前記ワンウェイクラッチ41より動力伝達下流側であって、整地装置51への駆動力を断接するクラッチ機構37を、前記動力伝動シャフト19と整地用出力軸9との間に配置している。つまり、前記出力軸ケース60には、前記動力伝動シャフト19が左右方向に貫通して回転自在に支持され、該出力軸ケース60内の動力伝動シャフト19の左右中途部にベベルギア36が固設され、該ベベルギア36と出力軸ケース60内に支持した整地用出力軸9の間にクラッチ機構37が配設される。
【0047】
更に詳述すると、出力軸ケース60は、略円筒状に形成して長手方向を機体前後方向に向けて後方へと延出し、前記リヤアクスルケース11の上方に配設される。前記出力軸ケース60の前部両側に前記軸ケース59・59の一端がそれぞれ連通して固設され、該出力軸ケース60と軸ケース59・59内に動力伝動シャフト19を回転自在に支持し、該出力軸ケース60内の動力伝動シャフト19上にベベルギア36が固設されている。
【0048】
そして、前記出力軸ケース60内には前後方向に整地用出力軸9が軸受を介して回転自在に支持され、整地用出力軸9の後端は出力軸ケース60の後面を貫通して突出されている。該整地用出力軸9の後端からユニバーサルジョイントや伝動軸を介して整地装置51に動力が伝達される構成としている。
整地用出力軸9は平面視にて動力伝動シャフト19に対して直交方向、かつ、側面視において後方に延出して設けられている。
【0049】
整地用出力軸9の前後中途部上にはベベルギア40が回転自在に遊嵌され、該ベベルギア40は前記ベベルギア36と噛合されている。前記ベベルギア40と整地用出力軸9との間にはクラッチ機構37が設けられており、中間軸24から取出された動力を容易に断接可能としている。また、前記クラッチ機構37は本実施例ではクラッチ爪の咬合により断接する構成としているが、ドッグ式や多板式等であってもよく限定するものではない。
【0050】
前記クラッチ機構37について図3、および、図4を用いて説明する。クラッチ機構37はベベルギア40や、摺動体45や、フォーク体46や、操作レバー等により構成される。
前記ベベルギア40の後部には爪部40aが形成されている。前記摺動体45は筒状に形成され、整地用出力軸9の後部に軸心方向に摺動可能、かつ、相対回転不能にスプライン嵌合されている。該摺動体45の前記ベベルギア40側端部(前端部)には、前記爪部40aと咬合する爪部45aが設けられる。
【0051】
前記摺動体45の内周部または後端と、整地用出力軸9の後部に設けられた断付き部9aとの間には弾性体として圧縮バネ48が外嵌されている。よって、前記摺動体45は該圧縮バネ48によってベベルギア40側に押され、爪部40aと爪部45aが咬合するように付勢されている。また、前記摺動体45の外周部には嵌合溝45bが形成され、該嵌合溝45bにフォーク体46の先端が嵌合されている。
【0052】
前記フォーク体46の基部は図示しない操作レバーのレバー軸に固設され、該操作レバーを作業者が操作することにより、クラッチを断接することができる。また、該操作レバーと前述の昇降操作レバー56を連係させてもよい。更に、該操作レバーはワイヤ54(図1)等を介して植付部3と連結し、植付部3の昇降に連動してクラッチ機構37が断接される構成としても良い。
【0053】
つまり、植付部3を下降すると、操作レバーが回動されてフォーク体46を介して摺動体45は前方に摺動され、摺動体45の爪部45aとベベルギア40の爪部40aが咬合されてクラッチ機構37が「接」となる。こうして、中間軸24からスプロケット38、駆動チェン20、スプロケット39、ワンウェイクラッチ41、動力伝動シャフト19、ベベルギア36・40、摺動体45から整地用出力軸9へと動力が伝達されるのである。また、植付部3を上昇すると、操作レバーが前記と逆方向に回動されると、前記圧縮バネ48の付勢力に抗して摺動体45が後方に摺動されて、爪部45aと爪部39aの咬合が解除され、ベベルギア40は整地用出力軸9上で空回りすることとなり、リヤアクスルケース11からの駆動力が断たれるのである。
【0054】
上述したように、前記ワンウェイクラッチ41より動力伝達下流側であって、整地装置51への駆動力を断接するクラッチ機構37を、前記動力伝動シャフト19と整地用出力軸9との間に配置したので、動力を左右取り出した経路毎にクラッチ機構を配置する必要がなく、一カ所だけでよくなり、部品点数や質量等を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施例に係る田植機の全体構成を示す側面図。
【図2】リヤアクスルケース全体を示す平面断面図。
【図3】リヤアクスルケースから整地装置への動力伝達経路を示す模式図。
【図4】整地装置への動力取出機構を示す平面断面図。
【符号の説明】
【0056】
6 ミッションケース
9 整地用出力軸
11 リヤアクスルケース
11a 中ケース体
11b 外ケース体
12 後車輪
14 リヤ車軸(最終伝達軸)
18 中間ケース
19 動力伝動シャフト(合流軸)
24 中間軸
35 動力取出機構
37 クラッチ機構
41 ワンウェイクラッチ
51 整地装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付部の前方に、回転運動によって圃場面を均す整地装置を具備した田植機において、該整地装置の回転駆動力は後車輪を駆動支持するリヤアクスルケースより取り出す構成であって、該リヤアクスルケース内の後車輪駆動用の最終伝達軸に対して、動力伝達上流側に配置される左右の中間軸より動力を分岐して取り出し、この左右取り出した動力を再び合流軸に合流させて前記整地装置に駆動力を伝達させる構成とし、左右の前記中間軸と合流軸との間の動力伝達経路にそれぞれワンウェイクラッチを配置する、ことを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記リヤアクスルケースは左右方向に延出する中ケース体と、該中ケース体の左右両端部を塞ぐ外ケース体とにより構成し、左右の外ケース体より前記中間軸の端部を外側方向に貫通させて突出して左右の中間ケースの一側に挿入し、該中間ケースは分岐後の動力伝達手段、及び、前記ワンウェイクラッチを収納する、ことを特徴とする請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記ワンウェイクラッチより動力伝達下流側であって、整地装置への駆動力を断接するクラッチ機構を、前記合流軸と整地用出力軸との間に配置した、ことを特徴とする請求項2に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−178124(P2009−178124A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21724(P2008−21724)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】