説明

田植機

【課題】オペレータが運転座席に座ったままで植付アーム近傍の様子を確認することができる田植機を提供する。
【解決手段】田植機1は、走行車体2と、植付部3と、植付部ミラー18と、を備える。走行車体2は、運転座席6を備える。植付部3は、苗の植付を行う植付アーム22と、植付アーム22に対して苗マットを供給する苗載台17と、を備え、走行車体2の後方に配置される。植付部ミラー18は、植付アーム22近傍の様子を運転座席6に座ったオペレータが確認するためのものである。また、走行車体2には施肥装置24を、植付部3には箱施用剤散布装置45を、それぞれ取り付け可能である。そして、植付部ミラー18は、植付アーム22近傍の様子を、苗載台17、並びに施肥装置24及び箱施用剤散布装置45に遮られずに運転座席6から確認することができる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、田植機が有するミラーの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型の田植機は、運転座席を有する走行車体と、走行車体の後方に配置された植付部と、を備える。植付部は、苗の植え付けを行う植付アームと、植付アームに苗を供給する苗載台と、を有する。この種の田植機は、例えば特許文献1に記載されている。なお、特許文献1に記載の田植機は、バックミラーを備えている。特許文献1は、このバックミラーによって、後方確認の際の後方視野を良好に確保することができるとしている。
【0003】
また、予備の苗を入れた苗箱を収容するための予備苗台を備えた田植機が知られている。このような予備苗台を備えた田植機は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−220293号公報
【特許文献2】特開2009−247298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オペレータが田植機の後方を確認したい場合は、特許文献1が備えるバックミラーによって確認できるので、オペレータは後方確認のためにわざわざ振り返る必要がない。ところが、例えば植付アーム近傍はバックミラーでは死角になってしまうため、オペレータは、植付アーム近傍の様子を確認したい場合などは後ろを振り返る必要がある。
【0006】
しかし、乗用型田植機においては、植付部の苗載台が大きいため、オペレータが運転座席に座って振り返った状態では植付アーム近傍を見ることが困難ないし不可能である。特に、乗用型田植機は、施肥装置、箱施用剤散布装置などを運転座席の後方に備える場合が多く、肥料タンクや箱施用剤タンクが視線を遮ってしまうため、植付アームを運転座席から確認することが更に困難になっていた。そこで、従来の田植機において、植付アーム近傍の様子などを確認する際には、オペレータは運転座席から立ち上がって、苗載台の上から除き込むようにしなければならず、利便性、作業性が悪かった。
【0007】
なお、特許文献1は、上記苗載台へ供給するための予備の苗を収容した予備苗箱を複数搭載できる予備苗台を備えた構成を開示している。特許文献1が開示する予備苗台構造は、予備苗台を略水平状態とさせる「使用位置」と、予備苗台を略垂直状態とさせる「格納位置」と、を取り得るように、当該予備苗台を揺動可能に支持する支持部材を備えている。即ち、特許文献1が開示する予備苗台構造は、予備苗台を跳ね上げ式に折り畳むことができるように構成されている。特許文献1は、これにより、機体の全幅を小さくすることができるので、例えば田植機の圃場からの移動時やトラック輸送時、納屋への格納時等に予備苗台が邪魔になりにくくなるとしている。
【0008】
特許文献1の構成において、苗を取り終えて苗箱が空になった場合、当該空になった苗箱を載せたままの状態で予備苗台を折り畳むことができれば便利である。しかし、予備苗台を折り畳んだ状態(格納位置)においては予備苗台が略垂直になるので、そのままでは当該予備苗台から苗箱が脱落してしまう。
【0009】
この点、特許文献2は、苗箱押さえ体を備えた予備苗収容装置を開示している。特許文献2は、これにより、空になった苗箱を押さえ体によって良好に押し付けて、苗箱脱落を防止しながら走行することができるとしている。しかしながら、特許文献2には、予備苗台が折り畳み可能である旨の記載は無い。従って、特許文献2の構成では、予備苗台を折り畳んだときに、当該予備苗台に搭載した苗箱が脱落してしまうという問題を解決することはできない。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、オペレータが運転座席に座ったままで植付アーム近傍の様子を確認することができる田植機を提供することにある。また本発明の別の目的は、最上段の予備苗台を折り畳んだときに空の苗箱が脱落することを防止できる田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の観点によれば、以下の構成の田植機が提供される。即ち、この田植機は、走行車体と、植付部と、植付部ミラーと、を備える。前記走行車体は、運転座席を備える。前記植付部は、苗の植付を行う植付アームと、前記植付アームに対して苗マットを供給する苗載台と、を備え、前記走行車体の後方に配置される。前記植付部ミラーは、前記植付アーム近傍の様子を前記運転座席に座ったオペレータが確認するためのものである。また、前記走行車体又は前記植付部の少なくとも何れか一方には、施肥装置、薬剤散布装置、又は除草剤散布装置の何れか一つ又は複数の装置を取り付け可能である。そして、前記植付部ミラーは、前記植付アーム近傍の様子を、前記苗載台、並びに前記施肥装置、前記薬剤散布装置、及び前記除草剤散布装置に遮られずに前記運転座席から確認することができる位置に配置されている。
【0013】
これにより、植付アームの様子を運転座席から確認できるので、利便性及び作業性が向上する。また、田植機に薬剤散布装置等を取り付けた場合には、当該薬剤散布装置等に遮られることにより、植付アームが運転座席から更に見えにくくなるが、上記のように植付部ミラーを設けることにより、薬剤散布装置等に遮られずに植付アーム近傍の様子を確認できる。
【0014】
上記の田植機において、前記植付部ミラーは、広角ミラーとして構成され、前記苗載台、前記植付アーム、及び地面を含む範囲を、前記運転座席から確認できることが好ましい。
【0015】
これによれば、植付部ミラーによって、苗載台に搭載された苗マットの状態、植付アームの駆動状態、地面に植え付けられた苗の状態などを、運転座席から容易に把握することができる。
【0016】
上記の田植機において、前記植付部ミラーには、植付位置の目安とするための目安ラインが設けられていることが好ましい。
【0017】
植付部ミラーの目安ラインを確認しながら植付を行うことにより、植付位置を揃えることができる。
【0018】
上記の田植機は、運転座席に座った状態で車体後方を確認するためのバックミラーを、運転座席の前方に備えることが好ましい。
【0019】
これにより、運転座席に座ったまま振り返らずに後方を確認することができるので、安全性及び作業性が向上する。
【0020】
上記の田植機は以下のように構成されることが好ましい。即ち、この田植機は、予備苗台と、押さえ部材と、を備える。前記予備苗台は、予備の苗箱を搭載可能で折り畳み式に構成される。前記押さえ部材は、前記予備苗台を折り畳んだときに当該予備苗台に搭載されている前記苗箱に接触することで、当該苗箱が落下することを防止する。そして、前記押さえ部材は、前記バックミラーの支柱に取り付けられている。
【0021】
これにより、予備苗台を折り畳んだときに、苗箱が落下してしまうことを防止することができる。また、バックミラーの支柱が、押さえ部材の取り付け部材を兼ねるので、部品点数を削減してコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る田植機の全体的な構成を示す側面図。
【図2】ボンネット近傍の田植機の斜視図。
【図3】予備苗台構造の背面断面図。
【図4】植付部ミラーに映る植付アーム、苗載台、地面などの様子を例示する図。
【図5】目安ラインの一例を示す図。
【図6】目安ラインによって植付位置を合わせる方法を説明する図。
【図7】予備苗台ステーの斜視図。
【図8】最上段の予備苗台を折り畳んだときの予備苗台構造の背面断面図。
【図9】下の段の予備苗台も折り畳んだときの予備苗台構造の背面断面図。
【図10】田植機に除草剤散布装置を取り付けた様子を示す側面図。
【図11】目安ラインの別の例を示す図。
【図12】変形例に係る予備苗台構造の背面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1に示すように、本実施形態形態に係る乗用型田植機1の機体は、走行車体2と、当該走行車体2の後方に配置された植付部3と、から構成されている。
【0024】
走行車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、走行車体2は、オペレータが搭乗するための運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、走行車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、走行車体2の走行速度を調節するための変速ペダル等、各種の操作具が配置されている。
【0025】
また、走行車体2において、運転座席6の下方には駆動源としてのエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。
【0026】
また走行車体2の後部には、植付部3を昇降可能に取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するための駆動出力軸13等が配置される。
【0027】
また、田植機1の走行車体2は、施肥装置24を備えている。施肥装置24は、苗が植え付けられる地面に肥料を散布するためのものである。施肥装置24は、肥料タンク25と、肥料タンク25から一定の繰出速度で繰り出された肥料を後述の作溝器27まで案内する肥料案内ホース26と、を備えている。なお、肥料タンク25は、運転座席6の後方に配置されている。
【0028】
また本実施形態の田植機1は、図略の制御部を備えている。制御部は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
【0029】
前記植付部3は、植付ケース15と、複数のフロート16と、苗載台17と、作溝器27と、を備えている。
【0030】
植付ケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されているとともに、1つ以上の植付ユニット20が取り付けられている。例えば本実施形態の田植機1は6条植えに対応しており、6つの植付ユニット20を備えている。各植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付アーム22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。
【0031】
植付ケース15には、前記駆動出力軸13からの駆動力が入力されており、この駆動力によって回転ケース21が回転駆動されるように構成されている。ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付アーム22の先端部が所定の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成したものである。そして、植付アーム22の先端部は、上から下に向かって動くときに、苗載台17に載せられた苗マットの下端から1株分の苗を掻き取り、当該苗の根元を保持したまま下方に動いて、その軌跡の下死点近傍で地面に植え込むように構成されている。
【0032】
前記フロート(浮き)16は、植付部3の下部に左右対称に設けられる。このフロート16を地面に接触させることにより、植付部3を地面に対して水平に保ち、植付姿勢を安定させて正確な植付けを行うことができるように構成されている。
【0033】
作溝器27は、フロート16に隣接して設けられている。この作溝器27は、フロート16の接地面よりも下方に向けて泥土層に入り込み、肥料を供給するための溝を形成しながら、肥料案内ホース26を介して肥料タンク25から供給されてくる肥料を泥土層に施肥するように構成されている。
【0034】
苗載台17は、前記植付ケース15の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マットの左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マットを、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マットを、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
【0035】
植付部3には、箱施用剤散布装置(薬剤散布装置)45をオプションとして取り付け可能に構成されている。箱施用剤散布装置45は、苗載台17に載せれらた苗マット上に箱施用剤(害虫駆除用の薬剤)を散布するためのものである。箱施用剤散布装置45は、箱施用剤を入れる箱施用剤タンク(薬剤タンク)46と、箱施用剤タンク46から一定の繰り出し速度で繰り出された箱施用剤を苗マット上に散布する散布ノズル47と、を備えている。なお、箱施用剤タンク46は、苗載台17の上方に配置される。
【0036】
また、植付部3は、植付部ミラー18を備えている。植付部ミラー18は、苗載台17に固定された植付部ミラー支柱48の先端に取り付けられている。この植付部ミラー18は、運転座席6に座ったオペレータが、植付アーム22の近傍を確認することができるように配置されている。
【0037】
また、田植機1の車体前部には、内部にバッテリー等を収容したボンネット14が配置されている。このボンネット14の左右側方には、予備苗台構造30を備える。図2に示すように、予備苗台構造30は、複数の予備苗台31を有している。各予備苗台31は、図3に示すように、予備の苗マット40を収容した苗箱41を搭載することができるように構成されている。
【0038】
また、運転座席6に搭乗したオペレータの前方には、後方確認のためのバックミラー33が配置されている。オペレータは、このバックミラー33を確認することにより、振り返らなくても後方視野を確保することができる。
【0039】
次に、上記植付部ミラー18について詳しく説明する。
【0040】
前述のように、植付部ミラー18は、運転座席6に座ったオペレータが、植付アーム22の近傍を確認することができるように配置されている。より具体的には、オペレータが運転座席6に座った状態で後ろを振り向いて植付部ミラー18を見たときに(図1の状態)、肥料タンク25、苗載台17の上端部、箱施用剤タンク46等によって遮られることなく、植付アーム22が植付部ミラー18に映るように配置されている。
【0041】
即ち、植付部ミラーを備えていない従来の田植機では、運転座席のオペレータが振り返って植付アームを確認しようとしても、肥料タンク、苗載台、箱施用剤タンク等によって視線が遮られてしまうため、運転座席から植付アームを確認することが困難ないし不可能であった。そこで従来は、オペレータが運転座席から立ち上がって覗き込むようにして植付アームを確認していた。しかしながら、運転座席から立ちあがらなければならないため、植付アームを確認するたびに作業を中断しなければならず、作業性が悪かった。
【0042】
この点、本実施形態の田植機1では、上記のように、肥料タンク25、苗載台17の上端部、箱施用剤タンク46等によって遮られずに植付アーム22を確認できるように植付部ミラー18を配置しているので、オペレータは、運転座席6に座ったままで後を振り返るだけで植付アーム22を確認することができる。これにより、例えば植付アーム22が正常に動いているか否かを、植付作業中に運転座席6に座ったままで容易に確認することができ、作業性を大幅に向上させることができる。
【0043】
また従来は、肥料タンク、苗載台、箱施用剤タンク等によって視線が遮られてしまうため、田植機の機体最後端部を運転座席から確認することができなかった。このため、従来は、畦と機体最後端部との距離を正確に把握すること等が困難であった。
【0044】
この点、本実施形態の田植機1では前述のように、植付部ミラー18によって植付アーム22近傍を確認できるように構成されているが、当該植付アーム22は、図1に示すように機体の最後端近傍に配置されている。従って、オペレータは、植付部ミラー18によって機体最後端部近傍の様子を確認することができる。これにより、オペレータは、機体最後端部と畦との距離を植付部ミラー18で確認することができるので、例えば、畦からの植え始め距離を揃えることが容易になる。
【0045】
また、本実施形態の田植機1において、植付部ミラー18は広角ミラーとして構成されており、運転座席6に座ったオペレータから見たときに、植付アーム22だけでなく、苗載台17や地面を含む広い範囲が映るようになっている。オペレータが運転座席6に座った状態で振り返って植付部ミラー18を見たときに、当該植付部ミラー18に映る風景の例を図4に模式的に示す。
【0046】
従来の乗用型田植機では、苗載台が大きかったため、苗載台に載せられた苗マットの折れ曲がりや送り不良が無いかなどを確認するためには、オペレータが運転座席6から立ち上がって苗載台17を覗き込むようにしなければならなかった。この点、本実施形態の田植機1によれば、植付部ミラー18で苗載台17を映すことができるので、オペレータは、苗載台17に載せられた苗マットの折れ曲がりや送り不良が無いかなどを、運転座席6に座ったままで確認することができる。
【0047】
ところで、運転座席に座ったオペレータは、バックミラー33で後方を確認できるので、田植機1によって苗を植え付けてきた地面の様子をバックミラー33で確認することができる。しかしながら、当該バックミラーで見ることができるのは後方遠方の地面のみであり、田植機にごく近い位置の地面は死角になって見ることができない。従って、植え付けられた直後の苗の様子や施肥状態は、バックミラー33で確認することができなかった。
【0048】
この点、本実施形態の田植機1によれば、植付アーム22近傍の地面を植付部ミラー18に映すことができるので、オペレータは、運転座席に座った状態で植付部ミラー18を見ることにより、植付アーム22によって植え付けられた直後の苗の様子を確認することができる。また、このように苗が植え付けられた直後の地面を植付部ミラー18に映すことができるので、オペレータは、施肥装置24による施肥状態(肥料が正常に散布されているか否かなど)を、運転座席6に座ったままで確認することができる。
【0049】
更に、この植付部ミラー18には、例えば図5のように目安ラインを描いておくと好適である。図5の場合は、3本の目安ライン(隣接条合わせライン50、植え始め合わせライン51、畦際ライン52)が描かれている。このように、植付部ミラー18に目安ラインを描いておくことにより、植付位置の目安とすることができる。
【0050】
例えば図6に示すように、植付部ミラー18に映る隣の条の苗を、隣接条合わせライン50に合わせるようにして植え付けを行うことにより、隣接条との距離を一定に保って植え付けを開始することができる。また、植付部ミラー18に映る隣の条の最初の苗が、植え始め合わせライン51に合ったときに苗の植え付けを開始することにより、苗を植え始める位置を隣の条に合わせることができる。また、畦53の近くで植付を開始する場合には、植付部ミラー18に映る畦53の縁が、畦際ライン52に一致したときに苗の植え付けを開始することにより、畦53からの距離を揃えて苗の植え付けを開始することができる。
【0051】
次に、予備苗台構造30について詳しく説明する。予備苗台構造30は、複数の予備苗台31と、当該予備苗台31を支持する予備苗台ステー32と、を備えている。図2に示すように、予備苗台構造30は、運転座席6の前方に配置されたボンネット14の左右側方にそれぞれ1つずつ配置されている。なお、図3及び図7から図9には、車体右側の予備苗台構造30のみが図示されているが、左側の予備苗台構造30もほぼ同等の構成である。
【0052】
図7に示すように、予備苗台ステー32は、上下方向に立設された2本のパイプ部材34と、当該パイプ部材の上端同士を連結する横フレーム35と、前記パイプ部材34に取り付けられた支持金具36と、当該支持金具36に支持された揺動ブラケット37と、を備えている。
【0053】
前記2本のパイプ部材34は、車体の前後方向に並んで配置されている。また前記支持金具36は、前後に配置された2本のパイプ部材それぞれに設けられている。揺動ブラケット37は、その長手方向一端側に揺動軸(支持部)37aを有している。揺動ブラケット37は、前記揺動軸37aを中心として揺動(回動)可能であるように、支持金具36に対して取り付けられている。支持金具36及び揺動ブラケット37は、車体前後方向で対応する2つで1組となっており、1組の揺動ブラケット37で1つの予備苗台31を支持するように構成されている。
【0054】
また、予備苗台ステー32は、支持金具36及び揺動ブラケット37を、上下方向に並べて2組設けられている。即ち、本実施形態の予備苗台ステー32は、予備苗台31を上下に並べて2つ支持することができるように構成されている。このような予備苗台ステー32が車体の左右に1つずつ設けられているので、本実施形態の田植機1は、計4つの予備苗台31を有している。
【0055】
各予備苗台31は、ブラスチック製であり、前記苗箱41を搭載できるようにトレー状に形成されている。詳しくは、図2に示すように、予備苗台31は、苗箱搭載面31aを有している。この苗箱搭載面31aに、苗箱41を載せることができる(図3)。また図3に示すように、苗箱搭載面31aの縁部には、当該苗箱搭載面31aに搭載された苗箱41がズレないようにするための凸部31bが形成されている。
【0056】
前記2つ1組の揺動ブラケット37は、予備苗台31の裏面(苗箱搭載面31aの反対側の面)に固定される。これにより、予備苗台31を、予備苗台ステー32に対して揺動軸37aを中心に揺動可能に支持している。より具体的には、予備苗台31は、前記苗箱搭載面31aが地面に対して略水平となる使用位置(図3の状態)と、前記苗箱搭載面31aが地面に対して略垂直になる格納位置(図9の状態)と、の間で揺動させることができる。図3に示すように「使用位置」において、前記揺動軸37aは、予備苗台31の車体左右方向の端部のうち、車体内側の端部近傍に配置されている。言い換えれば、「使用位置」において予備苗台31の車体左右方向の他側の端部(揺動軸37aが配置されている側とは反対側の端部)は、車体外側を向くように配置されている。また図9に示すように「格納位置」において、前記揺動軸37aは、予備苗台31の上下方向の端部のうち下側の端部近傍に位置する。言い換えれば、「格納位置」において予備苗台31の上下方向の端部のうち他側の端部(揺動軸37aが配置されている側とは反対側の端部)は、上を向いている。
【0057】
即ち、本実施形態の予備苗台31は、使用位置において車体左右方向に突出するように設けられており、跳ね上げ式に折り畳んで格納することができるように構成されている。なお、図2の斜視図では、車体左側の予備苗台31は「使用位置」を、車体右側の予備苗台31は「格納位置」を、それぞれ示している。このように、不使用時には予備苗台31を折り畳んで格納位置とすることにより、予備苗台構造30を車体左右方向でコンパクトにすることができる。
【0058】
また、図3に示すように、支持金具36と揺動ブラケット37との間には、引っ張りコイルバネとして構成された付勢部材38が配置されている。この付勢部材38は、使用位置と格納位置の中間位置でバネの伸びが最大となるようになっている。これによれば、予備苗台31を、使用位置又は格納位置となる方向に付勢することができる。なお、支持金具36及び揺動ブラケット37には図略のストッパ部が形成されており、使用位置及び格納位置を超えて予備苗台31が揺動してしまうことを阻止するように構成されている。以上の構成により、使用位置及び格納位置において予備苗台31の姿勢を保持することができる。
【0059】
左右の少なくとも何れか一方(本実施形態の場合は右側)の予備苗台ステー32には、前記バックミラー33が取り付けられている。より具体的には、横フレーム35に支柱33aの下端部が固定されており、当該支柱33aの上端にバックミラー33が取り付けられている。このように、予備苗台ステー32はバックミラー33の取付ステーも兼ねている。
【0060】
次に、予備苗台31を折り畳んだときの様子について詳しく説明する。
【0061】
本実施形態の田植機において、予備苗台31に搭載された苗箱41の苗を使い切り、当該苗箱41が空になったときには、当該空の苗箱41を載せた状態のまま、予備苗台31を折り畳む(予備苗台31を跳ね上げて「格納位置」とする)ことができるように構成されている。なお、上の段の予備苗台31に載せられた苗箱41から苗を使うように作業を行えば、図8に示すように上の段の予備苗台31を先に折り畳むことができるので、下の段の予備苗台31に載せられた苗箱41から苗を取るときに上の段の予備苗台31が邪魔にならないので好適である。
【0062】
本実施形態の予備苗台構造30は、押さえ部材39を備えている。この押さえ部材39は、バックミラー33の支柱33aに取り付けられている。これにより、押さえ部材39を取り付けるための専用の部材が不要になるので、コストを削減できる。また、この押さえ部材39は、車体左右方向外側に向けて突出する突出部39aを備えるとともに、当該突出部39aの先端にゴム製(弾性体)のキャップ部材39bが配置されている。このキャップ部材39bは、最上段の予備苗台31が格納位置とされたときに、当該予備苗台31に載せられた空の苗箱41の内側底面に対して、車体左右方向内側から当接するように配置されている。
【0063】
前述のように、予備苗台31は付勢部材38によって付勢されている。押さえ部材39は、格納位置の予備苗台31を前記付勢部材38が付勢する方向とは反対側から苗箱41に接触するように配置されている。この構成によれば、格納位置においては、前記付勢部材38による付勢力によって、最上段の予備苗台31に載せられた苗箱41が押さえ部材39に対して弾性的に押し付けられる。
【0064】
以上の構成により、空の苗箱41は、押さえ部材39と、最上段の予備苗台31と、の間で挟み込まれたような状態となる(図8及び図9の状態)。このように苗箱41を挟み込むことにより、折り畳まれた最上段の予備苗台31から前記苗箱41が脱落してしまうことを防止できる。従って、本実施形態の田植機1は、空の苗箱41を載せたままの状態で、最上段の予備苗台31を折り畳むことができる。
【0065】
また本実施形態では、揺動軸37aの軸線に直交する平面で切断した断面図(図8等)で見たときに、押さえ部材39は、前記揺動軸37a寄りの位置で苗箱41に接触するように構成されている。即ち、付勢部材38による付勢力は、揺動軸37aまわりで働いているので、当該揺動軸37aに近い位置に押さえ部材39を配置することにより、苗箱41を強力に挟み込むことができる。これにより、振動や風などによって苗箱41が脱落してしまうことを防止することができる。
【0066】
また前述のように、押さえ部材39は、ゴム製のキャップ部材39bの部分で苗箱41に接触するように構成されているので、苗箱41を傷つけることを防止できる。また、これにより安全性を向上させることができる。
【0067】
また、図3に示すように、押さえ部材39は、最上段の予備苗台31が使用位置にあるときには、当該予備苗台31に搭載された苗箱41に対して接触しないように配置されている。これにより、予備苗台31に対して苗箱41を積み降ろしする際の作業の際に、押さえ部材39が邪魔になることがない。また、最上段の予備苗台31を折り畳むだけで、当該予備苗台31に載せられた苗箱41に押さえ部材39を接触させることができるので、当該苗箱41を押さえるための特別な操作等は一切必要ない。
【0068】
一方、下の予備苗台31には、最上段の予備苗台31のような押さえ部材39は配置されていない。しかしながら、下の段の予備苗台31を折り畳んだとき(格納位置としたとき)には、当該予備苗台31に載せられた苗箱41は、図9に示すように、既に折り畳まれている上の段の予備苗台31の裏面(又は上の段の揺動ブラケット37)に接触するようになっている。このように、最上段以外の予備苗台31に載せられた苗箱41は、当該予備苗台31が折り畳まれたときに、当該予備苗台31と、上の段の予備苗台31(又は上の段の揺動ブラケット37)と、で挟み込まれる。これにより、最上段以外の予備苗台31を折り畳んだときであっても、当該予備苗台31に搭載された苗箱41が脱落してしまうことを防止することができる。
【0069】
以上で説明したように、本実施形態の田植機1は、走行車体2と、植付部3と、植付部ミラー18と、を備える。走行車体2は、運転座席6を備える。植付部3は、苗の植付を行う植付アーム22と、植付アーム22に対して苗マットを供給する苗載台17と、を備え、走行車体2の後方に配置される。植付部ミラー18は、植付アーム22近傍の様子を運転座席6に座ったオペレータが確認するためのものである。また、走行車体2には施肥装置24を、植付部3には箱施用剤散布装置45を、それぞれ取り付け可能である。そして、植付部ミラー18は、植付アーム22近傍の様子を、苗載台17、並びに施肥装置24及び箱施用剤散布装置45に遮られずに運転座席6から確認することができる位置に配置されている。
【0070】
これにより、植付アーム22の様子を運転座席6から確認できるので、利便性及び作業性が向上する。また、田植機に箱施用剤散布装置45等を取り付けた場合には、当該箱施用剤散布装置45等に遮られることにより、植付アーム22が運転座席6から更に見えにくくなるが、上記のように植付部ミラー18を設けることにより、箱施用剤散布装置45等に遮られずに植付アーム22近傍の様子を確認できる。
【0071】
また、本実施形態の田植機1において、植付部ミラー18は、広角ミラーとして構成され、苗載台17、植付アーム22、及び地面を含む範囲を運転座席6から確認できる。
【0072】
これによれば、苗載台17に搭載された苗マットの状態、植付アーム22の駆動状態、地面に植え付けられた苗の状態などを、運転座席6から容易に把握することができる。
【0073】
また、本実施形態の田植機1において、植付部ミラー18には、植付位置の目安とするための目安ライン50,51,52が設けられている。
【0074】
植付部ミラー18の目安ラインを確認しながら植付を行うことにより、植付位置を揃えることができる。
【0075】
また本実施形態の田植機1は、運転座席6に座った状態で車体後方を確認するためのバックミラー33を、運転座席6の前方に備えている。
【0076】
これにより、運転座席6に座ったまま振り返らずに後方を確認することができるので、安全性及び作業性が向上する。
【0077】
また本実施形態の田植機1は、予備苗台31と、押さえ部材39と、を備える。予備苗台31は、予備の苗箱を搭載可能で折り畳み式に構成される。押さえ部材39は、予備苗台31を折り畳んだときに当該予備苗台31に搭載されている苗箱41に接触することで、当該苗箱41が落下することを防止する。そして、押さえ部材39は、前記バックミラー33の支柱33aに取り付けられている。
【0078】
これにより、予備苗台31を折り畳んだときに、苗箱が落下してしまうことを防止することができる。また、バックミラー33の支柱33aが、押さえ部材39の取り付け部材を兼ねるので、部品点数を削減してコストを抑えることができる。
【0079】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0080】
箱施用剤散布装置45はオプションであり、省略することができる。また、施肥装置24を省略して箱施用剤散布装置45のみを備えた構成としても良い。また、施肥装置24及び箱施用剤散布装置45に代えて、或いはこれらの装置に加えて、除草剤散布装置を田植機に取り付けても良い。例えば図10に示す変形例に係る田植機60は、植付部3において箱施用剤散布装置45の後方に、更に除草剤散布装置55を取り付けた構成である。除草剤散布装置55は、車体左右方向中央部に配置された除草剤タンク56と、除草剤タンク56内の除草剤を車体左右方向に分散させるようにして地面に散布する散布部57と、を備えている。このような除草剤散布装置55を取り付けた構成では、苗が植え付けられた直後の地面をオペレータが運転座席6から確認しようとしても、散布部57等に遮られて見ることができない。そこで、本発明の植付部ミラー18を、散布部57等に遮られずに地面等を映すことができる位置に配置すれば好適である。
【0081】
図6に例示したものに限らず、適宜の目安ラインを植付部ミラー18に描くことができる。例えば図11に示すように、枕地(最後の横植え)用に、何条分空いているかの目安になるラインを略平行に複数本描いておくことができる。図11の場合、田植機は6条植え(植付ユニットを6つ有している)ので、6条分のスペースを空けて植え付けを行うことにより、圃場の植付が終了したときに枕地を通って圃場から脱出することができる。
【0082】
本実施形態の田植機1は6条植えとして構成されているので、植付アーム22は12本(各植付ユニット20に2本ずつ)有している。植付部ミラー18は、全ての植付アーム22が映るように配置されていることが好ましいが、これに限らず、複数の植付アーム22のうちの一部の植付アーム22の近傍のみが映るように配置されていても良い。また、植付部ミラー18は、苗載台17の全体が映るように配置されていても良いが、苗載台17の一部のみが映るように配置されていても良い。
【0083】
植付部ミラー18は広角ミラーであるとしたが、通常のミラーでも十分に広い範囲を映すことができる場合には、通常のミラーで植付部ミラー18を構成しても良い。
【0084】
押さえ部材39の形状は適宜変更可能である。また、押さえ部材39は必ずしもバックミラー33の支柱33aに固定されていなければならない訳ではなく、例えば図12に示すように、押さえ部材39を、予備苗台ステー32に直接固定することができる。なお、図2に示すように、上記実施形態の田植機1において、左側の押さえ部材39はこの方法で固定されている。
【0085】
付勢部材38は引っ張りコイルバネとしたが、これに限らず、適宜の部材によって予備苗台31を付勢することができる。
【0086】
キャップ部材39bの素材はゴムとしたが、これに限らず他の種類の弾性体(例えばスポンジ)であっても良い。
【0087】
上記実施形態では、予備苗台31は上下に2段で備える構成としたが、これ限らず、予備苗台31を上下3段以上備える構成であっても良い。更には、予備苗台31は、上下で1段のみであっても良い。
【0088】
なお、上記バックミラー33は省略しても良い。
【0089】
上記実施形態では、植付部ミラー18は苗載台17に取り付ける構成としたが、これに限らない。例えば、植付部ミラー18を植付ケース15に取り付けても良い。また、植付部3ではなく、走行車体2側に植付部ミラー18を取り付けても良い。また図1では、植付部ミラー18をオペレータが振り返って見るように描かれているが、これに限らず、例えばバックミラー33を介して植付部ミラー18を確認できるように構成しても良い。
【0090】
植付部3は、ロータリ式の植付装置に限らず、クランク式の植付装置であっても良い。
【符号の説明】
【0091】
1 田植機
2 走行車体
3 植付部
6 運転座席
17 苗載台
18 植付部ミラー
22 植付アーム
24 施肥装置
25 肥料タンク
30 予備苗台構造
31 予備苗台
32 予備苗台ステー
37a 揺動軸(支持部)
38 付勢部材
39 押さえ部材
41 苗箱
45 箱施用剤散布装置(薬剤散布装置)
46 箱施用剤タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転座席を備えた走行車体と、
苗の植付を行う植付アームと、前記植付アームに対して苗マットを供給する苗載台と、を備え、前記走行車体の後方に配置される植付部と、
前記植付アーム近傍の様子を前記運転座席に座ったオペレータが確認するための植付部ミラーと、
を備え、
前記走行車体又は前記植付部の少なくとも何れか一方には、施肥装置、薬剤散布装置、又は除草剤散布装置の何れか一つ又は複数の装置を取り付け可能であり、
前記植付部ミラーは、前記植付アーム近傍の様子を、前記苗載台、並びに前記施肥装置、前記薬剤散布装置、及び前記除草剤散布装置に遮られずに前記運転座席から確認することができる位置に配置されていることを特徴とする田植機。
【請求項2】
請求項1に記載の田植機であって、
前記植付部ミラーは、広角ミラーとして構成され、前記苗載台、前記植付アーム、及び地面を含む範囲を、前記運転座席から確認できることを特徴とする田植機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の田植機であって、
前記植付部ミラーには、植付位置の目安とするための目安ラインが設けられていることを特徴とする田植機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の田植機であって、
運転座席に座った状態で車体後方を確認するためのバックミラーを、運転座席の前方に備えることを特徴とする田植機。
【請求項5】
請求項4に記載の田植機であって、
予備の苗箱を搭載可能で折り畳み式に構成された予備苗台と、
前記予備苗台を折り畳んだときに当該予備苗台に搭載されている前記苗箱に接触することで、当該苗箱が落下することを防止する押さえ部材と、
を備え、
前記押さえ部材は、前記バックミラーの支柱に取り付けられていることを特徴とする田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−157327(P2012−157327A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20885(P2011−20885)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】