説明

田植機

【課題】走行機体の後部に植付作業機をアクチュエータ駆動により作動昇降リンク機構を介して昇降可能に連結し、前記植付作業機を電動モータの動力にて植付駆動させる田植機において、植付作業機を軽量に構成し、且つ植付装置を円滑に駆動させる田植機を得る。
【解決手段】植付作業機駆動用の電動モータ14を走行機体4側に設けるにあたり、前記昇降リンク機構5にモータベース29を連設し、昇降リンク機構5による植付作業機6の上下動に連動して電動モータ14の出力軸14aの軸方向を植付作業機6の入力軸30方向に補正する。
また、モータベース29を、昇降リンク機構5の走行機体4側の支持軸27aよりも前方に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータからの動力を、走行機体の後部に昇降可能に連結した作業機に伝達する田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体の後部に植付作業機をアクチュエータ駆動により作動昇降リンク機構を介して昇降可能に連結し、前記植付作業機を電動モータの動力にて植付駆動させる田植機は公知である。(特許文献1)。
【0003】
また、走行機体側から伝達される動力を、ユニバーサルジョイントで連結された伝動軸を介して植付作業機に伝達する田植機も一般的に知られている。(特許文献2)
【0004】
そして、植付作業機の各部を駆動させる電動モータを植付作業機自体に搭載した田植機も公知である。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−140217号公報
【特許文献2】特許第3165767号公報
【特許文献3】特開2010−213639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の田植機は、車体13に設置されたステッピングモータ23により駆動力伝達機構を介して植付機構部20を作動させるものであり、その駆動力伝達機構の詳細については記載されていないが、特許文献2に記載の田植機のような一般的な伝動形態を採用した場合、植付作業機の昇降によりユニバーサルジョイントによる屈曲角度が大きくなると植付装置の回転ムラが大きくなり、苗の植付姿勢に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0007】
一方、上記のようなユニバーサルジョイントを介した伝動機構を用いずに植付作業機を作動させる技術として、特許文献3に記載の田植機のように、植付作業機に電動モータを設けて植付作業機の各部を駆動させるものが公知であるが、この形態では植付作業機自体の重量が重くなり、走行機体に対する植付作業機の昇降制御、及びローリング制御に悪影響が生じるばかりか、植付作業機の重量増加は機体全体の重量増加に繋がり、軟弱な圃場において機体が沈みこむ等の問題が発生する可能性が高まる。
【0008】
本願発明は、上記課題を解決し、植付作業機の駆動力を電動モータから得る田植機において、植付作業機を軽量に構成し、且つ植付装置を円滑に駆動させる田植機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、走行機体の後部に植付作業機を作動昇降リンク機構を介して昇降可能に連結し、前記植付作業機を電動モータの動力にて駆動させる田植機において、前記電動モータを走行機体側に設けるにあたり、前記昇降リンク機構にモータベースを連設し、昇降リンク機構による植付作業機の上下動に連動して電動モータの出力軸の軸方向を植付作業機の入力軸方向に補正することを第1の特徴とする。
【0010】
また、前記モータベースを、前記昇降リンク機構の走行機体側の支持軸よりも前方に連結したことを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、走行機体の後部に植付作業機を作動昇降リンク機構を介して昇降可能に連結し、前記植付作業機を電動モータの動力にて駆動させる田植機において、前記電動モータを走行機体側に設けるにあたり、前記昇降リンク機構にモータベースを連設し、昇降リンク機構による植付作業機の上下動に連動して電動モータの出力軸の軸方向を植付作業機の入力軸方向に補正するので、植付装置の駆動速度を容易にコントロールするために植付作業機の動力を電動モータから取り出すにあたり、走行機体側に伝動モータを設けることによって、植付作業機の重量増加を防止すると共に、電動モータと植付作業機の入力部との間の伝動経路の折れ曲がりを軽減することができ、植付装置の駆動ムラを抑制することができる。
【0012】
また、前記モータベースを、前記昇降リンク機構の走行機体側の支持軸よりも前方に連結したので、植付作業機を上昇させるべく昇降リンク機構を上方回動させる際にはモータベースは下方回動するため、電動モータの重量が植付作業機昇降用のアクチュエータによる植付作業機の揚上を阻害するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の田植機の全体側面図である。
【図2】植付作業機下降時の要部側面図である。
【図3】植付作業機上昇時の要部側面図である。
【図4】植付作業機の伝動形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の乗用型田植機を示す全体側面図であって、この乗用型田植機1は、左右一対の前輪2,2及び後輪3,3に支持された走行機体4を有し、走行機体4の後方に、昇降リンク機構5を介して植付作業機6が連結された構造となっている。
【0015】
走行機体4の中央部には、座席7を備えており、該座席7の前方にはフロント操作パネル8が設けられている。該フロント操作パネル8にはステアリングハンドル9が突設されている。
【0016】
前記フロント操作パネル8の前方には走行用の原動機である走行用電動モータ10、及び油圧ポンプを駆動させる油圧ポンプ用電動モータ11を内装するボンネット12が設けられており、走行用電動モータ10から取り出された走行動力により前輪2,2、及び後輪3,3を駆動させる。
【0017】
一方、前記座席7下の機体カバー13内にはバッテリーBを備えており、その下方には、後述の伝動機構を介して植付作業機6を駆動させる植付作業機駆動用電動モータ14を設けている。
【0018】
そして、バッテリーBから供給される電力により前記走行用モータ10、油圧ポンプ用モータ11、及び植付作業機駆動用電動モータ14が駆動される。後述の伝動機構を介して植付作業機6を駆動させる。
【0019】
また、フロント操作パネル8の一側には、主変速レバー15が左右及び前後揺動自在に設けられており、該主変速レバー15を揺動操作することにより、前記走行用電動モータ10の正逆回転を操作して走行速度の設定及び前後進の切り替えを行うことができる。
【0020】
走行機体4のフロアからは、ブレーキペダル16が踏み込み操作自在に突出し、該ブレーキペダル16の踏込み操作によって、前記走行用電動モータ10、及び前記植付作業機駆動用モータ電動14の回転を停止させ、走行機体4の走行停止、及び植付作業機6の駆動停止を操作する。
【0021】
前記植付作業機6について詳述すると、前記昇降リンク機構5の後端部にはローリング軸5aを介して作業機フレーム17が左右ローリング動自在に横設されており、該作業機フレーム17から上方に苗載せ台支持フレーム18を延設し、苗載せ台19の上部を支持している。
【0022】
また、前記作業機フレーム17の後下部には植付伝動ケース20が後方へ向けて複数取り付けられており、該植付伝動ケース20の後側には植付装置21が設けられている。
【0023】
また、植付伝動ケース20の上面にはエプロン22を介して苗載せ台19の下端部が左右摺動自在に支持されており、下面には複数のフロート23が左右方向に並設されている。
【0024】
前記昇降リンク機構5はアクチュエータ(油圧シリンダ24)の伸縮により昇降する油圧昇降式を採用しており、前述の油圧ポンプ用電動モータ11により駆動される油圧ポンプ(図示せず)により循環する作動油の油路をロータリバルブ(図示せず)で切換えることにより植付作業機6を昇降させるものであり、前記フロート23の姿勢に応じてロータリバルブを切換えることで、乗用型田植機1は、フロート23が適正姿勢で圃場面を滑走するよう、植付作業機6を走行機体4に対して油圧昇降制御した状態で、走行機体4を走行させながら植付装置21を駆動させ苗載せ台19上の苗を掻き取って圃場に植付ける。
【0025】
植付作業機6の伝動機構について詳述すると、図2、及び図3に示すように、前記昇降リンク機構5は、その前端を機体フレーム25に回動自在に設けられたトップリンク26及びロアリンク27、該トップリンク26及びロアリンク27を連結するリンクブラケット28により平行リンクを構成しており、機体フレーム25の上部とロアリンク27の後部とを前記油圧シリンダ24で連結し、昇降リンク機構5の後部を前記油圧シリンダ24の縮動により引き上げることで植付作業機6を揚上するように構成されている。
【0026】
前記リンクブラケット28には、図4に示すローリング軸28aを介して作業機フレーム17が走行機体4に対して左右ローリング動自在に連結されており、図示しないローリング制御機構によって植付作業機6の左右姿勢をローリング制御し、走行機体の左右姿勢の傾斜に関わらず、植付作業機6の左右傾斜姿勢を良好に保ちながらの作業走行を可能としている。
【0027】
前記ロアリンク27の回動支軸(支持軸27a)の前方にはモータベース29が一体的に連設されておりいる。該モータベース29には前記作業機駆動用電動モータ14が搭載されており、この構成により、植付作業機駆動用電動モータ14を昇降リンク機構5に設けるにあたり、機体フレーム25の連結点よりも前方に設けている。
【0028】
また、植付作業機駆動用電動モータ14の出力軸14aは前記ロアリンク27の下方に沿って植付作業機6の入力軸30に向けて突出している。
【0029】
前記出力軸14aにはユニバーサルジョイント32aを介してスプライン軸31の一端が連結されており、該スプライン軸31の他端にはユニバーサルジョイント32bを介して前記植付作業機6の入力軸30が連結されている。
【0030】
また、図4に示すように、前記入力軸30によって植付作業機6に入力された動力は、植付分配軸33,33,・・・によって各植付伝動ケース20,20,20内の伝動機構を介して各条の植付装置21,21,・・・に伝達され、制御部Cによって機体の走行速度の増減に対応して作業機駆動用電動モータ14を駆動制御することで予め設定した株間で圃場に苗を植え付けることができる。
【0031】
また、最外側の植付伝動ケース20の外側には横送り変速装置34を備えており、該横送り変速装置34からは横送り軸35が突出し、当該横送り軸の回転により、前記苗載せ台19を植付装置21の駆動速度に連動させて左右摺動させる
【0032】
尚、横送り変速装置34によって、前記植付装置21,21,・・・の駆動速度に対する苗載せ台19の横送り速度を変更可能としている。
【0033】
以上のように構成された本発明の田植機は、植付作業機の駆動を電動化するにあたり、植付作業機の重量アップを避けるべく走行機体側に植付作業機駆動用電動モータを設けたものにあって、特に、昇降リンク機構5にモータベース29を連設し、昇降リンク機構5による植付作業機6の上下動に連動して植付作業機駆動用電動モータ14の出力軸14aの軸方向を植付作業機6の入力軸30方向に補正することにより、昇降リンク機構5によって植付作業機6が走行機体4に対して昇降しても、作業機駆動用電動モータ14の出力軸14aの延設方向が植付作業機6の入力部に向くようになるため、植付作業機6の昇降制御や、ローリング制御による植付作業機6と走行機体4の相対姿勢の変化に関わらず、走行機体4と植付作業機6との間の伝動軸構成の曲がりが少なくなり、植付装置21を安定して駆動させることができるので、苗の植付姿勢等への悪影響を少なくすることができる。
【0034】
また、前記モータベース29を、前記昇降リンク機構5の走行機体4側の支持軸27aよりも前方に連設することによって、重量物である作業機駆動用電動モータ14が昇降リンク機構5の機体フレーム25に対する回動連結点を挟んで植付け作業機6の他方に位置するので、植付作業機6の上昇時には作業機駆動用電動モータ14は下降することとなり、重量物である作業機駆動用電動モータ14が油圧シリンダ24による植付作業機6の揚上を阻害するのを防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 乗用型田植機
4 走行機体
5 昇降リンク機構
6 植付作業機
14 植付作業機駆動用電動モータ
14 出力軸
27a 支持軸
29 モータベース
30 入力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(4)の後部に植付作業機(6)を作動昇降リンク機構(5)を介して昇降可能に連結し、前記植付作業機(6)を電動モータ(14)の動力にて植付駆動させる田植機において、前記電動モータ(14)を走行機体(4)側に設けるにあたり、前記昇降リンク機構(5)にモータベース(29)を連設し、昇降リンク機構(5)による植付作業機(6)の上下動に連動して電動モータ(14)の出力軸(14a)の軸方向を植付作業機(6)の入力軸(30)方向に補正することを特徴とする田植機。
【請求項2】
前記モータベース(29)を、前記昇降リンク機構(5)の走行機体(4)側の支持軸(27a)よりも前方に連結したことを特長とする請求項1に記載の田植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106532(P2013−106532A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251980(P2011−251980)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】