説明

画像情報記録読取方法および装置

【課題】静電記録体に画像情報を静電潜像として記録し、記録された静電潜像を読み取る画像情報記録読取方法および装置において、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズの低減と安定化を図る。
【解決手段】第1電極層11の電極と第2電極層15の電極との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加と、第1電極層11の電極と第2電極層15の電極とを同電位にした状態で光導電層14に消去光を照射する空読みとを行う予備処理を、画像情報の記録休止期間中に断続的に行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電記録体に画像情報を静電潜像として記録し、記録された静電潜像を読み取る画像情報記録読取方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、医療用X線撮影などにおいて、被験者の受ける被爆線量の減少、診断性能の向上などのために、X線に感応する例えばa−Se(アモルファスセレン)から成るセレン板などの光導電体を静電記録体(感光体、放射線固体検出器)として用い、この静電記録体に放射線画像情報を担持するX線などの記録用の放射線を照射して、放射線画像情報を担持する潜像電荷を静電記録体の蓄電部に蓄積させ、その後レーザビームなどの読取光(読取用の電磁波)で静電記録体を走査することにより該静電記録体内に生じる電流を該静電記録体両側の平板電極あるいはクシ電極を介して検出することにより、潜像電荷が担持する静電潜像、すなわち放射線画像情報を読み取るシステムが知られている。
【0003】
このような静電記録体の具体的な層構成としては、例えば特許文献1に記載の、第1導電体層(記録光側電極層;以下同様)/記録用光導電層/蓄電部としてのトラップ層/読取用光導電層/第2導電体層(読取光側電極層;以下同様)からなるものがある。
【0004】
また、本願出願人は、記録用の放射線に対して透過性を有する第1導電体層、記録用の放射線の照射を受けることにより光導電性を呈する記録用光導電層、第1導電体層に帯電される電荷と同極性の電荷に対しては略絶縁体として作用し、かつ、該同極性の電荷と逆極性の電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層、読取光(読取用の電磁波)の照射を受けることにより光導電性を呈する読取用光導電層、読取光に対して透過性を有する第2導電体層を、この順に積層して成り、記録用光導電層と電荷輸送層との界面に蓄電部が形成されるものを提案している(特許文献2)。
【0005】
このような静電記録体では、読取光に対して透過性を有する第2導電体層とa−Seなどからなる光導電層との界面に障壁電界が形成され、記録用の放射線の線量が0mR領域であっても、読取光の照射によって電流が流れ、いわゆる光起電力ノイズという問題を生じる。
【0006】
また、使用を続けると、この光起電力ノイズは、局所的に場所依存性が発生するようになり、その結果アーチファクトとなるという問題が生じる。
【0007】
また、静電記録体の光導電層には、a−Seなどの高抵抗なアモルファス物質(トラップを有する)が一般に使われるが、静電記録体の両端電極間に電圧(一般には高圧)を印加してから短絡までの間には、電極から光導電層への直接電荷注入が生じ、注入された電荷が光導電層内部あるいは光導電層と電極との界面に空間電荷としてトラップされつつ、一方で空間電荷としてはトラップされずに漏れ電流として光導電層内に暗電流が流れ、この暗電流が暗潜像として蓄電部に蓄積され、読取りに際して再生画像に所謂暗潜像ノイズとなって現れるという問題がある。この暗電流は、電圧印加当初は大きく、時間と共に減少し、その後一定の漏れ電流値に近づいていくという性質がみられる。即ち、電圧印加直後の暗電流レベルは、安定化した状態(安定した漏れ電流状態)の暗電流レベルよりも大きい。この現象は、印加電圧が高いほど顕著であり、漏れ電流レベルに安定化するまで、例えば10分以上要する場合もある。さらに、一旦安定化したとしても、両電極を短絡してしばらくの間電圧印加を休止すると、その後に再度電圧を印加した直後には暗電流レベルが元の大きさに戻る傾向を示す。したがって、電圧印加直後の大レベルの暗電流による暗潜像は読取りに際しては大きなノイズ源となる。さらに、この暗潜像の量は、電圧を印加してから記録用の放射線を照射するまでの時間や使用履歴と共に変化するため、暗潜像ノイズが再生画像に現れないように、画像データを補正することも困難である。
【0008】
さらに、電極と光導電層との界面には、前記の通り、記録用電圧の印加によって形成された空間電荷による電界が形成されるが、さらに読出しに先立って短絡される結果、電圧印加(一般には高圧印加)と短絡の履歴を受けた新たな電界が形成され、この新たな電界下において光(読取光)が照射されるために高圧印加履歴ノイズが発生するという問題がある。そしてこの高圧印加履歴ノイズも時間や使用履歴と共に変化するため前記暗潜像ノイズと同様に補正が困難である。
【0009】
また、使用を続けると、この高圧印加履歴ノイズは、光起電力ノイズと同様に、局所的に場所依存性が発生するようになり、その結果アーチファクトとなるという問題が生じる。
【0010】
そのため、本願出願人は、特許文献3において、第1電極層の電極と第2電極層の電極とを同電位にした状態で光導電層に消去光(前露光光)を照射する空読みを行なうことを提案しており、これにより、消去光が照射された光入射界面(電子−ホールペア形成領域)に、光疲労状態(トラップ蓄積状態)が一時的に形成されるようになり、読取光を照射した際に生じ得る光起電力ノイズが光疲労状態によって低減すると共に安定化するようになる。また、消去光により電極と光導電層との界面の空間電荷状態を低減し安定化させる、つまり高圧印加履歴ノイズを低減させることもできる。
【0011】
さらに、空読みに先立って、両電極間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加を行なうことも提案しており、これにより、光導電層内部あるいは光導電層と電極との界面に、見かけ上安定化した高抵抗状態をもたらす空間電荷状態が形成されるようになり、しかも蓄電部には暗潜像蓄積の少ない状態が実現されるため、記録用電圧を印加した直後には、従来のような大レベルの暗潜像ノイズが生じる虞がなくなり、暗潜像ノイズが低減すると共に安定化するようになる。
【特許文献1】米国特許第4535468号明細書
【特許文献2】特開2000−105297号公報
【特許文献3】特開2001−108798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献3の方法を用いたとしても、空電圧印加や空読みを行った後に撮影を行い、しばらくの間静電記録体に対して電圧印加を休止すると、再度撮影を行う際に空電圧印加や空読みを行っても、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズを十分に低減させることができず、画像品質が劣化することが確認された。
【0013】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、静電記録体に画像情報を静電潜像として記録し、記録された静電潜像を読み取る画像情報記録読取方法および装置において、光読取を行うことにより生じる光起電力ノイズの低減と安定化、電圧印加直後に形成される暗潜像ノイズの低減とその安定化、および記録用電圧の印加と短絡とを行うことにより生じる高圧印加履歴ノイズの低減と安定化を図ることが可能な方法および装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の画像情報記録読取方法は、第1電極層と画像情報を担持する記録用の電磁波の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層と第2電極層とをこの順に有すると共に電磁波のエネルギ量に応じた量の電荷を潜像電荷として蓄積する蓄電部が前記第1電極層と前記第2電極層との間に形成されて成り、第1電極層の電極と第2電極層の電極との間に記録用電圧を印加した状態で第1電極層に記録用の電磁波が照射されることにより蓄電部に画像情報が静電潜像として記録され、且つ第1電極層と第2電極層とを同電位にした状態で潜像電荷の量に応じた画像情報が読み取られる静電記録体を用いて画像情報の記録と読取りを行なう画像情報記録読取方法において、第1電極層の電極と第2電極層の電極との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加と、第1電極層の電極と第2電極層の電極とを同電位にした状態で光導電層に消去光を照射する空読みとを行う予備処理を、画像情報の記録休止期間中に断続的に行うことを特徴とするものである。
【0015】
本発明に使用される静電記録体は、第1電極層、光導電層、および第2電極層をこの順に有すると共に、第1電極層と2電極層との間に蓄電部が形成されて成るものであって、上述のように光読出方式のものであれば良く、蓄電部を形成するために、例えば上記特許文献1や特許文献2などに記載のように、さらに他の層や微小導電部材(マイクロプレート)を積層して成るものであってもかまわない。
【0016】
また、「画像情報を担持する記録用の電磁波」としては、例えば、被写体にX線などの放射線を照射して得られる透過放射線画像情報を担持する透過放射線、この透過放射線を一旦蛍光体(シンチレータ)に照射して得た透過放射線画像情報を担持する蛍光などの放射線の励起により発せられる光、あるいは画像情報を担持する一般的な可視光などを用いることができる。
【0017】
また、「第1電極層の電極と第2電極層の電極とを同電位にした状態」とは、両電極層の電極を直接接続して同電位にした状態に限らず、例えばオペアンプのイマジナリーショートを介したり抵抗を介するなどのように、両電極間に多少の電位差を有し得るものの、両電極層の電極が実質的に同電位となるようにした状態も含む。
【0018】
また、空読みのための消去光は、光疲労などを効果的に生じさせるために光強度が強いことが好ましい。一方、この消去光の照射は、長時間(例えば10sec)である必要はなく、比較的短時間(例えば1msec〜1sec程度)で十分である。
【0019】
また、空電圧印加は、この空電圧印加は、長時間(例えば10sec)である必要はなく、比較的短時間(例えば1sec以内)で十分である。
【0020】
上記において、光導電層に消去光を照射するに際しては、読取光が照射される電極層(通常は第2電極層)側から照射するのが望ましく、また、静電記録体の全面に亘って略一様の光量の光であるのが望ましい。
【0021】
なお、読取光とは、読取用の電磁波であって、可視光に限らない。読取光の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層は、記録用の電磁波の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層と兼用のものでもよいし、これとは別の専用の光導電層でもよい。
【0022】
ここで、予備処理の時間間隔と静電記録体の感度変化との関係について説明する。図3は予備処理の時間間隔と静電記録体の感度変化との関係を示すグラフである。グラフの縦軸は感度(mR)を、横軸は予備処理の回数を表している。また、グラフA、B、C、Dは、静電記録体中の各々異なる場所での測定データを示している。予備処理の時間間隔については、2回目と3回目の間では1分、12回目と13回目の間では5分、22回目と23回目の間では10分、32回目と33回目の間では20分の休止期間をとっており、それ以外の部分では予備処理の間隔は22秒としている。
【0023】
図3のグラフに示すとおり、休止期間を1分とった場合(2回目と3回目の間)では感度特性に殆ど変化が見られないのに対し、休止期間を5分以上とった場合(12回目と13回目の間、22回目と23回目の間、32回目と33回目の間)では感度特性に大きな変化が見られる。また、断続的に予備処理を行っている部分では感度特性に殆ど変化が見られない。このような特性は、グラフA、B、C、Dが略同様の特性を示していることから分かる通り、静電記録体の局所的な場所に依存せず全体に渡って同様の傾向が見られる。
【0024】
以上のことから、予備処理は、少なくとも1分以内毎に行えば、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズの低減と安定化の効果を得ることができるが、好ましくは30秒以内毎、さらに好ましくは10秒以内毎に行えば、より顕著な効果を得ることができる。
【0025】
本発明の画像情報記録読取装置は、上記画像情報記録読取方法を実施する装置であり、第1電極層と画像情報を担持する記録用の電磁波の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層と第2電極層とをこの順に有すると共に電磁波のエネルギ量に応じた量の電荷を潜像電荷として蓄積する蓄電部が第1電極層と第2電極層との間に形成されて成り、第1電極層の電極と第2電極層の電極との間に記録用電圧を印加した状態で第1電極層に記録用の電磁波が照射されることにより蓄電部に画像情報が静電潜像として記録され、且つ第1電極層と第2電極層とを同電位にした状態で潜像電荷の量に応じた画像情報が読み取られる静電記録体を使用して画像情報の記録と読取りを行なう画像情報記録読取装置において、第1電極層の電極と第2電極層の電極との間に所定の電圧を印加する電圧印加手段と、光導電層に消去光を照射する消去光照射手段と、第1電極層の電極と第2電極層の電極との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加と、第1電極層の電極と第2電極層の電極とを同電位にした状態で光導電層に消去光を照射する空読みとを行う予備処理を、画像情報の記録休止期間中に断続的に行なわさせるように電圧印加手段と消去光照射手段とを制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0026】
上記画像情報記録読取装置において、制御手段は、予備処理を少なくとも1分以内毎に行わせるものとすれば、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズの低減と安定化の効果を得ることができるが、好ましくは30秒以内毎、さらに好ましくは10秒以内毎に行えば、より顕著な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の画像情報記録読取方法および装置によれば、第1電極層の電極と第2電極層の電極との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加と、第1電極層の電極と第2電極層の電極とを同電位にした状態で光導電層に消去光を照射する空読みとを行う予備処理を、画像情報の記録休止期間中に断続的に行うようにしたことにより、静電記録体における光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズを常に低減され安定化した状態に保つことができるため、撮影と撮影との間に時間が空いた場合等でも高品位な撮影を行うことが可能となる。
【0028】
上記において、予備処理は、少なくとも1分以内毎に行えば、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズの低減と安定化の効果を得ることができるが、好ましくは30秒以内毎、さらに好ましくは10秒以内毎に行えば、より顕著な効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の画像情報記録読取方法および装置を適用した、放射線画像撮影読取装置の概略図である。
【0030】
図1に示すように、この放射線画像撮影読取装置1は、静電記録体としての放射線固体検出器(以下単に検出器とも言う)10と、検出器10に積層された面状光源30、面状光源30を制御する光源制御手段40および検出器10の電荷を読み出す電流検出回路50からなる読取部20と、放射線照射部60と、電流検出回路50および放射線照射部60に接続された制御手段70を有している。
【0031】
検出器10は、画像情報を担持する電磁波としての被写体を透過した記録用の放射線(例えば、X線等;以下記録放射線という)が第1電極層(導電体層)11に照射されることにより記録用光導電層12内に電荷が発生し、この発生した電荷を記録用光導電層12と電荷輸送層13との界面である蓄電部19に潜像電荷として蓄積し、読取光(読取用の電磁波)で第2電極層(導電体層)15が走査されることにより読取用光導電層14内に電荷が発生し前記潜像電荷と電荷再結合して潜像電荷の量に応じた電流を発生するものである。読取用電極層としての第2電極層15は、多数の線状電極(図中の斜線部)がストライプ状に配列されて成るものである。以下第2電極層15の電極をストライプ電極16といい、各線状電極をエレメント16aという。
【0032】
記録用光導電層12、電荷輸送層13、および読取用光導電層14には、アモルファス状の物質としてのa−Seを主成分とするものを使用する。
【0033】
面状光源30は、導電層31,EL層32,導電層33から成るEL発光体であり、上述のように検出器10に積層されている。検出器10のストライプ電極16と導電層31との間には絶縁層34が設けられる。導電層31は、多数のエレメント(図中の斜線部)31aがストライプ状に配列されて成るものであり、各エレメント31aは、検出器10のストライプ電極16の各エレメント16aと交差(本例では略直交)するように配列されており、これにより、エレメント31aによるライン状の光源が面状に多数配列するように構成される。各エレメント31aは光源制御手段40に接続されている。
【0034】
EL層32としては、検出器10の読取用光導電層14の主成分であるa−Seとのマッチングを考慮して、波長470nm程度のEL光が発せられるような物資を用いる。
【0035】
光源制御手段40は、エレメント31aとそれに対向する導電層33との間に所定の電圧を印加するものであり、読取時にはエレメント31aに個別に電圧を印加し、消去光照射時には複数または全てのエレメント31aに同時に電圧を印加するものである。例えば、エレメント31aを順次切り替えながら、夫々のエレメント31aと導電層33との間に所定の直流電圧を印加すると、エレメント31aと導電層33とに挟まれたEL層32からEL光が発せられ、エレメント31aを透過したEL光はライン状の読取光(以下ライン光という)として利用される。すなわち、面状光源30としては、ライン状の微小光源を面状に多数配列したものと等価となり、ストライプ電極16の長手方向の一方の端から他方の端までの全部についてエレメント31aを順次切り替えてEL発光させることにより、ライン光でストライプ電極16の全面を電気的に走査することになる。なお、エレメント16aの長手方向が副走査方向に対応し、ライン光の延びる方向が主走査方向に対応する。
【0036】
一方、複数または全てのエレメント31aに同時に電圧を印加すると、この電圧の印加によりEL層32からストライプ電極16の全面に亘って略一様にEL光が発せられ、このEL光が消去光として利用される。つまり、面状光源30は読取光源としてだけでなく後述する消去光照射用の光源としても機能し、この面状光源30と光源制御手段40とが、本発明の消去光照射手段として機能するように構成されている。
【0037】
光源制御手段40には、制御信号C1が入力されるようになっており、制御信号C1がL(ロー)のときには消去光としてのEL光を発する消去光モード、H(ハイ)のときには読取光としてのEL光を発する読取光モードとなる。制御信号C1がハイインピーダンス状態のときには面状光源30からはEL光が発せられない。
【0038】
電流検出回路50は、ストライプ電極16の各エレメント16a毎に、反転入力端子に接続された電流検出アンプ51を多数有している。検出器10の第1電極層11はスイッチ52の一方の入力および電源53の負極に接続されており、電源53の正極はスイッチ52の他方の入力に接続されている。スイッチ52および電源53とにより、本発明による電圧印加手段が構成される。
【0039】
スイッチ52の出力は各電流検出アンプ51を構成する不図示のオペアンプの非反転入力端子に共通に接続されている。面状光源30から読取光としてのライン光がストライプ電極16側に照射(走査露光)されることにより、各電流検出アンプ51は、各エレメント16aに流れる電流を、接続された各エレメント16aについて同時(並列的)に検出する。
【0040】
なお、電流検出アンプ51の構成の詳細については、本発明の要旨に関係がないのでここでは詳細な説明を省略するが、周知の構成を種々適用することが可能である。電流検出アンプ51の構成によっては、スイッチ52および電源53並びに各エレメント16aとの接続態様が上記とは異なるものとなるのは勿論である。
【0041】
放射線照射部60は、放射線Rを発する放射線源61、放射線源61を駆動する電力を発生する高電圧発生器62、高電圧発生器62と接続された撮影をコントロールするスイッチ63とからなる。スイッチ63は、スイッチ63a,63bから成る2段スイッチとなっており、スイッチ63aがオンしなければスイッチ63bはオンしないように構成されている。
【0042】
なお、本発明による作用が、所定のタイミングで自動的に行なわれるようにするために、制御手段70には、スイッチ63a,63bからの信号S1,S2と、高電圧発生器62からのスタンバイ信号S4、記録放射線の照射終了を示す照射終了信号S5および設定された記録放射線の照射時間を示す信号S6と、光源制御手段40からの消去光の照射が終了したことを示す照射終了信号S7が夫々入力され、また制御手段70からは、光源制御手段40に向けて制御信号C1が、スイッチ52に向けて制御信号C2が、高電圧発生器62に向けて制御信号C3が夫々出力されるようにする。
【0043】
制御信号C2がHのときにはスイッチ52が電源53側に切り換えられ、検出器10(詳しくは第1電極層11の電極とストライプ電極16との間)に電源53から直流電圧が印加される。一方制御信号C2がLのときには、スイッチ52は第1電極層11側に切り換えられ、電流検出アンプ51を構成する不図示のオペアンプのイマジナリーショートを介して第1電極層11の電極とストライプ電極16とが実質的にショートされ、両電極が同電位にされる。また制御信号C2がハイインピーダンス状態のときにはスイッチ52は中点に設定され、電源53の正極はフローティング状態となり、検出器10への電圧印加が行なわれないし両電極が同電位にされることもない。高電圧発生器62は、制御信号C3としてHが入力されたときには高圧HVを放射線源61に供給し、放射線源61から放射線Rを発生させる。
【0044】
以下、上記構成の放射線画像撮影読取装置1の作用について説明する。図2は装置1の作用を説明するタイミングチャートである。なお、図2に示すタイミングチャートにおいて、ハイレベル期間が、検出器に電圧が印加されたり光(消去光、記録放射線、読取光)が照射されるアクティブな期間であり、ローレベル期間(基準レベル期間)がその反対のインアクティブな期間である。
【0045】
最初に記録時のシーケンスについて説明する。まず、第1電極層11の電極とストライプ電極16との間に記録用電圧を印加した状態で第1電極層11に記録用の放射線Qを照射して、検出器10に静電潜像の記録を行なう。具体的には、先ず検出器10内の記録用光導電層12で発生した電荷を蓄電部19に蓄積させることができるように、スイッチ52を電源53側に切り換えて第1電極層11の電極とストライプ電極16との間に電源53から記録用電圧としての所定の大きさの直流電圧を印加して、両者を帯電させる。
【0046】
この記録用電圧の印加の後、高電圧発生器62から高圧HVを放射線源61に供給させ、放射線源61から放射線Rを照射させる。この放射線Rを被写体65に爆射し、被写体65を透過した被写体65の放射線画像情報を担持する記録放射線Qを設定された照射時間だけ検出器10に照射する。すると、検出器10の記録用光導電層12内で正負の電荷対が発生し、その内の負電荷が所定の電界分布に沿ってストライプ電極16の各エレメント16aに集中せしめられ、記録用光導電層12と電荷輸送層13との界面である蓄電部19に潜像電荷として蓄積される。潜像電荷の量は照射放射線量に略比例するので、この潜像電荷が静電潜像を担持することとなる。一方、記録用光導電層12内で発生する正電荷は第1電極層11に引き寄せられて、電源53から注入された負電荷と電荷再結合し消滅する。
【0047】
次に、検出器10から静電潜像を読み取る際には、先ず制御信号C1をH(読取光モード)にし、スイッチ52を検出器10の第1電極層11側に接続して、光源制御手段40により、エレメント31aを順次切り替えながら、夫々のエレメント31aと導電層33との間に所定の直流電圧を印加して、EL層32から発せられるライン光で検出器10の全面を電気的に走査する。
【0048】
このライン光による走査により副走査位置に対応するライン光が入射した光導電層14内に正負の電荷対が発生し、その内の正電荷が蓄電部16に蓄積された負電荷(潜像電荷)に引きつけられるように電荷輸送層13内を急速に移動し、蓄電部16で潜像電荷と電荷再結合し消滅する。一方、光導電層14に生じた負電荷は電源53からストライプ電極16に注入される正電荷と電荷再結合し消滅する。このようにして、検出器10の蓄電部19に蓄積されていた負電荷が電荷再結合により消滅し、この電荷再結合の際の電荷の移動による電流が検出器10内に生じる。この電流を各エレメント16a毎に接続された各電流検出アンプ51が同時に検出する。読取りの際に検出器10内を流れる電流は、潜像電荷すなわち静電潜像に応じたものであるから、この電流を検出することにより静電潜像を読み取る、すなわち静電潜像を表す画像信号を取得することができる。
【0049】
次に、制御手段70はスイッチ52に入力される制御信号C2をLとする。これによりスイッチ52が第1電極層11側に切り換えられ、第1電極層11の電極とストライプ電極16とが実質的にショートされ、両電極が同電位にされる。次に、光源制御手段40に入力される制御信号C1をL(消去光モード)にして、面状光源30に消去光としてのEL光を発光させて、読取用光導電層14に消去光を照射する空読みを行なわせる。
【0050】
次に、この空読みを停止するべく、光源制御手段40に入力される制御信号C1をハイインピーダンス状態として、面状光源30からのEL光の発光を停止させる。
【0051】
以上のシーケンスにより記録時の動作が終了する。
【0052】
図2に示す通り、本発明においては記録休止期間中、すなわち上記記録時のシーケンスが終了してから、次の記録時のシーケンスの先頭までの間に、空電圧印加と空読みとを行う予備処理を繰り返すことにより、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズの低減と安定化を図っている。
【0053】
次に、この記録休止期間中のシーケンスについて説明する。
【0054】
まず、制御手段70は、第1電極層11の電極とストライプ電極16との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧(以下空電圧という)を所定の時間だけ印加する空電圧印加を行なわせるようにする。具体的には、スイッチ52を電源53側に切り換えて第1電極層11の電極とストライプ電極16との間に電源53から空電圧を所定の時間だけ印加させる。
【0055】
なお、図1においては、この空電圧として記録用の電圧と同じ大きさおよび極性の電圧を印加するものとして示しているが、電源53を、電圧値を変更可能なものとすると共に、その極性を反転させることができるようなものとすることにより、電圧値および極性を記録用の電圧と異なるものとすることができる。
【0056】
次に、制御手段70はスイッチ52に入力される制御信号C2をLとする。これによりスイッチ52が第1電極層11側に切り換えられ、第1電極層11の電極とストライプ電極16とが実質的にショートされ、両電極が同電位にされる。次に、光源制御手段40に入力される制御信号C1をL(消去光モード)にして、面状光源30に消去光としてのEL光を発光させて、読取用光導電層14に消去光を照射する空読みを行なわせる。
【0057】
次に、この空読みを停止するべく、光源制御手段40に入力される制御信号C1をハイインピーダンス状態として、面状光源30からのEL光の発光を停止させる。
【0058】
上記のシーケンスからなる予備処理を、制御手段70は10秒毎に一回行わせるように装置1の各要素を制御する。
【0059】
なお、この予備処理は、少なくとも1分以内毎に行えば、光起電力ノイズ、暗潜像ノイズおよび高圧印加履歴ノイズの低減と安定化の効果を得ることができるが、好ましくは30秒以内毎、さらに好ましくは10秒以内毎に行うことにより、より顕著な効果を得ることができる。
【0060】
以上、本発明の画像情報記録読取方法および装置を適用した放射線画像撮影読取装置について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、静電記録体(放射線固体検出器)の構成や消去光照射手段の構成などの各種手段の構成、さらには記録時や休止期間中のシーケンスなども適宜変更することができる。
【0061】
例えば静電記録体については、第1電極層、光導電層、および第2電極層をこの順に有すると共に、第1電極層と2電極層との間に蓄電部が形成されて成る光読出方式のものであれば良く、蓄電部を形成するために、さらに他の層や微小導電部材(マイクロプレート)を積層して成るものであってもかまわない。
【0062】
また、読取光照射手段および消去光照射手段についても、上述した面状光源30および光源制御手段40からなる構成のみに限定されず、読取光照射手段については、ビーム光やライン光の照射位置を静電記録体に対して相対移動させるものであればよく、例えば消去光照射手段と別体のものであってもよいし、また電気的な走査に限らず、光源と静電記録体とを機械的に相対移動させる構成のものであってもよい。
【0063】
さらに予備処理についても、上述したような空電圧印加を行った後に空読みを行う態様に限定されるものではなく、例えば「空読み(前露光)→空電圧印加→空読み(後露光)」とする態様など、空電圧印加と空読みの両方を行う態様であればどのような態様としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の画像情報記録読取方法および装置を適用した、放射線画像撮影読取装置の概略図
【図2】本発明を適用した放射線画像撮影読取装置の作用を説明するタイミングチャート
【図3】予備処理の時間間隔と静電記録体の感度変化との関係を示すグラフ
【符号の説明】
【0065】
1 放射線画像撮影読取装置
10 静電記録体(放射線固体検出器)
20 読取部
30 面状光源(読取光用、消去光用の光源)
40 光源制御手段
50 電流検出回路
60 放射線照射部
70 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層と画像情報を担持する記録用の電磁波の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層と第2電極層とをこの順に有すると共に前記電磁波のエネルギ量に応じた量の電荷を潜像電荷として蓄積する蓄電部が前記第1電極層と前記第2電極層との間に形成されて成り、前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極との間に記録用電圧を印加した状態で前記第1電極層に前記記録用の電磁波が照射されることにより前記蓄電部に画像情報が静電潜像として記録され、且つ前記第1電極層と前記第2電極層とを同電位にした状態で前記潜像電荷の量に応じた画像情報が読み取られる静電記録体を用いて画像情報の記録と読取りを行なう画像情報記録読取方法において、
前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加と、前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極とを同電位にした状態で前記光導電層に消去光を照射する空読みとを行う予備処理を、画像情報の記録休止期間中に断続的に行うことを特徴とする画像情報記録読取方法。
【請求項2】
前記予備処理を、1分以内毎に行うことを特徴とする請求項1記載の画像情報記録読取方法。
【請求項3】
前記予備処理を、30秒以内毎に行うことを特徴とする請求項1または2記載の画像情報記録読取方法。
【請求項4】
前記予備処理を、10秒以内毎に行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の画像情報記録読取方法。
【請求項5】
第1電極層と画像情報を担持する記録用の電磁波の照射を受けることにより導電性を呈する光導電層と第2電極層とをこの順に有すると共に前記電磁波のエネルギ量に応じた量の電荷を潜像電荷として蓄積する蓄電部が前記第1電極層と前記第2電極層との間に形成されて成り、前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極との間に記録用電圧を印加した状態で前記第1電極層に前記記録用の電磁波が照射されることにより前記蓄電部に画像情報が静電潜像として記録され、且つ前記第1電極層と前記第2電極層とを同電位にした状態で前記潜像電荷の量に応じた画像情報が読み取られる静電記録体を使用して画像情報の記録と読取りを行なう画像情報記録読取装置において、
前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極との間に所定の電圧を印加する電圧印加手段と、
前記光導電層に消去光を照射する消去光照射手段と、
前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極との間に所定の大きさおよび所定の極性の電圧を所定の時間だけ印加する空電圧印加と、前記第1電極層の電極と前記第2電極層の電極とを同電位にした状態で前記光導電層に消去光を照射する空読みとを行う予備処理を、画像情報の記録休止期間中に断続的に行なわさせるように前記電圧印加手段と前記消去光照射手段とを制御する制御手段とを備えたことを特徴とする画像情報記録読取装置。
【請求項6】
前記制御手段が、前記予備処理を1分以内毎に行わせるものであることを特徴とする請求項5記載の画像情報記録読取装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記予備処理を30秒以内毎に行わせるものであることを特徴とする請求項5または6記載の画像情報記録読取装置。
【請求項8】
前記制御手段が、前記予備処理を10秒以内毎に行わせるものであることを特徴とする請求項5から7のいずれか1項記載の画画像情報記録読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−122500(P2008−122500A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303797(P2006−303797)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】