説明

画像投写システムおよび画像投写方法

【課題】スクリーンの移動を容易に実現させることで、観察者の目の残像効果により、投写した2次元画像から3次元イメージを生成させる画像投写システムを安価に提供する。
【解決手段】画像投写システム1は、3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の2次元画像データが入力され、複数のスクリーン58のそれぞれを、投写方向に平行な一方向に繰返し移動させるか、または楕円状の回転体56に外接させ、当該回転体56を一定の方向に繰返して回転させることにより、ズームレンズ162から投写可能な1つのスクリーン58までの投写距離を一定の周期で変化させると共に、前記入力された複数の2次元画像データの中から、前記投写距離に応じた2次元画像データが選択され、前記選択された2次元画像データが示す光学像を、一定の大きさで前記1つのスクリーン58に表示するべくズームレンズ162を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察者の目の残像効果により、投写した2次元画像から3次元イメージを生成させる画像投写システムおよび画像投写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーンを掃引することで形成される空間内に複数の2次元画像を順次分配し、観察者の視覚上の残像効果により3次元イメージを形成する方法としては、下記特許文献1に記載されているように、回転運動を往復運動に変換する機構部により、スクリーンを往復移動させ、このスクリーンの移動に合わせて、プロジェクタの焦点位置や像の大きさ等を制御した。
【0003】
【特許文献1】特開2002−268136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、スクリーンを往復移動させるための機構部は、カムやシャフト等の機械部品をいくつも組合せて構成されることから、構造が複雑になり、このような機構部を含む装置の製造コストも増大した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するために、本発明の画像投写システムは、2次元画像データに応じて光束を変調することで光学像を形成し、当該形成した光学像を投写レンズによりスクリーンに投写して表示する画像投写システムであって、3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の2次元画像データが入力される入力部と、少なくとも1つ以上のスクリーンのそれぞれを、投写方向に平行な一方向に一定の間隔で繰返し移動させるか、または楕円状の回転体に一定の間隔で外接させ、当該回転体を一定の方向に繰返し回転させることにより、投写レンズから投写可能な1つの前記スクリーンまでの投写距離を一定の周期で変化させる投写距離変動部と、前記入力された複数の2次元画像データの中から、前記投写距離に応じた2次元画像データを選択する選択部と、前記選択された2次元画像データが示す光学像を、前記1つのスクリーンに一定の大きさで投写するべく投写レンズを制御する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
この発明によれば、複数のスクリーンのそれぞれは、投写方向に平行な一方向に繰り返し移動されるか、または楕円状の回転体に外接して、この回転体が一定の方向に繰返し回転されることで、投写可能な1つのスクリーンまでの投写距離が一定の周期で変化すると共に、この投写可能なスクリーンに対しては、光学像の大きさが一定になるように制御されて投写されるため、往復移動させるための機構部が不要で、移動するスクリーンによる残像効果を利用した視覚上での3次元イメージの生成を容易かつ安価に実現できる。
【0007】
本発明の画像投写システムでは、前記投写距離変動部は、スクリーンを回転させる場合と、スクリーンを一方の方向に直線移動させる場合が考えられる。スクリーンを回転させる場合は、一定の方向に回転する回転部と、それぞれの一方の端部が前記回転部に一定の間隔で接続され、前記回転部の回転中心から他方の端部までのそれぞれの長さが一定の割合で増減する複数の支持部と、それぞれの前記支持部の他方の端部に接続され、前記回転に従い前記光学像が順次投写される複数のスクリーンと、を備えても良い。また、スクリーンを一方の方向に直線移動させる場合は、一定の方向に回転する回転部と、前記回転を、前記投写方向に平行な一方向の直線移動に変換する変換部と、それぞれが一定の間隔で配置され、前記直線移動に従い前記光学像が順次投写される複数のスクリーンと、を備えても良い。更に、本発明の画像投写システムでは、前記回転部は、間欠回転しても良い。
【0008】
本発明の画像投写システムは、前記1つ以上のスクリーンに対して前記画像を交互に投写する複数の投写部を更に備えることが好ましい。
【0009】
この発明によれば、複数の投写部が移動するスクリーンに対して交互に投写するため、移動する投写位置に合わせて制御された投写レンズは、非投写時を利用して初期状態に復元できることから、次に投写する場合の投写レンズの制御を初期状態から迅速に開始できる。
【0010】
上記した課題を解決するために、本発明の画像投写方法は、2次元画像データに応じて光束を変調することで光学像を形成し、当該形成した光学像を投写レンズによりスクリーンに投写して表示する画像投写方法であって、3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の2次元画像データが入力される入力工程と、少なくとも1つ以上のスクリーンのそれぞれを、投写方向に平行な一方向に一定の間隔で繰返し移動させるか、または楕円状の回転体に一定の間隔で外接させ、当該回転体を一定の方向に繰返し回転させることにより、投写レンズから投写可能な1つの前記スクリーンまでの投写距離を一定の周期で変化させる投写距離変動工程と、前記入力された複数の2次元画像データの中から、前記投写距離に応じた2次元画像データを選択する選択工程と、前記選択された2次元画像データが示す画像を、前記1つのスクリーンに一定の大きさで投写するべく投写レンズを制御する制御工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、複数のスクリーンのそれぞれは、投写方向に平行な一方向に繰り返し移動されるか、または楕円状の回転体に外接して、この回転体が一定の方向に繰返し回転されることで、投写可能な1つのスクリーンまでの投写距離が一定の周期で変化すると共に、この投写可能なスクリーンに対しては、光学像の大きさが一定になるように制御されて投写されるため、往復移動させるための機構部が不要で、移動するスクリーンによる残像効果を利用した視覚上での3次元イメージの生成を容易かつ安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る画像投写システム1の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
【0013】
図1(a)は、本実施形態1の画像投写システム1の概略構成図である。この画像投写システム1は、スクリーン回転装置50と、コンピュータ10と、プロジェクタ100とを具備し、コンピュータ10とスクリーン回転装置50、ならびにコンピュータ10とプロジェクタ100は、それぞれ接続ケーブル45で接続されている。スクリーン回転装置50は、ステップモータ52(図2)および間欠送り手段(図示は略す)により一定の方向に間欠回転する回転部56と、それぞれの一方の端部が回転部56に一定の間隔で接続され、この回転部56の回転中心から他方の端部までのそれぞれの長さが、L2からL1まで一定の割合で増減する複数の支持部55と、それぞれの支持部55の他方の端部に接続された複数のスクリーン58を有する。
【0014】
尚、本実施形態1では、支持部55のそれぞれの長さは、支持部55の先端部が略楕円状になるように配置されている。この結果、回転部56の回転により、それぞれの支持部55の先端で構成される包絡面は、楕円状の回転体となり、プロジェクタ100の光軸上から見ると、それぞれのスクリーン58は、回転体と同期して回転すると共に、この回転体に外接して倣うように光軸方向に移動する。従って、それぞれのスクリーン58をプロジェクタ100の光軸上に順次案内するべく、間欠回転させることにより、プロジェクタ100から支持部55の先端に接続されたスクリーン58までの投写距離は、L1とL2との差分の距離だけ変動する。
【0015】
コンピュータ10は、プロジェクタ100に対して投写すべき画像のデータと制御信号を送ると共に、回転部56に対して、所定の回転数で間欠回転すべく制御信号を送る。プロジェクタ100は、コンピュータ10からの指示に従い、間欠回転する複数のスクリーン58の中から、プロジェクタ100の投写光軸上に間欠回転により案内されたスクリーン58aに対して、このスクリーン58aまでの距離を算出すると共に、画像を所定の大きさで投写すべくズーム倍率と焦点位置を調整して画像をこのスクリーン58a上に投写する。このような動作を繰返すことにより、それぞれのスクリーン58上には、間欠回転に従いプロジェクタ100から投写される画像が順次投写される。
【0016】
図1(b)は、スクリーン58に投写される2次元の画像から立体画像を形成する方法を説明する図である。この図1(b)に示すように、支持部55の長さに応じたスクリーン58の投写位置に応じて、3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の投写画像(60a,60b,60c)を、一定の方向(60c→60b→60a)に掃引する空間に順次分配することにより、スクリーン58に投写される2次元の画像は、観察者の目の中では、残像効果によって円柱体画像のような3次元のイメージが形成される。
【0017】
図2は、画像投写システム1のハードウェア構成を示す図である。この中で、コンピュータ10は、CPU(Central Processing Unit)12と、RAM(Random Access Memory)14と、ROM(Read Only Memory)16と、データ入力I/F(Interface)18と、画像メモリ20と、ランプ制御回路24と、ビデオデコーダ26と、ビデオプロセッサ28と、パルスコントローラ30と、A/D変換回路32と、超音波モータコントローラ34と、ライトバルブ駆動回路36とを備える。尚、これらのハードウェアは、バスにより各信号が授受可能に接続されている。また、スクリーン回転装置50は、ステップモータ52と距離センサ54とを備える。更に、プロジェクタ100は、光学ユニット105、この光学ユニット105に組み込まれた超音波モータ164、および図示を略す冷却装置や電源装置等を備える。
【0018】
CPU12は、ROM16に格納された基本制御プログラムなどの各種プログラム及びデータを読み込み、これらの各種プログラム及びデータをRAM14内に設けられるメインメモリ領域に展開して実行し、画像投写システム1の各部を制御する。
【0019】
データ入力I/F18には、メモリカード読み取り装置40が接続されている。このメモリカード読み取り装置40は、SDメモリカード(登録商標)のようにフラッシュメモリを内部に備えたメモリカードを装着することで、メモリカードに記憶された画像データ等を読み込むことができる。
【0020】
ビデオデコーダ26は、メモリカード読み取り装置40を介して入力された画像データのアナログ画像信号に対してA/D(Analog to Digital)変換を行い、ビデオプロセッサ28に入力可能なデジタル画像信号に変換する。また、ビデオプロセッサ28は、ビデオデコーダ26で変換されたデジタル画像信号を入力して、種々の画像処理を実行する。この画像処理により、例えば、デジタル画像の各画素は赤、緑、青の各色光に分解されて、各色光毎に画像信号が生成される。更に、画像メモリ20は、これらの画像処理を行うために、デジタル画像信号を一時的に保管するためのメモリである。
【0021】
パルスコントローラ30は、スクリーン回転装置50のステップモータ52を回転させるためのパルス信号を発生する。ここで発生されるパルス信号に従い、回転部56は精密に回転すると共に、前記した回転部56と支持部55により、プロジェクタ100からスクリーン58までの投写距離が変動する。
A/D変換回路32は、スクリーン回転装置50の距離センサ54から出力されるアナログ信号を入力して、デジタルデータに変換して出力する。距離センサ54は、スクリーン58が光軸方向に移動する距離を検出するセンサであり、光センサや超音波センサを採用できる。
【0022】
ランプ制御回路24は、プロジェクタ100の光源ランプ111に供給する電力を制御することにより、光源ランプ111の点灯や消灯、および投写される画像の照度等を調整すると共に、移動中のスクリーン58に対して投写光を遮断するシャッタ116(図3)の開閉を制御する。
【0023】
ライトバルブ駆動回路36は、ビデオプロセッサ28により生成された各色光ごとの画像信号に従い、赤、緑、青の各色光毎に構成されるプロジェクタ100の液晶ライトバルブ140の画素に駆動電圧を供給する。
【0024】
超音波モータコントローラ34は、プロジェクタ100のズームレンズ162内部に配置された超音波モータ164を駆動させる。この超音波モータ164が駆動することにより、スクリーン58に投写される画像の大きさや焦点位置が変動する。
【0025】
ここで、画像を投写する投写部の一例として、プロジェクタ100の光学ユニット105について、図3のプロジェクタ100の光学系を説明する構成図を参照して概説する。この図3に示すように、光学ユニット105は、光源部110と、投写画像生成部170と、投写光学系160とに大別できる。
【0026】
光源部110は、光源ランプ111と、第1のレンズアレイ112と、第2のレンズアレイ113と、偏光変換素子114と、重畳レンズ115と、シャッタ116とを備えており、光源ランプ111から射出された光線束は、微小なレンズ112aがマトリクス状に配置された第1のレンズアレイ112によって多数の微小な光線束に分割される。第2のレンズアレイ113及び重畳レンズ115は、分割された光線束のそれぞれが、照明対象である3つの液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)の全体を照射するように備えられている。このため、各光線束が液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)で重畳され、液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)の全体がほぼ均一に照射される。シャッタ116は、ランプ制御回路24から出力される制御信号に従い高速で開閉することで、光源部110からの光束の射出を制御する。尚、このようなシャッタ116は、光源部110に限定されず、投写光学系160や投写画像生成部170に配置されても良い。
【0027】
偏光変換素子114は、光源ランプ111からの非偏光な光を液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)で効率よく利用可能とするため、特定の偏光方向を有する光に揃える機能を有している。光源部110を射出した光は、色光分離光学系120に入射する。
【0028】
投写画像生成部170は、色光分離光学系120と、リレー光学系130と、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)と、クロスダイクロイックプリズム150とを備える。この投写画像生成部170は、画像信号生成部76(図4)から入力された映像信号から光学像を投写可能に生成する。
【0029】
色光分離光学系120は、光源部110から射出された光を、波長域の異なる3色の光に分離する。第1のダイクロイックミラー121は、略赤色の光を透過させるとともに、透過する光よりも短波長の光を反射する。第1のダイクロイックミラー121を透過した赤色光Rは、反射ミラー122で反射されて赤色光用の液晶ライトバルブ140Rを照射する。
【0030】
第1のダイクロイックミラー121で反射された光のうち、緑色光Gは、第2のダイクロイックミラー123によって反射されて緑色光用の液晶ライトバルブ140Gを照射する。また、青色光Bは、第2のダイクロイックミラー123を透過し、リレー光学系130を通過して、青色光用の液晶ライトバルブ140Bを照射する。
【0031】
なお、青色光Bの経路は、他の色光の経路に比べて長くなることから、光線束の発散によって青色光用の液晶ライトバルブ140Bへの照明効率が低下するのを抑制するために、青色光Bの経路には、リレー光学系130が設けられている。
【0032】
リレー光学系130は、入射側レンズ131と、第1の反射ミラー132と、リレーレンズ133と、第2の反射ミラー134と、射出側レンズ135とを備えている。色光分離光学系120から射出した青色光Bは、入射側レンズ131によってリレーレンズ133の近傍で収束し、射出側レンズ135に向けて発散する。
【0033】
液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)のそれぞれは、液晶パネル141と、入射側偏光板142と、射出側偏光板143とを備えており、入射した光を変調して画像(光学像)を形成する。
【0034】
液晶パネル141の入射側表面及び射出側表面には、それぞれ入射側偏光板142及び射出側偏光板143が貼り付けられている。入射側偏光板142及び射出側偏光板143は、それぞれ特定の方向に偏光した光のみを透過可能とし、入射側偏光板142は、偏光変換素子114によって揃えられた方向に偏光した光を透過可能としている。このため、各液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)に入射する各色光の大部分は入射側偏光板142を透過して、液晶パネル141に入射する。
【0035】
ここで、液晶パネル141の各画素に、画像信号に応じた駆動電圧が印加されると、液晶パネル141の画素領域に入射した光は、駆動電圧に応じて変調され、画素毎に異なる偏光方向を有した光となる。この光のうち、射出側偏光板143を透過可能な偏光成分のみが液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)から射出される。つまり、液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)が、画像信号に応じて、画素毎に異なる透過率で入射光を透過させることによって、階調を有する光学像が色光毎に形成される。液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)から射出した各色光からなる光学像は、クロスダイクロイックプリズム150に入射する。
【0036】
クロスダイクロイックプリズム150は、各液晶ライトバルブ(140R,140G,140B)から射出された各色の光学像を、画素毎に合成してカラー画像を表す光学像を形成する。クロスダイクロイックプリズム150によって合成された光学像は、投写光学系160に入射する。
【0037】
投写光学系160は、入射された光学像を拡大して投写することで、スクリーン58に画像を表示する。尚、本実施形態1では、投写光学系160にズームレンズ162を適用する。このズームレンズ162は、例えば、超音波モータ164を駆動源として、ズームレンズのズーム比を制御するレンズ移動手段(図示は略す)の駆動に伴い、光学系を構成する所定のレンズが高速で移動する。この結果、結像位置を同一面に保ちつつ、このズームレンズ162で投写される画像の大きさが移動に応じて瞬時に変動する。更に、このレンズ移動手段は、ズームレンズ162の各位置における合焦位置を算出して、算出した位置まで所定のレンズを高速に移動させることにより、スクリーン58に投写される画像のピントを瞬時に合わせることができるように構成されている。
【0038】
図4は、画像投写システム1の機能構成を示す図である。この図に示すように、画像投写システム1は、画像データ入力部70と、画像データ解析部72と、画像選択部74と、画像信号生成部76と、投写レンズ制御部78と、投写距離取得部80と、投写距離変動部85とを有する。
【0039】
画像データ入力部70は、3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の2次元の画像データが入力される。具体的には、立体形状の3次元イメージは、視点からの距離毎に複数の面で切断され、この切断の結果得られるそれぞれの2次元イメージの画像データが、視点からの距離情報と共に入力される。尚、本実施形態1では、入力されるデータはメモリカード等を介して入力されるが、このような方法には限定されず、例えばネットワークや通信を介して入力されても良い。また、3次元イメージのデータ形式で入力され、画像投写システム1で2次元の画像データに変換しても良い。この画像データ入力部70に入力された2次元の画像データは、画像選択部74に送られる。また、入力された視点からの距離情報は、画像データ解析部72に送られる。
【0040】
画像データ解析部72は、画像データ入力部70から送られる視点からの距離情報に基き、投写距離の変動量を算出すると共に、スクリーン58を回転させる適切な回転速度を算出する。画像データ解析部72で算出された投写距離の変動量に関する情報は、画像選択部74に送られる。また、画像データ解析部72により算出された回転速度に関する情報は、投写距離変動部85に送られる。
【0041】
投写距離変動部85は、少なくとも1つ以上のスクリーンのそれぞれを、投写方向に平行な一方向に一定の間隔で繰返し移動させるか、または楕円状の回転体に一定の間隔で外接させ当該回転体を一定の方向に繰返し回転させることにより、投写レンズから投写可能な1つの前記スクリーンまでの投写距離を一定の周期で変化させる。具体的には、本実施形態1では、画像データ解析部72から送られる回転速度に関する情報に従い、スクリーン回転装置50の回転部56がステップモータ52により制御されて間欠回転すると共に、このスクリーン回転装置50が有する複数のスクリーン58が間欠回転により順次案内されることで、投写可能なスクリーン58は、見かけ上、投写する光軸に沿って往復移動するため、投写距離は周期的に変動される。
【0042】
加えて、投写距離変動部85は、回転するステップモータ52の位相からスクリーン58が投写可能な位置に来たか、否かの情報を生成し、光源部110と投写距離取得部80に送る。この情報を受けた光源部110は、スクリーン58が投写可能な位置に来たときに限り、光源部110から光束を射出するべく、シャッタ116を開閉する。尚、本実施形態1では、回転部56は間欠回転するが、プロジェクタ100や各機能部の処理速度に応じて、連続回転しても良い。
【0043】
投写距離取得部80は、投写距離変動部85から送られる前記情報を契機に、スクリーン回転装置50が駆動することで変動する投写距離を取得する。本実施形態1では、距離センサ54により検出されるスクリーン58の移動距離と、ズームレンズ162の合焦位置とから投写距離を算出して取得する。この投写距離取得部80で取得された投写距離に関する情報は、画像選択部74に送られる。
【0044】
画像選択部74は、画像データ入力部70から送られる2次元の画像データの中から、画像データ解析部72で算出された投写距離の変動量に関する情報と、投写距離取得部80で検出された現在の投写距離に関する情報とに基き、画像データ入力部70から送られる2次元の画像データの中から、最適な2次元の画像データを選択する。この画像選択部74で選択された2次元の画像データは、画像信号生成部76に送られ、投写可能な光学像が生成される。また、投写距離の変動量に関する情報と現在の投写距離に関する情報とは、投写レンズ制御部78に送られる。
【0045】
画像信号生成部76は、画像選択部74から送られる2次元の画像データに基いて、プロジェクタ100に入力可能な映像信号を生成する。生成された映像信号は、プロジェクタ100の投写画像生成部170に送られる。
【0046】
投写レンズ制御部78は、画像選択部74で選択された2次元の画像データが示す光学像を、一定の大きさで投写可能な1つのスクリーン58に表示するべく、投写光学系160のズームレンズ162を制御する。具体的には、常にスクリーン58上に焦点の合った同一サイズの画面を投写するべく、スクリーン58が最短投写距離にある場合は、焦点位置を手前にし画面サイズを大きくする。また、スクリーン58が最長投写距離にある場合は、焦点位置を奥にし、画面サイズを小さくする。
【0047】
以上、画像投写システム1の各機能部を説明したが、これらの機能は、前記したハードウェア資源と、ソフトウェアとが有機的に協働することで実現される。
【0048】
図5は、画像投写システム1における処理の流れを示すフローチャートであり、このフローチャートに従い説明する。
【0049】
最初に処理が開始されると、入力工程が実行され、画像データ入力部70により、奥行きを持つ3次元イメージをそれぞれにより構成する複数の2次元の画像データが入力される(ステップS200)。
【0050】
続いて、投写距離変動工程が実行され、投写距離変動部85により、スクリーン58の移動が開始され(ステップS202)、スクリーン58の移動により、投写距離が周期的に変動する(ステップS204)。
【0051】
スクリーン58の1つが投写可能な位置に来たのを契機として、投写距離取得部80により投写距離が取得される(ステップS206)。
【0052】
ここで、取得された投写距離が、最長の投写距離か、または最短の投写距離であるか、否か判定される(ステップS208)。ここで、取得された投写距離が最長距離でも最短距離でもない場合(ステップS208でNo)、投写距離が取得される工程(ステップS206)に戻る。
【0053】
他方で、取得された投写距離が最長距離、または最短距離である場合(ステップS208でYes)、2次元の画像データの選択工程が実行され、画像選択部74により、投写距離に応じた2次元の画像データが選択される(ステップS210)。
【0054】
続いて、投写レンズを制御する制御工程が実行され、投写レンズ制御部78により、取得された投写距離に合わせるべく、ズームレンズ162の投写倍率と焦点位置が制御される(ステップS212)。
【0055】
更に、画像信号生成部76により、2次元の画像データから映像信号が生成された後、生成された映像信号はプロジェクタ100に送られると共に、スクリーン58が投写可能な位置に来たのに合わせて光源部110のシャッタ116が開くことにより、映像信号が示す画像がスクリーン58に投写される(ステップS214)。
【0056】
続いて、投写距離取得部80により投写距離が取得される(ステップS216)。ここで、取得された投写距離が、最長の投写距離か、または最短の投写距離であるか、否か判定される(ステップS218)。ここで、取得された投写距離が最長距離でも最短距離でもない場合(ステップS218でNo)、3次元のイメージを目の中で生成させるべく、画像掃引の途中であると判断し、投写された画像に続く画像を選択すべく、投写距離に応じた2次元の画像データが選択される工程(ステップS210)に戻る。
【0057】
他方で、前記ステップS208で投写距離が最長距離であって、今回取得された投写距離が最短距離である場合、または、前記ステップS208で投写距離が最短距離であって、今回取得された投写距離が最長距離である場合(ステップS218でYes)、3次元イメージを生成するための画像掃引が終了し、ユーザは残像効果により3次元イメージを視認できたと判断し、ユーザにより投写終了指示が出されたか、否か判定される(ステップS220)。
【0058】
ここで、ユーザにより投写終了指示が出されていないと判定された場合(ステップS220でNo)、ズームレンズ162の投写倍率と焦点位置を初期位置に戻し(ステップS222)、3次元のイメージを目の中で再度生成させるべく、投写距離が取得される工程(ステップS206)に戻る。他方で、ユーザにより投写終了指示が出されていると判定された場合(ステップS220でYes)、投写距離変動部85によるスクリーン58の移動を停止して(ステップS224)、一連の処理が終了する。尚、本実施形態1では、スクリーン58が最長距離から最短距離、または最短距離から最長距離に移動する度にズームレンズ162の倍率と焦点位置を初期状態に戻した(ステップS222)が、スクリーン58が最長距離→最短距離→最長距離・・・のように連続して移動するのに合わせて、ズームレンズ162を都度初期設定することなく、連続して投写することも想定できる。
【0059】
以上述べた実施形態1によれば、以下のような効果を奏する。
(1)プロジェクタ100の光源部110にシャッタ116を設けることで、移動中のスクリーン58に対する画像の投写光を確実に遮断できるため、残像効果による3次元イメージがより鮮明になる。
(2)回転部56をステップモータ52により回転させるため、回転の速度や位相を精度良く制御できる。
(実施形態2)
【0060】
次に、本発明の実施形態2について、図6を参照して説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同じ部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図6は、本実施形態2の画像投写システム1の概略構成図である。前記の実施形態1におけるスクリーン58は、スクリーン回転装置50により楕円状に間欠回転されたが、本実施形態2におけるスクリーン58は、スクリーン直線移動装置95により、一方向に直線移動される。具体的には、この直線移動は回転運動を直線移動に変換するベルト駆動部90により実現され、このベルト駆動部90は、実施形態1と同様にステップモータ52により回転が制御される回転部56と、回転プーリ92aと、従動プーリ92bと、ベルト94とで構成される。
【0062】
複数のスクリーン(58a,58b)は、立てられた状態でそれぞれの1つの側面がベルト94の外側面に所定の間隔を置いて固定され、回転部56の回転が伝達される回転プーリ92aと、この回転プーリ92aから一定の距離を隔てて設置される従動プーリ92bとの間に、このベルト94が掛架される。従って、複数のスクリーン(58a,58b)は、回転部56が一方向に回転することにより、前記した一定の距離に渡って投写方向と平行な一方向に直線移動する。本実施形態2では、スクリーン(58a,58b)の1つがベルト94の上面で直線移動する際に、複数のプロジェクタ(100a,100b)の何れかにより画像が投写されるように構成されている。
【0063】
複数のプロジェクタ(100a,100b)は、それぞれのケーブル45によりコンピュータ10と接続され、画像信号生成部76で生成された映像信号は、それぞれのプロジェクタ(100a,100b)に送られる。また、投写距離変動部85は、回転するステップモータ52の位相から、一方のプロジェクタ100aが一方のスクリーン58aを投写すると共に、他方のプロジェクタ100bが他方のスクリーン58bを投写するべく、投写可能な位置にあるスクリーン58の情報を、それぞれの光源部110に送る。この情報を受けた各光源部110は、対応するスクリーン58が投写可能な位置にある場合、シャッタ116を開いて画像をスクリーン58に投写すると共に、対応するスクリーン58が投写可能な位置にない場合、シャッタ116を閉じる。更に、シャッタ116が、開いた状態から閉じた状態に遷移した場合、ズームレンズ162の投写倍率と焦点位置が初期位置に戻るように構成されている。尚、本実施形態2では、回転部56は連続して回転するが、プロジェクタ100の処理速度等に応じて間欠移動されても良い。また、本実施形態2では、1つのプロジェクタ100には、1つの光学ユニット105が具備されているが、1つのプロジェクタ100に複数の光学ユニット105が具備されている様態も想定できる。
【0064】
このような実施形態2においても、実施形態1の(1)〜(2)と同様な効果を奏することができる。
【0065】
以上、本発明を図示した実施形態に基づいて説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、以下に述べるような変形例も想定できる。
(1)回転部56の回転手段をステップモータ52に代えて、サーボモータとロータリエンコーダとを採用し、回転速度や位相をクローズドループで制御しても良い。
(2)プロジェクタ100は、液晶ライトバルブ140により各色光を変調する方法に限定されず、反射型の液晶表示素子およびマイクロミラー型光変調装置のような微小ミラーアレイ素子などの光変調デバイスを用いた方式の投写装置でも良い。
(3)上述の実施形態では、シャッタ116により、プロジェクタからの光の射出を遮っていたが、シャッタ116を用いずに、液晶ライトバルブにて黒表示をすることにより、プロジェクタからの光の射出を遮っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(a)は、本発明の実施形態1に係る画像投写システムの概略構成図を示し、(b)は、スクリーンに投写される2次元の画像から立体画像を形成する方法を示す図。
【図2】本発明の実施形態1に係る画像投写システムのハードウェア構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態1に係るプロジェクタの光学系を説明する構成図。
【図4】本発明の実施形態1に係る画像投写システムの機能構成を示す図。
【図5】本発明の実施形態1に係る画像投写システムにおける処理の流れを示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態2に係る画像投写システムの概略構成図。
【符号の説明】
【0067】
1…画像投写システム、10…コンピュータ、12…CPU、14…RAM、16…ROM、18…データ入力I/F、20…画像メモリ、24…ランプ制御回路、26…ビデオデコーダ、28…ビデオプロセッサ、30…パルスコントローラ、32…A/D変換回路、34…超音波モータコントローラ、36…ライトバルブ駆動回路、40…メモリカード読み取り装置、50…スクリーン回転装置、54…距離センサ、55…支持部、56…回転部、58,58a〜58p…スクリーン、60a,60b,60c…投写画像、70…画像データ入力部、72…画像データ解析部、74…画像選択部、76…画像信号生成部、78…投写レンズ制御部、80…投写距離取得部、85…投写距離変動部、90…ベルト駆動部、100…プロジェクタ、105…光学ユニット、110…光源部、111…光源ランプ、112…第1のレンズアレイ、112a…レンズ、113…第2のレンズアレイ、114…偏光変換素子、115…重畳レンズ、116…シャッタ、120…色光分離光学系、121…第1のダイクロイックミラー、122…反射ミラー、123…第2のダイクロイックミラー、130…リレー光学系、131…入射側レンズ、132…第1の反射ミラー、133…リレーレンズ、134…第2の反射ミラー、135…射出側レンズ、140…液晶ライトバルブ、140B…青色光用の液晶ライトバルブ、140G…緑色光用の液晶ライトバルブ、140R…赤色光用の液晶ライトバルブ、141…液晶パネル、142…入射側偏光板、143…射出側偏光板、150…クロスダイクロイックプリズム、160…投写光学系、162…ズームレンズ、164…超音波モータ、170…投写画像生成部。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元画像データに応じて光束を変調することで光学像を形成し、当該形成した光学像を投写レンズによりスクリーンに投写して表示する画像投写システムであって、
3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の2次元画像データが入力される入力部と、
少なくとも1つ以上のスクリーンのそれぞれを、投写方向に平行な一方向に一定の間隔で繰返し移動させるか、または楕円状の回転体に一定の間隔で外接させ、当該回転体を一定の方向に繰返し回転させることにより、投写レンズから投写可能な1つの前記スクリーンまでの投写距離を一定の周期で変化させる投写距離変動部と、
前記入力された複数の2次元画像データの中から、前記投写距離に応じた2次元画像データを選択する選択部と、
前記選択された2次元画像データが示す光学像を、前記1つのスクリーンに一定の大きさで投写するべく投写レンズを制御する制御部と、
を備えることを特徴とする画像投写システム。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投写システムにおいて、
前記投写距離変動部は、
一定の方向に回転する回転部と、
それぞれの一方の端部が前記回転部に一定の間隔で接続され、前記回転部の回転中心から他方の端部までのそれぞれの長さが一定の割合で増減する複数の支持部と、
それぞれの前記支持部の他方の端部に接続され、前記回転に従い前記光学像が順次投写される複数のスクリーンと、
を備えることを特徴とする画像投写システム。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投写システムにおいて、
前記投写距離変動部は、
一定の方向に回転する回転部と、
前記回転を、前記投写方向に平行な一方向の直線移動に変換する変換部と、
それぞれが一定の間隔で配置され、前記直線移動に従い前記光学像が順次投写される複数のスクリーンと、
を備えることを特徴とする画像投写システム。
【請求項4】
請求項2乃至3のいずれかに記載の画像投写システムにおいて、
前記回転部は、間欠回転することを特徴とする画像投写システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像投写システムにおいて、
前記形成した光学像を、前記1つ以上のスクリーンに対して前記画像を交互に投写する複数の投写部を更に備えることを特徴とする画像投写システム。
【請求項6】
2次元画像データに応じて光束を変調することで光学像を形成し、当該形成した光学像を投写レンズによりスクリーンに投写して表示する画像投写方法であって、
3次元イメージを一定の方向に沿って切断した切断面を示す複数の2次元画像データが入力される入力工程と、
少なくとも1つ以上のスクリーンのそれぞれを、投写方向に平行な一方向に一定の間隔で繰返し移動させるか、または楕円状の回転体に一定の間隔で外接させ、当該回転体を一定の方向に繰返し回転させることにより、投写レンズから投写可能な1つの前記スクリーンまでの投写距離を一定の周期で変化させる投写距離変動工程と、
前記入力された複数の2次元画像データの中から、前記投写距離に応じた2次元画像データを選択する選択工程と、
前記選択された2次元画像データが示す画像を、前記1つのスクリーンに一定の大きさで投写するべく投写レンズを制御する制御工程と、
を備えることを特徴とする画像投写方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−248822(P2007−248822A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72310(P2006−72310)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】