説明

畦塗り機

【課題】圃場条件に拘わらずに前処理体及び整畦体の整畦作業により発生する反力をコールタが受けて、走行機体の直進性を向上させる。
【解決手段】畦塗り機1は、前処理体21及び整畦体25の整畦作業により発生する反力を受けるコールタ60を備える。コールタ60は、オフセット機構部40から伝達される動力を前処理体21及び整畦体25に振り分ける動力伝達機構を有した支持ケース29の後端部に上下方向に回動自在なコールタ支持部材62を介して設ける。コールタ支持部材62は昇降シリンダ63によって回動してコールタ60を上下方向に移動させる。コールタ支持部材62にセンサアーム66を上下回動自在に設け、センサアーム66の枢支部66aにポテンショメータ68を設ける。ポテンショメータ68の信号は制御装置に伝達され、制御装置はポテンショメータ68の信号に応じて昇降シリンダ63の作動を制御してコールタ60の刺さり込み量を一定にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の後部に連結されて走行機体の走行とともに進行しながら畦塗り作業を行う畦塗り機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畦塗り機は、走行機体の側方にオフセットしたオフセット作業位置に配置された前処理体及び整畦体の畦塗り作業によって発生する反力を抑えるためのコールタを備えたものが知られている。
【0003】
このコールタを備えた畦塗り機80は、例えば、特許文献1に記載されており、図6(平面図)に示すように、走行機体の後部に設けられた三点リンク連結機構部に装着される装着部82を備えた畦塗り機本体81を有している。畦塗り機本体81は、左右両側に前後方向に延びる側枠体83を有し、側枠体83間にミッション装置84が設けられ、ミッション装置84の下方には、左右方向に延びる伝動ケース85が取り付けられている。伝動ケース85には支持アーム86を介してコールタ87が取り付けられ、コールタ87は、操作ハンドル88を回転操作すると上下位置調節が可能に構成されている。
【0004】
整畦体89は、畦塗り機本体81に対して左右方向に回動可能に支持されるとともに回転可能に支持され、整畦体89の回転軸は伝動ケース85の先端部に動力伝達可能に連結され、畦塗り機本体81に設けられた固定手段90によって固定可能に構成されている。また前処理体92は畦塗り機本体81に対して左右方向に回動自在に設けられている。つまり、前処理体92及び整畦体89は、畦塗り機本体81に対して左側のオフセット作業位置と右側のオフセット作業位置に移動可能であるとともに、各作業位置において畦塗り機本体81に固定可能に構成されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−127603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の畦塗り機は、コールタの上下位置を畦塗り作業を行う前に予め位置調整を行うが、圃場や元畦に凹凸があると、畦塗り機が進行方向に対して左右方向に大きく傾いてコールタが圃場から離れて浮く場合がある。コールタが圃場から浮いた状態になると、前処理体及び整畦体の整畦作業により発生する反力をコールタが受けることができなくなるため、この反力は畦塗り機本体、装着部、三点リンク連結機構部を介して走行機体に伝達する。このため、走行機体に左右方向の力が作用して走行機体が幅方向に傾いてハンドルがとられ、走行機体の直進性が悪くなり、またこれに装着された畦塗り機の直進性も悪くなるという課題があった。
【0007】
なお、走行機体には、走行機体自体が幅方向に傾いたときに三点リンク連結機構部の幅方向に配設されたリンク部材の少なくとも一方を上下方向に回動させて走行機体の後部に装着された作業機の左右方向のバランスを水平に維持可能な水平機構を設けたものがあるが、このような水平機構を備えた走行機体は、畦塗り機のみが左右方向に傾いてコールタが浮いた場合には水平機構は作動しないので、畦塗り機から走行機体に対して走行機体を傾けようとする力が作用すると、走行機体が傾いて走行機体の直進性が悪くなるという同様の課題が発生する。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために提案されたものであり、圃場や元畦の凹凸によって畦塗り機が傾いても前処理体及び整畦体の整畦作業により発生する反力をコールタが受けて、走行機体及びこれに装着された畦塗り機の直進性を向上させることが可能な畦塗り機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は次の特徴を有する。すなわち、特徴の一つは、走行機体(例えば、実施形態におけるトラクタ100)の後部に連結され、該走行機体からの動力を受けて元畦の一部及び圃場を耕耘して元畦側に畦状に盛り上げる前処理体及び該前処理体により耕耘された土壌を回転しながら畦に成形するドラム状の整畦体を有し、前処理体及び整畦体の整畦作業により発生する反力を抑えて走行機体の直進性を維持するコールタを備えた畦塗り機において、コールタがアクチュエータ(例えば、実施形態における昇降シリンダ63)を介して上下方向に移動可能に支持され、コールタの圃場への刺さり込み量を検出する刺さり込み量検出手段(例えば、実施形態におけるポテンショメータ68)が設けられ、刺さり込み量検出手段からの検出信号に応じてアクチュエータの作動を制御してコールタの刺さり込み量を一定にする制御手段(例えば、実施形態における制御装置70)が設けられたことを特徴とする。
【0010】
この特徴によれば、コールタをアクチュエータを介して上下方向に移動可能に支持し、コールタの圃場への刺さり込み量を検出する刺さり込み量検出手段を設け、刺さり込み量検出手段からの検出信号に応じてアクチュエータの作動を制御してコールタの刺さり込み量を一定にする制御手段を設けることにより、コールタの位置が上方に移動して刺さり込み量が小さくなると、制御手段は刺さり込み量が増大するようにアクチュエータの作動を制御し、コールタの位置が下方に移動して刺さり込み量が大きくなると、制御手段は刺さり込み量が小さくなるようにアクチュエータの作動を制御する。このため、圃場や元畦に凹凸があって畦塗り作業中に畦塗り機が進行方向に対して左右方向に傾いても、コールタの刺さり込み量を常に一定にすることができ、前処理体及び整畦体の畦塗り作業によって発生する反力をコールタによって受けることができる。従って、反力がそのままの大きさで走行機体に作用することはなく、走行機体及びこれに装着された畦塗り機の直進性を向上させることができる。
【0011】
また特徴の一つは、制御手段は、刺さり込み量検出手段が作業状態の範囲内にあるときのみ作動することを特徴とする。
【0012】
この特徴によれば、制御手段は、刺さり込み量検出手段が作業状態の範囲内にあるときのみ作動することにより、例えば、畦塗り機が畦塗り作業を行っていないときには、制御手段はアクチュエータの作動制御を行わない。このため、アクチュエータの暴走を未然に防止して、アクチュエータやコールタ等が損傷する事態を防止することができる。
【0013】
また特徴の一つは、刺さり込み量検出手段は、ポテンショメータであってコールタを支持するコールタ支持部材に上下方向に回動自在に枢支されたセンサアームの枢支部に設けられ、コールタの上下方向位置をセンサアームの傾斜角度で検知し、該センサアームの傾斜角度を電圧値に変換し、変換された電圧値が予め設定された基準電圧値になるまでアクチュエータを作動させてコールタの刺さり込み量を一定に維持することを特徴とする。
【0014】
この特徴によれば、刺さり込み量検出手段は、コールタを支持するコールタ支持部材に上下方向に回動自在に枢支されたセンサアームの枢支部に設けられたポテンショメータであり、コールタの上下方向位置をセンサアームの傾斜角度で検知し、該センサアームの傾斜角度を電圧値に変換し、変換された電圧値が予め設定された基準電圧値になるまでアクチュエータを作動させてコールタの刺さり込み量を一定に維持することで、コールタの上下位置を正確に検出可能であるとともに、泥等が枢支部周辺に付着しても刺さり込み量検出手段の検出精度に与える影響は小さく、泥等の汚れに強い刺さり込み量検出手段を提供することができる。
【0015】
また特徴の一つは、コールタの刺さり込み量を複数設定し、この設定された各刺さり込み量のモードを選択可能であることを特徴とする。
【0016】
この特徴によれば、コールタの刺さり込み量を複数設定し、この設定された各刺さり込み量のモードを選択可能にすることで、圃場の状態に応じてコールタの刺さり込み量の調節を可能にすることができる。
【0017】
また特徴の一つは、モードの切り換えを遠隔操作によって行うことを特徴とする。
【0018】
この特徴によれば、モードの切り換えを遠隔操作によって行うことにより、例えば、走行機体に搭乗した作業者が走行機体に乗ったままで、モードの切り換えを行うことができ、畦塗り作業の作業性を向上することができる。
【0019】
また特徴の一つは、制御手段は、操作スイッチの操作に応じてコールタの刺さり込み量を選択設定することができることを特徴とする。
【0020】
この特徴によれば、制御手段は、操作スイッチの操作に応じてコールタの刺さり込み量を選択設定することにより、コールタの刺さり込み量を、例えば、大、中、小のように3段階に選択的に設定することが可能となる。また操作スイッチを走行機体の運転席の周辺に設けると、作業者が走行機体から降りることなくコールタの刺さり込み量の調節を遠隔操作することができ、畦塗り作業の作業性を向上することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係わる畦塗り機によれば、上記特徴を有することにより、圃場や元畦の凹凸によって畦塗り機が傾いても前処理体及び整畦体の整畦作業により発生する反力をコールタが常に受けて、走行機体及びこれに装着された畦塗り機の直進性を向上させることが可能な畦塗り機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る畦塗り機について、図1〜図5を参照して説明する。なお、説明の都合上、図1(平面図)に示す方向を前後方向及び左右方向として、以下説明する。畦塗り機1は、図1、図2(要部平面図)、図3(背面図)に示すように、走行機体であるトラクタ100の後部に設けられた3点リンク機構(図示せず)に装着される装着部10、畦塗り作業を行う作業部20、装着部10に取り付けられてトラクタ100の走行位置に対して側方にオフセットした位置に移動可能なオフセット機構部40とを基本構成として備える。
【0023】
装着部10は、ロアリンク連結部11とトップリンク連結部12を備えると共に、オフセット機構部40が装着される支持部材13を備えている。また、装着部10は、トラクタ100のPTO軸とユニバーサルジョイント等の伝動継手を介して接続される入力軸14を備えており、この入力軸14に伝達された動力をオフセット機構部40の伝動機構に伝達するための伝動機構を支持部材13内に備えている。
【0024】
オフセット機構部40は、前端側が装着部10の支持部材13に支持され、後端側に作業部20が取り付けられて、作業部20をトラクタ側方のオフセット位置で作業させるものであり、前端が装着部側に軸支され、後端が作業部側に軸支されたリンク部材41と、作業部側に動力伝達する巻き掛け伝動手段を備えた伝動ケース43とを具備している。
【0025】
伝動ケース43は前側及び後側に伝動軸44,45を垂直に設置して、伝動軸44の回りに伝動ケース43が回動可能に軸支され、伝動軸45の回りに作業部20が回動可能に軸支されている。そして、伝動ケース43とリンク部材41を平行に配備し、支持部材13とで平行リンク機構を形成して、オフセット機構部40の揺動に対して作業部20の方向が変化しない機構にしている。
【0026】
作業部20は、元畦Ukの一部及び圃場を耕耘して元畦側に畦状に盛り上げる前処理体21とこの前処理体21によって耕耘された土壌を回転しながら元畦Uk上に塗り付けて新畦Usを整畦する整畦体25とを備える。これら前処理体21及び整畦体25は、伝動ケース43の後端部下側から下方に延びて回動自在に支持された伝動軸ケース46の下端部に接続された支持ケース29に装着されている。伝動軸ケース46内には、伝動軸45からの動力を伝達する動力伝達機構が設けられ、支持ケース29内には伝動軸ケース46内の動力伝達機構からの動力を前処理体21と整畦体25とに振り分ける伝動機構が設けられている。
【0027】
ここで、前処理体21はロータリ爪を駆動軸に装着したロータリ耕耘型の前処理機構であり、元畦Ukの天場(上面)を削り取る天場処理機構22が付加されている。なお、必要に応じて天場処理機構22を取り除いてもよい。整畦体25は、畦の上面を成形する円筒ドラム25aと畦の側面を成形する円錐傘状ドラム25bからなる整畦ドラムを採用することができる。
【0028】
前処理体21は、支持ケース29の先端部に取り付けられて支持ケース29内の伝動機構によって回転駆動可能である。整畦体25は、円錐傘状ドラム25bの拡開した側の端部に沿って前後方向に延びて先端部が支持ケース29に回動自在に取り付けられたドラムケース53に支持されて上下方向に回動自在であり、伝動軸ケース46に取り付けられた回動ハンドル47を操作することで、整畦体25の上下位置調整が可能になっている。
【0029】
このように構成された畦塗り機1のオフセット機構部40には、作業部20の作業位置を調整するためのオフセットシリンダ50が装備され、作業部20には、この作業方向を調整するための方向シリンダ31が装備されている。これらのシリンダは、作業部20の方向を検出する方向センサ及び作業部20の位置を検出する位置センサからの検出信号に応じて作動が制御されて、作業部20の位置及び作業方向の変化を調整して直線状の畦塗り作業を維持するように構成されている。
【0030】
支持ケース29の後端部には、伝動軸ケース46を中央にして整畦体25と反対側に配置されたコールタ60が取り付けられている。コールタ60は、中央部に取り付けられたコールタアーム61を中心として略円錐状に形成された接地体部61aを有し、略水平方向に延びるコールタアーム61の基端部に回動自在に支持されている。コールタアーム61の先端部は支持ケース29の後端部左側面に基端部が上下方向に回動自在に枢結されて後方側へ延びるコールタ支持部材62の先端部に固着されている。そして、伝動軸ケース46とコールタアーム61との間には昇降シリンダ63が枢結されている。このため、昇降シリンダ63が伸縮すると、コールタ支持部材62が上下方向に回動するとともにコールタアーム61が上下方向に移動してコールタ60の位置を上下方向に移動させることができる。昇降シリンダ63は、電気式、油圧式、又はこれらを混合した電気油圧式のいずれでもよい。
【0031】
コールタ支持部材62の先端側には整畦体側へ延びるセンサ支持アーム65が取り付けられている。このセンサ支持アーム65の先端部には、基端部が枢結されて先端側が後方側へ延びて先端部が圃場表面に接地するセンサアーム66が取り付けられている。センサアーム66の先端部には圃場表面に接地したときにアームの先端部が圃場内に埋没するのを防止するための平面状の接地板67が取り付けられ、センサアーム66の基端部の枢支部66aには、ポテンショメータ68が取り付けられている。センサアーム66の接地板67は、畦塗り機1の幅方向において前処理体21のロータリ爪によって圃場の耕土が耕耘される範囲内に設置されている。このため、前処理体21によって削り取った跡を接地板67が移動することになり、圃場に残る稲株や草等の影響を受け難くすることができる。
【0032】
ポテンショメータ68は、図4(要部側面図)及び図5(ブロック図)に示すように、コールタ60の上下位置をセンサアーム66の傾斜角度で検知し、センサアーム66の傾斜角度を電圧値に変換する機能を有している。ポテンショメータ68からの出力電圧値は制御装置70に伝達される。制御装置70は、出力電圧値に基づいて昇降シリンダ63の作動を制御する。
【0033】
制御装置70は、比較判断部71と刺さり込み量選択判定部72と制御部73とを有して構成され、ポテンショメータ68及び後述する操作スイッチ75が電気的に接続されている。比較判断部71は、コールタ60の圃場への刺さり込み量が所定の大きさにあるときのセンサアーム66の傾斜角度に対応するポテンショメータ68の出力電圧値を基準電圧値として予め設定しておき、ポテンショメータ68からの実際の出力電圧値と基準電圧値との大きさを比較判断してその判断結果を制御部73に伝達する機能と、刺さり込み量判定部72によってコールタ60の刺さり込み量の3段階のいずれかの大きさが選択されたと判定されると、基準電圧値を選択された刺さり込み量に応じたセンサアーム66の傾斜角度に対応するポテンショメータ68の選択基準電圧値に置き換えてポテンショメータ68からの実際の出力電圧値と選択基準電圧値との大きさを比較判断してその判断結果を制御部73に伝達する機能と、ポテンショメータ68からの実際の出力電圧値がコールタ60の刺さり込み量が作業状態の範囲にあるときに出力されるポテンショメータ68の出力電圧値の範囲(以下、「許容出力電圧値」と記す。)を超えているか否かを判断してその判断結果を制御部73に伝達する機能を有している。
【0034】
なお、比較判断部71は、刺さり込み量判定部72によって操作スイッチ75の選択が自動モードの選択であると判定されると、基準電圧値の置き換えは行わない。また比較判断部71による判断結果は、所定間隔毎に伝達されるように構成され、所定間隔は任意に調節可能である。さらに操作スイッチ75は、コールタ60の刺さり込み量を作業状態の範囲内の大中小の3段階のいずれかの大きさに選択したり、コールタ60の刺さり込み量を自動で一定にしたりするときに操作されるスイッチであり、トラクタ100の運転席の周辺に設置さている。
【0035】
刺さり込み量選択判定部72は、操作スイッチ75の操作に応じて出力された操作信号がコールタ60の刺さり込み量を作業状態の範囲内の3つの異なる刺さり込み量(大、中、小)のいずれかが選択されたかを判定し、またポテンショメータ68の出力電圧値が基準電圧値になるように昇降シリンダ63の作動を自動的に制御する自動モードが選択されたか否かを判定し、判定結果を比較判断部71に伝達する機能を有している。なお、操作スイッチ75は刺さり込み量を3段階に選択可能なものに限るものではなく、4段階以上に選択可能なものや無段階に選択可能なものでもよい。また操作スイッチ75の設置位置は、トラクタ100の運転席の周辺に限るものではなく、運転席に座った作業者が手の届く範囲内であれば、畦塗り機1側に設置してもよい。
【0036】
制御部73は、操作スイッチ75によって自動モードが選択された場合、比較判断部71によって出力電圧値が基準電圧値と異なる大きさであると判断されると、出力電圧値が基準電圧値に近づく方向に昇降シリンダ63を伸縮させてコールタ60を上下方向に移動させ、比較判断部71によって出力電圧値が基準電圧値と等しい大きさであると判断されると、昇降シリンダ63の伸縮を規制するように作動する。また、制御部73は、刺さり込み量選択判定部72によって3つの異なる刺さり込み量(大、中、小)のいずれかが選択されたと判定されると、比較判断部71によって置き換えられた選択基準電圧値と出力電圧値との大きさが比較判断され、比較判断部71によって出力電圧値が選択基準電圧値と異なる大きさであると判断されると、出力電圧値が選択基準電圧値に近づく方向に昇降シリンダ63を伸縮させてコールタ60を上下方向に移動させ、比較判断部71によって出力電圧値が選択基準電圧値と等しい大きさであると判断されると昇降シリンダ63の伸縮を規制するように作動する。また、比較判断部71によってポテンショメータ68からの実際の出力電圧値が許容出力電圧値を超えていると判断されると、昇降シリンダ63の伸縮作動を規制する。なお、出力電圧値が許容出力電圧値を超えると昇降シリンダ63の伸縮作動を規制する代わりに、センサアーム66が圃場表面に接触する虞のない位置まで移動するように昇降シリンダ63の伸縮作動を制御してもよい。また出力電圧値が基準電圧値又は選択基準電圧値と等しい場合とは、出力電圧値が基準電圧値又は選択基準電圧値に対して所定幅を有した範囲内であれば、出力電圧値が基準電圧値又は選択基準電圧値と等しいとしてもよい。
【0037】
このように、操作スイッチ75を自動モード又は3つの異なる刺さり込み量(大、中、小)のいずれかを選択すると、昇降シリンダ63の伸縮が制御されてコールタ60の刺さり込み量を所望の大きさに一定に維持することができる。従って、トラクタ100の後部に畦塗り機1を装着し、トラクタ100が前進走行しながら畦塗り機1が畦塗り作業を行っているときに、圃場や元畦に存在する凹凸によって畦塗り機1が進行方向に対して左右方向に傾いてコールタ60が圃場表面から上方に離反する方向に移動すると、センサアーム66が下方に回動してポテンショメータ68の出力電圧値を変化させ、制御装置70の比較判断部71が出力電圧値と基準電圧値又は選択基準電圧値との大きさを比較判断し、この判断結果に応じて制御部73が昇降シリンダ63の伸縮作動を制御してコールタ60の刺さり込み量が所望の大きさになるようにコールタ60を下方に移動させる。
【0038】
また畦塗り機1が進行方向に対して左右方向に傾いてコールタ60が圃場表面内に入り込む方向に移動すると、センサアーム66が上方に回動してポテンショメータ68の出力電圧値が変化し、制御装置70の比較判断部71が出力電圧値と基準電圧値又は選択基準電圧値との大きさを比較判断し、この判断結果に応じて制御部73が昇降シリンダ63の伸縮作動を制御してコールタ60の刺さり込み量が所望の大きさになるようにコールタ60を上方に移動させる。
【0039】
このように、畦塗り機1が進行方向に対して左右方向に傾いてコールタ60が圃場表面から浮き上がろうとし、また圃場の土中に深く刺さり込もうとしても、昇降シリンダ63が伸縮作動して、コールタ60の上下位置が自動的に調整されてコールタ60の刺さり込み量が一定に戻される。このため、圃場や元畦に凹凸が存在しても、前処理体21及び整畦体25の畦塗り作業によって発生する反力をコールタ60によって受けることができ、従って、この反力がそのままの大きさでとトラクタ100に作用することはない。その結果、トラクタ100のハンドルが大きく取られる事態を未然に防止することができ、トラクタ100及びこれに装着された畦塗り機1の直進性を向上することができる。
【0040】
なお、前述した実施例では、圃場表面にセンサアーム66の先端部を直接に接触させてセンサアーム66の傾き角度からコールタ60の上下位置を検出する接触式の検出方法の例を示したが、コールタ60の上方位置に光センサや超音波センサ等の非接触式センサを設置し、この非接触式センサによって圃場表面との間の距離を測定し、測定した距離に基づいて、コールタ60の刺さり込み量が所望の値になるように昇降シリンダ63の作動を制御するようにしてもよい。
【0041】
またセンサアーム66が上下方向に回動する範囲の上限及び下限に移動したときにON作動するようにリミットスイッチを設け、上側に設置されたリミットスイッチがON作動すると、昇降シリンダ63を縮小させ、下側に設置されたリミットスイッチがON作動すると、昇降シリンダ63を伸長させるように制御装置70を構成してもよい。さらに、リミットスイッチは、センサアーム66の回動範囲の上限及び下限に設ける場合に限るものではなく、センサアーム66の回動範囲内の任意の位置にセンサアーム66が移動したときにON作動するようにリミットスイッチを設けてもよい。またこれらのリミットスイッチは取付部材等を介して一体的に且つ移動可能に設けてもよい。このようにすると、圃場状態に応じて複数のリミットスイッチの位置を一体的に変更することができ、圃場に適したコールタ60の刺さり込み量にすることができる。この場合、取付部材等に移動自在に支持されたワイヤを接続してワイヤを移動させることで、取付部材等の位置を変更することができ、遠隔操作によってコールタ60の刺さり込み量を変更することができる。このときワイヤの移動量を選択的に変更可能にすると、コールタ60の刺さり込み量を選択的に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の平面図を示す。
【図2】本発明の一実施の形態に係るコールタを説明するための畦塗り機の要部平面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態に係る畦塗り機の背面図を示す。
【図4】本発明の一実施の形態に係るコールタを説明するための畦塗り機の要部側面図を示す。
【図5】本発明の一実施の形態に係るコールタを上下方向に移動させる昇降シリンダの作動を制御する制御装置のブロック図を示す。
【図6】従来のコールタを備えた畦塗り機の平面図を示す。
【符号の説明】
【0043】
1 畦塗り機
21 前処理体
25 整畦体
60 コールタ
62 コールタ支持部材
63 昇降シリンダ(アクチュエータ)
66 センサアーム
66a 枢支部
68 ポテンショメータ(刺さり込み量検出手段)
70 制御装置(制御手段)
75 操作スイッチ
100 トラクタ(走行機体)
Uk 元畦

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体の後部に連結され、該走行機体からの動力を受けて元畦の一部及び圃場を耕耘して元畦側に畦状に盛り上げる前処理体及び該前処理体により耕耘された土壌を回転しながら畦に成形するドラム状の整畦体を有し、前記前処理体及び前記整畦体の整畦作業により発生する反力を抑えて前記走行機体の直進性を維持するコールタを備えた畦塗り機において、
前記コールタがアクチュエータを介して上下方向に移動可能に支持され、
前記コールタの前記圃場への刺さり込み量を検出する刺さり込み量検出手段が設けられ、
前記刺さり込み量検出手段からの検出信号に応じて前記アクチュエータの作動を制御して前記コールタの刺さり込み量を一定にする制御手段が設けられたことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】
前記制御手段は、前記刺さり込み量検出手段が作業状態の範囲内にあるときのみ作動することを特徴とする請求項1に記載の畦塗り機。
【請求項3】
前記刺さり込み量検出手段は、ポテンショメータであって前記コールタを支持するコールタ支持部材に上下方向に回動自在に枢支されたセンサアームの枢支部に設けられ、前記コールタの上下方向位置を前記センサアームの傾斜角度で検知し、該センサアームの傾斜角度を電圧値に変換し、変換された電圧値が予め設定された基準電圧値になるまで前記アクチュエータを作動させて前記コールタの刺さり込み量を一定に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載の畦塗り機。
【請求項4】
前記コールタの刺さり込み量を複数設定し、この設定された各刺さり込み量のモードを選択可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の畦塗り機。
【請求項5】
前記モードの切り換えを遠隔操作によって行うことを特徴とする請求項4に記載の畦塗り機。
【請求項6】
前記制御手段は、操作スイッチの操作に応じて前記コールタの刺さり込み量を選択設定することができることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の畦塗り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−11164(P2009−11164A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−173028(P2007−173028)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(390010836)小橋工業株式会社 (198)
【Fターム(参考)】