説明

畦形成機の畦上面削土装置

【課題】 畦形成機による畦形成作業中に、旧畦内の石等の障害物に畦上面を削土する畦上面削土装置のロータ軸や爪が当たり、これらが折損したり曲損したりすることを防止する。
【解決手段】 畦形成部に土を盛り上げ状態に供給する土盛装置と、この盛られた土を回転体により締め固めて畦を形成する畦形成装置と、畦形成装置の前方に配置され旧畦上面を削土する畦上面削土装置とを有した畦形成機において、畦上面削土装置の削土用爪は、回転方向前方に弾性体により押圧してとりつけられ、障害物に削土用爪が当たったときは回動して後退するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車に装着されて水田の泥土を掘削して旧畦に盛土し、盛土したものを成形しながら圧縮する畦形成装置に関するもので、特に畦形成装置の前方に配設されて、畦形成前の旧畦の雑草等が繁茂している畦上面の表層を削土する畦上面削土装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来の畦形成機の畦上面削土装置としては、同一出願人による特許第3374148号公報が知られている。この従来の畦形成機は「土盛装置の直後で畦形成装置の直前に畦上面削土装置を配設して、土盛装置から削土されて放出される飛散中の盛土と上面削土機によって上面の雑草株と硬土層を破砕作用中に混和されることを特徴とした畦形成機」である。(特許文献1)
【特許文献1】特許第3374148号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら従来の畦形成機において畦上面を削土すると、畦部には圃場面と異なり石等の障害物が多数土中に埋め込まれている場合があり、作業中これらに削土用のロータ軸や爪が当たると、衝撃により折損したり曲損したりする問題があった。このため本発明の目的は、前記畦中の障害物にロータ軸や爪が当たった場合の折損または曲損を防止できる畦上面削土装置を有した畦形成機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、走行車に付設されて、その進行方向に順次畦を形成する畦形成機において、畦形成部に土を盛り上げ状態に供給する盛土装置と、畦形成部に盛られた土を締め固めて畦を形成する畦形成装置と、畦形成装置の前方に配置され旧畦上面を削土する畦上面削土装置とを有し、前記畦上面削土装置の削土用爪は、爪回転方向前方に弾性体により押圧されて取り付けられていて、障害物に当たると爪は後方に回動し弾性体が衝撃を吸収するように設けたことを特徴とした畦形成機を提供する。
【発明の効果】
【0005】
以上のような構成にすることで、削土用爪は弾性体により回転方向前方に押圧されて取り付けられているため、石等の障害物に削土用ロータ軸や爪が当たった時は、弾性体の作用により爪が後退し逃げるように作用し衝撃を吸収緩和する。これにより削土用ロータ軸や爪の折損や曲損を大幅に削減することができる。また、簡単な構造で機械の大型化を招くこともなく従来のスペースに納めることが可能で、機械の製造コストの大幅な高騰を招くこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明を実施した畦形成機の前進作業時の平面図、図2は同畦形成機の側面図、図3は同畦形成機の移動走行時の一部省略した左側面図、図4は同畦形成機の駆動部を断面した平面図、図5は同畦形成機での畦形成作業説明図、図6は畦上面削土装置の削土爪の取付部正面断面図、図7は畦上面削土装置の削土用爪の取付部側面図を示したものである。
【0007】
図1、図2および図3において、1は装着フレームを示し、前方に一対のロアピン11及びトップブラケット12を有して、図示していないがトラクタの後部三点リンクヒッチに連結される。2は支持フレームを示し、基部は装着フレーム1の後部略中心部に設けた回動軸4によって旋回自在に支持されて、その他方端にはパイプフレーム22を介して畦形成部3を配置してなる。パイプフレーム22は支持フレーム2の外周を摺動自在に構成している。畦形成部3は掘削爪36を有した盛土装置31と、畦上面削土装置33及び畦形成装置32から構成される。
【0008】
23は支持フレームボスで、支持フレーム2の基部に回動軸4に対して水平方向回動自在に設けられ、24の固定板を水平に設けている。6は電動モータユニットで、前記した固定板24に対して62のロックピンの固定解除をトラクタのバッテリーを電源として電動作動させる装置である。
【0009】
図3は畦形成部3を後方へ回動軸4を中心に90度旋回させたもので、非作業状態である移動走行時の状態を示したもので、さらに90度旋回させると、トラクタを後進させての後進作業が可能で、圃場においてトラクタが行き止まりになる四隅の残耕部を処理することができる。
【0010】
装着フレーム1の中央部の下方に伝達部5を装備して、この伝達部5はトラクタから入力される入力軸51を設けて、後端にダブル広角ジョイント52の前端を連結する。ダブル広角ジョイント52の他端は、入力伝達ケース54の伝達軸53に連結され、畦形成部を駆動する。
【0011】
2は支持フレームを示し、前端に支持フレームボス23を設けて4の回動軸を支点として水平方向旋回自在に支持される。22はパイプフレームを示し、前記した支持フレーム2の外周に摺動自在に設けられている。支持フレームボス23に設けた固定板24の係合孔にロックピン62が係合して支持フレーム2の旋回を阻止する。
【0012】
43は連結ロッドを示し、装着フレーム側の回動軸4より走行方向の前方に位置した第1ピン41と、畦形成部側のパイプフレーム22の上部に設けた第2ピン42とに掛け渡したものである。連結ロッド43は本実施例においては、ターンバックル構造で中央胴体枠の両端に左ネジ、右ネジ軸を差し込んだもので、左右のネジ軸端が第1ピン41と第2ピン42とに固着されており、中央胴体を回転することにより、連結ロッド長さを伸縮するものである。
【0013】
畦形成部3が前進作業位置および後進作業位置において、連結ロット長さを伸縮させることにより畦形成部3をトラクタ進行方向左右へ移動させることができ、各トラクタのタイヤ巾に合わせた位置に調節することができる。また、移動走行位置に回動した時は、連結ロット43の作用によりトラクタ側へ畦形成部3をパイプフレーム22が支持フレーム2を摺動して移動し、単純に支持フレームを回動させた場合に比較して、重心位置がトラクタ側へ近くなり、移動走行する場合のバランスが良くなる。
【0014】
図2において、畦形成作業時の畦高さを調整する場合、畦高さ調整シリンダ92を伸縮させると、畦上面削土装置33の回転軸と同軸の回動部を中心にして盛土装置31と畦形成装置32が上下方向に回動する。
【0015】
畦高さを高くしたい場合は、盛土装置31を下方へ回動させると畦形成装置32は上方へ回動し、上下方向寸法において盛土装置31と、畦形成装置32が離れることにより畦高さが高くなる。逆に畦高さを低くしたい場合は、盛土装置31を上方へ回動させることになる。
【0016】
93は水平ゲージで、盛土装置31と畦形成装置32との標準畦高さ時の位置を示すもので、畦形成作業時はこの水平ゲージ93を目安に作業を行える。
【0017】
畦形成部3の回動手段は、支持フレーム2の支持フレームボス23に回動歯車73と固定板24が固着されて設けてあり、また装着フレーム側に設けられたシリンダ機構7のピストンロット71には、ピストンロットの往復動する方向に歯を有したラック76が固着されて設けてあり、ラック76に歯合する第1中間歯車72と、この第1中間歯車と一体で回動し前記支持フレームボスの回動歯車73と歯合する第2中間歯車72aが、装着フレーム1に中間軸74によって回動自在に取り付けられている。
【0018】
これにより、シリンダ機構7のピストンロット71を往復動させることによりラック76が往復動し、これと歯合する第1中間歯車72が回動し第1中間歯車と一体で回動する第2中間歯車は、支持フレームボスの回動歯車73と歯合して支持フレームを回動させる。
【0019】
支持フレームボス23に固着された固定板24には係合孔63が設けられて、電動モータユニット6によりロックピン62を上下動させ各係合孔に挿入することで、支持フレームを前進作業位置,後進作業位置,移動走行位置の各位置に回動固定できる。
【0020】
図4において本発明の畦形成機の駆動部を説明すると、図示されていないがトラクタPTO軸と入力軸51はユニバーサルジョイントで連結されて動力は畦形成機へ伝達される。
【0021】
入力軸51へ伝達された動力は、他方端に連結されたダブル広角ジョイント52により畦形成部3を駆動させる入力軸51と直交する方向の伝達軸53へ伝達される。入力伝達部54内には前記伝達軸53に固着されたスプロケット80aとこの下方に位置する中間駆動軸82aに固着されたスプロケット80bとがチェーン81aを巻着させることで連結連動されている。
【0022】
中間駆動軸82aの一方端には、上面削土駆動軸82bが連結されて畦上面削土装置33を駆動する。畦上面削土装置33はロータ軸82eの外周に弾性体83gにより爪回転方向前方に押圧して取り付けた複数の削土用の爪83を放射状に設けて、この爪83を回転させ畦上面を削土するように構成されている。
【0023】
また中間駆動軸82aの他方端には、畦形成装置32を駆動するスプロケット80cと盛土装置31を駆動するスプロケット80eが固着されて、それぞれかけ渡されたチェーン81b、81cにより動力は各部へ伝達される。
【0024】
畦形成装置32を一方端に設けた畦形成駆動軸82dは、他方端に第2チェーンケース35内のスプロケット80dが固着されていて、該スプロケット80dと前記中間駆動軸82aのスプロケット80cとにチェーン81bが巻着されて動力が伝達され畦形成装置32は駆動される。
【0025】
一方、前記中間駆動軸82aに固着され第1チェーンケース34内に設けたスプロケット80eと盛土装置31を駆動する盛土駆動軸82cに固着したスプロケット80fに、チェーン81cが巻着され盛土装置31は駆動される。
【0026】
図5において、畦形成部で畦を形成する場合の盛土装置と畦上面削土装置および畦形成装置の作用を説明する。盛土装置31の掘削爪36は、水田の底面と旧畦の斜面を適宜に掘削しながら掘削土を旧畦の斜面と上面に放擲する。上面に放擲された盛土は、畦上面削土装置33によって畦上面の雑草根や硬質の表層土と混和され、さらに旧畦上に盛り上げられた土は後方の畦形成装置32の筒状回転体と円錐状ディスクによって圧縮され畦が形成される。
【0027】
図6と図7において畦上面削土装置33の削土用爪83の取付部の説明をする。爪83は、ロータ軸82eの回転軸と直交する方向に取り付け面を有して爪83を両側から挟持するように設けたホルダ83a,83aにロータ軸の回転軸と平行に設けた爪取付穴と爪83の取付穴に、爪取付ボルト83dを挿入し端部を戻り止めの付いた爪取付ナット83fを締め込み取り付けられている。爪83はストッパ83bにより回転方向前方への回動は阻止され、爪回転方向より後退する方向へは回動可能に設けられている。
【0028】
コイルバネである弾性体83gは、爪取付ボルト83dと爪取付ナット83fによりホルダ83a,83a外側面と座金83e,83eとの間にそれぞれ挟持されたカラー83c,83c外周に巻着されて保持され、一端を爪83とロータ軸82eに係合させ弾性体83gのねじり力により爪83を回転方向前方に押圧するように取り付けられている。通常時はホルダ83aの回転方向前方側に設けたストッパ83bに爪83が圧着するようにして保持されていて、畦上面を削土中に石等の障害物に爪83が当たると、図7の二点鎖線で示すように爪83が後方へ回動し、障害物から逃げるとともに障害物による衝撃力を吸収する。障害物通過後は弾性体83gにより爪83がストッパ83bに押圧され元の位置に復帰する。
【0029】
弾性体はコイルバネによらず、爪後方から弾性部材により弾圧させても良い。また、本実施例では畦上面削土装置の駆動ロータ軸は畦長手方向と直交する方向に設けてあるが、平行に設けた場合も本発明の主旨は変わらない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施した畦形成機の前進作業時の平面図
【図2】同畦形成機の側面図
【図3】同畦形成機の移動走行時の一部省略した左側面図
【図4】同畦形成機の駆動部を断面した平面図
【図5】同畦形成機での畦形成作業説明図
【図6】畦上面削土装置の削土爪の取付部正面断面図
【図7】畦上面削土装置の削土用爪の取付部側面図
【符号の説明】
【0031】
1 装着フレーム
11 ロアピン
12 トップブラケット
2 支持フレーム
22 パイプフレーム
23 支持フレームボス
24 固定板
3 畦形成部
31 盛土装置
32 畦形成装置
33 畦上面削土装置
34 第1チェーンケース
35 第2チェーンケース
36 掘削爪
4 回動軸
41 第1ピン
42 第2ピン
43 連結ロッド
5 中継伝達部
51 入力軸
52 ダブル広角ジョイント
53 伝達軸
54 入力伝達部
6 電動モータユニット
62 ロックピン
63 係合孔
7 シリンダ機構
71 ピストンロット
72 第1中間歯車
72a 第2中間歯車
73 回動歯車
74 中間軸
76 ラック
80a,80b,80c,80d,80e,80f スプロケット
81a,81b,81c チェーン
82a 中間駆動軸
82b 上面削土駆動軸
82c 盛土駆動軸
82d 畦形成駆動軸
82e ロータ軸
83 爪
83a ホルダ
83b ストッパ
83c カラー
83d 爪取付ボルト
83e 座金
83f 爪取付ナット
83g 弾性体
92 畦高さ調節シリンダ
93 水平ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に付設されて、その進行方向に順次畦を形成する畦形成機において、畦形成部に土を盛り上げ状態に供給する盛土装置と、畦形成部に盛られた土を締め固めて畦を形成する畦形成装置と、畦形成装置の前方に配置され旧畦上面を削土する畦上面削土装置とを有し、前記畦上面削土装置の削土用爪は、爪回転方向前方に弾性体により押圧されて取り付けられていて、障害物に当たると爪は後方に回動し弾性体が衝撃を吸収するように設けたことを特徴とした畦形成機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−94763(P2006−94763A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−284454(P2004−284454)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000171746)株式会社ササキコーポレーション (192)
【Fターム(参考)】